【解決手段】地下灌漑システム10は、複数の有孔管12と、給水路102から供給される水を各有孔管に導く給水側連結管14と、および各有孔管から排出される水を排水路104に導く排水側連結管16とを備える。また、各有孔管の上流側端部には、有孔管への給水を制御する送水制御装置40が設けられ、各有孔管の下流側端部には、有孔管からの排水を制御する排水制御装置42が設けられる。
前記複数の有孔管の上流側端部のそれぞれには、洗浄機を前記有孔管の内部に挿入可能な洗浄用立上り管が設けられる、請求項1ないし5のいずれかに記載の地下灌漑システム。
前記複数の有孔管は、前記圃場の短辺方向に沿って延び、当該圃場の長辺方向に所定間隔で並ぶように配置される、請求項1ないし7のいずれかに記載の地下灌漑システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、圃場を大区画化する等の圃場整備事業が進められている。しかし、特許文献1の技術では、圃場(耕地)ごとに水位を一括で管理しているため、圃場が大区画化された場合、圃場の水位を適切に管理できない恐れが生じる。たとえば、大区画化された圃場では、圃場の領域によって地下浸透量の違いが生じる可能性が高くなり、圃場内に意図しない水位差が生じてしまう恐れがある。また、動水勾配によって生じる給排水時の上流側と下流側との水位の差は、配管距離が長くなればなるほど大きくなるため、大区画化された圃場では、配管の上流側と下流側とで水位差が大きくなってしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、地下灌漑システムを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、大区画化された圃場であっても、圃場の水位を適切に管理できる、地下灌漑システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、圃場に対して地下から水を供給する地下灌漑システムであって、圃場の地下に所定間隔で埋設される複数の有孔管、複数の有孔管の上流側端部同士を連結し、給水路から供給される水を各有孔管に導く給水側連結管、複数の有孔管の下流側端部同士を連結し、各有孔管から排出される水を排水路に導く排水側連結管、および複数の有孔管の下流側端部のそれぞれに設けられる排水制御装置を備える、地下灌漑システムである。
【0008】
第1の発明では、地下灌漑システムは、圃場の地下に所定間隔で埋設される複数の有孔管を備え、有孔管を用いて圃場の給排水を行うことによって、圃場の水位を所望の水位に保つ。各有孔管の上流側端部同士は、給水路から供給される水を各有孔管に導く給水側連結管によって連結される。一方、各有孔管の下流側端部同士は、各有孔管から排出される水を排水路に導く排水側連結管によって連結される。そして、各有孔管の下流側端部には、有孔管からの排水を制御する排水制御装置が設けられる。各有孔管に設けられる排水制御装置を用いることにより、有孔管ごとに排水を制御して水位を設定することが可能となる。
【0009】
第1の発明によれば、各有孔管に対して排水制御装置が設けられるので、有孔管ごとに個別に水位設定できる。したがって、大区画化された圃場であっても、圃場の水位を適切に管理できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、複数の有孔管の上流側端部のそれぞれに設けられる送水制御装置を備える。
【0011】
第2の発明では、各有孔管の上流側端部には、有孔管への給水を制御する送水制御装置が設けられる。そして、各有孔管に設けられる送水制御装置および排水制御装置を用いることにより、有孔管ごとに給水および排水を制御して水位が設定される。
【0012】
第2の発明によれば、各有孔管に対して送水制御装置および排水制御装置が設けられるので、有孔管ごとの水位設定をより適切に実行できる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、給水側連結管の上流側端部に設けられる、自動制御または遠隔操作が可能な電動の給水制御装置を備える。
【0014】
第3の発明では、給水側連結管の上流側端部には、給水制御装置が設けられる。この給水制御装置は、予め記憶されたプログラムに基づく自動制御または遠隔操作が可能な電動のものである。これにより、圃場の全体的な水位管理を自動化または遠隔操作化できるので、圃場での作業負担が低減される。
【0015】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、給水側連結管の下流側端部は、当該給水側連結管を開閉可能な弁部材を介して排水路に連結される。
【0016】
第4の発明によれば、給水側連結管の下流側端部が排水路に接続されるので、給水側連結管に溜まった泥等を排水路に直接排出することが可能となり、給水側連結管の洗浄作業(泥吐き作業)が容易となる。したがって、給水側連結管を適切に維持管理することができるので、地下灌漑システムの寿命が延びる。また、給水側連結管が適切に維持管理されることで、各有孔管への用水供給が適切に維持されるので、有孔管ごとの水位設定機能も適切に維持される。
【0017】
第5の発明は、第4の発明に従属し、複数の有孔管の上流側端部のそれぞれは、給水側連結管の管壁上部に形成される分岐部に連結される。
【0018】
第5の発明によれば、給水側連結管から各有孔管への泥等の流入が低減されるので、各有孔管における泥溜りが低減される。したがって、各有孔管の洗浄頻度を少なくすることができる。
【0019】
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明に従属し、複数の有孔管の上流側端部のそれぞれには、洗浄機を有孔管の内部に挿入可能な洗浄用立上り管が設けられる。
【0020】
第6の発明によれば、各有孔管の洗浄作業を容易に行うことができ、各有孔管を適切に維持管理することができるので、地下灌漑システムの寿命が延びる。
【0021】
第7の発明は、第6の発明に従属し、洗浄用立上り管は、送水制御装置を構成する立上り管である。
【0022】
第7の発明では、送水制御装置を構成する立上り管が洗浄用立上り管と兼用される。
【0023】
第8の発明は、第1ないし第7のいずれかの発明に従属し、複数の有孔管は、圃場の短辺方向に沿って延び、当該圃場の長辺方向に所定間隔で並ぶように配置される。
【0024】
第8の発明によれば、各有孔管を圃場の短辺方向に延びるように配置するので、圃場が大区画化された場合でも、動水勾配によって生じる水位差を低減できる。また、有孔管に泥等が堆積し難くなり、有孔管の洗浄作業も容易となる。
【0025】
第9の発明は、第1ないし第8のいずれかの発明に従属し、排水制御装置は、水位設定機構を有する桝を含む。
【0026】
第9の発明によれば、各有孔管の下流側端部に設けられる排水制御装置として、伸縮式およびシャッタ式などの水位設定機構を有する桝が用いられるので、各有孔管における水位管理を容易に行うことができる。
【0027】
第10の発明は、圃場に対して地下から水を供給する地下灌漑システムであって、圃場の地下に所定間隔で埋設される複数の有孔管、複数の有孔管の上流側端部同士を連結し、給水路から供給される水を各有孔管に導く給水側連結管、および複数の有孔管の下流側端部同士を連結し、各有孔管から排出される水を排水路に導く排水側連結管を備え、給水側連結管の下流側端部は、当該給水側連結管を開閉可能な弁部材を介して排水路に連結される、地下灌漑システムである。
【0028】
第10の発明では、地下灌漑システムは、圃場の地下に所定間隔で埋設される複数の有孔管を備え、有孔管を用いて圃場の給排水を行うことによって、圃場の水位を所望の水位に保つ。各有孔管の上流側端部同士は、給水路から供給される水を各有孔管に導く給水側連結管によって連結される。一方、各有孔管の下流側端部同士は、各有孔管から排出される水を排水路に導く排水側連結管によって連結される。そして、給水側連結管の下流側端部は、給水側連結管の管路を開閉可能な弁部材を介して排水路に連結される。
【0029】
第10の発明によれば、給水側連結管の下流側端部が排水路に接続されるので、給水側連結管に溜まった泥等を排水路に直接排出することが可能となり、給水側連結管の洗浄作業(泥吐き作業)が容易となる。したがって、給水側連結管を適切に維持管理することができるので、地下灌漑システムの寿命が延びると共に、大区画化された圃場であってもその水位を適切に管理できる。また、給水側連結管が適切に維持管理されることで、各有孔管への用水供給が適切に維持されるので、たとえば有孔管ごとの水位設定を行う場合には、その水位設定機能も適切に維持される。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、各有孔管に対して排水制御装置が設けられるので、有孔管ごとに個別に水位設定できる。したがって、大区画化された圃場であっても、圃場の水位を適切に管理できる。
【0031】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照して、この発明の一実施例である地下灌漑システム10(以下、単に「システム10」と言う。)は、水田、畑地、或いは田畑輪換地などの圃場100に対して地下から水を供給するための給排水設備であって、大区画化された圃場100に好適に用いられる。詳細は後述するように、システム10は、地下に埋設された複数の有孔管12から圃場100に対して水を供給する、または、有孔管12を用いて圃場100に生じた余剰水を排出することにより、圃場100の水位(地下水位および地表水位を含む)を所望の水位に保つ。
【0034】
この実施例では、圃場100は、農道および畦畔によって、たとえば200m×100mの矩形状に区画化された大区画圃場である。圃場100の長辺方向両端の農道または畦畔部分には、開水路またはパイプラインなどの給水路(用水路)102が圃場100の短辺方向に延びるように設けられる。また、圃場100の長辺方向中央部には、排水路104として、圃場100の短辺方向に延びる排水パイプラインが埋設される。ただし、排水路104は、開水路であってもよい。そして、圃場100の排水路104を挟んだ両側部分のそれぞれに、システム10が配設される。
【0035】
ただし、給水路102および排水路104の配置は、圃場100の状況に応じて適宜変更され得るものである。たとえば、圃場100の中央部に給水路102を配置し、圃場100の両端部に排水路104を配置する場合もあるし、圃場の100一方端部に給水路102を配置し、圃場100の他端部に排水路104を配置する場合もある。また、後述するシステム10の各構成部分の配置も、給水路102および排水路104の配置などに応じて、適宜変更され得る。
【0036】
図2および
図3に示すように、システム10は、複数の有孔管12、給水側連結管14および排水側連結管16などの配管を備える。これらの配管12,14,16は、ポリエチレンまたは硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成され、水平方向に延びるように、または管内の水を排出し得る程度の緩い勾配を付けて、地下に埋設される。
【0037】
有孔管12は、その管壁に複数の孔(図示せず)を有する管であり、この実施例では、波付管などを用いて配管される。有孔管12は、給水路102および排水路104と同じ方向、つまり圃場100の短辺方向に沿って延び、圃場100の長辺方向に所定間隔で並ぶように配置される。
【0038】
有孔管12の内径は、たとえば50〜100mmであり、有孔管12の長さは、圃場100の短辺方向の略全長に亘る長さである。また、有孔管12の埋設深さは、たとえば40〜70cmであり、隣り合う有孔管12同士の間隔は、たとえば5〜15mである。ただし、有孔管12の形状、大きさおよび配置態様などは、適宜変更可能である。なお、
図1および
図2などでは、図面の簡略化のため、4本の有孔管12を示しており、圃場100の広さに対する有孔管12の大きさ(他の構成部分も同様)も正確ではない。また、圃場100外に配管される有孔管12の両端部には、孔は形成されない。
【0039】
給水側連結管14および排水側連結管16は、圃場100の短辺方向両端の農道または畦畔部分に埋設される。給水側連結管14および排水側連結管16の内径は、有孔管12の内径よりも少し大きく設定され、たとえば100mmである。
【0040】
給水側連結管14は、有孔管12の上流側端部同士を連結する配管であって、給水路102から供給される水を各有孔管12に導く。この実施例では、各有孔管12の上流側端部は、給水側連結管14の管壁上部から立ち上がる分岐部(立上り管44の下端部)に連結される。すなわち、各有孔管12と給水側連結管14との連結部は、給水側連結管14の下半部よりも上方に設けられる。これにより、給水側連結管14から各有孔管12への泥または土砂などの流入が低減され、用水に含まれる泥等は主として給水側連結管14に堆積されるようになる。
【0041】
また、給水側連結管14の下流側端部は、給水側連結管14の管路を開閉可能な弁部材20を介して排水路104に連結される。弁部材20としては、後述する送水制御装置40や排水制御装置42と同様のもの、或いは汎用のゲートバルブ等を用いるとよい。このように給水側連結管14の下流側端部を排水路104に接続しておくことにより、給水側連結管14に溜まった泥等を排水路104に直接排出することが可能となり、給水側連結管14の洗浄作業(泥吐き作業)が容易となる。さらに、給水側連結管14と排水路104との合流部には、点検用立上り管22が設けられる。
【0042】
一方、排水側連結管16は、有孔管12の下流側端部同士を連結する配管であって、各有孔管12から排出される水を排水路104に導く。排水側連結管16の上流側端部、各有孔管12と排水側連結管16との合流部、および排水側連結管16と排水路104との合流部のそれぞれには、点検用立上り管22が設けられる。
【0043】
点検用立上り管22のそれぞれは、配管内部にゴミの詰りがないかを確認したり、そのゴミを除去したりする等のために用いられる。また、点検用立上り管22は、高圧洗浄機を配管内に挿入するための差込口として用いることもできる。
【0044】
また、給水側連結管14の上流側端部には、システム10全体に対する給水を制御する給水制御装置24が設けられる。給水制御装置24は、給水桝26および給水バルブ28等を備える。給水桝26の底部には、給水路102から分岐した取水管30が接続され、給水桝26内には、この取水管30の下流側端部に接続された給水バルブ28が収容される。
【0045】
給水バルブ28としては、汎用の給水バルブを適宜用いることができる。簡単に説明すると、給水バルブ28は、上下動可能に設けられる弁体を備えており、弁軸の上端部に設けられたハンドルが操作されて弁軸に回転力が加えられると、送りねじ機構によって弁体が上下動する。この弁体の上下動によって、取水管30の下流側端部の開口が開閉され、また、その開き具合(開度)を調節することにより給水路102からの取水量が調節される。
【0046】
また、給水桝26の底部には、地下用給水口32が設けられ、この地下用給水口32に給水側連結管14の上流側端部が接続される。給水バルブ28を開くことによって給水路102から給水桝26内に流入した水は、地下用給水口32から給水側連結管14に供給される。また、給水桝26の側壁には、地上から用水を供給するための地上用給水口34が設けられる。この地上用給水口34には、上下動可能および着脱可能に堰板が取り付けられる。
【0047】
そして、各有孔管12の両端部には、有孔管12ごとの水位設定を可能とするための送水制御装置40および排水制御装置42が設けられる。すなわち、各有孔管12の上流側端部(給水側)には、有孔管12への給水を個別に制御する送水制御装置40が設けられ、各有孔管12の下流側端部(排水側)には、有孔管12からの排水を個別に制御する排水制御装置42が設けられる。この実施例では、送水制御装置40および排水制御装置42として共に、栓部材46を備える制御装置が用いられる。
【0048】
具体的には、
図4に示すように、送水制御装置40は、給水側連結管14から有孔管12への分流部に設けられる立上り管44と、立上り管44に摺動可能に設けられる栓部材46とを含む。栓部材46は、棒状の柄部48を備える。柄部48の下端部には、ゴム等の弾性部材によって形成される略円柱状の止水部50が設けられる。一方、柄部48の上端部には、把持部52と、把持部52の下方に配置されるストッパ54とが設けられる。また、立上り管44の上端部には、栓部材46の柄部48が挿通される短円筒状のガイド部58を有するキャップ56が装着される。このガイド部58の上端面とストッパ54の下端面とが当接する位置は、栓部材46の最下位置と対応付けられている。すなわち、ガイド部58とストッパ54とが当接するまで栓部材46を押し下げる(つまり栓部材46を最下位置とする)ことにより、給水側連結管14内の通水を保持しつつ、給水側連結管14から有孔管12への給水が止水部50によって堰き止められる。一方、栓部材46が最下位置から引き上げられると、給水側連結管14から有孔管12への給水が可能となる。なお、栓部材46は、立上り管44の内側面と止水部50との間の摩擦力により、任意の高さ位置に固定可能である。また、図示は省略するが、柄部48の外周面には、ストッパ54の下に、送水制御装置40内の通水路の開度を表示する目盛り部が設けられることが好ましい。この目盛り部を目安とすることによって、作業者は、通水路の開度、すなわち有孔管12への給水量を調整し易くなる。
【0049】
一方、排水制御装置42は、
図5に示すように、上述の送水制御装置40と同様の構成を有しており、有孔管12の下流側端部に設けられる立上り管44と、立上り管44に摺動可能に設けられる栓部材46とを含む。なお、送水制御装置40と同じ部分については同じ参照番号を付し、重複する説明は省略する。排水制御装置42では、栓部材46を最下位置とすることにより、有孔管12から排水側連結管16への排水が停止され、栓部材46が最下位置から引き上げられると、有孔管12内の水が排水側連結管16に排出される。
【0050】
図2および
図3に戻って、各有孔管12の両端部には、送水制御装置40の下流側近傍位置および排水制御装置42の上流側近傍位置において、水位確認用立上り管60が設けられる。水位確認用立上り管60の内部空間は、有孔管12を介して圃場100内の空隙と連通している状態であるため、水位確認用立上り管60内の水位は、その有孔管12が配設された各領域の圃場100の水位と略同一となる。したがって、作業者は、水位確認用立上り管60内の水位を目視することにより、各領域における圃場100の水位を確認することができる。また、図示は省略するが、水位確認用立上り管60の内周面には、圃場100の地表面に対する高さ位置を表示する目盛り部を設けることが好ましい。これにより、作業者は、圃場100の水位をより正確に確認可能となる。
【0051】
続いて、
図3および
図6を参照して、上述のようなシステム10を用いて圃場100の水位を所望の水位に保つ方法について説明する。
【0052】
システム10を用いて灌漑を行うときには、
図3に示すように、各排水制御装置42の栓部材46は、最下位置に押し下げて全閉状態とする。一方、各送水制御装置40の栓部材46は、最下位置から引き上げて開状態とし、給水側連結管14から有孔管12への給水が可能な状態としておく。そしてこの状態で、給水制御装置24の給水バルブ28を開く。すると、給水路102を流れる水は、取水管30、給水桝26および給水側連結管14を介して、各有孔管12に流入し、各有孔管12の孔から圃場100の地中に供給される。これにより、圃場100の水位は上昇してくるので、その水位上昇を水位確認用立上り管60から確認しながら、
図6に示すように、送水制御装置40および排水制御装置42の栓部材46を手動で上げ下げして(つまり、有孔管12に対する給排水を手動で調節して)、圃場100の水位が目標水位となるように調整する。なお、圃場100の水位が所望の水位に調整された後は、各排水制御装置42を全閉状態にすると共に、給水バルブ28を閉じておくとよい。
【0053】
このように、送水制御装置40および排水制御装置42の栓部材46の位置を調節することで、圃場100の水位を任意(たとえば、圃場100の地表面を基準として−50cm〜+20cmまで)に設定できる。そして、この実施例では、有孔管12ごとに、給水および排水を制御して水位を設定することができるので、きめ細やかな圃場100の水位管理が可能となる。
【0054】
たとえば、動水勾配の影響或いは地下浸透量の違いなどによって、給水側連結管14の上流側の圃場100領域の水位が高くなる場合には、給水側連結管14の上流側に連結される有孔管12の排水制御装置42を開状態にして、その周辺領域の圃場100の水位を下げるとよい。これによって、圃場100全体の水位を略均一にすることができる。また、有孔管12ごとに設定水位を変えることで、同じ圃場100内でありながら、最適地下水位の異なる野菜などの多品種栽培が可能となり、作物の生育状況の違い等を考慮した領域ごとの水位調整も可能となる。さらに、送水制御装置40の栓部材46によって有孔管12への給水を堰き止めることにより、任意の有孔管12のみ、圃場100への給水を停止することもできる。
【0055】
続いて、システム10のメンテナンス方法について説明する。図示は省略するが、給水側連結管14のメンテナンス(泥吐き)を行うときには、給水側連結管14の下流側端部に設けた弁部材20を開状態とし、地下用給水口32から給水側連結管14内に高圧洗浄機を挿入して、給水側連結管14に溜まった泥等を排水路104に直接排出する。これによって、給水側連結管14を適切に維持管理することができるので、システム10の寿命が延びる。また、給水側連結管14が適切に維持管理されることで、各有孔管12への用水供給が適切に維持されるので、有孔管12ごとの水位設定機能も適切に維持される。
【0056】
また、各有孔管12のメンテナンスを行うときには、送水制御装置40から栓部材46およびキャップ56を取り外すと共に、排水制御装置42の栓部材46を開状態にする。そして、立上り管44の上部開口から有孔管12内に高圧洗浄機を挿入して、有孔管12内に溜まった泥等を排水側連結管16に排出する。すなわち、送水制御装置40を構成する立上り管44が、洗浄機を有孔管12の内部に挿入可能な洗浄用立上り管として用いられる。これによって、各有孔管12を適切に維持管理することができるので、システム10の寿命が延び、有孔管12ごとの水位設定機能も適切に維持される。ただし、送水制御装置40の立上り管44の代わりに、有孔管12の上流側端部に設けられる水位確認用立上り管60を洗浄用立上り管として用いることもできる。
【0057】
さらに、排水側連結管16のメンテナンスを行うときには、排水側連結管16の上流側端部に設けられる点検用立上り管22から排水側連結管16内に高圧洗浄機を挿入して、排水側連結管16に溜まった泥等を排水路104に排出する。これによって、排水側連結管16を適切に維持管理することができるので、システム10の寿命が延びる。また、排水側連結管16が適切に維持管理されることで、各有孔管12からの排水が適切に維持されるので、有孔管12ごとの水位設定機能も適切に維持される。
【0058】
以上のように、この実施例によれば、有孔管12ごとに個別に水位設定できるので、きめ細やかな圃場100の水位管理が可能となる。したがって、大区画化された圃場100であっても、圃場100の水位を適切に管理できる。
【0059】
また、この実施例によれば、有孔管12を圃場100の短辺方向に延びるように配置するので、圃場100が大区画化された場合でも、動水勾配によって生じる水位差を低減できる。また、有孔管12の長さが長くなればなるほど、有孔管12が泥等によって閉塞してしまう可能性が高くなるが、この実施例のように有孔管12を圃場100の短辺方向に延びるように配置することで、有孔管12に泥等が堆積し難くなり、有孔管12の洗浄作業も容易となる。
【0060】
さらに、この実施例によれば、給水側連結管14の下流側端部が排水路104に接続されるので、給水側連結管14に溜まった泥等を排水路104に直接排出することが可能となり、給水側連結管14の泥吐き作業が容易となる。したがって、給水側連結管14を適切に維持管理することができるので、システム10の寿命が延びると共に、大区画化された圃場100であってもその水位を適切に管理できる。また、複数の有孔管12の上流側端部のそれぞれは、給水側連結管14の管壁上部に形成される分岐部に連結されるので、給水側連結管14から各有孔管12への泥等の流入が低減され、各有孔管12における泥溜りが低減される。したがって、各有孔管12の洗浄頻度を少なくすることができる。
【0061】
なお、上述の実施例では、給水側連結管14および排水側連結管16の内径を有孔管12の内径よりも少し大きく設定するようにしたが、給水側連結管14の内径は、有孔管12の内径よりも大幅に大きく(たとえば2−5倍)設定することもできる。これにより、給水側連結管14内での用水の流速が小さくなるので、用水に含まれる泥等が給水側連結管14内において沈降し易くなり、給水側連結管14から各有孔管12への泥等の流入が低減される。一方、排水側連結管16の内径は、有孔管12の内径と略同じ大きさに設定するとよい。これにより、排水側連結管16内での排水の流速が大きくなるので、排水側連結管16内において泥等が沈降し難くなり、排水路104に泥等が排出され易くなる。
【0062】
また、上述の実施例では、各制御装置40,42の栓部材46は、立上り管44の内側面と止水部50との間の摩擦力によって任意の高さ位置に固定可能なものとしたが、栓部材46を任意の高さ位置でより確実に固定するために、各制御装置40,42に対して摺動止め部を別途設けるようにしてもよい。摺動止め部の具体的構造は適宜変更可能であるが、一例として、摺動止め部としては、
図7に示すような袋ナット70およびゴム輪72等によって構成されるものを用いることができる。この場合、ガイド部58の外側面には袋ナット70と螺合される雄ねじ部が形成され、ガイド部58の端面と袋ナット70との間にゴム輪72が設けられる。そして、栓部材46を任意の高さ位置とした状態で、袋ナット70を締め付けることにより、ゴム輪72が弾性変形して柄部48に圧接され、栓部材46がその高さ位置で固定される。
【0063】
さらに、上述の実施例では、目視で水位を確認するための水位確認用立上り管60を各有孔管12に設けるようにしたが、水位確認用立上り管60の代わりに水位センサを設けるようにしてもよい。この場合、作業者は、水位センサの検出結果を確認することにより、各領域における圃場100の水位を確認することができる。
【0064】
さらにまた、上述の実施例では、各有孔管12に送水制御装置40を設けるようにしたが、送水制御装置40は、必ずしも設けられる必要はない。送水制御装置40を設けない場合には、排水制御装置42を用いて有孔管12からの排水を制御することで、有孔管12ごとの水位設定を実行するとよい。
【0065】
次に、
図8を参照して、この発明の他の実施例であるシステム10について説明する。この実施例では、給水側連結管14の上流側端部に設けられる給水制御装置24として、自動制御または遠隔操作が可能な電動の給水制御装置が用いられ、圃場100全体に対する水管理が自動化される点が、上述の実施例と異なる。その他の部分については同様であるので、上述の実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。重複する説明を省略等することは、後述する他の実施例においても同様である。また、上述の変形例については、以下の各実施例においても適宜採用し得る。
【0066】
図8に示す実施例では、給水制御装置24が備える給水バルブ28に対して、電動アクチュエータ64が取り付けられる。また、給水側連結管14の上流側端部の立上り管には、その内部の水位、つまり圃場100の水位を検出する超音波センサ等の水位センサ66が設けられる。
【0067】
電動アクチュエータ64は、予め記憶されたプログラムに基づく自動制御または遠隔操作によって動作することで、給水バルブ28を自動的に開閉させるものである。電動アクチュエータ64としては、公知の電動アクチュエータを適宜用いることができる。電動アクチュエータ64の一例について簡単に説明すると、電動アクチュエータ64は、本体ケースを備え、本体ケースの天壁上面には、太陽電池パネルが取り付けられる。また、本体ケースの内部には、制御盤、アンテナ、蓄電池、モータおよびメインギア等が収容される。メインギアの軸部には、略円柱状の回転軸が挿通される。メインギアの軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝が形成され、回転軸の外周面には、キー溝と嵌合される滑りキーが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸は、メインギアが回転すると共に回転し、かつメインギアの軸部に対して軸方向に摺動可能となる。そして、この回転軸の下端部に対して、給水バルブ28の弁軸の上端部が固定的に連結される。したがって、電動アクチュエータ64の回転軸が回転すると、その回転力は、給水バルブ28の弁軸に伝達される。回転力が加えられた給水バルブ28の弁軸および弁体は、送りねじ機構によって上下動する。
【0068】
このようなシステム10では、たとえば、水位センサ66によって検出された水位が、予め設定しておいた所定の下限水位よりも低くなった場合には、電動アクチュエータ64が自動制御で給水バルブ28を開けて、用水を供給する。一方、水位センサ66によって検出された水位が、予め設定しておいた所定の上限水位よりも高くなった場合には、電動アクチュエータ64が自動制御で給水バルブ28を閉めて、用水の供給を停止する。これによって、圃場100の全体的な水位は所定範囲内に保たれる。ただし、電動アクチュエータ64の制御は、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末およびPC等のような遠隔操作端末を用いて、ユーザが遠隔操作を行うことでも実行できる。この場合、水位センサ66によって検出された水位情報は、無線LAN(たとえばWi−Fi)およびインターネット等のネットワークを介して、ユーザの所有する遠隔操作端末に送信される。
【0069】
なお、有孔管12ごとの個別の水位設定については、
図8に示す実施例においても、上述の
図2等に示す実施例と同様に、送水制御装置40および排水制御装置42の栓部材46を手動で上げ下げすることによって行われる。
【0070】
以上のように、
図8に示す実施例によれば、自動制御または遠隔操作が可能な電動の給水制御装置24を備えるので、圃場100の全体的な水位管理を自動化または遠隔操作化できる。したがって、圃場100での作業負担が低減される。
【0071】
続いて、
図9を参照して、この発明のさらに他の実施例であるシステム10について説明する。この実施例では、ICT(Information and Communication Technology)を利用して、システム10全体が自動化される点が、上述の実施例と異なる。
【0072】
図9に示す実施例では、給水バルブ28に対して電動アクチュエータ64が取り付けられると共に、送水制御装置40および排水制御装置42のそれぞれに対しても電動アクチュエータ64が取り付けられる。図示は省略するが、各制御装置40,42に対して電動アクチュエータ64を取り付ける際には、電動アクチュエータ64からの回転力によって各制御装置40,42の栓部材46を上下動させるための送りねじ機構が設けられる。たとえば、電動アクチュエータ64の回転軸の下端部には全ねじボルトが接続され、各制御装置40,42の栓部材46の柄部48には、それに螺合するナット構造が設けられる。
【0073】
また、給水側連結管14の上流側端部の立上り管に水位センサ66が設けられると共に、各有孔管12の下流側端部に設けられる水位確認用立上り管60にも、超音波センサ等の水位センサ76が設けられる。この水位センサ76は、水位確認用立上り管60の内部の水位、つまり各有孔管12の周辺領域の圃場100の水位を検出する。
【0074】
このようなシステム10では、有孔管12毎に設けられた水位センサ76によって検出された水位に基づいて、各有孔管12に対する給排水が個別に自動制御される。たとえば、或る有孔管12において、水位センサ76による検出水位が予め設定しておいた設定水位よりも低い場合には、その有孔管12に設けられる送水制御装置40が開状態にされると共に、排水制御装置42が閉状態にされる。一方、水位センサ76による検出水位が予め設定しておいた設定水位よりも高い場合には、その有孔管12に設けられる送水制御装置40が閉状態にされると共に、排水制御装置42が開状態にされる。
【0075】
なお、圃場100の全体的な水位管理については、
図8に示す実施例と同様に、給水側連結管14に設けられた水位センサ66の検出水位に基づく、給水バルブ28(給水制御装置24)の自動制御によって行われる。ただし、各制御装置24,40,42に設けた電動アクチュエータの制御は、ユーザが遠隔操作を行うことで実行してもよい。
【0076】
図9に示す実施例によれば、システム10全体が自動化される、つまり圃場100に対する水管理が全て自動化されるので、作業負担が大きく低減され、また、無駄のない水管理が可能となる。
【0077】
続いて、
図10−
図14を参照して、この発明のさらに他の実施例であるシステム10について説明する。この実施例では、送水制御装置40および排水制御装置42の構成が上述の実施例と異なっており、送水制御装置40および排水制御装置42として共に、水位設定機構を有する桝が用いられる。
【0078】
図10−
図14に示すように、この実施例では、送水制御装置40は、水位設定機構を有する分流桝であり、上端開放の有底円筒状に形成される桝本体(立上り管)80を含む。桝本体80の下端部には、略水平方向に延びる主管部82および分岐管部84が形成される。主管部82は、桝本体80の下端部を一直線上に貫く直管状に形成される。この主管部82の両端部には、受口82aが形成され、各受口82aには給水側連結管14が接続される。これにより、主管部82は給水側連結管14の一部を構成する。また、分岐管部84は、曲管状に形成され、端部に形成される受口84aが主管部82に対して90度の角度となるように、主管部82の略中央部から分岐する。分岐管部84の受口84aには、有孔管12の上流側端部が接続される。
【0079】
また、桝本体80には、上下方向に延びるガイド溝(図示せず)が形成される。このガイド溝には、分岐管部84の基端部側の開口と所定間隔で対向するように、平板状の仕切板86が着脱可能および上下動可能に取り付けられる。仕切板86は、任意の高さ位置に固定可能な状態で桝本体80に取り付けられ、また、ゴム製のパッキンを介する等して、水密状態で桝本体80の内面と当接ないし摺接する。この仕切板86が最下位置にあるときには、給水側連結管14から有孔管12への給水が堰き止められ、最下位置から引き上げられると、給水が可能となる。すなわち、仕切板86を上下動させることで、給水側連結管14から有孔管12への給水および停止が切り替えられ、また、その開き具合を調節することによりその給水量が調節される。
【0080】
また、仕切板86は、上下方向の長さが異なる複数種類のものが予め用意されており、仕切板86を取り換えることで、仕切板86が最下位置にあるときの仕切板86の上端位置が変更可能とされる。仕切板86が最下位置にある場合でも、桝本体80内の水位が仕切板86の上端位置を超えると、水は越流する。したがって、後述のように、仕切板86を取り換えてその上端位置を変更することで、桝本体80内の水位、延いては周辺領域の圃場100の水位を任意に設定することが可能となる。
【0081】
一方、排水制御装置42は、水位設定機構を有する合流桝であり、送水制御装置40と同じ構造を有する。ただし、排水制御装置42では、分岐管部84が有孔管12の下流側端部と接続される合流部として用いられる。また、主管部82の各受口82aには、排水側連結管16が接続され、主管部82は、排水側連結管16の一部を構成する。
【0082】
このようなシステム10を用いて圃場100に水を供給するときには、
図15に示すように、各送水制御装置40の仕切板86を引き上げた状態にする。また、各排水制御装置42の仕切板86は、最下位置にある状態でかつ上端が所望の設定水位(希望水位)に位置する状態にする。そしてこの状態で、給水制御装置24の給水バルブ28を開く。すると、給水路102を流れる水は、取水管30、給水桝26および給水側連結管14を介して、各有孔管12に流入し、各有孔管12の孔から圃場100の地中に供給される。有孔管12からの給水によって圃場100の水位が上昇すると、これに伴い排水制御装置42の桝本体80の分岐管部84側の内部空間の水位も上昇する。そして、その水位が排水制御装置42の仕切板86の上端位置に達すると、余剰の水は仕切板86を越流して、桝本体80の分岐管部84と反対側の内部空間から排水側連結管16に排出され、排水側連結管16を通って排水路104に排出される。これによって、圃場100の水位が所望の設定水位に保たれる。なお、降雨等によって圃場100の水位が上昇したときには、設定水位を超える余剰の水は、有孔管12内に流入し、排水制御装置42の仕切板86を超えて排水路104に排出される。このように、
図10に示す実施例では、排水制御装置42の仕切板86の上端位置を調節することで、有孔管12ごとの水位設定を容易に行うことができる。
【0083】
また、
図10に示す実施例では、送水制御装置40および排水制御装置42の桝本体80の上端開口から水位を確認でき、配管内の点検および洗浄なども可能である。このため、上述の
図2等の実施例が備える、各有孔管12の両端部の水位確認用立上り管60、および各有孔管12と排水側連結管16との合流部の点検用立上り管22については、省略される。すなわち、送水制御装置40を構成する桝本体(立上り管)80が、洗浄用立上り管および水位確認用立上り管などと兼用可能であり、排水制御装置42を構成する桝本体80が、水位確認用立上り管および点検用立上り管などと兼用可能である。
【0084】
以上のように、
図10に示す実施例によれば、上述の各実施例と同様に、有孔管12ごとに個別に水位設定できるので、大区画化された圃場100であっても、圃場100の水位を適切に管理できる。特に、
図10に示す実施例によれば、各排水制御装置42が水位設定機構を有するので、各有孔管12における水位管理を容易に行うことができる。
【0085】
なお、
図10に示す実施例では、送水制御装置40にも水位設定機構を有する桝を用いた。しかし、送水制御装置40については、少なくとも給水側連結管14から有孔管12への給水とその停止とを切り替える機能を有していればよいので、必ずしも水位設定機構を有する必要はない。
【0086】
また、
図10に示す実施例では、排水制御装置42が有する水位設定機構として、仕切板86を取り換えることで、仕切板86の上端位置を変更するものを用いたが、水位設定機構の具体的構成については、適宜変更可能である。
【0087】
たとえば、
図16に示すように、排水制御装置42が有する水位設定機構として、スライド伸縮式のものを採用することもできる。
図16に示す実施例では、排水制御装置42は、コンクリート製の排水桝90を備える。この排水桝90には、排水側連結管16に連結される曲管状の固定管92aと、固定管92aの立て管部に対してスライド可能に挿入される直管状のスライド管92bとを有する伸縮式立て管92が設けられる。そして、スライド管92bをスライドさせて、スライド管92bの上端開口の高さ位置を調整することにより、排水高さが設定されて、有孔管12ごとの水位設定が行われる。ただし、スライド伸縮式の水位設定機構としては、管の代わりに、仕切板を用いることもできる。
【0088】
また、たとえば、
図17に示すように、排水制御装置42が有する水位設定機構として、回転式のものを採用することもできる。
図17に示す実施例では、排水制御装置42は、コンクリート製の排水桝90を備え、この排水桝90には、連結部94aを支点として管軸回りに回転可能な曲管状の回転立て管94が設けられる。そして、回転立て管94を回転させて、回転立て管94の上端開口の高さ位置を調整することにより、排水高さが設定されて、有孔管12ごとの水位設定が行われる。
【0089】
さらに、たとえば、
図18に示すように、排水制御装置42が有する水位設定機構として、シャッタ式のものを採用することもできる。
図18に示す実施例では、排水制御装置42は、コンクリート製の排水桝90を備え、この排水桝90には、仕切板96が上下動可能に設けられる。この仕切板96は、たとえば矩形状の板部材同士が軟質の連結部によって連結されることで、屈曲可能となっている。また、排水桝90の側壁には、一対の略円弧状のガイド溝90aが形成されており、仕切板96の両側端部は、このガイド溝90aに対して摺動可能に嵌め込まれる。そして、仕切板96をガイド溝90aに沿って上下動させて、仕切板96の上端の高さ位置を調整することにより、排水高さが設定されて、有孔管12ごとの水位設定が行われる。
【0090】
また、図示は省略するが、各有孔管12には、田面水を給排水するための給排水部を設けることもできる。たとえば、有孔管12の上流側端部に設けられる水位確認用立上り管60を二重管構造として高さ調整可能にし、田面に近い場所に設置する。これにより、水位確認用立上り管60からの給水もしくは排水が可能となる。給水が必要な場合は、給水桝26の地上用給水口34からも田面に給水する。また、排水制御装置42を全閉状態にした上で、水位確認用立上り管60の上端開口位置を田面と同じ高さ位置にして用水を供給すれば、用水は、土中に浸透する前に水位確認用立上り管60から溢れ出て田面に供給される。一方、排水が必要な場合、特に大雨の時などは、地下浸透で排水する能力だけでは不足する場合があるが、田面に滞水した水を水位確認用立上り管60から有孔管12に導いて排出することで、速やかな排水が可能となる。
【0091】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。