【解決手段】軸連結構造45Aは、ピストンロッド22に対して相対回転可能に装着されるとともに複数の係合突起49が設けられたストッパ部材48と、複数の係合突起49がそれぞれ挿入された複数のスロット溝50とを備える。複数のスロット溝50は、複数の入口溝56と、周方向に対して傾斜する方向に延在する複数の傾斜係合溝60とを有する。ピストンロッド22とピストン部材20とは、ストッパ部材48を介して相対軸方向移動が不可能に連結されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の軸連結構造としては、(1)ネジ又はボルトによる締結、(2)部材を塑性変形させる加締めによる締結、(3)溶接による連結、(4)Tスロットによる連結がある。
【0005】
上記(1)の軸連結構造の場合、ネジ又はボルトを締め付けるための工具と、締め付け用の作業スペースが必要である。上記(2)の軸連結構造の場合、加締めを行う設備及び治具が必要である。上記(3)の軸連結構造の場合、溶接設備が必要である。上記(4)の軸連結構造の場合、軸部材を側面方向から移動させる必要があるため、横方向にスペースが必要である。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、軸部材と相手部材とを工具や設備を用いることなく手作業で連結することを可能にすることで製品コストや組立工数の削減を図ることができるとともに、組立作業の省スペース化を図ることが可能な軸連結構造及び流体圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸部材と、前記軸部材と組み合わされる相手部材とを連結する軸連結構造であって、前記軸部材に対して相対回転可能に装着されるとともに、外方に突出した複数の係合突起が周方向に間隔を置いて設けられたストッパ部材と、前記相手部材において円周上に設けられ、前記複数の係合突起がそれぞれ挿入された複数のスロット溝と、を備え、前記複数のスロット溝は、前記相手部材の端面にて開口するとともに軸方向に深さを有する複数の入口溝と、前記複数の入口溝から連なり、周方向に対して傾斜する方向に延在し、前記複数の係合突起と係合した複数の傾斜係合溝と、を有し、前記軸部材と前記相手部材とは、前記ストッパ部材を介して相対軸方向移動が不可能に連結されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成を備えた軸連結構造によれば、軸部材と相手部材とを連結する際に、軸部材に装着されたストッパ部材を相手部材に対して軸方向に移動させることで、相手部材に設けられたスロット溝の入口溝にストッパ部材の係合突起を挿入し、さらに押し込むと、傾斜係合溝のガイド作用により、相手部材内でストッパ部材が回転する。このため、専用工具を用いることなく、組立の際にストッパ部材を相手部材に対して回転させて、軸部材と相手部材とを簡単に接続することができる。すなわち、工具レスの組立てが可能となる。また、1方向への変位のみで軸部材と相手部材とを連結できるため、作業の省スペース化が図られる。従って、本発明の軸連結構造によれば、組立作業を簡素化することができる。
【0009】
前記軸部材の外周部には、環状のストッパ装着溝が設けられ、前記ストッパ部材は、周方向に分割された複数のストッパピースにより構成されるとともに、前記ストッパ装着溝に装着されていることが好ましい。
【0010】
この構成により、組立ての際に、軸部材の外周部にストッパ部材を容易に装着することができる。
【0011】
前記相手部材に対して相対回転不可能に前記複数のスロット溝に挿入された回転止め部材を備え、前記回転止め部材により、前記複数の係合突起が前記入口溝へと移動することが阻止されていることが好ましい。
【0012】
この構成により、組立後にストッパ部材が回転して軸部材が相手部材から抜けることが防止されるため、組立後の軸部材と相手部材との連結を維持することができる。
【0013】
前記回転止め部材は、前記複数の入口溝に挿入された複数の凸状部を有し、前記複数の凸状部は、前記複数の係合突起と周方向に対向していることが好ましい。
【0014】
この構成により、相手部材に対してストッパ部材が回転しようとした際に、凸状部により係合突起が確実に係止されるため、組立後の軸部材と相手部材との接続状態を確実に維持することができる。
【0015】
前記回転止め部材は、前記軸部材を囲む環状に構成された環状基部を有し、前記複数の凸状部は、前記環状基部から軸方向に突出していることが好ましい。
【0016】
この構成により、回転止め部材は、環状基部と複数の凸状部とを有する1つの部材であるため、一回の装着作業で相手部材に簡単に装着することができる。
【0017】
前記複数の係合突起は、前記複数の傾斜係合溝に沿って傾斜していることが好ましい。
【0018】
この構成により、係合突起と傾斜係合溝との間の軸方向のガタを少なくすることができる。
【0019】
前記係合突起は、前記相手部材に対する前記軸部材の挿入方向側を向く第1面と、前記第1面とは反対側を向く第2面とを有し、前記複数の傾斜係合溝は、前記第1面と非平行に対向するとともに周方向に対して傾斜した傾斜ガイド面を有することが好ましい。
【0020】
この構成により、組立ての際に、係合突起が押し当てられる傾斜ガイド面と、係合突起の第1面とには角度差があるため、摩擦抵抗が減り、係合突起が係合溝にスムーズに挿入されやすい。従って、相手部材に対してストッパ部材が回転しやすいため、相手部材に軸部材を押し込むための力を低減でき、組立作業の一層の容易化が図られる。
【0021】
前記複数の係合突起の各々は、前記相手部材に対する前記軸部材の挿入方向側を向く第1面と、前記第1面とは反対側を向く第2面とを有し、前記複数の傾斜係合溝の各々は、前記第2面と平行に対向するとともに周方向に対して傾斜した傾斜面を有することが好ましい。
【0022】
この構成により、抜け方向の軸部材と相手部材との接触面において、係合突起と傾斜係合溝との接触面積が大きくなるため、係合突起が傾斜係合溝から抜ける方向の摩擦抵抗が高くなる。これにより、抜け方向への力が作用した際のストッパ部材の回転運動を良好に抑制することが可能となる。
【0023】
前記相手部材は、摺動孔内を軸方向に変位可能なピストン本体であり、前記軸部材は、前記ピストン本体から軸方向に突出したピストンロッドであることが好ましい。
【0024】
この構成により、ピストン本体とピストンロッドとにより構成されるピストン組立体の組立作業を簡素化することができる。
【0025】
前記軸部材と前記相手部材とは、前記ストッパ部材を介して相対回転可能に連結されていることが好ましい。
【0026】
この構成により、ピストン本体の外形形状に関わらず、ピストン組立体を備えた流体圧装置の設備への据え付けの際に、ピストンロッドを容易に回転させることができ、便利である。
【0027】
前記軸部材は、流体圧シリンダのボディから軸方向に突出したピストンロッドであり、前記ボディには、前記ピストンロッドの軸に沿ってガイドロッドが摺動可能に支持されており、前記相手部材は、前記ボディの外側で前記ピストンロッドに連結され且つ前記ガイドロッドに連結された出力部材であることが好ましい。
【0028】
この構成により、組立工程において、出力部材とピストンロッドとを専用工具や設備を用いることなく簡単に連結することができる。また、ボルトで連結する場合と異なり、出力部材とピストンロッドとは、ピストンロッドの径方向に僅かにガタがある状態(径方向のフローティング状態)で連結しているため、出力部材とピストンロッドとは、自動的に調芯がなされる。このため、調芯のための治具が不要であり、組立工数の削減が図られる。従って、ピストンロッドと出力部材とを備えたガイド付きシリンダの組立作業を簡素化することができる。
【0029】
また、本発明は、ピストンロッドと、前記ピストンロッドと連結された相手部材とを備えた流体圧装置であって、前記ピストンロッドに対して相対回転可能に装着されるとともに、外方に突出した複数の係合突起が周方向に間隔を置いて設けられたストッパ部材と、前記相手部材において円周上に設けられ、前記複数の係合突起がそれぞれ挿入された複数のスロット溝と、を備え、前記複数のスロット溝は、前記相手部材の端面にて開口するとともに軸方向に深さを有する複数の入口溝と、前記複数の入口溝から連なり、周方向に対して傾斜する方向に延在し、前記複数の係合突起と係合した複数の傾斜係合溝と、を有し、前記ピストンロッドと前記相手部材とは、前記ストッパ部材を介して相対軸方向移動が不可能に連結されていることを特徴とする。
【0030】
前記流体圧装置は、流体圧シリンダ、バルブ装置、測長シリンダ、スライドテーブル又はチャック装置として構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の軸連結構造及び流体圧装置によれば、軸部材と相手部材とを工具や設備を用いることなく手作業で連結することを可能にすることで製品コストや組立工数の削減を図ることができるとともに、組立作業の省スペース化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る軸連結構造及び流体圧装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0034】
流体圧装置の一例として
図1に示す流体圧シリンダ10Aは、中空筒状のシリンダチューブ12(ボディ)と、シリンダチューブ12の一端部に配置されたヘッドカバー14と、シリンダチューブ12の他端部に配置されたロッドカバー16と、シリンダチューブ12の軸方向に沿って往復移動可能に配置されたピストン組立体17とを備える。
【0035】
ピストン組立体17は、シリンダチューブ12内に軸方向(矢印X方向)に移動可能に配置されたピストン部材20と、ピストン部材20に連結されたピストンロッド22とを有する。この流体圧シリンダ10Aは、例えばワークの搬送等のためのアクチュエータとして用いられる。
【0036】
シリンダチューブ12は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料により構成され、軸方向に沿って延在した筒体からなる。本実施形態では、シリンダチューブ12は、中空円筒形に形成されている。シリンダチューブ12は、軸方向の一端側(矢印X2方向側)に設けられた第1ポート12aと、軸方向の他端側(矢印X1方向側)に設けられた第2ポート12bと、第1ポート12a及び第2ポート12bに連通する摺動孔13(シリンダ室)とを有する。
【0037】
ヘッドカバー14は、例えば、シリンダチューブ12と同様の金属材料により構成された板状体であり、シリンダチューブ12の一端部(矢印X2方向側の端部)を閉塞するように設けられている。ヘッドカバー14により、シリンダチューブ12の一端部が気密に閉じられている。
【0038】
ロッドカバー16は、例えば、シリンダチューブ12と同様の金属材料により構成された円形リング状の部材であり、シリンダチューブ12の他端部(矢印X1方向側の端部)を閉塞するように設けられている。ロッドカバー16の外周部には、ロッドカバー16の外周面と摺動孔13の内周面との間をシールする弾性材料からなる外側シール部材24が装着されている。
【0039】
ロッドカバー16の内周部には、ロッドカバー16の内周面とピストンロッド22の外周面との間をシールする弾性材料からなる内側シール部材26が装着されている。なお、ロッドカバー16は、シリンダチューブ12の他端側の内周部に固定されたストッパ28により係止されている。
【0040】
ピストン部材20は、シリンダチューブ12内(摺動孔13)に軸方向に摺動可能に収容され、摺動孔13内を第1ポート12a側の第1圧力室13aと第2ポート12b側の第2圧力室13bとに仕切っている。本実施形態において、ピストン部材20は、ピストンロッド22の基端部22aに連結されている。
【0041】
ピストン部材20は、ピストンロッド22の基端部22aから径方向外側に突出した環状の部材である。ピストン部材20の外径は、ピストンロッド22の外径よりも大きい。
図1及び
図3に示すように、ピストン部材20の中心部には、軸方向に貫通した貫通孔20aが設けられている。ピストン部材20の外周部には、環状のパッキン装着溝20b及び環状のマグネット装着溝20cが軸方向に間隔を置いて設けられている。
【0042】
ピストン部材20は、硬質樹脂により構成されている。例えば、射出成形により、樹脂製のピストン部材20を作製することができる。なお、ピストン部材20は、樹脂製に限らず、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属材料により構成されてもよい。
【0043】
図1及び
図2に示すように、パッキン装着溝20bにはパッキン30が装着されている。パッキン30は、弾性体からなる円環状シール部材(例えば、Oリング)である。パッキン30の構成材料としては、ゴム材やエラストマー材等の弾性材料が挙げられる。パッキン30は、その全周に亘って、摺動孔13の内周面及びパッキン装着溝20bと気密又は液密に密着している。パッキン30によりピストン部材20の外周面と摺動孔13の内周面との間がシールされ、摺動孔13内の第1圧力室13aと第2圧力室13bが気密又は液密に仕切られている。
【0044】
マグネット装着溝20cには、円形リング状のマグネット38が装着されている。マグネット38は、弾性変形可能に構成されたプラスチックマグネットであり、
図3に示すように、周方向の一部にスリット38a(切れ目)が設けられている。このため、マグネット38は、マグネット装着溝20cへの装着に際して弾性変形することにより容易に装着が可能である。
【0045】
なお、
図1に示すシリンダチューブ12の外面には、ピストン部材20のストローク両端に相当する位置に図示しない磁気センサが取り付けられている。マグネット38が発生する磁気を磁気センサによって感知することで、ピストン部材20の動作位置が検出される。
【0046】
ピストンロッド22は、摺動孔13の軸方向に沿って延在する柱状(円柱状)の部材である。ピストンロッド22はロッドカバー16を貫通している。ピストンロッド22の先端部22bは、摺動孔13の外部に露出している。ピストンロッド22の構成材料としては、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属材料や、硬質樹脂等が挙げられる。
【0047】
ピストン部材20の内周部には、例えば、ゴム材やエラストマー材等の弾性材料(ウレタンゴム等)により構成された端部側ダンパ40が配置されている。端部側ダンパ40は、ヘッドカバー14側のストロークエンド到達時の衝撃を緩和する。端部側ダンパ40は、ピストン部材20とピストンロッド22との間に保持されるとともに、ピストン部材20の中心部に設けられた円形の貫通孔20aからヘッドカバー14側(矢印X2方向側)に突出している。
【0048】
端部側ダンパ40は、円筒形状(又は円盤形状)を有する。端部側ダンパ40のピストンロッド22側の端部には、径方向外側に突出した環状の鍔部40aが設けられている。端部側ダンパ40は、ピストン部材20の内周部及びピストンロッド22の端面22cと密着しており、これにより、ピストン部材20とピストンロッド22との間を気密又は液密にシールしている。
【0049】
ピストン組立体17は、軸部材であるピストンロッド22と相手部材であるピストン部材20とを連結する軸連結構造45Aを備える。
図1及び
図3に示すように、軸連結構造45Aは、ピストンロッド22に対して相対回転可能に装着されたストッパ部材48と、ピストン部材20に設けられた複数(図示例では4つ)のスロット溝50と、スロット溝50に挿入された回転止め部材54とを備える。
【0050】
ピストンロッド22の外周部には、周方向に円環状に延在するストッパ装着溝23が設けられている。ストッパ装着溝23にストッパ部材48が装着されている。ストッパ部材48は、径方向外方に突出するとともに周方向に間隔を置いて設けられた複数の係合突起49を有する。複数の係合突起49は互いに等間隔に配置されている。
【0051】
ストッパ部材48は、周方向に分割された複数(
図3では2つ)のストッパピース48aにより構成され、複数のストッパピース48aが組み合わさることで円環状となっている。スロット溝50にストッパ部材48が挿入されることで、ストッパ部材48は、ストッパ装着溝23から離脱することが阻止されている。
【0052】
具体的に、ストッパピース48aは、半円弧状に形成された弧状基部48bを有する。弧状基部48bがストッパ装着溝23に挿入されている。各弧状基部48bに複数の係合突起49が一体成形により設けられている。各弧状基部48bには係合突起49が1つだけ設けられてもよい。
【0053】
係合突起49は、周方向に対して傾斜している。具体的には、係合突起49は、後述する傾斜係合溝60に沿って傾斜している。
図4に示すように、係合突起49は、ピストン部材20に対するピストンロッド22の挿入方向側を向く第1面49aと、第1面49aとは反対側を向く第2面49bと、係合突起49の周方向の両端面を構成する2つの側面49cとを有する。第1面49a及び第2面49bは、周方向に対して傾斜している。2つの側面49cは、ストッパ部材48の軸と平行である。
【0054】
ピストンロッド22とピストン部材20とは、ストッパ部材48を介して相対軸方向移動が不可能に連結されている。ストッパ部材48は、硬質材料、例えば、上述したピストンロッド22と同様の材料により構成される。
【0055】
図3に示すように、複数のスロット溝50は、環状のピストン部材20の内周部に、ピストン部材20の軸を中心とする円周上に等間隔に配置されている。複数のスロット溝50に、複数の係合突起49がそれぞれ挿入されている。これらのスロット溝50は、互いに同一形状に形成されている。各スロット溝50は、ピストン部材20の端面20dにて開口するとともに軸方向に深さを有する入口溝56と、入口溝56から連なる傾斜係合溝60とを有する。
【0056】
入口溝56は、ストッパ部材48の係合突起49を受容可能である。
図4に示すように、傾斜係合溝60には、ストッパ部材48の係合突起49が挿入され、これにより係合突起49が傾斜係合溝60に係合している。傾斜係合溝60は、周方向に対して傾斜する方向に延在している。換言すれば、傾斜係合溝60は、ピストン部材20の軸を中心とする螺旋に沿って延在している。傾斜係合溝60は、周方向に対して傾斜した傾斜ガイド面60aと、周方向に対して傾斜した傾斜面60bとを有する。
【0057】
傾斜ガイド面60aは、係合突起49の第1面49aと非平行に対向するとともに、入口溝56の最奥部の内壁面56aに隣接している。当該内壁面56aは、傾斜ガイド面60aと面一で連なるように周方向に対して傾斜している。傾斜ガイド面60aと第1面49aとの間には、入口溝56側に向かって軸方向寸法が大きくなる隙間が形成されている。傾斜面60bは、係合突起49の第2面49bと平行に対向している。
【0058】
回転止め部材54は、ピストン部材20に対して相対回転不可能に複数のスロット溝50に挿入されている。回転止め部材54により、係合突起49が入口溝56へと移動することが阻止されている。
図3に示すように、回転止め部材54は、ピストンロッド22を囲む円環状に構成された環状基部54aと、環状基部54aからピストン部材20側に向って軸方向に突出するとともに複数の入口溝56に挿入された複数(図示例では4つ)の凸状部54bとを有する。環状基部54aと複数の凸状部54bとは一体成形されている。
【0059】
図4に示すように、周方向において、凸状部54bは係合突起49と対向している。具体的に、凸状部54bの側面54b1は、回転止め部材54の軸と平行であり、係合突起49の側面49cと対向している。凸状部54bの側面54b1と、係合突起49の側面49cとは互いに平行である。
【0060】
ピストン組立体17の組立状態において、ピストンロッド22のストッパ装着溝23にストッパ部材48が装着され、ストッパ部材48の係合突起49がピストン部材20の傾斜係合溝60に係合している。これにより、ピストン部材20とピストンロッド22とは軸方向の相対移動が阻止された状態で接続されている。従って、流体圧によるピストン部材20の推力は、ピストンロッド22に良好に伝達される。
【0061】
ピストン組立体17の組立状態において、ストッパ部材48は、ピストン部材20のスロット溝50に係合しており、ストッパ部材48は、ピストンロッド22に対して相対回転可能である。従って、ピストン部材20とピストンロッド22とは、ピストン部材20の軸を中心に、ストッパ部材48を介して相対回転可能に連結されている。
【0062】
図1に示すように、回転止め部材54がピストン部材20に装着された状態で、回転止め部材54は、ピストン部材20からロッドカバー16側に突出している。回転止め部材54は、例えば、ゴム材やエラストマー材等の弾性材料(ウレタンゴム等)により構成されており、ロッドカバー16側のストロークエンド到達時の衝撃を緩和する外周側ダンパ55を兼ねている。
【0063】
流体圧シリンダ10Aにおいて、ストッパ部材48とは別の部品として構成された外周側ダンパ55が設けられてもよい。流体圧シリンダ10Aにおいて、端部側ダンパ40はなくしてもよい。
【0064】
次に、上記のように構成されるピストン組立体17の組立方法の一例を説明する。
【0065】
まず、
図5のように、端部側ダンパ40をピストン部材20の貫通孔20aに装着するとともに、ストッパ部材48(複数のストッパピース48a)をピストンロッド22のストッパ装着溝23に装着する。次に、
図6のように、ピストンロッド22をピストン部材20に向かって移動させ、ストッパ部材48の係合突起49をピストン部材20のスロット溝50(入口溝56)に合わせて挿入する。この挿入に伴って、係合突起49は入口溝56の最奥部の内壁面56a(
図4参照)に当接する。
【0066】
そして、ピストンロッド22をさらにピストン部材20に対して軸方向に押し込むと、
図7のようにストッパの係合突起49が傾斜係合溝60にガイドされることでストッパ部材48がピストン部材20に対して回転する。その際、係合突起49は、入口溝56の内壁面56a及び傾斜係合溝60の傾斜ガイド面60a(
図4参照)に案内されつつ傾斜係合溝60内を移動して、係合突起49が傾斜係合溝60の最奥部に到達したところで、ストッパ部材48の回転が停止する。
【0067】
次に、
図8のように、回転止め部材54をピストンロッド22に沿って軸方向に移動させて、ピストン部材20のスロット溝50に回転止め部材54を装着する。具体的には、回転止め部材54の複数の凸状部54bを、複数のスロット溝50の入口溝56に挿入する。これにより、
図4に示すように、各凸状部54bが各入口溝56に嵌合し、且つ各突状部が係合突起49に対して周方向に隣接した状態となる。
【0068】
次に、
図2に示すように、ピストン部材20にパッキン30及びマグネット38を装着する。なお、ピストン部材20へのパッキン30及びマグネット38の装着は、ピストン部材20とピストンロッド22との連結前に行ってもよい。
【0069】
以上により、
図1及び
図2に示した状態のピストン組立体17が得られる。
【0070】
次に、上記のように構成された
図1に示す流体圧シリンダ10Aの作用を説明する。
【0071】
流体圧シリンダ10Aは、第1ポート12a又は第2ポート12bを介して導入される圧力流体(例えば、圧縮空気)の作用によって、ピストン部材20を摺動孔13内で軸方向に移動させる。これにより、当該ピストン部材20に連結されたピストンロッド22が進退移動する。
【0072】
具体的に、ピストン部材20をロッドカバー16側へと変位(前進)させるには、第2ポート12bを大気開放状態とし、図示しない圧力流体供給源から第1ポート12aを介して圧力流体を第1圧力室13aへと供給する。そうすると、圧力流体によってピストン部材20がロッドカバー16側へと押される。これにより、ピストン部材20がピストンロッド22とともにロッドカバー16側へと変位(前進)する。
【0073】
そして、外周側ダンパ55がロッドカバー16の端面に当接することで、ピストン部材20の前進動作が停止する。この場合、弾性材料で構成された外周側ダンパ55により、ピストン部材20とロッドカバー16とが直接当接することが回避される。これにより、ピストン部材20が前進位置(ロッドカバー16側のストロークエンド)へと到達することに伴う衝撃及び衝撃音の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
【0074】
一方、ピストン部材20をヘッドカバー14側へと変位(後退)させるには、第1ポート12aを大気開放状態とし、図示しない圧力流体供給源から第2ポート12bを介して圧力流体を第2圧力室13bへと供給する。そうすると、圧力流体によってピストン部材20がヘッドカバー14側へと押される。これにより、ピストン部材20がヘッドカバー14側へと変位する。
【0075】
そして、端部側ダンパ40がヘッドカバー14に当接することで、ピストン部材20の後退動作が停止する。この場合、弾性材料で構成された端部側ダンパ40により、ピストン部材20とヘッドカバー14とが直接当接することが回避される。これにより、ピストン部材20が後退位置(ヘッドカバー14側のストロークエンド)へと到達することに伴う衝撃及び衝撃音の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
【0076】
この場合、第1実施形態に係る軸連結構造45A及び流体圧装置(流体圧シリンダ10A)は、以下の効果を奏する。
【0077】
上記の構成を備えた軸連結構造45Aによれば、組立工程において、ピストンロッド22に装着されたストッパ部材48をピストン部材20に対して一方向に移動させるだけで、軸部材であるピストンロッド22と相手部材であるピストン部材20とを連結することができる。すなわち、ピストンロッド22に装着されたストッパ部材48をピストン部材20に対して軸方向に移動させることで、ピストン部材20に設けられたスロット溝50の入口溝56にストッパ部材48の係合突起49を挿入し、さらに押し込むと、傾斜係合溝60のガイド作用により、ピストン部材20内でストッパ部材48が回転する。このため、専用工具や設備を用いることなく、組立の際にストッパ部材48をピストン部材20に対して回転させて、ピストン部材20とピストンロッド22とを簡単に接続することができる。すなわち、工具レスの組立てが可能となる。従って、軸連結構造45Aによれば、組立作業を簡素化することができる。
【0078】
ピストンロッド22の外周部には、環状のストッパ装着溝23が設けられ、ストッパ部材48は、周方向に分割された複数のストッパピース48aにより構成されるとともに、ストッパ装着溝23に装着されている。この構成により、組立ての際に、ピストンロッド22の外周部にストッパ部材48を容易に装着することができる。
【0079】
ピストン部材20に対して相対回転不可能に複数のスロット溝50に挿入された回転止め部材54を備える。そして、回転止め部材54により、係合突起49が入口溝56へと移動することが阻止されている。この構成により、組立後にストッパ部材48が回転してピストンロッド22がピストン部材20から抜けることが防止されるため、組立後のピストンロッド22とピストン部材20との連結を確実に維持することができる。
【0080】
回転止め部材54は、複数の入口溝56に挿入された複数の凸状部54bを有し、複数の凸状部54bは、複数の係合突起49と周方向に対向している。この構成により、ピストン部材20に対してストッパ部材48が回転しようとした際に、凸状部54bにより係合突起49が確実に係止されるため、組立後のピストンロッド22とピストン部材20との接続状態を確実に維持することができる。
【0081】
回転止め部材54は、ピストンロッド22を囲む環状に構成された環状基部54aを有し、複数の凸状部54bは、環状基部54aから軸方向に突出している。この構成により、回転止め部材54は、環状基部54aと複数の凸状部54bとを有する1つの部材であるため、一回の装着作業でピストン部材20に簡単に装着することができる。
【0082】
係合突起49は、傾斜係合溝60に沿って傾斜している。この構成により、係合突起49と傾斜係合溝60との間の軸方向のガタを少なくすることができる。
【0083】
図4に示すように、係合突起49は、ピストン部材20に対するピストンロッド22の挿入方向側を向く第1面49aと、第1面49aとは反対側を向く第2面49bとを有する。そして、複数の傾斜係合溝60は、第1面49aと非平行に対向するとともに周方向に対して傾斜した傾斜ガイド面60aを有する。この構成により、組立ての際に、係合突起49が押し当てられる傾斜ガイド面60aと、係合突起49の第1面49aとには角度差がある。このため、係合突起49と傾斜ガイド面60aとの接触面積が減ることで摩擦抵抗が減り、係合突起49が傾斜係合溝60にスムーズに挿入されやすい。従って、ピストン部材20に対してストッパ部材48が回転しやすいため、ピストン部材20にピストンロッド22を押し込むための力を低減でき、組立作業の一層の容易化が図られる。
【0084】
傾斜係合溝60の傾斜面60bと、係合突起49の第2面49bとは互いに平行である。この構成により、抜け方向のピストンロッド22とピストン部材20との接触面において、係合突起49と傾斜係合溝60との接触面積が大きくなるため、係合突起49が傾斜係合溝60から抜ける方向の摩擦抵抗が高くなる。これにより、抜け方向への力が作用した際のストッパ部材48の回転運動を良好に抑制することが可能となる。
【0085】
ピストンロッド22とピストン部材20とは、ストッパ部材48を介して相対回転可能に連結されている。この構成により、ピストン部材20の外形形状に関わらず、ピストン組立体17を備えた流体圧装置の設備への据え付けの際に、ピストンロッド22を容易に回転させることができ、便利である。
【0086】
本発明は、上述した円形のピストン部材20に限らず、多角形のピストン部材にも適用可能である。従って、流体圧シリンダ10Aでは、円形のピストン部材20を備えたピストン組立体17に代えて、多角形のピストン部材を備えたピストン組立体が採用されてもよい。
【0087】
上述したピストン組立体17では中実構造のピストンロッド22が採用されているが、中空構造のピストンロッドが採用されてもよい。
【0088】
上述したピストン組立体17では、ピストン部材20の一方側のみに突出するピストンロッド22が採用されているが、ピストン部材20の両側に突出するピストンロッドが採用されてもよい。
【0089】
ピストン組立体17では、外周側ダンパ55と端部側ダンパ40の両方が設けられているが、ダンパ機構としては、外周側ダンパ55のみが設けられてもよい。回転止め部材54は、外周側ダンパ55を兼ねていなくてもよい。流体圧シリンダ10Aでは、ピストン部材20の一方及び他方のストロークエンドにおける衝撃を緩和するエアクッション機構が設けられてもよい。
【0090】
マグネット38は省略されてもよい。ピストン部材20の外周部に、低摩擦材からなるウエアリングが装着されてもよい。
【0091】
流体圧シリンダ10Aは、ピストンの軸方向移動(前進及び後退)の一方の移動のみを流体圧により行い、他方の移動をスプリングの弾性力により行う、いわゆる単動型シリンダとして構成されてもよい。この場合、スプリングを有する場合の第1形態としては、ピストン部材20とロッドカバー16との間にスプリングが配置され、第2ポート12bは大気開放される。スプリングを有する場合の第2形態としては、ピストン部材20とヘッドカバー14との間にスプリングが配置され、第1ポート12aは大気開放される。
【0092】
図9及び
図10に示す流体圧シリンダ10Bは、いわゆるガイド付きシリンダとして構成されている。流体圧シリンダ10Bは、摺動孔68a及び複数(図示例では2つ)のガイド孔68bが形成されたシリンダチューブ68(ボディ)と、摺動孔68aに摺動可能に配置されたピストン部材70と、ピストン部材70に連結されるとともにシリンダチューブ68から軸方向に突出したピストンロッド72(軸部材)とを備える。流体圧シリンダ10Bは、さらに、シリンダチューブ68の外側でピストンロッド72に連結された出力部材74(相手部材)と、複数のガイド孔68bにスライド可能に挿入されるとともに出力部材74に連結された複数(図示例では2本)のガイドロッド76とを備える。
【0093】
ピストンロッド72の基端部72aにおいて、ピストン部材70とピストンロッド72とは加締めにより連結されている。摺動孔68aにはロッドカバー69が配置されている。ガイド孔68bは摺動孔68aと平行に延在している。ガイドロッド76は、ピストンロッド72と平行に配置されるとともに、ボルト77により出力部材74と締結されている。
【0094】
流体圧シリンダ10Bは、軸部材であるピストンロッド72と相手部材である出力部材74とを連結する軸連結構造45Bを備える。この軸連結構造45Bは、適用部位が異なること以外は
図1等に示した軸連結構造45Aと同様に構成されているため、その構成要素には軸連結構造45Aと同一の符号を付している。
【0095】
具体的に、軸連結構造45Bでは、ストッパ部材48は、ピストンロッド72の先端外周部72bに設けられた円環状のストッパ装着溝73に装着されている。複数のスロット溝50は出力部材74に設けられている。出力部材74のシリンダチューブ68と対向する側には、連結凹部74aが設けられている。当該連結凹部74aの内周部に、複数のスロット溝50が形成されている。出力部材74に設けられたスロット溝50に回転止め部材54が装着されている。
【0096】
組立工程において、ピストンロッド72と出力部材74とは、例えば以下の手順で連結される。
【0097】
ピストンロッド72と出力部材74とを連結する前に、ピストンロッド72とピストン部材70とを連結してシリンダチューブ68の摺動孔68a内に挿入しておく。そして、回転止め部材54をピストンロッド72の外周部に仮配置するとともに、ストッパ部材48をストッパ装着溝73に装着する。次に、出力部材74に連結された2本のガイドロッド76を2つのガイド孔68bにそれぞれ挿入する。そして、ストッパ部材48が装着されたピストンロッド72を出力部材74の連結凹部74aに押し込むと、ストッパ部材48が回転し、係合突起49が傾斜係合溝60に係合する。次に、回転止め部材54を軸方向に移動して、スロット溝50に装着する。以上により、ピストンロッド72と出力部材74とが連結される。
【0098】
軸連結構造45Bによれば、ピストンロッド72と出力部材74とを備えたガイド付きシリンダの組立作業を簡素化することができる。すなわち、組立工程において、出力部材74とピストンロッド72とを専用工具や設備を用いることなく簡単に連結することができる。また、1方向への変位のみでピストンロッド72と出力部材74とを連結できるため、作業の省スペース化が図られる。
【0099】
また、ボルトで連結する場合と異なり、出力部材74とピストンロッド72とは、ピストンロッド72の径方向に僅かにガタがある状態(径方向のフローティング状態)で連結しているため、ピストンロッド72は、2本のガイドロッド76間の中心位置に自動的に調芯がなされる。このため、調芯のための治具が不要であり、組立工数の削減が図られる。これに対し、ピストンロッドと出力部材とをボルトで連結する構造の場合、2本のガイドロッド76間の中心位置にピストンロッドを固定する必要があるため、調芯のための治具が必要である。
【0100】
Tスロットにより2部品を連結する構造と異なり、軸連結構造45Bによれば、ガイドロッド76により軸に対して横方向への変位が拘束された2部品(出力部材74とピストンロッド72)を支障なく連結することができる。
【0101】
なお、ピストンロッド72とピストン部材70とは、
図1等に示した軸連結構造45Aにより連結されていてもよい。
【0102】
本発明の軸連結構造は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。例えば、本発明は、ピストン部材及びシリンダチューブの断面形状が非円形(四角形状や、楕円形状等の長円形状等)の流体圧シリンダにも適用可能である。また、本発明は、複数のピストン及び複数のピストンロッドを備えた多ロッド型(デュアルロッド型等)の流体圧シリンダにも適用可能である。
【0103】
本発明の軸連結構造は、上述した実施形態の他、ピストンロッドの先端部に取り付けられる先端金具とピストンロッドとの連結や、フローティングジョイントの連結部にも適用可能である。
【0104】
本発明は、アクチュエータ等として用いられる流体圧シリンダに限らず、ピストンを有する他の形態の流体圧装置にも適用可能である。本発明を適用できるピストンを有する他の形態の流体圧装置としては、例えば、ピストンによって弁体を移動させて流路の切り換えをするバルブ装置、ピストンロッドを入力軸としてこれに連結されたピストンを変位させて測長を行う測長シリンダ、ピストンを変位させることによりピストンロッドを介してピストンと連結されたテーブルを変位させるスライドテーブル、ピストンを変位させこのピストン変位を変換することで開閉動作する把持部によってワークを把持するチャック装置、等が挙げられる。
【0105】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。