(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-142417(P2018-142417A)
(43)【公開日】2018年9月13日
(54)【発明の名称】差動対を形成する複数のコンタクトを有するコネクタ、及び、これを用いたコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6588 20110101AFI20180817BHJP
【FI】
H01R13/6588
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-34568(P2017-34568)
(22)【出願日】2017年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】フォーラン トーマス
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA08
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB10
5E021FB15
5E021FB17
5E021FC20
5E021HC04
(57)【要約】
【課題】差動対を形成する複数のコンタクトにおいて、クロストークの影響を効果的に軽減するための配列を採用したコネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】複数のコンタクトは、隣接するコンタクト同士の間で複数の差動対を形成している。複数の差動対のうち少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトの接触部は、軸線方向と直交する面において、垂直方向に沿って、且つ、該垂直方向における一方の側に寄った位置に位置付けられており、また、これら少なくとも3つの差動対は、直交面において、水平方向にて等距離ずつ離間された状態で互いに平行に配置されている。少なくとも3つの差動対以外の他の差動対を形成しているコンタクトの接触部は、直交面において、水平方向に沿って、且つ、垂直方向における他方の側に寄った位置に位置付けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延びる接触部をそれぞれ有した複数のコンタクトと、
前記軸線方向に沿って延びる内壁を有したハウジングと、を備え、
複数の前記接触部の外周は前記内壁によって実質的に覆われており、
前記内壁によって規定された挿入空間に、複数の前記接触部の各々と接触し得る複数の相手コンタクトが配置された被挿入部が、前記軸線方向に沿って挿入されるように構成されており、
前記複数のコンタクトは、隣接するコンタクト同士の間で複数の差動対を形成しており、
前記複数の差動対のうち少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトの接触部は、前記軸線方向と直交する面において、垂直方向に沿って、且つ、該垂直方向における一方の側に寄った位置に位置付けられており、
前記少なくとも3つの差動対は、前記直交面において、水平方向にて等距離ずつ離間された状態で互いに平行に配置されており、
複数の前記差動対のうち前記少なくとも3つの差動対以外の他の差動対を形成しているコンタクトの接触部は、前記直交面において、前記水平方向に沿って、且つ、前記垂直方向における他方の側に寄った位置に位置付けられている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
軸線方向に沿って延びる接触部をそれぞれ有した複数のコンタクトと、
複数の前記接触部が配置された前記軸線方向に沿って延びる被挿入部を有したハウジングと、を備え、
前記被挿入部は、複数の前記接触部の各々と接触し得る複数の相手コンタクトの接触部の外周を実質的に覆うように前記軸線方向に沿って延びる内壁によって規定された挿入空間に、前記軸線方向に沿って挿入されるように構成されており、
前記複数のコンタクトは、隣接するコンタクト同士の間で複数の差動対を形成しており、
前記複数の差動対のうち少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトの接触部は、前記軸線方向と直交する面において、垂直方向に沿って、且つ、該垂直方向における一方の側に寄った位置に位置付けられており、
前記少なくとも3つの差動対は、前記直交面において、水平方向にて等距離ずつ離間された状態で互いに平行に配置されており、
複数の前記差動対のうち前記少なくとも3つの差動対以外の他の差動対を形成しているコンタクトの接触部は、前記直交面において、前記水平方向に沿って、且つ、前記垂直方向における他方の側に寄った位置に位置付けられている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
前記挿入空間の断面と、前記被挿入部の断面は、前記直交面において共に略円形状を有する、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトは、前記垂直方向において、等距離ずつ離間されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記少なくとも3つの差動対のうち前記水平方向において左右各側にそれぞれ位置する差動対は、前記垂直方向において、同じ高さに位置付けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記少なくとも3つの差動対のうち前記水平方向において中央に位置する差動対は、前記水平方向において左右各側にそれぞれ位置する差動対よりも、前記垂直方向において、前記一方の側に寄った位置に位置付けられている、請求項1乃至5のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記水平方向において中央に位置する差動対を形成しているコンタクトのそれぞれの中心を通る仮想線(B)は、前記他の差動対(P4)を形成しているコンタクトの前記水平方向における中央を通る、請求項1乃至6のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記水平方向において中央に位置する差動対を形成しているコンタクトのうち、前記垂直方向において前記他方の側に寄った位置に位置付けられているコンタクトは、前記水平方向において左右各側にそれぞれ位置する差動対のそれぞれを形成しているコンタクトのうち、前記垂直方向において前記一方の側に寄った位置に配置されているコンタクトと、前記垂直方向において同じ高さに位置付けられている、請求項1乃至7のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コンタクトは、カテゴリー5eに従うコネクタであって、計8本のコンタクトを有する、請求項1乃至8のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項10】
請求項1に記載のコネクタと、請求項2に記載のコネクタと、を有するコネクタ装置。
【請求項11】
請求項3乃至9のいずれかに記載のコンタクトを有する、請求項10に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動対を形成する複数のコンタクトを有するコネクタ、及び、これを用いたコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LANケーブルに用いるコネクタとして、差動対を形成する複数のコンタクトを有するコネクタが開発されている。しかしながら、このタイプのコネクタでは、ネットワークの高速化、長距離化に伴って、クロストークにより挿入損失が大きくなってしまうという問題がある。特許文献1は、この問題を効果的に解決するためのコンタクトの配置例、更に言えば、差動対を形成する複数のコンタクトを有するコネクタにおけるコンタクトの配置例を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2013−4281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LANケーブルに関連して、IEEE等の規格では様々な通信規格が定められている。また、それらの通信規格に合わせて、LANケーブルのカテゴリーが分類されている。たとえ同じカテゴリーに属するケーブルであっても、それらケーブルに接続されたコンタクトを如何なる配置とするかによって、通信性能が大きく異なってくることは周知のとおりである。
本願は、特許文献1等と同様に、差動対を形成する複数のコンタクトにおいて、クロストークの影響を効果的に軽減するための配列を採用して電気的特性の優れたコネクタ及びコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
クロストークの影響を効果的に軽減するには、限られた空間の中で、差動対同士を互いにできる限り離間させること、また、いずれかの差動対同士を極端に接近させないことが必要であるという知見の下、様々なシミュレーションを行い、クロストークをより効果的に軽減することができる差動対、或いは、コンタクトの配列方法を見出した。
【0006】
(1)上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるコネクタは、軸線方向に沿って延びる接触部をそれぞれ有した複数のコンタクトと、前記軸線方向に沿って延びる内壁を有したハウジングと、を備え、複数の前記接触部の外周は前記内壁によって実質的に覆われており、前記内壁によって規定された挿入空間に、複数の前記接触部の各々と接触し得る複数の相手コンタクトが配置された被挿入部が、前記軸線方向に沿って挿入されるように構成されており、前記複数のコンタクトは、隣接するコンタクト同士の間で複数の差動対を形成しており、前記複数の差動対のうち少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトの接触部は、前記軸線方向と直交する面において、垂直方向に沿って、且つ、該垂直方向における一方の側に寄った位置に位置付けられており、前記少なくとも3つの差動対は、前記直交面において、水平方向にて等距離ずつ離間された状態で互いに平行に配置されており、複数の前記差動対のうち前記少なくとも3つの差動対以外の他の差動対を形成しているコンタクトの接触部は、前記直交面において、前記水平方向に沿って、且つ、前記垂直方向における他方の側に寄った位置に位置付けられている、ことを特徴として有する。
(2)また、上記の課題を解決するため、本発明の別の態様によるコネクタは、軸線方向に沿って延びる接触部をそれぞれ有した複数のコンタクトと、複数の前記接触部が配置された前記軸線方向に沿って延びる被挿入部を有したハウジングと、を備え、前記被挿入部は、複数の前記接触部の各々と接触し得る複数の相手コンタクトの接触部の外周を実質的に覆うように前記軸線方向に沿って延びる内壁によって規定された挿入空間に、前記軸線方向に沿って挿入されるように構成されており、前記複数のコンタクトは、隣接するコンタクト同士の間で複数の差動対を形成しており、前記複数の差動対のうち少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトの接触部は、前記軸線方向と直交する面において、垂直方向に沿って、且つ、該垂直方向における一方の側に寄った位置に位置付けられており、前記少なくとも3つの差動対は、前記直交面において、水平方向にて等距離ずつ離間された状態で互いに平行に配置されており、複数の前記差動対のうち前記少なくとも3つの差動対以外の他の差動対を形成しているコンタクトの接触部は、前記直交面において、前記水平方向に沿って、且つ、前記垂直方向における他方の側に寄った位置に位置付けられている、ことを特徴として有する。
【0007】
上記態様のコネクタにおいて、前記挿入空間の断面と、前記被挿入部の断面は、前記直交面において共に略円形状を有するのが好ましい。
【0008】
上記態様のコネクタにおいて、前記少なくとも3つの差動対のそれぞれを形成しているコンタクトは、前記垂直方向において、等距離ずつ離間されているのが好ましい。
【0009】
上記態様のコネクタにおいて、前記少なくとも3つの差動対のうち前記水平方向において左右各側にそれぞれ位置する差動対は、前記垂直方向において、同じ高さに位置付けられているのが好ましい。
【0010】
上記態様のコネクタにおいて、前記少なくとも3つの差動対のうち前記水平方向において中央に位置する差動対は、前記水平方向において左右各側にそれぞれ位置する差動対よりも、前記垂直方向において、前記一方の側に寄った位置に位置付けられているのが好ましい。
【0011】
上記態様のコネクタにおいて、前記水平方向において中央に位置する差動対を形成しているコンタクトのそれぞれの中心を通る仮想線は、前記他の差動対を形成しているコンタクトの前記水平方向における中央を通るのが好ましい。
【0012】
上記態様のコネクタにおいて、前記水平方向において中央に位置する差動対を形成しているコンタクトのうち、前記垂直方向において前記他方の側に寄った位置に位置付けられているコンタクトは、前記水平方向において左右各側にそれぞれ位置する差動対のそれぞれを形成しているコンタクトのうち、前記垂直方向において前記一方の側に寄った位置に配置されているコンタクトと、前記垂直方向において同じ高さに位置付けられているのが好ましい。
【0013】
上記態様のコネクタにおいて、前記コンタクトは、カテゴリー5eに従うコネクタであって、計8本のコンタクトを有するのが好ましい。
【0014】
上記態様のコネクタにおいて、上記(1)に記載のコネクタと、上記(2)に記載のコネクタと、を有するコネクタ装置としてもよい。
【0015】
上記態様のコネクタ装置において、上記のコンタクトを有していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、差動対を形成する複数のコンタクトにおいて、クロストークの影響を効果的に軽減するための配列を採用して電気的特性の優れたコネクタ及びコネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態によるコネクタ装置の斜視図である。
【
図2】プラグコネクタの前面、即ち、突き合わせ面の正面図である。
【
図3】レセプタクルコネクタの前面、即ち、突き合わせ面の正面図である。
【
図4】プラグコネクタのコンタクトの一例を示す斜視図である。
【
図5】レセプタクルコネクタのコンタクトの一例を示す斜視図である。
【
図6】プラグコネクタにおけるコンタクトの配列方法を説明する図である。
【
図7】レセプタクルコネクタにおけるコンタクトの配列方法を説明する図である。
【
図8】本実施形態の構成によって得られるクロストークの軽減効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。以下においては、説明の便宜上、好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0019】
図1に、本発明の一実施形態によるコネクタ装置1の斜視図を示す。本コネクタ装置1は、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80の組から成る。プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80は、それらの前面20a、80aにて、軸線方向「α」に沿って互いに突き合わされ、バイヨネット接続される。
図2、3にそれぞれ、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80の前面20a、80a、即ち、突き合わせ面の正面図を示す。
【0020】
プラグコネクタ20は、軸線方向「α」に沿って延びる略円筒状のコード管、即ち、ハウジング21と、ハウジング21の前部にハウジング21に対して回転可能に外嵌された円環状のカップリング部材23と、ハウジング21の後部にハウジング21に対して回転可能に外嵌された円環状の締付け部材24と、更に、軸線方向「α」に沿ってハウジング21に挿通、固定された複数のコンタクト50を備える。
【0021】
カップリング部材23を利用して、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80をバイヨネット接続することができる。カップリング部材23の内壁23bには、バイヨネット接続を固定するために用いる、内方に突出するロック凸部23aが設けられている。
【0022】
使用時には、複数のツイストペアケーブルを束ねるケーブル束(図示されていない)が、軸線方向「α」に沿って締付け部材24の後方に延びる。ケーブル束に固定された被締付け具(図示されていない)を締付け部材24によって締付けることにより、ケーブル束をハウジング21に固定することができる。ケーブル束は、例えば、4組のツイストペアケーブル(すなわち、8本のケーブル)を含んでもよい。各ケーブルはそれぞれ、被締付け具に設けた端子部(図示されていない)を介して、一対一対応でコンタクト50に固定される。これらのケーブル及びコンタクト50は、ハウジング21を軸線方向「α」に沿って貫通した状態で設けられている。
【0023】
4組のツイストペアケーブルに対応して、計8個のコンタクト50が設けられている。これらのコンタクト50は、全て、同じ大きさ及び形状を有する。但し、これらの大きさ及び形状に限定されるものではない。
図4に、コンタクト50の一例を斜視図で示す。コンタクト50は、本体51と、本体51から軸線方向「α」に沿って前方に延びるピン状の接触部53と、本体51の後端に設けた略円錐台状の受入部55を有する。コンタクト50は、本体51の後端側に設けた係止片51aを利用して、ハウジング21の基部29(
図2参照)に固定される。基部29は、軸線方向「α」と直交する直交面「β−γ」に沿う円形の断面を有する。接触部53は、基部29に対して垂直に立設された状態で軸線方向「α」に沿って前方に延びている。受入部55には、ケーブル束のうちの1本のケーブルにおける導体部分(導線)が一対一対応で接続され、ケーブルの導線とコンタクト50とが電気的に接続される。
【0024】
ハウジング21の一部は、軸線方向「α」に沿って前側に延びており、略円筒状の覆部27を形成している。ハウジング21から露出した複数の接触部53の外周は、覆部27の内壁27bによって覆われる。
【0025】
覆部27とカップリング部材23との間に、軸線方向「α」と径方向「j」に沿って環状の隙間31が形成されている。プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80の接続時には、この隙間31は、レセプタクルコネクタ80のハウジング81の一部83が収容される収容空間31として用いられる。また、同接続時に、覆部27の内壁27bによって規定された空間28は、レセプタクルコネクタ80の一部85が挿入される挿入空間28として用いられる。尚、覆部27の内壁27bは、挿入空間28に当該一部85を案内することができるように当該一部85の挿入方向に沿って設けられていれば足り、接触部53の外周を途切れなく完全に覆っている必要はない。
【0026】
レセプタクルコネクタ80は、軸線方向「α」に沿って延びるホルダ、即ち、ハウジング81と、ハウジング81の後部にハウジング81に対して回転可能に外嵌された円環状のナット87と、更に、軸線方向「α」に沿ってハウジング81に挿通、固定された複数のコンタクト90を備える。ハウジング81のフランジ部分81cとナット87との間で、筐体やパネルなどの被取付体を挟み込むことで、レセプタクルコネクタ80は被取付体に取り付けられる。
【0027】
ハウジング81は、軸線方向「α」に沿って前側に延びる環状の外枠83と、外枠83によって周囲を包囲された状態で、外枠83と並行して延びる略円柱状の被挿入部85を有する。外枠83の内壁81bと被挿入部85の外壁85bとの間には、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80が接続される際にプラグコネクタ20の覆部27が挿入される挿入空間89が設けられている。被挿入部85には、コンタクト50が収容、固定される、コンタクト収容部85aが設けられている。
【0028】
外枠83を利用して、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80をバイヨネット接続することができる。外枠83の外壁81aには、略三角形状の凹部82が形成され、略三角形状の頂部付近には、プラグコネクタ20のカップリング部材23に設けたロック凸部23aに対応してロック凹部82aが設けられている。カップリング部材23を回動させることにより、ロック突部23aをロック凹部82aに落とし込んで、接続を固定することができる。
【0029】
使用時には、複数のツイストペアケーブルを束ねるケーブル束(図示されていない)が、軸線方向「α」に沿ってナット87の後方に延びる。ケーブル束は、例えば、4組のツイストペアケーブル(すなわち、8本のケーブル)を含んでもよい。各ケーブルにおける導体部分(導線)はそれぞれ、一対一対応でコンタクト90の受入部95(
図5参照)に固定され、ケーブルの導線とコンタクト90とが電気的に接続される。これらのコンタクト90は、ハウジング81に設けたコンタクト収容部85aを軸線方向「α」に沿って貫通した状態で設けられている。
【0030】
4組のツイストペアケーブルやプラグコネクタ20のコンタクト50に対応して、計8個のコンタクト90が設けられている。これらのコンタクト90は、全て、同じ大きさ及び形状を有する。但し、これらの大きさ及び形状に限定されるものではない。
図5に、コンタクト90の一例を斜視図で示す。コンタクト90は、本体91と、本体91の前端に設けた断面略「コ」字状の固定片92と、本体91から軸線方向「α」に沿って前方に延びる接触部93と、更に、本体91の後端に設けた略円錐台状の受入部95を有する。本体91の後端側には係止片91aが設けられており、この係止片91aと固定片92を利用して、コンタクト90をハウジング81の被挿入部85に固定することができる。接触部93は、対の挟持片93a、93bから構成されており、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80の接続時には、これらの挟持片93a、93bを利用して、コンタクト50のピン状の接触部53を弾性挟持することができる。接触部93は、軸線方向「α」と直交する直交面「β−γ」に沿う円形の断面を有した被挿入部85から軸線方向「α」に沿って、且つ、断面に対して垂直に延出されている。
【0031】
プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80が突き合わされたとき、レセプタクルコネクタ80のハウジング81の外枠83は、プラグコネクタ20の覆部27とカップリング部材23との間に形成された収容空間31に挿入される。また、このとき、プラグコネクタ20の覆部27は、レセプタクルコネクタ80の外枠83と被挿入部85との間に形成された挿入空間89に挿入される。更に、このとき、レセプタクルコネクタ80の被挿入部85は、プラグコネクタ20の覆部27を利用して規定された挿入空間28に挿入される。挿入空間28の断面と被挿入部85の断面は、直交面「β−γ」において共に略円形状を有する。レセプタクルコネクタ80のコンタクト90が配置された被挿入部85が、プラグコネクタ20のコンタクト50が配置された挿入空間28に挿入されることにより、プラグコネクタ20のコンタクト50の接触部53と、レセプタクルコネクタ80のコンタクト90の接触部93とが一対一対応で接触し得る。挿入空間28に対する被挿入部85の向きを決定するため、覆部27に、軸線方向「α」に沿うスリット27aを、これに対応して、ハウジング81の内壁81bに、内方に突出した突起88を、それぞれ設けている。
【0032】
図6、7を参照して、プラグコネクタ20とレセプタクルコネクタ80のそれぞれにおける、コンタクト50、90の配列方法を説明する。これらの図は、概略、
図2、3に示した正面図から、コンタクト50、90だけをそのままの配列状態で抜き出した正面図に相当する。便宜上、
図6では、コンタクト50に加え、挿入空間28を規定する覆部27をも示している。
【0033】
本出願人は、クロストークの影響を効果的に軽減するには、限られた空間の中で、差動対同士を互いにできる限り離間させること、また、いずれかの差動対同士を極端に接近させないことが必要であるという知見の下、様々なシミュレーションを行い、
図6、
図7に示すような好ましい配列方法を見出した。ここでは、計8個のコンタクト50が、覆部27を利用して規定された、直交面「β−γ」における挿入空間28の中で、隣接するコンタクト同士の間で差動対P1〜P4を形成し、また、計8個のコンタクト90が、被挿入部85の中で、隣接するコンタクト同士の間で差動対Q1〜Q4を形成している。
図6、
図7から明らかなように、プラグコネクタ20におけるコンタクト50の配列と、レセプタクルコネクタ80におけるコンタクト90の配列は、実質的に同じであることから、以下、プラグコネクタ20だけを参照して、端子の配列方法の詳細を説明する。レセプタクルコネクタ80については、プラグコネクタ20と同様に考えればよい。
【0034】
図6において、垂直線A〜C、及び、これらの垂直線A〜Cと直交する水平線D〜Gは、それぞれ、直交面「β−γ」において、コンタクト50A〜50Hの略中心、更に言えば、接触部53の略中心を通過しているものとする。
図6から明らかなように、差動対P1〜P4のうち少なくとも3つの差動対、例えば、垂直線A〜Cに沿って配置された差動対P1〜P3のそれぞれを形成しているコンタクト(50A、50B)(50C、50D)(50E、50F)の接触部(53)は、直交面「β−γ」において、更に詳細には、直交面「β−γ」のうち挿入空間28を規定している面内において、垂直方向「β」に沿って、且つ、垂直方向「β」における一方の側、例えば、上方に寄った位置に位置付けられている。これらの差動対P1〜P3は、また、直交面「β−γ」において、水平方向「γ」にて等距離ずつ離間された状態で互いに平行に配置されている、換言すれば、垂直線A〜Cは互いに平行であるとともに、A−B間とB−C間の距離は等しく設定されている。
一方、差動対P1〜P4のうち差動対P1〜P3以外の他の差動対P4を形成しているコンタクト(50G、50H)の接触部(53)は、直交面「β−γ」において、水平方向「γ」に沿って位置付けられている。更に、これらコンタクト(50G、50H)の接触部(53)は、垂直方向「β」における他方の側、例えば、下方に寄った位置に位置付けられている、換言すれば、コンタクト50G、50Hを通過する水平線Gは、コンタクト50A〜50Fを通過する水平線D〜Fよりも下方に位置付けられている。
【0035】
ここで、差動対P1〜P3のそれぞれを形成しているコンタクト(50A、50B)(50C、50D)(50E、50F)は、垂直方向「β」において、等距離ずつ離間されている、換言すれば、水平線D〜Fにつき、D−E間とE−F間の距離は等しく設定されているのが好ましい。F−G間の距離は、D−E間及びE−F間の距離と等しく設定されていてもよいが、図示実施形態のように、それらよりも大きく設定するのが好ましい。
【0036】
また、差動対P1〜P3のうち水平方向「γ」において左右各側にそれぞれ位置する差動対P2、P3は、垂直方向「β」において、同じ高さに位置付けられている、換言すれば、コンタクト50C及び50Eは共に水平線E上に存在し、且つ、コンタクト50D及び50Fは共に水平線F上に位置するのが好ましい。
【0037】
更に、差動対P1〜P3のうち水平方向「γ」において中央に位置する差動対P1は、水平方向「γ」において左右各側にそれぞれ位置する差動対P2、P3よりも、垂直方向「β」において、上記一方の側、即ち、上方に寄った位置に、換言すれば、コンタクト50Aを通る水平線Dは、コンタクト50C及び50Eを通る水平線Eよりも、上方に位置付けられているのが好ましい。
【0038】
更にまた、水平方向「γ」において中央に位置する差動対P1を形成しているコンタクト(50A、50B)のそれぞれを通る仮想線「B」は、前記他の差動対P4を形成しているコンタクト(50G、50H)の水平方向「γ」における中央「f」を通るのが好ましい。すなわち、コンタクト50Aまたは50Bと、コンタクト50Gと、コンタクト50Hとで二等辺三角形が形成される。
【0039】
また、水平方向「γ」において中央に位置する差動対P1を形成しているコンタクト(50A、50B)のうち、垂直方向「β」において上記他方の側、即ち、下方に寄った位置に位置付けられているコンタクト(50B)は、水平方向「γ」において左右各側にそれぞれ位置する差動対P2、P3のそれぞれを形成しているコンタクト(50C、50D)(50E、50F)のうち、垂直方向「β」において上記一方の側、即ち、上方に寄った位置に配置されているコンタクト(50C、50E)と、垂直方向「β」において同じ高さに位置付けられている、換言すれば、コンタクト50Bを通る水平線Eと、コンタクト50C、50Eを通る水平線Eは、同じであるのが好ましい。
【0040】
図8を参照して、本実施形態によって得られるクロストークの軽減効果を説明する。この図は、本実施形態の一実施例に係るプラグコネクタ20において発生するクロストーク、更に言えば、プラグコネクタ20の差動対P1〜P4間において発生するクロストークを、シミュレーションによって評価したものである。横軸は、周波数(GHz)を、縦軸は、挿入損失(dB)を、それぞれ示す。シミュレーションには、ANSYS社製の「ANSYS HFSS」を用いた。条件として、プラグコネクタ20のハウジング21、及び、レセプタクルコネクタ80のハウジング81には、PBT(ポリプチレンテレフタレート)を用いたと仮定した。試験基準は、IEEE802.3に基づき、カテゴリー5eにおける挿入損失の規格値よりも小さいか否かについて解析した。グラフ中、例えば、「P4+P2」は、差動対P4と差動対P2の間に生ずる挿入損失を示している。
図8から明らかなように、本構成によれば、差動対間の挿入損失は、いずれも規格値をクリアしている。尚、「P1+P4」については、規格値よりもかなり小さいため、グラフ上には現れていないだけで、規格値を大きくクリアしたものとなっている。よって、本発明によれば、差動対を形成する複数のコンタクトにおいて、クロストークの影響を効果的に軽減するための配列を採用したコネクタが提供される。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、代表的な、4組のツイストペアケーブルに使用されるコンタクトを例に挙げて説明したが、コネクタに使用される芯線の数は、LANケーブルの規格によって異なるものであり、本実施形態に示された技術思想を応用して、4組以外のツイストペアケーブルに使用されるコネクタも、容易に開発することができるだろう。このように、本発明は、他の及び異なる実施形態で構成することもでき、そしてその多数の細部は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、種々の明らかな観点において変更することができる。従って、図面及び説明は、例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 コネクタ装置
20 プラグコネクタ
20a 前面
21 ハウジング(コード管)
27 覆部
27b 内壁
28 挿入空間
29 基部(直交面)
31 収容空間
50 コンタクト
51 本体
53 接触部
80 レセプタクルコネクタ
80a 前面
81 ハウジング(ホルダ)
81a 外壁
81b 内壁
83 環状の外枠
85 被挿入部
85a コンタクト収容部
85b 外壁
89 挿入空間
90 コンタクト
93 接触部