(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-152(P2018-152A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】殻付生卵の炭酸ガス含浸方法
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20171208BHJP
A23B 4/16 20060101ALI20171208BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23B4/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-134711(P2016-134711)
(22)【出願日】2016年7月7日
(11)【特許番号】特許第6158402号(P6158402)
(45)【特許公報発行日】2017年7月5日
(71)【出願人】
【識別番号】316009670
【氏名又は名称】菅 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100077883
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】菅 政樹
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC03
4B042AC06
4B042AC10
4B042AD40
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK01
4B042AP06
4B042AP18
4B042AW06
(57)【要約】
【課題】殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されて均一に混ざり、生のまま食する場合や大量に使用する場合の効率が良く、しかも有害菌を死滅させて、鮮度を保持することができる殻付生卵の炭酸ガス含浸方法を提供するものである。
【解決手段】炭酸ガス含浸装置12の容器13内の棚15に生卵14を並べ、蓋16を閉じてから放出管21の流量調整バルブ23を調整して、炭酸ガス貯蔵タンク9から流入管18を通して容器13内に0.4〜1.0MPaの圧力で25時間以上通流させると、生卵14内に炭酸ガスが0.4〜1.0MPaで含浸され、殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されて均一に混ざる炭酸ガス含浸生卵を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殻付生卵を容器内に収納し、2〜10℃の温度に保持した状態で、前記容器に0.4〜1.0MPaの圧力で炭酸ガスを25時間以上通流させて、殻付生卵の内部に炭酸ガスを含浸させて、殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されるようにしたことを特徴とする殻付生卵の炭酸ガス含浸方法。
【請求項2】
殻付生卵を収納する容器が、冷凍庫または冷蔵庫内に設置されていることを特徴とする請求項1記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法。
【請求項3】
炭酸ガスが天然に噴出する炭酸水に含まれる炭酸ガスを分離したものか、またはボンべに収納した炭酸ガス、若しくはドライアイスを用いることを特徴とする請求項1記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法。
【請求項4】
殻付生卵の内部に含浸させた炭酸ガスの圧力が0.4〜1.0MPaであることを特徴とする請求項1記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスを殻付生卵に含浸させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に殻付生卵を、炭酸ガスで処理して有害菌を死滅させて鮮度を保持する技術がある。例えば殻付の生卵を、炭酸ガス雰囲気中で46〜52℃の温度で所定時間熱蔵する方法(特許文献1)がある。これは炭酸ガス雰囲気中で殻付の生卵を熱蔵することにより生卵が炭酸ガス濃度下に存在することにより有害菌が死滅し、鮮度を保持することができると共に、卵白部が熱変性を起こさない範囲で保持することができるというものである。
【0003】
しかしながら卵白部が熱変性を起こさない46〜52℃の温度で熱蔵するので、加熱による卵黄膜の脆弱化、卵黄のだれ、濃厚卵白の水様化を防止できるとしているが、24〜72時間熱蔵すると新鮮な生卵の状態を保持することは難しい。また従来の方法は、殻を割ったときに卵白の内側に卵黄がある状態のままであり、食べる時に箸で十分にかき混ぜる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−303896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は種々研究を行なった結果、殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されて均一に混ざり、生のまま食する場合や大量に使用する場合の効率が良く、しかも有害菌を死滅させて、鮮度を保持することができる殻付生卵の炭酸ガス含浸方法を開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法は、殻付生卵を容器内に収納し、2〜10℃の温度に保持した状態で、前記容器に0.4〜1.0MPaの圧力で炭酸ガスを25時間以上通流させて、殻付生卵の内部に炭酸ガスを含浸させて、殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法は、請求項1において、殻付生卵を収納する容器が、冷凍庫または冷蔵庫内に設置されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法は、請求項1において、炭酸ガスが天然に噴出する炭酸水に含まれる炭酸ガスを分離したものか、またはボンべに収納した炭酸ガス、若しくはドライアイスを用いることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法は、請求項1において、殻付生卵の内部に含浸させた炭酸ガスの圧力が0.4〜1.0MPaであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法によれば、殻付生卵を容器内に収納し、2〜10℃の温度に保持した状態で、前記容器に0.4〜1.0MPaの圧力で炭酸ガスを25時間以上通流させて、殻付生卵の内部に炭酸ガスを含浸させることにより、殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されて混ざり、ご飯にかければピリットした味の卵かけご飯を楽しむことができる。更にスキヤキを付けて食べる溶き卵や、また親子どんぶりや卵どんぶりの調理、クッキーやケーキを大量に生産する工場で用いれば作業の効率を上げて短時間で調理することができる。更にこの生卵は炭酸ガスを含浸しているので細菌の繁殖がなく、長期間鮮度を保持することができる。
【0011】
また請求項2記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法によれば、殻付生卵を収納する容器が、冷凍庫または冷蔵庫内に設置され容器内の生卵を冷却して炭酸ガスの含浸量を高めることができる。
【0012】
また請求項3記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法によれば、炭酸ガスが天然に噴出する炭酸水に含まれる炭酸ガスを分離したものを用いれば有効利用することができ、またボンべに収納した炭酸ガスやドライアイスを気化させた炭酸ガスを用いれば、どこでも生産することができる。
【0013】
また請求項4記載の殻付生卵の炭酸ガス含浸方法によれば、生卵の内部に含浸させた炭酸ガスの圧力が0.4〜1.0MPaにすることにより炭酸ガスの含浸量が十分となり、殻を割ったときに発泡して卵白と卵黄が攪拌されて混ぜることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の一形態による殻付生卵に炭酸ガスを含浸させる装置を示す断面図である。
【
図2】
図1の装置で炭酸ガスを含浸させた生卵の梱包状態を示す断面図である、
【
図3】(A)炭酸ガスを含浸した生卵を茶碗の縁で割った状態を示す断面図、(B)はは発泡して卵白と卵黄が一瞬にして撹拌される状態を示す断面図、(C)は表面に泡が浮いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施の一形態を
図1ないし
図3を参照して詳細に説明する。
図1は殻付生卵に炭酸ガス含浸する装置の構成を示すもので、炭酸水汲上げ管1が地中2に挿入されており、この上部内側に内管3が取付けられ、この内側に揚水管4が挿着されている。この揚水管4の下端には水中ポンプ5が取付けられ、その上部は図示しない炭酸水タンクに接続されている。
【0016】
前記炭酸水汲上げ管1の上部には分岐管7が設けられ、真空ポンプ8を介して炭酸ガス貯蔵タンク9に接続されている。11は冷蔵庫で、この内側に炭酸ガス含浸装置12が設けられている。この炭酸ガス含浸装置12は容器13の内部に生卵14を保持する棚15が取付けられ、上部に蓋16が開閉自在に取付けられ内部を密閉するようになっている。
【0017】
更に容器13の上部には前記炭酸ガス貯蔵タンク9から導かれた流入管18が接続され、この流入管18の途中には開閉バルブ20が取付けられている。また容器13の上部には放出管21が取付けられ、この放出管21の途中には、圧力計22と流量調整バルブ23が取付けられている。
【0018】
次に殻付生卵に炭酸ガスを含浸させる方法について説明する。地中から炭酸水を汲上げる炭酸水汲上げ管1から分岐した分岐管7より、真空ポンプ8で炭酸水汲上げ管1の上部に溜った炭酸ガスを吸引して炭酸ガス貯蔵タンク9に貯めておく。この時、流入管18に取付けた開閉バルブ20は閉じて、炭酸ガス貯蔵タンク9に炭酸ガスを貯める。
【0019】
一方、図示しない冷蔵庫で殻付の生卵14を低温に冷やしておく。冷蔵庫11内に設置した炭酸ガス含浸装置12の蓋16を開けて、低温に冷やしておいた生卵14を棚15に並べる。この後、流入管18に取付けた開閉バルブ20と放出管21に取付けた流量調整バルブ23を開いて炭酸ガスを容器13に通流させる。流量調整バルブ23を調整することにより、容器13内の炭酸ガス圧力を調整する。この時、容器13内の生卵14は冷やされて2〜10℃の温度に保持しておく。
【0020】
この低温度に保持した状態で容器13内に、炭酸ガスを0.4〜1.0MPaの圧力で25時間以上通流させると、生卵14内に炭酸ガスが含浸される。特にこの条件下で炭酸ガスを通流させると、生卵14の内部に炭酸ガスの圧力が0.4〜1.0MPaで含浸させる。
【0021】
このようにして25時間以上炭酸ガスを通流させ、内部に炭酸ガスの圧力が0.4〜1.0MPaで含浸させた生卵14を容器13内から取り出し、
図2に示すように、複数の収納凹部25を形成したプラスチックパック26に収納して、チャック付きのプラスチック袋27に包装して、内部に炭酸ガスを封入して出荷する。
【0022】
炭酸ガスを含浸した生卵14を購入した消費者は、
図3(A)に示すように茶碗28の縁で生卵14を割ってあけると、最初は卵白29の中に卵黄30がある通常の状態と同様である。次に
図3(B)に示すように箸31で数回かき混ぜると炭酸ガスが激しく発泡して卵白29と卵黄30が一瞬にして撹拌されて均一に混ざる。しばらくすると
図3(C)に示すように表面に泡が浮いた状態となり、これをご飯にかければピリットした味の卵かけご飯を楽しむことができる。
【0023】
またチャック付きのプラスチック袋27内に炭酸ガスが封入してあるので、10日程度生卵14に含浸された炭酸ガスを保持することができ、また残った生卵14はプラスチック袋27のチャックをすれば数日間は含浸状態を保持することができる。更にこの生卵14は炭酸ガスを含浸しているので細菌の繁殖がなく、長期間鮮度を保持することができる。
【0024】
なお本発明において生卵を容器内に収納して保持する温度を2〜10℃に限定したのは、2℃未満では誤って生卵が凍結してしまうと、膨張によって殻が割れる恐れがあり、また10℃を超えると炭酸ガスの含浸量が少なくなり、製品となった時に発泡不良となる恐れがあるからである。
【0025】
また生卵を保持する容器内の炭酸ガス圧は0.4〜1.0MPaが好ましい。0.4MPa未満のガス圧力では、生卵内に炭酸ガスが十分に含浸せず、また1.0MPaを超える圧力を加えると殻が割れる恐れがあるからである。また容器内に生卵を保持して炭酸ガスを通流させる時間を25時間以上としたのは。これより短い時間では炭酸ガスの含浸量が少なくなり、製品となった時に発泡不良となる恐れがあるからである。
【0026】
また上記条件で炭酸ガスを含浸させた生卵の含浸ガス圧は0.4〜1.0MPaが好ましい。0.4MPa未満の生卵では炭酸ガスの含浸量が少なくなり、発泡不良となる恐れがあり、また1.0MPaを超えるガス圧では破裂して殻が割れる恐れがあるからである。
【0027】
なお上記炭酸ガス含浸装置は、炭酸水を汲上げる装置で分離した炭酸ガスをそのまま大気中に放出せず、これを利用して含浸させる場合について説明したが、炭酸水が湧きでない場所では、ボンべに収納した炭酸ガスやドライアイスを気化させた炭酸ガスを用いても良い。また上記説明では炭酸ガス含浸装置の容器を冷蔵庫内に設置した場合について示したが、冷凍庫を用いてタイマーにより間欠的に通電して容器内の生卵を一定温度に冷却するようにしても良い。
【0028】
また上記説明では卵かけご飯に使用する場合について示したが、スキヤキを付けて食べる溶き卵としても用いることができる。また親子どんぶりや卵どんぶりを調理する時に用いれば、卵白29と卵黄30を混ぜる手間が省け短時間で調理することができる。またクッキーやケーキを大量に生産する工場で用いれば作業の効率を上げることができる。
【実施例】
【0029】
図1に示す装置を用いて、殻付生卵に炭酸ガスを含浸させた場合の実施例について説明する。生卵の温度を3〜8℃、容器内の炭酸ガス圧を0.6〜0.7MP、炭酸ガスの通流時間を35〜48時間に設定して含浸させた場合の実施例1〜8についてその結果を表1に示した。また比較のために本発明に規定する範囲を外れた条件で含浸させた場合の比較例1〜4についてもその結果を表1に併記した。
【0030】
【表1】
【0031】
上表の結果から、生卵の温度が高い場合には、容器内の炭酸ガス圧を高くすれば生卵の含浸ガス圧も高くなり発泡状態は良好となる。つまり生卵の温度が低い場合には炭酸ガス圧が低くても十分に含浸することが確認された。また生卵の温度がマイナスの比較例1では凍結による膨張で殻が割れ、また生卵の温度が13℃の比較例4では含浸ガス圧が低く十分に含浸していない。また炭酸ガスの流通時間が12時間と短い比較例2では十分に含浸していなかった。
【符号の説明】
【0032】
1 炭酸水汲上げ管
2 地中
3 内管
4 揚水管
5 水中ポンプ
7 分岐管
8 真空ポンプ
9 炭酸ガス貯蔵タンク
11 冷蔵庫
12 炭酸ガス含浸装置
13 容器
14 生卵
15 棚
16 蓋
18 流入管
20 開閉バルブ
21 放出管
22 圧力計
23 流量調整バルブ
25 収納凹部
26 プラスチックパック
27 プラスチック袋
28 茶碗
29 卵白
30 卵黄
31 箸