(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-145894(P2018-145894A)
(43)【公開日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】エンジンの弁装置と弁ガイド筒と弁ガイド筒の製造方法
(51)【国際特許分類】
F01L 3/08 20060101AFI20180824BHJP
【FI】
F01L3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-42139(P2017-42139)
(22)【出願日】2017年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諭
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇之
(72)【発明者】
【氏名】森永 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】深田 神
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山本 信裕
(57)【要約】
【課題】弁ガイド筒内での弁軸の膠着を抑制することができるエンジンの弁装置と弁ガイド筒と弁ガイド筒の製造方法を提供する。
【解決手段】先端部径大面6aと弁軸2aの間にポート1に向けて開口された先端部内隙間6cが形成され、中間部径大面7aと弁軸2aの間に中間部内隙間7bが形成され、先端部内隙間6cと中間部内隙間7bは、内周に先端寄りガイド面6bを備えた先端寄り円環突条6dで区画されている。弁ガイド筒3の製造方法では、金属粉末9の成形時に弁ガイド筒3の内周を形成する樹脂製中子10を用い、金属粉末9の焼結時の熱で、樹脂製中子10を溶融または熱分解させて、樹脂製中子10を弁ガイド筒3の焼結品から除く。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気と吸気の少なくとも一方のポート(1)と、このポート(1)の弁口(1a)を開閉するポペット弁(2)と、このポペット弁(2)の往復動をガイドする弁ガイド筒(3)と、この弁ガイド筒(3)が挿入されるガイド挿入孔(4)と、ポート(1)とガイド挿入孔(4)を有するシリンダヘッド(5)を備えた、エンジンの弁装置において、
弁ガイド筒(3)の内周は、ポペット弁(2)の弁軸(2a)をガイドする摺動ガイド面(3a)と、この摺動ガイド面(3a)よりも内径が大きい径大面(3b)を備え、
径大面(3b)は、ポート(1)側にある弁ガイド筒(3)の先端部(6)内に設けられた先端部径大面(6a)と、弁ガイド筒(3)の中間部(7)内に設けられた中間部径大面(7a)を備え、
摺動ガイド面(3a)は、先端部径大面(6a)と中間部径大面(7a)の間に設けられた先端寄りガイド面(6b)と、中間部径大面(7a)よりも基端(8)側に設けられた基端側ガイド面(8a)を備え、
先端部径大面(6a)と弁軸(2a)の間にポート(1)に向けて開口された先端部内隙間(6c)が形成され、中間部径大面(7a)と弁軸(2a)の間に中間部内隙間(7b)が形成され、先端部内隙間(6c)と中間部内隙間(7b)は、内周に先端寄りガイド面(6b)を備えた先端寄り円環突条(6d)で区画されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンの弁装置において、
中間部内隙間(7b)は、内周に中間部ガイド面(7c)を備えた中間部円環突条(7d)で区画された複数の分割隙間(7e)(7e)で構成され、複数の分割隙間(7e)(7e)は弁ガイド筒(3)の軸長方向となる上下方向に並べて配置されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンジンの弁装置において、
弁ガイド筒(3)の先端部(6)は、ガイド挿入孔(4)内に収容され、ガイド挿入孔(4)の内周面と弁ガイド筒(3)の先端部(6)の間にポート(1)に向けて開口される先端部外隙間(4a)が形成されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたエンジンの弁装置において、
ポペット弁(2)の全開時にポート(1)内に露出するポペット弁(2)の露出弁軸部分(2b)が、単一径とされている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたエンジンの弁装置に用いる弁ガイド筒であって、
弁ガイド筒(3)の内周は、ポペット弁(2)の弁軸(2a)をガイドする摺動ガイド面(3a)と、この摺動ガイド面(3a)よりも内径が大きい径大面(3b)を備え、
径大面(3b)は、ポート(1)側にある弁ガイド筒(3)の先端部(6)内に設けられた先端部径大面(6a)と、弁ガイド筒(3)の中間部(7)内に設けられた中間部径大面(7a)を備え、
摺動ガイド面(3a)は、先端部径大面(6a)と中間部径大面(7a)の間に設けられた先端寄りガイド面(6b)と、中間部径大面(7a)よりも基端(8)側に設けられた基端側ガイド面(8a)を備え、
先端部径大面(6a)と弁軸(2a)の間にポート(1)に向けて開口された先端部内隙間(6c)が形成され、中間部径大面(7a)と弁軸(2a)の間に中間部内隙間(7b)が形成され、先端部内隙間(6c)と中間部内隙間(7b)は、内周に先端寄りガイド面(6b)を備えた先端寄り円環突条(6d)で区画されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置に用いる弁ガイド筒。
【請求項6】
請求項5に記載されたエンジンの弁装置に用いる弁ガイド筒の製造方法であって、
弁ガイド筒(3)を金属粉末(9)の焼結で製造するに当たり、
金属粉末(9)の成形時に弁ガイド筒(3)の内周を形成する樹脂製中子(10)を用い、金属粉末(9)の焼結時の熱で、樹脂製中子(10)を溶融または熱分解させて、樹脂製中子(10)を弁ガイド筒(3)の焼結品から除く、ことを特徴とする弁ガイド筒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの弁装置に関し、詳しくは、弁ガイド筒内での弁軸の膠着を抑制することができるエンジンの弁装置と弁ガイド筒と弁ガイド筒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの弁装置として、次のものがある(特許文献1参照)。
吸気ポートと、この吸気ポートの弁口を開閉するポペット弁と、このポペット弁の往復動をガイドする弁ガイド筒と、この弁ガイド筒が挿入されるガイド挿入孔と、ポートとガイド挿入孔を有するシリンダヘッドを備えた、エンジンの弁装置。
【0003】
この種の弁装置によれば、ポペット弁の往復動を弁ガイド筒でスムーズにガイドすることができる利点がある。
【0004】
この弁装置では、弁ガイド筒の内周は、ポペット弁の弁軸をガイドする摺動ガイド面と、この摺動ガイド面よりも内径が大きい先端部径大面を備え、先端部径大面と弁軸の間にポートに向けて開口された先端部隙間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−28610号公報(第2図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 弁ガイド筒内で弁軸が膠着するおそれがある。
特許文献1のものでは、先端部隙間内で燃料が炭化すると、弁軸と摺動ガイド面の間に炭化物が噛み込み、弁ガイド筒内で弁軸が膠着するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、弁ガイド筒内での弁軸の膠着を抑制することができるエンジンの弁装置と弁ガイド筒と弁ガイド筒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1に係る発明の発明特定事項)
図1または
図2に例示するように、吸気と排気の少なくとも一方のポート(1)と、このポート(1)の弁口(1a)を開閉するポペット弁(2)と、このポペット弁(2)の往復動をガイドする弁ガイド筒(3)と、この弁ガイド筒(3)が挿入されるガイド挿入孔(4)と、ポート(1)とガイド挿入孔(4)を有するシリンダヘッド(5)を備えた、エンジンの弁装置において、次のようにした。
【0009】
図1または
図2に例示するように、弁ガイド筒(3)の内周は、ポペット弁(2)の弁軸(2a)をガイドする摺動ガイド面(3a)と、この摺動ガイド面(3a)よりも内径が大きい径大面(3b)を備え、
径大面(3b)は、ポート(1)側にある弁ガイド筒(3)の先端部(6)内に設けられた先端部径大面(6a)と、弁ガイド筒(3)の中間部(7)内に設けられた中間部径大面(7a)を備え、
摺動ガイド面(3a)は、先端部径大面(6a)と中間部径大面(7a)の間に設けられた先端寄りガイド面(6b)と、中間部径大面(7a)よりも基端(8)側に設けられた基端側ガイド面(8a)を備えている。
【0010】
先端部径大面(6a)と弁軸(2a)の間にポート(1)に向けて開口された先端部内隙間(6c)が形成され、中間部径大面(7a)と弁軸(2a)の間に中間部内隙間(7b)が形成され、先端部内隙間(6c)と中間部内隙間(7b)は、内周に先端寄りガイド面(6b)を備えた先端寄り円環突条(6d)で区画されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【0011】
(請求項5に係る発明の発明特定事項)
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたエンジンの弁装置に用いる弁ガイド筒であって、次のようにした。
【0012】
図1または
図2に例示するように、弁ガイド筒(3)の内周は、ポペット弁(2)の弁軸(2a)をガイドする摺動ガイド面(3a)と、この摺動ガイド面(3a)よりも内径が大きい径大面(3b)を備え、
径大面(3b)は、ポート(1)側にある弁ガイド筒(3)の先端部(6)内に設けられた先端部径大面(6a)と、弁ガイド筒(3)の中間部(7)内に設けられた中間部径大面(7a)を備え、
摺動ガイド面(3a)は、先端部径大面(6a)と中間部径大面(7a)の間に設けられた先端寄りガイド面(6b)と、中間部径大面(7a)よりも基端(8)側に設けられた基端側ガイド面(8a)を備えている。
【0013】
先端部径大面(6a)と弁軸(2a)の間にポート(1)に向けて開口された先端部内隙間(6c)が形成され、中間部径大面(7a)と弁軸(2a)の間に中間部内隙間(7b)が形成され、先端部内隙間(6c)と中間部内隙間(7b)は、内周に先端寄りガイド面(6b)を備えた先端寄り円環突条(6d)で区画されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置に用いる弁ガイド筒。
【0014】
(請求項6に係る発明の発明特定事項)
請求項5に記載されたエンジンの弁装置に用いる弁ガイド筒の製造方法であって、
図3または
図4に例示するように、弁ガイド筒(3)を金属粉末(9)の焼結で製造するに当たり、
金属粉末(9)の成形時に弁ガイド筒(3)の内周を形成する樹脂製中子(10)を用い、金属粉末(9)の焼結時の熱で、樹脂製中子(10)を溶融または熱分解させて、樹脂製中子(10)を弁ガイド筒(3)の焼結品から除くことを特徴とする弁ガイド筒の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1または請求項5に係る発明)
請求項1または請求項5に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果1》 弁ガイド筒内での弁軸の膠着を抑制することができる。
図1または
図2に例示するように、本発明では、先端部内隙間(6c)や先端寄りガイド面(6b)で、排気中の未燃燃料や吸気中のEGRガスの成分が炭化しても、炭化物は、中間部内隙間(7b)に排出されて溜まり、炭化物が弁軸(2a)と摺動ガイド面(3a)の間に噛み込む不具合が抑制され、弁ガイド筒(3)内での弁軸(2a)の膠着を抑制することができる。
【0016】
《効果2》 弁ガイド筒内での弁軸の膠着抑制機能が高い。
図1または
図2に例示するように、本発明では、先端部内隙間(6c)がポート(1)に向けて開口されているため、先端部内隙間(6c)内の比較的高温の排気や吸気がポート(1)内を通過する比較的低温の排気や吸気と対流によって入れ替わり、弁ガイド筒(3)の先端部(6)に蓄積された熱が入れ替わった排気や吸気に放熱され、弁ガイド筒(3)の先端部(6)の過熱が抑制される。これにより、先端部内隙間(6c)や先端寄りガイド面(6b)での炭化物の生成が抑制され、弁ガイド筒(3)内でのポペット弁(2)の膠着抑制機能が高い。
【0017】
《効果3》 弁ガイド筒と弁軸の偏磨耗が抑制される。
図1または
図2に例示するように、本発明では、弁軸(2a)は、先端寄りガイド面(6b)と基端側ガイド面(8a)に亘る比較的長い支持スパンで支持され、傾きにくいため、弁ガイド筒(3)と弁軸(2a)の偏磨耗が抑制される。
【0018】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 弁ガイド筒の製造が簡単になる。
金属粉末(9)の焼結時の熱で、樹脂製中子(10)が溶融により弁ガイド筒(3)の焼結品から流出して除かれ、或いは、熱分解により焼失して除かれるため、外周に凹凸のある樹脂製中子(10)が弁軸ガイド筒(3)の焼結品から簡単に除去され、弁ガイド筒(3)の製造が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの弁装置の縦断面図である。である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るエンジンの弁装置の縦断面図である。
【
図3】
図1の弁装置で用いる弁ガイド筒の製造方法の説明図である。
【
図4】
図2の弁装置で用いる弁ガイド筒の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の第1実施形態に係るエンジンの弁装置、
図2は第2実施形態に係るエンジンの弁装置、
図3は
図1の弁装置で用いる弁ガイド筒の製造方法、
図4は
図2の弁装置で用いる弁ガイド筒の製造方法を説明する図で、各実施形態では、立形ディーゼルエンジンの排気弁装置について説明する。
【0021】
まず、第1実施形態について説明する。
図1に示すように、この立形ディーゼルエンジンの排気弁装置は、排気のポート(1)と、このポート(1)の弁口(1a)を開閉するポペット弁(2)と、このポペット弁(2)の往復動をガイドする弁ガイド筒(3)と、この弁ガイド筒(3)が挿入されるガイド挿入孔(4)と、ポート(1)とガイド挿入孔(4)を有するシリンダヘッド(5)を備えている。
この種の弁装置によれば、ポペット弁(2)の往復動を弁ガイド筒(3)でスムーズにガイドすることができる利点がある。
【0022】
ポペット弁(2)は、弁軸(2a)と弁頭(2c)を備えている。
ポート(1)の開口端には円環形の弁座(1b)が内嵌され、弁座(1b)内に弁口(1a)が開口されている。
この排気弁装置は、ポペット弁(2)の弁軸(2a)に取り付けられたスプリングリテーナ(11)と、スプリングリテーナ(11)とシリンダヘッド(5)の間に配置されたバルブスプリング(12)と、弁軸(2a)に当接されたロッカアーム(13)と、弁ガイド筒(3)の基端部に外嵌された弁軸シール(14)を備え、バルブスプリング(12)の付勢力で、弁頭(2c)の弁面(2)が弁座(1b)に着座し、ロッカアーム(13)の押圧力により、バルブスプリング(12)の付勢力に抗して、ポペット弁(2)が下降し、ポペット弁(2)が開く。
【0023】
この排気弁装置の弁ガイド筒の構成は、次の通りである。
図1に示すように、弁ガイド筒(3)の内周は、ポペット弁(2)の弁軸(2a)をガイドする摺動ガイド面(3a)と、この摺動ガイド面(3a)よりも内径が大きい径大面(3b)を備えている。
径大面(3b)は、ポート(1)側にある弁ガイド筒(3)の先端部(6)内に設けられた先端部径大面(6a)と、弁ガイド筒(3)の中間部(7)内に設けられた中間部径大面(7a)を備えている。
摺動ガイド面(3a)は、先端部径大面(6a)と中間部径大面(7a)の間に設けられた先端寄りガイド面(6b)と、中間部径大面(7a)よりも基端(8)側に設けられた基端側ガイド面(8a)を備えている。
【0024】
先端部径大面(6a)と弁軸(2a)の間にポート(1)に向けて開口された先端部内隙間(6c)が形成され、中間部径大面(7a)と弁軸(2a)の間に中間部内隙間(7b)が形成され、先端部内隙間(6c)と中間部内隙間(7b)は、内周に先端寄りガイド面(6b)を備えた先端寄り円環突条(6d)で区画されている。
【0025】
図1に示すように、弁ガイド筒(3)の先端部(6)は、ガイド挿入孔(4)内に収容され、ガイド挿入孔(4)の内周面と弁ガイド筒(3)の先端部(6)の間にポート(1)に向けて開口される先端部外隙間(4a)が形成されている。
【0026】
この実施形態では、先端部外隙間(4a)がポート(1)に向けて開口されているため、先端部外隙間(4a)内で比較的高温となった排気や吸気がポート(1)内を通過する比較的低温の排気や吸気と対流により入れ替わり、弁ガイド筒(3)の先端部(6)に蓄積された熱が入れ替わった排気や吸気に放熱され、弁ガイド筒(3)の先端部(6)の過熱が抑制される。これにより、先端部内隙間(6c)や先端寄りガイド面(6b)での炭化物の生成が抑制され、弁ガイド筒(3)内でのポペット弁(2)の膠着抑制機能が高い。
【0027】
図1に例すように、この実施形態では、ポペット弁(2)の全開時にポート(1)内に露出するポペット弁(2)の露出弁軸部分(2b)が、単一径とされている。
この実施形態では、ポペット弁(2)の全開時にポート(1)内を高速で通過する排気や吸気の衝突を受けるポペット弁(2)の露出弁軸部分(2b)が、単一径であるため、露出弁軸部分(2b)に応力集中やヒートポイントの要因となる隅角部が形成されず、ポペット弁(2)の損傷が抑制される。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図2に示すように、この第2実施形態では、中間部内隙間(7b)は、内周に中間部ガイド面(7c)を備えた中間部円環突条(7d)で区画された複数の分割隙間(7e)(7e)で構成され、複数の分割隙間(7e)(7e)は弁ガイド筒(3)の軸長方向となる上下方向に並べて配置されている。
他の構成は、
図1に示す第1実施形態と同じである。
図2中、第1実施形態と同一の要素には、
図1と同一の符号を付しておく。
【0029】
この第2実施形態では、先端部内隙間(6c)から先端寄りガイド面(6b)を経て浮上した炭化物は、上方の中間部ガイド面(7c)を経て上方の分割隙間(7e)(7e)に順次浮上し、複数の分割隙間(7e)(7e)に少量ずつ分散して溜められるため、中間内隙間(7b)に溜まった炭化物の荷重で先端寄りガイド面(6c)からの炭化物の浮上が妨げられる不具合が抑制され、弁ガイド筒内での弁軸(2a)の膠着抑制機能が高い。
【0030】
また、この第2実施形態では、中間部内隙間(7b)は、中間部円環突条(7d)で複数の分割隙間(7e)(7e)に区画されているため、先端部内隙間(6c)から中間部内隙間(7b)を経て弁ガイド筒(3)の基端(8)側に至る熱の伝達が、中間部円環突条(7d)で遮られ、弁ガイド筒(3)の基端部(8)の温度上昇が抑制される。これにより、弁ガイド筒(3)の基端(8)に設けられる弁軸シール(11)の熱損傷が抑制される。
【0031】
上記各実施形態では、排気のポート(1)とこれに用いるポヘット弁(2)について説明したが、各実施形態では、吸気のポートとこれに用いるポペット弁も同様の構造となっている。
【0032】
次に、
図1に示す第1実施形態で用いる弁ガイド筒の製造方法について説明する。
図3に示すように、この製造方法では、弁ガイド筒(3)を金属粉末(9)の焼結で製造するに当たり、金属粉末(9)の成形時に弁ガイド筒(3)の内周を形成する樹脂製中子(10)を用いる。
次に、金属粉末(9)の焼結時の熱で、樹脂製中子(10)を溶融または熱分解させて、樹脂製中子(10)を弁ガイド筒(3)の焼結品から除く。
【0033】
この実施形態では、金属粉末(9)の焼結時の熱で、樹脂製中子(10)が溶融により弁ガイド筒(3)の焼結品から流出して除かれ、或いは、熱分解により焼失して除かれるため、外周に凹凸のある樹脂製中子(10)を弁軸ガイド筒(3)の焼結品から簡単に除去され、弁ガイド筒(3)の製造が簡単になる。
【0034】
金属粉末(9)には、鉄系の焼結金属材料を用いる。
金属粉末(9)の成形には、金型(15)によるプレス成形がなされる。金型(15)は金属粉末(9)を充填するキャビティ(15a)と金属粉末(9)をキャビティ(15a)に供給する供給口(15b)を備えたダイ(15c)と、ダイ(15c)の内部で昇降する上下パンチ(15d)(15e)で構成されている。
樹脂製中子(10)には、ナイロン等の熱可塑性樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
樹脂製中子(10)に熱可塑性樹脂を用いた場合には、樹脂製中子(10)は、溶融により弁ガイド筒(3)の焼結品から除かれる。
樹脂製中子(10)に熱硬化性樹脂を用いた場合には、樹脂製中子(10)は、熱分解により弁ガイド筒(3)の焼結品から除かれる。
樹脂製中子(10)には、ガラス繊維等の繊維で補強したものを用いる。
この樹脂製中子(10)の外周には、先端側から順に、先端部径大面(6a)、先端寄りガイド面(6b)、中間部径大面(7a)、基端側ガイド面(8a)を形成するための凹凸が形成されている。
【0035】
図2に示す第2実施形態で用いる弁ガイド筒の製造方法を
図4に示す。
図4に示すように、この製造方法も、
図3に示す製造方法と同じである。
図4中、
図3と同一の要素には、
図3と同一の符号を付しておく。
この樹脂製中子(10)の外周には、先端側から順に、先端部径大面(6a)、先端寄りガイド面(6b)、中間部径大面(7a)、中間部ガイド面(7c)、基端側ガイド面(8a)を形成するための凹凸が形成されている。
【符号の説明】
【0036】
(1)…ポート、(1a)…弁口、(2)…ポペット弁、(2a)…弁軸、(2b)…露出弁軸部分、(3)…弁ガイド筒、(3a)…摺動ガイド面、(3b)…径大面、(4)…ガイド挿入孔、(4a)…先端部外隙間、(5)…シリンダヘッド、(6)…先端部、(6a)…先端部径大面、(6b)…先端寄りガイド面、(6c)…先端部内隙間、(6d)…先端寄り円環突条、(7)…中間部、(7a)…中間部径大面、(7b)…中間部内隙間、(7c)…中間部ガイド面、(7d)…中間部円環突条、(7e)…分割隙間、(8)…基端、(8a)…基端側ガイド面、(9)…金属粉末、(10)…樹脂製中子。