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特開2018-146471地盤変位の観測方法、及び情報処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-146471(P2018-146471A)
(43)【公開日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】地盤変位の観測方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/02 20060101AFI20180824BHJP
【FI】
   G01C7/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-43592(P2017-43592)
(22)【出願日】2017年3月8日
(11)【特許番号】特許第6164383号(P6164383)
(45)【特許公報発行日】2017年7月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西谷 哲
(57)【要約】
【課題】傾斜センサにより計測される傾斜角について精度よく温度補正を行う。
【解決手段】情報処理装置は、地盤変位の観測が行われるエリア2に設置した傾斜センサ15により時系列的に計測される傾斜角を、夫々が計測された時刻における温度とともに計測値として記憶し、異なる複数の時刻の夫々について、夫々を基点とする所定時間幅内の複数の計測値について直線近似を行って、傾斜角と温度との相関の比例定数を求め、比例定数を求める際に用いた複数の計測値の平均温度と温度変化幅とを求め、比例定数と平均温度と温度変化幅とを対応づけた比例定数データを生成し1123、比例定数データ1123について、温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行い、平均温度と比例定数との関係を示す情報を生成する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜センサを用いた地盤変位観測方法における傾斜角の温度補正方法であって、
情報処理装置が、
地盤変位の観測が行われる所定のエリア内に設置した傾斜センサにより時系列的に計測される傾斜角を、夫々が計測された時刻における前記所定エリアの温度とともに計測値として記憶するステップ、
異なる複数の時刻の夫々について、夫々を基点とする所定時間幅内の複数の前記計測値について直線近似を行うことにより、前記傾斜角と前記温度との相関の比例定数を求めるステップ、
前記比例定数を求める際に用いた複数の前記計測値の平均温度と温度変化幅とを求め、前記比例定数と前記平均温度と前記温度変化幅とを対応づけたデータである比例定数データを生成するステップ、
前記比例定数データについて、前記温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行い、前記平均温度と前記比例定数との関係を示す情報を生成するステップ、
を実行する、傾斜角の温度補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の傾斜角の温度補正方法であって、
前記情報処理装置は、
前記平均温度tに対応する前記比例定数を求める関数であるF(t)を前記情報として生成し、
温度tnのときの傾斜角がAnとして与えられているとき、ある温度toのときの傾斜角を次式より求めるステップ
0=An−∫F(t)dt
(但し、∫F(t)dtは、F(t)の温度tnから温度toまでの定積分)
を実行する、傾斜角の温度補正方法。
【請求項3】
傾斜センサを用いた地盤変位観測に用いる情報処理装置であって、
地盤変位の観測が行われる所定のエリア内に設置した傾斜センサにより時系列的に計測される傾斜角を、夫々が計測された時刻における前記所定エリアの温度とともに計測値として記憶する計測値取得部と、
異なる複数の時刻の夫々について、夫々を基点とする所定時間幅内の複数の前記計測値について直線近似を行うことにより、前記傾斜角と前記温度との相関の比例定数を求める傾斜角温度相関算出部と、
前記比例定数を求める際に用いた複数の前記計測値の平均温度と温度変化幅とを求め、前記比例定数と前記平均温度と前記温度変化幅とを対応づけたデータである比例定数データを生成する比例定数データ生成部と、
前記比例定数データについて、前記温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行い、前記平均温度と前記比例定数との関係を示す情報を生成する温度補正情報生成部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記温度補正情報生成部は、前記平均温度tに対応する前記比例定数を求める関数であるF(t)を前記情報として生成し、
温度tnのときの傾斜角がAnとして与えられているとき、ある温度toのときの傾斜角を次式より求める傾斜角算出部
0=An−∫F(t)dt
(但し、∫F(t)dtは、F(t)の温度tnから温度toまでの定積分)
を更に備える、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤変位の観測方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検出された傾斜角の温度による変化を広い温度範囲において精度良く補正するため、傾斜角を検出する角度検出部と検出時温度を検出する温度検出部とを備えた傾斜角補正装置が、傾斜角と検出時温度との組み合わせをサンプル値として取得し、複数の補正式ごとの複数の温度範囲の閾値を決定し、サンプル値に基づき複数の補正式のそれぞれに用いられる補正パラメータを決定し、補正式により傾斜角を補正して補正傾斜角を出力することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、傾斜センサの入出力特性を考慮して加速度の影響を除去して正確且つ信頼性の高い傾斜値を得るため、車輪回転センサによって検出される車速を一次微分して加速度を求め、傾斜センサの出力に含まれる加速度による外乱成分を計算し、外乱成分を傾斜センサの出力から差し引き、傾斜成分のみを抽出して真の傾斜値として採用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−228525号公報
【特許文献2】特開平11−14353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、水力発電所の関連設備(導水路や貯水槽、水圧鉄管等)や送電鉄塔は、山間部の急峻な場所に建設されることが多く、十分な設備保全等の観点より、傾斜面の地盤変位を観測する必要が生じることがある。
【0006】
ここで地盤変位を検知する方法としては、伸縮計を用いるもの、B−OTDR方式、レーザー測距方式、GPS相対測位方式などがあるが、いずれの方法によってもある程度の精度は得られるものの、機器の設置に手間やコストがかかるという欠点を有する。
【0007】
そこで近年、複数の傾斜センサを傾斜面に広範囲に配置し、計測データを面的に収集することにより地盤変位を検知する方式(以下、傾斜センサ方式と称する。)が注目されている。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の進歩により、傾斜センサは、高精度化、コンパクト化,低コスト化が進んでいる。傾斜センサ方式では、地盤の変位量そのものではなく、傾斜角を計測することにより間接的に地盤変位を検知する。傾斜センサ方式によれば、例えば、各傾斜センサにバッテリや太陽電池を併設することで恒常電源が不要となり、また各傾斜センサに無線通信機能を設けることで通信ケーブルの付設も不要となる。このように、傾斜センサ方式は、設置の手間がかからず、さらに昨今の要素技術の低価格化により低コストでの実現が可能である。
【0008】
近年、傾斜センサ方式により既存技術と同等の検知精度が得られるかについて様々な検証が行われており、大きな状態変化の監視等、必ずしも高い検知精度が要求されない用途では、実際に現場への導入も進みつつある。また既存技術と同等の検知精度が得られるようになれば、地盤変位の大きな状態変化を予兆の段階で捉える、年間で数mm程度の緩慢な変化を長期的に監視する、といった用途への応用も開け、傾斜センサ方式の有用性はより一層高まるものと考えられる。
【0009】
ところで、前述したように、傾斜センサ方式では、地盤の変位量そのものではなく、傾斜角を計測することにより地盤変位を間接的に検知する。例えば、地点Aを基点とし、水平方向に5m離れた地点Bで地盤が垂直方向に距離zだけ低下すると仮定すると、地点A〜地点Bの傾斜角θはtan-1(z/5000)で表わすことができる。表1は、垂直方向に距離zが1〜9(mm)変化したときの傾斜角θ(度)(小数点以下第3位を四捨五入)の算出結果である。
【0010】
【表1】
【0011】
表1より、距離zの変化1〜9(mm)に対して傾斜角θは0.01〜0.10(度)の範囲で変化しており、距離zについて数(mm)の変化を検知する精度を得るためには、外乱に因る傾斜角θの変化が0.01〜0.02(度)の範囲に収まっていなければならないことがわかる。そしてそのためには、地盤の僅かな動きが正確に傾斜センサに伝わるように傾斜センサを設置する必要があり、例えば、地盤にコンクリート基礎を埋め込み、コンクリートに対して傾斜センサを金物等により堅牢に固定するといった方法をとる必要がある。
【0012】
しかし傾斜センサを堅牢に固定した場合でも、傾斜センサの傾斜角θは次の事象による影響を受け、本来測定すべき「地盤変位による傾斜」を精度よく測定することが難しくなる。
【0013】
事象a:施工時に機械的な歪みができ徐々に顕在化する。
事象b:地盤がコンクリート基礎の重量を支えきれず、コンクリート基礎が徐々に沈む。
事象c:温度変化によりコンクリート基礎の膨張/収縮が発生する。
【0014】
ここで上記事象のうち、事象a及び事象bについては、長期的にみればいずれも次第に安定する傾向があるが、事象cについては屋外の温度変化に伴って常時発生し、長期的に安定化する傾向もなく、事象aや事象bに比べて「地盤変位による傾斜」の測定に与える影響が大きい。そのため、傾斜センサにより計測される傾斜角と温度との関係を把握して精度よく温度補正を行うことが「地盤変位による傾斜」の測定精度を向上する上で重要になる。
【0015】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、傾斜センサにより計測される傾斜角について精度よく温度補正を行うことが可能な、地盤変位の観測方法、及び情報処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、傾斜センサを用いた地盤変位観測方法における傾斜角の温度補正方法であって、情報処理装置が、地盤変位の観測が行われる所定のエリア内に設置した傾斜センサにより時系列的に計測される傾斜角を、夫々が計測された時刻における前記所定エリアの温度とともに計測値として記憶するステップ、異なる複数の時刻の夫々について、夫々を基点とする所定時間幅内の複数の前記計測値について直線近似を行うことにより、前記傾斜角と前記温度との相関の比例定数を求めるステップ、前記比例定数を求める際に用いた複数の前記計測値の平均温度と温度変化幅とを求め、前記比例定数と前記平均温度と前記温度変化幅とを対応づけたデータである比例定数データを生成するステップ、前記比例定数データについて、前記温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行い、前記平均温度と前記比例定数との関係を示す情報を生成するステップ、を実行する。
【0017】
本発明によれば、傾斜センサにより計測される傾斜角について精度よく温度補正を行うことができる。例えば、情報処理装置は、ある時刻を基点とする時間幅内の計測値を用いて比例定数を求めるので、計測値の時間範囲(計測値が取得された時間の範囲)が限定され、僅かな地盤変位が蓄積されることによる影響を抑えることができる。尚、計測値の時間範囲が限定されることで計測値の数が限定され、傾斜角の誤差(正規分布)の影響が大きくなるが、情報処理装置は、温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行うので、誤差の影響を抑えることができる。
【0018】
本発明のうちの他の一つは、上記傾斜角の温度補正方法であって、前記情報処理装置は、前記平均温度tに対応する前記比例定数を求める関数であるF(t)を前記情報として生成し、温度tnのときの傾斜角がAnとして与えられているとき、ある温度toのときの傾斜角を次式より求めるステップ
0=An−∫F(t)dt
(但し、∫F(t)dtは、F(t)の温度tnから温度toまでの定積分)
を実行する。
【0019】
このように平均温度と比例定数との関係を示す情報(関数F(t))を利用することで温度tnのときの傾斜角がAnとして与えられている場合に、ある温度toのときの傾斜角を精度よく求めることができる。
【0020】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、傾斜センサにより計測される傾斜角について精度よく温度補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】地盤変位観測システム1の概略的な構成を示す図である。
図2】センサノード10の構成を示す図である。
図3】制御装置11のハードウェアを示す図である。
図4】制御装置11の機能及び制御装置11が記憶する情報を示す図である。
図5】計測データ500のフォーマットを示す図である。
図6】制御指示600のフォーマットを示す図である。
図7】ゲートウェイ装置20のハードウェアを示す図である。
図8】ゲートウェイ装置20の機能及びゲートウェイ装置20が記憶する情報を示す図である。
図9】計測値管理テーブル900の一例である。
図10】サーバ装置30のハードウェアを示す図である。
図11】サーバ装置30の機能及びサーバ装置30が記憶する情報を示す図である。
図12】実験系1200の構成を示す図である。
図13】経過時間と傾斜角(X座標)の関係を示す図である。
図14】経過時間と傾斜角(Y座標)の関係を示す図である。
図15】「外乱による傾斜ベクトル」の大きさの軌跡を示す図である。
図16】温度(屋内実験室の温度)の変化を示すグラフである。
図17】温度と傾斜角(X座標)の関係(直線近似)を示すグラフである。
図18】温度と傾斜角(Y座標)の関係(直線近似)を示すグラフである。
図19】計測値と温度変化幅と平均温度との関係を示す図である。
図20】比例定数データ1123のデータ構造を示す図である。
図21A】温度変化幅が大きい程、直線近似により求めた比例定数の誤差幅が小さくなることを説明する図である。
図21B】温度変化幅が大きい程、直線近似により求めた比例定数の誤差幅が小さくなることを説明する図である。
図22】温度比例定数相関グラフ1124の一例を示す図である。
図23】傾斜センサ15をグループに分類した様子を示す図である。
図24】計測データ取得処理S2400を説明するフローチャートである。
図25】相関グラフ生成処理S2500を説明するフローチャートである。
図26】傾斜角算出処理S2600を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面とともに本発明の実施形態について詳述する。
【0024】
図1に一実施形態として説明する地盤変位観測システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、地盤変位観測システム1は、水力発電所の関連設備(導水路や貯水槽、水圧鉄管等)や送電鉄塔が建設される山間部の傾斜面等、屋外の所定範囲(以下、観測エリア2と称する。)における地盤変位を観測(計測)するシステムである。
【0025】
地盤変位観測システム1は、観測エリア2に面的に配設され、計測値を含む無線信号(後述の計測データ500)を随時送信する複数のセンサノード10、観測エリア2内もしくは観測エリア2の近傍に設置され、センサノード10と無線通信するゲートウェイ装置20、システムセンタやクラウド等に設けられ、ゲートウェイ装置20と有線方式又は無線方式の通信網5(インターネット、携帯通信網、専用線等)を介して通信するサーバ装置30、電力会社の事業所等に設置され、通信網5を介してサーバ装置30にアクセスする情報処理装置であるユーザ端末40(パーソナルコンピュータ等)を含む。
【0026】
図2にセンサノード10の主な構成を示している。同図に示すように、センサノード10は、制御装置11、無線装置12、温度センサ13、傾斜センサ15、蓄電池17、及び太陽電池18を備える。制御装置11、無線装置12、及び傾斜センサ15は、各種制御線(I2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(Serial Peripheral Interface)、USB(Universal Serial Bus)等)を介して通信可能に接続されている。
【0027】
制御装置11は、情報処理装置として機能し、センサノード10の各構成の統括的な制御、温度センサ13や傾斜センサ15が出力する計測値の取得、計測値を含んだ無線信号の送信制御、ゲートウェイ装置20との間の通信制御等を行う。
【0028】
無線装置12は、ゲートウェイ装置20や他のセンサノード10の無線装置12と無線通信を行う。無線装置12は、例えば、特定小電力無線局(315MHz帯、426MHz帯、1200MHz帯、920MHz帯等)、小電力無線局(2.4GHz帯等)、近距離無線通信(Zigbee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、無線LAN、電子タグ等)、微弱な無線局等として機能する。尚、無線装置12は、ゲートウェイ装置20と直接通信するものであってもよいし、センサネットワーク機能やアドホック機能等により他の無線装置12を介して間接的にゲートウェイ装置20と通信するものであってもよい。
【0029】
温度センサ13は、温度に応じた電気信号を出力する素子(測温抵抗体(サーミスタ等)、熱電対、赤外線検出素子等)を用いて構成される。温度センサ13は、センサノード10における温度(センサノード10周辺の外気温、傾斜センサ15が取り付けられている基台の温度等)を計測する。
【0030】
傾斜センサ15は、傾斜角(変位角)(1軸又は2軸)に応じた電気信号(例えば、傾斜角に応じた大きさのアナログ電圧)を出力する素子を用いて構成され、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を応用したもの、板ばねを用いた振り子式のもの、フロート式(錘と浮きを併用したハイブリッド機構)のもの等がある。本実施形態では、一例として、傾斜センサ15は、MEMSにより微小機械部品(振り子)を電子基板上に搭載した構造を有し、微小機械部品(振り子)の位置に応じて変化する静電容量により電気的に傾斜角度を計測する、傾斜角を2軸で検出するタイプのものであるものとする。
【0031】
蓄電池17は、二次電池(リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池等)であり、センサノード10の構成要素を動作させるための駆動電力を供給する。
【0032】
太陽電池18は、太陽電池パネルや充電制御装置(チャージコントローラ)を備え、太陽電池パネルの発電電力を蓄電池17に供給する。尚、太陽電池18に代えて、もしくは太陽電池18とともに、蓄電池17に電力を供給する他の自然エネルギー利用の発電設備(風力発電設備等)をセンサノード10に設けてもよい。自然エネルギー利用の発電設備を用いることで、センサノード10を長期に亘って安定して動作させることができる。
【0033】
図3に制御装置11のハードウェアを示している。同図に示すように、制御装置11は、中央処理装置111、記憶装置112、及び計時装置113を備える。
【0034】
中央処理装置111は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)等である。記憶装置112は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等である。
【0035】
計時装置113は、RTC(Real Time Clock)等を用いて構成され、現在日時を示す情報を出力する。計時装置113が計時する日時と後述するゲートウェイ装置20の計時装置23が計時する日時とは、ゲートウェイ装置20と制御装置11との間の無線通信により随時同期が取られる。
【0036】
図4に制御装置11の機能及び制御装置11が記憶する情報を示している。同図に示すように、制御装置11は、計測処理部411、計測データ送信部412、及び消費電力/計測時期制御部413の各機能を有する。これらの機能は、制御装置11の中央処理装置111が、記憶装置112に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0037】
計測処理部411は、計測値の計測時機が到来すると、温度センサ13又は傾斜センサ15から計測値(傾斜角)を取得し、取得した計測値を計測データ送信部412に渡す。
【0038】
計測データ送信部412は、計測処理部411から渡された計測値を含むデータである計測データ500をゲートウェイ装置20に向けて送信する。
【0039】
図5に計測データ500のフォーマットを示している。同図に示すように、計測データ500は、送信元のセンサノード10を特定する識別子であるノードID511、計測値512、及び計測値512を取得した日時である計測日時513等の情報を含む。ノードID511には、制御装置11が記憶している図4のノードID421が設定される。計測値512には、温度センサ13の出力値や傾斜センサ15の出力値が設定される。尚、計測データ500の各項目は必ずしも全てが一度に送信されなくてもよく、ノードID511と他の一つ以上の項目との組合せが個別に送信される構成としてもよい。
【0040】
図4に戻り、消費電力/計測時期制御部413は、センサノード10の構成要素のうち駆動電力を必要とする構成(例えば、制御装置11、無線装置12、傾斜センサ15等)を制御対象として消費電力の制御を行う。この消費電力制御は、例えば、計測処理部411による単位時間当たりの計測値512の取得回数(単位時間当たりのサンプリング数)の増減、制御対象についてスタンバイモード等の待機状態(低消費電力な動作状態)への移行等により行われる。消費電力/計測時期制御部413は、例えば、ゲートウェイ装置20から送られてくる消費電力の制御を指示する命令(以下、制御指示600と称する。)に従い、制御対象について消費電力の制御を行う。
【0041】
また消費電力/計測時期制御部413は、計測データ(温度や傾斜角)を取得するタイミングを制御する。
【0042】
図6にゲートウェイ装置20から送られてくる制御指示600のフォーマットを示している。同図に示すように、制御指示600は、制御対象となるセンサノード10の構成要素を特定する情報(傾斜センサ15の識別子等)である制御対象611、制御の内容に関する情報である制御内容612(傾斜センサ15を低消費電力モードに移行させる、傾斜センサ15を低消費電力モードから通常動作モード(動作が可能なモード)に移行させる、計測データ(温度や傾斜角)を取得するタイミング)等の情報を含む。
【0043】
図4に戻り、制御装置11は、制御情報422を記憶している。制御情報422は、制御指示600の制御内容612に関する情報である。制御情報422はゲートウェイ装置20から受信した制御指示600によって随時更新される。消費電力/計測時期制御部413は、制御情報422を参照しつつ制御対象について消費電力の制御や計測データ(温度や傾斜角)を取得するタイミングの設定を行う。
【0044】
図7にゲートウェイ装置20のハードウェアを示している。同図に示すように、ゲートウェイ装置20は、中央処理装置21、記憶装置22、計時装置23、無線装置24、出力装置25、及び通信装置26を備える。
【0045】
中央処理装置21は、例えば、MPU、CPU等であり、記憶装置22は、例えば、RAM、ROM、NVRAM等である。中央処理装置21及び記憶装置22は、ゲートウェイ装置20に情報処理装置としての機能を実現する。計時装置23は、RTC等を用いて構成され、日時情報を出力する。無線装置24は、センサノード10の無線装置12と無線通信する装置であり、例えば、特定小電力無線局、小電力無線局、微弱な無線局等である。出力装置25は、情報を出力するユーザインタフェースであり、例えば、液晶モニタ、液晶パネル、スピーカ等である。通信装置26は、NIC(Network Interface Card)や無線LANアダプタ等であり、通信網5を介してサーバ装置30等の他の装置と通信する。
【0046】
図8にゲートウェイ装置20の機能及びゲートウェイ装置20が記憶する情報を示している。同図に示すように、ゲートウェイ装置20は、計測データ受信部811、計測データ送信部813、及び制御指示中継部814の各機能を有する。これらの機能は、ゲートウェイ装置20の中央処理装置21が、記憶装置22に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0047】
計測データ受信部811は、センサノード10の制御装置11が送信する計測データ500(温度や傾斜角)を受信し、受信した計測データ500の内容を計測値管理テーブル900に出力する。
【0048】
図9に計測値管理テーブル900の一例を示している。同図に示すように、計測値管理テーブル900は、ノードID911、グループID912、計測値914(温度、傾斜角)、及び計測日時915の各項目を有するレコードの集合である。
【0049】
ノードID911には、当該レコードの計測値914の送信元のセンサノード10のノードIDが設定される。グループID912には、当該レコードのノードID911で特定されるセンサノード10の傾斜センサ15が所属している、後述するグループの識別子(以下、グループIDと称する。)が設定される。計測値914には、センサノード10において計測された温度9141と傾斜角9142(傾斜センサ15の出力値)が設定される。計測日時915には、当該レコードの計測値914が計測された日時が設定される。
【0050】
図8に戻り、計測データ送信部813は、計測データ受信部811が受信した計測データ500をサーバ装置30に中継送信する。
【0051】
制御指示中継部814は、サーバ装置30から送られてくる制御指示600を受信すると、これをセンサノード10に中継送信する。
【0052】
図10にサーバ装置30のハードウェアを示している。同図に示すように、サーバ装置30は、中央処理装置31、記憶装置32、通信装置33、及び出力装置34を備える。
【0053】
中央処理装置31は、例えば、MPU、CPU等である。記憶装置32は、例えば、RAM、ROM、NVRAM等である。中央処理装置31及び記憶装置32は、サーバ装置30に情報処理装置としての機能を実現する。通信装置33は、NICや無線LANアダプタ等であり、通信網5を介してゲートウェイ装置20やユーザ端末40と通信する。出力装置34は、情報を出力するユーザインタフェースであり、例えば、液晶モニタ、液晶パネル、スピーカ等である。
【0054】
図11にサーバ装置30の機能及びサーバ装置30が記憶する情報を示している。同図に示すように、サーバ装置30は、計測データ受信部1111(計測値取得部)、制御指示送信部1114、監視制御機能提供部1115、及び温度補正処理部1116の各機能を有する。これらの機能は、サーバ装置30の中央処理装置31が、記憶装置32に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0055】
同図に示すように、サーバ装置30は、計測値管理テーブル1122、比例定数データ1123、及び温度比例定数相関グラフ1124を記憶する。
【0056】
計測データ受信部1111は、ゲートウェイ装置20から送られてくる計測データ500を受信し、受信した計測データ500を計測値管理テーブル1122に格納する。
【0057】
制御指示送信部1114は、計測値管理テーブル1122の内容に基づきセンサノード10の構成要素について電力供給の要否を随時判定し、その結果に応じて制御指示600を生成してゲートウェイ装置20に送信する。例えば、制御指示送信部1114は、後述する傾斜センサ15の選択において選択されなかった傾斜センサ15のオフ(もしくは低消費電力モードに移行)を指示する内容の制御指示600を生成してゲートウェイ装置20に送信する。このように制御指示送信部1114は、センサノード10の構成要素について電力供給の要否を随時判定し、不要な構成要素への電力供給を抑制するので、消費電力を抑えてセンサノード10を効率よく稼働させることができる。
【0058】
また制御指示送信部1114は、例えば、傾斜センサ15を低消費電力モードから通常動作モードに移行させる内容の制御指示600を生成してゲートウェイ装置20に送信する。
【0059】
また制御指示送信部1114は、計測データを取得するタイミングの設定を指示する内容の制御指示600を生成してゲートウェイ装置20に送信する。
【0060】
監視制御機能提供部1115は、通信網5を介してアクセスしてくる情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)であるユーザ端末40に、計測値管理テーブル1122に基づく情報の提供やセンサノード10の制御のための機能の提供を行う。これらの機能は、例えば、Webページを介してユーザ端末40に提供される。
【0061】
計測値管理テーブル1122は、図9に示した計測値管理テーブル900の内容を含む。サーバ装置30は、ゲートウェイ装置20から送られてくる計測データ500によって計測値管理テーブル1122の内容を随時更新する。
【0062】
温度補正処理部1116は、傾斜角温度相関算出部11161、比例定数データ生成部11162、温度補正情報生成部11163、及び傾斜角算出部11164を含む。
【0063】
傾斜角温度相関算出部11161は、異なる複数の時刻の夫々について、夫々を基点とする所定時間幅内の複数の計測値について直線近似を行うことにより、傾斜角と温度の相関の比例定数を求める。
【0064】
比例定数データ生成部11162は、上記比例定数を求める際に用いた複数の計測値の平均温度と温度変化幅とを求め、比例定数と平均温度と温度変化幅とを対応づけたデータを比例定数データ1123として生成する。
【0065】
温度補正情報生成部11163は、比例定数データ1123について、温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行い、平均温度と比例定数との関係を示す情報である温度比例定数相関グラフ1124を生成する。
【0066】
傾斜角算出部11164は、温度比例定数相関グラフ1124を利用した温度補正を行うことにより傾斜角を求める。
【0067】
=地盤変位の検知方法=
続いて、温度センサを用いたり温度補正を行うことなく、微小な地盤変位(微小な「地盤変位による傾斜」)の発生を検知する仕組みについて説明する。
【0068】
<外乱による傾斜>
前述したように、本実施形態の地盤変位観測システム1で用いる傾斜センサ15は、傾斜角(変位角)を2軸で検出するタイプであり、傾斜角を二次元座標系(X,Y)の平面上のベクトル(大きさ(傾斜角),方位角)として表現した値を出力する。二次元座標系(X,Y)の原点Oは、例えば、傾斜センサ15の設置時(動作開始時)から24時間が経過した時点までの計測値の平均値に設定される。尚、傾斜センサ15の計測値には正規分布を示す誤差が含まれているが、この誤差は、統計的に有意な数の計測値を取得してそれらの平均(例えば96回移動平均等)を求めることにより低減することができる。
【0069】
前述したように、地盤変位の検知精度を向上させるには地盤の僅かな動きが正確に傾斜センサ15に伝わるように傾斜センサ15を設置する必要があり、例えば、地盤にコンクリート基礎を埋め込み、コンクリートに対して傾斜センサ15を金物等により堅牢に固定するといった方法がとられる。
【0070】
しかしこの方法を採用した場合でも、前述した事象a〜cにより、傾斜センサ15が次第に傾斜する現象(以下、この傾斜のことを「外乱による傾斜」と称する。)が発生する。
【0071】
そこで外乱による傾斜の推移を検証すべく、本発明者等は、図12に示す実験系1200を構成し、この実験系1200について屋内実験室にて実験を行った。同図に示すように、コンクリートブロック1211(縦25cm×横25cm×高さ10cm)の上面を2箇所削孔(直径1cm,深さ 10cm)し、各削孔に棒鋼1213(直径0.6cm,長さ20cm)を埋設し、各棒鋼1213の上端に夫々傾斜センサ15(センサノード)を固定した。コンクリートブロック1211は、安定性の高い除振台1212(縦100cm×横200cm×高さ80cm)の上に載置した。試験期間は44日間(905時間)とし、1時間に1回の頻度で傾斜角(X,Y 座標の2軸)と温度(屋内実験室の所定位置に設けた温度センサにより測定される屋内実験室の気温)を測定した。
【0072】
図13は、経過時間と傾斜角(X座標)との関係(1時間に1回の頻度で取得したデータの96回移動平均)を示すグラフであり、図14は経過時間と傾斜角(Y座標)との関係(1時間に1回の頻度で取得したデータの96回移動平均)を示すグラフである。これらのグラフより、時間が経過しても傾斜角が安定する傾向はみられないことがわかる。
【0073】
図15は、上記検証により得られた「外乱による傾斜ベクトル」の大きさ(X,Y座標系で表記)の軌跡である。同図に示すように、始点と終点とが大きく離れて傾斜角が大きく変動していることがわかる。
【0074】
<温度変化による傾斜>
前述したように、「地盤変位による傾斜」の測定精度を低下させる要因となる前述の事象a〜cのうち、事象cについては屋外の温度変化に伴い常時発生し、長期的に安定化する傾向もなく、「地盤変位による傾斜」の測定に与える影響が大きい。そこで本発明者らは、事象cが「外乱による傾斜ベクトル」に与える影響について調べた。
【0075】
図16は、上記検証にて得られた温度(屋内実験室の温度)の変化を示すグラフであり、図17は、温度と傾斜角(X座標)の関係(直線近似)を示すグラフであり、図18は温度と傾斜角(Y座標)の関係(直線近似)を示すグラフである。これらの図から、温度と傾斜角との間には一定の相関があることがわかる。従って、傾斜角に温度補正を施す(例えば0℃に換算する)ことで、「地盤変位による傾斜」の測定精度を向上させることが可能である。
【0076】
ここで例えば、現在の温度が30℃で傾斜角がA30であるとき、0℃における傾斜角A0は、温度補正により次のようにして求めることができる。まず計測値を用いて傾斜角と温度との相関を最小二乗法等により直線近似することにより比例定数Dを算出する。例えば、図17に示す例では、比例定数Dは0.0191と求められ、また図18に示す例では比例定数Dは0.0149と求められる。続いて、0℃における傾斜角A0をA0=A30―D×30℃の式より算出する。
【0077】
しかしこのようにして求めた比例定数Dには次のような理由による誤差が含まれている。即ち、時間の経過とともに傾斜角には僅かな地盤変位が蓄積されていくが、上記の方法ではそのような地盤変位が蓄積されることによる影響が反映されない。また比例定数Dは温度変化の影響を受けるが(即ち傾斜角が温度について単回帰ではなく重回帰の相関を持つ場合)、上記の方法では、比例定数Dを一定値として(温度変化の影響を受けないものとして)直線近似を行っている。
【0078】
そこで本実施形態では、以下のようにして温度補正を行うこととする。尚、以下の処理の実行主体はいずれも情報処理装置である。情報処理装置は、ゲートウェイ装置20、サーバ装置30、ユーザ端末40のいずれであってもよい。
【0079】
まず情報処理装置は、所定時間間隔毎に(例えば正時毎に)、計測値(傾斜角、温度)を取得する。情報処理装置は、取得した計測値を計測日時と対応づけて管理(記憶)する。
【0080】
続いて情報処理装置は、ある時刻を基点とした予め設定された時間幅内(例えば、数時間前から現在まで)の複数の計測値について最小二乗法等により直線近似を行い、傾斜角と温度との相関の比例定数を求める。
【0081】
ここでこのように、ある時刻を基点とする時間幅内の計測値を用いて比例定数を求めるので、計測値の時間範囲(計測値が取得された時間の範囲)が限定され、比例定数を求めるにあたり、僅かな地盤変位が蓄積されることによる影響を抑えることが可能になる。但し上記の時間幅は、僅かな地盤変位が蓄積されることによる影響が無視できる程度の長さに設定する。しかし一方で、この方法では計測値の数が限定されてしまうため、傾斜角の誤差(正規分布)の影響が大きくなってしまう。そこでこの誤差を次のようにして解消することとする。
【0082】
まず情報処理装置は、複数の時刻(複数のある時刻)の夫々について、夫々を基点として上記と同様の方法により計測値(傾斜角、温度)について直線近似を行い、複数の時刻の夫々について傾斜角と温度との相関の比例定数を求める。
【0083】
また情報処理装置は、上記複数の時刻の夫々について、比例定数を求める際に用いた複数の計測値の平均温度と温度変化幅とを求め、比例定数と平均温度と温度変化幅とを対応づけたデータ(以下、比例定数データ1123と称する。)を生成して記憶する。
【0084】
図19に計測値と温度変化幅と平均温度との関係を示す。また図20に上記の比例定数データ1123のデータ構造を示す。同図に示すように、比例定数データ1123は、比例定数11231、平均温度11232、及び温度変化幅11233を含む。
【0085】
続いて、情報処理装置は、比例定数データ1123について、温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理(例えば1℃間隔での加重平均処理)を行い、平均温度と比例定数との関係を求める。尚、このように温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定するのは、温度変化幅(=最大温度−最低温度)が大きい程、直線近似により求めた比例定数の誤差幅が小さくなるからである。尚、図21A及び図21Bは、温度変化幅が大きい程、直線近似により求めた比例定数の誤差幅が小さくなることを模式的に示した図である。
【0086】
図22に加重平均処理により求めた平均温度と比例定数との関係(以下、温度比例定数相関グラフ1124と称する。)を示す。尚、同図における一つの丸印は一つの比例定数データ1123に対応している。
【0087】
以上のようにして得られた温度比例定数相関グラフ1124を用いることで、例えば、ある温度における傾斜角が計測されている場合に、他の温度における傾斜角を求める(以下、傾斜角算出処理とも称する。)ことができる。例えば、温度が30℃のときの傾斜角がA30として測定されている場合、温度が0℃のときの傾斜角A0は次のようにして求めることができる。
【0088】
まず情報処理装置は、温度が30℃のときの比例定数D30を温度比例定数相関グラフ1124から取得する。続いて情報処理装置は、温度が29℃のときの傾斜角A29を、A29=A30―D30×1℃から求める。続いて情報処理装置は、温度が29℃のときの比例定数D29を温度比例定数相関グラフ1124から取得する。続いて情報処理装置は、温度が28℃のときの傾斜角A28をA28=A29―D29×1℃から求める。そして情報処理装置は以上の処理を平均温度を1℃ずつ減らしつつ繰り返し行い、最終的に温度が0℃のときの傾斜角A0を求める。
【0089】
尚、以上の傾斜角算出処理は次のように一般式で表すこともできる。
0=An−∫F(t)dt
ここでAnは温度tnのときに計測された傾斜角、A0は温度toにおける傾斜角である。またF(t)は温度tを変数とする比例定数の関数(温度比例定数相関グラフ1124)であり、∫F(t)dtは、関数F(t)の温度tn(前述の例では30℃)から温度to(前述の例では0℃)までの定積分である。
【0090】
=処理説明=
続いて、地盤変位観測システム1が行う処理について説明する。尚、以下の説明において、観測エリア2にはその全体に亘って多数の傾斜センサ15が設置されているものとする。また図23に示すように、各傾斜センサ15は、近い位置に設置されている所定数の傾斜センサ15が同じグループ(この例では、グループIDを「A」、「B」、「C」、・・・などとしている。)に所属するように複数のグループに分類されているものとする。また同じグループに所属する各傾斜センサ15が設置されている地盤の温度は均一であり、同じグループに所属する各傾斜センサ15の夫々が設置されているコンクリート基礎の温度は時間の経過とともに同一になるものとする。
【0091】
図24は、地盤変位観測システム1において行われる処理(以下、計測データ取得処理S2400と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに計測データ取得処理S2400について説明する。
【0092】
同図に示すように、センサノード10の制御装置11は、ゲートウェイ装置20からの制御指示600の受信有無をリアルタイムに監視している(S2411)。制御指示600を受信すると(S2411:YES)、制御装置11は、受信した制御指示600の内容に従ってセンサノード10の構成要素についての消費電力の制御や計測データ(傾斜角)を取得するタイミングの設定を行う(S2412)。制御指示600を受信していない場合(S2411:NO)、制御装置11はS2413からの処理を行う。
【0093】
S2413では、制御装置11は、当該センサノード10の傾斜センサ15が、現在、オン(傾斜角を計測可能な状態)であるか否かを判定する。傾斜センサ15がオンである場合(S2413:YES)、処理はS2414に進む。一方、傾斜センサ15がオフ(傾斜センサ15がスタンバイ状態等で傾斜角を計測できない状態)である場合(S2413:NO)、処理はS2411に戻る。
【0094】
S2414では、制御装置11は、現在が傾斜角の計測時機か否かを判定する。現在が傾斜角の計測時機である場合(S2414:YES)、制御装置11は、当該センサノード10の傾斜センサ15から計測値を取得する(S2415)。現在が傾斜角の計測時機でない場合(S2414:NO)、処理はS2416に進む。
【0095】
S2416では、制御装置11は、送信データが有るか(S2415において新たに取得した計測値(傾斜角)があるか)否かを判定する。送信データが有る場合(S2416:YES)、制御装置11は、計測値を設定した計測データ500を生成してゲートウェイ装置20に送信する(S2417)。一方、送信データが無い場合(S2416:NO)、処理はS2411に戻る。
【0096】
ゲートウェイ装置20は、センサノード10から計測データ500を受信する時機が到来した否かをリアルタイムに監視している(S2451)。現在が計測データ500の受信時機である場合(S2451:YES)、ゲートウェイ装置20は、計測データ500の受信を開始し、受信した計測データ500の内容を計測値管理テーブル900に出力する(S2453)。尚、ゲートウェイ装置20は、計測データ500を随時サーバ装置30に中継送信し、一方でサーバ装置30は、計測データ500を受信すると、計測値管理テーブル900の内容を、受信した計測データ500の内容に更新する。
【0097】
S2458では、サーバ装置30が制御指示600を生成する。
【0098】
S2459では、サーバ装置30が制御指示600をゲートウェイ装置20を介してセンサノード10に送信する。
【0099】
<相関グラフ生成処理>
図25は、サーバ装置30(ゲートウェイ装置20又はユーザ端末40でもよい。)が、計測データ取得処理S2400で取得した計測データ(計測値)に基づき前述した温度比例定数相関グラフを生成する処理(以下、相関グラフ生成処理S2500と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに相関グラフ生成処理S2500について説明する。
【0100】
まずサーバ装置30は、複数の時刻の夫々について、夫々を基点とする時間幅内(例えば、数時間前から現在まで)の複数の計測値について最小二乗法等により直線近似を行い、夫々について傾斜角と温度との相関の比例定数を求める(S2511)。
【0101】
続いて、サーバ装置30は、上記複数の時刻の夫々について、比例定数を求める際に用いた複数の計測値の平均温度と温度変化幅を求め、比例定数と平均温度と温度変化幅とを対応づけたデータ(比例定数データ1123)を生成して記憶する(S2512)。
【0102】
続いて、サーバ装置30は、複数の比例定数データ1123について、温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行い(例えば1℃間隔で加重平均処理を行う)、平均温度と比例定数との関係(温度比例定数相関グラフ1124)を生成して記憶する(S2513)。
【0103】
<傾斜角算出処理>
図26は、サーバ装置30(ゲートウェイ装置20又はユーザ端末40でもよい。)が、相関グラフ生成処理S2500により生成された温度比例定数相関グラフ1124を利用して、ある温度において計測された傾斜角から他の温度における傾斜角を求める処理(以下、傾斜角算出処理S2600と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに傾斜角算出処理S2600について説明する。
【0104】
まずサーバ装置30は、傾斜角を求めたい温度(以下、目的温度T0と称する。)の入力をユーザ等から受け付ける(S2611)。
【0105】
続いてサーバ装置30は、計測された傾斜角Anと当該傾斜角Anを測定した際の温度Tnの入力をユーザ等から受け付ける(S2612)。
【0106】
続いてサーバ装置30は、温度比例定数相関グラフ1124を参照しつつ、次式から目的温度T0のときの傾斜角A0を求める(S2613)。
0=An−∫F(t)dt
(但し、∫F(t)dtは、F(t)の温度tnから温度toまでの定積分)
【0107】
続いて、サーバ装置30は、求めた傾斜角AOを出力する(S2614)。
【0108】
以上に説明したように、本実施形態の仕組みによれば、傾斜角について精度よく温度補正を行うことができる。具体的には、ある時刻を基点とする時間幅内の計測値を用いて比例定数を求めるので、計測値の時間範囲(計測値が取得された時間の範囲)が限定され、僅かな地盤変位が蓄積されることによる影響を抑えることができる。尚、計測値の時間範囲が限定されることで計測値の数が限定され、傾斜角の誤差(正規分布)の影響が大きくなるが、温度変化幅の大きいものほど重みを大きく設定した加重平均処理を行うことで、誤差の影響を抑えることができる。
【0109】
ところで、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0110】
例えば、ゲートウェイ装置20とサーバ装置30を共通のハードウェア(ゲートウェイ装置20とサーバ装置30の双方の機能を兼ね備えた装置)としてもよい。
【0111】
また例えば、以上の説明において、サーバ装置30が主体となって行う処理を、例えば、ゲートウェイ装置20やユーザ端末40が主体となって行うようにしてもよい。またゲートウェイ装置20が主体となって行う処理を、例えば、サーバ装置30やユーザ端末40が主体となって行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 地盤変位観測システム、2 観測エリア、5 通信網、10 センサノード、11 制御装置、12 無線装置、15 傾斜センサ、20 ゲートウェイ装置、30 サーバ装置、40 ユーザ端末、413 消費電力/計測時機制御部、500 計測データ、600 制御指示、1111 計測データ受信部、1116 温度補正処理部、11161 傾斜角温度相関算出部、11162 比例定数データ生成部、11163 温度補正情報生成部、11164 傾斜角算出部、1122 計測値管理テーブル、1123 比例定数データ、1124 温度比例定数相関グラフ、900 計測値管理テーブル、950 地盤変位判定結果テーブル、1200 実験系、S2400 計測データ取得処理、S2500 相関グラフ生成処理、S2600 傾斜角算出処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26