【解決手段】生体内の複数の信号源を囲むように、生体表面の円周上に少なくとも2つの電極を配置する工程と、2つの電極を含む平面内における信号源の位置情報を求める工程と、2つの電極を含む平面内における各電極の位置情報、及び、信号源の位置情報から、信号源と各電極との距離rを算出する工程と、各電極とグランド電位との間、又は、各電極間に生じる電圧Vを測定する工程とを含み、距離r、電圧V、及び、体内における信号源の減衰式に基づいて、生体内の信号源の信号強度を検出する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。なお、以下の説明において、特に断らない限り、「電極」は、生体表面に取り付ける部材をいい、「電位」は、電気的レベルをいい、「電圧」は、測定された電気的レベルをいう。
【0011】
本願出願人は、少ない数の電極を用いて、生体内で活動する組織の活動部位(信号源)の位置を精度よく検出することができる方法を提案している(特許文献2)。
【0012】
本提案による生体内の信号源位置検出方法は、生体表面に、少なくとも3つの電極を配置し、各電極とグランド電位との間に、抵抗値の異なる2つの外部抵抗を並列に接続して、第1の外部抵抗に並列接続したときに各電極に生じる電圧V
i(i=1,2,3)と、第2の外部抵抗に並列接続したときに各電極に生じる電圧V’
i(i=1,2,3)を測定するものである。ここで、各電極と信号源との間の内部抵抗R
i(i=1,2,3)が、各電極と信号源との間の距離L
i(i=1,2,3)に比例するとすると、距離L
i(i=1,2,3)は、電圧比(V
i/V’
i)を変数とする3つの連立方程式で表すことができる。従って、測定した3つの電圧比(V
i/V’
i)を用いて、この3つの連立方程式を解くことによって、信号源の3次元座標(x,y,z)を求めることができる。
【0013】
しかしながら、本提案による方法では、信号源の位置を検出することはできるが、信号源の信号強度を検出することはできない。そこで、本願発明は、少ない数の電極を用いて、生体内で活動する組織の活動部位(信号源)の信号強度を検出することが可能な生体内信号強度検出方法を提案するものである。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態において、検出対象とする信号源のモデルを示した図である。
【0015】
図1に示した信号源のモデルは、腕等の骨格筋を構成する複数の筋繊維40で、各筋繊維40は、図中の矢印の向きに沿って線状に存在する。そして、骨格筋が活動(収縮)すると、特定の筋繊維40が信号源Vsとなり、高い電位を発生する。この信号源Vsとなる筋繊維40の活動部位は、筋繊維40の向きに沿って線状に存在するため、信号源Vsの電位分布は一様となる。従って、
図1に示すように、信号源Vsの検出範囲を、A−A線に沿った断面内に限定すれば、線状の信号源Vsを、二次元座標(x,y)の点として捉えることができる。
【0016】
図2は、本実施形態における生体内信号源の信号強度を検出する方法を模式的に説明した図である。
【0017】
図2に示すように、2つの電極21、22を、複数の筋繊維(線状の信号源)40を囲むように、生体10の表面の円周10A上に配置する。また、生体10の表面には、電極21、22で測定する電圧の影響を受けない位置にグランド電極(不図示)も配置される。
【0018】
ところで、生体内の信号源Vsの信号強度V
0は、信号源Vsから離れるに従い減衰する。従って、生体10の表面10Aに配置された各電極21、22で測定される信号強度(電圧V
i)は、信号源Vsから各電極21、22までの距離をr
iとすると、以下の式(1−1)(減衰式)で表される。
【0021】
すなわち、
図2に示した2つの電極21、22で測定される電圧V
1、V
2は、以下の式(1−2)で表される。
【0023】
式(1−2)からV
0を消去すると、以下の式(1−3)が導出される。
【0025】
従って、式(1−3)から、減衰件数ηは、以下の式(1−4)から求めることができる。
【0027】
また、式(1−2)から、信号源Vsの信号強度V
0は、以下の式(1−5)から求めることができる。
【0029】
式(1−4)に示すように、減衰係数ηは、各電極21、22で測定された電圧V
1、V
2、及び、信号源Vsから各電極21、22までの距離r
1、r
2を用いて求めることができる。
【0030】
ここで、信号源Vsの位置情報(x、y)は、後述する方法により検出することができる。従って、2つの電極21、22を含む平面内における各電極の位置情報(X
i,Y
i)(i=1,2)と、信号源Vsの位置情報(x、y)から、信号源Vsと各電極21、22との距離r
i(i=1,2)を算出することができる。
【0031】
これにより、式(1−5)に示すように、信号源Vsの信号強度V
0は、式(1−4)により求めたηと、電極21若しくは電極22で測定された電圧V
1、V
2、及び信号源Vsと電極21若しくは電極22との距離r
1、r
2を用いて求めることができる。
【0032】
すなわち、本実施形態における生体内信号強度検出方法は、複数の信号源を囲むように、生体表面の円周上に、2つの電極21、22を配置する工程と、2つの電極21、22を含む平面内における信号源Vsの位置情報(x,y)を求める工程と、2つの電極21、22を含む平面内における各電極の位置情報(X
i,Y
i)(i=1,2)、及び、信号源Vsの位置情報(x,y)から、信号源Vsと各電極21、22との距離r
i(i=1,2)を算出する工程と、各電極21、22とグランド電位との間に生じる電圧V
i(i=1,2)を測定する工程とを含み、距離r
i(i=1,2)、電圧V
i(i=1,2)、及び、体内における信号源の減衰式に基づいて、生体内の信号源の信号強度を検出するものである。
【0033】
本実施形態によれば、信号源Vsの位置情報(x,y)、信号源Vsを囲むように、生体表面の円周上に配置した2つの電極21、22の位置情報(X
i,Y
i)(i=1,2)、及び各電極21、22で測定された電圧V
i(i=1,2)を用いて、式(1−1)で示した体内における信号源Vsの減衰式に基づいて、生体内の信号源Vsの信号強度V
0を検出することができる。これにより、少ない数の電極を用いて、生体内で活動する組織の活動部位(信号源)の信号強度を検出することが可能となる。
【0034】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態における生体内信号源の信号強度を検出する方法を説明した図である。
【0035】
図3に示すように、3つの電極21、22、23を、複数の筋繊維(線状の信号源)40を囲むように、生体10の表面の円周10A上に配置する。また、生体10の表面には、電極21、22、23で測定する電圧の影響を受けない位置にグランド電極(不図示)も配置される。
【0036】
図3に示した電極21と電極22との間で生じる電圧V
1は、式(1−1)で示した減衰式に基づいて、以下の式(2−1)のように表される。
【0038】
ここで、V
0は、生体内の信号源Vsの信号強度、r
1、r
2は、信号源Vsから電極21、22までの距離、ηは、式(1−1)で示した減衰式の減衰係数である。
【0039】
式(2−1)から、生体内の信号源Vsの信号強度V
0は、以下の式(2−2)で表される。
【0041】
同様に、電極22と電極23との間で生じる電圧V
2は、式(1−1)で示した減衰式に基づいて、以下の式(2−3)のように表される。
【0043】
ここで、r
3は、信号源Vsから電極23までの距離である。
【0044】
式(2−3)から、生体内の信号源Vsの信号強度V
0は、以下の式(2−4)で表される。
【0046】
式(2−2)、(2−4)からV
0を消去すると、以下の式(2−5)が導出される。
【0048】
さらに、式(2−5)から、減衰係数ηは、以下の式(2−6)で表される。
【0050】
ここで、式(2−6)の右辺を、以下の式(2−7)のように定数Aで置き換えると、式(2−6)は、以下の式(2−8)のように表される。
【0053】
従って、式(2−8)から、減衰係数ηは、以下の式(2−9)から求めることができる。
【0055】
また、式(2−2)から、信号源Vsの信号強度V
0は、以下の式(2−10)から求めることができる。
【0057】
式(2−9)及び式(2−7)から、減衰係数ηは、各電極間に生じるV
1、V
2、及び、信号源Vsから各電極までの距離r
1、r
2、r
3を用いて求めることができる。
【0058】
ここで、信号源Vsの位置情報(x、y)は、後述する方法により検出することができる。従って、3つの電極21、22、23を含む平面内における各電極の位置情報(X
i,Y
i)(i=1,2,3)と、信号源Vsの位置情報(x、y)から、信号源Vsと各電極21、22、23との距離r
i(i=1,2,3)を算出することができる。
【0059】
これにより、式(2−10)から、信号源Vsの信号強度V
0は、式(2−9)により求めたηと、各電極間に生じた電圧V
1、V
2、及び信号源Vsと各電極までの距離r
1、r
2、r
3を用いて求めることができる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、信号源Vsの位置情報(x,y)、信号源Vsを囲むように、生体表面の円周上に配置した3つの電極21、22、23の位置情報(X
i,Y
i)(i=1,2,3)、及び各電極間に生じた電圧V
i(i=1,2)を用いて、式(1−1)で示した体内における信号源Vsの減衰式に基づいて、生体内の信号源Vsの信号強度V
0を検出することができる。これにより、少ない数の電極を用いて、生体内で活動する組織の活動部位(信号源)の信号強度を検出することが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、式(2−1)及び式(2−3)に示したように、各電極間に生じた電圧V
1、V
2を、各電極で測定した電圧の差分により求めているため、外部からのノイズをキャンセルすることができる。そのため、電極間に生じた電圧V
iを、ノイズの影響を少なくして測定できるため、信号源Vsの信号強度をより精度良く検出することができる。
【0062】
(信号源の位置検出方法)
図4〜
図7を参照しながら、本実施形態における信号源Vsの信号強度検出方法に用いる信号源の位置検出方法について説明する。
【0063】
図4は、生体内の信号源Vsの位置を検出する方法を説明する電気回路網を示した図である。
【0064】
図4に示すように、生体10の表面に、3つの電極21、22、23を配置する。また、各電極21、22、23とグランド電位との間に、相互に切り替え可能な第1の外部抵抗及び第2の外部抵抗を並列接続する。ここでは、第1の外部抵抗の抵抗値を無限大とし、第2の外部抵抗の抵抗値をRgとしている。これにより、各電極21、22、23とグランド電位との間は、切り替え手段SWによって、外部抵抗Rgが接続されていない場合と、外部抵抗Rgが接続されている場合とに切り替えられる。なお、生体10の表面に、電極21、22、23で測定する電圧の影響を受けない位置にグランド電極20を配置し、これをグランド電位にしているが、必ずしも、生体10の表面に、グランド電極20を配置する必要はない。
【0065】
生体10の表面に配置した各電極21、22、23には、生体10内の信号源Vsからの電圧が発生し、その電圧をアンプ30で増幅して、出力電圧Voutが出力される。各電極21、22、23とアンプ30との間には、スイッチS
1、S
2、S
3がそれぞれ配置され、各スイッチS
1、S
2、S
3を順次、導通させることにより、各電極21、22、23に生じた電圧が、アンプ30の出力電圧Voutとして測定される。
【0066】
図5に示すように、切り替え手段SW、及びスイッチS
1、S
2、S
3を、それぞれ切り替える(ステップ1〜ステップ6)。これにより、各電極21、22、23とグランド電位との間に、外部抵抗が接続されていないときに各電極21、22、23に生じる第1の電圧V
1、V
2、V
3、及び各電極21、22、23とグランド電位との間に、外部抵抗Rgが接続されているときに各電極21、22、23に生じる第2の電圧V’
1、V’
2、V’
3が測定される。なお、
図5では、各電極21、22、23を、それぞれ、チャネルch
1、ch
2、ch
3と表示している。
【0067】
図6は、複数の筋繊維40を囲むように、生体10の表面の円周10A上に、3つの電極21、22、23を配置した図で、信号源Vsと各電極21、22、23との間の内部抵抗を、それぞれ、R
b1、R
b2、R
b3と表している。
【0068】
このとき、
図5に示したステップ1において、電極21(チャネルch
1)で生じる第1の電圧(外部抵抗が接続されていない場合)V
1は、式(3−1)で与えられる。
【0070】
一方、ステップ4において、電極21(チャネルch
1)で生じる第2の電圧(外部抵抗Rgが接続されている場合)V’
1は、アンプ30の入力抵抗R
inが非常に大きいとき、式(3−2)で与えられる。
【0072】
ここで、R
b0は、信号源Vsとグランド電極20との間の内部抵抗を表す。
【0073】
式(3−1)及び式(3−2)から、電極21(チャネルch
1)において、外部抵抗Rgが接続されていない場合の第1の電圧V
1と、外部抵抗Rgが接続されている場合の第2の電圧V’
1との比V’
1/V
1(減衰比)は、式(3−3)で与えられる。
【0075】
同様に、電極22(チャネルch
2)において、外部抵抗Rgが接続されていない場合の第1の電圧V
2と、外部抵抗Rgが接続されている場合の第2の電圧V’
2との比V’
2/V
2(減衰比)、及び、電極23(チャネルch
3)において、外部抵抗Rgが接続されていない場合の第1の電圧V
3と、外部抵抗Rgが接続されている場合の第2の電圧V’
3との比V’
3/V
3(減衰比)は、それぞれ、式(3−4)、式(3−5)で与えられる。
【0078】
ところで、生体10内の導電率が一様であると仮定すると、内部抵抗の抵抗値R
b1、R
b2、R
b3は、それぞれ、生体10内の信号源Vsと、各電極21、22、23との距離に比例すると考えられる。従って、式(3−3)、(3−4)、(3−5)から、生体10内の信号源Vsと、各電極21、22、23との距離L
1、L
2、L
3は、それぞれ、式(3−6)、(3−7)、(3−8)で表される。
【0082】
ここで、βは、内部抵抗R
biと距離L
i(i=1、2、3)との比例定数で、生体10の導電率等で定まる。
【0083】
式(3−6)、(3−7)、(3−8)に示すように、距離L
1、L
2、L
3は、それぞれ、減衰比(V’
1/V
1、V’
2/V
2、V’
3/V
3)の逆数の関数として表される。そして、
図7に示すように、信号源Vsは、各電極21、22、23を中心とする半径L
1、L
2、L
3の円Q
1、Q
2、Q
3の交点に存在すると考えられる。各電極21、22、23の位置座標を、(a
1、b
1)、(a
2、b
2)、(a
3、b
3)とすると、円Q
1、Q
2、Q
3は、それぞれ、以下の式(3−9)、(3−10)、(3−11)で表される。
【0087】
従って、式(3−6)、(3−7)、(3−8)で求めたL
1、L
2、L
3を用いて、上記の式(3−9)、(3−10)、(3−11)は、以下の式(3−12)で表される3つの連立方程式になる。
【0089】
ここで、式(3−12)で表される3つの連立方程式の未知数は、信号源Vsの二次元座標(x、y)と、定数β、R
b0の4つになる。従って、R
b0を予め与えることによって、3つの連立方程式を解くことにより、信号源Vsの二次元座標(x、y)と、定数βを求めることができる。
【0090】
このように、生体10の表面に配置した3つの電極21、22、23と、グランド電位との間に外部抵抗を並列接続し、その接続状態を切り替えて、各電極21、22、23に生じる電圧の比(減衰比)を測定することによって、生体10内の信号源Vsの2次元位置(x、y)を容易に検出することができる。これにより、少ない数の電極を用いて、生体内の信号源Vsの2次元位置を精度よく検出することができる。
【0091】
また、内部抵抗R
biと距離L
i(i=1、2、3)との比例定数βを、上記の連立方程式を解くことによって求めることができる。そのため、比例定数βが、体内の組成に影響を受けて変動したり、あるいは、検出中に値が変化したりしても、生体内の信号源Vsの2次元位置を、より精度よく検出することができる。
【0092】
なお、生体10内の信号源Vsは1つと仮定して説明したが、実際には、複数の信号源が同時に発生する場合もある。このような場合でも、これら信号源の電気信号の最も支配的な1点を信号源として求めることができる。
【0093】
また、
図5に示したように、切り替え手段SW、及びスイッチS1、S2、S3を切り替えて、各電極21、22、23における第1の電圧V
1、V
2、V
3、及び第2の電圧V’
1、V’
2、V’
3を順次測定している。従って、これらの切り替え時間内に、信号電Vsの電位が変化すると、信号源Vsの位置測定に誤差が生じるおそれがある。そのため、各電極及び外部抵抗の切り替えは、できるだけ高速で行うことが好ましい。例えば、1μs以下、望ましくは0.1μs以下で切り替えることが好ましい。
【0094】
なお、上記の説明では、第1の外部抵抗の抵抗値を無限大(非導通)とし、第2の外部抵抗の抵抗値をRgとしたが、第1の外部抵抗を、第2の外部抵抗と異なる大きさの抵抗値にしてもよい。
【0095】
この場合、生体10の表面の円周上に3つの電極21、22、23を配置するとともに、各電極21、22、23とグランド電位との間に、相互に切り替え可能な第1の外部抵抗及び第2の外部抵抗を並列接続する。そして、各電極21、22、23とグランド電位との間に、第1の外部抵抗を並列接続したときに各電極21、22、23に生じる第1の電圧V
i(i=1,2,3)、及び各電極21、22、23とグランド電位との間に、第2の外部抵抗を並列接続したときに各電極21、22、23に生じる第2の電圧V’
i(i=1,2,3)を測定する。そして、第1の電圧V
i及び第2の電圧V’
iから比V
1/V’
i(i=1,2,3)を算出し、これら3つの比V
i/V’
i(i=1,2,3)に基づいて、生体内の信号源Vsの位置を検出すればよい。
【0096】
次に、
図8〜
図10を参照しながら、本実施形態における信号源Vsの信号強度検出方法に用いる他の信号源位置検出方法について説明する。
【0097】
図8は、生体内の信号源Vsの位置を検出する方法を説明する電気回路網を示した図である。
【0098】
図8に示すように、生体10の表面に、3つの電極21、22、23を配置する。具体的には、
図6に示したように、3つの電極21、22、23を、複数の筋繊維40を囲むように、生体10の表面の円周10A上に配置する。また、第1の電極21と第2の電極22との間、第2の電極22と第3の電極23との間、及び第3の電極23と第1の電極21との間に、それぞれ、相互に切り替え可能な第1の外部抵抗及び第2の外部抵抗を並列接続する。なお、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、第1の外部抵抗の抵抗値を無限大とし、第2の外部抵抗の抵抗値をRgとする。また、生体10の表面に、電極21、22、23で測定する電圧の影響を受けない位置にグランド電極20を配置し、これをグランド電位にしている。
【0099】
図8に示すように、各電極21、22、23と差動アンプ30との間に、スイッチS
1、S
2、S
3、及びSS
1、SS
2、SS
3が配置されている。そして、各スイッチS
1、S
2、S
3、及びSS
1、SS
2、SS
3を、
図9に示すように、順次、導通させることによって、第1の電極21と第2の電極22との間、第2の電極22と第3の電極23との間、及び第3の電極23と第1の電極21との間に生じた電圧が、差動アンプ30の出力電圧Voutとして測定される。また、各電極間は、切り替え手段SWによって、外部抵抗が接続されていない場合と、外部抵抗Rgが接続されている場合とに切り替えられる。これにより、
図9に示すように、切り替え手段SW、及び各スイッチS
1、S
2、S
3、SS
1、SS
2、SS
3を、それぞれ切り替えることによって(ステップ1〜ステップ6)、各電極間に外部抵抗Rgが接続されていないときに各電極間に生じる第1の電圧V
12、V
23、V
31、及び各電極間に外部抵抗Rgが接続されているときに各電極間に生じる第2の電圧V’
12、V’
23、V’
31)が測定される。なお、
図8には、各電極21、22、23を、それぞれ、チャネルch
1、ch
2、ch
3と表示している。
【0100】
図9に示したステップ1において、電極21と電極22との間(チャネルch
1とch
2との間)で生じる第1の電圧(外部抵抗が接続されていない場合)V
12は、式(4−1)で与えられる。
【0102】
一方、ステップ4において、電極21と電極22との間(チャネルch
1とch
2との間)で生じる第2の電圧(外部抵抗Rgが接続されている場合)V’
12は、アンプ30の入力抵抗R
inが非常に大きいとき、式(4−2)で与えられる。
【0104】
ここで、R
b1及びR
b2は、それぞれ、生体10内の信号源Vsと電極21(チャネルch
1)の間の内部抵抗、及び信号源Vsと電極22(チャネルch
2)の間の内部抵抗を表す。
【0105】
式(4−1)及び式(4−2)から、電極21と電極22との間(チャネルch
1とch
2との間)で生じる第1の電圧V
12と第2の電圧V’
12の比V’
12/V
12(減衰比)は、式(4−3)で与えられる。
【0107】
同様に、電極22と電極23との間(チャネルch
2とch
3との間)で生じる第1の電圧V
23と第2の電圧V’
23の比V’
23/V
23(減衰比)、及び、電極23と電極21との間(チャネルch
3とch
1との間)で生じる第1の電圧V
31と第2の電圧V’
31の比V’
31/V
31(減衰比)は、それぞれ、式(4−4)、(4−5)で与えられる。
【0110】
ここで、R
b3は、生体10内の信号源Vsと電極23(ch
3)との間の内部抵抗の抵抗値を表す。
【0111】
各電極間に生じる電圧の測定において、生体10内の内部抵抗は、各電極と信号源との間の内部抵抗の和で表される。例えば、電極21と電極22との間(チャネルch
1とch
2との間)で生じる第1の電圧V
12及び第2の電圧V’
12の測定において、生体10内の内部抵抗は、R
b1+R
b2で表される。
【0112】
ここで、生体10内の導電率が一様であると仮定すると、内部抵抗の和(R
b1+R
b2)は、電極21と信号源Vsとの距離D
1と、電極22と信号源Vsとの距離D
2との和(D
1+D
2)に比例すると考えられる。従って、式(2−3)、(2−4)、(2−5)から、各電極と信号源Vsとの距離の和(D
1+D
2)、(D
2+D
3)、(D
3+D
1)は、それぞれ、式(4−6)、(4−7)、(4−8)で表される。
【0116】
ここで、αは、内部抵抗R
biと距離D
i(i=1、2、3)との比例定数で、生体10の導電率等で定まる。
【0117】
式(4−6)、(4−7)、(4−8)に示すように、各電極と信号源Vsとの距離の和(D
1+D
2)、(D
2+D
3)、(D
3+D
1)は、それぞれ、減衰比(V’
12/V
12)、(V’
23/V
23)、(V’
31/V
31)の逆数の関数として表される。そして、
図10に示すように、信号源Vsは、電極21、22(チャネルch
1、ch
2)を焦点とする楕円E
1、電極22、23(チャネルch
2、ch
3)を焦点とする楕円E
2、及び電極23、21(チャネルch
3、ch
1)を焦点とする楕円E
3の交点に存在すると考えられる。
【0118】
各電極21、22、23の位置座標を、(a
1、b
1)、(a
2、b
2)、(a
3、b
3)とすると、楕円E
1、E
2、E
3は、それぞれ、以下の式(4−9)、(4−10)、(42−11)で表される。
【0122】
従って、式(4−6)、(4−7)、(4−8)で求めた(D
1+D
2)、(D
2+D
3)、(D
3+D
1)を用いて、以下の式(4−12)で表される3つの連立方程式を解くことによって、信号源Vsの二次元座標(x、y)を求めることができる。
【0124】
式(4−12)には、信号源Vsとグランド電極20との間の内部抵抗R
b0が式中に入っていない。また、式(4−12)で表される3つの連立方程式の未知数は、信号源Vsの二次元座標(x、y)と、定数αの3つになる。従って、式(4−12)で表される3つの連立方程式を解くことによって、信号源Vsの二次元座標(x、y)と、定数αを求めることができる。
【0125】
上記の方法によれば、信号源Vsの二次元座標(x、y)を求める際に、2つの定数、すなわち、内部抵抗R
biと距離L
i(i=1、2、3)との比例定数α、及び、信号源Vsとグランド電極20との間の内部抵抗R
b0を、予め求めておく必要がなく、簡便に、生体内の信号源Vsの二次元座標を求めることができる。
【0126】
(生体内信号強度検出装置)
図11は、本発明の他の実施形態における生体内信号強度検出装置の構成を示すブロック図で、生体表面に配置される電極に生じる電圧によって、生体内の信号源の信号強度を検出する装置である。なお、本実施形態で対象とする生体内の信号源は、複数の筋繊維からなる線状の信号源である。
【0127】
図11に示すように、本実施形態における生体内信号強度検出装置100は、少なくとも2つの電極が連結された電極ユニット110を備え、かかる電極ユニット110は、図
図2に示したように、複数の筋繊維(線状の信号源)40を囲むように、生体10の表面の円周10A上に配置される。
【0128】
生体内信号強度検出装置100は、さらに、信号源Vsの位置情報(x,y)を検出する手段120と、各電極とグランド電位との間、又は、各電極間に生じる電圧V
i(i=1,2)を測定する手段130と、信号源Vsと各電極との距離r
i(i=1,2)を算出する手段140と、信号源Vsの信号強度を検出する手段150とを備えている。
【0129】
信号強度検出手段150では、電圧測定手段130で測定された電圧V
i(i=1,2)、距離算出手段140で算出された距離r
i(i=1,2)、及び式(1−1)で示した生体内における信号源の減衰式に基づいて、信号源Vsの信号強度を検出する。
【0130】
ここで、信号強度の検出は、上記の第1の実施形態または第2の実施形態において説明した生体内信号強度検出方法を用いて検出することができる。
【0131】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、体内における信号源の減衰式に、式(1−1)を用いたが、必ずしもこれに限定されない。
【0132】
また、上記実施形態では、信号源の信号強度の検出を、複数の信号源を囲むように、少なくとも2つ以上の電極を配置して行ったが、さらに一つ以上の電極を配置して、信号源の位置検出を行ってもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、信号源Vsの位置情報(x、y)の検出を、
図4〜
図7、若しくは、
図8〜
図10を参照しながら説明した方法、すなわち、複数の信号源を囲むように、少なくとも3つ以上の電極を配置し、各電極とグランド電位との間に、抵抗値の異なる2つの外部抵抗を並列に接続して、それぞれの外部抵抗に並列接続したときに各電極に生じる電圧V
k(k=1,2,3)及び電圧V’
k(k=1,2,3)を測定し、電圧比V
k/V’
k(k=1,2,3)に基づいて行う方法を説明したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、生体表面に多数の電極を格子状に配置し、各電極で測定した表面電位と、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)や、CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)等で得られた生体の画像データに基づいて、体内の電位分布を解析することによって、生体内の信号源の位置情報を求める方法を用いてもよい。