(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-146259(P2018-146259A)
(43)【公開日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】水深予測装置及び水深予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 15/93 20060101AFI20180824BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20180824BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20180824BHJP
G08G 3/02 20060101ALI20180824BHJP
【FI】
G01S15/93
G01C7/04
B63B49/00 B
G08G3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-38541(P2017-38541)
(22)【出願日】2017年3月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】吉川 尚志
(72)【発明者】
【氏名】堀野 直己
【テーマコード(参考)】
5H181
5J083
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181CC11
5H181CC14
5H181CC15
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5J083AB06
5J083AB10
5J083AB13
5J083AD04
5J083AD08
5J083AE06
5J083AF16
5J083DA01
(57)【要約】
【課題】本開示は、船舶の航路上の座礁の可能性を警告するにあたり、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測を可能にすることを目的とする。
【解決手段】本開示は、船舶1の船底に設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサ11から、船舶1の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得し、船舶1の船底に設置される速度センサ12から、船舶1の速度の航続時間変化の情報を取得するセンサ情報取得部131と、センサ情報取得部131が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、船舶1の航路上の将来の水深を予測する水深予測部132と、を備えることを特徴とする水深予測装置13である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船底に設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得し、前記船舶の船底に設置される速度センサから、前記船舶の速度の航続時間変化の情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報取得部が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、前記船舶の航路上の将来の水深を予測する水深予測部と、
を備えることを特徴とする水深予測装置。
【請求項2】
前記水深予測部が予測した将来の水深に基づいて、前記船舶の航路上の将来の座礁に至るまでの前記船舶の航続時間又は航続距離を警告する座礁警告部、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の水深予測装置。
【請求項3】
前記水深予測部は、前記センサ情報取得部が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、前記船舶の航路上の過去の水深の航続距離変化を算出し、過去の水深の航続距離変化の直線外挿に基づいて、前記船舶の航路上の将来の水深を予測し、
前記座礁警告部は、前記水深予測部が直線外挿で予測した将来の水深に基づいて、前記船舶の航路上の将来の座礁に至るまでの前記船舶の航続時間又は航続距離を警告する
ことを特徴とする、請求項2に記載の水深予測装置。
【請求項4】
前記センサ情報取得部が情報を取得した現在の水深が、所定の水深より深いとともに海底に形成された海溝内にあるときには、前記座礁警告部は、前記船舶の航路上の将来の座礁に至るまでの前記船舶の航続時間又は航続距離の警告を留保する
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の水深予測装置。
【請求項5】
前記センサ情報取得部は、前記船舶の船底に単数設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の水深予測装置。
【請求項6】
前記センサ情報取得部は、前記船舶の船底に複数設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の水深予測装置。
【請求項7】
前記センサ情報取得部は、ビーム照射を水深センサと共用し受信強度の相関処理に基づいて速度を計測する速度センサから、前記船舶の速度の航続時間変化の情報を取得する
ことを特徴とする、請求項6に記載の水深予測装置。
【請求項8】
船舶の船底に設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得し、前記船舶の船底に設置される速度センサから、前記船舶の速度の航続時間変化の情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記センサ情報取得ステップで取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、前記船舶の航路上の将来の水深を予測する水深予測ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための水深予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶の航路上の将来の水深を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船底に設置される水深センサから、船舶の航路上の水深の航続距離変化の情報を取得し、船舶の航路上の「現在」の水深が所定の水深より浅いときには、船舶の航路上の座礁の可能性を警告する技術が存在する(例えば、特許文献1等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−091252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、船舶の航路上の「現在」の水深が所定の水深より浅いかどうかを計測するのみでは、船舶の航路上の座礁の可能性が警告された後に、旋回又は停船等の対処がなされる前に船舶が実際に座礁する危惧がある。一方で、船舶の航路上の「将来」の水深が所定の水深より浅いかどうかを計測することができれば、座礁の可能性を推測でき、旋回又は停船等の対処がなされる余裕がある。
【0005】
そこで、船舶の航路上の「将来」の水深を予測するためには、ほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサを適用するのではなく、進行方向前向きにビームを照射する水深センサを適用することが考えられる。しかし、進行方向前向きにビームを照射する水深センサを適用するときには、水深センサが船舶の船底から突出するため、船舶が海水の抵抗を受けて船舶の燃費が下がり、ビームの指向性が広すぎれば、ビームの最短反射時間が水深に必ずしも対応しない。一方で、ほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサを適用するときには、水深センサが船舶の船底に埋設されるため、船舶が海水の抵抗を受けず船舶の燃費が上がり、ビームの指向性が広すぎても、ビームの最短反射時間が水深に対応すると言える。よって、船舶の航路上の座礁の可能性を警告するにあたり、船舶の航路上の「将来」の水深の予測、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を両立できない。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、船舶の航路上の座礁の可能性を警告するにあたり、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、船舶の船底に設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、船舶の航路上の水深の変化の情報を取得し、「過去」の水深の変化の情報に基づいて、船舶の航路上の「将来」の水深を予測することとした。
【0008】
具体的には、本開示は、船舶の船底に設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得し、前記船舶の船底に設置される速度センサから、前記船舶の速度の航続時間変化の情報を取得するセンサ情報取得部と、前記センサ情報取得部が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、前記船舶の航路上の将来の水深を予測する水深予測部と、を備えることを特徴とする水深予測装置である。
【0009】
また、本開示は、船舶の船底に設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得し、前記船舶の船底に設置される速度センサから、前記船舶の速度の航続時間変化の情報を取得するセンサ情報取得ステップと、前記センサ情報取得ステップで取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、前記船舶の航路上の将来の水深を予測する水深予測ステップと、を順にコンピュータに実行させるための水深予測プログラムである。
【0010】
この構成によれば、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測を可能にすることができる。
【0011】
また、本開示は、前記水深予測部が予測した将来の水深に基づいて、前記船舶の航路上の将来の座礁に至るまでの前記船舶の航続時間又は航続距離を警告する座礁警告部、をさらに備えることを特徴とする水深予測装置である。
【0012】
この構成によれば、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の座礁の警告を可能にすることができる。
【0013】
また、本開示は、前記水深予測部は、前記センサ情報取得部が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、前記船舶の航路上の過去の水深の航続距離変化を算出し、過去の水深の航続距離変化の直線外挿に基づいて、前記船舶の航路上の将来の水深を予測し、前記座礁警告部は、前記水深予測部が直線外挿で予測した将来の水深に基づいて、前記船舶の航路上の将来の座礁に至るまでの前記船舶の航続時間又は航続距離を警告することを特徴とする水深予測装置である。
【0014】
ここで、この構成でなければ、過去の水深の変化の近似曲線次第では、現在の水深の傾斜が浅くなる方向であるときでも、将来の座礁の可能性がないと判定される危惧がある。しかし、この構成によれば、過去の水深の変化の直線外挿を行えば、現在の水深の傾斜が浅くなる方向であるときには、将来の座礁の可能性がないと判定されることは少なくなる。
【0015】
また、本開示は、前記センサ情報取得部が情報を取得した現在の水深が、所定の水深より深いとともに海底に形成された海溝内にあるときには、前記座礁警告部は、前記船舶の航路上の将来の座礁に至るまでの前記船舶の航続時間又は航続距離の警告を留保することを特徴とする水深予測装置である。
【0016】
現在の水深が海溝内にあるときには、水深が急に浅くなることがある。よって、この構成でなければ、現在の水深がある程度深いときでも、将来の座礁の可能性が高いと判定される危惧がある。しかし、この構成によれば、現在の水深がある程度深いときには、将来の座礁の可能性が高いと判定される危惧がない。
【0017】
また、本開示は、前記センサ情報取得部は、前記船舶の船底に単数設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得することを特徴とする水深予測装置である。
【0018】
この構成によれば、水深センサの部品点数を削減しながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測及び座礁の警告をより容易に可能にすることができる。
【0019】
また、本開示は、前記センサ情報取得部は、前記船舶の船底に複数設置されほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサから、前記船舶の航路上の水深の航続時間変化の情報を取得することを特徴とする水深予測装置である。
【0020】
この構成によれば、水深センサのダブルチェックを可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測及び座礁の警告をより確実に可能にすることができる。
【0021】
また、本開示は、前記センサ情報取得部は、ビーム照射を水深センサと共用し受信強度の相関処理に基づいて速度を計測する速度センサから、前記船舶の速度の航続時間変化の情報を取得することを特徴とする水深予測装置である。
【0022】
この構成によれば、ビーム照射を水深/速度センサで共用することで、センサの部品点数を削減しながら、船舶の航路上の速度の情報の取得を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本開示は、船舶の航路上の座礁の可能性を警告するにあたり、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の水深予測装置の構成を示す図である。
【
図2】本開示の水深予測処理の手順を示す図である。
【
図3】本開示の水深予測部の直線外挿処理を示す図である。
【
図4】本開示の座礁警告部の座礁警告処理を示す図である。
【
図5】本開示の座礁警告部の警告留保処理を示す図である。
【
図6】本開示の水深センサのセンシング処理を示す図である。
【
図7】本開示の水深/速度センサのセンシング処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0026】
本開示の水深予測装置の構成を
図1に示す。本開示の水深予測処理の手順を
図2に示す。船舶1は、水深センサ11及び速度センサ12を船底に備え、水深予測装置13を操舵室に備える。水深予測装置13は、ステップS1〜S8を実行するプログラムをインストールされ、センサ情報取得部131、水深予測部132及び座礁警告部133を備える。
【0027】
水深センサ11は、船舶1の船底に設置され、ほぼ鉛直下向きにビームを照射する。速度センサ12は、船舶1の船底に設置され、相関船速計又はドップラ船速計等である。水深センサ11及び速度センサ12は、超音波ビーム又はレーダビームを照射する。
【0028】
進行方向前向きにビームを照射する水深センサ11を適用するときには、水深センサ11が船舶1の船底から突出するため、船舶1が海水の抵抗を受けて船舶1の燃費が下がり、ビームの指向性が広すぎれば、ビームの最短反射時間が水深に必ずしも対応しない。
【0029】
ほぼ鉛直下向きにビームを照射する水深センサ11を適用するときには、水深センサ11が船舶1の船底に埋設されるため、船舶1が海水の抵抗を受けず船舶1の燃費が上がり、ビームの指向性が広すぎても、ビームの最短反射時間が水深に対応すると言える。
【0030】
センサ情報取得部131は、船舶1の航路上の水深の航続時間変化の情報を、水深センサ11から取得する(ステップS1)。そして、センサ情報取得部131は、船舶1の速度の航続時間変化の情報を、速度センサ12から取得する(ステップS2)。ただし、センサ情報取得部131は、ステップS1、S2の順序を問わない。
【0031】
水深予測部132は、センサ情報取得部131が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、船舶1の航路上の将来の水深を予測する(ステップS4)。ここで、水深予測部132の詳細については、
図3を用いて後述する。
【0032】
このように、船舶1の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶1の航路上の「将来」の水深の予測を可能にすることができる。
【0033】
座礁警告部133は、水深予測部132が予測した将来の水深に基づいて、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間又は航続距離を表示、警告する(ステップS7)。ここで、座礁警告部133の詳細については、
図4、5を用いて後述する。
【0034】
このように、船舶1の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶1の航路上の「将来」の座礁の警告を可能にすることができる。
【0035】
水深予測部132は、センサ情報取得部131が取得した過去の水深及び速度の航続時間変化の情報に基づいて、船舶1の航路上の過去の水深の航続距離変化を算出する(ステップS3)。そして、上述したように、水深予測部132は、過去の水深の航続距離変化の直線外挿に基づいて、船舶1の航路上の将来の水深を予測する(ステップS4)。
【0036】
本開示の水深予測部の直線外挿処理を
図3に示す。
図3の上段には、直線外挿をしないときを示す。
図3の下段には、直線外挿をするときを示す。
【0037】
図3の上段に示したように、過去の水深の変化の近似曲線次第では、現在の水深の傾斜が浅くなる方向であるときでも、この近似曲線が座礁警告水深(喫水の程度)に到達せず、将来の座礁の可能性がないと判定される危惧がある。
【0038】
図3の下段に示したように、過去の水深の変化の直線外挿を行えば、現在の水深の傾斜が浅くなる方向であるときには、この外挿直線が座礁警告水深(喫水の程度)に到達し、将来の座礁の可能性がないと判定されることは少なくなる。
【0039】
座礁警告部133は、水深予測部132が直線外挿で予測した将来の水深に基づいて、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間又は航続距離を表示、警告する(ステップS7)。具体的には、座礁警告部133は、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続距離を、船舶1の現在又は将来の速度で除算することにより、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間を算出する。
【0040】
本開示の座礁警告部の座礁警告処理を
図4に示す。
図4の上段には、座礁警告をしないときを示す。
図4の下段には、座礁警告をするときを示す。
【0041】
座礁警告部133は、座礁警告画面134を備え、座礁警告画面134は、水深予測表示135、不図示の座礁警告表示及び不図示の座礁時間/距離表示を備える。
【0042】
図4の上段に示したように、水深予測表示135において、過去の水深の変化の外挿直線は、座礁警告水深(喫水の程度)に到達していない。そして、座礁時間/距離表示において、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間及び航続距離は、それぞれ例えば5分及び3kmで長めである。よって、座礁警告表示において、座礁警告の文字/音声表示は行われず、座礁注意の文字/音声表示が行われる。
【0043】
図4の下段に示したように、水深予測表示135において、過去の水深の変化の外挿直線は、座礁警告水深(喫水の程度)に到達している。そして、座礁時間/距離表示において、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間及び航続距離は、それぞれ例えば1分及び0.6kmで短めである。よって、座礁警告表示において、座礁注意の文字/音声表示を超えて、座礁警告の文字/音声表示が行われる。
【0044】
センサ情報取得部131が情報を取得した現在の水深が、所定の水深より深いとともに(ステップS5においてYES)、海底に形成された海溝内にあるときには(ステップS6においてYES)、座礁警告部133は、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間又は航続距離の警告を留保する(ステップS8)。
【0045】
一方で、センサ情報取得部131が情報を取得した現在の水深が、所定の水深より浅いときには(ステップS5においてNO)、座礁警告部133は、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間又は航続距離を表示、警告する(ステップS7)。
【0046】
そして、センサ情報取得部131が情報を取得した現在の水深が、所定の水深より深いけれども(ステップS5においてYES)、海底に形成された海溝内にないときには(ステップS6においてNO)、座礁警告部133は、船舶1の航路上の将来の座礁に至るまでの船舶1の航続時間又は航続距離を表示、警告する(ステップS7)。
【0047】
本開示の座礁警告部の警告留保処理を
図5に示す。
図5の上段及び下段では、過去の水深の実測値は同様であるが、将来の座礁の警告の有無は異なっている。
図5の上段には、警告留保をしないときを示す。
図5の下段には、警告留保をするときを示す。現在の水深が海溝内にあるときには、水深が急に浅くなることがある。
【0048】
図5の上段に示したように、現在の水深がある程度深いときでも、
図3で前述した外挿直線が座礁警告水深(喫水の程度)に急に到達する危惧があるため、将来の座礁の可能性が高いと判定され、警告留保をしない。
【0049】
図5の下段に示したように、現在の水深がある程度(警告留保水深の程度以下)深いときには、
図3で前述した外挿直線が座礁警告水深(喫水の程度)に急に到達する危惧があっても、将来の座礁の可能性が高いと判定されず、警告留保をする。
【0050】
なお、過去の水深の変化の近似曲線として、海底地形に応じて様々な近似曲線を採用してもよい。そして、様々な近似曲線に基づく将来の座礁までの航続時間又は航続距離のうち、特定の近似曲線に基づく最短の座礁までの航続時間又は航続距離を選択してもよい。
【0051】
また、過去の水深の変化の近似曲線を算出するにあたり、近似曲線にフィットしない水深の計測結果を除去してもよい。ここで、近似曲線にフィットしない水深の計測結果として、海中のプランクトン並びに海底の海藻及び地質による計測誤差等が挙げられる。
【0052】
また、
図3〜5で示した近似曲線の算出範囲として、海底地形に応じて様々な近似曲線の算出範囲を採用してもよい。例えば、海底地形が変化に富む/乏しいときには、近似曲線の算出範囲を狭く/広くすればよい。そして、
図3〜5で示した水深の計測間隔として、海底地形に応じて様々な水深の計測間隔を採用してもよい。例えば、海底地形が変化に富む/乏しいときには、水深の計測間隔を狭く/広くすればよい。
【0053】
次に、水深センサ11を複数設置したときの、実施形態及びその効果について、
図6で説明する。タンカーなど全長が大きい船舶1については、
図6に示すように横滑りし、船首及び船尾の航続軌道が同一の航続軌道とならないことがある。
【0054】
船舶1が横滑りするときには、船舶1の各部(船首及び船尾等)が横切る等深線は異なる。例えば、船舶1の船首は、海底地形の盛り上がりを横切らず、座礁の可能性が低い。一方で、船舶1の船尾は、海底地形の盛り上がりを横切り、座礁の可能性が高い。
【0055】
図6の上段では、水深センサ11は、船舶1の船首の船底に単数設置され、ほぼ鉛直下向きにビームを照射する。センサ情報取得部131は、船舶1の航路上の水深の航続時間変化の情報を、単数の水深センサ11から取得する。
【0056】
このように、水深センサ11の部品点数を削減しながら、船舶1の航路上の「将来」の水深の予測及び座礁の警告をより容易に可能にすることができる。
【0057】
図6の下段では、水深センサ11は、船舶1の船首及び船尾の船底にそれぞれ単数設置され、ほぼ鉛直下向きにビームを照射する。センサ情報取得部131は、船舶1の航路上の水深の航続時間変化の情報を、複数の水深センサ11から取得する。
【0058】
このように、水深センサ11のダブルチェックを可能にしながら、船舶1の航路上の「将来」の水深の予測及び座礁の警告をより確実に可能にすることができる。
【0059】
本開示の水深/速度センサのセンシング処理を
図7に示す。水深/速度センサ14は、船舶1の船首及び船尾の船底にそれぞれ設置され、ビーム照射を水深/速度計測で共用し、受信強度の相関処理に基づいて速度を計測する。センサ情報取得部131は、船舶1の速度の航続時間変化の情報を、複数の水深/速度センサ14から取得する。
【0060】
ここで、複数の水深/速度センサ14の設置間隔は、Lであることが予め分かっている。そして、複数の水深/速度センサ14の受信強度は、ΔTだけずらした相互相関が最も高くなっている。よって、船舶1の速度は、V=L/ΔTと計測することができる。
【0061】
このように、ビーム照射を水深/速度センサ14で共用することで、センサの部品点数を削減しながら、船舶1の航路上の速度の情報の取得を可能にすることができる。
【0062】
ここで、
図1で前述した相関船速計は、センサ間が離れていないため、センサ間のダブルチェックを行うことができない。一方で、
図7で前述した水深/速度センサ14は、センサ間が離れているため、センサ間のダブルチェックを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の水深予測装置及び水深予測プログラムは、船舶の航路上の座礁の可能性を警告するにあたり、船舶の燃費の向上及び水深の計測の容易化を可能にしながら、船舶の航路上の「将来」の水深の予測を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1:船舶
11:水深センサ
12:速度センサ
13:水深予測装置
14:水深/速度センサ
131:センサ情報取得部
132:水深予測部
133:座礁警告部
134:座礁警告画面
135:水深予測表示