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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-147537(P2018-147537A)
(43)【公開日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置及びライト方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/10 20060101AFI20180824BHJP
【FI】
   G11B21/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-43013(P2017-43013)
(22)【出願日】2017年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚原 済
(72)【発明者】
【氏名】高原 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆夫
【テーマコード(参考)】
5D096
【Fターム(参考)】
5D096AA02
5D096BB01
5D096CC01
5D096DD02
5D096FF04
5D096KK01
(57)【要約】
【課題】 信頼性を向上できる磁気ディスク装置及びライト方法を提供することである。
【解決手段】 本実施形態に係る磁気ディスク装置は、ディスクと、ディスクに対してデータをライトし、ディスクからデータをリードするヘッドと、ディスクの第1偏心量に基づいて第1補正値を算出し、第1補正値に基づいて、第1目標位置で第1トラックをライトし、第1補正値に基づいて、第1目標位置から径方向に従う第1方向に第1距離で離間した第2目標位置で第2トラックを第1トラックに重ね書きし、第2トラックを第1トラックに重ね書きしている際に、第2トラックの第1位置でライトを中断し、第1位置から第2トラックのライトを再開する場合、ディスクの第2偏心量を測定し、第1偏心量と第2偏心量とを比較し、第1偏心量と第2偏心量とが異なる場合に、第1位置から第1方向に第2距離で離間した第2位置から第2トラックのライトを再開するコントローラと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクと、
前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、
前記ディスクの第1偏心量に基づいて第1補正値を算出し、前記第1補正値に基づいて、第1目標位置で第1トラックをライトし、前記第1補正値に基づいて、前記第1目標位置から径方向に従う第1方向に第1距離で離間した第2目標位置で第2トラックを前記第1トラックに重ね書きし、前記第2トラックを前記第1トラックに重ね書きしている際に、前記第2トラックの第1位置でライトを中断し、前記第1位置から前記第2トラックのライトを再開する場合、前記ディスクの第2偏心量を測定し、前記第1偏心量と前記第2偏心量とを比較し、前記第1偏心量と前記第2偏心量とが異なる場合に、前記第1位置から前記第1方向に第2距離で離間した第2位置から前記第2トラックのライトを再開するコントローラと、を備える磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第2トラックのライトを再開する際に、前記第2偏心量に基づいて第2補正値を算出し、前記第2位置から前記第2補正値に基づいて前記第2トラックのライトを再開する、請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1偏心量と前記第2偏心量とが異なることを確認した場合、前記第1補正値から前記第2補正値に変更したことを示す第1フラグを設定する、請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1偏心量と前記第2偏心量とが異なることを確認した場合、前記第2補正値に基づいて、第3目標位置にライトした第3トラックの軌跡を確認していないことを示す第2フラグを設定する、請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1フラグ及び前記第2フラグが設定されていることを検出した場合、前記第2位置から前記第2トラックのライトを再開する、請求項4に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1フラグ及び前記第2フラグが設定されていることを検出した場合、前記第1補正値に基づいて、第4目標位置に第4トラックをライトし、前記第2補正値に基づいて、前記第4目標位置から前記第1方向に前記第1距離で離間した前記第3目標位置に前記第3トラックを前記第4トラックに重ね書きし、前記第3トラックが重ね書きされた前記第4トラックの第1領域と異なる第2領域をリードすることで、前記第3トラックの軌跡を確認する、請求項5に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第2領域をリードできた場合、前記第1フラグ及び前記第2フラグをクリアする、請求項6に記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第1フラグ及び前記第2フラグをクリアした場合、前記第2補正値に基づいて、前記第1位置から前記第2トラックのライトを再開する、請求項7に記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記第2距離は、前記第1距離と同じである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第1偏心量と前記第2偏心量とが同じ場合、前記第2偏心量に基づいて第2補正値を算出し、前記第2補正値に基づいて前記第1位置から前記第2トラックのライトを再開する、請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項11】
ディスクと、前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドとを備える磁気ディスク装置に適用されるライト方法であって、
前記ディスクの第1偏心量に基づいて第1補正値を算出し、
前記第1補正値に基づいて、第1目標位置に第1トラックをライトし、
前記第1補正値に基づいて、前記第1目標位置から径方向に従う第1方向に第1距離で離間した第2目標位置に第2トラックを前記第1トラックに重ね書きし、
前記第2トラックを前記第1トラックに重ね書きしている際に、前記第2トラックの第1位置でライトを中断し、
前記第1位置から前記第2トラックのライトを再開する場合、前記ディスクの第2偏心量を測定し、前記第1偏心量と前記第2偏心量とを比較し、
前記第1偏心量と前記第2偏心量とが異なる場合に、前記第1位置から前記第1方向に第2距離で離間した第2位置から前記第2トラックのライトを再開する、ライト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスク装置及びライト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置の高記録容量化するための様々な技術が開発されている。これら技術の一つとして瓦記録方式(Shingled write Magnetic Recording(SMR))でデータをライトする磁気ディスク装置がある。磁気ディスク装置は、瓦記録方式でディスクにデータをライトする場合、1つ前にライトした隣接するトラック(以下、単に、隣接トラックと称する)の一部に重ねて現在のトラックをライトする。磁気ディスク装置は、瓦記録方式でデータをライトすることにより、通常の記録方式でライトするよりもディスクのトラック密度(Track Per Inch:TPI)を向上できる。
【0003】
一般的に、磁気ディスク装置では、ディスクとスピンドルモータとの取り付け誤差等を要因として、ディスク偏心が発生する。ディスク偏心が発生すると、ディスクが1回転したときにリードライトオフセット値が1周内で変動するダイナミックオフセット(DO)が発生する。そのため、磁気ディスク装置では、ダイナミックオフセットを制御するために、ライト時に、R/Wオフセット値を調整するライトダイナミックオフセット制御(WDOC)が実行される。磁気ディスク装置は、WDOCを実行する場合、偏心量を測定し、測定した偏心量に基づいて補正値を算出し、算出した補正値に基づいてWDOCを実行する。ディスクの偏心状態は、外部からの衝撃等により変化する可能性がある。ディスクの偏心状態が変化した場合、磁気ディスク装置は、再度、偏心量を測定し、測定した偏心量に基づいて補正値を算出し、算出した補正値に基づいてWDOCを実行する。
瓦記録方式の磁気ディスク装置では、ディスクの偏心状態が変化する前と変化した後で補正値が異なる場合、隣接するトラックにライトされたデータを消去する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4810603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、信頼性を向上できる磁気ディスク装置及びライト方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る磁気ディスク装置は、ディスクと、前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、前記ディスクの第1偏心量に基づいて第1補正値を算出し、前記第1補正値に基づいて、第1目標位置で第1トラックをライトし、前記第1補正値に基づいて、前記第1目標位置から径方向に従う第1方向に第1距離で離間した第2目標位置で第2トラックを前記第1トラックに重ね書きし、前記第2トラックを前記第1トラックに重ね書きしている際に、前記第2トラックの第1位置でライトを中断し、前記第1位置から前記第2トラックのライトを再開する場合、前記ディスクの第2偏心量を測定し、前記第1偏心量と前記第2偏心量とを比較し、前記第1偏心量と前記第2偏心量とが異なる場合に、前記第1位置から前記第1方向に前記第2距離で離間した第2位置から前記第2トラックのライトを再開するコントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、データがライトされた瓦記録領域の一例を示す模式図である。
図3A図3Aは、R/Wオフセットが発生していない場合のヘッドの状態の一例を示す概要図である。
図3B図3Bは、R/Wオフセットが発生している場合のヘッドの状態の一例を示す概要図である。
図4図4は、データのライト処理の制御の一例を示す概要図である。
図5図5は、バンド領域の内の1つのトラックの途中から再開するライト処理の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係るバンド領域の内の1つのトラックの途中から再開するライト処理の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る磁気ディスク装置での偏心量の測定処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る磁気ディスク装置のライト動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係るライトデータの軌跡の確認処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図面は、一例であって、発明の範囲を限定するものではない。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気ディスク装置1の構成を示すブロック図である。
磁気ディスク装置1は、後述するヘッドディスクアセンブリ(head-disk assembly:HDA)と、ドライバIC20と、ヘッドアンプ集積回路(以下、ヘッドアンプICと称する)30と、揮発性メモリ70と、不揮発性メモリ80と、バッファメモリ(バッファ)90と、1チップの集積回路であるシステムコントローラ130とを備える。また、磁気ディスク装置1は、ホストシステム(ホスト)100と接続される。
【0009】
HDAは、磁気ディスク(以下、ディスク)10と、スピンドルモータ(SPM)12と、ヘッド15を搭載しているアーム13と、ボイスコイルモータ(VCM)14とを有する。ディスク10は、SPM12に回転可能に取り付けられている。アーム13及びVCM14は、アクチュエータを構成している。ディスク10およびヘッド15は、2つ以上の数が設けられていてもよい。
【0010】
ディスク10は、データ領域に、瓦記録領域((Shingled Magnetic Recording:SMR)領域)10sと、メディアキャッシュ(media cache)領域10mと、が割り当てられている。瓦記録領域10sは、ホスト100からライト要求されたユーザデータ等が記録される。メディアキャッシュ領域10mは、瓦記録領域10sのキャッシュとして利用され得る。瓦記録領域10sは、トラックの一部に次にライトされたトラックが重ね書きされている記録領域である。このように複数のトラックが重ね書きされていることで、瓦記録領域10sのトラック密度(Track Per Inch:TPI)は、重ね書きされていない通常の記録領域のトラック密度よりも高くなる。瓦記録領域10sにおいて、複数のトラックが重ね書きされたトラック群をバンド領域と称する。瓦記録領域10sは、複数のバンド領域を含み得る。バンド領域は、隣接トラックの一部分に重ね書きされた少なくとも1つのトラック(瓦記録トラック)と、最後に重ね書きされたトラック(最終トラック)とを含む。最終トラックは、他のトラックを重ね書きされていないため、瓦記録トラックよりもトラック幅が広い。以下で、バンド領域において、ディスク10にライトしたトラックをライトトラックと称する。また、バンド領域において、重ね書きによって上書きされた領域を除いた残りのライトトラックの領域をリードトラックと称する。なお、“トラック”という用語を“ライトトラック”及び“リードトラック”を含む用語として用いる場合もある。また、ライトトラックのトラック幅をライトトラック幅と称し、リードトラックのトラック幅をリードトラック幅と称する場合もある。
また、瓦記録領域10sは、テスト領域TRを備えている。図1に示した例では、瓦記録領域10sは、内側にテスト領域TRを備えている。なお、瓦記録領域10sは、内側以外の領域にテスト領域TRを備えていてもよい。
【0011】
図2は、データがライトされた瓦記録領域10sの一例を示す模式図である。図2において、横軸をディスク10の周方向とし、縦軸を周方向に対して直交するディスク10の径方向とする。周方向は、ディスク10の回転方向と平行な方向である。周方向において、一方向を右方向とし、右方向と反対方向を左方向とする。また、周方向において、データをライトする方向を進行方向と称する。例えば、進行方向は、回転方向と反対方向である。図2において、進行方向は、右方向と同じ方向である。なお、進行方向は、左方向と同じ方向であってもよい。径方向において、ディスク10の内周から外周へ向かう方向を外方向(外側)ODとし、外方向ODと反対方向を内方向(内側)IDとする。また、径方向において、データをライトする方向を順方向と称する。図2おいて、順方向は、外方向ODと同じ方向である。なお、順方向は、内方向IDと同じ方向であってもよい。
【0012】
図2には、瓦記録領域10sにライトされたバンド領域BAkとバンド領域BAk−1とを示している。図2では、説明の便宜上、各トラックをあるトラック幅で周方向に沿って延出する直線で示しているが、実際には周方向に沿った曲線である。つまり、バンド領域BAk及びバンド領域BAk−1において、各トラックは、ディスク10の1周に亘って配置され、周方向で左方向の端部と右方向の端部とが一致している。また、図2において、各トラックは、外乱やその他の構造等の影響によるずれ等が調整されている。なお、図2では、バンド領域BAkとバンド領域BAk−1との2つのバンド領域を示している。
【0013】
バンド領域BAk及びバンド領域BAk−1は、径方向で互いに隣接している。バンド領域BAkとバンド領域BAk−1との間には、上書き等を防止するためにギャップ(Gap)(又は、ガード領域)が設けられている。バンド領域BAkとバンド領域BAk−1とはほぼ同じトラック構成である。以下で、バンド領域BAkを用いてバンド領域のトラック構成について説明するが、バンド領域BAk−1のトラック構成についてもバンド領域BAkのトラック構成と同じ説明ができる。
【0014】
図示した例では、バンド領域BAkにおいて、ライトトラックWt1、Wt2、及びWt3が径方向に順に重ね書きされている。図示していないが、ライトトラックWt1、Wt2、及びWt3は、それぞれ、複数のセクタを含む。なお、バンド領域BAkは、3つのトラックを含むように記載したが、少なくとも1つ以上のトラックを含んでいればよい。
【0015】
ライトトラックWt1は、トラックエッジTg11とトラックエッジTg12とを有している。図示した例では、トラックエッジTg11は、ライトトラックWt1の順方向と反対方向(内側ID)の端部であり、トラックエッジTg12は、ライトトラックWt2の順方向(外側OD)の端部である。ライトトラックWt2は、トラックエッジTg21とトラックエッジTg22とを有している。図示した例では、トラックエッジTg21は、ライトトラックWt2の順方向と反対方向(内側ID)の端部であり、トラックエッジTg22は、ライトトラックWt2の順方向(外側OD)の端部である。ライトトラックWt3は、トラックエッジTg31とトラックエッジTg32と有している。図示した例では、トラックエッジTg31は、ライトトラックWt3の順方向と反対方向(内側ID)の端部であり、トラックエッジTg32は、ライトトラックWt2の順方向(外側OD)の端部である。
【0016】
図2において、ライトトラック幅Wtw1は、ライトトラックWt1のトラックエッジTg11及びTg12の間の径方向の距離である。ライトトラック幅Wtw21は、トラックエッジTg21及びTg22の間の径方向の距離である。ライトトラック幅Wtw31は、トラックエッジTg31及びTg32の間の径方向の距離である。また、図2には、ライトトラックWt1のトラックセンタWtc1と、ライトトラックWt2のトラックセンタWtc2と、ライトトラックWt3のトラックセンタWtc3とを示している。トラックセンタWtc1、Wtc2、及びWtc3は、それぞれ、ライトトラックWt1、Wt2、及びWt3におけるヘッド15(ライトヘッド15W)の位置決めの径方向の目標位置(以下、単に、目標位置と称する)である。図2に示した例では、トラックセンタWtc1、Wtc2、及びWtc3は、それぞれ、ライトトラックWt1、Wt2、及びWt3のライトトラック幅の中心の位置を通っている。また、トラックセンタWtc1、Wtc2、及びWt3は、径方向に等間隔で配設されている。図示した例では、トラックセンタWtc1、Wtc2、及びWtc3は、それぞれ、周方向に沿って直線で示しているが、実際にはディスク10の周方向に沿った曲線である。トラックセンタWtc1、Wtc2、及びWtc3は、例えば、アクチュエータの回転中心(ピボット)を中心とするディスク10上の円軌道である。
【0017】
リードトラックRt1は、順方向にライトトラックWt2が重ね書きされたライトトラックWt1の一部以外の残りの領域である。リードトラックRt2は、順方向にライトトラックWt3が重ね書きされたライトトラックWt2の一部以外の残りの領域である。図2において、リードトラックRt3は、ライトトラックWt3に対応する。図2に示した例では、リードトラックRt1及びRt2が、瓦記録トラックに相当し、リードトラックRt3が、最終トラックに相当する。
【0018】
図2において、リードトラック幅Rtw1は、トラックエッジTg11及びTg21の間の距離である。リードトラック幅Rtw2は、トラックエッジTg21及びTg31の間の距離である。図2では、リードトラック幅Rtw3は、ライトトラック幅Wtw31に対応する。図2において、リードトラック幅Rtw1、Rtw2、及びRtw3は、それぞれ、周方向に一定である。また、リードトラック幅Rtw1とRtw2とは、同じ幅である。リードトラック幅Rtw1及びRtw2は、リードトラック幅Rtw3よりも小さい。
【0019】
トラックピッチ(第1距離)は、通常のライトの場合、径方向のトラックセンタ間の距離を示すが、瓦記録の場合、トラックエッジ間の距離を示す。そのため、リードトラックRt1とリードトラックRt2と間のトラックピッチTp1は、リードトラック幅Rtw1に相当する。同様に、リードトラックRt2とリードトラックRt3と間のトラックピッチTp2は、リードトラック幅Rtw2に相当する。
【0020】
ヘッド15は、スライダを本体として、当該スライダに実装されているライトヘッド15W、及びリードヘッド15Rを備える。リードヘッド15Rは、ディスク10上のデータトラックにライトされているデータを読み込む(リードする)。ライトヘッド15Wは、ディスク10上にデータを書き込む(ライトする)。
【0021】
ドライバIC20は、システムコントローラ130(詳細には、後述するMPU60)の制御に従って、SPM12およびVCM14の駆動を制御する。ドライバIC20は、アクチュエータ(VCM14)の駆動を制御することで、アーム13に搭載されているヘッド15をディスク10上の目標半径位置まで移動制御する。ドライバIC20は、SPM12の駆動を制御することで、ディスク10を回転させる。
【0022】
ヘッド15において、リードヘッド15Rとライトヘッド15Wとは、それぞれ、一定の間隔を空けて別々に設けられている。そのため、ヘッド15の半径位置に応じて、リードヘッド15Rの半径方向の位置とライトヘッド15Wの目標位置と間に、オフセット(位置ずれ)が発生する。このオフセットをリードライト(R/W)オフセットと称する。
【0023】
図3Aは、R/Wオフセットが発生していない場合のヘッド15の状態の一例を示す概要図である。図3Bは、R/Wオフセットが発生している場合のヘッド15の状態の一例を示す概要図である。図3Aおよび図3Bにおいて、ライトトラックWtrは、目標位置(トラックセンタ)Wtrcをライトヘッド15Wの中心で追従することでディスク10上にライトされている。トラックセンタWtrcは、例えば、アクチュエータの回転中心を中心とするディスク10上の円軌道であるものとする。図3Aおよび図3Bに示すように、リードヘッド15Rとライトヘッド15Wとは、R/WギャップGrwを空けて別々に設けられている。
【0024】
図3Aに示すように、ヘッド15がトラックセンタWtrcに対して水平に位置する場合、リードヘッド15Rの中心の軌跡とライトヘッド15Wの中心の軌跡との間に、R/Wオフセット(位置ずれ)が、ほぼ発生しない。
【0025】
一方、図3Bに示すように、ヘッド15がライトトラックWrtのトラックセンタWtrcに対してスキュ角(アジマス角度)θで傾斜している場合、リードヘッド15Rの中心の軌跡とライトヘッド15Wの中心の軌跡との間に、R/Wオフセット値OFrwが発生する。図3Bに示した例では、R/Wオフセット値OFrwは、OFrw=Grw×sinθで示される。なお、図3Bに示した例では、後述するディスク偏心による影響を考慮していないため、R/Wオフセット値OFrwは、各トラックで一定の値となる。スキュ角θは、アクチュエータの回転中心と、ヘッド15の中心点とを結ぶ線と、トラック円弧の接線との角度を表している。スキュ角θは、ヘッド15の位置、SPM12の回転中心の位置、及びアクチュエータの回転中心の位置により決定される。すなわち、スキュ角θは、リード動作又はライト動作を実行するトラック位置(シリンダ位置)、換言すると、ディスク10上の半径方向の位置(以下、半径位置)により変化する。なお、製造工程において、磁気ディスク装置1は、R/Wオフセット値OFrwをディスク10のトラック毎に検出し、メモリ、例えば、不揮発性メモリ80等に保持していてもよい。また、製造工程において、磁気ディスク装置1は、R/Wオフセット値OFrwを算出するためのパラメータをメモリ、例えば、不揮発性メモリ80等に保持していてもよい。パラメータは、例えば、ディスク10上の各位置でのスキュ角θや、R/WギャップGrw等の値である。
【0026】
ヘッドアンプIC30は、リードアンプ及びライトドライバを備えている。リードアンプは、ディスク10からリードされたリード信号を増幅して、システムコントローラ130(詳細には、後述するリード/ライト(R/W)チャネル40)に出力する。ライトドライバは、R/Wチャネル40から出力されるライトデータに応じたライト電流をヘッド15に出力する。
【0027】
揮発性メモリ70は、電力供給が断たれると保存しているデータが失われる半導体メモリである。揮発性メモリ70は、磁気ディスク装置1の各部での処理に必要なデータ等を格納する。揮発性メモリ70は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、又はSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。
【0028】
不揮発性メモリ80は、電力供給が断たれても保存しているデータを記録する半導体メモリである。不揮発性メモリ80は、例えば、NOR型またはNAND型のフラッシュROM(Flash Read Only Memory :FROM)である。
【0029】
バッファメモリ90は、磁気ディスク装置1とホスト100との間で送受信されるデータ等を一時的に記録する半導体メモリである。なお、バッファメモリ90は、揮発性メモリ70と一体に構成されていてもよい。バッファメモリ90は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、SDRAM、FeRAM(Ferroelectric Random Access memory)、又はMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等である。
【0030】
システムコントローラ(コントローラ)130は、例えば、複数の素子が単一チップに集積されたSystem-on-a-Chip(SoC)と称される大規模集積回路(LSI)を用いて実現される。システムコントローラ130は、リード/ライト(R/W)チャネル40と、ハードディスクコントローラ(HDC)50と、マイクロプロセッサ(MPU)60とを含む。
【0031】
R/Wチャネル40は、リードデータ及びライトデータの信号処理を実行する。R/Wチャネル40は、リードデータの信号品質を測定する回路、又は機能を有している。
HDC50は、後述するMPU60からの指示に応じて、ホスト100とR/Wチャネル40との間のデータ転送を制御する。
MPU60は、磁気ディスク装置1の各部を制御するメインコントローラである。MPU60は、ドライバIC20を介してVCM14を制御し、ヘッド15の位置決めを行なうサーボ制御を実行する。また、MPU60は、ディスク10へのデータのライト動作を制御すると共に、ホスト100から転送されるライトデータの保存先を選択する。
【0032】
MPU60は、リード/ライト制御部61と、偏心測定部63と、オフセット制御部65と、軌跡検出部67とを含む。MPU60は、これら各部の処理をファームウェア上で実行してもよい。
リード/ライト制御部61は、ホスト100からのコマンドに従って、データのリード処理およびライト処理を制御する。リード/ライト制御部61は、ドライバIC20を介してVCM14を制御し、ヘッド15をディスク10上の目標位置に位置決めし、リード処理又はライト処理を実行する。例えば、リード/ライト制御部61は、ライト処理を実行する際に、各トラックのトラックセンタを目標位置として、瓦記録を実行する。
【0033】
図4は、データのライト処理の制御の一例を示す概要図である。図4には、ディスク10の径方向の内周IC、切り換え位置CC、メディアキャッシュ領域10mと瓦記録領域10sとの境界位置BP、及びディスク10の径方向の外周OCを示している。また、図4には、内周ICから外周OCへ向かう外側ODと、外周OCから内周ICへ向かう内側IDとを示している。切り換え位置CCは、径方向においてデータをライトする方向(順方向)を切り換える位置である。切り換え位置CCは、内周ICと境界位置BPとの間に位置している。例えば、切り換え位置CCは、ディスク10において、ヘッド15のスキュ角がほぼ0になる半径方向の位置である。なお、切り換え位置CCは、ヘッド、ディスクや磁気ディスク装置毎に異なる位置に設定されていてもよい。
【0034】
リード/ライト制御部61は、順方向を外側OD又は内側IDに切り換えてデータをライトする。一例として、リード/ライト制御部61は、内周ICから切り換え位置CCまで外側ODにデータを瓦記録した後に、境界位置BPから切り換え位置CCまで内側IDにデータを瓦記録する。また、リード/ライト制御部61は、境界位置BPから切り換え位置CCまで内側IDにデータを瓦記録した後に、内周ICから切り換え位置CCまで外側ODにデータを瓦記録してもよい。なお、リード/ライト制御部61は、順方向を切り換え位置CCで外側OD又は内側IDに切り換えるとしたが、順方向を切り換えなくともよい。例えば、リード/ライト制御部61は、順方向を内側ID又は外側ODのいずれか一方に固定してデータを瓦記録してもよい。なお、リード/ライト制御部61は、瓦記録ではない通常のライト処理を実行してもよい。
【0035】
磁気ディスク装置1の製造工程時のディスク10とSPM12との取り付け誤差などを要因として、ディスク偏心が発生し得る。ディスク偏心が発生すると、ディスクが1回転したときにR/Wオフセット値が1周内で変動するダイナミックオフセット(DO)が生じる。このダイナミックオフセット(DO)を抑制するために、リード/ライト制御部61は、後述するオフセット制御部に従って、ライト処理時にR/Wオフセット値を調整するライトダイナミックオフセット制御(WDOC)を実行する。このWDOCを適切に実行する場合には、ディスク10の偏心量を高精度に測定する必要がある。
【0036】
偏心測定部63は、ディスク10の偏心量を測定し、測定したディスク10の偏心量に基づいてダイナミックオフセットの補正値(以下、単に、補正値と称する)を算出し、測定した偏心量や算出した補正値をディスク10やメモリ、例えば、不揮発性メモリ80にライトする。例えば、偏心測定部63は、ディスク10の各トラックをリードし、トラックからリードしたデータに対応する電流値から偏心量を算出し、算出した偏心量に基づいて補正値を算出してもよい。また、偏心測定部63は、ヘッド15を内周に押し付けてディスク10にライトされたサーボ情報をリードすることによって偏心量を算出し、算出した偏心量から補正値を算出してもよい。偏心測定部63は、製造工程時に、ディスク10の偏心量を測定し、測定した偏心量から補正値を算出し、測定した偏心量や算出した補正値をディスク10やメモリ等にライトしている。製造工程時に測定した補正値を初期値と称する場合もある。
【0037】
また、磁気ディスク装置1では、ディスク10の偏心状態、例えば、1次偏心の状態が変化する可能性がある。例えば、磁気ディスク装置1では、製品出荷後に、電源がOFFのときに外部からの衝撃等でディスクの中心がずれるディスクシフトが生じる可能性もある。ディスク10の偏心状態が変化した場合、ディスク10の偏心状態が変化した後の偏心量は、ディスク10の偏心状態が変化する前の偏心量と異なる可能性がある。そのため、偏心測定部63は、あるタイミング、例えば、磁気ディスク装置を起動した時に、ディスク10の偏心量(以下、現在の偏心量と称する)を測定し、測定した現在の偏心量と、前回測定した偏心量(以下、前の偏心量と称する)とを比較する。偏心測定部63は、現在の偏心量と前の偏心量とが異なる場合、現在の偏心量に基づいて現在の補正値を算出し、現在の偏心量をメモリにライトし、WDOCで使用する補正値を前の補正値から現在の補正値に変更する。偏心測定部63は、WDOCで使用する補正値を変更したことを示すフラグ(以下、変更フラグ(第1フラグ)と称する)と、変更した補正値に基づくWDOCに従ってライトしたトラック(データ)の軌跡を確認していなことを示すフラグ(以下、未確認フラグ(第2フラグ)と称する)を設定する。偏心測定部63は、現在の偏心量と前の偏心量とが同じ、又は差が許容範囲内である場合には、WDOCで使用する補正値を前の補正値のままにする。
【0038】
オフセット制御部65は、リード/ライト制御部61を介して、補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行する。オフセット制御部65は、幾つかのトラックがライトされているバンド領域の内の1つのトラックの途中の位置、又はセクタ(以下、再開セクタと称する)からライト処理を再開する場合、変更フラグが設定されているか設定されていないかを判定する。オフセット制御部65は、変更フラグが設定されていないと判定した場合、リード/ライト制御部61を介して、前の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行する。オフセット制御部65は、変更フラグが設定されていると判定した場合、未確認フラグが設定されているかどうかを判定する。オフセット制御部65は、未確認フラグが設定されていないと判定した場合、対象とするトラック(以下、対象トラックと称する)の目標位置から順方向にある距離で離間した(シフトした)位置から、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を再開する。例えば、DOC部65は、対象トラックの目標位置から順方向に1トラックピッチ、又は1トラック分シフトした位置からライト処理を再開する。オフセット制御部65は、未確認フラグが設定されていると判定した場合、リード/ライト制御部61を介して、後述する軌跡検出部67でのトラックの軌跡の検出結果に応じて、WDOCに従ってライト処理を実行する。なお、変更フラグが設定されていると判定した場合に、オフセット制御部65は、未確認フラグが設定されているか設定されていないかを判定しなくとも、対象トラックの目標位置から順方向にある距離でシフトした位置から、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行する構成であってもよい。
【0039】
図5は、バンド領域の内の1つのトラックの途中から再開するライト処理の一例を示す図である。図5において、図2と同じ部分については、説明を省略し、図2と異なる部分について説明する。
図示した例では、バンド領域BAkにおいて、ライトトラックWt1、Wt2、Wt3、及びWt4が順方向に沿って順に重ね書きされている。図5には、ライトトラックWt3でライト処理を開始したセクタ(以下、単に、開始セクタと称する)SS3と、ライト処理を中断したセクタIS3(以下、単に、中断セクタと称する)と、ライト処理を再開した再開セクタRS3と、ライトトラックWt3でライト処理を終了するセクタES3(以下、単に、終了セクタ)ES3とを示している。ライトトラックWt3は、開始セクタSS3から中断セクタIS3までのライトデータ領域WDR31と、再開セクタRS3から終了セクタES3までのライトデータ領域WDR2とを含む。
【0040】
ライトトラックWt4は、トラックエッジTg41とトラックエッジTg42とを有している。図示した例では、トラックエッジTg41は、ライトトラックWt4の順方向と反対方向(内方向ID)の端部であり、トラックエッジTg42は、ライトトラックWt4の順方向(外方向OD)の端部である。ライトトラック幅Wtw4は、ライトトラックWt4のトラックエッジTg41及びTg42の間の径方向の距離である。図5には、ライトトラックWt4のトラックセンタWtc4を示している。トラックセンタWtc4は、ライトトラックWt4の目標位置である。図5では、トラックセンタWtc1、Wtc2、Wtc3、及びWtc4は、径方向に等間隔で配設されている。図示した例では、トラックセンタWtc4は、周方向に沿って直線で示しているが、実際にはディスク10の周方向に沿った曲線である。トラックセンタWtc4は、例えば、アクチュエータの回転中心(ピボット)を中心とするディスク10上の円軌道であるものとする。
【0041】
図5に示す例では、リードトラックRt3は、ライトトラックWt4が重ね書きされたライトトラックWt3の一部以外の残りの領域である。リードトラックRt3は、ライトデータ領域WDR31に対応するリードデータ領域RDR31と、ライトデータ領域WDR32に対応するリードデータ領域RDR32とを含む。リードトラックRt2は、リードデータ領域RDR31の順方向と反対方向に位置する領域NR1と、リードデータ領域RDR32の順方向と反対方向に位置する領域NR2とを含む。リードデータ領域RDR32は、領域NR1の順方向に位置する領域ER1と、領域NR2の順方向に位置する領域ER2とを含む。領域ER1において、トラックエッジTg31は、順方向の反対方向に隣接するリードトラック(以下、前の隣接リードトラックと称する)のトラックエッジTg21とほぼ平行である。領域ER2は、前の隣接リードトラックの一部(領域NR2)に突出している。図5において、リードトラックRt4は、ライトトラックWt4に対応する。図5に示した例では、リードトラックRt1、Rt2及びRt3が、瓦記録トラックに相当し、リードトラックRt4が、最終トラックに相当する。
【0042】
図5では、リードトラック幅Rtw3は、トラックエッジTg31及びTg41の間の距離である。リードトラック幅Rtw4は、ライトトラック幅Wtw4に対応する。図5において、リードトラック幅Rtw1、Rtw2、及びRtw3は、それぞれ、周方向で変動する。リードトラック幅Rtw4は、周方向で一定である。また、リードトラック幅Rtw1、Rtw2、Rtw3、及びRtw4は、それぞれ、異なる幅である。
【0043】
リードトラックRt3とリードトラックRt4と間のトラックピッチTp3は、リードトラック幅Rtw3に相当する。図5において、トラックピッチTp2は、周方向において、領域NR1で一定であり、領域NR2で変動している。トラックピッチTp2は、領域NR1のトラックピッチTp21と、領域NR2のトラックピッチTp22とを含む。トラックピッチTp3は、周方向で変動している。トラックピッチTp3は、領域ER1でのトラックピッチTp31と、領域ER2でのトラックピッチTp32を含む。トラックピッチTp31とトラックピッチTp32とは、互いに異なる幅である。
【0044】
例えば、オフセット制御部65は、ライトトラックWt1、ライトトラックWt2、及びライトデータ領域WDR31と順方向に順に、補正値(前の補正値)に基づくWDOCに従ってライト処理を実行し、ある位置、例えば、中断セクタIS3でライト処理を中断する。このとき、外部からの衝撃等により磁気ディスク装置1でディスク10の偏心状態が変化した場合、偏心測定部63は、現在の補正値を算出し、WDOCで使用する補正値を前の補正値から現在の補正値に変更する。オフセット制御部65は、再開セクタRS3からライト処理を再開し、ライトデータ領域WDR32及びライトトラックWt4を順方向に順に、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行する。
【0045】
このとき、偏心測定部63で算出された現在の補正値の精度が不十分であった場合、図5に示すように、前の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行した領域と、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行した領域とが異なる変動をする。そのため、オフセット制御部65は、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行した場合、前の補正値に基づくWDOCに従ってライトした順方向と反対方向に隣接するライトトラック(以下、前の隣接ライトトラックと称する)を部分的に消去(イレーズ)する可能性がある。図5に示した例では、リードトラックRt3の領域ER2がリードトラックRt2の領域NR2に突出しているため、領域NR2のトラックピッチTp22は、領域NR1のトラックピッチTp21よりも小さくなっている。そのため、本実施形態では、オフセット制御部65は、変更フラグが設定されていることと、未確認フラグが設定されていないことを確認した場合、対象トラックの目標位置から順方向にある距離でシフトした位置から、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を実行する。
【0046】
図6は、本実施形態に係るバンド領域の内の1つのトラックの途中から再開するライト処理の一例を示す図である。図6において、図5と同じ部分については、説明を省略し、図5と異なる部分について説明する。図6には、トラックセンタWtc5を示している。図2では、トラックセンタWtc1、Wtc2、Wtc3、Wtc4、及びWtc5は、径方向に等間隔で配設されている。
【0047】
オフセット制御部65は、ライトトラックWt1、ライトトラックWt2、及びライトトラックWt3と順方向に順に、補正値(前の補正値)に基づくWDOCに従ってライト処理を実行し、ある位置(第1位置)でライト処理を中断する。この位置(第1位置)からライト処理を再開する場合、オフセット制御部65は、変更フラグが設定されていることと、未確認フラグが設定されていないことを確認した場合、この位置に対応する目標位置から順方向にオフセット量(第2距離)OFa分シフトした(ずらした)位置(第2位置)から、現在の補正値に基づいてWDOCに従ってライト処理を再開する。
【0048】
図6に示した例では、オフセット制御部65は、ライトトラックWt3の目標位置であるトラックセンタWtc3上の中断セクタIS3から順方向にオフセット量OFa、例えば、1トラックピッチ分シフトしたトラックセンタWtc4上の再開セクタRS3からライト処理を再開する。オフセット制御部65は、トラックセンタWtc4上のライトデータ領域WDR32からトラックセンタWtc5上のライトトラックWt4に順方向に順に、現在の補正値に基づいてWDOCに従ってライト処理を実行する。この場合、オフセット制御部65は、再開セクタRS3の目標位置であるトラックセンタWtc4から順方向に1トラックピッチ分シフトしたトラックセンタWtc5を目標位置として、ライトトラックWt4をライトデータ領域WDR32に重ね書きする。なお、オフセット量OFaは、1トラックピッチ分よりも小さくてもよいし、1トラックピッチ分よりも大きくてもよい。
【0049】
軌跡検出部67は、あるタイミングで、補正値に基づくWDOCに従ってライトしたライトトラック(データ)の軌跡を検出する。軌跡検出部67は、ライトトラックの軌跡が前の隣接ライトトラックをイレーズすることを検出した場合、変更フラグ及び未確認フラグをそのまま残す。すなわち、軌跡検出部67は、ライトトラックの軌跡が前の隣接ライトトラックをイレーズすることを検出した場合、中断した位置から順方向にある距離シフトした位置からライト処理を再開するように制御する。また、軌跡検出部67は、ライトトラックの軌跡が前の隣接ライトトラックをイレーズしないことを検出した場合、変更フラグ及び未確認フラグを消去する。すなわち、軌跡検出部67は、ライトトラックの軌跡が前の隣接ライトトラックをイレーズしないことを検出した場合、中断した位置から現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を再開するように制御する。換言すると、前の補正値に基づくWDOCに従うライトトラックの軌跡と、現在の補正値に基づくWDOCに従うライトトラックの軌道とがほぼ同じである場合、すなわち、算出した現在の補正値の精度が高い場合、軌跡検出部67は、中断した位置から現在の補正値に基づくWDOCに従ってライト処理を再開するように制御する。この場合、中断した位置から順方向にシフトした位置からライトを再開しないため、バンド領域を高密度に保つことができる。また、前の補正値が現在の補正値に変更された場合にのみ、磁気ディスク装置1が起動した時にライトトラックの軌跡を検出するため、磁気ディスク装置1が起動する度にライトトラックの軌跡を検出することと比較して、起動時間の低下を低減することができる。
【0050】
例えば、軌跡検出部67は、アイドル時に、変更フラグ及び未確認フラグが設定されているか、設定されていないかを判定する。軌跡検出部67は、変更フラグ及び未確認フラグが設定されていると判定した場合、ディスク10のテスト領域TRにおいて、前の補正値に基づくWDOCに従ってライトした前の隣接ライトトラックに、現在の補正値に基づくWDOCによりライトトラックを重ね書きする。軌跡検出部67は、前の隣接ライトトラックに対応する前の隣接リードトラックをリードし、正常にデータをリードできるかできないかを判定する。軌跡検出部67は、正常にデータをリードできないと判定した場合、変更フラグ及び未確認フラグをそのまま残す。軌跡検出部67は、正常にデータをリードできると判定した場合、変更フラグ及び未確認フラグを消去する。変更フラグ及び未確認フラグを消去した場合、軌跡検出部67は、テスト領域TRから前の補正値に基づくWDOCに従ってライトしたライトトラックを消去し、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライトしたライトトラックをライトしてもよい。
【0051】
図7は、本実施形態に係る磁気ディスク装置1での偏心量の測定処理の一例を示すフローチャートである。
MPU60は、SPM12を介してディスク10を回転し(B701)、ヘッド15を対象トラックに移動する(B702)。
MPU60は、オントラックした対象トラックで現在の偏心量を検出する(B703)。例えば、MPU60は、対象トラックの目標位置とリードしたサーボデータから復調したヘッド15(リードヘッド15R)の位置との差を測定し、測定結果から現在の偏心量を算出する。また、MPU60は、位置決めした対象トラックをリードし、リードしたデータに対応する電流の1次成分が最小になるようにリードヘッド15Rを調整することで、現在の偏心量を算出してもよい。
【0052】
MPU60は、前の偏心量と、現在の偏心量とを比較する(B704)。MPU60は、前の偏心量と現在の偏心量とに差がないかあるかを判定する(B705)。前の偏心量と現在の偏心量とに差がないと判定した場合(B705のYes)、MPU60は、WDOCで前の補正値を使用するように設定し(B706)、磁気ディスク装置1を起動する。なお、MPU60は、前の偏心量と現在の偏心量とが同じ、又は差が許容範囲内である場合には、差がないと判定するように構成されていてもよい。
【0053】
前の偏心量と現在の偏心量とに差があると判定した場合(B705のNо)、MPU60は、現在の偏心量に基づいて現在の補正値を算出する(B707)。MPU60は、WDOCで使用する補正値を前の補正値から現在の補正に変更する(B708)。MPU60は、変更フラグを設定し(B709)、未確認フラグを設定し(B710)、磁気ディスク装置1を起動する。
【0054】
図8は、本実施形態に係る磁気ディスク装置1のライト動作の一例を示すフローチャートである。
MPU60は、データをライトするセクタを検出し(B801)、データをライトするライト位置がバンド領域の途中であるか、途中でないかを判定する(B802)。データをライト位置がバンド領域の途中でないと判定した場合(B802のNо)、MPU60は、B806の処理へ進む。データをライトするライト位置がバンド領域の途中であると判定した場合(B802のYes)、MPU60は、変更フラグが設定されているか、設定されていないかを判定する(B803)。変更フラグが設定されていないと判定した場合(B803のNо)、MPU60は、B806の処理へ進む。変更フラグが設定されていると判定した場合(B803のYes)、MPU60は、未確認フラグが設定されているか、設定されていないかを判定する(B804)。未確認フラグが設定されていないと判定した場合(B804のNо)、MPU60は、B806の処理へ進む。
【0055】
未確認フラグが設定されていると判定した場合(B804のYes)、MPU60は、ライト位置を順方向にシフトする(B805)。例えば、MPU60は、ライト位置を順方向に1トラックピッチ×n(n=1、2、3…)分シフトする。MPU60は、ヘッド15(ライトヘッド15W)を順方向にシフトしたライト位置にシークし(B806)、現在の補正値に基づくWDOCに従ってデータをライトする(B807)。
【0056】
図9は、本実施形態に係るライトデータの軌跡の確認処理の一例を示すフローチャートである。
MPU60は、ホストから一定時間以上アクセスがあるかアクセスがないかを検出する(B901)。つまり、MPU60は、アイドル時であるかアイドル時でないかを判定する。アイドル時でないと判定した場合(B901のNо)、MPU60は、処理B901に戻る。アイドル時であると判定した場合(B901のYes)、MPU60は、変更フラグが設定されているか、設定されていないかを判定する(B902)。変更フラグが設定されていないと判定した場合(B902のNo)、MPU60は、処理を終了する。変更フラグが設定されていると判定した場合(B902のYes)、MPU60は、未確認フラグが設定されているか、設定されていないかを判定する(B903)。
【0057】
未確認フラグが設定されていないと判定した場合(B903のNo)、MPU60は、処理を終了する。未確認フラグが設定されていると判定した場合(B903のYes)、MPU60は、現在の補正値に基づくWDOCに従ってライトしたトラックの軌跡を確認する(B904)。例えば、MPU60は、テスト領域TRにおいて、前の補正値に基づくWDOCに従ってライトトラック(前のライトトラック)をライトし、この前のライトトラックの順方向に現在の補正値に基づくWDOCに従って現在のライトトラックを重ね書きする。MPU60は、前のライトトラックに対応する前のリードトラックをリードすることで現在のライトトラックの軌跡を確認する。
【0058】
MPU60は、変更フラグをクリアし(B905)、順方向と反対方向に隣接するトラック(前の隣接トラック)をイレーズしていないか、イレーズしているか(B906)を判定する。前の隣接トラックをイレーズしていると判定した場合(B906のNо)、MPU60は、処理を終了する。前の隣接トラックをイレーズしていないと判定した場合(B906のYes)、MPU60は、未確認フラグをクリアする(B907)。MPU60は、ディスク10やメモリ、例えば、不揮発性メモリ80等に現在の偏心量を保持し(B908)、WDOCで現在の補正値を使用するように設定する(B909)。つまり、MPU60は、バンド領域の途中からライト処理を再開する場合に、ライト位置を順方向にシフトせずに、現在の補正値に基づくWDOCに従ってデータをライトする。WDOCで現在の補正値を使用するように設定した(B909)後に、MPU60は、処理を終了する。
本実施形態によれば、磁気ディスク装置1は、バンド領域の内の1つのトラックの途中からライト処理を再開する場合、現在の偏心量を測定し、前の偏心量と現在の偏心量とを比較する。磁気ディスク装置1は、前の偏心量と現在の偏心量とが異なる場合、現在の偏心量に基づいて現在の補正値を算出し、WDOCに使用する補正値を前の補正値から現在の補正値に変更する。磁気ディスク装置1は、ライト処理を再開するセクタから順方向にある距離、例えば、1トラックピッチ分シフトした位置からライト処理を再開する。そのため、磁気ディスク装置1は、ライト処理を中断した際に、ディスク10の偏心量が変化した場合でも、ライト性能への影響を低減し、且つ前の隣接ライトトラックをイレーズすることなくライト処理を実行できる。したがって、信頼性を向上できる磁気ディスク装置が提供できる。
【0059】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…磁気ディスク装置、10…磁気ディスク、10s…瓦記録領域、10m…メディアキャッシュ領域、12…スピンドルモータ(SPM)、13…アーム、14…ボイスコイルモータ(VCM)、15…ヘッド、15W…ライトヘッド、15R…リードヘッド、20…ドライバIC、30…ヘッドアンプIC、40…リード/ライト(R/W)チャネル、50…ハードディスクコントローラ(HDC)、60…マイクロプロセッサ(MPU)、70…揮発性メモリ、80…不揮発性メモリ、90…バッファメモリ、100…ホストシステム(ホスト)、130…システムコントローラ。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9