【解決手段】少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分41を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成した車両用シートパッド1において、ビーズ発泡成形体の主部2Aを主構成にして、突抜け穴20を有する環状に成形されている外芯体2と、ブロック状のビーズ発泡成形体からなり、突抜け穴20に環状隙間εを介在させて配される内芯体3と、環状隙間εを軟質ポリウレタン発泡成形部44で埋め、内芯体3と外芯体2とを埋設一体化している軟質ポリウレタン発泡成形体にして、意匠面4a側に当たり面部分41を有する表層パッド4と、を具備し、外芯体2の裏面22よりも内芯体3の裏面32がその表面31側に凹んで構成され、当たり面部分41側からの外力で内芯体3が裏面32側に可動するようにした。
前記内芯体の表面寄り外側面に外方へ張り出す鍔部が形成され、且つ前記突抜け穴周りに在る前記外芯体の環状表面上に、前記表層パッドに係る軟質ポリウレタン発泡成形部分を介在させて、前記鍔部が載置するようにした請求項1記載の車両用シートパッド。
前記突抜け穴をつくる前記外芯体の内周面が、裏面側が開口するすり鉢状に形成され、且つ前記内芯体が、その裏面に向け、前記突抜け穴に合わせて錐台状に径が次第に減少している請求項1記載の車両用シートパッド。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜
図4は本発明のシートパッドの一形態で、クッションパッドに適用する。
図1はシートパッドを裏面側から見た斜視図、
図2は
図1のII-II線断面図、
図3は
図2の状態から着座乗員の荷重が加わった際の説明断面図、
図4はシートパッドを表面側から見た斜視図を示す。シートパッドの裏面側を表す
図1は紙面上方がシートパッドの車両前方になり、
図2は車両設置の姿態にしたシートパッドの断面図で、紙面左方が車両前方になる。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
【0010】
車両用シートパッド1は乗員が当接する側が意匠面4a側となる。そして、車両用シートパッド1は、外芯体2と内芯体3と表層パッド4とを具備し、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分41が表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡成形体で形成される。表層パッド4よりも見掛け密度が小の芯体を、外周部の環状外芯体2と内側の内芯体3とに分割し、両者間に表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡成形部44を介在させ且つ内芯体3を
図2のごとく上方へ突き上げた状態にして、表層パッド4が成形されている。
【0011】
外芯体2は、ビーズ発泡成形体の主部2Aを主構成にして、突抜け穴20を有する環状成形された軽量ブロックである。本実施形態の外芯体2は、発泡ポリプロピレン(EPP)のビーズ発泡成形体で、その見掛け密度は軟質ポリウレタン発泡成形体からなる表層パッド4の見掛け密度よりも小さい。
図1,
図2のごとく、シートパッド1の外周沿いに該外周よりもやや小さめの外周面24を有し、且つ内周面23内に突抜け穴20が開いた環状ブロックで外芯体2の主部2Aを構成する。外芯体2の表面21から裏面22へ貫通する突抜け穴20は、表層パッド4の当たり面部分41の真下に配される。
シートパッド1の成形に先立ち、予め車両取付け具のU字形フック2Bをインサート品にして該主部2Aをビーズ発泡成形し、外芯体2を得る。車両取付け具であるU字形フック2Bがインサートされてビーズ発泡成形体からなる主部2Aが成形されている。U字形フック2Bは、外芯体裏面22の車両前方側に二つ、車両後方側に一つ配され、それぞれの頭部分が露出するようにして主部2Aに埋設一体化する。
【0012】
ここで、本発明でいう「ビーズ発泡成形体」とは、いわゆるビーズ発泡法によって得られた発泡成形体で、原料ビーズを予備発泡成形させた後、型内発泡成形によって成形されている発泡成形体をいう。外芯体2や内芯体3のようなブロック状の発泡成形体である。ビーズ発泡法は単にビーズ法ともいう。ビーズ発泡成形体は、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、又はこれらのうち一つを少なくとも含む成形体であるのが好ましい。気泡が内部に密閉されたビーズ発泡成形体となっており、且つ体積の大部分が気体で軽量にして、発泡倍率を上げることによって、その見掛け密度を軟質ポリウレタン発泡成形体の見掛け密度よりも容易に小さくできる。
【0013】
また、前記U字形フック2Bが接続する環状ワイヤ2Bが外芯体2に埋設されている。環状ワイヤ2Bは、突抜け穴20よりも一回り大きなリング形状にして、環状に成形された主部2Aの断面内部に配され、
図2のごとく主部2Aの環状に沿う形で埋設一体化される。U字形フック2Bはその最も近い環状ワイヤ2Bの箇所に接続固定する。
さらに、外芯体2の裏面22には、
図2のごとく表皮端部91をシートパッド1に係止固定するための固定用溝25が形成される。固定用溝25は、シートパッド1の裏面1bで、
図1のごとく外芯体2の裏面側外周縁241に沿って所定間隔で複数設けられる。
【0014】
内芯体3は、ビーズ発泡成形体からなるブロック状の塊で、前記外芯体2の突抜け穴20に環状隙間εを介在させて配される(
図2)。内芯体3は、外芯体2の主部2Aと同様、発泡ポリプロピレン(EPP)のビーズ発泡成形体からなり、その見掛け密度が軟質ポリウレタン発泡成形体からなる表層パッド4の見掛け密度よりも小さい。さらにここでは、内芯体3の発泡倍率を外芯体2の発泡倍率よりも高くして、内芯体3を該外芯体2よりも一段と軽くしている。
内芯体3は当たり面部分41を直接受けるように
図2のごとくその真下に配され、内芯体表面31が、表層パッド4の発泡成形で、当たり面部分41の内面4bに当接一体化する。内芯体3の裏面32は、外芯体2の裏面22よりも内芯体3の表面31側に凹んでいる。そのため、外芯体裏面22側の内周面23が露出する(
図1)。この外芯体2の該内周面23と内芯体3の裏面32と両者間に介在する軟質ポリウレタン発泡成形部44の裏面とでシートパッド裏面1bが開口の凹所を構成する。そしてこの凹所が空きスペース6をつくる。
【0015】
空きスペース6は、内芯体3の裏面32が外芯体2の裏面22よりも内芯体表面31側に凹んで配されることによって、シートパッド1が車両に載置された際、内芯体裏面32側に形成される空間である。該空きスペース6を設けて、当たり面部分41側からの外力で内芯体3が裏面32側に可動する(沈み込める)ようにしている。例えば、
図2のシートパッド1に乗員が着座すると、内芯体3が下面開口の空きスペース6内に沈み込んで
図3のようになる。
図3の点線は
図2の表皮9の当初位置を便宜的に示したものである。クッション性に乏しい硬質発泡体で保形性のある内芯体3が当たり面部分41の下に存在しても、着座乗員の体重に合わせて軟質ポリウレタン発泡成形部44が弾性変形し、内芯体3が空きスペース6内に落ち込むことによって、従来と同様のクッション性が備わっているように乗員に感じさせる。
尚、外芯体裏面22よりも内芯体裏面32が凹んでいる状態にある
図2の高さhは、乗員が着座した時に最悪でも
図3の状態の直前で止まり、内芯体裏面32が車両床面に底付きしないように設定するのがより好ましい。
【0016】
表層パッド4は、意匠面4a側に乗員が当接する側の当たり面部分41を有して、内芯体3と外芯体2とを埋設一体化している軟質ポリウレタン発泡成形体である。既述のごとく外芯体2とその突抜け穴20に配した内芯体3との間に環状隙間εが設けられる。該環状隙間εが表層パッド4の一部を構成する軟質ポリウレタン発泡成形部44で埋められ、これを介在させて内芯体3と外芯体2とが表層パッド4に埋設一体化されて、シートパッド1になる。
表層パッド4は、シートパッド1の発泡成形型に前記内芯体3及び外芯体2をセットした後、軟質ポリウレタン発泡原料を注入すると共に型閉じし、内芯体3,外芯体2と一体発泡成形されることによって得られる。シートパッド1は、その発泡成形型に外芯体2,内芯体3を保持しておいて、表層パッド4の一体発泡成形でできた複合製品である。表層パッド4の発泡成形過程で、着座乗員の当たり面部分41やパッド側面43の部位等と共に、発泡原料が内芯体3と外芯体2との環状隙間εに浸入して、軟質ポリウレタン発泡成形部44を形成し、軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド4が内芯体3と外芯体2とを一体化する。
【0017】
ここで、前記外芯体2,内芯体3を構成するビーズ発泡成形体には、表層パッド4の軟質ポリウレタン成形体のようなクッション性はない。しかし、環状隙間εに介在するクッション性に富む表層パッド4の軟質ポリウレタン発泡成形部44が在ることによって、車両組付け下のシートパッド1において内芯体3に動きが生まれる。軟質ポリウレタン発泡成形部44の弾性変形が内芯体3の動きに融通性を持たせている。加えて、
図2のごとく、内芯体3の裏面32側に内芯体3の平面視大きさよりも大きな平面視大きさの空きスペース6が形成されている。
図2の紙面上方から見た空きスペース6の平面視大きさは、内芯体3の平面視大きさに軟質ポリウレタン発泡成形部44の厚みが加わった平面視大きさになっている。乗員の着座時に、快適なクッション性を付与する当たり面部分41が多少薄くなっても、さらにシートパッド1の内部にクッション性に乏しい内芯体3が存在しても、内芯体3が空きスペース6内に入り込むことで、良好なクッション性が得られる。
【0018】
本表層パッド4は、
図2でいえば、着座乗員の当たり面部分41側となる上面側の部分を形成するだけでなく、パッド側面43や車両後方に向かう斜面4D、さらにバックレストの合わせ面4Eに表層パッド4の表層部を形成する。同図で、表層パッド4の下縁部分42は外芯体2の裏面側外周縁241まで覆っており、シートパッド1の見栄えを良くしている。
尚、本シートパッド1が出来上がり、車両取付け姿態の
図2の状態にすれば、外芯体2に組み込んだ前記U字形フック2Bは、一方が下向きに、他方が水平車両後方に突き出す格好となる(
図2,
図3)。図中、符号4Aは表層パッド4の乗員が着座するメイン座部、符号4Bはサイド部、符号4Cは補助部、符号49は表層パッド4の吊溝で、符号491は縦溝、符号492は横溝を示す。
【0019】
(2)実施形態2
本実施形態は
図5ごとくのシートパッド1である。実施形態1のシートパッド1を発展させ、底付き防止対策用の鍔部33を内芯体3に設けたものである。内芯体3の表面寄り外側面34で、水平外方へ張り出す鍔部33が外側面34を周回するように隆起形成される。突抜け穴20周りに在る外芯体2の環状表面21上に、表層パッド4に係る軟質ポリウレタン発泡成形部分45を介在させて、内芯体3の該鍔部33が載置するシートパッド1になっている。鍔部33を形成する外周部の裏面322は平らにし、これに対向する外芯体2の表面21も平らにして、該表面21と外周部裏面322との間に介在する軟質ポリウレタン発泡成形部分45の厚みfを外周部裏面322の全域に亘って略同じにする。着座乗員の体重を受けて下方へ動く内芯体3の動作バランスが良くなる。そして、鍔部33が外芯体2の環状表面21に載ることで、内芯体3が下に抜け落ちることを防止する。また軟質ポリウレタン発泡成形部分45の厚みfよりも空きスペース6の高さhを高く設定して、着座乗員による内芯体3の底付き前に、軟質ポリウレタン発泡成形部分45を介して外芯体2の環状表面21上に載る鍔部33が内芯体3の下動を阻止するストッパとして働き、内芯体3の底付きをなくす。尚、本実施形態の内芯体3は、実施形態1と異なり、環状ワイヤ3Cを埋設一体化したブロック状のビーズ発泡成形体になっている。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0020】
(3)実施形態3
本実施形態は
図6ごとくのシートパッド1である。実施形態1の突抜け穴20をつくる前記外芯体2の内周面23を裏面側が開口するすり鉢状に形成する。且つ軟質ポリウレタン発泡成形部44が埋まる環状隙間εを確保しながら、すり鉢状になった外芯体2の内周面23に合わせて、内芯体3はその裏面32に向けて錐台状に径が次第に減少するビーズ発泡成形体になっている。そして、外芯体2の内周面23上に、乗員の着座に伴い軟質ポリウレタン発泡成形部44を最大限圧縮変形させて載る内芯体3にあっても、その内芯体3が下に抜け落ちることがない。また、外芯体2の内周面23上に、内芯体3が軟質ポリウレタン発泡成形部44を最大限圧縮変形させて載った場合に、その内芯体裏面32が外芯体裏面22(シートパッド裏面1b)のレベルまでは沈み込まない空きスペース高さhが設定される。空きスペース高さhに関しては、錐台状内芯体3から真下のすり鉢状外芯体2の内周面23までの距離よりも単純に高く設定すれば、乗員着座時に内芯体3が簡便且つ確実に底付きしないようにできる。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】
(4)効果
このように構成した車両用シートパッド1は、ビーズ発泡成形体の外芯体2との他に、特許文献1における「表層パッドの裏側中央に下方に膨出する膨出部」の部位にビーズ発泡成形体からなる内芯体3を配するので、シートパッド1のなかで、表層パッド4の占める割合が一段と低くなる。ウレタン発泡体の膨出部がビーズ発泡成形体からなる軽量の内芯体3に置き換わるので、シートパッド1の軽量化が進む。内芯体3の裏面位置が外芯体2の裏面位置より表面1a側に凹んでいることによって空きスペースができ、シートパッド1の軽量化はさらに進む。
【0022】
一方、環状外芯体2の突抜け穴20に環状隙間εを介在させて内芯体3を配し、該環状隙間εをクッション性のある軟質ポリウレタン発泡成形部44が埋めている。加えて、内芯体3の裏面位置が外芯体2の裏面位置より表面1a側に凹んでいることによって空きスペース6ができ、当たり面部分41側からの外力で内芯体3が裏面1b側(空きスペース6内)に沈み込めるようにしているので、当たり面部分41上に乗員が着座した時に、当たり面部分41のクッション性に加え、内芯体3が乗員荷重を受けて空きスペース6内へ沈み込んで良好なクッション性を得ることができる。特許文献1の軟質ポリウレタン発泡体からなる膨出部に頼らずに、さらにビーズ発泡成形体からなる硬質の内芯体3であっても、着座乗員の体重に合わせて内芯体3が下動することによって、クッション性が備わっているように乗員に感じさせる(
図2,
図3)。尚、着座乗員がシートパッド1から離れれば、軟質ポリウレタン発泡成形部44は、当たり面部分41と同様、弾性復元して元通りになる。これに連動して内芯体3も元通りに復帰するので何の問題も起こらない。
【0023】
また、内芯体3に鍔部33を設けて、外芯体2の環状表面21上に軟質ポリウレタン発泡成形部分45を介在させて載置させると、内芯体3が下に抜け落ちることを防止できる。また、この軟質ポリウレタン発泡成形部分45の厚みfよりも空きスペース高さhを高く設定することにより、鍔部33がストッパになって乗員が着座した時の底付きを簡便になくすことができる(
図5)。乗員が着座した時に内芯体3がその体重を受けて下動するが、底付きする前に、弾性圧縮状態にした軟質ポリウレタン発泡成形部分45を介して、外芯体2の環状表面21に置かれた鍔部33が下動を阻止する。このような構成で、底付き問題は容易に解消できる。
また、突抜け穴20をつくる外芯体2の内周面23が、裏面が開口するすり鉢状に形成され、且つ内芯体3が、その裏面32に向け、該内周面23に合わせて錐台状に径が次第に減少している構成にしても、内芯体3が下に抜け落ちることを防止できると共に底付きを簡便になくすことができる。
図6で、空きスペース6の高さhを、錐台状内芯体3から真下のすり鉢状外芯体2の内周面23までの距離よりも高く設定すれば、弾性圧縮状態の軟質ポリウレタン発泡成形部44を介して、内芯体3の錐台状外側面34がすり鉢状外芯体2の内周面23によって下動を阻止されるので、乗員の着座によって内芯体3が底付きすることはない。尚、
図5,
図6で、着座乗員の荷重を受けて、少なくとも圧縮状態が最大になる軟質ポリウレタン発泡成形部分45や軟質ポリウレタン発泡成形部44の厚みが存在するので、この厚み分だけ上述した空きスペース高さhは小さくしても、底付き問題は解消できる。
【0024】
加えて、外芯体2と内芯体3は別体構成にある。実施形態のごとく、取付け位置に精度が要求されるU字形フック2Bや表皮端部91の固定用溝25を外芯体2に設けると、この外芯体2に限って取付け位置精度を保てる発泡倍率にして、内芯体3の発泡倍率を簡単に変更できる。内芯体3が外芯体2に係る主部2Aのビーズ発泡成形体よりも発泡倍率を高くしたビーズ発泡成形体からなるよう設定すると、取付け位置精度の制約を受けない内芯体3を極めて軽いものにできる。さらなる軽量化を推進できる所望のシートパッド1になる。
このように本車両用シートパッド1は、上述した種々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0025】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッド1,外芯体2,内芯体3,表層パッド4等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態は座部用クッションパッドにしたが、背もたれ用バックパッドにも適用できる。上記実施形態では、車両取付け具にU字形フック2Bを例に挙げたが、これに限らず、例えば車両に係合するクリップなどを用いてもよい。