【課題】簡易的な方法で導電粒子を分散させることができ、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できる異方性導電接着剤、異方性導電接着剤の製造方法、及び接続構造体を提供する。
【解決手段】異方性導電接着剤は、絶縁性フィラーにより導電粒子の表面の一部が被覆された被覆導電粒子と、絶縁性フィラーと、絶縁性バインダーとを含有し、絶縁性バインダー中に被覆導電粒子が分散されており、導電粒子の粒子径が7μm以上であり、上記絶縁性フィラーの粒子径が上記導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%であり、上記導電粒子に対する上記絶縁性フィラーの量が0.78〜77体積%である。
平均粒径が2μm以上である大径粒子と、粒子径が上記大径粒子の粒子径の0.02%以上5.0%以下である小粒子径フィラーとを撹拌することにより、上記小粒子径フィラーにより上記大径粒子が被覆された第1の被覆粒子を得る工程(A)と、
上記第1の被覆粒子と、絶縁性バインダーとを撹拌することにより、上記小粒子径フィラーにより上記大径粒子の表面の一部が被覆された第2の被覆粒子が、上記絶縁性バインダー中に分散された樹脂組成物を得る工程(B)とを有し、
上記工程(A)では、上記大径粒子に対する上記小粒子径フィラーの量が156体積%未満となるように上記大径粒子と上記小粒子径フィラーとを配合する、樹脂組成物の製造方法。
平均粒径が7μm以上である導電粒子と、粒子径が上記導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーとを撹拌することにより、上記絶縁性フィラーにより上記導電粒子が被覆された第1の被覆導電粒子を得る工程(A)と、
上記第1の被覆導電粒子と、絶縁性バインダーとを撹拌することにより、上記絶縁性フィラーにより上記導電粒子の表面の一部が被覆された第2の被覆導電粒子が、上記絶縁性バインダー中に分散された異方性導電接着剤を得る工程(B)とを有し、
上記工程(A)では、上記導電粒子に対する上記絶縁性フィラーの量が0.78〜77体積%となるように上記導電粒子と上記絶縁性フィラーとを配合する、異方性導電接着剤の製造方法。
請求項15〜17のいずれか1項に記載の異方性導電接着剤、又は請求項18に記載の異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品と第2の電子部品とが異方性接続された接続構造体。
請求項15〜17のいずれか1項に記載の異方性導電接着剤、又は請求項18に記載の異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品と第2の電子部品とを異方性接続する接続構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本技術は、大径粒子の表面の一部が小粒子径フィラーにより被覆された一部被覆粒子を形成することにより、絶縁性バインダー中の大径粒子の分散性を向上させるものである。一方、大径粒子の表面の全部が小粒子径フィラーにより被覆されている場合、大径粒子に対する小粒子径フィラーの量が多過ぎることになり、絶縁性バインダー中の大径粒子の分散性が低下する傾向にある。
【0018】
一部被覆粒子は、大径粒子と小粒子径フィラーの粉末を混合し(好ましくはこれらのみで混合することが好ましい)、大径粒子の表面に小粒子径フィラーを被覆させた後に、この混合物を樹脂組成物と混合(混錬)させることで、大径粒子の表面を被覆する一部の小粒子径フィラーを剥離することにより得ることができる。逆説的に言えば、一部被覆粒子が形成されていれば、大径粒子に対する小粒子径フィラーの量が適量であり、絶縁性バインダー中の大径粒子の分散性が高いとも言える。これは例えば遊星攪拌装置などを用い、高いシェア(せん断力)を掛けて行うことで、大径粒子表面への小粒子径フィラーの被覆と一部剥離が効率よく行うことができる。
【0019】
以下、第1の実施の形態について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
<樹脂組成物>
本実施の形態に係る樹脂組成物は、小粒子径フィラーにより大径粒子の表面の一部が被覆された一部被覆粒子と、小粒子径フィラーと、絶縁性バインダーとを含有し、一部被覆粒子は分散されてなり、大径粒子の粒子径が2μm以上であり、小粒子径フィラーの粒子径が大径粒子の粒子径の0.02〜5.0%であり、大径粒子に対する小粒子径フィラーの量が156体積%未満である。尚、このような0.02〜5.0%との表記は、特に断りが無ければ0.02%以上5.0%以下を指す。
【0021】
本明細書において、大径粒子の粒子径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA−3000:マルバーン社製)により測定した値とすることができる。この個数は1000個以上、好ましくは2000個以上であることが好ましい。また、小粒子径フィラーの粒子径は、例えば、電子顕微鏡観察し、任意の100個の平均値とすることができ、200個以上とすることでより精度を高めることもできる。
【0022】
また、大径粒子に対する小粒子径フィラーの量(体積%)は、次式により求めた値とすることができる。
大径粒子(A)に対する小粒子径フィラー(B)の量(体積%)
={(Bw/Bd)/(Aw/Ad)}×100
Aw:大径粒子(A)の質量組成(質量%)
Bw:小粒子径フィラー(B)の質量組成(質量%)
Ad:大径粒子(A)の比重
Bd:小粒子径フィラー(B)の比重
【0023】
図7〜
図9は、それぞれ本技術を適用させた一部被覆粒子の第1〜第3の例を模式的に示す断面図である。
図7〜
図9に示すように、一部被覆粒子20は、小粒子径フィラーにより大径粒子21の表面の一部が被覆されている。換言すれば、一部被覆粒子20は、その表面に、小粒子径フィラーにより被覆された被覆部22と、大径粒子の表面が露出した露出部23を有する。一部被覆粒子20は、例えば
図7に示すように露出部23が表面に全体的にまだらにあってもよく、
図8に示すように露出部23が一部にあってもよく、
図9に示すように露出部23が全体の半分以上あってもよい。本方式で得られた一部被覆された大径粒子の分散性を簡易に得ることを第1の目的としているためであり、被覆状態により大径粒子の性能を得ることを優先させているためではないからである。
【0024】
一部被覆粒子20は、樹脂組成物をフィルム状にした後に、電子顕微鏡などによる面視野観察において、一部被覆が確認できればよい。これは、観察箇所を複数回変更して同一の結果が得られることが好ましい。詳細に確認する場合は、一部被覆粒子20断面において、少なくとも最外表面の一部が被覆されていることが確認できればよい。なお、観察するフィルム体の表裏面で同一箇所を観測することで、より精密に且つ簡便に確認することができる。この手法であれば、大径粒子の一部被覆の有り無しの判定のみで判別できる。剥離した小粒子径フィラーと大径粒子が重畳している場合の判定は、焦点距離の調整から個別に判定することも可能と考える。
【0025】
一部被覆粒子20における被覆部22の割合は、例えば、上述した樹脂組成物をフィルム状にした後に、電子顕微鏡などによる面視野観察により確認することもできる。もしくは、樹脂組成物を硬化もしくは凍結させて、任意の100個の一部被覆粒子断面の最外表面を電子顕微鏡観察し、任意の100個の一部被覆粒子の被覆部の割合の平均値とすることができる。このような一部被覆粒子の被覆部の割合の平均値は、例えば15%以上100%未満であればよく、30〜95%であってもよい。
【0026】
また、一部被覆粒子20の個数割合は、全部被覆粒子及び一部被覆粒子の全体に対し、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上である。一部被覆粒子20の個数割合は、例えば、樹脂組成物を硬化もしくは凍結させて、任意の100個の全部被覆粒子及び一部被覆粒子を電子顕微鏡観察し、任意の100個の全部被覆粒子及び一部被覆粒子に対する一部被覆粒子の個数とすることができる。
【0027】
大径粒子は、特に限定されず、樹脂組成物の機能に応じて材質が適宜選択される。例えば、樹脂組成物に導電性を付与する場合、例えば、導電粒子、金属粒子などが選択され、また、樹脂組成物にスペーサー機能を付与する場合、例えば、アクリルゴム、スチレンゴム、スチレンオレフィンゴム、シリコーンゴムなどが選択される。これは小粒子径フィラーとの組み合わせで被覆および一部被覆ができれば特に限定はなく、有機物であってもよく、無機物であってもよく、また金属メッキ樹脂粒子のように有機物と無機物を組み合わせたものであってもよい。1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。1種単独であれば分散性の評価は容易になる。2種以上の場合は、外観が明確に異なるものであることが、同様の理由から好ましい。
【0028】
大径粒子の粒子径は、2μm以上である。また、大径粒子の粒子径の上限は、特に制限されないが、例えば、大径粒子が導電粒子である場合、接続構造体における導電粒子の捕捉効率の観点から、例えば50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
樹脂組成物内の大径粒子の固数密度は、目的に応じて適宜調整することができるが、下限としては20個/mm
2以上であることが好ましく、100個/mm
2以上であることがより好ましく、150個/mm
2以上であることがさらにより好ましい。少なすぎる場合、小粒子径フィラーとの割合における調整マージンが少なくなり、再現性が困難になるからである。また、上限は80000個/mm
2以下であることが好ましく、70000個/mm
2以下であることがより好ましく、65000個/mm
2以下であることが更により好ましい。大径粒子の個数密度が大きくなりすぎると、小粒子径フィラーの被覆や樹脂組成物との混合が困難となる。個数密度は支持体の平滑面にフィルム状に形成し、面視野における観察から求めることができる。この際の厚みは、大径粒子の1.3倍以上もしくは10μm以上、上限は大径粒子の4倍以下、好ましくは2倍もしくは以下40μm以下とすることができる。この厚みは樹脂組成物に由来するため、一義的に定めることは難しいため、このように範囲を設けている。面視野観察は金属顕微鏡、SEMなどの電子顕微鏡を用いることができる。観察画像から個々の大径粒子を計測して求めてもよく、公知の画像解析ソフト(一例として、WinROOF(三谷商事株式会社)が挙げられる)を用いて計測してもよい。樹脂組成物の場合はフィルム状にした場合の厚みによって変動するため、大径粒子の1.3倍もしくは4倍の厚みとした面視野個数密度で定めることができる。尚、溶媒を含んでいる場合は乾燥後の厚みとする。
【0030】
小粒子径フィラーは、その大部分が絶縁性バインダー中に分散されており、一部が大径粒子の表面の一部を被覆する。小粒子径フィラーとしては、絶縁性フィラーを用いることができる。絶縁性フィラーとしては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、珪酸カルシウムなどのケイ酸塩、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チッ化珪素などのチッ化物などが挙げられる。絶縁性フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
小粒子径フィラーの粒子径の上限は、大径粒子の14%以下、好ましくは0.3%以下とすることができる。もしくは100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。大径粒子の表面積に対して小粒子径フィラーが大きすぎないことで、大径粒子の表面に傷がつく等の不具合を抑制できる。また、小粒子径フィラーの粒子径の下限は、10nm以上であることが好ましい。大径粒子の表面積に対して小粒子径フィラーが小さすぎないことで、大径粒子の凝集をより効果的に抑制できる。小さすぎる場合、樹脂組成物の粘度が上昇しすぎることで分散性への影響も懸念される。
【0032】
以上に説明した大径粒子と小粒子径フィラーの大きさの関係から、大径粒子と小粒子径フィラーとの粒子径の比率(小粒子径フィラーの粒子径/大径粒子の粒子径)は、0.02〜5.0%であり、0.02〜2.5%であることが好ましい。
【0033】
また、上述の粒子径の比率を満たす大径粒子に対する小粒子径フィラーの体積割合は156体積%未満である。これを超えると樹脂中への均一分散が容易に得られにくくなる。尚、下限値は0%を超えることは当然であるが、大径粒子と小粒子径フィラーの大きさの比率の他に、これらの形状なども関係してくるため一義的に定め難い。しかし、0.78%以上であれば特に問題はないと考えられ、3.9%以上であれば好ましく、7.8%以上であればより好ましい。尚、上限値は78体積%以下であることが好ましく、39%以下であることがより好ましい。尚、これらの数値は大径粒子と小粒子径フィラーの関係から適宜選択できるものである。このような条件を満たすことにより、大径粒子の分散性を良好にすることができる。
【0034】
絶縁性バインダー(絶縁性樹脂)は、公知の絶縁性バインダーを用いることができる。硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられる。例えば、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂等が挙げられる。また、公知の粘着剤組成物を用いてもよい。
【0035】
樹脂組成物は、必要に応じて、一部被覆粒子、小粒子径フィラー、絶縁性バインダー以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、溶剤(メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、応力緩和剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0036】
以上のように、樹脂組成物は、大径粒子の粒子径が2μm以上であり、小粒子径フィラーの粒子径が大径粒子の粒子径の0.02〜5.0%であり、大径粒子に対する小粒子径フィラーの量が156体積%未満であることにより、高い分散性を有する。
【0037】
また、例えば、樹脂組成物を第1の部材と第2の部材との間のスペーサーとして機能させる場合、大径粒子に付着する小粒子径フィラーの量が少ないため、大径粒子の略直径のスペーサーとすることができる。また、例えば、樹脂組成物を大径粒子が導電粒子であり、小粒子径フィラーが絶縁性フィラーである、異方性導電接着剤とする場合、導電粒子に付着する絶縁性フィラーの量が少ないため、優れた導通性を得ることができる。
【0038】
また、例えば、樹脂組成物を大径粒子が導電粒子であり、小粒子径フィラーが絶縁性フィラーである、異方性導電接着剤からなる異方性導電フィルムとする場合、導電粒子の分散性が非常に高いため、異方性導電フィルム全体の導電粒子の個数密度(個/mm
2)と、当該異方性導電フィルムから任意に抽出した0.2mm×0.2mmの領域における導電粒子の個数密度(個/mm
2)との差を15%以下とすることができる。ここで、個数密度の差は、任意に抽出した所定領域における導電粒子の個数密度の最大値と最小値との差である。
【0039】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施の形態に係る樹脂組成物の製造方法は、以下の工程(A)と、工程(B)とを有する。
【0040】
[工程(A)]
工程(A)では、大径粒子と、粒子径が大径粒子よりも小さい小粒子径フィラーとを撹拌することにより、第1の被覆粒子を得る。工程(A)では、工程(B)で得られる第2の被覆粒子の凝集を抑制するために、大径粒子を小粒子径フィラーで被覆させる。また、工程(A)では、上述のように、大径粒子に対する小粒子径フィラーの量が156体積%未満となるように大径粒子と小粒子径フィラーとを配合する。このような条件を満たすことにより、工程(A)で大径粒子の表面への小粒子径フィラーの被覆を容易に進行させるとともに、工程(B)で第1の被覆粒子における小粒子径フィラーを容易に乖離させることができる。
【0041】
大径粒子と小粒子径フィラーとを撹拌する方法は、乾式法、湿式法のいずれであってもよく、乾式法が好ましい。公知のトナー等で用いられている手法を適用できるためである。大径粒子と小粒子径フィラーとを撹拌するための装置は、例えば、遊星式撹拌装置、振とう機、ラボミキサー、撹拌プロペラ等が挙げられる。特に、平均粒径が比較的大きい大径粒子を絶縁フィラーで被覆させる観点から、高シェアのかかる遊星式撹拌装置が好ましい。ボールミルやビーズミルなど媒体を用いる方式は、排除するものではないが好ましくない。大径粒子と小粒子径フィラー以外に取り除くものが存在すると、生産性の上では望ましくないためである。また、このような媒体(ボールやビーズ)を用いると、大径粒子や小粒子径フィラーの表面状態への影響を勘案する要因が増えるため、製品設計が難しくなる。遊星式撹拌装置は、材料(大径粒子と小粒子径フィラーとの混合物)の入った容器を自転させながら公転させる方式の撹拌装置をいう。容器毎で生産するバッチ方式の場合、品質管理がし易くなる点からも好ましい。即ち、容易に高精度に大径粒子と小粒子径フィラーとが分散した樹脂組成物を得られ易くなる。
【0042】
大径粒子及び小粒子径フィラーは、上述した異方性導電接着剤で説明した大径粒子及び小粒子径フィラーと好ましい範囲が同様である。特に、工程(A)において大径粒子を小粒子径フィラーで被覆させる観点から、乾粉状態の大径粒子を用いることが好ましい。
【0043】
[工程(B)]
工程(B)では、第1の被覆粒子と絶縁性バインダーとを撹拌することにより、第2の被覆粒子と、第1の被覆粒子における大径粒子から乖離した小粒子径フィラーとが、絶縁性バインダー中に分散された樹脂組成物が得られる。
【0044】
工程(B)では、第1の被覆粒子を絶縁性バインダー中で撹拌することにより、第1の被覆粒子における小粒子径フィラーに大径粒子との摩擦や高シェアがかかることで、この小粒子径フィラーが大径粒子から乖離し、大径粒子の表面の一部が小粒子径フィラーに被覆された一部被覆粒子(第2の被覆粒子)が得られる。また、第1の被覆粒子における大径粒子から乖離した小粒子径フィラーが、第2の被覆粒子間に介在されるため、第2の被覆粒子の凝集を抑制できる。このように、工程(B)を行うことにより、第2の被覆粒子の凝集を抑制でき、絶縁性バインダー中に第2の被覆粒子を分散させることができる。この時、小粒子径フィラーも同時に分散されることになる。即ち本発明では、混合工程が最小限の回数で済む。例えば従来のように粘度調整のために小粒子径フィラーを都度加えることもできるが、分散状態の再現性を得ることは困難を伴うことは容易に予想できる。しかしながら、粉末(大径粒子と小粒子径フィラー)を予め調整し、それに樹脂組成物を配合することで、必要な量を調整可能とできるため、材料コストや製造コストの点からも望ましい。また、分散性の不具合のあるバッチに関しても比較し易いことから、不良要因の解析も容易になり、上述したように品質管理の点でもメリットがある。また、バッチ式の場合には少量での開発検討から大量製造に移行する際など、検討する要因が少なくなるといったメリットがある。また同じ理由から工程(A)と工程(B)とを同じ容器、同じ遊星式攪拌装置を用いて行うことが、生産性や品質管理の上からも好ましい。コンタミの影響も抑制することが期待できる。大量生産する場合には、同一装置を増やすだけでよくなる。つまり、少量多品種に対応可能であり、且つスケールアップにも対応できる。従って、生産管理の調整も容易になる。
【0045】
また、大径フィラーの表面を十分に小さい小粒子径フィラーで被覆することは、後述するような異方性導電接続のように、大径粒子である導電粒子を端子で挟持する場合に、導電粒子の表面状態の品質維持の点から好ましい。即ち、大径粒子同士で接触することによる表面状態のイレギュラーを、小粒子径フィラーが被覆して介在することで保護する機能が期待できる。また、混合(混練)で被覆が解除される程度であるため、端子間に挟持されるといった直接的な力が大径粒子にかかれば、一部被覆が導通を阻害するとは考え難い。また、端子配列間の絶縁性においても、大径粒子は高い分散性を維持しているが、同時に一部被覆も維持しているため、(大径粒子が連なることで生じる)ショートは回避され易い状態になっていると考えられる。具体的な効果を例示すると、大径粒子が金属メッキ樹脂粒子である導電粒子の場合、金属メッキの厚みや材質、樹脂粒子の硬さなどについて、従来よりも選択の幅が広げることが期待できる。スペーサーのように挟持して使用するものについても、同様のことが言える。
【0046】
第1の被覆粒子と絶縁性バインダーとを撹拌する方法は、特に限定されず、上述した工程(A)における撹拌方法を採用できる。特に、第1の被覆粒子と絶縁性バインダーとを撹拌した際に、第1の被覆粒子を構成する小粒子径フィラーを乖離させる観点から、高シェアのかかる撹拌方法、例えば遊星式撹拌装置を用いた撹拌方法が好ましい。遊星式撹拌装置を用いることにより、絶縁性バインダー中で、第1の被覆粒子における大径粒子と小粒子径フィラーとの摩擦や高シェアがかかることで、第1の被覆粒子において大径粒子から小粒子径フィラーの適度な乖離が生じると考えられる。
【0047】
以上の工程(A)及び工程(B)を有する製造方法によれば、簡易的な方法で絶縁性バインダー中に第2の被覆粒子が分散された樹脂組成物が得られる。なお、本製造方法は、必要に応じて、上述した工程(A)及び工程(B)以外の他の工程をさらに有していてもよい。尚、上述しているように工程(A)及び工程(B)を同一容器、同一装置(遊星攪拌式混合装置)で行うことが、生産性や品質面から好ましい。
【0048】
<構造体>
本実施の形態に係る構造体は、上述した樹脂組成物を介して第1の部材と第2の部材とが接着されている。樹脂組成物が硬化性樹脂であれば、硬化して固定してもよく、粘着剤であれば貼り付けただけであってもよい。これは一例であり、例えば型に樹脂組成物を充填させ、硬化して成型体を得てもよい。例えば、樹脂組成物を第1の部材と第2の部材との間のスペーサーとして機能させる場合、大径粒子に付着する小粒子径フィラーの量が少ないため、大径粒子の略直径のスペーサーとすることができる。また、例えば、樹脂組成物を大径粒子が導電粒子であり、小粒子径フィラーが絶縁性フィラーである、導電接着剤とする場合、導電粒子に付着する絶縁性フィラーの量が少ないため、優れた導通性を得ることができる。異方性導電接着剤とする場合は、端子および端子配列の関係がより複雑に作用するため、この効果はより発揮できる。尚、これらは予めフィルム体としてもよい。
【0049】
尚、樹脂組成物を接着剤もしくは接着フィルムとし、第1の物品と第2の物品とを接続させる構造体および、その製造方法も本発明は含む。これらの物品は電子部品であってもよく、導通部を備えて(異方性は必須としない)導通性があってもよいが、これに限定されるものではない。又、樹脂組成物が接着性の有無に関わらず、第1の物品と第2の物品を貼合させたものやその貼合方法も本発明は含む。つまり、第1の物品と第2の物品の貼合体や、これらを加圧させる貼合方法になる。また、第1の物品のみに樹脂組成物やそのフィルム体を設けたものも本発明には含まれる。これは第1の物品に塗布もしくはフィルム体として貼り合わせればよい。樹脂組成物が粘着体であれば、粘着層を形成することになる。支持体に形成することで粘着フィルムにすることもできる。
【0050】
以下、第2の実施の形態について説明する。
[第2の実施の形態]
【0051】
<異方性導電接着剤>
本実施の形態に係る異方性導電接着剤は、絶縁性フィラーにより導電粒子の表面の一部が被覆された被覆導電粒子(後述する第2の被覆導電粒子)と、絶縁性フィラーと、絶縁性バインダーとを含有し、この被覆導電粒子が絶縁性バインダー中に分散されている。なお、以下の説明では、平均粒径が7μm以上である導電粒子と、絶縁性フィラーとを撹拌することにより得られる、絶縁性フィラーにより導電粒子が被覆された被覆導電粒子を「第1の被覆導電粒子」と言う。また、第1の被覆導電粒子と、絶縁性バインダーとを撹拌することにより得られる、絶縁性フィラーにより導電粒子の表面の一部が被覆された被覆導電粒子を「第2の被覆導電粒子」と言う。
【0052】
異方性導電接着剤は、フィルム状の異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又はペースト状の異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)のいずれであってもよい。取り扱いのし易さの点では異方性導電フィルムが好ま
しく、コストの面では異方性導電ペーストが好ましい。
【0053】
以下、異方性導電接着剤を構成する第2の被覆導電粒子(導電粒子、絶縁性フィラー)、絶縁性バインダー、さらに含有してもよいその他の成分について説明する。
【0054】
[導電粒子]
導電粒子の材質は、特に限定されない。例えば、ニッケル、銅、金、銀、パラジウムなどの金属粒子、樹脂粒子の表面を金属で被覆した金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。金属被覆樹脂粒子における樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂の粒子を用いることができる。導電粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
導電粒子の粒子径は、7μm以上である。また、導電粒子の粒子径の上限は、特に制限されないが、接続構造体における導電粒子の捕捉効率の観点から、例えば50μm以下であることが好ましい。導電粒子の粒子径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA−3000:マルバーン社製)により測定できる。1000個以上、好ましくは2000個以上測定して求めることが望ましい。
【0056】
[絶縁性フィラー]
絶縁性フィラーは、絶縁性無機粒子を用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、珪酸カルシウムなどのケイ酸塩、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チッ化珪素などのチッ化物などが挙げられる。絶縁性フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
導電粒子と絶縁性フィラーの大きさ(粒子径)の関係について、導電粒子の表面積に対して絶縁性フィラーが著しく小さいことにより、導電粒子の表面への絶縁性フィラーの被覆と乖離が容易に進行するようになる。これにより、第1の被覆導電粒子を絶縁性バインダー中で撹拌させると、第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離した絶縁性フィラーが第2の被覆導電粒子間に介在されるため、第2の被覆導電粒子の凝集を抑制できる。したがって、絶縁性バインダー中に、第2の被覆導電粒子を均一に分散させることができる。
【0058】
具体的に、絶縁性フィラーの粒子径の上限は、1000nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。導電粒子の表面積に対して絶縁性フィラーが大きすぎないことで、導電粒子の表面に傷がつく等の不具合を抑制できる。また、絶縁性フィラーの粒子径の下限は、10nm以上であることが好ましい。導電粒子の表面積に対して絶縁性フィラーが小さすぎないことで、導電粒子の凝集をより効果的に抑制できる。絶縁性フィラーの粒子径は、電子顕微鏡などの観察結果から求めることができる。
【0059】
以上に説明した導電粒子と絶縁性フィラーの大きさの関係から、導電粒子と絶縁性フィラーとの粒子径の比率(絶縁性フィラーの粒子径/導電粒子の粒子径)は、0.02〜0.143%であり、0.02〜0.10%であることが好ましい。
【0060】
また、上述の粒子径の比率を満たす導電粒子に対する絶縁性フィラーの個数割合、すなわち、1個の導電粒子に対する絶縁性フィラーの量は0.78〜77体積%であり、3.9〜38.7体積%であることが好ましく、7.7〜15.5体積%であることがより好ましい。このような条件を満たすことにより、導電粒子の分散性を良好にすることができる。
【0061】
[絶縁性バインダー]
絶縁性バインダー(絶縁性樹脂)は、公知の異方性導電接着剤で用いられる絶縁性バインダーを用いることができる。硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられる。例えば、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂等が挙げられる。
【0062】
以下では、具体例として、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤とを含有する熱アニオン重合型の絶縁性バインダーを挙げて説明する。
【0063】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好ましい。膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、アミンイミド、ジシアンジアミド、若しくは、アンチモン系、リン系、フッ素系などの酸発生剤などが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール化合物粒子の表面をポリウレタン系、ポリエステル系などの高分子硬化物で被覆したマイクロカプセル型のものが好適に用いられる。また、マイクロカプセル型硬化剤を液状エポキシ樹脂中に分散してなるマスターバッチ型硬化剤を用いてもよい。
【0066】
[その他の成分]
異方性導電接着剤は、必要に応じて、第2の被覆導電粒子と絶縁性バインダー以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、溶剤(メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、応力緩和剤、シランカップリング剤等が挙げられる。また、異方性導電接着剤は、第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離した絶縁性フィラーをさらに含有していてもよい。
【0067】
以上のように、異方性導電接着剤は、導電粒子の粒子径が7μm以上であり、絶縁性フィラーの粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%であり、導電粒子に対する絶縁性フィラーの量が0.78〜77体積%である。第1の被覆導電粒子を絶縁性バインダー中で撹拌させると、第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離する。そのため、被覆した絶縁性フィラーが粒子表面に残存する第2の被覆導電粒子を得る場合もあり、このような残存状態は公知の観察手法(SEMやTEMなどの電子顕微鏡)によって確認することができる。このような絶縁性フィラーの残存状態と導電粒子の分散状態によって本発明の手法により得られたものであるかを確認することができる。
【0068】
異方性導電接着剤は、第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離した絶縁性フィラーが第2の被覆導電粒子間に介在されるため、第2の被覆導電粒子の凝集を抑制できる。したがって、絶縁性バインダー中に、第2の被覆導電粒子を分散させることができ、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できる。また、異方性導電接着剤は、絶縁性バインダー中の第2の被覆導電粒子の近傍に、第1の被覆導電粒子と絶縁性バインダーとの撹拌により第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離した絶縁性フィラーが一定の割合で均一に存在する。このような異方性導電接着剤においては、第2の被覆導電粒子の分散状態と、絶縁性フィラーが存在する領域とに高い相関性を示すことになり、導電粒子捕捉率を安定させることができる。
【0069】
また、本技術では、7μm以上の比較的大きい導電粒子に簡易的に絶縁性フィラーを被覆させ、絶縁性バインダーへの混練時に乖離させることで、導電粒子の表面(導電層)に予め絶縁処理を施さなくとも、十分なショート抑制の効果を得ることができる。即ち、導電粒子の導電層には乖離せずに微量に残存した絶縁性フィラー以外には絶縁処理の痕跡がなくなる。そのため、導電粒子の取り扱い性に優れ、また、コスト上も有利である。異方性導電接着剤の設計においても、パラメーターが少なくなることで、開発の上でも優位性がある。尚、公知の手法により予め絶縁処理を施した導電粒子を使用することで、より絶縁性に優れた導電粒子を使用することによる性能の向上や、設計自由度を増やすこともできる。従って、本技術は、導電粒子の表面(導電層)に予め絶縁処理を施したものを使用する態様を排除するものではない。
【0070】
<異方性導電接着剤の製造方法>
本実施の形態に係る異方性導電接着剤の製造方法は、以下の工程(A)と、工程(B)とを有する。
【0071】
[工程(A)]
工程(A)では、平均粒径が7μm以上の導電粒子と、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーとを撹拌することにより、第1の被覆導電粒子を得る。工程(A)では、工程(B)で得られる第2の被覆導電粒子の凝集を抑制するために、導電粒子を絶縁性フィラーで被覆させる。また、工程(A)では、上述のように、導電粒子に対する絶縁性フィラーの量が0.78〜77体積%となるように導電粒子と絶縁性フィラーとを配合する。このような条件を満たすことにより、工程(A)で導電粒子の表面への絶縁性フィラーの被覆を容易に進行させるとともに、工程(B)で第1の被覆導電粒子における絶縁性フィラーを容易に乖離させることができる。
【0072】
導電粒子と絶縁性フィラーとを撹拌する方法は、乾式法、湿式法のいずれであってもよく、乾式法が好ましい。導電粒子と絶縁性フィラーとを撹拌するための装置は、例えば、遊星式撹拌装置、振とう機、ラボミキサー、撹拌プロペラ等が挙げられる。特に、平均粒径が比較的大きい導電粒子を絶縁フィラーで被覆させる観点から、高シェアのかかる遊星式撹拌装置が好ましい。遊星式撹拌装置は、材料(導電粒子と絶縁性フィラーとの混合物)の入った容器を自転させながら公転させる方式の撹拌装置をいう。
【0073】
導電粒子及び絶縁性フィラーは、上述した異方性導電接着剤で説明した導電粒子及び絶縁性フィラーと好ましい範囲が同様である。特に、工程(A)において導電粒子を絶縁性フィラーで被覆させる観点から、乾粉状態の導電粒子を用いることが好ましい。
【0074】
[工程(B)]
工程(B)では、第1の被覆導電粒子と絶縁性バインダーとを撹拌することにより、第2の被覆導電粒子と、第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離した絶縁性フィラーとが、絶縁性バインダー中に分散された異方性導電接着剤が得られる。
【0075】
工程(B)では、第1の被覆導電粒子を絶縁性バインダー中で撹拌することにより、第1の被覆導電粒子における絶縁性フィラーに導電粒子との摩擦や高シェアがかかることで、この絶縁性フィラーが導電粒子から乖離し、導電粒子の表面の一部が絶縁性フィラーに被覆された被覆導電粒子(第2の被覆導電粒子)が得られる。また、第1の被覆導電粒子における導電粒子から乖離した絶縁性フィラーが、第2の被覆導電粒子間に介在されるため、第2の被覆導電粒子の凝集を抑制できる。このように、工程(B)を行うことにより、第2の被覆導電粒子の凝集を抑制でき、絶縁性バインダー中に第2の被覆導電粒子を分散させることができる。
【0076】
第1の被覆導電粒子と絶縁性バインダーとを撹拌する方法は、特に限定されず、上述した工程(A)における撹拌方法を採用できる。特に、第1の被覆導電粒子と絶縁性バインダーとを撹拌した際に、第1の被覆導電粒子を構成する絶縁性フィラーを乖離させる観点から、高シェアのかかる撹拌方法、例えば遊星式撹拌装置を用いた撹拌方法が好ましい。遊星式撹拌装置を用いることにより、第1の被覆導電粒子における導電粒子と絶縁性フィラーとの摩擦や高シェアがかかることで、第1の被覆導電粒子において導電粒子から絶縁性フィラーの乖離が生じることがある。
【0077】
以上の工程(A)及び工程(B)を有する製造方法によれば、簡易的な方法で絶縁性バインダー中に第2の被覆導電粒子が分散された異方性導電接着剤が得られる。この異方性導電接着剤を用いることにより、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できる。尚、工程(A)及び工程(B)を同一容器、同一装置(遊星攪拌式混合装置)で行えば、製造上の工数の点からも、コンタミ混入防止といった品質管理の点からも、好ましくなる。
【0078】
なお、本製造方法は、必要に応じて、上述した工程(A)及び工程(B)以外の他の工程をさらに有していてもよい。
【0079】
<異方性導電フィルム>
本実施の形態に係る異方性導電フィルムは、上述した異方性導電接着剤からなるものであり、絶縁性バインダーからなる接着剤層に上述した第2の被覆導電粒子が分散されている。例えば、異方性導電フィルム全体(例えば、1.0mm×1.0mm)の第2の被覆導電粒子の個数密度(個/mm
2)と、異方性導電フィルム中の任意に抽出した狭い領域
(例えば、0.2mm×0.2mm)における第2の被覆導電粒子の個数密度(個/mm
2)との差が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、
実質的に同じ(一例として、5%以内)であることが更により好ましい。また、異方性導電ペーストとして接続に使用する場合、一例として、上記同様の分散性が得られることが好ましい。これは、支持体などの平滑面上に層状にすることで、確認することができる。
【0080】
このように異方性導電フィルム全体の第2の被覆導電粒子の個数密度と、異方性導電フィルムの任意に抽出した狭い領域における第2の被覆導電粒子の個数密度との差が小さいことにより、第2の被覆導電粒子がフィルム全体に亘って均一に分散されていることが確認できる。したがって、導電粒子捕捉率が安定し、導通不良やショートを抑制できる。第2の被覆導電粒子がフィルム全体に亘って均一に分散されている場合、異方性導電フィルムの品質検査そのものの工数も低減できる効果がある。均一に分散されている場合、イレギュラーな凝集が存在すると発見しやすくなるからである。そのため、特に10m以上の長尺とした場合により効果を発揮することになる。また、異方性導電フィルムが10m以上、好ましくは50m以上の長尺であれば、連続的に接続が行えることから、接続構造体の製造方法のコスト低減の効果もある。長尺の上限は特にないが、接続装置の改良を最小限にとどめることや、取り扱いの観点から5000m以下が好ましく、1000m以下がより好ましく、600m以下が更により好ましい。
【0081】
また、本発明のように導電粒子径が7μm以上と比較的大きい場合、接続する電子部品がセラミック基板などのように表面がガラスなどよりも平滑ではないもの(表面にうねりを有するもの)の接続に適している。また、このように比較的大きい導電粒子が均一に分散していることで、接続する電子部品にうねりを有していても接続時の樹脂の流動によって捕捉の影響を受け難い。導電粒子が凝集している場合、うねりによって導電粒子が捕捉される端子面が一定ではないことから、端子毎の捕捉状態を一定に保てなくなる懸念が生じるからである。
【0082】
異方性導電フィルム中の第2の被覆導電粒子の粒子密度は、特に導通信頼性とショート抑制を両立できれば特に制約はないが、一例として、小さすぎれば導通信頼性を満足しにくくなるため、20個/mm
2以上が好ましく、100個/mm
2以上がより好ましい。また、上限としては大きすぎるとショートの発生リスクが高くなるため、一例として、3000個/mm
2以下が好ましく、2000個/mm
2以下がより好ましく、1000個/mm
2以下がより好ましい。これらは導電粒子径と接続する端子サイズによって適宜調整すればよい。また、異方性導電ペーストを使用した場合も、一例として、上記同様であることが好ましい。これは、支持体などの平滑面上に層状にすることで、確認することができる。
【0083】
異方性導電フィルム中の第2の被覆導電粒子の平面視における面積占有率の上限は、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更により好ましい。このように高い面積占有率になるのは、異方性導電フィルムの厚みと粒子径の比率にもよるが、絶縁性樹脂に第2の被覆導電粒子が混練されながら、高い均一性を持つからである。このように高い面積占有率であってもショートの発生リスクが回避できることは、本発明の特徴の一つといえる。また、異方性導電ペーストとして接続に使用する場合、一例として、上記同様の分散性が得られることが好ましい。これは、支持体などの平滑面上に層状にすることで、確認することができる。
【0084】
また、異方性導電フィルム中の第2の被覆導電粒子の平面視における面積占有率の下限は、異方性導電フィルムの厚みと粒子径の比率にもよるが、一例として0.2%より大きければ最低限導通性能を確保でき、5%より大きいことが実用上好ましく、10%より大きいことがより好ましい。また、異方性導電ペーストを使用した場合も、一例として、上記同様であることが好ましい。これは、支持体などの平滑面上に層状にすることで、確認することができる。
【0085】
異方性導電フィルム中の第2の被覆導電粒子の平面視における面積占有率は光学顕微鏡や金属顕微鏡、SEMなどの電子顕微鏡による観察を元に算出することができる。公知の画像解析ソフト(一例として、WinROOF(三谷商事株式会社)が挙げられる)を用いて計測してもよい。また面積占有率の算出面積は、個数密度を求める面積の一例と同様でもよく、より大きい面積(例えば、2mm×2mmや、5mm×5mm)で求めてもよい。また、異方性導電ペーストとして接続に使用する場合、一例として、上記同様の分散性が得られることが好ましい。これは、支持体などの平滑面上に層状にすることで、確認することができる。
【0086】
異方性導電フィルムの形成方法としては、例えば異方性導電接着剤を塗布法により成膜し乾燥させる方法が挙げられる。異方性導電フィルムの厚みは、例えば下限は粒子径と同じであってもよく、好ましくは粒子径の1.3倍以上もしくは10μm以上とすることができる。例えば上限は40μm以下もしくは粒子径の2倍以下とすることができる。また、異方性導電フィルムは、剥離フィルム上に形成することができる。
【0087】
<接続構造体>
本実施の形態に係る接続構造体は、上述した異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品と第2の電子部品とが接続されている。例えば
図1に示すように、接続構造体1は、異方性導電フィルム2中の導電粒子(第2の被覆導電粒子)3を介して、複数の端子4aからなる第1の端子列4を備える第1の電子部品5と、第1の端子列4に対向し複数の端子6aからなる第2の端子列6を備える第2の電子部品7とが接続されている。
【0088】
第1の電子部品及び第2の電子部品は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品としては、例えば、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、透明基板等が挙げられる。透明基板は、透明性の高いものであれば
特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。また、第2の電子部品としては、例えば、カメラモジュール、IC(Integrated Circuit)モジュール、ICチップ等が挙げられる。第2の電子部品は、センサーが搭載された機能性モジュールであってもよい。カメラモジュールでは、電気的絶縁性、熱的絶縁性に優れる観点からセラミック基板が使用されることがある。セラミック基板や機能性モジュールは、小型化(例えば1cm
2以下)での寸法安定性に優れるなどの利点がある。
【0089】
<接続構造体の製造方法>
本実施の形態に係る接続構造体の製造方法は、第1の端子列4を備える第1の電子部品5と、第1の端子列4に対向する第2の端子列6を備える第2の電子部品7とを、上述した異方性導電フィルムを介して圧着することを含む。これにより、第1の端子列4と第2の端子列6とを導電粒子3を介して接続させることができる。
【0090】
第1の電子部品5及び第2の電子部品7は、上述した接続構造体における第1の電子部品5及び第2の電子部品7と同様である。また、異方性導電接着剤についても、上述した異方性導電接着剤と同様である。
【実施例】
【0091】
以下、本技術の第1の実施例について説明する。
【0092】
[実験例1]
[異方性導電接着剤(樹脂組成物)の作製]
平均粒径3μmの導電粒子(大径粒子、Niメッキ(厚み115nm)、樹脂コア、比重3.44g/cm
3)を1gと、絶縁性フィラーとして平均粒径10nmのシリカフィラー(小粒子径フィラー、製品名:YA010C、比重2.2g/cm
3)を0.5g(導電粒子に対して78.2体積%)とを、遊星式撹拌装置(製品名:あわとり錬太郎、THINKY社製)に投入し、5分間撹拌して、導電粒子と絶縁性フィラーの混合物を作製した。
【0093】
絶縁性フィラーの個数割合については、「適量」、「過剰」、「不足」のいずれかで評価した。具体的に、導電粒子に対するシリカフィラーの個数割合、すなわち、導電粒子に対するシリカフィラーの量が1.56体積%超、156体積%未満の範囲にある場合を「適量」と評価した。また、導電粒子に対するシリカフィラーの量が156体積%を超える場合を「過剰」と評価した。さらに、導電粒子に対するシリカフィラーの量が1.56体積%未満の場合を「不足」と評価した。
【0094】
導電粒子と絶縁性フィラーとの混合物と、以下の各成分からなる絶縁性バインダーとを遊星式撹拌装置(製品名:あわとり錬太郎、THINKY社製)に投入し、1分間撹拌して異方性導電接着剤を作製した。
【0095】
絶縁性バインダーは、エポキシ樹脂(EP828:三菱化学社製);20gと、フェノキシ樹脂(YP−50:新日鉄住金化学社製);30gと、硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成社製);50gとをトルエンで希釈して調整し、混合させたものを用いた。
【0096】
[異方性導電フィルム(フィルム体)の作製]
異方性導電接着剤をPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンで5分間乾燥させ、異方性導電接着剤からなる粘着層をPETフィルム上に形成した。これにより、厚さ12μm(大径粒子の粒径の4倍)の異方性導電フィルムを得た。尚、異方性導電フィルム内の導電粒子の個数密度が約5000個/mm
2となるように調整した。
【0097】
[実験例2]
絶縁性フィラーの配合量を0.15g(導電粒子に対して23.5体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実験例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0098】
[実験例3]
絶縁性フィラーの配合量を0.05g(導電粒子に対して7.8体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実験例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0099】
[実験例4]
絶縁性フィラーを配合せずに異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実験例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0100】
[実験例5]
絶縁性フィラーの配合量を1g(導電粒子に対して156体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実験例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0101】
[実験例6]
絶縁性フィラーの配合量を0.01g(導電粒子に対して1.56体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実験例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0102】
[絶縁性フィラーの有無]
異方性導電フィルム中の導電粒子の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、導電粒子の表面に絶縁性フィラーが付着しているかどうかを確認した。導電粒子の表面に絶縁性フィラーが付着している場合を「有」と評価し、付着していない場合を「無」と評価した。結果を表1に示す。
【0103】
[導電粒子の個数密度の差]
異方性導電フィルム全体(1.0mm×1.0mm)の導電粒子の個数密度(個/mm
2)と、この異方性導電フィルムから任意に10箇所抽出した0.2mm×0.2mmの
領域における導電粒子の個数密度(個/mm
2)との差を評価した。評価基準を以下に示す。A又はBが好ましい。結果を表1に示す。尚、個数密度の差は、任意に抽出した所定領域における導電粒子の個数密度の最大値と最小値との差である。
A:個数密度差が10%以下
B:個数密度差が10より大きく15%以下
C:個数密度差が15%超(より大きい)
【0104】
[接続構造体の作製]
フレキシブル基板(銅配線:ライン/スペース(L/S)=25μm/25μm、端子高さ:8μm、ポリイミド厚み:25μm)と、ITOベタガラス(厚み:0.7mm)とを、作製した異方導電性フィルムを用いて、加熱押圧部材により加熱加圧(180℃、2MPa、20秒)し、接続構造体を得た。
【0105】
[初期抵抗値]
デジタルマルチメータ(横河電機社製)を用いて、4端子法にて電流1mAを流したときの接続構造体の導通抵抗値を測定した。接続構造体の導通抵抗値が2.0Ω未満の評価を「OK」とし、導通抵抗値が2.0Ω以上の評価を「NG」とした。実験例1〜3において、全てOKであった。
【0106】
[接続信頼試験後の抵抗値]
接続構造体を60℃、相対湿度95%の雰囲気下に1000時間放置後、この接続構造体の導通抵抗値を初期抵抗値と同様の方法で測定した。評価基準は、5.0Ω未満の評価を「OK」とし、導通抵抗値が5.0Ω以上の評価を「NG」とした。実験例1〜3において、全てOKであった。
【0107】
[導電粒子捕捉数]
接続構造体サンプルについて、対向する端子で捕捉された導電粒子数について実験例1〜3では十分な数が捕捉されていることを確認した。また、実験例1〜3と実験例4〜6で補足状態を比較すると、実験例1〜3の方が各バンプにおける捕捉数は均一な傾向を示した。
【0108】
[ショート]
初期抵抗値の評価で使用したものと同様の接続構造体を作製し、隣接する端子間のショートの発生の有無を評価した。ショート発生率が50ppm以下であるときの評価を「OK」とし、ショート発生率が50ppmを超えたときの評価を「NG」とした。実験例1〜3において、全てOKであった。
【表1】
【0109】
実験例1〜3では、導電粒子に対する、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02%以上5.0%以下である絶縁性フィラーの量が1.56体積%超156体積%未満として、導電粒子と絶縁性フィラーとを撹拌したことにより、異方性導電フィルムにおける導電粒子(第2の被覆導電粒子)の個数密度の差を小さくできることが分かった。特に、実験例1〜3から7.8〜78.2体積%とすれば良好な状態を得られることが分かる。すなわち、導電粒子の分散性が良好であることが分かった。
【0110】
実験例1〜3において、フィルム断面における導電粒子のSEM画像観察を行ったところ、絶縁性フィラーの被覆状態が確認できた。尚、このようにして得られた絶縁性バインダー中の第2の被覆導電粒子において、絶縁性フィラーの被覆の一部は残存する場合がある。この導電粒子表面の絶縁性フィラーの被覆の残存は、実験例1〜3に係る第2の被覆導電粒子の電子顕微鏡(SEM)による観察から確認することができた。
【0111】
また、実験例1〜3では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できることが分かった。さらに、実験例1〜3では、導電粒子捕捉率が良好であり、初期抵抗値、信頼性試験後の抵抗値の評価も良好であることが分かった。尚、実験例1、2では、特に導電粒子の分散性がより良好であることが分かった。
【0112】
粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜5.0%である絶縁性フィラーを配合しなかった実験例4では、導電粒子の個数密度の差を小さくできないことが分かった。すなわち、実験例4では、導電粒子の分散性が良好ではないことが分かった。また、実験例4では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できず、導電粒子捕捉率が良好でないことが分かった。また、実験例4では、実施例1〜3と比較すると初期抵抗値、信頼性試験後の抵抗値の評価がいずれも良好ではないことが分かった。
【0113】
導電粒子に対する、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.5%である絶縁性フィラーの量を156体積%とした実験例5では、導電粒子の個数密度の差を小さくできないことが分かった。すなわち、実験例5では、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.5%である絶縁性フィラーの個数割合が過剰であったため、導電粒子の分散性が良好ではないことが分かった。また、実験例5では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できず、導電粒子捕捉率が良好でないことが分かった。また、実験例5では、実施例1〜3と比較すると初期抵抗値、信頼性試験後の抵抗値の評価がいずれも良好ではないことが分かった。
【0114】
導電粒子に対する、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.5%である絶縁性フィラーの量を1.57体積%とした実験例6では、導電粒子の個数密度の差を小さくできないことが分かった。すなわち、実験例6では、導電粒子の粒子径の0.02〜0.5%の粒子径である絶縁性フィラーの個数割合が不足したため、導電粒子の分散性が良好ではないことが分かった。また、実験例6では、実施例1〜3と比較すると電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できず、導電粒子捕捉率が良好でないことが分かった。
【0115】
以下、本技術の第2の実施例について説明する。
【0116】
[実施例1]
[異方性導電接着剤の作製]
平均粒径20μmの導電粒子(Auメッキ(外層、厚み34nm)/Niメッキ(内層、厚み200nm)、樹脂コア、比重1.4g/cm
3)を1gと、絶縁性フィラーとして平均粒径10nmのシリカフィラー(製品名:YA010C、比重2.2g/cm
3)を0.5g(導電粒子に対して38.7体積%)とを、遊星式撹拌装置(製品名:あわとり錬太郎、THINKY社製)に投入し、5分間撹拌して、導電粒子と絶縁性フィラーの混合物を作製した。
【0117】
絶縁性フィラーの個数割合については、「適量」、「過剰」、「不足」のいずれかで評価した。具体的に、導電粒子に対するシリカフィラーの個数割合、すなわち、導電粒子に対するシリカフィラーの量が0.78〜77体積%の範囲にある場合を「適量」と評価した。また、導電粒子に対するシリカフィラーの量が77体積%を超える場合を「過剰」と評価した。さらに、導電粒子に対するシリカフィラーの量が0.78体積%未満の場合を「不足」と評価した。
【0118】
導電粒子と絶縁性フィラーとの混合物と、以下の各成分からなる絶縁性バインダーとを遊星式撹拌装置(製品名:あわとり錬太郎、THINKY社製)に投入し、1分間撹拌して異方性導電接着剤を作製した。
【0119】
絶縁性バインダーは、エポキシ樹脂(EP828:三菱化学社製);20gと、フェノキシ樹脂(YP−50:新日鉄住金化学社製);30gと、硬化剤(ノバキュア3941HP、旭化成社製);50gとをトルエンで希釈、混合させたものを用いた。
【0120】
[異方性導電フィルムの作製]
異方性導電接着剤をPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンで5分間乾燥させ、異方性導電接着剤からなる粘着層をPETフィルム上に形成した。これにより、厚さ25μmの異方性導電フィルムを得た。尚、異方性導電フィルム内の導電粒子の個数密度が約300個/mm
2となるように調整した。
【0121】
[絶縁性フィラーの有無]
異方性導電フィルム中の導電粒子の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、導電粒子の表面に絶縁性フィラーが付着しているかどうかを確認した。導電粒子の表面に絶縁性フィラーが付着している場合を「有」と評価し、付着していない場合を「無」と評価した。結果を表2に示す。
【0122】
[導電粒子の個数密度の差]
異方性導電フィルム全体(1.0mm×1.0mm)の導電粒子の個数密度(個/mm
2)と、この異方性導電フィルムから任意に10箇所抽出した0.2mm×0.2mmの
領域における導電粒子の個数密度(個/mm
2)との差を評価した。評価基準を以下に示す。A又はBが好ましい。尚、個数密度の差は、任意に抽出した所定領域における導電粒子の個数密度の最大値と最小値との差である。結果を表2に示す。
A:個数密度差が10%以下
B:個数密度差が10より大きく15%以下
C:個数密度差が15%超(より大きい)
【0123】
[接続構造体の作製]
フレキシブル基板(銅配線:ライン/スペース(L/S)=100μm/100μm、端子高さ:12μm、ポリイミド厚み:25μm)と、アルミナ製セラミック基板(金/タングステン配線:ライン/スペース(L/S)=100μm/100μm、配線高さ:10μm、基板厚み:0.4mm)とを、作製した異方導電性フィルムを用いて、加熱押圧部材により加熱加圧(180℃、1MPa、20秒)し、接続構造体を得た。
【0124】
[初期抵抗値]
デジタルマルチメータ(横河電機社製)を用いて、4端子法にて電流1mAを流したときの接続構造体の導通抵抗値を測定した。接続構造体の導通抵抗値が1.0Ω未満の評価を「OK」とし、導通抵抗値が1.0Ω以上の評価を「NG」とした。結果を表2に示す。
【0125】
[接続信頼試験後の抵抗値]
接続構造体を60℃、相対湿度95%の雰囲気下に1000時間放置後、この接続構造体の導通抵抗値を初期抵抗値と同様の方法で測定した。評価基準は、初期抵抗値と同様とした。結果を表2に示す。
【0126】
[導電粒子捕捉数]
接続構造体サンプルについて、対向する端子で捕捉された導電粒子数を数え、全端子数150本で捕捉された導電粒子数の平均値を求め、この平均値を以下の基準で評価した。評価基準を以下に示す。A又はBが好ましい。結果を表2に示す。
A:5個以上
B:3〜4個
C:2個未満
【0127】
[ショート]
初期抵抗値の評価で使用したものと同様の接続構造体を作製し、隣接する端子間のショートの発生の有無を評価した。ショート発生率が50ppm以下であるときの評価を「OK」とし、ショート発生率が50ppmを超えたときの評価を「NG」とした。結果を表2に示す。
【0128】
[実施例2]
絶縁性フィラーの配合量を0.15g(導電粒子に対して11.6体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0129】
[実施例3]
絶縁性フィラーの配合量を0.05g(導電粒子に対して3.9体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0130】
[比較例1]
絶縁性フィラーを配合せずに異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0131】
[比較例2]
絶縁性フィラーの配合量を1.0g(導電粒子に対して77.3体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0132】
[比較例2]
絶縁性フィラーの配合量を0.01g(導電粒子に対して0.77体積%)に変更して異方性導電接着剤を作製したこと以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製し、評価を行った。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例では、導電粒子に対する、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーの量が0.78〜77体積%として、導電粒子と絶縁性フィラーとを撹拌したことにより、異方性導電フィルムにおける導電粒子(第2の被覆導電粒子)の個数密度の差を小さくできることが分かった。特に、実施例から3.9〜38.7体積%とすれば良好な状態を得られることが分かる。すなわち、導電粒子の分散性が良好であることが分かった。また、実施例では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できることが分かった。さらに、実施例では、導電粒子捕捉率が良好であり、初期抵抗値、信頼性試験後の抵抗値の評価も良好であることが分かった。特に、実施例1、2では、導電粒子の分散性がより良好であることが分かった。
【0135】
実施例では、導電粒子と絶縁性フィラーとを撹拌したことにより、
図2に示すように第1の被覆導電粒子10が得られる。そして、第1の被覆導電粒子10を絶縁性バインダー中で撹拌することで、第1の被覆導電粒子10における導電粒子からシリカフィラーが乖離し、
図3に示すように第2の被覆導電粒子11が得られる。また、乖離したシリカフィラーが第2の被覆導電粒子11間に介在される。これにより、第2の被覆導電粒子11の凝集が抑制され、絶縁性バインダー中に第2の被覆導電粒子11を均一に分散させることができる。尚、このようにして得られた絶縁性バインダー中の第2の被覆導電粒子11において、絶縁性フィラーの被覆の一部は残存する場合がある。この導電粒子表面の絶縁性フィラーの被覆の残存は、実施例1〜3に係る第2の被覆導電粒子11の電子顕微鏡(SEM)による観察から確認することができた。
【0136】
粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーを配合しなかった比較例1では、導電粒子の個数密度の差を小さくできないことが分かった。すなわち、比較例1では、導電粒子の分散性が良好ではないことが分かった。また、比較例1では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できず、導電粒子捕捉率が良好でないことが分かった。比較例1では、
図4に示すようにシリカフィラーで被覆されていない導電粒子(生粒子)12を用いたことにより、
図5に示すように絶縁性バインダー中において複数の導電粒子12が連結、凝集してしまった。
【0137】
導電粒子に対する、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーの量を77.3体積%(77%超)超とした比較例2では、導電粒子の個数密度の差を小さくできないことが分かった。すなわち、比較例2では、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーの個数割合が過剰であったため、導電粒子の分散性が良好ではないことが分かった。また、比較例2では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できず、導電粒子捕捉率が良好でないことが分かった。また、比較例2では、初期抵抗値、信頼性試験後の抵抗値の評価がいずれも良好ではないことが分かった。比較例2では、導電粒子とシリカフィラーとを混合させた後に、例えば
図6に示すように2つの導電粒子がシリカフィラーで被覆された被覆導電粒子13が一部形成されていることが分かった。
【0138】
導電粒子に対する、粒子径が導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%である絶縁性フィラーの量を0.77体積%(0.78体積%未満)とした比較例3では、導電粒子の個数密度の差を小さくできないことが分かった。すなわち、比較例3では、導電粒子の粒子径の0.02〜0.143%の粒子径である絶縁性フィラーの個数割合が不足したため、導電粒子の分散性が良好ではないことが分かった。また、比較例3では、電子部品の電極端子間におけるショートを抑制できず、導電粒子捕捉率が良好でないことが分かった。