(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-149957(P2018-149957A)
(43)【公開日】2018年9月27日
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/32 20060101AFI20180831BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20180831BHJP
B60K 17/356 20060101ALN20180831BHJP
B60K 17/14 20060101ALN20180831BHJP
【FI】
B60K17/32 Z
H02K7/116
B60K17/356 B
B60K17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-48437(P2017-48437)
(22)【出願日】2017年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 謙次
【テーマコード(参考)】
3D042
3D043
5H607
【Fターム(参考)】
3D042AA09
3D042AB01
3D042AB17
3D042DB04
3D042DB08
3D043AA09
3D043AB01
3D043AB17
3D043CA04
3D043CA07
3D043CA16
3D043EA05
3D043EB07
3D043EC02
3D043ED06
5H607AA05
5H607AA06
5H607BB01
5H607BB05
5H607CC03
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】車輪の前方に配置されるケース部材と、前端がケース部材に支持され、車輪の回転中心に指向して車輪を駆動する出力軸と、を備えた動力伝達装置において、車輪の撒き上げる小石や泥水等からの影響の低減を図る。
【解決手段】後輪71の前方に配置されるケース部材24と、前端がケース部材24に支持され、後輪71の回転中心に指向して後輪71を駆動する第1出力軸17と、を備えた動力伝達装置であって、ケース部材24と第1出力軸17の前端周りとの間を覆うカバー60を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の前方に配置されるケース部材と、
前端が前記ケース部材に支持され、前記車輪の回転中心に指向して前記車輪を駆動する出力軸と、
を備えた動力伝達装置であって、
前記ケース部材と前記出力軸の前端周りとの間を覆うカバーを備えることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記出力軸と同軸に配された円筒部材からなり、その後端には前記出力軸が挿通する小径開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記ケース部材にバンドで固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記ケース部材にねじで固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記カバーの下部に水抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記出力軸の前端には、前記ケース部材との間にシール部材が介設されるとともに前記出力軸との間にブーツ部材が介設された等速ジョイントが取り付けられ、
前記カバーは、前記等速ジョイントと前記シール部材と前記ブーツ部材とを覆うように形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記ケース部材は、軸受を介して前記等速ジョイントの外輪部材を支承する軸受ホルダーを備え、
前記シール部材は、前記軸受ホルダーに形成されたシール保持部と前記外輪部材との間に介設され、
前記カバーの前端が前記シール保持部に外嵌する構成としたことを特徴とする請求項6に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪駆動をベースにした四輪駆動自動車では、従来は車両前方に配置された変速装置から動力を取り出し、プロペラシャフトを介して車両後方に配置された終減速装置に動力を伝達し、ドライブシャフトにより左右の車輪を駆動するものが主流であった。
【0003】
近年では、車両の軽量化と低燃費化、客室の拡大等を目的に後輪を駆動する方式として、車両後方に配置されたモータと、モータに接続された減速装置とを用いたものが知られている。例えば特許文献1には、後輪の内側で且つ前方にそれぞれモータと減速装置を配置し、ギヤにより減速して後輪を駆動する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−223908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記減速装置を、モータ側に配置した一対の傘歯車からなる第1減速装置と、後輪側に配置した一対の傘歯車からなる第2減速装置とに分割して構成し、第1減速装置と第2減速装置との間をシャフト(出力軸)で接続する構成によれば、減速装置のケースに対するサスペンションの捩じれの影響を回避できる。
【0006】
一方で、この構成では、第1減速装置の出力部周り、すなわち前記出力軸の前端周りに向けて、後輪の撒き上げた小石(チッピング)や泥水が飛び、出力軸の前端周りに配置したシール部材を直撃したり、該シール部材の摺接部に泥水が掛かることにより錆が発生するおそれがある。また、出力軸の前端に、外輪部材と出力軸との開口を塞ぐブーツ部材を有する等速ジョイントを設けた場合、チッピングがブーツ部材を直撃し、ブーツ部材が破損するおそれがある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、車輪の前方に配置されるケース部材と、前端がケース部材に支持され、車輪の回転中心に指向して車輪を駆動する出力軸と、を備えた動力伝達装置において、車輪の撒き上げる小石や泥水等からの影響の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、車輪の前方に配置されるケース部材と、前端が前記ケース部材に支持され、前記車輪の回転中心に指向して前記車輪を駆動する出力軸と、を備えた動力伝達装置であって、前記ケース部材と前記出力軸の前端周りとの間を覆うカバーを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車輪の前方に位置するケース部材と出力軸の前端周りとの間を覆うカバーを備えることにより、車輪の撒き上げるチッピングや泥水が、ケース部材と出力軸とのシール部に直撃することを低減できる。
【0010】
また、本発明は、前記カバーは、前記出力軸と同軸に配された円筒部材からなり、その後端には前記出力軸が挿通する小径開口部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、カバーのコンパクト化とカバーの取付構造の簡略化を図れる。
【0012】
また、本発明は、前記カバーは、前記ケース部材にバンドで固定されていることを特徴とする。或いは、前記カバーは、前記ケース部材にねじで固定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、カバーの組付工程の簡略化を図れる。
【0014】
また、本発明は、前記カバーの下部に水抜き孔が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、仮にカバーの内部に泥水が浸入したとしても、水抜き孔を設けることにより、外部に容易に排水できる。
【0016】
また、本発明は、前記出力軸の前端には、前記ケース部材との間にシール部材が介設されるとともに前記出力軸との間にブーツ部材が介設された等速ジョイントが取り付けられ、前記カバーは、前記等速ジョイントと前記シール部材と前記ブーツ部材とを覆うように形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、車輪の撒き上げるチッピングや泥水がシール部材やブーツ部材に直撃することをカバーにより阻止できる。これにより、シール部材の摺接部に泥水が掛かることにより錆が発生する問題やブーツ部材の破損の問題が抑制される。
【0018】
また、本発明は、前記ケース部材は、軸受を介して前記等速ジョイントの外輪部材を支承する軸受ホルダーを備え、前記シール部材は、前記軸受ホルダーに形成されたシール保持部と前記外輪部材との間に介設され、前記カバーの前端が前記シール保持部に外嵌する構成としたことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、シール部材の保持機能を有するシール保持部を利用して、カバーを容易に軸受ホルダーに組み付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る動力伝達装置によれば、車輪の撒き上げる小石や泥水等からの影響の低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】第1実施形態に係るカバーを備えた動力伝達装置の平断面図である。
【
図4】第2実施形態に係るカバーを後方から見た正面図である。
【
図5】第2実施形態に係るカバーの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、モータの駆動力を車輪に伝達する動力伝達装置に適用した形態について説明する。
図1において、動力伝達装置1は、モータ3の動力を後輪71に伝達するギヤ伝達機構4を備えて構成されている。以下、車両左側の後輪71を駆動する動力伝達装置1について説明するが、車両右側の後輪71を駆動する動力伝達装置1についてもレイアウトが左右対称となっている以外は同じ構成である。
【0023】
「トレーリングアーム2」
図1、
図2において、トレーリングアーム2は、略車両前後方向に延びるように配設されており、前側には、ゴムブッシュ5を介して図示しない車体に連結する車体側取付部6が形成され、後側には、後輪71を支持する車輪側支持部7が形成されている。車体側取付部6は、両端が開口し略水平方向を筒軸方向とした円筒形状のカラー部材からなる。車体側取付部6の内部には円柱状のゴムブッシュ5が圧入等により取り付けられており、図示しないボルト等を介して車体に連結されている。トレーリングアーム2は、ゴムブッシュ5の軸心O4を揺動軸として上下に揺動する。左右のトレーリングアーム2は、車幅方向に延びるトーションビーム9で連結されている。トレーリングアーム2とトーションビーム9との間には、図示しないサスペンションスプリングを載置するためのスプリングシート10が掛け渡されている。
【0024】
車体側取付部6の下部には、下方に延び、後記する第1減速装置15を取り付けるための減速装置取付ブラケット11が一体に形成されている。また、トレーリングアーム2の後部には、後記する第2減速装置16を取り付けるための鉛直板状の減速装置取付部8が形成されている。減速装置取付部8の車外側には、後輪71を取り付けるハブ12やブレーキ装置13を取り付けるための前記した車輪側支持部7が取り付けられている。
【0025】
「モータ3」
モータ3は、例えば三相交流モータであり、インバータ(図示せず)を介してバッテリに接続されている。モータ3は、その車幅方向外側面が第1減速装置15の車幅方向内側面にあてがわれて、車幅方向内側からボルト56により締結固定される。なお、
図3にも示すように、減速装置取付ブラケット11にはボルト57でカラー58が締結固定され、モータ3はこのカラー58に対してもボルト59で締結固定されている。
【0026】
以上のように、本実施形態では、モータ3は、第1減速装置15を介して減速装置取付ブラケット11に取り付けられている。モータ3は、略円柱形状を呈しており、車幅方向を長手として配される。モータ3は、
図2から判るように、車幅方向視して、車両上下方向に関し、ゴムブッシュ5と重なる位置に配置されている。この場合の「重なる位置」とは、車両上下方向に関して、モータ3がゴムブッシュ5の少なくとも一部と重なる位置である。
【0027】
「ギヤ伝達機構4」
図3において、ギヤ伝達機構4は、トレーリングアーム2に剛体的に取り付けられる減速装置を備えている。当該減速装置は、モータ3の回転軸22周りの第1ギヤ部23を有する第1減速装置15と、後輪71の回転軸50周りの第2ギヤ部45を有する第2減速装置16と、第1減速装置15からの動力を第2減速装置16に伝達する第1出力軸17および第2出力軸18と、を備えて構成されている。
【0028】
「第1減速装置15」
第1減速装置15は、後輪71よりも車幅方向内側の前方に配置され、第1ギヤ部23を内蔵するケース部材24を有している。ケース部材24は、その車幅方向外側面が減速装置取付ブラケット11の車幅方向内側面にあてがわれて、車幅方向外側から複数のボルト19により締結固定される。ケース部材24は、後端が開口形成されており、車幅方向内側寄りには回転軸22を通す貫通孔25が形成されている。第1ギヤ部23は、モータ3の出力軸に一体回転可能に連結され、車幅方向に沿う軸心O1回りに回転する回転軸22と、回転軸22の左端に形成された第1傘歯車26と、第1傘歯車26に略直交して噛合する第2傘歯車27と、第2傘歯車27を支持し、若干後上がりに略車両前後方向に沿う軸心O2回りに回転する支軸28と、を備えている。
【0029】
回転軸22は、軸受29を介して貫通孔25に支持されている。回転軸22とケース部材24との間にはシール部材30が介設される。支軸28は、前端が軸受31を介してケース部材24に支持され、後端が軸受32を介して軸受ホルダー33に支持されている。
【0030】
軸受ホルダー33は、ケース部材24の開口部周りの後端面にあてがわれてボルト20により締付け固定されるフランジ部33Aと、フランジ部33Aの内側から前方に延び、ケース部材24の開口部に内嵌して軸受32を保持する軸受保持部33Bと、フランジ部33Aから後方に延び、後記するシール部材41を内嵌するシール保持部33Cと、を有する形状からなる。軸受ホルダー33は、前記したようにボルト20でケース部材24に一体に取り付けられる部材であり、本発明においては、軸受ホルダー33はケース部材24の一部を構成する。
【0031】
ギヤ伝達機構4は、トレーリングアーム2の変形に伴って生じる第1ギヤボックス24と第2ギヤボックス49との間の捩れを吸収する屈曲機構として等速ジョイント34を備えている。等速ジョイント34は、支軸28の後端側にスプライン結合等により一体回転可能に連結される連結軸部35と、連結軸部35の後端に形成され、軸心O2に沿う転動溝36が内周面に複数形成された外輪部材37と、第1出力軸17の前端に外嵌固定される内輪部材38と、内輪部材38の外周面側に複数形成された転動溝39と、転動溝36と転動溝39との間で転動する複数のボール40と、を備えている。
【0032】
軸受ホルダー33のシール保持部33Cと外輪部材37との間にはシール部材41が介設されている。シール部材41は、外部から軸受32へ水や塵等が浸入することと、内部に貯溜された潤滑油が流出することを防ぐ。また、外輪部材37の後端には、ブーツアダプタ42が外嵌固定されており、ブーツアダプタ42の後端には、ゴム製のブーツ部材43の一端が固定されている。ブーツ部材43の他端は、ブーツバンド44により、第1出力軸17の外周面に締着されている。ブーツ部材43は、外輪部材37内に封入されたグリースの流出を防ぐとともに、外部から外輪部材37内への水や塵等の浸入を防ぐ。
【0033】
等速ジョイント34は以上の構成からなり、ボール40が転動溝36と転動溝39との間で転動することで、第1出力軸17は外輪部材37に対して角度がついた状態での軸心O2方向の相対移動が可能となる。これにより、例えば後輪71に横力が加わってトレーリングアーム2に捩れが生じて、第1減速装置15と第2減速装置16との間に捩れが生じた場合であっても、等速ジョイント34で捩れを吸収しつつ回転変動を生じることなく動力を後輪71側に伝達できる。
【0034】
「第1出力軸17および第2出力軸18」
第1減速装置15から軸心O2に沿って後方に延びる第1出力軸17と、第2減速装置16から軸心O2に沿って前方に延びる第2出力軸18とは、スプライン結合等により一体回転するように連結されている。なお、第1出力軸17は、トレーリングアーム2の前部の下方に位置しており、第2出力軸18は、途中でトレーリングアーム2に形成した貫通孔(図示せず)を通ってトレーリングアーム2よりも車幅方向内側寄りに位置するように延びている。
【0035】
「第2減速装置16」
第2減速装置16は、車幅方向外側から図示しない複数のボルトによりトレーリングアーム2の減速装置取付部8に締結固定され、第2ギヤ部45を内蔵するケース部材46を有している。第2ギヤ部45は、軸心O2回りに回転する支軸47と、支軸47の後端に形成された第3傘歯車48と、第3傘歯車48に略直交して噛合する第4傘歯車49と、第4傘歯車49を支持し、車幅方向に沿う軸心O3回りに回転する回転軸50と、を備えている。第3傘歯車48と第4傘歯車49とは、車両が前進する方向に回転したときにギヤの噛み合い反力が下方に作用するように噛合しており、これにより後輪71の接地性が向上する。
【0036】
支軸47は軸受51を介してケース部材46に支持されている。支軸47とケース部材46との間にはシール部材52が介設される。回転軸50は右端が軸受53を介して、左端寄りが軸受54を介してケース部材46に支持されている。回転軸50とケース部材46との間にはシール部材55が介設される。支軸47の前端には前方に延びる第2出力軸18が一体回転可能に連結されている。
【0037】
以上のギヤ伝達機構4においては、減速装置のケース部材は剛体としてトレーリングアーム2に取り付けられることから、大きなケース部材を取り付けた場合には、トレーリングアーム2の捩れ性等のサスペンション特性に影響するおそれがある。これに対し、減速装置のケース部材を、前寄りの第1減速装置15のケース部材24と後寄りの第2減速装置16のケース部材46とに分けてトレーリングアーム2に取り付ける構成とすれば、比較的小さな剛体を分散してトレーリングアーム2に取り付けることとなるので、トレーリングアーム2のサスペンション特性への影響を低減できる。
【0038】
「カバー60」
一方で、第1減速装置15のケース部材24は後輪71の前方に位置しており、この第1減速装置15から第1出力軸17が後輪71の回転中心である軸心O3に指向して後方に延びている。この構造においては、後輪71の撒き上げた小石(チッピング)や泥水が、ケース部材24側と第1出力軸17側との間に介設したシール部材41を直撃し、シール部材41の摺接部に泥水等が掛かることにより錆等が発生するおそれがある。また、ゴム製のブーツ部材43を有する等速ジョイント34を設けた場合には、チッピングがブーツ部材43を直撃し、ブーツ部材43が破損するおそれがある。この問題に対し、本発明の動力伝達装置1は、ケース部材24と第1出力軸17の前端周りとの間を覆うカバー60を備えている。
【0039】
「第1実施形態」
カバー60は、第1出力軸17と同軸に配された両端の開口した円筒部材からなり、その後端には第1出力軸17が挿通する小径開口部60Eが形成されている。具体的には、カバー60は、前寄りから、一定径の大径開口部60Aと、後方に向かうにしたがい緩やかに縮径する第1円錐部60Bと、第1円錐部60Bの後端から軸心O2に略直交して径方向内側に延在する段差部60Cと、段差部60Cの内端から後方に向かうにしたがい縮径する第2円錐部60Dと、一定径の小径開口部60Eと、を備えて概ね円錐台形状を呈している。大径開口部60Aの下部には、水抜き孔61(
図5も参照)が穿設されている。カバー60は、金属材料或いは硬質樹脂材料等で形成されている。
【0040】
カバー60は、その前端、すなわち大径開口部60Aが軸受ホルダー33のシール保持部33Cに外嵌したうえで、バンド62により軸受ホルダー33に締着される。これにより、等速ジョイント34とシール部材41とブーツ部材43とがカバー60に覆われる。小径開口部60Eと第1出力軸17の外周面との間には環状の隙間Sが残ることとなるが、小径開口部60Eの後端を、車両前後方向において後輪71の前端と同程度かそれよりも後方に位置させることで、後輪71が前方向に撒き上げるチッピングや泥水の浸入をほぼ防ぐことができる。
【0041】
以上のように、後輪71の前方に位置するケース部材24と第1出力軸17の前端周りとの間を覆うカバー60を備えることにより、後輪71の撒き上げるチッピングや泥水が、ケース部材24と第1出力軸17とのシール部に直撃することを低減できる。具体的には、本実施形態のように、ケース部材24との間にシール部材41が介設されるとともに第1出力軸17との間にブーツ部材43が介設された等速ジョイント34を設けた場合、等速ジョイント34とシール部材41とブーツ部材43とを覆うようにカバー60を設けることにより、後輪71の撒き上げるチッピングや泥水がシール部材41やブーツ部材43に直撃することをカバー60により阻止できる。これにより、シール部材41の摺接部に泥水が掛かることにより錆が発生する問題やブーツ部材の破損の問題等を抑制できる。
【0042】
カバー60をケース部材24(軸受ホルダー33)にバンド62で締着固定することにより、カバー60の組み付け工程を簡略化できる。また、仮に隙間Sから泥水が浸入したとしても、水抜き孔61を設けることにより、外部に容易に排水できる。
【0043】
シール部材41が軸受ホルダー33に形成されたシール保持部33Cと等速ジョイント34の外輪部材37との間に介設された構造において、カバー60の前端(大径開口部60A)をシール保持部33Cに外嵌する構成とすれば、シール部材41の保持機能を有するシール保持部33Cを利用して、カバー60を容易にケース部材24(軸受ホルダー33)に組み付けることができる。
【0044】
「第2実施形態」
第1実施形態は、カバー60をバンド62で軸受ホルダー33に締着固定する形態であったのに対し、第2実施形態は、
図4に示すように、カバー60をねじ63で軸受ホルダー33に締付け固定する形態である。その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、同符号を付してその説明は省略する。
【0045】
図4および
図5に示すように、カバー60の大径開口部60Aの縁には、複数のフランジ部60Fが径外方向に突設され、各フランジ部60Fにはねじ63の通し孔が形成されている。以上により、カバー60は、第1実施形態と同様、大径開口部60Aが軸受ホルダー33のシール保持部33Cに外嵌したうえで、フランジ部60Fにおいてねじ63により軸受ホルダー33に締付け固定される。
【0046】
このように、カバー60をケース部材24(軸受ホルダー33)にねじ63で締付け固定することによっても、カバー60の組み付け工程を簡略化できる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。ギヤ伝達機構4としては、傘歯車の他に平歯車等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 動力伝達装置
2 トレーリングアーム
3 モータ
4 ギヤ伝達機構
15 第1減速装置
16 第2減速装置
17 第1出力軸
18 第2出力軸
33 軸受ホルダー
33C シール保持部
34 等速ジョイント
41 シール部材
43 ブーツ部材
60 カバー
61 水抜き孔
62 バンド
63 ねじ
71 後輪(車輪)