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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-143653(P2018-143653A)
(43)【公開日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】柔軟関節機構
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/008 20060101AFI20180824BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20180824BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20180824BHJP
   A61B 1/05 20060101ALI20180824BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20180824BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20180824BHJP
【FI】
   A61B1/008 511
   A61B1/008 512
   A61B1/06 531
   G02B23/24 A
   A61B1/05
   A61B1/00 711
   A61B1/04 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-44044(P2017-44044)
(22)【出願日】2017年3月8日
(71)【出願人】
【識別番号】315004731
【氏名又は名称】株式会社イチワ
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 一重
(72)【発明者】
【氏名】林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 修
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英次
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠二
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA21
2H040DA14
2H040DA19
4C161AA00
4C161AA29
4C161BB02
4C161BB04
4C161CC06
4C161DD02
4C161DD03
4C161FF33
4C161FF43
4C161HH32
4C161HH47
4C161LL02
4C161LL08
(57)【要約】
【課題】柔軟関節機構の機械的強度を強くして屈曲時の曲率を大きくすること。
【解決手段】柔軟関節機構は、軸方向に配設された平板リング状の関節子であって、周辺部の直交する4箇所に形成され軸方向に貫通する制御ワイヤ貫通孔と、周辺部から中央部に向けて形成されたリムの中央部に形成され軸方向に貫通するテンションワイヤ貫通孔とを有した複数の関節子を有する。さらに、関節孔の中央部で隣接する関節子間に配設され貫通孔を有した球体と、各関節子の対応位置に存在する制御ワイヤ貫通孔を貫通し、保護管体の屈曲姿勢を制御する制御ワイヤと、各関節子の各テンションワイヤ貫通孔及び球体の貫通孔を軸方向に貫通するテンションワイヤとを有する。
【選択図】図2.A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を屈曲可能とする柔軟関節機構において、
前記軸方向に配設された平板リング状の関節子であって、周辺部の直交する4箇所に形成され前記軸方向に貫通する制御ワイヤ貫通孔と、周辺部から中央部に向けて形成されたリムの中央部に形成され前記軸方向に貫通するテンションワイヤ貫通孔とを有した複数の関節子と、
前記関節孔の前記中央部で隣接する前記関節子間に配設され貫通孔を有した球体と、
前記各関節子の対応位置に存在する前記制御ワイヤ貫通孔を貫通し、前記柔軟関節機構の屈曲姿勢を制御する制御ワイヤと、
前記各関節子の前記各テンションワイヤ貫通孔及び前記球体の前記貫通孔を前記軸方向に貫通するテンションワイヤと
を有することを特徴とする柔軟関節機構。
【請求項2】
軸方向を屈曲可能とする柔軟関節機構において、
前記軸方向に配設された平板リング状の関節子であって、周辺部の直交する4箇所に形成され前記軸方向に貫通する制御ワイヤ貫通孔と、周辺部から中央部に向けて形成されたリムの中央部に形成され、中央部の一方面側には凹部が他方面側には隣接する関節子の凹部と摺動可能に係合する凸部とが形成され、前記凹部及び前記凸部を前記軸方向に貫通するテンションワイヤ貫通孔とを有した複数の関節子と、
前記各関節子の対応位置に存在する前記制御ワイヤ貫通孔を貫通し、前記柔軟関節機構の屈曲姿勢を制御する制御ワイヤと、
前記各関節子の前記各テンションワイヤ貫通孔を前記軸方向に貫通するテンションワイヤと
を有することを特徴とする柔軟関節機構。
【請求項3】
前記関節子の前記制御ワイヤ貫通孔は、屈曲の根元部では前記制御ワイヤを操作する側に近づくに連れて、前記軸の中心に近づく位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の柔軟関節機構。
【請求項4】
前記軸方向に配設された一連の前記関節子は、屈曲性の管状体の中に挿入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の柔軟関節機構。
【請求項5】
最先端にある関節子又はその関節子に接続された台子に、前記制御ワイヤ及び前記テンションワイヤの先端が固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の柔軟関節機構。
【請求項6】
先端部には、照明用のLED、撮像カメラが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の柔軟関節機構。
【請求項7】
前記撮像カメラは、前記軸の先端に設けられて軸方向を撮像する正面カメラと、前記軸の周囲方向を撮像する側視カメラとを有することを特徴とする請求項6に記載の柔軟関節機構。
【請求項8】
先端部には、被撮像物を洗浄し又は蛍光体を塗布するための液噴射口が設けられ、液噴射口に液を輸送するパイプが前記関節子を前記軸方向に貫通していることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の柔軟関節機構。
【請求項9】
前記関節子の前記軸方向の厚さは0.2mm以上、1.0m以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の柔軟関節機構。
【請求項10】
前記関節子の直径は、2mm以上、10mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の柔軟関節機構。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の柔軟関節機構を有したボアスコープ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の柔軟関節機構を有した内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向を屈曲可能とした柔軟関節機構に関する。特に、内視鏡やボアスコープに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、狭間部を観察する内視鏡には柔軟関節機構が用いられている。下記特許文献1〜5に開示の技術が知られている。特許文献1−3に開示されている技術では、中心軸方向に一定の長さのある円筒状の関節駒(節輪、湾曲駒)が用いられている。説明を分かり易くするため、柔軟関節機構の中心軸をz軸、柔軟関節機構の先端方向を+z軸方向とし、関節駒の+z軸側の端面を表端面、−z軸側の端面を裏端面とする。
【0003】
この関節駒の表端面には、z軸に垂直な方向の一対の位置において、外周側面から+z軸方向に伸びた一対の表突起が設けられている。これらの表突起にはz軸に垂直な方向に貫通した係合孔が形成されている。また、同一の関節駒の裏端面には、表突起の形成位置に対してz軸の周りに90度回転した一対の位置において、外周側面から−z軸方向に伸びた一対の裏突起が設けられている。これらの突起にはz軸に垂直な方向に貫通した係合孔が形成されている。
【0004】
任意の隣接する3連の関節駒に注目し、真ん中の関節駒を注目関節駒、この注目関節駒に対して+z軸側に位置する関節駒を+z軸側関節駒、−z軸側に位置する関節駒を−z軸側関節駒と定義する。+z軸側関節駒の裏突起の係合孔と注目関節駒の表突起の係合孔とが一致するように、+z軸側関節駒はz軸周りに回転されて配置されている。そして、これらの係合孔はリベットとピンとで、回動可能に連結されている。これらの係合孔の法線はz軸に垂直な方向であり、この方向をx軸とする。したがって、回動軸はx軸となる。
【0005】
また、−z軸側関節駒の表突起の係合孔と特定関節駒の裏突起の係合孔とが一致するように、−z軸側関節駒はz軸周りに回転されて配置されている。そして、これらの係合孔はリベットとピンとで、回動可能に連結されている。これらの係合孔の法線はz軸に垂直な方向であり、この方向をy軸とする。したがって、回動軸はy軸となる。
【0006】
上記の柔軟関節機構においては、注目関節駒に対して、+z軸側関節駒はx軸の周りに回動し、−z軸側関節駒はy軸の周りに回動する。これにより、柔軟関節機構は、そのz軸方向が任意の方位に向かうように屈曲可能となる。
【0007】
また、特許文献4に開示の技術では、上記の特許文献1−3の開示の技術が、突起の係合孔により関節駒をx軸又はy軸の周りに回動自在としているのに対して、各関節駒の表端面が、z軸に垂直な一方向における一対の位置において+z軸方向に突出させて山部を形成し、裏端面は平坦面としたことを特徴としている。そして、注目関節駒の一対の山部がx軸方向に配設され、+z軸側関節駒及び−z軸関節駒の一対の山部はy軸方向に配設されている。このような構造の関節駒が連接して配設されることで、+z軸側関節駒は注目関節駒に対してx軸回りに回動し、−z軸側関節駒は注目関節駒に対してy軸回りに回動することになる。これにより、柔軟関節機構は、そのz軸方向が任意の方位に向かうように屈曲可能となる。
【0008】
また、特許文献5には、軸方向に一定の長さを有した円筒状で円筒内部に十字状壁を有した節輪による連接構造が開示されている。その節輪は十字状壁の交点部の+z軸側端面に+z軸方向に伸びた細長い軸体とその先端に球体部とを有し、−z軸側端面には−z軸方向に伸びた細長い軸体とその先端に球状の穴部とを有している。そして、隣接する節輪の一方の軸体の球体部を他方の軸体の穴部に係合させることで、一方の節輪を他方の節輪に対して回動可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】平成10−14862
【特許文献2】特開2012−196269
【特許文献3】特開2008−48788
【特許文献4】特開平11−253387
【特許文献5】特開2007−97883
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示の技術では、円筒状の関節駒の表端面においては外周側面から+z軸方向に表突起が突出し、裏端面においては−z軸方向に裏突起が突出する構造となっている。このため、関節駒のz軸方向の長さがある程度必要となり、x軸とy軸とのz軸方向の間隔が長くなり、しかも、隣接するx軸間の間隔及びy軸間の間隔はx軸とy軸との間隔の2倍と長くなる。すなわち、任意方向の屈曲には隣接する2つの関節駒が必要となり、柔軟関節機構の曲率半径を小さくできないという欠点があった。
【0011】
また、特許文献4に開示の技術では、山部を形成するために関節駒のz軸方向の厚さに傾斜を付ける必要があることから、関節駒の厚さをある程度必要とした。また、一連の関節駒においてx軸とy軸とのz軸方向の位置が交互に表れ、隣接するx軸間の間隔及びy軸間の間隔はx軸とy軸との間隔の2倍と長くなる。すなわち、任意方向の屈曲には隣接する2つの関節駒が必要となり、柔軟関節機構の曲率半径を小さくできないという欠点があった。
【0012】
また、特許文献5に開示の技術では、一方の節輪における先端に球体部を有する細長い軸体と、隣接する他方の節輪の先端に球状の穴部を有する細長い軸体とを係合させている。このため、屈曲させる時の隣接する節輪間の最大傾斜角は節輪の半径に対する軸体の長さの比で決定され、曲率半径はこの傾斜角と節輪のz軸方向の長さとの比で決定される。軸体は十字状壁の端面に形成されており、軸体の機械的強度を保持するには十字状壁のz軸方向の長さ、すなわち、節輪のz軸方向の厚さをある程度必要とした。この結果として、大きな曲率を実現することは困難であった。また、軸体は細くて長いものであるので、その強度も課題であった。
さらには、特許文献1−5の技術では、屈曲した後に直線へ復帰する復元力がなく、直線への復元精度や直線の精度の高い姿勢保持が困難である。
【0013】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は機械的強度を強くして屈曲時の曲率を大きくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための発明の構成は、軸方向を屈曲可能とする柔軟関節機構において、軸方向に配設された平板リング状の関節子であって、周辺部の直交する4箇所に形成され軸方向に貫通する制御ワイヤ貫通孔と、周辺部から中央部に向けて形成されたリムの中央部に形成され軸方向に貫通するテンションワイヤ貫通孔とを有した複数の関節子と、関節孔の中央部で隣接する関節子間に配設され貫通孔を有した球体と、各関節子の対応位置に存在する制御ワイヤ貫通孔を貫通し、柔軟関節機構の屈曲姿勢を制御する制御ワイヤと、各関節子の各テンションワイヤ貫通孔及び球体の貫通孔を軸方向に貫通するテンションワイヤとを有することを特徴とする。
【0015】
また、他の本発明は、軸方向を屈曲可能とする柔軟関節機構において、軸方向に配設された平板リング状の関節子であって、周辺部の直交する4箇所に形成され軸方向に貫通する制御ワイヤ貫通孔と、周辺部から中央部に向けて形成されたリムの中央部に形成され、中央部の一方面側には凹部が他方面側には隣接する関節子の凹部と摺動可能に係合する凸部とが形成され、凹部及び凸部を軸方向に貫通するテンションワイヤ貫通孔とを有した複数の関節子と、各関節子の対応位置に存在する制御ワイヤ貫通孔を貫通し、柔軟関節機構の屈曲姿勢を制御する制御ワイヤと、各関節子の各テンションワイヤ貫通孔を軸方向に貫通するテンションワイヤとを有することを特徴とする。
【0016】
上記両発明において、周辺部と中央部とを結ぶリムは180度の間隔で設けられていても、周辺と中央部とを結ぶリムが90度の間隔で設けられていても良い。周辺と中央部とを結ぶリムは120度の間隔で設けられていても、任意の角度間隔で設けられてていも良い。リムが存在しない空間は、柔軟関節機構の先端に設けられる電子機器に対する給電線や電子機器からの信号線や洗浄液などを輸送するパイプを配置するために利用される。リムの形状は短冊形状、台形形状、その他、中央部に向かうに連れて幅が広くなる又は逆に狭くなるような、輪郭の平行な2線が双曲線、放物線などであっても良い。
【0017】
上記の両発明において、関節子の制御ワイヤ貫通孔は、屈曲の根元部では制御ワイヤを操作する側に近づくに連れて、軸の中心に近づく位置に形成することが望ましい。このように構成すると制御装置に接続される細いライナーチューブに制御ワイヤを容易に導入できる。また、軸方向に配設された一連の関節子は露出していても良いが、屈曲性の管状体の中に挿入されていることが望ましい。関節子を外部から保護することができる。
【0018】
また、最先端にある関節子又はその関節子に接続された台子に、制御ワイヤ及びテンションワイヤの先端が固定されている。台子は関節子と同形の円筒物や、その他、カメラやLED等の先端機器が装着される任意の基台一般を含む。これにより、一対の制御ワイヤを制御器に導いてループとして、このループを回転させることで、柔軟関節機構を屈曲させることができる。
【0019】
先端部に設けられる機器は任意であるが、照明用のLED、撮像カメラなどである。狭間部に挿入して内部を観察する峡間観察器とすることができる。撮像カメラは、軸の先端に設けられて軸方向を撮像する正面カメラと、軸の周囲方向を撮像する側視カメラとを有するようにしても良い。正面カメラは柔軟関節機構の挿入方向を制御するための画像の取得に用いられる。側視カメラは環境の撮像に用いられる。また、先端部には、被撮像物を洗浄し又は蛍光体を塗布するための液噴射口が設けられ、液噴射口に液を輸送するパイプが関節子を軸方向に貫通しているようにしても良い。環境の被測定物を洗浄し又は蛍光体を塗布して被測定物の鮮明な画像を得ることができる。
【0020】
関節子の軸方向の厚さは0.2mm以上、1.0m以下とすることができる。これにより柔軟関節機構の曲率をより大きくすることができる。また、関節子の直径は、2mm以上、10mm以下とすることができる。関節子は平板リング状であることから直径の小さな精度良い加工が可能となる。これにより、より狭い空間の撮像や操作などが可能となる。本発明の柔軟関節機構は峡間部に挿入して撮像するボアスコープや内視鏡に用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、関節子を平板リング状に形成しているので、関節子の軸方向の厚さにより曲率が制限されることがない。したがって、屈曲の曲率を大きくすることができる。また、隣接する関節子の間隔は中央部に設けられた球体又は凸部の大きさで決定でき、この間隔を適正に設定することで曲率を大きくすることができる。また、関節子の軸方向の厚さが薄いので、軸方向に関節子を多数配置することができ、滑らかな屈曲を実現することができる。また、関節子の中央部をテンションワイヤが貫通しているので、柔軟関節機構を屈曲した後の直線に戻るときに復元力を発生させることができ、屈曲が滑らかにできると共に直線への精度高い復帰が容易となる。また、屈曲させないときに精度の高い直線姿勢を保持することができる。さらには、テンションワイヤにより多数回の屈曲に対しても破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の具体的な一実施例に係る柔軟関節機構を用いたボアスコープの全体を示した構成図。
図2.A】同実施例に係る柔軟関節機構の構成図。
図2.B】同実施例に係る柔軟関節機構の構成図。
図3】柔軟関節機構の一要素の関節子の構成図。
図4】関節子の結合関係を示した説明図。
図5】柔軟関節機構を作動させたときの形状を示した説明図。
図6】他の実施例に係る柔軟関節機構における関節子の結合関係を示した説明図。
図7】同実施例に係る柔軟関節機構の全体を示した構成図。
図8】変形例に係る関節子の形状を示した構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
本実施例は、本発明の柔軟関節機構をボアスコープに応用した例である。図1は本実施例に係るボアスコープ1の全体の構成を示している。ボアスコープ1は、本体70、ライナーチューブ71、柔軟関節機構10、先端機器60を有している。本体70には撮像した画像を表示するためのディスプレイ72、柔軟関節機構10の屈曲姿勢を指令するためのトラックボール73が設けられている。柔軟関節機構10と本体70とはライナーチューブ71で接続されている。柔軟関節機構10の先端には先端機器60が配設されている。円筒状の筐体を有する先端機器60は、先端に設けられた正面カメラ61、側面に設けられた側視カメラ62、環境を照明するLED63、洗浄液や蛍光体液を噴射する噴射口64が設けられている。正面カメラ61は撮像環境である峡間に先端機器60と柔軟関節機構10を円滑に導く経路を撮像し、ディスプレイ72に表示するためのカメラである。作業者はディスプレイ72の画像を確認しながら柔軟関節機構10の姿勢を制御し先端機器60の進入経路を決定する。側視カメラ62は、LED63で照明された環境の目的とする画像を撮像しディスプレイ72に表示するカメラである。
【0025】
次に、柔軟関節機構10について詳しく説明する。図2.A、図2.Bは柔軟関節機構10の全体の構成を示している。多数枚の平板リング状の関節子11が軸(z軸)方向に連続して配設されている。先端部分は先端機器60が配設される先端台子13、後端部分はライナーチューブ71と接続するための後端台子14が設けられている。
【0026】
関節子11は、図2.A、図2.B、図3図4に示す構造をしている。図3に示すように、関節子11は円形リング状の周辺部21と周辺部21から中央部に伸びた直線状のリム22とで構成されている。周辺部21にはz軸の回りに90度間隔で4個の制御ワイヤ貫通孔23a、23c、23b、23dが形成されている。リム22の中央部にはテンションワイヤ貫通孔24が形成されている。テンションワイヤ貫通孔24の直径は後述する球体27の一部が係合するように
図3に示すように、各関節子11の制御ワイヤ貫通孔23a〜23dの半径方向の形成位置は、柔軟関節機構10の根元部(−z軸側)に近づくに連れて、中心軸(z軸)に接近するように形成されている。これにより後述する制御ワイヤが中心軸方向に変位して、径の細いライナーチューブ71に挿通し易くしている。なお、図3に表示されているリング13は先端台子13の一部の部品であり、リング14は後端台子14の一部の部品である。
【0027】
図2.A、図2.B、図4に示すように、一連の関節子11の隣接する関節子11の間で関節子11の中央部には、貫通孔を有した球体27が配設されている。テンションワイヤ貫通孔24の直径は関節子11の両端面(+z軸側端面、−z軸側端面)に向かうに連れて拡大している。これにより、隣接する2つの関節子11の間に位置する球体27は、その表面の一部が両テンションワイヤ貫通孔24に摺動可能に係合している。最先端の関節子11とその手前(−z軸側)の関節子11との間には球体27に代えて、リング状の圧縮コイルバネ28が配設されている。これにより姿勢制御の安定化が図られている。そして、テンションワイヤ26が一連の関節子11の中央部に形成されたテンションワイヤ貫通孔24と球体27の貫通孔を挿通している。テンションワイヤ26の先端は、z軸方向の長さが長い筒状体の側壁から中央にリムが形成された先端台子13(図示略)のリムの中央部に固定され、後端は中央にリムが形成された後端台子14(図示略)の中央部に固定されている。
【0028】
一連の関節子11の制御ワイヤ貫通孔23aには制御ワイヤ25aが貫通し、制御ワイヤ貫通孔23bには制御ワイヤ25bが貫通している。制御ワイヤ25aと制御ワイヤ25bの先端は台子13に固定されている。制御ワイヤ25aと制御ワイヤ25bはライナーチューブ71の中を通り本体70内の図示しないx軸プーリに接続されている。このプーリがトラックボール73の指示により図示しないx軸パルスモータにより回転駆動される。また、一連の関節子11の制御ワイヤ貫通孔23cには制御ワイヤ25cが貫通し、制御ワイヤ貫通孔23dには制御ワイヤ25dが貫通している。制御ワイヤ25cと制御ワイヤ25dの先端は台子13に固定されている。制御ワイヤ25cと制御ワイヤ25dはライナーチューブ71の中を通り本体70内の図示しないy軸プーリに接続されている。このy軸プーリがトラックボール73の指示により図示しないy軸パルスモータにより回転駆動される。
【0029】
なお、関節子11はステンレス、制御ワイヤ25a〜25dはステンレス、テンションワイヤ26はチタンで形成されている。制御ワイヤ、テンションワイヤは、ステンレス、チタン、ピヤノ線(鋼)を用いることができる。また、関節子11の厚さ(z軸方向の長さ)は0.5mm、直径は3.7mm、隣接する関節子11の間隔は0.45mm、制御ワイヤ貫通孔23a〜23dの直径は0.25mm、テンションワイヤ貫通孔24の直径は0.45mmである。また、球体27の直径は0.8mm、その貫通孔の直径は0.35mmである。球体27と開口部の径が拡大されたテンションワイヤ貫通孔24との係合深さは0.175mmである。関節子11の厚さは0.2mm以上、1.0m以下、直径は2mm以上、10mm以下、球体の直径は0.3mm〜1.5mm、隣接する関節子11間の間隔は0.1mm〜0.5mmであることが望ましい。この範囲にあるとき軸方向の単位長さ当たりの関節子の数を多くとることができ、柔軟関節機構の曲率が小さくでき、屈曲を滑らかにすることができる。この実施例での柔軟関節機構の屈曲時の最大曲率は0.1/mm(最小曲率半径10mm)である。屈曲角度は180度以上が実現できる。
【0030】
トラックボール73の操作により図示しないx軸パルスモータとy軸パルスモータが指令量だけ回転する。x軸パルスモータの回転により制御ワイヤ25a、25bがループ状に回転することで、図5に示すように柔軟関節機構10はz軸に垂直な1方向であるx軸方向に屈曲する。同様に、y軸パルスモータの回転により制御ワイヤ25c、25dがループ状に回転することで、柔軟関節機構10はz軸及びx軸に垂直なy軸方向に屈曲する。トックボール73の操作により、x軸パルスモータとy軸パルスモータとが同時に、それぞれの所定量だけ回転することにより、柔軟関節機構10は、z軸の回りの任意方向に屈曲することになる。
【0031】
柔軟関節機構10はテンションワイヤ26が関節子11の中央部をz軸方向に貫通しているので、柔軟関節機構10には、それが直線となるように復元力が常時、印加されていることになる。これにより、x軸パルスモータとy軸パルスモータを駆動していないときに、柔軟関節機構10の精度の高い直線姿勢を保持することができる。また、直線に戻る復元力が印加されているので、直線に復帰させる操作が滑らかとなる。また、テンションワイヤ26により関節子11の一連の配設機構の機械的強度が強く保持される。
【実施例2】
【0032】
本実施例は、実施例1が関節子11の間に球体27を用いたのに対して、図6に示すように、関節子11の表面(+z軸側)の中央部に凹部30、裏面の中央部に凸部31を設けたことが特徴である。凸部31はリム22と連続して形成された半球台の形状をしている。すなわち、リム22との境界面の半径が最も大きい。凸部31にはテンションワイヤ貫通孔24が形成されている。凹部30はテンションワイヤ貫通孔24の一部として形成され、+z軸側に近い程、半径がテンションワイヤ貫通孔24の半径から徐々に大きくなる半球台形状をしている。凹部30の端面はリム22の端面と同一面である。凸部や凹部の形状は半球、放物錐、放物錘台など任意である。
【0033】
一つの関節子11の裏面の凸部31は、その関節子11の一つ手前(後端台子14側(−z側))の関節子11の表面の凹部30と回動自在に係合する。一連の関節子11の凸部31と凹部30を貫通するテンションワイヤ貫通孔24をテンションワイヤ26がz軸方向に貫通している。図7に示すように、テンションワイヤ26、制御ワイヤ15a〜25dが、実施例1と同様に、一連の関節子11のテンションワイヤ貫通孔24、制御ワイヤ貫通孔23a〜23dを貫通している。その他の構成は実施例1と同一である。
【0034】
なお、凸部31の高さは0.4mmであり、凹部30の深さは0.2mm、凸部31が凹部30と係合したときの関節子11間の間隔は0.2mmである。凸部31の高さは0.2mm〜1.0mm凹部30の深さは0.1mm〜0.5mmで、関節子11間の間隔は0.1mm〜0.5mmであることが望ましい。この範囲のときに、軸方向の単位長さ当たりの関節子11の配設枚数を多くすることができ、曲率を大きくできる。この実施例においても、柔軟関節機構の屈曲時の最大曲率は0.1/mm(最小曲率半径10mm)である。屈曲角度は180度以上が実現できる。
【0035】
[変形例]
図8は、関節子11のリム22の形状、配置位置の他の例を示している。図8(a)に示すように短冊形状のリム22を十字形状、すなわち、リム22を90度間隔で配置しても良い。図8(b)に示すようにリム22を120度間隔で配置しても良い。この場合に制御ワイヤ貫通孔23は図3のように90度間隔で4箇所に設けても良いが、図8(b)に示すようにリム22と周辺部21との接続位置に120度間隔で3箇所に設けても良い。また、図8(c)に示すようにリム22の形状を長方形ではなく幅が中央部に向けて広くなるように、輪郭を曲線形状にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、内視鏡、ポアスコープなど峡間部を撮像する装置の柔軟関節機構として用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…ボアスコープ
10…柔軟関節機構
11…関節子
21…周辺部
22…リム
23a〜23d…制御ワイヤ貫通孔
24…テンションワイヤ貫通孔
25a〜25d…制御ワイヤ
26…テンションワイヤ
27…球体
30…凹部
31…凸部
60…先端機器
70…本体
72…ディスプレイ
73…トラックボール
図1
図2.A】
図2.B】
図3
図4
図5
図6
図7
図8