【実施例】
【0011】
図面を参照して実施例を説明する。
図1に示すように、基板60の上面側には図示しない制御回路が実装されており、基板60の上面上には少なくとも5本の配線パターン62A,B・・・Eが形成されている。基板60の裏面には、パワーモジュール70が配置されている。パワーモジュール70から上方に向かって5本の雄端子72A,B・・・Eが延びており、雄端子72は基板60を貫通して、基板60の上面から垂直上方に延びている。
パワーモジュール70は複数個のパワートランジスタを備えており、電気自動車の走行用モータに駆動電力を供給する。基板60の上面側に実装されている制御回路は、パワーモジュール70を制御する。コネクタ構造100は、各配線パターン62を対応する雄端子72に接続する。すなわち、配線パターン62Aを雄端子72Aに接続し、配線パターン62Bを雄端子72Bに接続し、以下同様に、配線パターン62Eを雄端子72Eに接続する。大文字アルファベットの添え字は、対応関係を示している。また、添え字で区別する複数の部材に共通する事象については、添え字を省略して説明する。
点検等のために、各配線パターン62と各雄端子72を接続した状態と遮断した状態に切換える必要がある。そのために、本実施例では中継コネクタ40が用意されている。中継コネクタ40を基板側コネクタ10に固定すると、各配線パターン62と各雄端子72の間が接続され、中継コネクタ40を基板側コネクタ10から取り外すと、各配線パターン62と雄端子72の間が遮断される。本明細書では、基板側コネクタ10と中継コネクタ40の組み合わせをコネクタ構造100という。
【0012】
図1は、コネクタ構造100の斜視図である。
図2は、コネクタ構造100の正面図である。
図3は、中央の雄端子72Cを通過する
図2のIII−III線に沿ったコネクタ構造100の断面図である。
図4は、基板側コネクタ10と中継コネクタ40が嵌合する前の状態における
図3と同様の断面図である。
図1、
図2、
図4は、基板側コネクタ10と中継コネクタ40が嵌合する途中の状態を示し、
図3は、基板側コネクタ10と中継コネクタ40の嵌合が完了した状態を示す。いずれの図にも、XYZ座標系を示してある。以下では、XYZ座標系を適宜に使用してコネクタ構造100を説明する。
図3〜
図5は、雄端子72A〜Eに共通するので、添え字を省略している。
【0013】
図1に示すように、基板側コネクタ10に固定されている雌端子の接合部22は、対応する配線パターンに62にはんだ付けされる。すなわち、配線パターン62Aを接合部22Aにはんだ接合し、配線パターン62Bを接合部22Bにはんだ接合し、以下同様に、配線パターン62Eを接合部22Eにはんだ接合する。以下では添え字を省略して説明する。各配線パターン62のはんだ付け個所はY軸に沿って延びる直線上に位置している。5本存在する雌端子の接合部22も、同一直線上に位置している。
図3に示すように、中継コネクタ40は、雄部52と雌部56と両者を接続する接続部54を備えている。中継コネクタ40を基板側コネクタ10に固定すると、雌端子20に雄部52が導通し、雌部56に雄端子72が導通する。コネクタ構造100を介して制御回路の配線パターン62とパワーモジュール70の雄端子72が導通し、制御回路とパワーモジュール70が接続される。中継コネクタ40を基板側コネクタ10から取り外すと配線パターン62と雄端子72が遮断される。
【0014】
図3と
図4に示すように、基板側コネクタ10は、ハウジング12と、5個の雌端子20と、5個の雌端子20を収容している雌端子収容部14と、5本の雄端子72の通過を許容する雄端子通過部16を備える。ハウジング12は、絶縁性の樹脂で作られている。
図1に示すように、ハウジング12のY軸方向の両側壁に金属製の補強タブ13が圧入されており、補強タブ13の下端は折り曲げられている。折り曲げ部13aは基板60にハンダ付けされる。ハウジング12ないし基板側コネクタ10は基板60に固定される。
【0015】
5個の雌端子20は、それぞれ、金属製の板材から形成されている。5個の雌端子20は、5本の雄端子72と同様に、Y軸方向に沿って一列に並んでいる。各雌端子20の下端には、接合部22が形成されており、接合部22は、ハウジング12から露出している。接合部22がはんだで基板60に固定されている配線パターン62に接合される。これにより、雌端子20と基板60に実装されている制御回路が電気的に接合される。
【0016】
また、
図3〜
図5に示すように、各雌端子20のZ軸正方向の端部(上端)には、雌部28が形成されている。雌部28は、筒状に形成された筒部28aと、筒部28aの内側に収容されている板バネ28cを備えている。筒部28aと板バネ28cは、同一板材を折り曲げて形成されている。中継コネクタ40を基板側コネクタ10に固定すると、中継コネクタの雄部52は、筒部28aの内面28bと板バネ28cの間に挿入される。板バネ28cは、中継コネクタ40の雄部52を筒部28aの内面28bに押し付けることによって、雌端子20と雄部52を導通状態に維持する。
【0017】
図5を参照して、基板側コネクタ10の雌端子20の構造の詳細を説明する。
図5は、雌端子20の斜視図である。
図5には、雌端子20と接合する基板60の一部が記載されている。雌端子20は、接合部22と、雌部28と、板状部26を備えている。雌部28は、板材をU字形状に折り曲げ、さらに、U字形状の両端をU字の内側に折り曲げることにより筒部28aを形成している。また、板バネ28cは、雌部28の筒状のZ軸正方向側の端から延びており、その筒部28aの内側に折り込まれている。
【0018】
板状部26は、雌部28の基板60側(即ち、Z軸負方向側)の端から基板60側に向けて延び、接合部22につながっている。板状部26の幅広面は、基板60に直交し、ハウジング12の正面側壁15に平行となっている。板状部26の幅方向(即ち、Y軸方向)の両端面26aは、波状に成形されている。ここで、
図3、
図4に示すように、板状部26は、基板側コネクタ10の雌端子収容部14の正面側壁15と平行に対面している。板状部26が正面側壁15の内面に設けられたリブとリブ(不図示)の間に圧入されることにより、上記の波状の両端面26aがリブに食い込む。これにより、雌端子20がハウジング12に固定される。
【0019】
接合部22と板状部26の間で、雌端子20を形成する板材が、基板60と直交する軸C(Z軸と平行)の周りに90度に折り曲げられている。接合部22と板状部26の間に折り曲げ部24が介在している。このために、接合部22の幅広面(表裏両面にある)は、基板60に直交するとともに、ハウジング12の正面側壁15にも直交する姿勢で、正面側壁15から露出する。このために、接合部22の両側の幅広面と基板60の表面の間に形成されるはんだフィレットを目視で検査することができる。
【0020】
図3、
図4を参照して、ハウジング12の詳細を説明する。ハウジング12は、5個の雌端子20を収容する雌端子収容部14と、5本の雄端子72が通過する雄端子通過部16と、基板側係合爪18を備える。雌端子収容部14は、筒状の部位であり、その筒状の内側に前記した5個の雌端子20が収容されている。5個の雌端子20は、雌端子収容部14の正面(即ち、X軸正方向側の面)に位置する正面側壁15に沿って一列に並んでいる。また、雌端子収容部14の筒状の上端は開口しており、その開口から中継コネクタ40の雄部52が挿入され、雄部52が雌部28に挿入される。
【0021】
雄端子通過部16は、雌端子収容部14と隣接するように設けられている筒状の部位である。雄端子通過部16の上端と下端は開口しており、雄端子通過部16の筒状の内側を5本の雄端子72が通過する。また、その上側の開口から中継コネクタ40の雌部56が挿入され、雌部56に雄端子72が挿入される。
【0022】
基板側係合爪18は、基板側コネクタ10の正面で、かつ、雌端子収容部14の上方(即ち、X軸正方向かつZ軸正方向の側)に設けられている。基板側係合爪18は、基板側コネクタ10の正面へ突出している。一方、後述する中継コネクタ40のハウジング42には、基板側係合爪18と係合する中継側係合爪44が設けられている。中継側係合爪44は、正面とは反対側(即ち、X軸負方向の側)に突出している。基板側コネクタ10と中継コネクタ40が嵌合して、基板側係合爪18と中継側係合爪44が係合することにより、基板側コネクタ10と中継コネクタ40の嵌合が完了する。そして、中継コネクタ40が基板側コネクタ10から抜けることが防止される。なお、基板側係合爪18と中継側係合爪44は、基板側コネクタ10と中継コネクタ40の間に挟まれるコイルバネ30a、30bの反発力を利用して強固に係合する。
【0023】
中継コネクタ40は、5個の雌端子20と5本の雄端子72の電気的接続を中継するために、5個の中継端子50と、5個の中継端子50を収容しているハウジング42を備える。5個の中継端子50は、それぞれ、金属製の板材から形成されている。5個の中継端子50は、5個の雌端子20と5本の雄端子72と同様に、Y軸方向に沿って一列に並んでいる。なお、
図1、
図2では、5個の中継端子50は、ハウジング42に隠れて見えない。
図3、
図4では、5個の中継端子50のうちの、中央の雌端子20Cと中央の雄端子72Cを接合する中央の中継端子50Cが断面で描かれている。
図3、
図4の断面は、5本に共通するので、添え字を省略している。
【0024】
各中継端子50の一端には、板状の雄部52が形成されており、他端には、筒状の雌部56が形成されており、両者が接続部54で接続されている。基板側コネクタ10と中継コネクタ40が嵌合すると、雄部52は、基板側コネクタ10の雌端子20の筒状の雌部28に挿入され、雌部56に雄端子72が挿入される。雌部56の内側には、板バネ56aが形成されており、雌部56に挿入された雄端子72が、板バネ56aと筒状の筒部56bの内面の間に挟まれ、接触状態(導通状態)が確保される。
【0025】
ハウジング42は、絶縁性の樹脂で作られている。ハウジング42の正面(即ち、X軸正方向の側)には、基板側コネクタ10と中継コネクタ40が嵌合する際に基板側係合爪18と係合する中継側係合爪44が設けられている。ハウジング42には、雄端子72を案内する案内面46も形成されている。
【0026】
5本の雄端子72は、Y軸方向に沿って一列に並んでいる。5本の雄端子72の夫々は、基板60の下側(即ち、Z軸負方向の側)に配置されているパワーモジュール70か、基板60に向かって延びている。各雄端子72の他端は、基板60に設けられている貫通孔を通過して、基板側コネクタ10の内側まで延びている。
【0027】
図6を参照して、本実施例の効果を説明する。
図6の左側には、
図3の二点鎖線で囲んだ範囲VIにおける接合部22の拡大図と、はんだ付け後の接合部22のA1−A1線における断面図と、はんだ付け後の接合部22のX線画像を示す。
図6の右側には、比較例の接合部82の拡大図と、はんだ付け後の接合部82のA2−A2線における断面図と、はんだ付け後の接合部82のX線画像も示す。比較例の接合部82は、基板60と直交するように延びている板状部26の基板60側の端部近傍において、基板60と平行な軸の周りに板状部26を折り曲げて形成されている。即ち、接合部82の表面と基板60の表面が対面している。この比較例では、A2−A2断面図に示すように、接合部82の幅狭面と基板60の表面の境界にはんだフィレットSF2が形成される。接合部82のはんだフィレットSF2の最大高さは、接合部82の板厚t1となる。
【0028】
基板60の製造工程においてはんだ付けの品質を管理するために、はんだフィレットの良否を検査する。はんだフィレットの検査は、基板60の表面にX線を照射し、基板60を透過したX線をカメラで撮影し、当該撮影により得られるX線画像を解析することにより行われる。ここで、はんだのX線吸収率は、基板60の母材と比較して高い。X線がはんだを透過する距離が長くなるほど、はんだにより多くのX線が吸収される。即ち、はんだフィレットの高さが高くなるほど、はんだフィレットが存在する領域と存在しない領域(例えば、接合部が存在する領域)の間の明暗が鮮明なX線画像を得ることができる。鮮明なX線画像を解析することにより、はんだ付けの良否を精度良く判定することができる。
【0029】
比較例では、はんだフィレットSF2の最大高さは、接合部82の板厚t1(即ち、板材の板厚)である。このため、板厚t1が小さいと、
図6の右側に示す比較例のX線画像に示すように、接合部82を示す領域の画像IM82と、はんだフィレットSF2を示す領域の画像IS2の間の明暗が不鮮明なX線画像が得られる。不鮮明なX線画像の解析では、はんだ付けの良否を精度よく判定することが困難である。
【0030】
これに対して、A1−A1断面図に示すように、本実施例の接合部22の両幅広面は、基板60と直交しており、接合部22の両幅広面と基板60の表面の間にはんだフィレットSF1が形成される。このため、はんだフィレットの最大高さは、接合部22の幅広面の幅H1となる。接合部22の幅広面の幅H1を大きくすることにより、はんだフィレットの最大高さを板厚t1より高くすることができる。
【0031】
図6の左側に示す実施例のX線画像のように、接合部22を示す領域の画像IM22と、はんだフィレットSF1を示す領域の画像IS1の間の明暗が鮮明なX線画像が得られる。鮮明なX線画像を解析することにより、はんだ付けの良否を精度よく判定することができる。
【0032】
また、本実施例では、雌端子20を形成する板材の板厚を厚くすることなく、接合部22と基板60の境界に形成されるはんだフィレットの最大高さを高くすることができる。これにより、雌端子20の大型化、即ち、基板側コネクタ10の大型化を抑制することができる。
【0033】
図7を参照して、実施例のはんだフィレットと比較例のはんだフィレットに対してX線による検査を行った結果を説明する。上段のグラフは、複数個の接合部22に対してX線画像を撮影し、検査装置が当該X線画像に対して解析を行った結果を示すグラフである。このグラフは、はんだ付けの良否を判定するための判定値Xの度数分布を示す。本実施例では、判定値Xは、理想的なはんだ付けを示すX線画像のパターンに対する、撮影されたX線画像のパターンの近似度である。判定値が右側にあるほど、撮影されたX線画像が理想的なX線画像と似ていること、即ち、はんだ付けが良好であることを示す。
【0034】
閾値Xthは、はんだ付けの良否の判定をするための基準となる値である。検査装置は、撮影されたX線画像の判定値Xが閾値Xthより大きい場合に、当該X線画像によって示されるはんだフィレットが良好であると判定し、当該判定値Xが閾値Xth以下である場合に、はんだフィレットが不良であると判定する。
【0035】
上記の判定により複数個の接合部22を判別すると、上段のグラフに示すように、良好なはんだフィレットの度数分布であって、閾値Xthより大きい平均値XOKを有する度数分布と、不良なはんだフィレットの度数分布であって、閾値Xth以下の平均値XNGを有する度数分布が分離する。
【0036】
2個の度数分布が重ならずに離れているほど、良好品と不良品が精度よく判別されていることを示す。2個の度数分布の重なりと距離を示す指標として、例えば、分離度が利用される。分離度は、2個の度数分布のそれぞれの平均値と、2個の度数分布のそれぞれの標準偏差を利用して算出される。
図7の下段のグラフは、同数の接合部を標本として、実施例と比較例の分離度を比較したグラフである。当該グラフに示すように、実施例の分離度は、比較例の分離度の約2倍である。即ち、実施例は、比較例より精度よく良好品と不良品を判別することができる。
【0037】
本実施例の効果を以下に列挙する。(1)
図6に示すように、接合部22の幅広面と基板60の表面の境界に形成されるはんだフィレットSF1の最大高さH1を高くすることにより、鮮明なX線画像を得ることができる。(2)雌端子20を形成している板材の厚さを厚くすることなく、はんだフィレットSF1の最大高さH1を高くすることができ、雌端子20の大型化を抑制することができる。(3)
図3に示すように、接合部22の両幅広面は、基板60及びハウジング12の正面側壁15の双方と直交して正面側壁15から露出しているので、接合部22の両幅広面に形成されるはんだフィレットSF1を目視でも検査することができる。(4)5個の雌端子20のそれぞれが、板状部26を介して、1枚の正面側壁15に固定されているので、5個の接合部22を1枚の正面側壁15を基準にしてY軸方向に沿って精度よく一列に並べることができる。
【0038】
以下、実施例で示した技術に関する留意点を述べる。本実施例の技術は、1個の雌端子20を備える基板側コネクタに対しても有用である。
【0039】
また、接合部22は、基板60と直交する軸の周りに板状部26を折り曲げて形成されていればよく、例えば、90度以下の角度で折り曲げられていてもよいし、90度以上180度未満の角度で折り曲げられていてもよい。そして、接合部22の両幅広面は、正面側壁15と直交してなくてもよく、交差していればよい。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。