【解決手段】実施形態に係る半導体装置の製造方法は、シリコン及び炭素を含む基板の一部にIII族元素を導入する工程と、前記一部に酸素を導入する工程と、前記III族元素及び前記酸素が導入された前記基板を加熱する工程と、を備える。
前記III族元素を導入する工程、及び、前記酸素を導入する工程は、前記基板を250℃以上500℃以下の温度に加熱した状態で実施する請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造装置1は、イオン注入装置である。
【0009】
製造装置1においては、イオンを生成するイオン源11、イオンをその質量に基づいて選別する質量分析部12、イオンを加速する加速部13、加速されたイオンが導入されるチャンバー14、加熱手段15、チャンバー14内を排気する排気手段16が設けられている。
【0010】
イオン源11は、元素をイオン化する。製造装置1においてイオン化される元素には、III族元素(第13族元素)及び酸素(O)が含まれる。III族元素(第13族元素)は、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(Tl)等である。
【0011】
イオン源11、質量分析部12、加速部13、チャンバー14は、この順に空間的に接続されている。これにより、イオン源11によって生成されたイオンは、質量分析部12によって選別され、加速部13によって所定のエネルギーまで加速された後、チャンバー14内に導入される。
【0012】
チャンバー14内には、被注入材が装入される。本実施形態において、被注入材は炭化珪素(SiC)基板20である。加熱手段15の少なくとも一部は、チャンバー14内に配置されている。加熱手段15は、供試材を保持すると共に、供試材を例えば250℃以上500℃以下の温度に加熱することができる。排気手段16は、チャンバー14内を排気して、チャンバー14内を真空にすることができる。
【0013】
次に、実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図2(a)〜(e)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、本実施形態に係る製造装置の動作を含んでいる。
図3は、本実施形態におけるp形オーミック層の結晶構造を示す図である。
【0014】
先ず、
図2(a)に示すように、SiC基板20を用意する。SiC基板20は、例えば、単結晶の炭化珪素からなるウェーハである。次に、SiC基板20上に、マスク材21を形成する。マスク材21は所定の形状にパターニングされており、p形オーミック層を形成する予定の領域が開口されている。
【0015】
次に、
図1及び
図2(b)に示すように、SiC基板20を製造装置1のチャンバー14内に装入し、加熱手段15に保持させる。次に、排気手段16がチャンバー14内を排気し、チャンバー14内を真空とする。また、加熱手段15がSiC基板20を加熱し、SiC基板20の温度を、例えば250℃以上500℃以下、例えば500℃とする。
【0016】
この状態で、製造装置1のイオン源11がアルミニウムイオンを生成し、質量分析部12がアルミニウムイオンを選別し、加速部13が加速して、チャンバー14内に導入し、SiC基板20に到達させる。これにより、SiC基板20におけるマスク材21によって覆われていない部分に、アルミニウムがイオン注入される。
【0017】
このイオン注入の加速電圧は、例えば15keV以上45keV以下とし、例えば40keVとし、ドーズ量は例えば3×10
14cm
−2以上2×10
15cm
−2以下とし、例えば、1×10
15cm
−2とする。これにより、SiC基板20の上層部分の一部に、アルミニウム含有層22が形成される。アルミニウム含有層22の深さは例えば10nm(ナノメートル)以上100nm以下であり、例えば30〜40nmであり、例えば40nmである。アルミニウム含有層22におけるアルミニウムの濃度は例えば1×10
20cm
−3である。
【0018】
次に、
図1及び
図2(c)に示すように、加熱手段15がSiC基板20を加熱したまま、イオン源11が酸素イオンを生成し、質量分析部12が酸素イオンを選別し、加速部13が加速して、チャンバー14内に導入し、SiC基板20に到達させる。これにより、SiC基板20におけるマスク材21によって覆われていない部分、すなわち、アルミニウム含有層22に、酸素がイオン注入される。
【0019】
このイオン注入の加速電圧は、例えば15keV以上45keV以下とし、例えば40keVとし、ドーズ量はアルミニウムイオンのドーズ量の例えば0.1倍以上1倍以下とする。これにより、アルミニウム含有層22がアルミニウム−酸素含有層23に変化する。アルミニウム−酸素含有層23の深さはアルミニウム含有層22の深さと同程度であり、酸素の濃度は例えば1×10
19cm
−3以上1×10
20cm
−3以下である。その後、SiC基板20をチャンバー14から取り出す。次に、マスク材21を除去する。
【0020】
次に、
図2(d)に示すように、SiC基板20の上面にレジスト(図示せず)を塗布し、例えば1000℃に加熱することにより、炭素を主成分としたキャップ膜24を形成する。次に、キャップ膜24を被着させたSiC基板20に対して熱処理を施す。この熱処理の温度は例えば1600℃以上、例えば1700℃以上1900℃以下とし、時間は例えば10分間以下とする。
【0021】
これにより、
図2(d)及び
図3に示すように、アルミニウム−酸素含有層23中のアルミニウム原子が、SiC基板20の炭素原子と置換してシリコン原子と結合し、アクセプタとして活性化する。一方、アルミニウム原子に置換されてシリコン原子から切り離された炭素原子は、アルミニウム−酸素含有層23中の酸素原子と結合して、二酸化炭素(CO
2)又は一酸化炭素(CO)となり、SiC基板20から排出される。また、炭素原子が排出されることにより、アルミニウム原子がシリコン原子と結合しやすくなる。この結果、アルミニウム−酸素含有層23はp形オーミック層25となる。p形オーミック層25内においては、シリコン原子から切り離された単体の炭素原子が少なく、また、シリコン原子と結合していないアルミニウム原子も少ない。p形オーミック層25は、SiC基板20の上面に露出しており、その深さは例えば10nm以上100nm以下であり、例えば30〜40nmであり、例えば40nmである。
【0022】
次に、
図2(e)に示すように、キャップ膜24を除去し、p形オーミック層25上に、導電性材料、例えば、ニッケルシリサイド(NiSi)等の金属材料からなる導電部材28を形成する。導電部材28は、例えば、コンタクト又は電極である。このとき、導電部材28はp形オーミック層25とオーミック接続する。このようにして、本実施形態に係る半導体装置が製造される。
【0023】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、
図2(b)及び(c)に示す工程において、SiC基板20における同じ部分に、アルミニウム及び酸素を導入し、
図2(d)に示す工程において、SiC基板20に熱処理を施すことにより、SiC基板20に含まれていた炭素原子の一部が二酸化炭素又は一酸化炭素となり、SiC基板20から排出される。
【0024】
これにより、
図3に示すように、p形オーミック層25内において、シリコン原子から切り離された単体の炭素原子の濃度が減少する。また、炭素原子が排出されることにより、アルミニウム−酸素含有層23がシリコンリッチとなるため、空いた炭素サイトにアルミニウムが入りやすくなり、シリコン原子と結合していないアルミニウム原子の濃度も減少する。この結果、アルミニウムの活性化率が向上し、p形オーミック層25の抵抗率が減少する。これにより、p形オーミック層25と導電部材28との間の抵抗を低減することができる。この結果、高性能な半導体装置を製造することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、
図2(c)に示す工程において、イオン注入によって酸素をSiC基板20内に導入している。これにより、アルミニウム含有層22の略全体に酸素を導入することができ、アルミニウム含有層22の略全体をアルミニウム−酸素含有層23に変化させることができる。この結果、
図2(d)に示す工程において、熱処理を施すことにより、アルミニウム−酸素含有層23の略全体をp形オーミック層25に変化させることができる。このようにして、SiC基板20に注入したアルミニウムを、有効に利用することができる。
【0026】
なお、
図2(b)に示すアルミニウムのイオン注入工程と、
図2(c)に示す酸素のイオン注入工程は、順不同である。すなわち、本実施形態においては、アルミニウムをイオン注入した後、酸素をイオン注入する例を示したが、酸素をイオン注入した後、アルミニウムをイオン注入してもよい。また、イオン注入するIII族元素はアルミニウムには限定されず、ボロン、ガリウム、インジウム及びタリウム等であってもよい。更に、導電部材28の材料はニッケルシリサイドには限定されず、例えば、チタン(Ti)又はアルミニウム(Al)であってもよく、それ以外の金属材料であってもよく、これらの金属材料のシリサイドであってもよい。
【0027】
(比較例)
次に、比較例について説明する。
図4は、本比較例におけるp形オーミック層の結晶構造を示す図である。
本比較例は、前述の第1の実施形態と比較して、
図2(c)に示す酸素のイオン注入を実施しない。すなわち、SiC基板20のp形オーミック層には、アルミニウムのみをイオン注入する。
【0028】
この結果、
図4に示すように、比較例におけるp形オーミック層35においては、シリコン原子と結合していない炭素原子36、及び、シリコン原子と結合していないアルミニウム原子37が多く存在する。シリコン原子と結合していないアルミニウム原子は活性化しにくいため、注入したアルミニウムの活性化率が低い。このため、本比較例のp形オーミック層35は抵抗率が高い。また、シリコン原子から切り離された炭素原子36が残留していることによっても、p形オーミック層35の抵抗率は高くなる。従って、このp形オーミック層35上に導電部材(図示せず)を形成してオーミック接続させても、p形オーミック層35と導電部材との間の抵抗が高く、半導体装置の動作速度が遅い。
【0029】
これに対して、上述の第1の実施形態においては、イオン注入された酸素により、SiC基板中の炭素原子の一部が除去されるため、イオン注入されたアルミニウム原子がシリコン原子と結合しやすくなり、アルミニウムの活性化率が向上する。また、シリコン原子から切り離された炭素原子が除去される。このため、p形オーミック層の抵抗率が低い。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る半導体装置の製造装置は、
図1に示す製造装置1と同じである。但し、イオン源11は、V族元素(第15族元素)及び酸素をイオン化することができる。V族元素(第15族元素)は、リン(P)、窒素(N)及びヒ素(As)等である。
【0031】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図5(a)〜(e)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
なお、以下の説明において、前述の第1の実施形態と同じ部分は、簡略に説明するか、説明を省略する。
【0032】
先ず、
図5(a)に示すように、SiC基板20を用意し、SiC基板20上にマスク材21を形成する。マスク材21においては、n形オーミック層を形成する予定の領域が開口されている。
【0033】
次に、
図1及び
図5(b)に示すように、製造装置1のチャンバー14内にSiC基板20を装入する。そして、排気手段16がチャンバー11内を真空にすると共に、加熱手段15がSiC基板20を例えば250℃以上500℃以下の温度に加熱する。
【0034】
この状態で、イオン源11がリンイオンを生成し、質量分析部12がリンイオンを選別し、加速部13が加速して、SiC基板20に到達させる。これにより、SiC基板におけるマスク材21によって覆われていない部分に、リンがイオン注入される。
【0035】
このイオン注入のドーズ量は、例えば3×10
13cm
−2以上2×10
15cm
−2以下とし、例えば、1×10
14cm
−2とする。このドーズ量の好適範囲の下限値は、前述の第1の実施形態におけるアルミニウムイオンのドーズ量の好適範囲の下限値(3×10
14cm
−2)よりも低い。これは、ドナーはアクセプタよりも低い濃度で母材となる半導体材料をオーミック状態にできるためである。一方、このイオン注入の加速電圧は、第1の実施形態と同様に、例えば15keV以上45keV以下とし、例えば40keVとする。
【0036】
これにより、SiC基板20の上層部分の一部に、リン含有層42が形成される。リン含有層42の深さは例えば10nm以上100nm以下であり、例えば30〜40nmであり、例えば40nmである。
【0037】
次に、
図5(c)に示すように、SiC基板20におけるマスク材21によって覆われていない部分、すなわち、リン含有層42に、酸素をイオン注入する。このイオン注入の加速電圧は、例えば15keV以上45keV以下とし、例えば40keVとし、ドーズ量はリンイオンのドーズ量の例えば0.1倍以上1倍以下とする。これにより、リン含有層42がリン−酸素含有層43に変化する。
【0038】
次に、
図5(d)に示すように、SiC基板20の上面上にキャップ膜24を形成する。次に、SiC基板20に対して熱処理を施す。熱処理の条件は、前述の第1の実施形態と同様に、温度を例えば1600℃以上、例えば1700℃以上1900℃以下とし、時間を例えば10分間以下とする。
【0039】
これにより、リン−酸素含有層43中のリン原子が、SiC基板20の炭素原子と置換してシリコン原子と結合し、ドナーとして活性化する。一方、リン原子に置換されてシリコン原子から切り離された炭素原子は、リン−酸素含有層43中の酸素原子と結合して、二酸化炭素(CO
2)又は一酸化炭素(CO)となり、SiC基板20から排出される。この結果、リン−酸素含有層43はn形オーミック層45となる。
【0040】
n形オーミック層45内においては、シリコン原子から切り離された単体の炭素原子が少なく、また、シリコン原子と結合していないリン原子も少ない。n形オーミック層45は、SiC基板20の上面に露出しており、その深さは例えば10nm以上100nm以下であり、例えば30〜40nmであり、例えば40nmである。
【0041】
次に、
図5(e)に示すように、キャップ膜24を除去し、n形オーミック層45上に、導電性材料、例えば、ニッケルシリサイド(NiSi)等の金属材料からなる導電部材28を形成する。このとき、導電部材28はn形オーミック層45とオーミック接続する。このようにして、本実施形態に係る半導体装置が製造される。
【0042】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においても、SiC基板20に酸素をイオン注入することにより、SiC基板20中の炭素原子の一部が二酸化炭素又は一酸化炭素となり、排出される。これにより、注入されたリン原子がシリコン原子と結合しやすくなり、リンの活性化率が向上する。この結果、n形オーミック層45の抵抗率が低下し、n形オーミック層45と導電部材28との間の抵抗が減少する。
【0043】
なお、本実施形態においては、
図5(b)に示す工程において、リンをイオン注入した後、
図5(c)に示す工程において、酸素をイオン注入する例を示したが、この順番は逆でもよく、酸素をイオン注入した後、リンをイオン注入してもよい。また、イオン注入するV族元素はリンには限定されず、窒素又はヒ素等であってもよい。
本実施形態における上記以外の製造装置の構成、半導体装置の製造方法及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0044】
前述の第1の実施形態と第2の実施形態は組み合わせて実施してもよい。例えば、製造装置1のイオン源11を、III族元素、V族元素及び酸素をイオン注入できるように設計することにより、1台の製造装置1によって、SiC基板20にp形オーミック層25及びn形オーミック層45の双方を形成することができる。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、低抵抗なオーミック接続を実現可能な半導体装置の製造方法及び製造装置を実現することができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。