【課題】活性エネルギー線硬化型インク組成物において、粘度の調整が容易な活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、且つ、粘度の経時的な変化が少ない活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供すること。
【解決手段】活性エネルギー線重合性モノマーと、非反応性樹脂と、を含有するインクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、JIS K 0070:1992に基づいて測定された非反応性樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下である、活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
前記非反応性樹脂の含有量が前記活性エネルギー線硬化型インク組成物の全量中0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
前記非反応性樹脂がセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びポリオール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
前記活性エネルギー線重合性モノマーの少なくとも1種は(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1から4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
JIS K 0070:1992に基づいて測定された前記活性エネルギー線重合性モノマーの酸価が、1.0mgKOH/g以下である、請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
請求項1から6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を60℃28日放置し、保管試験前の前記活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における粘度Va(単位はmPa・s)と保管試験後の前記活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における粘度Vb(単位はmPa・s)の比である(Vb−Va)/Va×100(単位は%)が−10%超10%未満である、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
<活性エネルギー線硬化型インク組成物>
本発明の一実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、活性エネルギー線重合性モノマーと、非反応性樹脂と、を含有するインクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物である。以下、非反応性樹脂、活性エネルギー線重合性モノマー、及び本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれていてもよい各成分について各々説明する。
【0024】
[非反応性樹脂]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物には、非反応性樹脂を含有する。ここで、本明細書において、非反応性樹脂とは、活性エネルギー線重合性モノマー又は他成分の活性基とラジカル反応が可能な官能基を有していない樹脂を意味する。
【0025】
又、本実施形態に関するJIS K 0070:1992に基づいて測定された非反応性樹脂の酸価は、3.0mgKOH/g以下である。酸価が3.0mgKOH/g以下の非反応性樹脂を活性エネルギー線硬化型インク組成物に含有することにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度が経時的に変化することを抑制することができる。尚、本実施形態に関する非反応性樹脂の酸価は、2.5mgKOH/g以下であることが好ましく、2.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0026】
インクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物であっても、単にその粘度が低い程好ましいというものではない。活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度は、印刷装置やその装置の仕様に応じて最適となるように厳密に調整される。
【0027】
近年のインクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度は、印刷装置やその装置の仕様に応じて最適となるように粘度の調整が容易であって、且つ、粘度の経時的な変化が少ない活性エネルギー線硬化型インク組成物であることが求められる。
【0028】
活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を調整する方法として、樹脂を添加する方法を挙げることができる。しかしながら、本発明者らの知見によれば、活性エネルギー線重合性モノマー又は他成分の活性基とラジカル反応が可能な官能基を有していない非反応性樹脂であった場合であっても、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度が経時的に変化する場合があった。
【0029】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、所定値の酸価をもつ非反応性樹脂を含有されることにより、(1)粘度の調整が容易な活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、(2)粘度の経時的な変化が少ない活性エネルギー線硬化型インク組成物、との2つの効果を同時に満たすことのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
【0030】
酸価が3.0mgKOH/g以下の非反応性樹脂を用いることにより活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度の経時的な変化が少なくなる理由は必ずしも明らかではない。しかしながら、酸価の高い樹脂が含有されている場合には、活性エネルギー線硬化型インク組成物の保管中に、酸価の高い樹脂の一部で架橋反応が進行し、分子量が増加し、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度が増加するものと考えられる。
【0031】
樹脂を含有することにより、エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を調整する思想は従来にもあったが、本発明者らは、その樹脂の酸価に着目し、その樹脂の酸価を調整した活性エネルギー線硬化型インク組成物は、従来にはない新規の活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
【0032】
活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における好ましい粘度は、インクジェット用印刷装置やノズルの仕様等によって異なるが、インクジェット用印刷装置における吐出安定性等の観点から、20mPa・s以下であることが好ましく、15mPa・s以下であることがより好ましい。又、活性エネルギー線硬化型インク組成物の好ましい粘度は、5mPa・s以上であることが好ましく、7mPa・s以上であることがより好ましい。尚、粘度は、例えば、DIN EN ISO 12058−1に基づいて、落球粘度計によって測定することができる。
【0033】
又、粘度の経時的な変化が少ない活性エネルギー線硬化型インク組成物とは、例えば、以下の指標により評価することができる。その指標とは、まず、保管試験前における活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における粘度Va(単位はmPa・s)を測定する。そして、その活性エネルギー線硬化型インク組成物について、外部からの光を遮断可能な褐色等のガラス瓶に入れ密閉する。そして、ガラス瓶に密閉した活性エネルギー線硬化型インク組成物について60℃28日間保管試験を行う。保管試験後における活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における粘度Vb(単位はmPa・s)を求める。そして、その比である(Vb−Va)/Va×100(単位は%)を計算し、この数字が0%に近いほど粘度が経時的な変化が少ない活性エネルギー線硬化型インク組成物であるといえる。
【0034】
(Vb−Va)/Va×100の値は、具体的には、−10%超10%未満であることが好ましく、−8%超8%未満であることがより好ましく、−5%超5%未満であることが更に好ましく、−2%超2%未満であることがなおいっそう好ましい。
【0035】
本実施形態に関する非反応性樹脂は、活性エネルギー線重合性モノマー又は他成分の活性基とラジカル反応が可能な官能基を有していない樹脂であれば特に限定されるものではない。活性エネルギー線重合性モノマー又は他成分の活性基とラジカル反応が可能な官能基とは、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する官能基を挙げることができる。本実施形態に関する非反応性樹脂としては、例えば、セルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ポリオール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ニトロセルロース樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ビニルエステル樹脂、オキセタン樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケイ素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン−チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。
【0036】
セルロースアセテートアルキレート樹脂としては、例えば、セルロースアセテートブチレート樹脂(例えば、イーストマン ケミカル ジャパン社製、商品名「CAB551−0.01」)、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂等を挙げることができる。
【0037】
ポリオール樹脂としては、例えば、TEGO(登録商標)VARIPLUS SK:エボニックデグサジャパン(株)の、ケトン−ホルムアルデヒド縮合体である水素添加物を挙げることができる。
【0038】
アクリル樹脂としては、反応性の官能基を有しないアクリル重合体であり、例えば、Degalan66/02N(EVONIK INDUSTRIES社製の、アクリル重合体を挙げることができる。
【0039】
上記のセルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ポリオール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ニトロセルロース樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ビニルエステル樹脂、オキセタン樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケイ素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン−チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂を非反応性樹脂として活性エネルギー線硬化型インク組成物に含有される場合、上記のセルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ポリオール樹脂、アクリル樹脂(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ニトロセルロース樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ビニルエステル樹脂、オキセタン樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケイ素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン−チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂の含有量は、非反応性樹脂全量中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0040】
本実施形態に関する非反応性樹脂の含有量は、特に制限されるものではない。非反応性樹脂における含有量は、非反応性樹脂の数平均分子量にもよるが、インクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を好ましい範囲に上昇させることができるという観点から、活性エネルギー線硬化型インク組成物の全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。非反応性樹脂における含有量は、非反応性樹脂の平均分子量にもよるが、インクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を好ましい範囲に抑制させることができるという観点から、活性エネルギー線硬化型インク組成物の全量中5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
本実施形態に関する非反応性樹脂の数平均分子量は、特に制限されるものではないが、インクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を好ましい範囲にすることができるという観点から、10万以下であることが好ましく、7万以下であることがより好ましく、3万以下であることが更に好ましい。非反応性樹脂の平均分子量を10万以下とすることにより、非反応性樹脂の含有量に対する活性エネルギー線硬化型インク組成物における粘度の上昇量を抑制することができる。そのため、活性エネルギー線硬化型インク組成物における粘度の調整が容易となり、印刷装置やその装置の仕様に応じて最適となるように厳密に粘度を調整することが容易となる。本実施形態に関する非反応性樹脂の数平均分子量において、数平均分子量は、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、5000以上であることが更に好ましい。
【0042】
[活性エネルギー線重合性モノマー]
本実施形態に関する活性エネルギー線重合性モノマーは、活性エネルギー線の作用によって重合可能なものであり、且つ先述した非反応性樹脂を溶解又は分散することのできるものであれば特に限定されない。エチレン性不飽和二重結合が化合物中に1個有する単官能モノマーであってもよいし、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に2個以上する多官能モノマーであってもよい。なお、本発明における「活性エネルギー線重合性モノマー」のモノマーとは、その分子量によってはオリゴマーとも称される化合物をも含む概念である。
【0043】
活性エネルギー線重合性モノマーを有する化合物におけるエチレン性不飽和二重結合の構造は、特に限定されない。例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和二重結合が(メタ)アクリロイル基であることが、インクにおける硬化性の点から好ましい。尚、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基との両方を意味する。
【0044】
本発明においては、活性エネルギー線重合性モノマーとしては、中でも、低粘度であって、得られるインクの硬化性に優れ、且つ、硬化時の収縮が小さい点から、(メタ)アクリレート基を化合物中に1個のみ有する単官能(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリレート基を化合物中に2個有する二官能(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。単官能(メタ)アクリレートは、低粘度で、且つ、硬化収縮が小さいため柔軟性を要する用途に特に適している。又、二官能(メタ)アクリレートは、低粘度で、且つ、硬化時に架橋密度が高くなるため、耐性を要する用途に特に適している。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0045】
単官能(メタ)アクリレートは特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、(2―メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2,2,2−とリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、これらの単官能(メタ)アクリレートを活性エネルギー線重合性モノマーとして含有する場合、これらの単官能(メタ)アクリレートの含有量は、単官能モノマー全量中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0046】
中でも、硬化収縮が小さく、硬化膜との密着性が良好な点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素単官能(メタ)アクリレート、及び、(2―メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の複素環化合物が好ましい。
【0047】
二官能(メタ)アクリレートは特に限定されない。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、これらの二官能(メタ)アクリレートを活性エネルギー線重合性モノマーとして含有する場合、これらの二官能(メタ)アクリレートの含有量は、多官能モノマー全量中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0048】
尚、上述したこれらの単官能(メタ)アクリレート及びこれらの二官能(メタ)アクリレートを活性エネルギー線重合性モノマーとして含有する場合、これらの(メタ)アクリレートの含有量は、活性エネルギー線重合性モノマー全量中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0049】
二官能(メタ)アクリレートとしては、低粘度且つ架橋密度が高くなる点から、中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0050】
又、単官能(メタ)アクリレートと、二官能(メタ)アクリレートを適宜組み合わせて用いることもできる。単官能(メタ)アクリレートと、二官能(メタ)アクリレートを組み合わせて用いる場合の含有比率は、用途に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されない。中でも、硬化膜の密着性と膜強度を両立させる点から、単官能(メタ)アクリレート全量に対して、二官能(メタ)アクリレートが60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
アクリロイル基以外では、ビニル基が好ましく用いられ、単官能ビニルモノマーとしてはN−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられ、特に、N−ビニルカプロラクタムが低粘度且つ密着性良好であるためより好ましい。二官能ビニルモノマーとしては、トリエチレングリコールジビニルエーテルが低粘度且つ粘度を低下させる能力に長けているためより好ましい。
【0052】
本実施形態に関する活性エネルギー線重合性モノマーは、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。本実施形態のインクジェットインク組成物においては、無溶剤型、すなわち有機溶剤を含まないことが好ましいため、通常、当該エチレン性不飽和結合を有する化合物が溶媒又は分散媒の代わりとなる。そのため、硬化性や、硬化後における膜物性の他に、溶媒又は分散媒となり得、且つ、インクジェット適性を有する観点から、適宜選択して組み合わせることが好ましい。
【0053】
又、本実施形態に関する活性エネルギー線重合性モノマーにおける1g当たりの不飽和二重結合当量(以下、単に不飽和二重結合当量(g/eq)とする)は、特に限定されないが、硬化収縮が小さく、且つ、架橋密度が高くなる点から、50g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましい。
【0054】
溶媒又は分散媒となり得る活性エネルギー線重合性モノマーとしては、室温(25℃)で液状であるものの中から適宜選択すれば良く、例えば、分子量が150以上400以下のものが好適に用いられる。
【0055】
又、溶媒又は分散媒となり得る活性エネルギー線重合性モノマーは、中でも、インクジェットインク組成物のゲル化を防ぐ観点から、水酸基やカルボキシ基を含まないものが好ましい。
【0056】
又、本実施形態に関する活性エネルギー線重合性モノマーにおける粘度安定性の点から、JIS K 0070:1992に基づいて測定された活性エネルギー線重合性モノマーの酸価は、1.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0057】
溶媒又は分散媒となり得る活性エネルギー線重合性モノマーとして、好ましいものの具体例としては、例えば、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0058】
本実施形態に関する活性エネルギー線重合性モノマーの含有量は、特に限定されない。硬化膜における硬化性の点から、本実施形態のインクジェットインク組成物全体における活性エネルギー線重合性モノマーにおける含有量は、30質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。活性エネルギー線重合性モノマーにおける粘度安定性の点から、本実施形態のインクジェットインク組成物全体における活性エネルギー線重合性モノマーの含有量は、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
[活性エネルギー線重合開始剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて活性エネルギー線重合開始剤(以下、単に重合開始剤と表記することがある。)を含有しても良い。活性エネルギー線は、ラジカル、カチオン、アニオン等の重合反応を契機し得るエネルギー線であれば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波や、電子線、プロトン線、中性子線等のいずれであっても良いが、硬化速度、照射装置の入手容易さ、価格等の観点において、紫外線照射による硬化が好ましい。重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化型インク組成物中の活性エネルギー線重合性モノマーの重合反応を促進するものであれば特に限定されず、従来公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の具体例として、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α−アミノアルキルフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に関する重合開始剤の量は、活性エネルギー線重合性モノマーの重合反応を適切に開始できる量であれば良く、活性エネルギー線硬化型インク組成物全体に対して1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。又、活性エネルギー線硬化型インク組成物全体に対して20.0質量%以下であることが好ましい。なお、本発明においては、重合開始剤は必ずしも必須でなく、例えば活性エネルギー線として電子線を用いる場合には重合開始剤は用いなくてもよい。
【0061】
[重合禁止剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤は、特許文献1に記載のフェノチアジン類重合禁止剤及びニトロソアミン類重合禁止剤を用いることが好ましい。重合禁止剤としてフェノチアジン類重合禁止剤及びニトロソアミン類重合禁止剤を組み合わせて用いることにより、無酸素雰囲気下、及び酸素存在下のいずれの場合においても長期間安定で、且つ、硬化性に優れた、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物が得られる。
【0062】
[色材]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて色材を含有しても良い。色材を含有することで、硬化膜を加飾用の硬化膜として好ましく用いることができる。色材は、従来の油性インク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料であればどのようなものであっても良く、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化チタン、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、アルミペースト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、沈降性硫酸バリウム、パール顔料等が挙げられる。
【0063】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物において顔料の好ましい分散粒径は、レーザー散乱法による体積平均粒径で10nm以上であることが好ましい。又、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物において顔料の好ましい分散粒径は、レーザー散乱法による体積平均粒径で300nm以下であることが好ましい。体積平均粒径を10nm以上、300nm以下、又は10nm以上300nm以下にすることで、耐光性を維持することが可能となることや、分散の安定化が可能となり顔料の沈降やインクジェット記録装置でインクジェットインクを吐出する際でのヘッド詰まりや吐出曲がりが発生する可能性を軽減することが可能となるため、より好ましい活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0064】
本実施形態において、顔料を用いる場合、その含有量は適宜調整されれば良い。顔料の種類によっても異なるが、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量における、顔料の含有量は、分散性と着色力を両立する点から、有機顔料の場合、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。又、分散性と着色力を両立する点から、有機顔料の場合、20.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましい。又、分散性と着色力を両立する点から、無機顔料の場合、1.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましい。又、無機顔料の場合、40.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以下がより好ましい。
【0065】
[分散剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて分散剤を含有しても良い。分散剤としては例えば高分子分散剤が挙げられる。この高分子分散剤の主鎖はポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系等からなり、高分子分散剤は、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等の極性基やこれらの塩を有するのが好ましい。
【0066】
高分子分散剤としては、ビックケミー社製「DISPERBYK−168」、「DISPERBYK−2013」、「DISPERBYK−2055」、「DISPERBYK−2096」、「DISPERBYK−2152」、「DISPERBYK−2155」、「DISPERBYK−2200」、「BYK−9076」、「BYK−9077」、「BYKJET−9142」、「BYKJET−9150」、「BYKJET−9151」、「BYKJET−9152」;ビーエーエスエフ社製「Dispex Ultra FA 4420」、「Dispex Ultra FA 4425」、「Efka PX 4701」、「Efka PX 4731」、「Efka PX 4732」、「Efka PX 4733」;ルーブリゾール社製「ソルスパース(SOLSPERSE)3000」、ソルスパース5000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース12000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース22000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース71000」;楠本化成社製「ディスパロン DA−325」、「ディスパロン DA−375」、「ディスパロン DA−234」、「ディスパロン DA−550」;味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB824」、「アジスパーPB881」;共栄社化学社製、「フローレンG−700」、「フローレンKDG−2400」、「フローレンGW−1500」;エボニックデグサジャパン社製「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers690」等が挙げられる。
【0067】
[表面調整剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、更に表面調整剤を含有していても良い。表面調整剤としては特に限定されないが、具体例としては、ジメチルポリシロキサンを有するビックケミー社製「BYK−307」、「BYK−333」、「BYK−354」、「BYK−361N」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−3455」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3505」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3535」、「BYK−UV3570」;エボニックデグサジャパン社製「TEGO Flow425」、「TEGO Glide100」、「TEGO Glide110」、「TEGO Glide130」、「TEGO Glide432」、「TEGO Glide435」、「TEGO Glide440」、「TEGO Glide450」、「TEGO GlideZG400」、「TEGO Twin4000」、「TEGO Twin4200」、「TEGO Wet270」、「TEGO Rad2010」、「TEGO Rad2010」「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2700」;共栄社化学社製「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」;アクリルポリマー系では、共栄社化学社製「ポリフローNo.75」、「ポリフローNo.77」、「ポリフローNo.90」、「ポリフローNo.95」、「ポリフローNo.99C」;エボニックデグサジャパン社製「TEGO Wet500」等が挙げられる。
【0068】
表面調整剤の含有量は、インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましい。又、表面調整剤の含有量は、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上、又は、5.0質量%以下とすることで、インク組成物が熱可塑性樹脂基材等に対し好ましい濡れ性を有することとなり、基材上に記録する(像を形成する)際に活性エネルギー線硬化型インク組成物がハジキを生じることなく濡れ広がることが可能となるため、特に好ましい活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0069】
[艶消し剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて、艶消し剤を含有しても良い。艶消し剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなどの各種粉粒体を使用することができる。艶消し剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0070】
[その他の添加剤]
又、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、その他の添加剤として、可塑剤、光安定化剤、酸化防止剤等、種々の添加剤を含有していても良い。溶剤は本願の目的を達成する範囲内で添加することもできる。
【0071】
又、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物の表面張力は、インクジェットの吐出性、吐出安定性の点から、40℃での表面張力が20mN/m以上であることが好ましい。又、40℃での表面張力が40mN/m以下であることが好ましい。
【0072】
<積層体の製造方法>
本実施形態において積層体の製造は、上記活性エネルギー線硬化型インク組成物を、基材上へ好ましくはインクジェット方式で印刷した後、活性エネルギー線で硬化することによって行われる。又、インクジェット方式で印刷する際にインクジェットヘッドを加熱した状態で印刷しても良いし、室温のまま印刷しても良い。
【0073】
なお、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材に画像を形成することができる。例えば、様々な色合いの色材をそれぞれ含有させた活性エネルギー線硬化型インク組成物のインクセットを用意し、インクジェット方式により印刷後、インク組成物を硬化することによって、基材に様々な画像を形成することができる。このような硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型インク組成物や基材上に画像を形成する像形成方法も本発明の範囲である。尚、本明細書において「画像」とは、単色又は複数の色からなる文字、図表、図形、記号、写真等を含む視覚を通じて認識することができる装飾的な像を意味し、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄等も含まれる。
【0074】
[基材]
基材は特に限定されず、例えば塗工紙、非塗工紙、布帛等の吸収体、非吸収性基材のいずれも使用することができる。具体的には、非塗工紙としては、更紙、中質紙、上質紙、塗工紙としては、コート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙、布帛等の吸収体としては、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を例示でき、非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を例示できる。
【0075】
[活性エネルギー線による硬化]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を硬化させた硬化膜(以下、「硬化膜」と表記することがある。)を形成するための活性エネルギー線は、200nm以上における波長域の光が好ましく、250nm以上における波長域の光がより好ましい。硬化膜を形成するための活性エネルギー線は、450nm以下における波長域の光が好ましく、430nm以下における波長域の光がより好ましい。光源は、特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。これらの光源を用い、積算光量が100mJ/cm
2以上、好ましくは200mJ/cm
2以上になるように活性エネルギー線を照射することにより、インク組成物を瞬時に硬化させることができる。
【0076】
硬化膜の厚さは、1μm以上であることが好ましい。又、硬化膜の厚さは、100μm以下であることが好ましい。1μm以上にすることで、色材を含有する硬化膜の色濃度が薄くなることなく、意匠性や装飾性の低下や密着性、伸長性等の物性が向上するため、より好ましい。100μm以下にすることで、インク組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、インク組成物をより短時間で充分に硬化することができるようになるため、より好ましい。
【0077】
硬化膜における厚さの測定方法は、作製した硬化膜と同様の塗布条件でPETフィルム(東洋紡績社製、A4300)に本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を塗布し、得られた硬化膜の厚さをマイクロメーターにより測定することができる。尚、本明細書において、硬化膜の厚さとは1サンプルにつき10箇所行い、これらの平均値を厚さ(平均厚さとする)。後述の保護層及びプライマーについても同様のものとする。
【0078】
[硬化膜]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜は、前述したように色材等を含有していれば加飾層として用いることができる。更に、色材を添加せずに加飾層上に吐出することにより、本硬化膜は、硬化膜を保護するオーバーコート層として利用することもできる。更に、基材表面と硬化膜との間に形成することで両者の密着性を向上させるためのプライマー層としても利用することができる。このような硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型インク組成物も本発明の範囲である。
【0079】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜のみで加飾層、オーバーコート層又はプライマー層をそれぞれ単独で形成することもできるし、又はこれらの層を複数組み合わせて形成することもできる。例えば本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物に色材等を加え加飾層を形成し、その加飾層上に色材等を加えていない本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を吐出することでオーバーコート層を形成することもできる。又、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜を、従来公知のインク組成物により形成される加飾層、オーバーコート層又はプライマー層と組み合わせて使用することもできる。例えば本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を加飾層として利用した場合に、その加飾層上に従来公知のオーバーコート組成物を用いてオーバーコート層を形成することもできる。
【0080】
基材にオーバーコート層やプライマー層を形成する場合、これらの層を形成する方法としてはどのような方法であっても良く、例えば、スプレー塗布、タオル、スポンジ、不織布、ティッシュ等を用いた塗布、ディスペンサー、刷毛塗り、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット、熱転写方式等のいずれであっても良い。尚、色材等を加えていない本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を吐出することでオーバーコート層を形成する場合には、インクジェットによってこれらの層を形成することが好ましい。
【0081】
[オーバーコート層]
積層体の耐久性をより向上させることを目的に、本実施形態のインク組成物における硬化膜の表面に、従来公知のオーバーコート剤からなるオーバーコート層又は本実施形態のインク組成物をオーバーコート剤として用いて形成されるオーバーコート層が更に形成されていても良い。なお、オーバーコート層は、インク組成物の硬化膜からなる層の表面に形成される場合に限らず、基材の表面に直接形成されていても良いし、基材の表面に形成された、後述するプライマー層の表面に形成されていても良い。
【0082】
オーバーコート剤としては、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を好ましく用いることができる。本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いることで、優れた硬化性と延伸性とを実現することができる。更に、例えば本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いた硬化膜に本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いたオーバーコート剤によりオーバーコート層を形成した場合には、当該硬化膜と当該オーバーコート層は同様の組成であるため、これらの密着性は極めて高い。そのため、本実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物における硬化膜用のオーバーコート剤として本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いることが特に好ましい。
【0083】
オーバーコート層の厚さは、1μm以上であることが好ましい。1μm以上とすることで、硬化膜を適切に保護することができるため好ましい。又、オーバーコート層の厚さは、100μm以下であることが好ましい。100μm以下とすることで、オーバーコート層を形成するために乾燥時間が短縮され、生産性に優れたものとすることができるため好ましい。
【0084】
又、オーバーコート層を形成する際にインク組成物の吐出量やインク組成物を吐出してから活性エネルギー線照射までにおける時間等の条件を調節することで、オーバーコート層に意匠性を付与することもできる。例えば、表面を艶消し調やグロス調にすることや、表面の膜厚をあえて不均一にすることで凹凸が付けられた立体的で意匠性の高いオーバーコート層を形成することもできる。具体的には、インク組成物を吐出後、所定時間経過後に活性エネルギー線を照射することで表面をグロス調にすることができ、又吐出後、速やかに活性エネルギー線を照射することで表面を艶消し調とすることができる。又1回の吐出量を吐出箇所によって増減させることで凹凸を付与することもできるし、又同一箇所でインク組成物の吐出と活性エネルギー線の照射とを繰り返すことで他箇所との凹凸差を付与することもできる。このような硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型インク組成物や凹凸像を形成する像形成方法も本発明の範囲である。なお、そのようなオーバーコート層は条件調整が容易である点からインクジェット方式で形成することが望ましい。凹凸像とは、必ずしも視覚を通じて認識されるものには限定されず、例えば無色の硬化膜であっても単色又は複数の色を有する硬化膜であっても、凹凸を有する形状であれば含まれる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0086】
<インク組成物の調製(実施例1〜3、比較例1〜3、参考例)>
実施例、比較例、及び参考例における、インク組成物全量中におけるインク組成物の活性エネルギー線重合性モノマー、非反応性樹脂、重合禁止剤、重合開始剤、界面活性剤、顔料分散液の質量部を表1に示す。
【0087】
〔インク組成物の調製〕
各材料を表1に示す割合になるように混合し、室温(20〜25℃)にて1時間撹拌した。その後、溶け残りがないことを確認した。その後、メンブレンフィルターを用いて濾過を行い、実施例、比較例、及び参考例の活性エネルギー線硬化型インク組成物を調製した。
【0088】
表1中、「イソボルニルアクリレート」は、大阪有機化学工業社製のIBXA(イソボルニルアクリレート)を用いた。表1中、「フェノキシエチルアクリレート」は、サートマー社製のSR339Aを用いた。表1中、「N−ビニルカプロラクタム」は、ASHLAND社製のV−CAP/RC(M)を用いた。表1中、「脂肪族ウレタンアクリレート」は、サートマー社製のCN996を用いた。
【0089】
表1中、「CAB551−0.01」とは、イーストマン ケミカル ジャパン社製のCAB551−0.01(セルロースアセテートブチレート樹脂)である。表1中、「Degalan66/02N」とは、EVONIK INDUSTRIES社製のDegalan66/02N(アクリル樹脂)である。表1中、「TEGO VariPlus SK」とは、エボニックデグサジャパン社製のTEGO VariPlus SK(ポリオール樹脂)である。表1中、「CAB551−0.01」とは、イーストマン ケミカル ジャパン社製のCAB551−0.01(セルロースアセテートブチレート樹脂)である。表1中、「ダイヤナール BR113」とは、三菱レイヨン社製のダイヤナール BR113(アクリル樹脂)である。表1中、「Degalan64/12N」とは、EVONIK INDUSTRIES社製のDegalan64/12N(アクリル樹脂)である。表1中、「TEGO AddBond LTH」とは、エボニックデグサジャパン社製のTEGO AddBond LTH(変性特殊ポリエステル)である。
【0090】
表1中、「Genorad22」とは、Rahn社製のGenorad22(Nーニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩溶液(有効成分約0.005%))であって重合禁止剤である。表1中、「アンテージTDP」とは、川口化学工業社製のアンテージTDP(フェノチアジン)であって重合禁止剤である。
【0091】
表1中、「DAIDO UV−CURE APO」とは、大同化成工業社製のDAIDO UV−CURE APO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)であって重合開始剤である。表1中、「DETX」とは、三菱商事ケミカル社製、DOUBLECURE DETX(2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン)であって重合開始剤を意味する。表1中、「Speedcure BMS」とは、Lambson社製のSpeedcure BMS(4−ベンゾイル 4’−メチルジフェニル スルフィド)であって重合開始剤である。
【0092】
表1中、「BYKUV3570」とは、ビックケミー・ジャパン社製のBYKUV3570(ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(有効成分70%))であって界面活性剤である。
【0093】
表1中、「シアンミルベース」は、東洋インキ製造社製の顔料「リオノールブルーFG−7400」と、ビックケミー・ジャパン社製の分散剤「BYKJET−9150」(有効成分70%)とを、D(分散有効成分重量分)/P(顔料重量分)=0.4 の比率とし、更に、大阪有機化学工業社製のIBXAにて、ミルベース中の顔料分を12重量%となるように混合して製造した顔料分散液である。
【0094】
<初期粘度(Va)測定試験>
実施例、比較例、及び参考例の活性エネルギー線硬化型インク組成物について後述する保管試験前の粘度(初期粘度)(Va)を測定した。具体的には、DIN EN ISO 12058−1に基づいて、落球粘度計を用いて40℃で粘度を測定した。測定結果を表1に示す(表1中「初期粘度(Va)」と表記)。
【0095】
<60℃28日保管後粘度(Vb)測定試験>
実施例、比較例、及び参考例の活性エネルギー線硬化型インク組成物について保管試験を行い、保管試験後の粘度(Vb)を測定した。具体的には、実施例、比較例、及び参考例の活性エネルギー線硬化型インク組成物について、およそ25mlを容量30mlの褐色ガラスびんへ入れ密栓した試料を、温度を60℃、保管期間を28日とし、保管試験を行った。そして、保管試験後の実施例、比較例、及び参考例の活性エネルギー線硬化型インク組成物について、上記の初期粘度(Va)測定試験と同様の方法で粘度を測定した。測定結果を表1に示す(表1中「60℃28日保管後粘度(Vb)」と表記)。尚、表1中において、活性エネルギー線硬化型インク組成物がゲル化してしまい、粘度が測定できなかった活性エネルギー線硬化型インク組成物については、「ゲル化」と記載した。
【0096】
[評価基準]
初期粘度(Va)及び60℃28日保管後粘度(Vb)から、(Vb−Va)/Va×100(単位は%)を計算し、表1中「保存安定性評価」に、(Vb−Va)/Va×100が10%以上若しくは−10%以下の活性エネルギー線硬化型インク組成物、又は保管試験後にゲル化した活性エネルギー線硬化型インク組成物、については「NG」と記載し、(Vb−Va)/Va×100が−10%超10%未満及び保管試験後にゲル化しなかった活性エネルギー線硬化型インク組成物については「GOOD」と記載した。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より酸価が3.0mgKOH/g以下の非反応性樹脂を含有する実施例1〜3の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、酸価が3.0mgKOH/gを超える非反応性樹脂を含有する比較例1〜3の活性エネルギー線硬化型インク組成物に比べ、粘度安定性の高い活性エネルギー線硬化型インク組成物であることが分かる。
【0099】
一方、酸価が3.5mgKOH/gの非反応性樹脂を含有する比較例1の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、保管試験前における活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における粘度Vaと保管試験後における活性エネルギー線硬化型インク組成物の40℃における粘度Vbの比である(Vb−Va)/Va×100(単位は%)が10%を大幅に超えており、粘度安定性の低い活性エネルギー線硬化型インク組成物であることが確認された。
【0100】
又、比較例2及び比較例3の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、保管試験後に活性エネルギー線硬化型インク組成物がゲル化してしまい、同様に粘度安定性の低い活性エネルギー線硬化型インク組成物であることが確認された。
【0101】
尚、参考例の非反応性樹脂自体を含有していない活性エネルギー線硬化型インク組成物は、実施例1〜3の活性エネルギー線硬化型インク組成物と同様に粘度安定性の低い活性エネルギー線硬化型インク組成物ではある。しかしながら、初期粘度(Va)自体が実施例1〜3の活性エネルギー線硬化型インク組成物と比べて低い。すなわち、実施例1〜3の活性エネルギー線硬化型インク組成物が、非反応性樹脂を含有することにより、印刷装置やその装置の仕様(例えば、印刷装置のノズル等)に応じて最適となるように粘度の厳密に調整が可能であることが確認された。