【解決手段】絶縁基板10と、絶縁基板10上に、近接して形成された第1、第2の電極11,12と、第1の電極11上に搭載された第1の可溶導体13と、絶縁基板10に形成され、第1の可溶導体13よりも融点の高い高融点金属体15とを有し、高融点金属体15と第1、第2の電極11,12とは、電気的に独立し、高融点金属体15への過電流通電に伴う発熱により第1の可溶導体13を溶融させ、該溶融導体を介して第1の電極11及び第2の電極12を接続し、電気的に短絡させる。
上記高融点金属体の電極パターンは、上記可溶導体に近接する位置が相対的に細くなり、電流が集中することにより局部的に高温に発熱する発熱部が形成されている請求項5又は6に記載のスイッチ素子。
上記絶縁基板の一方の面に上記第1、第2の電極が配置され、上記絶縁基板の他方の面に上記高融点金属体が配置され、少なくとも上記第1の電極上に搭載された上記第1の可溶導体と上記高融点金属体とが重畳する請求項1〜12のいずれか1項に記載のスイッチ素子。
上記第1及び第2の電極表面に、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキのいずれかが被覆されている請求項1〜23のいずれか1項に記載のスイッチ素子。
互いに開放されるとともに外部回路と接続され、少なくとも一方に可溶導体が搭載された第1及び第2の電極を有し、上記第1及び第2の電極が短絡することにより上記外部回路を作動させるスイッチ部と、
上記可溶導体の融点よりも高い融点を有し、上記スイッチ部と電気的に独立して形成された機能回路に接続されるヒューズとを備え、
上記スイッチ部と上記ヒューズとが絶縁基板上に形成され、
上記機能回路による上記ヒューズの通電に伴う発熱により、上記可溶導体を溶融させ、該溶融導体により上記第1、第2の電極を短絡させ上記外部回路を作動させるスイッチ回路。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用されたスイッチ素子、スイッチ回路、及び警報回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
[スイッチ素子]
本発明が適用されたスイッチ素子1は、
図1に示すように、絶縁基板10と、絶縁基板10上に、近接して形成された第1、第2の電極11,12と、第1の電極11上に搭載された第1の可溶導体13と、絶縁基板10に形成され、第1の可溶導体13よりも融点の高い高融点金属体15とを有する。なお、
図1(A)はスイッチ素子1のカバー部材20を除いて示す平面図であり、
図1(B)はA-A‘断面図であり、
図1(C)は回路図である。
【0017】
このスイッチ素子1は、第1、第2の電極11,12がブザーやランプあるいは警報システム等からなる警報器31と接続され、高融点金属体15の発熱により第1の可溶導体13を溶融させることにより、この溶融導体によって第1、第2の電極11,12間を短絡させ、警報器31であるブザーやランプあるいは警報システム等を作動させるものである。
【0018】
絶縁基板10は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材を用いて略方形状に形成されている。絶縁基板10は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、第1の可溶導体13の溶断時の温度に留意する必要がある。
【0019】
[第1、第2の電極]
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の表面10a上に、互いに近接配置されるとともに離間されることにより開放されている。また、第1の電極11には後述する第1の可溶導体13が搭載されている。第1、第2の電極11,12は、高融点金属体15が通電に伴って発熱することにより、第1の可溶導体13の溶融導体が第1、第2の電極11,12間にわたって凝集、結合し、この溶融導体を介して短絡されるスイッチ2を構成する。
【0020】
なお、スイッチ素子1は、
図2に示すように、第2の電極12上に第2の可溶導体14を搭載してもよい。スイッチ素子1は、第1、第2の可溶導体13,14を設けることにより、より多くの溶融導体が第1、第2の電極11,12間にわたって凝集し、より速く、より確実に、第1、第2の電極11,12間を短絡させることができる。以下では、
図2に示す、第1の電極11上に第1の可溶導体13を設け、第2の電極12上に第2の可溶導体14を設けたスイッチ素子1の構成を例に説明する。
【0021】
第1、第2の電極11,12は、高融点金属体15によって加熱されることにより、第1、第2の可溶導体14,15の溶融導体を凝集しやすくすることができる。
【0022】
第1、第2の電極11,12は、それぞれ、絶縁基板10の側縁10b,10cに外部接続端子11a,12aが設けられている。第1、第2の電極11,12は、これら外部接続端子11a,12aを介して警報器31と接続され、スイッチ素子1が動作することにより、当該警報器31への給電経路となる。
【0023】
第1、第2の電極11,12は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができる。また、第1、第2の電極11,12の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、スイッチ素子1は、第1、第2の電極11,12の酸化を防止し、第1、第2の可溶導体13,14の溶融導体を確実に保持させることができる。また、スイッチ素子1をリフロー実装する場合に、第1、第2の可溶導体13,14を接続する接続用ハンダ17あるいは第1、第2の可溶導体13,14の外層を形成する低融点金属が溶融することにより第1、第2の電極11,12を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0024】
[高融点金属体]
高融点金属体15は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru、Cu、Ag、あるいはこれらを主成分とする合金等からなる。高融点金属体15は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものをスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0025】
高融点金属体15は、絶縁基板10の表面10a上に、第1、第2の電極11,12と並んで配置されている。これにより高融点金属体15は、通電に伴って発熱すると、第1、第2の電極11,12上に搭載されている第1、第2の可溶導体13,14を溶融させることができる。
【0026】
また、高融点金属体15は、絶縁基板10の側縁10b,10cに外部接続端子15aが設けられている。高融点金属体15は、外部接続端子15aを介して、警報器31の作動のトリガーとなる機能回路32と接続され、機能回路32の異常に伴う過電流によって発熱する。
【0027】
また、高融点金属体15は、第1、第2の可溶導体11,12と近接する位置において、相対的に細くなり、電流が集中することにより局部的に高温に発熱する発熱部15bが形成されている。第1、第2の可溶導体11,12と近接する位置に発熱部15bを設けることにより、高融点金属体15は、効率よく第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、速やかに第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。
【0028】
図2に示すように、高融点金属体15は、機能回路32が正常に作動しているときは、定格内の適正な電流が流れている。そして、高融点金属体15は、機能回路32の異常によって過電流が流れると発熱し、
図3に示すように、第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、溶融導体を介して第1、第2の電極11,12を短絡させる。その後も、高融点金属体15は発熱を続けることにより、
図4に示すように、自身のジュール熱によって溶断する。これにより、高融点金属体15は、機能回路32の異常による過電流が遮断され、発熱が停止する。すなわち、高融点金属体15は、第1、第2の可溶導体13,14を溶融させるとともに自己発熱によって自身の給電経路を遮断するヒューズとして機能する。
【0029】
また、高融点金属体15は、局部的に高温となる発熱部15bを設けることにより、当該発熱部15bにおいて溶断する。このとき、高融点金属体15は、発熱部15bが相対的に細く形成されているため、溶断時に発生するアーク放電も小規模なものに収まり、後述する絶縁層16の被覆効果とともに、溶融導体の飛散を防止することができる。
【0030】
なお、高融点金属体15は、上述した導電ペーストを印刷することによりパターン形成する他にも、銅箔や銀箔等の高融点金属箔や、銅線や銀線等の高融点金属ワイヤーを用いて形成してもよい。また、高融点金属箔や高融点金属ワイヤーを用いて高融点金属体15を構成する場合、高融点金属体15の溶断後における溶融導体のリークの問題が導電パターンに比して少ないことから、絶縁基板10として熱伝導性に優れ、第1、第2の可溶導体13,14を速やかに溶融させることができるセラミック基板を好適に用いることができる。
【0031】
[絶縁層]
第1、第2の電極11,12及び高融点金属体15は、絶縁基板10の表面10a上において絶縁層16に被覆されている。絶縁層16は、第1、第2の電極11,12及び高融点金属体15の保護及び絶縁を図るとともに、高融点金属体15の溶断時におけるアーク放電を抑制するために設けられ、例えばガラス層からなる。
【0032】
図1、
図2に示すように、絶縁層16は、高融点金属体15の発熱部15bを覆うとともに、第1、第2の電極11,12の先端部11b,12bを除く領域上に形成されている。すなわち、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12bが絶縁層16より露出され、後述する第1、第2の可溶導体13,14が凝集、結合可能とされている。
【0033】
また、第1、第2の電極11,12は、絶縁層16の一部に開口部16aが形成されている。そして、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12b及び開口部16aに接続用ハンダ17が設けられ、この接続用ハンダ17によって先端部11b,12bと開口部16aとの間にわたって、絶縁層16上に第1、第2の可溶導体13,14を支持している。
【0034】
また、高融点金属体15と絶縁基板10との間にガラス等からなる絶縁層16を形成してもよい。これにより、高融点金属体15の遮断後の絶縁抵抗を高くすることができる。
【0035】
[第1、第2の可溶導体]
絶縁層16を介して第1、第2の電極11,12上に搭載される第1、第2の可溶導体13,14は、高融点金属体15の発熱により速やかに溶融されるいずれの金属を用いることができ、例えば、ハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属を好適に用いることができる。
【0036】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属と高融点金属とを含有してもよい。低融点金属としては、ハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダなどを用いることが好ましく、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、スイッチ素子1をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、低融点金属の外部への流出を抑制し、第1、第2の可溶導体13,14の形状を維持することができる。また、溶断時も、低融点金属が溶融することにより、高融点金属を溶食(ハンダ食われ)することで、高融点金属の融点以下の温度で速やかに溶断することができる。なお、第1、第2の可溶導体13,14は、後に説明するように、様々な構成によって形成することができる。
【0037】
なお、第1、第2の可溶導体13,14は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されていることが好ましい。
【0038】
[スイッチ回路・警報回路]
以上のようなスイッチ素子1は、
図2(C)に示すような回路構成を有する。すなわち、スイッチ素子1は、第1の電極11と第2の電極12とが、正常時には開放され(
図2(C))、高融点金属体15の発熱により第1、第2の可溶導体13,14が溶融すると、当該溶融導体を介して短絡するスイッチ2を構成する(
図3(B))。そして、第1、第2の電極11,12の各外部接続端子11a,12aは、スイッチ2の両端子を構成する。
【0039】
そして、スイッチ素子1は、例えば警報回路30に組み込まれて用いられる。
図5は警報回路30の回路構成の一例を示す図である。警報回路30は、スイッチ素子1のスイッチ2により警報器31を作動させる作動回路33と、作動回路と電気的に独立して形成され、第1、第2の可溶導体13,14よりも融点の高い高融点金属体15からなるヒューズが電源に直列に繋がる機能回路を有する制御回路34とを備える。
【0040】
図5に示すように、スイッチ素子1は、スイッチ2の両外部接続端子11a,12aが、ブザーやランプあるいは警報システム等からなる警報器31に接続される。また、スイッチ素子1は、高融点金属体15の両外部接続端子15aが、機能回路32に接続される。
【0041】
このような構成を有するスイッチ素子1は、警報器31を動作させるスイッチ2を構成する第1、第2の電極11,12に対して、隣接して形成されている高融点金属体15の発熱により第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、この溶融導体を介して短絡させる。すなわち、スイッチ素子1は、高融点金属体15と第1、第2の電極11,12とは物理的、電気的に独立して構成され、高融点金属体15の熱によって第1、第2の可溶導体13,14が溶融することにより短絡する、いわば熱的に接続することにより連動する構成を取る。
【0042】
したがって、スイッチ素子1は、スプリングや警報接点等の機械要素を用いず、また機械要素の物理的な連動によらず構成することができるため、絶縁基板10の面内において、コンパクトに設計することができ、狭小化された実装領域にも実装可能となる。また、スイッチ素子1は、部品点数、製造工数の削減を図り、低コスト化を図ることができる。さらに、スイッチ素子1は、絶縁基板10をリフロー実装等により表面実装することができ、狭小化された実装領域においても、簡易に実装することができる。
【0043】
実使用時において、スイッチ素子1は、機能回路32の不具合によって高融点金属体15に過電流が流れる。すると、
図3(A)に示すように、高融点金属体15が発熱し、これにより、第1、第2の可溶導体13,14が溶融する。第1、第2の可溶導体13,14の溶融導体は、開口部16aに比して広面積で、かつ高融点金属体15によって加熱された第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12bの上に凝集し、結合する。これにより、スイッチ素子1は、第1、第2の電極11,12間が短絡し、警報器31を作動させることができる。すなわち、スイッチ素子1は、スイッチ2がオンとなる(
図3(C))。警報回路30は、スイッチ素子1のスイッチ2がオンとなることにより、作動回路33によって警報器31が作動される。
【0044】
このとき、スイッチ素子1は、高融点金属体15の第1、第2の可溶導体13,14の近傍に、細く形成された発熱部15bを設けることで、高抵抗の発熱部15bが高温となり、効率よく第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、速やかに第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。また、高融点金属体15は、高抵抗の発熱部15bが局部的に高温となるのみで、側縁に面する両外部接続端子15aは放熱効果も相まって比較的低温に保たれる。そのため、スイッチ素子1は、外部接続端子15aの実装用ハンダが溶融することもない。
【0045】
図4に示すように、第1、第2の電極11,12間の短絡後も高融点金属体15は発熱を続け、自身のジュール熱によって遮断する(
図4(A)(B))。これにより、スイッチ素子1は、機能回路32による通電が遮断され、発熱が停止する(
図4(C))。このとき、スイッチ素子1は、高融点金属体15が絶縁層16によって被覆されているため、アーク放電を抑制し、溶融導体の爆発的な飛散を抑制することができる。また、高融点金属体15に細く形成された発熱部15bを設けることにより、溶断箇所が狭小化され、飛散する溶融導体の量を低減させることができる。
【0046】
このように、スイッチ素子1は、第1、第2の可溶導体13,14よりも融点の高い高融点金属体15が発熱することにより、確実に第1、第2の可溶導体13,14が高融点金属体15よりも先に溶融し、第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。すなわち、スイッチ素子1は、高融点金属体15の遮断が第1、第2の電極11,12を短絡させる要件とはなっていない。したがって、スイッチ素子1は、機能回路32の異常に伴い高融点金属体15の定格を超える電流が流れたことを伝える警報スイッチとして使用することができる。
【0047】
また、高融点金属体15は、自身のジュール熱により遮断することにより、自動的に発熱を停止する。したがって、スイッチ素子1は、機能回路32による給電を規制する機構を設ける必要がなく、簡易な構成で高融点金属体15の発熱を停止することができ、素子全体の小型化を図ることができる。
【0048】
[高融点金属体と第1の電極との接続]
また、スイッチ素子1は、
図6に示すように、高融点金属体15と、第1の可溶導体13が搭載されている第1の電極11とを接続する接続部19を形成してもよい。接続部19は、例えば高融点金属体15や第1の電極11と同じ導電材料を用いて、高融点金属体15や第1の電極11と同じ工程においてパターン形成されることにより設けることができる。
【0049】
高融点金属体15と第1の電極11とを接続することにより、スイッチ素子1は、高融点金属体15が通電により発熱すると、接続部19及び第1の電極11を介して熱が第1の可溶導体13に伝わり、より速やかに溶融させることができる。したがって、接続部19は、熱伝導性に優れるAgやCu等の金属材料により形成することが好ましい。
【0050】
[カバー部材/カバー部電極]
スイッチ素子1は、絶縁基板10上に内部を保護するカバー部材20が取り付けられている。スイッチ素子1は、絶縁基板10がカバー部材20に覆われることによりその内部が保護されている。カバー部材20は、スイッチ素子1の側面を構成する側壁21と、スイッチ素子1の上面を構成する天面部22とを有し、側壁21が絶縁基板10上に接続されることにより、スイッチ素子1の内部を閉塞する蓋体となる。このカバー部材20は、上記絶縁基板10と同様に、たとえば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成されている。
【0051】
また、
図7に示すように、カバー部材20は、天面部22の内面側に、カバー部電極23が形成されても良い。カバー部電極23は、第1、第2の電極11,12の各先端部11b,12b間にわたって重畳する位置に形成されている。このカバー部電極23は、高融点金属体15が発熱し、第1、第2の可溶導体13,14が溶融されると、第1、第2の電極11,12上に凝集した溶融導体が接触して濡れ広がることにより、溶融導体を保持する許容量を増加させ、より確実に第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。
【0052】
[高融点金属体の配置:変形例1]
なお、本発明が適用されたスイッチ素子は、絶縁基板の表面上において、高融点金属体と第1、第2の電極とを重畳させてもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子40は、
図8に示すように、絶縁基板10の表面10aの相対向する側縁10d,10e間にわたって高融点金属体15が形成される。また、スイッチ素子40は、第1、第2の電極11,12が絶縁基板10の表面10aの相対向する側縁10b,10cに形成される。
【0053】
高融点金属体15は、絶縁基板10の略中央部において第1の絶縁層41によって被覆されている。また、高融点金属体15は、絶縁基板10の側縁10d,10eに、それぞれ外部接続端子15aが形成されている。また、高融点金属体15は、第1、第2の電極11,12が重畳する中間部が両端部よりも細く形成されることにより高温に発熱する発熱部15bが形成されている。
【0054】
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の側縁10b,10cに、それぞれ外部接続端子11a,12aが形成されている。また、第1、第2の電極11,12は、側縁10b,10cから第1の絶縁層41の上面にわたって形成され、第1の絶縁層41の上面において互いの先端部11b,12bが近接されるとともに離間することにより、開放されている。また、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12bを除き、第2の絶縁層42によって被覆されている。
【0055】
第2の絶縁層42には、一部に開口部42aが形成されている。そして、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12b及び開口部42aに接続用ハンダが設けられ、この接続用ハンダによって先端部11b,12bと開口部42aとの間にわたって、第2の絶縁層42上に第1、第2の可溶導体13,14を支持している。これにより、第1、第2の電極11,12の先端部11b,12b、及び第1、第2の可溶導体13,14の少なくとも一部は、高融点金属体15の発熱部15bと重畳されている。なお、第1、第2の可溶導体13,14上には、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されている。
【0056】
第1、第2の絶縁層41,42は、上述したスイッチ素子1の絶縁層16と同様に、ガラス等の絶縁材料を好適に用いることができる。
【0057】
このようなスイッチ素子40によれば、高融点金属体15の発熱部15bに重畳して第1、第2の電極11,12及び第1、第2の可溶導体13,14が配置されているため、発熱部15bの発熱により速やかに第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。このとき、スイッチ素子40は、ガラス等からなる第1、第2の絶縁層41,42を介して、発熱部15bと第1、第2の電極11,12及び第1、第2の可溶導体13,14とが連続的に積層されているため、発熱部15bの熱を効率よく伝導させることができる。
【0058】
[高融点金属体の配置:変形例2]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、絶縁基板の表面に第1、第2の電極を形成し、絶縁基板の裏面に高融点金属体を形成することにより、高融点金属体と第1、第2の電極とを重畳させてもよい。なお、以下の説明において、上述したスイッチ素子1と同様の構成については、同じ符号を付してその詳細を省略する。このスイッチ素子50は、
図9に示すように、絶縁基板10の裏面10fの相対向する側縁10d,10e間にわたって高融点金属体15が形成される。また、スイッチ素子50は、第1、第2の電極11,12が絶縁基板10の表面10aの相対向する側縁10b,10cに形成される。
【0059】
高融点金属体15は、絶縁基板10の略中央部において第1の絶縁層51によって被覆されている。また、高融点金属体15は、絶縁基板10の側縁10d,10eに、それぞれ外部接続端子15aが形成されている。また、高融点金属体15は、第1、第2の電極11,12が重畳する中間部が両端部よりも細く形成されることにより高温に発熱する発熱部15bが形成されている。
【0060】
第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の側縁10b,10cに、それぞれ外部接続端子11a,12aが形成されている。また、第1、第2の電極11,12は、側縁10b,10cから絶縁基板10の表面10aの略中央部において互いの先端部11b,12bが近接されるとともに離間することにより、開放されている。また、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12bを除き、第2の絶縁層52によって被覆されている。
【0061】
第2の絶縁層52には、一部に開口部52aが形成されている。そして、第1、第2の電極11,12は、先端部11b,12b及び開口部52aに接続用ハンダが設けられ、この接続用ハンダによって先端部11b,12bと開口部52aとの間にわたって、第2の絶縁層52上に第1、第2の可溶導体13,14を支持している。これにより、第1、第2の電極11,12の先端部11b,12b、及び第1、第2の可溶導体13,14の少なくとも一部は、高融点金属体15の発熱部15bと重畳されている。なお、第1、第2の可溶導体13,14上には、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス18が塗布されている。
【0062】
第1、第2の絶縁層51,52は、上述したスイッチ素子1の絶縁層16と同様に、ガラス等の絶縁材料を好適に用いることができる。
【0063】
このようなスイッチ素子50によれば、高融点金属体15の発熱部15bに重畳して第1、第2の電極11,12及び第1、第2の可溶導体13,14が配置されているため、発熱部15bの発熱により速やかに第1、第2の可溶導体13,14を溶融させ、第1、第2の電極11,12を短絡させることができる。このとき、スイッチ素子50は、絶縁基板10として、セラミック基板等の熱伝導性に優れたものを用いることにより、高融点金属体15を第1、第2の可溶導体13,14の設けられた面と同一面に形成した場合と同等に加熱することができるため好適である。
【0064】
[可溶導体の変形例]
上述したように、第1、第2の可溶導体13,14のいずれか又は全部は、低融点金属と高融点金属とを含有してもよい。高融点金属層60はAg、Cu又はこれらを主成分とする合金等からなり、低融点金属層61はSnを主成分とするPbフリーハンダ等からなる。このとき、第1、第2の可溶導体13,14は、
図10(A)に示すように、内層として高融点金属層60が設けられ、外層として低融点金属層61が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合、第1、第2の可溶導体13,14は、高融点金属層60の全面が低融点金属層61によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。高融点金属層60や低融点金属層61による被覆構造は、メッキ等の公知の成膜技術を用いて形成することができる。
【0065】
また、
図10(B)に示すように、第1、第2の可溶導体13,14は、内層として低融点金属層61が設けられ、外層として高融点金属層60が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合も、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層61の全面が高融点金属層60によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。
【0066】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図11に示すように、高融点金属層60と低融点金属層61とが積層された積層構造としてもよい。
【0067】
この場合、第1、第2の可溶導体13,14は、
図11(A)に示すように、第1、第2の電極11,12に支持される下層と、下層の上に積層される上層からなる2層構造として形成され、下層となる高融点金属層60の上面に上層となる低融点金属層61を積層してもよく、反対に下層となる低融点金属層61の上面に上層となる高融点金属層60を積層してもよい。あるいは、第1、第2の可溶導体13,14は、
図11(B)に示すように、内層と内層の上下面に積層される外層とからなる3層構造として形成してもよく、内層となる高融点金属層60の上下面に外層となる低融点金属層61を積層してもよく、反対に内層となる低融点金属層61の上下面に外層となる高融点金属層60を積層してもよい。
【0068】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図12に示すように、高融点金属層60と低融点金属層61とが交互に積層された4層以上の多層構造としてもよい。この場合、第1、第2の可溶導体13,14は、最外層を構成する金属層によって、全面又は相対向する一対の側面を除き被覆された構造としてもよい。
【0069】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、内層を構成する低融点金属層61の表面に高融点金属層60をストライプ状に部分的に積層させてもよい。
図13は、第1、第2の可溶導体13,14の平面図である。
【0070】
図13(A)に示す第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層61の表面に、幅方向に所定間隔で、線状の高融点金属層60が長手方向に複数形成されることにより、長手方向に沿って線状の開口部62が形成され、この開口部62から低融点金属層61が露出されている。第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層61が開口部62より露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属との接触面積が増え、高融点金属層60の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。開口部62は、例えば、低融点金属層61に高融点金属層60を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0071】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図13(B)に示すように、低融点金属層61の表面に、長手方向に所定間隔で、線状の高融点金属層60を幅方向に複数形成することにより、幅方向に沿って線状の開口部62を形成してもよい。
【0072】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図14に示すように、低融点金属層61の表面に高融点金属層60を形成するとともに、高融点金属層60の全面に亘って円形の開口部63が形成され、この開口部63から低融点金属層61を露出させてもよい。開口部63は、例えば、低融点金属層61に高融点金属層60を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0073】
第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層61が開口部63より露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属との接触面積が増え、高融点金属の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。
【0074】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、
図15に示すように、内層となる高融点金属層60に多数の開口部64を形成し、この高融点金属層60に、メッキ技術等を用いて低融点金属層61を成膜し、開口部64内に充填してもよい。これにより、第1、第2の可溶導体13,14は、溶融する低融点金属が高融点金属に接する面積が増大するので、より短時間で低融点金属が高融点金属を溶食することができるようになる。
【0075】
また、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層61の体積を、高融点金属層60の体積よりも多く形成することが好ましい。第1、第2の可溶導体13,14は、高融点金属体15によって加熱されることにより、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、第1、第2の可溶導体13,14は、低融点金属層61の体積を、高融点金属層60の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極11,12間の短絡を行うことができる。