【解決手段】回転軸の径方向に設けられた第1磁歪膜,第2磁歪膜と、第1磁歪膜,第2磁歪膜の径方向周囲に設けられた第1検出コイル,第2検出コイルと、第1検出コイル,第2検出コイルのインダクタンスの変化に応じた信号を出力する第1トルクセンサ201と、第1トルクセンサ201から得られた信号に基づいた信号を出力する出力装置300と、を備え、第1トルクセンサ201は、励磁コイルに電流を印加する励磁回路を有し、出力装置300は、励磁回路に、電流を印加させるか否かの指令信号を送る励磁出力命令部340と、指令信号をトリガとして、第1トルクセンサ201から出力される信号を取得し、正常動作しているか否かを診断する故障診断部330と、を有する。
前記センサは、前記コイルのインダクタンスの変化に基づいて、前記軸に入力された入力トルクに応じたトルク信号と、前記コイルに電流が印加されたことに起因して前記変化が生じたか否かを示す診断用信号と、を出力し、
前記出力部の前記故障診断部は、前記トルク信号及び前記診断用信号を取得し、正常動作しているか否かを診断する
請求項1に記載のトルク検出装置。
前記出力部の前記電流印加命令部は、前記指令信号を予め定められた第1期間送った後に予め定められた第2期間停止することを繰り返し、前記故障診断部は、前記指令信号の送り始めをトリガとして前記センサから取得した信号と、前記指令信号の停止をトリガとして前記センサから取得した信号とに基づいて、前記第1期間に前記第2期間を加算した期間毎に正常動作しているか否かを診断する
請求項1から4のいずれか1項に記載のトルク検出装置。
前記コイルのインダクタンスの変化に基づく前記軸に入力された入力トルクに応じたトルク信号と、前記コイルに電流が印加されたことに起因して前記コイルのインダクタンスが変化したか否かを示す診断用信号とを取得し、正常動作しているか否かを診断する
請求項6に記載の故障診断方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
{第1の実施形態}
図1は、第1の実施形態に係るトルク検出装置200の概略構成を示す図である。
図2は、第1トルクセンサ201の概略構成を示す図である。
本実施の形態のトルク検出装置200は、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいて回転軸390に印加された印加トルクTaを検出する磁歪式のセンサである、第1トルクセンサ201と第2トルクセンサ202とを備えている。また、トルク検出装置200は、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202から出力された値に基づいて印加トルクTaに応じた値を出力すると共に第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202の故障を診断する出力装置300を備えている。
【0009】
〔トルクセンサ〕
第1トルクセンサ201の構成と第2トルクセンサ202の構成とは同一であるので、以下に、代表して第1トルクセンサ201について説明する。
第1トルクセンサ201は、回転軸390に加えられた印加トルクTaを検出するトルク検出部210と、トルク検出部210による検出に基づいて印加トルクTaに応じた電圧を出力するトルク検出回路250とを備えている。トルク検出部210は、印加トルクTaに応じて後述する2個のコイル(第1検出コイル221、第2検出コイル222)のインダクタンスを変化させ、トルク検出回路250は、これら2個のコイルのインダクタンスの変化に基づいて印加トルクTaに応じた電圧を出力する。
【0010】
トルク検出部210は、回転軸390の外周面に形成された第1磁歪膜211及び第2磁歪膜212と、第1磁歪膜211の径方向周囲に配置された第1検出コイル221と、第2磁歪膜212の径方向周囲に配置された第2検出コイル222と、回転軸390の周囲に配置された励磁コイル223と、を備えている。
第1磁歪膜211及び第2磁歪膜212は、歪みの変化に対して透磁率の変化が大きい素材からなる金属膜であり、例えば、回転軸390の外周にメッキ法で形成したNi−Fe系の合金膜であることを例示することができる。第1磁歪膜211は、回転軸390の軸線方向に対して約45度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されており、第2磁歪膜212は、第1磁歪膜211の磁気異方性の方向に対して約90度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されている。すなわち、第1磁歪膜211、第2磁歪膜212の磁気異方性は互いに約90度位相を異にしている。
【0011】
第1検出コイル221は、第1磁歪膜211の周囲に所定の隙間を空けた状態で回転軸390と同軸状に配置されている。第2検出コイル222は、第2磁歪膜212の周囲に所定の隙間を空けた状態で回転軸390と同軸状に配置されている。第1検出コイル221の巻き始めである導線の一端が、第1端子231に接続されている。第2検出コイル222の巻き終わりである導線の他端が、第2端子232に接続されている。第1検出コイル221の巻き終わりである導線の他端と第2検出コイル222の巻き始めである導線の一端とが、第3端子233に接続されている。第1検出コイル221の巻き始めである導線の一端と第2検出コイル222の巻き終わりである導線の他端とが、第4端子234に接続されている。励磁コイル223の巻き始めである導線の一端が第5端子235に接続され、励磁コイル223の巻き終わりである導線の他端が第6端子236に接続されている。
【0012】
第1磁歪膜211及び第2磁歪膜212の磁気異方性を上述のように設定したことにより、回転軸390にトルクが作用しない状態でも、第1磁歪膜211、第2磁歪膜212の主応力方向の一方に圧縮応力が作用し、他方に引張応力が作用する。第1磁歪膜211、第2磁歪膜212の透磁率は概ね等しく設定されている。回転軸390にトルクが印加されると、異方性を持たせた第1磁歪膜211及び第2磁歪膜212にそれぞれ引張応力、圧縮応力が選択的に働く。その結果、逆磁歪効果により第1磁歪膜211、第2磁歪膜212の透磁率がそれぞれ増加又は減少する。そして、これに応じて、第1検出コイル221と第2検出コイル222のうち、一方のインダクタンスが増加し、他方のインダクタンスが減少する。
【0013】
〔トルク検出回路〕
トルク検出回路250は、CPU等からなる算術論理演算回路であり、
図2に示すように、第1端子231,第2端子232それぞれから延びた信号線と電気的に接続された検出回路251を備えている。また、トルク検出回路250は、第3端子233,第4端子234それぞれから延びた信号線と電気的に接続された励磁モニタ回路252を備えている。また、トルク検出回路250は、第5端子235,第6端子236それぞれから延びた信号線と電気的に接続されて、交流電流を流して磁束を発生させる励磁回路253を備えている。そして、かかる構成により、検出回路251は、第1検出コイル221の一端と第2検出コイル222の他端の電圧を検出し、励磁モニタ回路252は、第1検出コイル221の一端と第2検出コイル222の他端の電圧と、第1検出コイル221の他端と第2検出コイル222の一端との接続部の電圧とを検出する。
【0014】
第1検出コイル221に関する磁歪特性曲線と、第2検出コイル222に関する磁歪特性曲線とは、第1磁歪膜211、第2磁歪膜212のそれぞれで互いに逆方向となる磁気異方性を有することが反映して、両磁歪特性曲線が交わる点を含む縦軸に関して略線対称の関係になる。
第1トルクセンサ201では、第1検出コイル221、第2検出コイル222に関する磁歪特性曲線における印加トルクTaの中立点(ゼロ点)付近の一定勾配とみなされる領域を使用し、原点を通る直線であって、縦軸及び横軸の正側、負側に存在する直線を利用することで、検出回路251は、印加トルクTaの方向と大きさに応じた第1トルク検出信号TS1を出力する。
【0015】
検出回路251は、第1端子231を介して出力される電圧と第2端子232を介して出力される電圧との差を所定の増幅度で増幅し、バイアス電圧(例えば、2.5V)を加えた電圧を第1トルク検出信号TS1として出力する。印加トルクTaがゼロのときに、第1検出コイル221から出力される電圧と第2検出コイル222から出力される電圧は等しいので、その差の値はゼロとなり、第1トルク検出信号TS1はバイアス電圧と等しくなる
一方、第2トルクセンサ202の検出回路251は、第1端子231を介して出力される電圧と第2端子232を介して出力される電圧との差を所定の増幅度で増幅し、バイアス電圧(例えば、2.5V)を加えた電圧を第2トルク検出信号TS2として出力する。以下、第1トルク検出信号TS1と第2トルク検出信号TS2とをまとめて「トルク検出信号TS」と称する場合もある。
【0016】
図3は、トルク検出信号TSの出力範囲を示す図である。
トルク検出信号TSは、
図3に示すように、印加トルクTaの一方方向への大きさが増加するのに伴って上昇すると共に、最大電圧VHiと最小電圧VLoとの間で変化する。最大電圧VHiは4.5V、最小電圧VLoは0.5Vであることを例示することができる。かかる場合、0.5V以上4.5V以下の範囲がトルク検出信号TSの出力正常範囲となり、0.5Vより小さい範囲及び4.5Vより大きい範囲がトルク検出信号TSの出力異常範囲となる。
【0017】
励磁モニタ回路252は、トルク検出信号TSと同期した信号を出力する。励磁モニタ回路252は、第1検出コイル221,第2検出コイル222のインダクタンスが変化しているか否か、検出回路251が故障してないかを判断する。そして、励磁モニタ回路252は、励磁コイル223に電流が印加されたことに起因して第1検出コイル221,第2検出コイル222のインダクタンスが変化したことを示すLo信号と、第1検出コイル221,第2検出コイル222のインダクタンスが変化していないことを示すHi信号とを、故障診断用信号TSIGとして出力する。以下の説明において、第1トルクセンサ201から出力される故障診断用信号TSIGを第1故障診断用信号TSIG1、第2トルクセンサ202から出力される故障診断用信号TSIGを第2故障診断用信号TSIG2と称す。
【0018】
第1トルクセンサ201のトルク検出回路250から出力される第1トルク検出信号TS1及び第1故障診断用信号TSIG1と、第2トルクセンサ202のトルク検出回路250から出力される第2トルク検出信号TS2及び第2故障診断用信号TSIG2とは、出力装置300に入力される。
【0019】
〔出力装置〕
出力装置300は、第1トルクセンサ201に動作電圧を供給する第1電源310と、第2トルクセンサ202に動作電圧を供給する第2電源320とを備えている。第1電源310,第2電源320は、車載バッテリの電源電圧を、それぞれ第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202に適した動作電圧に調圧し、調圧された動作電圧を出力装置300の第1電源端子301,第2電源端子302にそれぞれ印加する。また、出力装置300は、グランド電位に設定された第1グランド端子303と第2グランド端子304とを備えている。第1電源端子301及び第1グランド端子303に配線を介して第1トルクセンサ201が接続されることで、第1トルクセンサ201の電源が確保されている。また第2電源端子302及び第2グランド端子304に配線を介して第2トルクセンサ202が接続されることで、第2トルクセンサ202の電源が確保されている。
【0020】
また、出力装置300は、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202の故障を診断する故障診断部330と、故障診断部330の故障診断結果に基づいて、第1トルクセンサ201、第2トルクセンサ202の励磁回路253に対して励磁させることを命令する励磁出力命令部340とを備えている。また、出力装置300は、第1トルクセンサ201から出力された第1トルク検出信号TS1か、第2トルクセンサ202から出力された第2トルク検出信号TS2かを、トルク信号Tdとして用いるのを切り替える切替部350を備えている。
【0021】
《故障診断部》
故障診断部330には、第1トルクセンサ201から出力される第1トルク検出信号TS1及び第1故障診断用信号TSIG1、第2トルクセンサ202から出力される第2トルク検出信号TS2及び第2故障診断用信号TSIG2が入力される。そして、故障診断部330は、第1トルク検出信号TS1及び第2トルク検出信号TS2に基づいて、第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202が故障しているか否かを診断する。また、故障診断部330は、第1トルクセンサ201が故障している場合には、第2トルク検出信号TS2及び第2故障診断用信号TSIG2に基づいて第2トルクセンサ202が故障しているか否かを診断する。また、故障診断部330は、第2トルクセンサ202が故障している場合には、第1トルク検出信号TS1及び第1故障診断用信号TSIG1に基づいて第1トルクセンサ201が故障しているか否かを診断する。故障診断方法については後で詳述する。
【0022】
《励磁出力命令部》
励磁出力命令部340は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していないと診断している場合には、第1トルクセンサ201の励磁回路253に対して励磁を命令する。また、励磁出力命令部340は、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が診断した場合には、第1トルクセンサ201の励磁回路253に対して、後述するように予め定められたタイミングで励磁させたり停止させたりするよう命令する。また、励磁出力命令部340は、第1トルクセンサ201が故障していると故障診断部330が診断した場合には、第2トルクセンサ202の励磁回路253に対して、後述するように予め定められたタイミングで励磁させたり停止させたりするよう命令する。
【0023】
《切替部》
切替部350は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していないと判断している場合には、その旨の信号と共に、第1トルクセンサ201から出力される第1トルク検出信号TS1を、トルク信号Tdとして出力する。
また、切替部350は、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が判断している場合には、その旨の信号と共に、第1トルクセンサ201から出力される第1トルク検出信号TS1を、トルク信号Tdとして出力する。
また、切替部350は、第1トルクセンサ201が故障していると故障診断部330が判断している場合には、その旨の信号と共に、第2トルクセンサ202から出力される第2トルク検出信号TS2を、トルク信号Tdとして出力する。
また、切替部350は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していると判断している場合には、その旨の信号を出力する。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態のトルク検出装置200においては、出力装置300の励磁出力命令部340から指示を受けて、第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202のトルク検出部210の励磁回路253が交流電流を流して磁束を発生させると、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は、それぞれ印加トルクTaに応じた電圧信号である第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2を出力する。また、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は、それぞれ第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2と同期した信号である第1故障診断用信号TSIG1,第2故障診断用信号TSIG2を出力する。
【0025】
そして、本実施の形態のトルク検出装置200は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していないと診断している場合、第1トルクセンサ201から出力された第1トルク検出信号TS1をトルク信号Tdとして出力する。一方、トルク検出装置200は、第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202のいずれか一方のトルクセンサが故障している場合には、他方のトルクセンサから出力されたトルク検出信号TSをトルク信号Tdとして出力する。ただし、第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202のいずれか一方のトルクセンサが故障している場合には、両トルクセンサからのトルク検出信号TSを用いて故障診断を行うことができないことから、他方のトルクセンサから出力された信号を用いてこの他方のトルクセンサが故障しているか否かを診断する自己故障診断処理を行う。
【0026】
《故障診断》
以下、故障診断部330が行う故障診断について説明する。
故障診断部330は、例えば、第1トルク検出信号TS1の電圧と第2トルク検出信号TS2の電圧との差が所定範囲内である場合には第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202は正常であると診断し、第1トルク検出信号TS1の電圧と第2トルク検出信号TS2の電圧との差が所定範囲外である場合には第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202が故障していると診断する。また、故障診断部330は、第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2が出力正常範囲内である場合には、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は正常であると診断し、第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内である場合には、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は異常であると診断する。
【0027】
そして、本実施の形態のトルク検出装置200においては、第1トルクセンサ201が故障していると故障診断部330が診断した場合には、励磁出力命令部340は、第1トルクセンサ201の励磁回路253に対して、励磁を停止するよう命令する。また、第2トルクセンサ202の自己故障診断処理を行いながら第2トルクセンサ202からのトルク検出信号TSをトルク信号Tdとして出力するべく、励磁出力命令部340は、第2トルクセンサ202の励磁回路253に対して、励磁させるための信号である励磁駆動信号REN2を周期的にON/OFFする。また、トルク検出装置200は、故障した第1トルクセンサ201に動作電圧を供給する第1電源310による電圧の供給を遮断する。また、トルク検出装置200においては、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が診断した場合には、励磁出力命令部340は、第2トルクセンサ202の励磁回路253に対して、励磁を停止するよう命令する。また、第1トルクセンサ201の自己故障診断処理を行いながら第1トルクセンサ201からのトルク検出信号TSをトルク信号Tdとして出力するべく、励磁出力命令部340は、第1トルクセンサ201の励磁回路253に対して、励磁させるための信号である励磁駆動信号REN1を周期的にON/OFFする。また、トルク検出装置200は、故障した第2トルクセンサ202に動作電圧を供給する第2電源320による電圧の供給を遮断する。
【0028】
以下に、自己故障診断処理について説明する。以下には、第1トルクセンサ201が故障していると故障診断部330が診断した場合を例示して説明する。
図4は、自己故障診断処理を説明するタイミングチャートである。
励磁出力命令部340は、第2トルクセンサ202の励磁回路253に対する励磁駆動信号REN2を周期的にON/OFFする。より具体的には、励磁出力命令部340は、励磁駆動信号REN2をOFF状態からON状態にし、ON状態を予め定められた第1期間T1の間継続する。その後、励磁出力命令部340は、励磁駆動信号REN2をON状態からOFF状態にし、OFF状態を第2期間T2の間継続する。その後、励磁出力命令部340は、励磁駆動信号REN2をOFF状態からON状態にし、ON状態を第1期間T1の間継続する。以降、励磁出力命令部340は、第2トルクセンサ202が故障したと診断されるまで、励磁駆動信号REN2の第1期間T1のON状態と第2期間T2のOFF状態とを繰り返す。第1期間T1は、後述する第3期間T3及び第4期間T4以上であると良い。第2期間T2は、例えば、後述するように第2トルク検出信号TS2及び第2故障診断用信号TSIG2を取得可能な期間であると良い。
【0029】
励磁駆動信号REN2がOFF状態である場合には、第2トルク検出信号TS2は0Vである。励磁駆動信号REN2がOFF状態からON状態にされると、第2トルクセンサ202のトルク検出回路250の検出回路251などが正常に起動し始めるまでの所定の準備期間である第3期間T3経過後に、トルクに応じた第2トルク検出信号TS2が出力され始める。また、励磁駆動信号REN2がOFF状態からON状態にされると、トルク検出回路250の励磁モニタ回路252などが正常に起動し始めるまでの所定の準備期間である第4期間T4経過後に、Lo信号の第2故障診断用信号TSIG2が出力され始める。
【0030】
故障診断部330は、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をOFF状態からON状態に切り替えた後の第5期間T5経過後に第2トルク検出信号TS2を取得して、第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内であるか否かを診断する。故障診断部330は、出力異常範囲内であるか否かの診断の結果、第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内であると判断した場合には第2トルクセンサ202が故障したと判断し、第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内ではないと判断した場合には第2トルクセンサ202は故障していないと判断する。第5期間T5は、第3期間T3以上第1期間T1未満であることを例示することができる。
【0031】
故障診断部330は、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をON状態からOFF状態に切り替えた後の第6期間T6経過後に第2トルク検出信号TS2を取得して、第2トルク検出信号TS2が0Vであるか否かを診断する。故障診断部330は、診断の結果、第2トルク検出信号TS2が0Vであると判断した場合には第2トルクセンサ202は正常と判断し、0Vではないと判断した場合には第2トルクセンサ202は故障したと判断する。第6期間T6は、第2期間T2未満であることを例示することができる。
【0032】
故障診断部330は、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をOFF状態からON状態に切り替えた後の第7期間T7経過後に第2故障診断用信号TSIG2を取得して、第2故障診断用信号TSIG2がLoであるか否かを診断するLo診断を行う。故障診断部330は、Lo診断の結果、第2故障診断用信号TSIG2がLoであると判断した場合には第2トルクセンサ202は正常と判断し、Loではないと判断した場合には第2トルクセンサ202は故障したと判断する。第7期間T7は、第3期間T3以上第1期間T1未満であることを例示することができる。また、第7期間T7は第5期間T5と同じであることを例示することができる。
【0033】
故障診断部330は、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をON状態からOFF状態に切り替えた後の第8期間T8経過後に第2故障診断用信号TSIG2を取得して、第2故障診断用信号TSIG2がHiであるか否かを診断するHi診断を行う。故障診断部330は、Hi診断の結果、第2故障診断用信号TSIG2がHiであると判断した場合には第2トルクセンサ202は正常と判断し、Hiではないと判断した場合には第2トルクセンサ202は故障したと判断する。第8期間T8は、第2期間T2未満であることを例示することができる。また、第8期間T8は第6期間T6と同じであることを例示することができる。
【0034】
次に、フローチャートを用いて、故障診断部330が行う自己故障診断処理の手順について説明する。
図5は、故障診断部330が行う自己故障診断処理の手順を示すフローチャートである。
故障診断部330は、この自己故障診断処理を、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をOFF状態からON状態にしたときに開始する。
【0035】
故障診断部330は、先ず、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をOFF状態からON状態にしたときから第5期間T5が経過したか否かを判断する(S501)。そして、第5期間T5が経過していない場合(S501でNo)、第5期間T5が経過するまで待機する。他方、第5期間T5が経過した場合(S501でYes)、第2トルク検出信号TS2を取得し(S502)、第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内であるか否かを判断する(S503)。第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内ではない場合(S503でNo)、第7期間T7が経過したか否かを判断する(S504)。そして、第7期間T7が経過していない場合(S504でNo)、第7期間T7が経過するまで待機する。他方、第7期間T7が経過した場合(S504でYes)、第2故障診断用信号TSIG2を取得し(S505)、第2故障診断用信号TSIG2がLoであるか否かを判断する(S506)。第2故障診断用信号TSIG2がLoである場合(S506でYes)、励磁出力命令部340が励磁駆動信号REN2をON状態からOFF状態にしたときから第6期間T6が経過したか否かを判断する(S507)。そして、第6期間T6が経過していない場合(S507でNo)、第6期間T6が経過するまで待機する。他方、第6期間T6が経過した場合(S507でYes)、第2トルク検出信号TS2を取得し(S508)、第2トルク検出信号TS2が0Vであるか否かを判断する(S509)。第2トルク検出信号TS2が0Vである場合(S509でYes)、第8期間T8が経過したか否かを判断する(S510)。そして、第8期間T8が経過していない場合(S510でNo)、第8期間T8が経過するまで待機する。他方、第8期間T8が経過した場合(S510でYes)、第2故障診断用信号TSIG2を取得し(S511)、第2故障診断用信号TSIG2がHiであるか否かを判断する(S512)。そして、第2故障診断用信号TSIG2がHiである場合(S512でYes)、第2トルクセンサ202は正常と判断し、正常である旨を切替部350に出力する(S513)。
【0036】
一方、第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内である場合(S503でYes)、第2故障診断用信号TSIG2がLoではない場合(S506でNo)、第2トルク検出信号TS2が0Vではない場合(S509でNo)、第2故障診断用信号TSIG2がHiではない場合(S512でNo)、第2トルクセンサ202は故障していると判断し、故障である旨を切替部350に出力する(S514)。
【0037】
以上説明したように、故障診断部330は、自己故障診断処理を、予め定められた処理期間(第1期間T1+第2期間T2)毎に行う。この自己故障診断処理1サイクルの処理期間(第1期間T1+第2期間T2)は、例えば1ms〜100msであることを例示することができる。
そして、切替部350は、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が診断していない場合には、第2トルクセンサ202から出力される第2トルク検出信号TS2を、トルク信号Tdとして出力する。つまり、切替部350は、処理期間毎に第2トルク検出信号TS2をトルク信号Tdとして出力する。例えば、切替部350は、第2トルクセンサ202が正常である旨の信号を故障診断部330から取得したときに第2トルク検出信号TS2を取得すると共に、取得した第2トルク検出信号TS2をトルク信号Tdとして出力することを例示することができる。
他方、切替部350は、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が診断している場合には、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障している旨の信号を出力する。
【0038】
以上説明したように、第1の実施形態に係るトルク検出装置200は、軸の一例としての回転軸390の径方向に設けられた磁性体の一例としての第1磁歪膜211,第2磁歪膜212と、第1磁歪膜211,第2磁歪膜212の径方向周囲に設けられたコイルの一例としての第1検出コイル221,第2検出コイル222と、第1検出コイル221,第2検出コイル222のインダクタンスの変化に応じた信号を出力するセンサの一例としての第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202と、第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202から得られた信号に基づいた信号を出力する出力部の一例としての出力装置300と、を備えている。そして、トルク検出装置200の第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は、第1検出コイル221,第2検出コイル222に電流を印加する電流印加部の一例としての励磁回路253を有し、出力装置300は、励磁回路253に、電流を印加させるか否かの指令信号の一例としての励磁駆動信号REN1又は励磁駆動信号REN2を送る電流印加命令部の一例としての励磁出力命令部340と、励磁駆動信号REN1,励磁駆動信号REN2をトリガとして、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202から出力される信号を取得し、正常動作しているか否かを診断する故障診断部330と、を有する。
【0039】
第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は、第1検出コイル221,第2検出コイル222のインダクタンスの変化に基づいて、回転軸390に入力された入力トルクの一例としての印加トルクTaに応じたトルク信号の一例としての第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2を出力し、出力装置300の故障診断部330は、第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2を取得し、正常動作しているか否かを診断する。
また、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は、励磁コイル223に電流が印加されたことに起因して第1検出コイル221,第2検出コイル222のインダクタンスが変化したか否かを示す診断用信号の一例としての第1故障診断用信号TSIG1,第2故障診断用信号TSIG2を出力し、出力装置300の故障診断部330は、第1故障診断用信号TSIG1,第2故障診断用信号TSIG2を取得し、正常動作しているか否かを診断する。
【0040】
また、出力装置300の励磁出力命令部340は、励磁駆動信号REN1,励磁駆動信号REN2を予め定められた第1期間T1送った後に予め定められた第2期間T2停止することを繰り返し、故障診断部330は、励磁駆動信号REN1,励磁駆動信号REN2の送り始めをトリガとして第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202から取得した信号の一例としての第1故障診断用信号TSIG1,第2故障診断用信号TSIG2と、励磁駆動信号REN1,励磁駆動信号REN2の停止をトリガとして第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202から取得した信号の一例としての第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2及び第1故障診断用信号TSIG1,第2故障診断用信号TSIG2とに基づいて、第1期間T1に第2期間T2を加算した期間(T1+T2)毎に正常動作しているか否かを診断する。
【0041】
以上のように構成されたトルク検出装置200においては、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202のいずれか一方のトルクセンサが故障したとしても、他方のトルクセンサから出力される出力値に基づいてこの他方のトルクセンサが正常動作しているか否かを判断することができる。その結果、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202のいずれか一方のトルクセンサが故障したとしても、トルク検出装置200から出力されるトルク信号Tdは、正常動作していると判断された正常なトルクセンサからの出力値に基づくので、信頼できる値である。
【0042】
なお、故障診断部330が第1トルク検出信号TS1の電圧と第2トルク検出信号TS2の電圧との差が所定範囲外であるために第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202が故障していると診断した場合に、上述した自己故障診断処理を行うことで、第1トルクセンサ201、第2トルクセンサ202のどちらが故障しているかを特定することができる。
【0043】
{第2の実施形態}
第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、第1の実施形態に係るトルク検出装置200を備えた装置である。
第1の実施形態に係るトルク検出装置200は、2つのトルクセンサを備える二重系のトルクセンサの一方のトルクセンサが故障した際に、アシストを継続する電動パワーステアリング装置に適用することができる。二重系のトルクセンサの一方のトルクセンサが故障した際にアシストを継続する電動パワーステアリング装置において、一方のトルクセンサが故障した際に、例えば電動モータの回転角度から操舵角を推定してアシスト制御を行う場合、故障していない他方のトルクセンサの検知に基づいて操舵トルクの方向を検知してアシストの信頼性を向上させる場合がある。かかる場合、第1の実施形態に係るトルク検出装置200を用いれば、信頼できる操舵トルクの方向を使用することができるため、さらに信頼性が高いアシスト継続を実施することができる。
【0044】
{第3の実施形態}
第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、第1の実施形態に係るトルク検出装置200の第1トルクセンサ201を備えるが第2トルクセンサ202を備えていない装置である。つまり、第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、第1トルクセンサ201のみの1つのトルクセンサを備える二重系ではないトルク検出装置を備える。
1つのトルクセンサのみを備える構成であっても、上述した自己故障診断処理を行うことでこのトルクセンサの故障を精度高く検出することができることから、このトルクセンサの検出値を信頼でき、アシスト制御の信頼性を担保することができる。また、二重系のトルク検出装置を備える場合と比較すると、電動パワーステアリング装置のコストダウンを図ることができる。