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特開2018-15427針付シリンジの製造方法および針付シリンジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-15427(P2018-15427A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】針付シリンジの製造方法および針付シリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20180105BHJP
【FI】
   A61M5/34 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-150147(P2016-150147)
(22)【出願日】2016年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】591065402
【氏名又は名称】株式会社タスク
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】秋田 幸乙
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066FF05
4C066GG12
4C066JJ08
4C066PP02
(57)【要約】
【課題】 針が確実に保持され、気密性が高く、低い製造コストで容易に製造可能な針付シリンジの製造方法および針付シリンジを提供する。
【解決手段】
両端に開口部2a,2bを有するシリンジ2を形成する第1の工程と、面部3aと、当該面部3aから突出する挿入部3bとを有し、注射針4が挿入部3bの内部を貫通して接合された保持部材を形成する第2の工程と、保持部材3の挿入部3bをシリンジ2の一端の開口部2aに挿入し、面部3aが、開口部2aの端面2cとそれぞれ所定の面圧で当接するように保持部材3をシリンジ2に押圧する第3の工程と、保持部材3をシリンジ2に押圧した状態で、当接した面同士で超音波溶着を実施する第4の工程と、を有する針付シリンジの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口部を有するシリンジを形成する第1の工程と、
面部と、当該面部から突出する挿入部とを有し、針が前記挿入部の内部を貫通して接合された保持部材を形成する第2の工程と、
前記保持部材の前記挿入部を前記シリンジの一端の前記開口部に挿入し、前記面部が、前記開口部の端面とそれぞれ所定の面圧で当接するように前記保持部材を前記シリンジに押圧する第3の工程と、
前記保持部材を前記シリンジに押圧した状態で、当接した面同士で超音波溶着を実施する第4の工程と、を有する、
ことを特徴とする針付シリンジの製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程で、前記針を金型に挿入した状態でインサート成形して前記保持部材を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の針付シリンジの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程で、前記保持部材の前記挿入部内の貫通孔に前記針を挿入して、前記針を前記保持部材に密封して接合する、ことを特徴とする請求項1に記載の針付シリンジの製造方法。
【請求項4】
前記挿入部は、前記シリンジの一端の内径面に嵌合する外径を有する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の針付シリンジの製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程で、前記挿入部の周側面が前記シリンジの一端の内径面と所定の面圧で当接するように前記保持部材を前記シリンジに挿入する、ことを特徴とする請求項4に記載の針付シリンジの製造方法。
【請求項6】
前記保持部材は、前記シリンジの一端の外径面に嵌合する内径を有する円筒部を有する、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の針付シリンジの製造方法。
【請求項7】
前記第3の工程で、前記円筒部の内径面が前記シリンジの一端の外径面と所定の面圧で当接するように前記保持部材を前記シリンジに挿入する、ことを特徴とする請求項6に記載の針付シリンジの製造方法。
【請求項8】
両端に開口部を有するシリンジと、
面部および前記面部から突出した挿入部を有し、前記面部および前記挿入部を針が貫通して密封接合されている保持部材と、を備え、
前記面部および前記挿入部の根元部分と前記シリンジの一端の前記先端部分とが超音波振動によって溶着している、ことを特徴とする針付シリンジ。
【請求項9】
前記挿入部の外径面が前記シリンジの一端の内径部分に嵌合するように構成される、ことを特徴とする請求項8に記載の針付シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針付シリンジの製造方法および針付シリンジに関し、特に、溶着によってシリンジに注射針や生検針を装着した針付シリンジの製造方法および針付シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場等においては、患者に輸液を投与するときや、薬剤を投与するときなど、衛生のために予めシリンジに注射針が装着された針付シリンジが使用される場合がある。一般的に、針付シリンジは、一体的に形成されたシリンジに注射針を挿入して溶着して構成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、注射針をシリンジ自体に挿入して溶着するのは、製造時のハンドリングが煩雑であり、注射針を精度高く固定するため工数もかかるので、シリンジとは別に、注射針が固定されたシリンジより小さな保持部材を用いることが望ましい。
【0004】
そこで、シリンジおよび注射針が固定された保持部材の接続領域にネジが設けられていて、螺合により両者が固定されるものが提案されている(例えば特許文献2参照)。また、シリンジおよび注射針が固定された保持部材を溶着して形成するものが提案されている(例えば特許文献3参照)。また、注射針を挿入されたシリンジ先端部の凹部に樹脂を注入することにより、形成するものが提案されている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−254102号公報
【特許文献2】特開2004−283630号公報
【特許文献3】国際公開第2012/098766号公報
【特許文献4】国際公開第2012/098767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の発明では、ネジ接合によりシリンジおよび注射針が固定された保持部材を接続しているだけなので、気密性が低くなるという問題があった。また、特許文献3に記載の発明では、溶着時にシリンジおよび保持部材が軟化するので、針の位置を正確に保つのが困難であり、逆に針の位置の保持を優先させると、気密性を保持するのに充分な溶着が得られないという虞があった。特許文献4に記載の発明では、樹脂を注入する凹部や微細な樹脂の注入口を成形した後、注射針を挿入して、樹脂を注入して製造するので、製造コストが高くなる問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、針が確実に保持され、高い気密性を有する針付シリンジを低い製造コストで容易に製造する方法および針付シリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る針付シリンジの製造方法は、
両端に開口部を有するシリンジを形成する第1の工程と、
面部と、当該面部から突出する挿入部とを有し、針が前記挿入部の内部を貫通して接合された保持部材を形成する第2の工程と、
前記保持部材の前記挿入部を前記シリンジの一端の前記開口部に挿入し、前記面部が、前記開口部の端面とそれぞれ所定の面圧で当接するように前記保持部材を前記シリンジに押圧する第3の工程と、
前記保持部材を前記シリンジに押圧した状態で、当接した面同士で超音波溶着を実施する第4の工程と、を有している。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る針付シリンジは、
両端に開口部を有するシリンジと、
面部および前記面部から突出した挿入部を有し、前記面部および前記挿入部を針が貫通して密封接合されている保持部材と、を備え、
前記面部および前記挿入部の根元部分と前記シリンジの一端の前記先端部分とが超音波振動によって溶着している。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、針が確実に保持され、気密性が高く、低い製造コストで容易に製造可能な針付シリンジの製造方法および針付シリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る針付シリンジの製造方法を模式的に示す断面図である。
図2】第2の実施形態に係る針付シリンジの製造方法を模式的に示す断面図である。
図3】第3の実施形態に係る針付シリンジの製造方法を模式的に示す断面図である。
図4】第4の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法を模式的に示す断面図である。
図5】第5の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法を模式的に示す断面図である。
図6】第6の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法を模式的に示す断面図である。
【実施形態の説明】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態の説明)
はじめに、図1を参照しながら、第1の実施形態に係る針付シリンジの説明を行う。ここで、図1は、第1の実施形態に係る針付シリンジ1の製造方法を模式的に表す。図1の(a)は、シリンジ2を示す断面図であり、シリンジ2は、第1の工程で製造される。
図1の(b)は、保持部材3をインサート成形するために注射針4を挿入した金型Mdの断面図である。図1の(c)は、注射針4を保持するための保持部材3を示す断面図であり、保持部材3は、第2の工程で製造される。図1の(d)は、保持部材3の部分斜視図である。図1の(e)および(f)は、保持部材3をシリンジ2に超音波溶着する第3および第4の工程と、シリンジ2に薬液Dをシール7で封入した後にキャップ8で注射針4を保護・収容する第5の工程とを示す断面図である。
【0013】
第1の実施形態に係る針付シリンジ1の製造方法は、第1ないし第5の工程から構成される。第1の工程においては、図1(a)に示すような、両端に開口部2a,2bを有するシリンジ2を形成し、第2の工程においては、図1(b)〜(d)に示すように、面部3aと、当該面部3aから突出する挿入部3bとを有し、注射針4が挿入部3bの内部を貫通して接合された保持部材3を形成する。なお、図1(c)および(d)に示すように、保持部材3の面部3a上には、挿入部3bを中心として環状のリブ3dが形成されている。詳細に説明すると、金型Mdに注射針4を挿入した状態でインサート成形を行い、つまり、注入口Imを介して金型Md内に樹脂を注入し、注射針4と樹脂を一体化して保持部材3を形成する。
【0014】
第3の工程においては、図1(e)および(f)に示すように、保持部材3の挿入部3bをシリンジ2の一端の開口部2aに挿入し、面部3aが、開口部2aの端面2cとそれぞれ所定の面圧で当接するように保持部材3をシリンジ2に押圧する。また、同時に挿入部3bの周側面および円筒部3eの内径面がシリンジ2の内径面および外径面とそれぞれ所定の面圧で当接するように保持部材3をシリンジ2に挿入する。なお、挿入部3bは、シリンジ2の一端の内径面に嵌合する外径を有し、保持部材3は、シリンジ2の一端の外径面に嵌合する内径を有する円筒部3eを有する。
【0015】
第4の工程においては、図1(f)に示すように、保持部材3をシリンジ2に押圧した状態で、当接した面同士2c,3aで超音波溶着を実施して、リブ3dが潰れて接着剤の役割を果たすことで保持部材3とシリンジ2とを溶着させる。
【0016】
第5の工程においては、図1(f)に示すように、シリンジ2内に薬液Dをシール7で封入して、キャップ8で注射針4を保護・収容する。この状態で針付シリンジ1は、長期保存が可能であり、ユーザは、使用したいときにシール7を剥がしてプランジャ5およびプランジャロッド6を針付シリンジ1に装着してキャップ8を外して針付シリンジ1を使用する。
【0017】
ここで、第1の実施形態に係る製造方法によって製造された針付シリンジ1について説明する。針付シリンジ1は、両端に開口部2a,2bを有するシリンジ2と、面部3aおよび面部3aから突出した挿入部3bを有し、面部3aおよび挿入部3bを注射針4が貫通して密封接合されている保持部材3と、を備える。そして、面部3aおよび挿入部3bの根元部分とシリンジ2の一端の先端部分とが溶着している。また、挿入部3bの外径面がシリンジ2の一端の内径部分に嵌合するように構成される。
【0018】
シリンジ2は、両端に開口部2a,2bを有し、開口部2aは、開口部2bより内径が小さく、開口部2a側の比較的内径および外径が小さい円筒部分2Aと、開口部2b側の比較的内径および外径が大きい円筒部分2Bとを組み合わせて構成されている。また、シリンジ2は、開口部2b側にフランジ2dを有する。ユーザは、注射する際に、人差し指と中指でフランジ2dを押さえ、親指でプランジャロッド6(図不掲載)を押圧して、中身の薬液Dを人体等Bに注入する。シリンジ2は、薬液Dがあらかじめ充填されたプレフィルドシリンジであり、開口部2bをそれぞれシール7で密封され、その密封された内部に薬液Dを格納する。
【0019】
保持部材3は、中心部に配置された円筒状の挿入部3bと、挿入部3bに直角に配置された円形状の面部3aと、面部3aの外径に沿って、挿入部3bを取り囲むように配置された円筒部3eとから構成される。面部3aと挿入部3bの外径面と円筒部3eの内径面とから構成される空間には、シリンジ2の開口部2aが当接しながら嵌合するように構成される。また、挿入部3bは、貫通孔3cを有し、貫通孔3cには、注射針4が挿入された状態で成形されている。
【0020】
注射針4は、片方の先端が尖った極細の中空管であり、人体等Bの皮膚等に刺し込んだうえで、その中空管の内部を介して人体等Bに薬液等を供給することができるように構成される。
【0021】
以上のように、第1の実施形態によれば、保持部材3をシリンジ2に装着する際に、保持部材3の挿入部3bがシリンジ2の内径面に保持されるため、注射針4が確実に保持される。また、超音波溶着を用いてシリンジ2の端部2cと保持部材3の面部3aとを接合し、かつ、挿入部3bとシリンジ2の内径面が当接するので気密性を高くすることができる。
【0022】
シリンジ2を構成する材料として、例えば、酸素吸収層の両側を防水層で挟んだ3層構造の樹脂材料を用いる場合には、軽量で機密性の高いシリンジを低い製造コストで得ることができる。このシリンジ2の材料と、上記の保持部材3およびシリンジ2の接合構造との組み合わせにより、長時間保管しても、シリンジ2内に充填された薬液Dの品質を維持することができる。
【0023】
また、針付シリンジ1を構成する各部品は複雑なものではないので容易に製造可能であり、その製造コストを低くすることができる。
【0024】
また、面同士2c,3aだけでなく、面部3a近傍における円筒部3eと開口部2aの外径面との間と、面部3a近傍における挿入部3bの外径面と開口部2aの内径面との間とで溶着するので、面同士2c,3aのみの場合より溶着を強固にすることができる。
【0025】
(第2の実施形態の説明)
次に、図2を参照しながら、第2の実施形態に係る針付シリンジの製造方法の説明を行う。ここで、図2は、第2の実施形態に係る針付シリンジの保持部材3の製造方法を簡単に示す。
図2の(a)は、注射針4を保持するための保持部材3を示す断面図であり、保持部材3は、第2の工程で製造される。図2の(b)は、保持部材3の部分斜視図である。図2の(c)および(d)は、保持部材3に注射針4を挿入して接合する第2の工程を示す断面図である。
【0026】
第2の工程の前半においては、図2(a)に示すように、面部3aと、当該面部3aから突出する挿入部3bとを有し、面部3aおよび挿入部3bに貫通する貫通孔3cが設けられた保持部材3を成形する。なお、図2(b)に示すように、保持部材3の面部3a上には、挿入部3bを中心として環状のリブ3dが形成されている。第2の工程の後半においては、図2(c)および(d)に示すように、保持部材3の貫通孔3cに注射針4を挿入して、当該注射針4を保持部材3に溶着などによって密封して接合する。
【0027】
以上、第2の実施形態によれば、インサート成形を使用しないで保持部材3に注射針4を装着することができるので、製造コストを削減することができる。
【0028】
(第3の実施形態の説明)
図3を参照しながら、第3の実施形態に係る針付シリンジの製造方法の説明を行う。ここで、図3は、第3の実施形態に係る針付シリンジの製造方法を簡単に表す。図3の(a)および(b)は、シリンジ2に保持部材3を超音波溶着する工程を示した断面図である。第3の実施形態に係る保持部材3´は、図3(a)に示すように、第1の実施形態における円筒部3eを有さない。図3の(c)は、第3の実施形態に係る針付シリンジの完成状態を示す断面図である。なお、第3の実施形態に係る針付シリンジ1の製造方法は、第3の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0029】
以上のように、第3の実施形態によれば、保持部材3´が円筒部3eを有さないので、製造コストを低く抑えることができ、かつ、収納スペースを減少させることができ在庫のための収容スペースを減らすことができる。また、保持部材3をシリンジ2に挿入しやすくなるので、使い勝手がよくすることができる。
【0030】
(第4の実施形態の説明)
第4の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法について説明する。図4は、第4の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法を模式的に示す。図4の(a)および(b)は、工場等においてシリンジ2に保持部材3を超音波溶着する工程および針付シリンジ1にプランジャ5およびシール7で薬液Dを封入し、キャップ8で注射針4を収容・保護する工程を示した断面図である。図4の(c)は、シリンジ2にあらかじめ装着されているプランジャ5にプランジャロッド6を装着する工程を示した断面図である。図4の(d)および(e)は、針付シリンジ1の注射針4を人体等Bなどに刺し、プランジャロッド6を押圧してプランジャ5をシリンジ2内で徐々に押下させ、薬液Dを人体等Bに注入する工程を示す断面図である。
【0031】
プランジャ5は、ユーザの操作によって、シリンジ2内を気密的に動く可動式の押子である。プランジャ5は、シリンジ2の内側は凸形状5aを有し、その外側はプランジャロッド6が螺合して固定される雌ネジ穴5bを有する。
【0032】
プランジャロッド6は、プランジャ5の雌ネジ穴5bと螺合する雄ネジ6aと、その反対側にユーザが親指で押圧してプランジャ5をシリンジ2の奥部に押し込むための押圧部6bを有する。
【0033】
図4(a)および(b)に示すように、工場等において、注射針4が接合された保持部材3の挿入部3bをシリンジ2の一端の開口部2aに挿入させて、その状態で超音波溶着を実施し、保持部材3をシリンジ2に溶着させる。次に、シリンジ2内に薬液Dをプランジャ5およびシール7で封入し、注射針4を保護すべくキャップ8を被せて針付シリンジ1を完成させる。
【0034】
そして、ユーザは、図4(c)に示すように、使用時には、シール7を剥がして、プランジャ5にプランジャロッド6を装着する。しかる後に、ユーザは、キャップ8を外して注射針4を人体等Bの皮膚Sに刺し込んで、図4(d)および(e)に示すように、プランジャロッド6を徐々に押下し、シリンジ2内の薬液Dを人体等Bに注入する。
【0035】
以上のように、第4の実施形態によれば、プランジャ5をあらかじめシリンジ2に装着して薬液Dをシリンジ2内に保存しているので、使用時には、簡便に、かつ、最小限の操作で注射器、つまり、針付シリンジ1を使用することができる。
【0036】
(第5の実施形態の説明)
次に、図5を参照しながら、第5の実施形態に係る針付シリンジの使用方法の説明を行う。なお、第1ないし4の実施形態に係る針付シリンジはプレフィルドシリンジであったが、第5の実施形態に係る針付シリンジは、プレフィルドシリンジではない注射器である。ここで、図5は、第5の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法を模式的に表す。図5の(a)および(b)は、工場等においてシリンジ2に保持部材3を超音波溶着する工程および針付シリンジ1にキャップ8を装着する工程を示した断面図である。図5の(c)および(d)は、使用時に、注射針4を薬液瓶Mに突き刺して薬液Dをシリンジ2内に吸引する工程を示した断面図である。図5の(e)は、注射針4を人体等Bの皮膚Sに刺し込んで、取り込んだ薬液Dを人体等に注射する工程を示した断面図である。
【0037】
第5の実施形態に係るシリンジ2は、図5(a)に示すように、工場等において、注射針4が接合された保持部材3の挿入部3bをシリンジ2の一端の開口部2aに挿入させて、その状態で超音波溶着を実施し、保持部材3をシリンジ2に溶着させる。
【0038】
次に、針付シリンジ1にプランジャ5およびプランジャロッド6を装着して、注射針4を保護すべくキャップ8を針付シリンジ1の先端に装着して出荷状態とする。
【0039】
そして、使用時に、ユーザは、図5(c)および(d)に示すように、キャップ8を外して、注射針4を薬液瓶Mに刺し込んだ後に、プランジャロッド6を引き出して薬液Dをシリンジ2内に吸引する。しかる後に、ユーザは、図5(e)に示すように、注射針4を人体等Bの皮膚Sに刺し込み、プランジャロッド6を押し込んで薬液Dを人体等Bに注射する。
【0040】
以上のように、第5の実施形態によれば、プレフィルドシリンジではない針付シリンジであって、注射針が確実に保持され、気密性が高く、低い製造コストで容易に製造可能な針付シリンジを提供することができる。
【0041】
(第6の実施形態の説明)
次に、図6を参照しながら、第6の実施形態に係る針付シリンジの使用方法の説明を行う。なお、第1ないし第5の実施形態に係る針付シリンジは注射器であったが、第6の実施形態に係る針付シリンジは、人体等の細胞組織を穿刺して血液や骨髄液などを採取する生検器具1´である。
【0042】
生検針4´は、片方の先端が尖った極細の中空管であり、人体等Bの皮膚Sなどに刺し込んだうえで、その中空管の内部を介して人体等Bから血液や骨髄液などの体液または体組織を吸引することができるように構成される。
【0043】
ここで、図6は、第6の実施形態に係る針付シリンジの製造方法および使用方法を模式的に表す。図6の(a)および(b)は、工場等でシリンジ2に保持部材3を超音波溶着する工程およびプランジャ5およびプランジャロッド6を装着する工程を示した断面図である。図6の(c)は、医療現場等で生検針4´を人体等の皮膚に穿刺して、その先端を目標部位Tまで到達させる工程を示した断面図である。図5の(d)および(e)は、生検針4´が目標液体Tを吸引するようにプランジャロッド6を操作してプランジャ5を引き上げていく工程を示した断面図である。
【0044】
ここで、第6の実施形態に係る針付シリンジ1の製造方法および使用方法を説明する。工場等において、図6(a)および(b)に示すように、生検針4´が接合された保持部材3の挿入部3bをシリンジ2の一端の開口部2aに挿入させて、その状態で超音波溶着を実施し、保持部材3をシリンジ2に溶着させ、プランジャ5およびプランジャロッド6を装着して、かつ、生検針4´を保護すべくキャップ8を装着して出荷状態とする。
【0045】
その後の使用時に、ユーザは、図6(c)に示すように、キャップ8を外して、生検針4´を人体等Bの皮膚Sに刺し込んで目標部位Tまでその針先を到達させる。しかる後に、ユーザは、図6(d)および(e)に示すように、プランジャロッド6をシリンジ2から引き抜いて、吸引をかけ、血液等の目標液体Tを採取する。
【0046】
以上のように、第6の実施形態によれば、第1ないし第5の実施形態に係る針付シリンジを注射器ではなく、体組織を採取する生検器具にも適用することができ、第1ないし第5の実施形態に係る針付シリンジと同様の効果を与えることができる。
【0047】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の針付シリンジは、注射器、生検器具、採血器具、輸血器具、点滴器具など、種々の医療器具に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 針付シリンジ
1´ 生検器具
2 シリンジ
2a,2b 開口部
2c 端面
2d フランジ
3,3´ 保持部材
3a 面部
3b 挿入部
3c 貫通孔
3d リブ
3e 円筒部
4 注射針
4´ 生検針
5 プランジャ
5a 凸形状
5b 雌ネジ穴
6 プランジャロッド
6a 雄ネジ
6b 押圧部
7 シール
8 キャップ
D 薬液
M 薬液瓶
B 人体等
S 皮膚
T 目標部位
Md 金型
Im 注入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6