【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。
【0037】
製造例1、実験例1〜5において使用した装置等は以下の通りである。
高速液体クロマトグラフィー・・・Prominence(登録商標) HPLCシステム(株式会社島津製作所製)
経上皮電気抵抗測定装置・・・Millicell(登録商標) ERS−2(Merck Millipore社製)
リアルタイムPCR・・・Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System II(タカラバイオ株式会社製)
蛍光顕微鏡・・・EVOS(登録商標) FL(ThermoFisher社製)
EMEM培地・・・和光化学株式会社製
【0038】
[製造例1:アガロオリゴ糖の製造]
伊那寒天(登録商標)タイプS−7(伊那食品工業株式会社製)を、特許第4796697号に記載された固体酸を用いる方法で加水分解し、アガロオリゴ糖を調製した。アガロオリゴ糖の構成は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は、カラム(東ソー株式会社製、TSKgel(登録商標) α−2500)を直列2本連結、溶媒H
2O、流速0.3ml/分、温度60℃の条件で溶出、検出はRI(示差屈折)とした。
【0039】
製造例1において得られたアガロオリゴ糖の構成比は以下の通りであった。
アガロビオース(二糖) 26.2重量%
アガロテトラオース(四糖) 27.7重量%
アガロヘキサオース(六糖) 23.1重量%
アガロオクタオース(八糖) 18.9重量%
アガロデカオース(十糖) 4.1重量%
【0040】
[実験例1:アガロオリゴ糖摂取によるタイトジャンクション構成タンパク質の遺伝子発現量の増加]
(実施例1)
ヒト腸管上皮細胞を用いて、アガロオリゴ糖がタイトジャンクション構成タンパク質遺伝子の発現に及ぼす影響を調べた。具体的には、コンフルエント状態に達したヒトCaco−2細胞を、10%ウシ胎児血清を含むEMEM培地中で37℃、5%CO
2の条件下で培養し、分化誘導を行った。3週間の培養後、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定したところ、800Ω・cm
2以上であり、タイトジャンクションが適切に形成されていることを確認した。そこへ、製造例1で得られたアガロオリゴ糖を終濃度2mg/mlになるように添加して、37℃、5%CO
2の条件下で2時間培養した。培養後の細胞を、細胞溶解液(RNAiso Plus(タカラバイオ株式会社製))、イソプロパノール及びエタノールを用いて全RNAを単離した。次いで逆転写酵素を用いてcDNAを調製し、それを鋳型にタイトジャンクション構成タンパク質(Claudin−4、Claudin−7、ZO−1及びOccludin)のmRNA発現量をそれぞれリアルタイムPCRで測定した。コントロールはGADPHとした。
【0041】
(比較例1)
アガロオリゴ糖を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてCaco−2細胞を培養し、タイトジャンクション構成タンパク質のmRNA発現量を測定した。比較例1におけるタイトジャンクション構成タンパク質のmRNA発現量をそれぞれ1として、実施例1におけるタイトジャンクション構成タンパク質のmRNA発現量を
図1に示した。
【0042】
図1に示すように、アガロオリゴ糖を作用させることにより、タイトジャンクション構成タンパク質のmRNA発現量を増加できることが分かった。
【0043】
[実験例2:アガロオリゴ糖摂取によるタイトジャンクション構成タンパク質発現量の増加]
(実施例2)
ヒト腸管上皮細胞を用いて、アガロオリゴ糖がタイトジャンクション構成タンパク質の発現に及ぼす影響を調べた。具体的には、コンフルエント状態に達したヒトCaco−2細胞を、10%ウシ胎児血清を含むEMEM培地中で37℃、5%CO
2の条件下で培養し、分化誘導を行った。3週間の培養後、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定したところ、800Ω・cm
2以上であり、タイトジャンクションが適切に形成されていることを確認した。そこへ、製造例1で得られたアガロオリゴ糖を終濃度2mg/mlになるように添加して、37℃、5%CO
2の条件下で2時間培養した。培養後の細胞を、細胞溶解液とアルコールを用いて全タンパク質を単離した。次いで、β−アクチンをコントロールとしてClaudin−4の発現量をウエスタンブロットで測定した。
【0044】
(実施例3)
アガロオリゴ糖の終濃度が10mg/mlとなるように添加したこと以外は実施例2と同様にしてCaco−2細胞を培養し、Claudin−4の発現量を測定した。
【0045】
(比較例2)
アガロオリゴ糖を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にしてCaco−2細胞を培養し、Claudin−4の発現量を測定した。実施例2及び3、比較例2におけるウエスタンブロットを
図2に示す。また、比較例2におけるClaudin−4発現量を1として、実施例2及び3におけるClaudin−4発現量を
図3に示した。
【0046】
図2及び3に示すように、アガロオリゴ糖を作用させることにより、Claudin−4の発現量を増加できることが分かった。
【0047】
[実験例3:アガロオリゴ糖摂取によるタイトジャンクション構成タンパク質の発現における局在化]
(実施例4)
ヒト腸管上皮細胞を用いて、アガロオリゴ糖がタイトジャンクション構成タンパク質の発現に及ぼす影響を調べた。具体的には、コンフルエント状態に達したヒトCaco−2細胞を、10%ウシ胎児血清を含むEMEM培地中で37℃、5%CO
2の条件下で培養し、分化誘導を行った。3週間の培養後、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定したところ、800Ω・cm
2以上であり、タイトジャンクションが適切に形成されていることを確認した。そこへ、製造例1で得られたアガロオリゴ糖を終濃度2mg/mlになるように添加して37℃、5%CO
2の条件下で2時間培養した。培養後の細胞を、蛍光標識抗体であるマウス由来モノクローナル抗体anti−Claudin−4(A−12)(Santa Cruz Biotechnology社製)で染色し、蛍光顕微鏡で観察した。蛍光顕微鏡写真を
図4に示す。
【0048】
(実施例5)
アガロオリゴ糖の終濃度が10mg/mlとなるように添加したこと以外は実施例4と同様にしてCaco−2細胞を培養し、蛍光顕微鏡で観察した。蛍光顕微鏡写真を
図4に示す。
【0049】
(比較例3)
アガロオリゴ糖を添加しなかったこと以外は実施例4と同様にしてCaco−2細胞を培養し、蛍光顕微鏡で観察した。蛍光顕微鏡写真を
図4に示す。
【0050】
図4に示すように、アガロオリゴ糖を作用させることによりClaudin−4の発現において、細胞膜に局在化させていることが分かった。
【0051】
[実験例4:アガロオリゴ糖摂取による腸管保護効果]
(実施例6)
ヒト腸管上皮細胞を用いて、アガロオリゴ糖による腸管保護効果を調べた。具体的には、コンフルエント状態に達したヒトCaco−2細胞を二層式のトランズウェルに播種後、10%ウシ胎児血清を含むEMEM培地中で37℃、5%CO
2の条件下で培養し、分化誘導を行った。3週間の培養後、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定したところ、800Ω・cm
2以上であり、タイトジャンクションが適切に形成されていることを確認した。そこへ、製造例1で得られたアガロオリゴ糖、及びルシファーイエローをそれぞれ終濃度が2mg/ml、0.4μg/mlになるように添加して、37℃、5%CO
2の条件下で2時間培養した。アガロオリゴ糖は終濃度2mMになるよう添加した。下層のルシファーイエローの蛍光強度を測定し、ルシファーイエロー透過速度(μg/min/cm
2)を算出した。結果を
図5に示す。
【0052】
(比較例4)
アガロオリゴ糖を添加しなかったこと以外は実施例6と同様にしてCaco−2細胞を培養し、ルシファーイエロー透過速度を算出した。結果を
図5に示す。
【0053】
(実施例7)
タイトジャンクションの働きを弱めることを目的として、1%DMSOを添加下したこと以外は実施例6と同様にしてCaco−2細胞を培養し、ルシファーイエロー透過速度を算出した。結果を
図5に示す。
【0054】
(比較例5)
アガロオリゴ糖を添加しなかったこと以外は実施例7と同様にしてCaco−2細胞を培養し、ルシファーイエロー透過速度を算出した。結果を
図5に示す。
【0055】
図5に示すように、実施例6及び比較例4のようにタイトジャンクションの働きを弱めていない正常な状態では、アガロオリゴ糖は何ら有害にならないが、実施例7及び比較例4のようにタイトジャンクションの働きを弱めた状態では、アガロオリゴ糖を作用させることにより、ルシファーイエローの流入を効果的に抑制することが分かった。以上のことから、アガロオリゴ糖を作用させることにより、腸管保護機能を増強できることが分かった。
【0056】
[実験例5:アガロオリゴ糖摂取による腸管保護効果(構成糖の比較)]
(実施例8)
ヒト腸管上皮細胞を用いて、アガロオリゴ糖の各構成糖による腸管保護効果を調べた。具体的には、コンフルエント状態に達したヒトCaco−2細胞を二層式のトランズウェルに播種後、10%ウシ胎児血清を含むEMEM培地中で37℃、5%CO
2の条件下で培養し、分化誘導を行った。3週間の培養後、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定したところ、800Ω・cm
2以上であり、タイトジャンクションが適切に形成されていることを確認した。タイトジャンクションの働きを弱めることを目的として、1%DMSOを添加した。そこへ、製造例1において得られたアガロオリゴ糖の水溶液をカラム(東ソー株式会社製、TOYOPEARL(登録商標) HW−40S)を用いて単離したアガロビオース(二糖)、及びルシファーイエローを、終濃度がそれぞれ2mM、0.4μg/mlとなるように添加して、37℃、5%CO
2の条件下で2時間培養した。下層のルシファーイエローの蛍光強度を測定し、ルシファーイエロー透過速度(μM/min/cm
2)を算出した。結果を
図6に示す。
【0057】
(実施例9)
アガロビオースの代わりに、製造例1において得られたアガロオリゴ糖の水溶液をカラム(東ソー株式会社製、TOYOPEARL(登録商標) HW−40S)を用いて単離したアガロテトラオースを使用したこと以外は実施例8と同様にして細胞を培養し、ルシファーイエロー透過速度を算出した。結果を
図6に示す。
【0058】
図6に示すように、実施例7〜9のようにタイトジャンクションの働きを弱めた状態では、アガロオリゴ糖、又はその構成糖であるアガロビオース、アガロテトラオースを作用させることにより、ルシファーイエローの流入を効果的に抑制することが分かった。以上のことから、アガロオリゴ糖、又はその構成糖であるアガロビオース、アガロテトラオースを摂取することにより腸管保護機能を増強できることが分かった。特に、アガロテトラオースを摂取することにより、優れた腸管保護効果が得られることが分かった。
【0059】
[実験例6:医薬品の作製]
(実施例10)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的とした錠剤(1錠0.3g、直径8mm、打圧300kg)を作製した。なお、以下の実施例10〜20において、アガロオリゴ糖として製造例1で得られたものを使用した。
アガロオリゴ糖 50.0重量%
乳糖 30.0重量%
結晶セルロース 19.5重量%
ステアリン酸マグネシウム 0.5重量%
【0060】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有する錠剤を作製できた。
【0061】
(実施例11)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的とした散剤(1包1g)を作製した。
アガロオリゴ糖 50.0重量%
乳糖 40.0重量%
コーンスターチ 9.7重量%
ステアリン酸マグネシウム 0.3重量%
【0062】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有する散剤を作製できた。
【0063】
(実施例12)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的としたゼリー剤(1包25g)を作製した。
アガロオリゴ糖 8.0重量%
還元麦芽糖水あめ 10.0重量%
ゲル化剤(伊那寒天(登録商標)UP−37) 0.3重量%
香料 0.5重量%
酸味料 1.5重量%
水 79.7重量%
【0064】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有するゼリー剤を作製できた。さらに、当該ゼリー剤を100℃の湯に溶解し10℃に冷却することで、腸管保護効果を有するゼリーを作製できた。
【0065】
[実験例7:飲食品の作製]
(実施例13)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的とした清涼飲料を作製した。
アガロオリゴ糖 0.5g
濃縮果汁 3.0g
砂糖 16.0g
アスコルビン酸 適量
クエン酸 0.6g
クエン酸ナトリウム 0.4g
香料 適量
水 残余
計 200g
【0066】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有する清涼飲料を作製できた。
【0067】
(実施例14)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的とした粉末茶を作製した。
アガロオリゴ糖 0.2g
茶顆粒 0.6g
粉飴 1.2g
計 2g
【0068】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有する粉末茶を作製できた。
【0069】
(実施例15)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的とした茶飲料を作製した。
アガロオリゴ糖 0.2g
茶顆粒 0.6g
粉飴 1.2g
水 残余
計 200g
【0070】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有する茶飲料を作製できた。
【0071】
(実施例16)
以下の配合で腸管保護を目的としたゼリーを作製した。具体的には、100℃の湯に材料を溶解した後、10℃に冷却することによりゼリーを作製した。
アガロオリゴ糖 1.0g
濃縮果汁 1.5g
砂糖 12.0g
ゲル化剤(伊那寒天(登録商標)UP−37) 0.2g
クエン酸 0.3g
クエン酸ナトリウム 0.2g
香料 適量
水 残余
計 100g
【0072】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有するゼリーを作製できた。
【0073】
(実施例17)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的としたグミを作製した。アガロオリゴ糖は酸味料添加後に添加した。
アガロオリゴ糖 5g
砂糖 40g
水あめ 40g
ゼラチン 10g
水 15g
濃縮グレープフルーツ果汁 5g
香料 適量
酸味料 適量
計 115g
【0074】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有するグミを作製できた。
【0075】
(実施例18)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的としたコーンスープの素を作製した。
アガロオリゴ糖 1g
コーンパウダー 50g
脱脂粉乳 14g
糖類 14g
食塩 3g
調味料 5g
デンプン 8g
粉末油脂 4g
乳化剤 1g
計 100g
【0076】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有するコーンスープの素を作製できた。さらに、当該コーンスープの素を100℃の湯に溶解することで、腸管保護効果を有するコーンスープを作製できた。
【0077】
(実施例19)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的としたクッキーを作製した。アガロオリゴ糖は加水時に混合した。
アガロオリゴ糖 0.01g
薄力粉 60g
バター 30g
砂糖 15g
水 適量
計 110g
【0078】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有するクッキーを作製できた。
【0079】
(実施例20)
以下の配合で、常法に従い、腸管保護を目的としたうどんを作製した。アガロオリゴ糖は加水時に混合した。
アガロオリゴ糖 2g
中力粉 100g
食塩 5g
水 残余
計 150g
【0080】
以上のように、アガロオリゴ糖を含有し、腸管保護効果を有するうどんを作製できた。