特開2018-146823(P2018-146823A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-146823(P2018-146823A)
(43)【公開日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20180824BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180824BHJP
【FI】
   G09F9/00 342
   G09F9/00 366A
   G09F9/00 313
   G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-42445(P2017-42445)
(22)【出願日】2017年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝夫
【テーマコード(参考)】
2H189
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA16
2H189AA53
2H189AA64
2H189AA70
2H189CA13
2H189HA04
2H189HA12
2H189LA02
2H189LA07
5G435AA01
5G435BB05
5G435BB06
5G435BB12
5G435EE03
5G435FF05
5G435KK02
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】画像表示部材とその表面側に配される湾曲した光透過性カバー部材とを光硬化性樹脂組成物の硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置を製造する際に、組み上げた画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにし、空隙が生じないまでも、硬化樹脂層の残留応力により表示に色ムラが生じないようにする。
【解決手段】画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成し、その液体収容部にその開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約することにより製造される。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であって、
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成し、その液体収容部にその開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約する製造方法。
【請求項2】
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であって、
以下の工程(A)〜(D):
<工程(A)>
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、一対の第1開口部と第2開口部とを備えた空洞部を有する中空体を形成する工程;
<工程(B)>
中空体の第1開口部にダム部材を配置して空洞部を液体収容部とする工程:
<工程(C)>
光硬化性樹脂組成物を、第2開口部から液体収容部に充填する工程;
<工程(D)>
液体収容部に充填された光硬化性樹脂組成物に紫外線を照射し、第2開口部側に硬化収縮空間を集約させながら硬化樹脂層を形成する工程;
を有する製造方法。
【請求項3】
工程(D)の後で、工程(D)において生じた硬化収縮空間に光硬化性樹脂組成物を充填し、光硬化させる請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
工程(B)において、中空体を立設する請求項2又は3記載の製造方法。
【請求項5】
画像表示部材が偏光板を有し、工程(A)において、画像表示部材の偏光板と光透過性カバー部材の凹部面とが対向している請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程(C)の充填を真空下で行う請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程(C)と工程(D)との間で、加圧脱泡処理を行う請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
画像表示部材が、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル又はタッチパネルである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
工程(D)において、硬化樹脂層の硬化率が90%以上となるように本硬化させる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
光硬化性樹脂組成物が、成分(イ)エラストマー及びアクリレート系オリゴマーの少なくともいずれか一方を含有するベース成分、成分(ロ)アクリル系モノマー成分、成分(ハ)可塑剤成分及び成分(ニ)光重合開始剤とを含有し、成分(イ)のエラストマーが、アクリル共重合体、ポリブテン及びポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも一種であり、成分(イ)のアクリレート系オリゴマーが、ポリウレタン系(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート又はポリイソプレン系(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である液状の樹脂組成物である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネル等の画像表示部材と、その表面側に配される湾曲した透明保護シート等の光透過性カバー部材とが、光透過性硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションなどの車載用情報端末に用いられている画像表示装置は、フラットな光透過性カバー部材に光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線照射により仮硬化させて仮硬化樹脂層を形成した後、その仮硬化樹脂層に液晶表示パネルや有機ELパネル等のフラットな画像表示部材を積層し、続いて仮硬化樹脂層に対し紫外線照射を再度行うことにより本硬化させて光硬化樹脂層とすることにより製造されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、車載用情報端末用の画像表示装置の意匠性やタッチ感を向上させるために、一方向に湾曲した形状の光透過性カバー部材を用いることが求められるようになっている。このため、このような画像表示装置を特許文献1に記載の製造方法に準じて製造することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−119520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、光硬化性樹脂組成物を紫外線照射により光硬化させると硬化収縮が生じるが、フラットな光透過性カバー部材にフラットな画像表示部材を積層する特許文献1の製造方法の場合には、面方向の光硬化性樹脂組成物の塗布厚が約150μm程度と薄くしかも均一であるため、光硬化樹脂層が硬化収縮してもボイドが発生し難く、また、画像品質に対する光硬化樹脂層の残存応力の影響を無視できるものであった。
【0006】
一方、一方向に湾曲した形状の光透過性カバー部材の凹部面に光硬化性樹脂組成物を塗布した場合、湾曲していない辺近傍の光硬化性樹脂組成物の塗布厚は0〜500μm程度になるが、凹部面の中央部の光硬化性樹脂組成物の塗布厚は辺近傍の塗布厚より非常に厚くなり、場合により数mm厚程度にまで厚くなる。このため、凹部面の中央部では、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮が著しく大きなものとなり、結果的に中央部には凹みが形成され、組み上げた画像表示装置の表示面に空隙が生じる場合があり、また、空隙が生じないまでも、光硬化樹脂層の残留応力により表示に色ムラが生ずるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、画像表示部材とその表面側に配される湾曲した光透過性カバー部材とを光硬化性樹脂組成物の硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を製造する際に、組み上げた画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにし、また、空隙が生じないまでも、硬化樹脂層の残留応力により表示に色ムラが生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化して開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成し、その液体収容部に開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約するようにすることにより、上述の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であって、
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成し、その液体収容部にその開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約する製造方法を提供する。
【0010】
より具体的には、本発明は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であって、
以下の工程(A)〜(D):
<工程(A)>
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、一対の第1開口部と第2開口部とを備えた空洞部を有する中空体を形成する工程;
<工程(B)>
中空体の第1開口部にダム部材を配置して空洞部を液体収容部とする工程:
<工程(C)>
光硬化性樹脂組成物を、第2開口部から液体収容部に充填する工程;
<工程(D)>
液体収容部に充填された光硬化性樹脂組成物に紫外線を照射し、第2開口部側に硬化収縮空間を集約させながら硬化樹脂層を形成する工程;
を有する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像表示装置の製造方法においては、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成し、その液体収容部にその開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約するようにしている。このため、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにでき、また、硬化樹脂層の残留応力を低減させて表示の色ムラが生じないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本発明の製造方法の工程(A)の説明図である。
図1B図1Bは、本発明の製造方法の工程(A)の説明図である。
図1C図1Cは、光透過性カバー部材の説明図である。
図1D図1Dは、光透過性カバー部材の説明図である。
図2A図2Aは、本発明の製造方法の工程(B)の説明図である。
図2B図2Bは、本発明の製造方法の工程(B)の説明図である
図3図3は、本発明の製造方法の工程(C)の説明図である。
図4A図4Aは、本発明の製造方法の工程(D)におけるUV走査方向の説明図である。
図4B図4Bは、本発明の製造方法の工程(D)で形成される硬化収縮空間の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であり、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、それにより開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成した後、その液体収容部にその開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約することを特徴とする。以下、本発明の製造方法の好ましい一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の製造方法は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であり、以下の工程(A)〜(D)を有することが好ましい。
【0015】
<工程(A):中空体の形成>
まず、画像表示部材1(図1A)と湾曲した光透過性カバー部材2(図1B)とを、光透過性カバー部材2の凹部面2aを画像表示部材1に対向させて一体化する。これにより、一対の第1開口部10aと第2開口部10bとを備えた空洞部20を有する中空体10を形成する(図1D)。
【0016】
(画像表示部材1)
画像表示部材1としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等を挙げることができる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。このような画像表示部材1の光透過性カバー部材2側の表面が平坦であることが好ましい。また、画像表示部材1の表面に偏光板が配置されていてもよい。
【0017】
(光透過性カバー部材2)
湾曲した光透過性カバー部材2の具体的な形状としては、代表的には図1Bに示すような、一方向に湾曲した形状(例えば、円柱パイプをその中心軸に平行な平面で切断して得られる劣弧側の形状(以下、横樋形状と称する))が挙げられる。この形状の中央部に平坦部2bが形成されていてもよい(図1C)。
【0018】
光透過性カバー部材2の材料としては、画像表示部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。光透過性カバー部材2の湾曲の形状や厚さなどの寸法的な特性、弾性などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0019】
(画像表示部材1と光透過性カバー部材2との一体化)
図1Dのように、画像表示部材1と光透過性カバー部材2とを、光透過性カバー部材2の凹部面2aが画像表示部材1(その表面に偏光板が配置されている場合には当該偏光板)と対向するように一体化する場合、特に限定されないが、図1Aのように、画像表示部材1の表面において光透過性カバー部材2と接触する位置に、公知のホットメルトタイプ、熱硬化タイプ、湿気硬化タイプ、あるいは光硬化タイプの接着剤30を塗布し、図1Dのように貼り合わせることができる。接着剤30はダム部材として機能させることができる。この場合、光透過性カバー部材に接着剤を塗布してもよく、双方に塗布してもよい。特に、接着剤として、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とから構成される液体収容部に充填する光硬化性樹脂組成物と同じ若しくは同等の樹脂を使用し、それを画像表示部材または光透過性カバー部材に塗布し仮硬化させておき、これを一体化させることが好ましい。これにより、接着剤と後から充填する光硬化性樹脂組成物との間で光学的な屈折率に差異が生じにくくなり、それらの界面が視認され難くすることができ、製品外観を劣化させずに生産が可能となる。また、第1開口部が埋まるように接着剤をカタカナの“コ”の字状に塗布してもよい。この場合、本工程(A)と後述の工程(B)とが同時に実施されていることになる。なお、接着剤を用いずに、画像表示部材1と光透過性カバー部材2とを対向させ、外側から押圧して密着させてもよい。
【0020】
<工程(B):液体収容部の形成>
次に、図2Aに示すように、中空体10の第1開口部10aにダム部材40を配置する。これにより中空体10に液体収容部50が形成される。この場合、中空体10を立設することが好ましい(図2B)。ここで、「立設」とは、液体収容部50を水平方向に対し好ましくは30°以上90°以下の向き配置することである。なお、液体収容部に収容する液状の光硬化性樹脂組成物の粘度や液体収容部内壁への付着度合いを調整することで、液体収容部50を水平方向に対し30°未満の向きに配置してもよい。
【0021】
ダム部材40としては、充填された光硬化性樹脂組成物を、それと相溶することなく堰き止めることができ、光硬化性樹脂組成物の硬化後に、簡便に除去可能な公知の材料から形成することができる。例えば、ダム部材40としては、公知のシリコーンラバーシートやフッ素樹脂シート等を挙げることができる。
【0022】
<工程(C):光硬化性樹脂組成物の充填>
次に、図3に示すように、液状の光硬化性樹脂組成物60を例えばディスペンサDを用いて第2開口部10bから液体収容部50に充填する。この場合、光硬化性樹脂組成物60の充填を、気泡を排除する点から真空下で行うことが好ましい。なお、工程上、真空下での充填が困難である場合には、充填後に真空下に投じても同様の脱泡効果を得ることができる。但しダム部材としてシリコーンラバーシートを使用する場合、真空下に投じるとシリコーンゴムからのアウトガスが気泡となる場合があるので注意を要する。
【0023】
(光硬化性樹脂組成物60)
中空体10の液体収容部50に充填する光硬化性樹脂組成物60は液状であり、具体的にはコーンプレート型粘度計で0.01〜100Pa・s(25℃)の粘度を示すものである。
【0024】
このような光硬化性樹脂組成物60は、ベース成分(成分(イ))、アクリレート系モノマー成分(成分(ロ))、可塑剤成分(成分(ハ))及び光重合開始剤(成分(ニ))を含有するものを好ましく例示することができる。また、光硬化性樹脂組成物60の最終的な硬化収縮率は、低い方が好ましいが、3%以上でも5%以上であってもよい。
【0025】
ここで、“最終的な硬化収縮率”とは、光硬化性樹脂組成物60を未硬化の状態から完全に硬化させた状態との間で生じた硬化収縮率を意味する。ここで、完全に硬化とは、後述するように硬化率が少なくとも90%となるように硬化した状態を意味する。以下、最終的な硬化収縮率を全硬化収縮率と称する。
【0026】
なお、硬化率(ゲル分率)は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm−1の吸収ピーク高さ(X)と、紫外線照射後の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm−1の吸収ピーク高さ(Y)とを、以下の数式(1)に代入することにより算出することができる。
【0027】
【数1】
【0028】
また、光硬化性樹脂組成物の全硬化収縮率は、未硬化(換言すれば、硬化前)の組成物と完全硬化後の固体の完全硬化物の比重を電子比重計(アルファーミラージュ(株)製SD−120L)を用いて測定し、両者の比重差から次式により算出することができる。
【0029】
【数2】
【0030】
<成分(イ)>
成分(イ)のベース成分は、光透過性硬化樹脂層の膜形成成分であり、エラストマー及びアクリレート系オリゴマーの少なくともいずれか一方を含有する成分である。両者を成分(イ)として併用してもよい。
【0031】
エラストマーとしては、好ましくはアクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル共重合体、ポリブテン、ポリオレフィン等を好ましく挙げることができる。なお、このアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5000〜500000であり、ポリブテンの繰り返し数nは好ましくは10〜10000である。
【0032】
他方、アクリレート系オリゴマーとしては、好ましくは、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリブタジエン等を骨格に持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーを挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートとを包含する。
【0033】
ポリイソプレン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーの好ましい具体例としては、ポリイソプレン重合体の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC102(ポリスチレン換算分子量17000)、(株)クラレ;UC203(ポリスチレン換算分子量35000)、(株)クラレ;UC−1(ポリスチレン換算分子量約25000)、(株)クラレ)等を挙げることができる。
【0034】
また、ポリウレタン骨格を持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーの好ましい具体例としては、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・オルネクス(株);UA−1、ライトケミカル社)等を挙げることができる。
【0035】
ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、公知のものを採用することができる。
【0036】
<成分(ロ)>
成分(ロ)のアクリル系モノマー成分は、画像表示装置の製造工程において、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するために反応性希釈剤として使用されている。このようなアクリル系モノマーとしては、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0037】
なお、光硬化性樹脂組成物60中の成分(イ)のベース成分と成分(ロ)のアクリル系モノマー成分との合計含有量は、好ましくは25〜85質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0038】
<成分(ハ)>
成分(ハ)の可塑剤成分は、硬化樹脂層に緩衝性を付与するとともに、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮率を低減させるために使用され、紫外線の照射では成分(イ)のアクリレート系オリゴマー成分及び成分(ロ)のアクリル系モノマー成分と反応しないものである。このような可塑剤成分は、固体の粘着付与剤(1)と液状オイル成分(2)とを含有する。
【0039】
固体の粘着付与剤(1)としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、テルペン系水素添加樹脂を挙げることができる。また、前述のアクリレート系モノマーを予め低分子ポリマー化した非反応性のオリゴマーも使用することができ、具体的には、ブチルアクリレートと2−ヘキシルアクリレートおよびアクリル酸の共重合体やシクロヘキシルアクリレートとメタクリル酸の共重合体等を挙げることができる。
【0040】
液状オイル成分(2)としては、ポリプタジエン系オイル、又はポリイソプレン系オイル等を含有することができる。
【0041】
なお、光硬化性樹脂組成物60中の成分(ハ)の可塑剤成分の含有量は、好ましくは10〜65質量%、より好ましくは25〜40質量%である。
【0042】
<成分(ニ)>
成分(ニ)の光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、1−ヒドロキシ−シクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASFジャパン(株))、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2一ヒドロキシ−2−メチル−プロピロニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア127、BASFジャパン(株))、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を挙げることができる。
【0043】
このような光重合開始剤は、成分(イ)のベース成分及び成分(ロ)アクリル系モノマー成分の合計100質量部に対し、少なすぎると紫外線照射時に硬化不足となり、多すぎると開裂によるアウトガスが増え発泡して不具合が生ずる傾向があるので、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜3質量部である。
【0044】
また、光硬化性樹脂組成物60は、分子量の調整のために連鎖移動剤を含有することができる。例えば、2−メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0045】
また、光硬化性樹脂組成物60は、更に、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含有することができる。
【0046】
<工程(D):紫外線照射工程(硬化樹脂層形成工程)>
次に、図4Aに示すように、液体収容部に充填された光硬化性樹脂組成物60に、光透過性カバー部材2側から紫外線UVを、好ましくは硬化率が90%以上となるように照射する。より好ましくは、紫外線UVを第1開口部側から第2開口部に向かって走査するように照射する。その結果、UV照射方向から見て第2開口部10b側に硬化収縮空間50aを集約させながら硬化樹脂層70を形成する(図4B)。これにより、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置が得られる。得られた画像表示装置においては、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮時のストレスが第2開口部側に集約されており、その結果、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにでき、空隙が生じないまでも、硬化樹脂層の残留応力により表示に色ムラが生じないようにできる。
【0047】
紫外線の照射に関し、硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上となるように硬化させることができる限り、光源の種類、出力、累積光量などは特に制限はなく、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。
【0048】
<追加的工程:光硬化性樹脂組成物再充填工程>
なお、工程(D)で生じた硬化収縮空間が、画像表示装置の外観や表示品質の観点から樹脂で充填されることが要請される場合には、工程(C)で使用した光硬化性樹脂組成物と同じ組成物を充填し、光硬化させることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例において、光硬化性樹脂組成物の全硬化収縮率は、光硬化性樹脂組成物の比重、仮硬化物、完全硬化物のそれぞれの比重を電子比重計(MIRAGE社製SD−120L)を用いて測定し、それらの測定結果を次式に当て嵌めて算出した。
【0050】
【数3】
【0051】
実施例1
(工程(A):中空体の形成))
まず、45(w)×80(l)×3(t)mmのサイズのポリエチレンテレフタレート板を用意し、幅方向に曲率半径が300(r)mmとなるように公知の手法で湾曲させ、湾曲した横樋形状の光透過性カバー部材として樹脂カバー(図1B)を得た。
【0052】
樹脂カバーとは別に、40(W)×80(L)mmのサイズのフラットな液晶表示素子であって、片面に偏光板が積層された液晶表示素子を用意した。この液晶表示素子の偏光板側表面の長手方向の両縁部に、以下の光硬化性樹脂組成物を接着剤としてライン状に塗布し、紫外線(300mW/cm)を4000mJ/cmで照射することにより仮硬化させた。
【0053】
(光硬化性樹脂組成物)
ポリブタジエンの骨格を持つアクリレート系オリゴマー(TE−2000、日本曹達(株))50質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部、光重合開始剤10質量部(イルガキュア184、BASFジャパン(株)製を3重量部、SppedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製を7質量部)を均一に混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。この光硬化性樹脂組成物は、硬化率0%から90%までの間で、5.6%の全硬化収縮率を示すものであった。
【0054】
続いて、樹脂カバーをその凹部面が偏光板側となるように載置し、樹脂カバー側から加圧して貼り付け、中空体を得た。
【0055】
<工程(B):液体収容部の形成>
この中空体を厚さ3mmのシリコーンラバーシート上に厚さ100μmのフッ素樹脂シートを配置したダム部材に垂直に押し付け、液体収容部を形成した。押し付け力は、約5N/cmであった。
【0056】
<工程(C):光硬化性樹脂組成物の充填>
この液体収容部に、接着剤として使用したものと同じ光硬化性樹脂組成物を、樹脂用ディスペンサを用いて真空下(−0.08〜−0.1MPa)で充填した。光硬化性樹脂組成物の液面は液体収容部の上面と一致していた。
【0057】
<工程(D):硬化樹脂層の形成>
液体収容部に充填された光硬化性樹脂組成物に、樹脂カバー側から、紫外線照射装置(ホヤ カンデオ オプトロニクス製のH−10MAH20−1T18同等品)を使って紫外線(400mW/cm)を6000mJ/cmで照射することにより硬化樹脂層を形成した。硬化樹脂層の硬化率は98%であった。これにより、液晶表示素子に、光透過性カバー部材として湾曲した樹脂カバーが硬化樹脂層を介して積層された液晶表示装置が得られた。
【0058】
なお、液体収容部の開口側に硬化収縮のストレスが集約され、硬化収縮空間が生じた。具体的には、液体収容部における光硬化性樹脂組成物の液面高さを100としたときに、硬化樹脂層の高さが約94%となり、約6%の硬化収縮空間が生じた。
【0059】
この硬化収縮空間に、先に使用した光硬化性樹脂組成物を再充填し光硬化させた。得られた画像表示装置において、樹脂カバーと画像表示素子との間の界面には空隙は観察されなかった。また、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察されなかった。
【0060】
比較例1
中空体を形成せずに、湾曲した樹脂カバーに光硬化性樹脂組成物を塗布し、仮硬化させた後に、実施例1で使用したものと同じ画像表示素子とを水平方向に真空下で重ね合わせ、樹脂カバー側から加圧して貼り付けた後、加圧脱泡処理を施した。続いて、樹脂カバー側から紫外線を照射することにより、液晶表示素子に、光透過性カバー部材として湾曲した樹脂カバーが硬化樹脂層を介して積層された液晶表示装置が得られた。
【0061】
得られた画像表示装置は、樹脂カバーと画像表示素子との界面に空隙が多数観察され、また、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の画像表示装置の製造方法においては、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とを、光透過性カバー部材の凹部面を画像表示部材に対向させて一体化し、開口部を備えた空洞部を液体収容部として有する中空体を形成し、その液体収容部にその開口部から光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させ、硬化収縮により生じる空間を開口部側に集約するようにしている。このため、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにでき、また、硬化樹脂層の残留応力を低減させて表示の色ムラが生じないようにできる。従って、本発明の製造方法は、タッチパネルを備えた車載用情報端末の画像表示装置の工業的製造に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 画像表示部材
2 光透過性カバー部材
2a 凹部面
2b 平坦部
10 中空体
10a 第1開口部
10b 第2開口部
20 空隙部
30 接着剤
40 ダム部材
50 液体収容部
50a 硬化収縮空間
60 光硬化性樹脂組成物
70 硬化樹脂層
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
【手続補正書】
【提出日】2018年2月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
なお、硬化率(ゲル分率)は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm−1の吸収ピーク高さ(X)と、紫外線照射後の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm−1の吸収ピーク高さ(Y)とを、以下の数式(1)に代入することにより算出することができる。