(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-154920(P2018-154920A)
(43)【公開日】2018年10月4日
(54)【発明の名称】粉末金属焼結のためのろう付けプリフォーム
(51)【国際特許分類】
B22F 7/06 20060101AFI20180907BHJP
F16H 57/08 20060101ALI20180907BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20180907BHJP
【FI】
B22F7/06 F
F16H57/08
B23K1/19 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-13423(P2018-13423)
(22)【出願日】2018年1月30日
(31)【優先権主張番号】15/443,657
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】シャイル エヌ.シャー
(72)【発明者】
【氏名】ブレイディ ギャンバティース
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス エス.バーノン
【テーマコード(参考)】
3J063
4K018
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AC03
3J063BA10
3J063BB11
3J063BB23
3J063BB48
3J063CD41
3J063XC01
4K018JA09
4K018KA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品点数を最小限にし、高強度を有し、製造し易くすると共に、トランスミッション内で使用するのに必要な高トルク要件を満たす、粉末金属キャリアアセンブリの提供。
【解決手段】ろう付けプリフォーム55を使用して焼結される、トランスミッションのためのプラネタリキャリアサブアセンブリが提供される。キャリアサブアセンブリは、粉末金属キャリア部材52から或る距離だけ延びる複数のキャリア脚部58を有する粉末金属キャリア部材52と、粉末金属カバー部材54から或る距離だけ延びる複数のカバー脚部64を有する粉末金属カバー部材54とを含んでよい。キャリア部材52及びカバー部材54は、キャリア脚部58のそれぞれの端部及びカバー脚部64のそれぞれの端部が互いに整列されるように位置決めされる。サブアセンブリは、ろう付け材料及び犠牲バインダ例えばワックスを含む少なくとも1つのろう付けプリフォーム55を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションのためのプラネタリキャリアサブアセンブリであって、前記プラネタリキャリアサブアセンブリが、
粉末金属キャリア部材であって、前記粉末金属キャリア部材から或る距離だけ延びる複数のキャリア脚部を含む、粉末金属キャリア部材と、
粉末金属カバー部材であって、前記粉末金属カバー部材から或る距離だけ延びる複数のカバー脚部を含み、前記キャリア部材と前記カバー部材とが、前記キャリア脚部のそれぞれの端部が前記カバー脚部の端部と整列されるように位置決めされている、粉末金属カバー部材と、
整列された前記キャリア脚部及びカバー脚部のそれぞれの対の間に配置された少なくとも1つのろう付けプリフォームであって、前記ろう付けプリフォームが、ろう付け材料と犠牲バインダとを含み、前記ろう付けプリフォームが、後続の焼結プロセス中にろう付け材料流れを導くように構成されたジオメトリを備えている、少なくとも1つのろう付けプリフォームと、
を含む、プラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項2】
前記整列されたキャリア脚部及びカバー脚部のそれぞれの各対の間に配置されたろう付けプリフォームを含む、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項3】
前記ろう付けプリフォームが単一平面内に整列される、請求項2に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項4】
互いに接合された、離間された複数のろう付けプリフォームを含むろう付けプリフォーム群を含む、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項5】
前記ろう付けプリフォーム群が、前記ろう付けプリフォーム同士を接合する複数の結合部分を含み、さらに、各ろう付け材料部分が前記カバー脚部及びキャリア脚部のそれぞれの対と整列される、請求項4に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項6】
前記ろう付けプリフォームのジオメトリが、前記キャリア脚部及び前記カバー脚部のうちの少なくとも1つのジオメトリにほぼ一致する外周を画定している、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項7】
前記ろう付け材料が前記犠牲バインダ内部に封入されており、前記犠牲バインダが、前記キャリア脚部及び前記カバー脚部のうちの少なくとも1つのジオメトリにほぼ一致する外周を画定している、請求項6に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項8】
前記ろう付け材料の少なくとも一部が、前記キャリア部材又は前記カバー部材と直接に接触した状態で位置決めされている、請求項6に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項9】
前記犠牲バインダが、前記後続の焼結プロセスの前に前記ろう付けプリフォームを前記サブアセンブリの少なくとも一部に付着させるように構成されている、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項10】
前記ろう付け材料が前記犠牲バインダ内部に部分的に封入されている、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項11】
前記ろう付け材料が前記犠牲バインダ内部に完全に封入されている、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項12】
前記キャリア部材及びカバー部材のうちの少なくとも一方が、後続の焼結プロセスの前に前記ろう付けプリフォームを受容するように構成された保持特徴を画定している、請求項1に記載のプラネタリキャリアサブアセンブリ。
【請求項13】
粉末金属コンポーネントを接合する方法であって、前記方法が、
複数の成形済ろう付けプリフォームを第1の粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域と整列させることであって、各成形済ろう付けプリフォームが、ろう付け材料と犠牲バインダとを含み、かつ、それぞれのあらかじめ定められたジョイント領域の形状に一致するジオメトリを有している、前記複数のろう付けプリフォームを整列させることと、
前記犠牲バインダをそれぞれのあらかじめ定められたジョイント領域に付着させかつ前記ろう付けプリフォームの相対移動を防止するのに充分な圧力を、前記ろう付けプリフォームに加えることと、
前記第1の粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域が第2の粉末金属コンポーネントの対応するジョイント領域と整列されるように、前記第2の粉末金属コンポーネントを前記第1の粉末金属コンポーネントと整列させて、サブアセンブリを形成するようにすることと、
前記犠牲バインダを除去し続いて前記ジョイント領域へろう付け材料流れを導くのに充分な温度まで前記サブアセンブリを加熱することと、
前記あらかじめ定められたジョイント領域にろう付けジョイント部を有する粉末金属アセンブリを形成するために、前記サブアセンブリを焼結することと、
を含む、方法。
【請求項14】
さらに、前記サブアセンブリを加熱する前に余剰の犠牲バインダを除去することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粉末金属コンポーネントの少なくとも1つがろう付け材料保持特徴を画定しており、前記複数のろう付けプリフォームを整列させるステップが、前記ろう付けプリフォームをそれぞれのろう付け材料保持特徴に隣接して配向することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
トランスミッションのためのプラネタリキャリアアセンブリを形成する方法であって、前記方法が、
ろう付けプリフォームを、粉末金属キャリア部材から一体的に延びる複数のキャリア脚部と整列させることであって、前記ろう付けプリフォームがろう付け材料と犠牲バインダとを含む、前記ろう付けプリフォームを整列させることと、
前記粉末金属キャリア部材の前記キャリア脚部のそれぞれの端部と、粉末金属カバー部材から一体的に延びる複数のカバー脚部のそれぞれの端部とが互いに整列されてサブアセンブリを形成するように、前記複数のカバー脚部を前記複数のキャリア脚部と整列させることと、
前記犠牲バインダを除去し続いてあらかじめ定められたジョイント領域へろう付け材料流れを導くのに充分な温度まで前記サブアセンブリを加熱することと、
前記キャリア脚部と前記カバー脚部とのそれぞれの対の間にろう付けジョイント部を有する前記プラネタリキャリアアセンブリを形成するために、前記サブアセンブリを焼結することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記犠牲バインダがワックスを含み、前記ろう付けプリフォームを整列させるステップが、前記サブアセンブリを加熱する前に前記ろう付けプリフォームの相対移動を防止するために、前記キャリア脚部及び前記カバー脚部のうちの少なくとも1つの端部に前記ワックスを付着させるのに充分な圧力を、前記ろう付けプリフォームに加えることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のキャリア脚部の各々がろう付け材料保持特徴を画定しており、前記ろう付けプリフォームを整列させるステップが、前記ろう付けプリフォームをそれぞれのろう付け材料保持特徴に隣接して配向することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ろう付けプリフォームが、複数のろう付け材料部分と犠牲バインダとを含むろう付けプリフォーム群として提供され、前記ろう付けプリフォームを整列させるステップが、前記ろう付けプリフォーム群の各ろう付け材料部分をそれぞれのキャリア脚部又はカバー脚部と整列させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記サブアセンブリを加熱する前に余剰の犠牲バインダを除去することを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は大まかに言えば、粉末金属コンポーネント(構成要素)を接合するためのろう付けプリフォーム、より具体的には、トランスミッション(変速機)のための粉末金属プラネタリキャリアサブアセンブリのコンポーネントを接合するためのろう付けプリフォームに関し、焼結前に前記コンポーネントを集成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示中に提供された背景技術の記述は、開示の文脈を全般的に提示することを目的としている。この背景のセクションに記載され得る範囲における本願発明者の業績は、他の形で出願時点における従来技術として不適とされる本記述の態様とともに、明示的にも黙示的にも、本技術に対する従来技術として承認されたものではない。
【0003】
トランスミッションコンポーネントは、高い強度を有さなければならず、高いトルク容量に適していなければならない。粉末金属トランスミッションコンポーネントはいくつかの技術的利点をもたらし、製造上の戦略及び視点から見てますます魅力的なものになりつつある。典型的な粉末金属キャリア構造は、種々のピニオンギア及び関連コンポーネントを収容するために3つ又はそれよりも多くのピースを含むことがある。これらのピースは筒状のシェル又はドラムと、1つ又はそれよりも多くの支持部材と、バッキングプレートと、種々の他の任意又は補助型の構造を含むことがある。種々の粉末金属トランスミッションコンポーネントは、一緒に焼結されかつ/又はろう付けされてもよい。ろう付け技術は、焼結後に部品同士間の均一な申し分のない連結を保証するために、ろう付け材料の注意深い配置を必要とするおそれがある。例えば、ろう付け材料の一貫性のない配置及び/又は溶融は、毛管流パターンに悪影響を及ぼすおそれがあり、このことは一貫性のない固着部及びジョイント部を招くおそれがある。一貫性のない連結は、部品強度が望ましくなく変動する部品及びアセンブリをもたらすおそれがある。
【0004】
したがって、部品点数を最小限にし、強度及び製造しやすさを提供するとともに、トランスミッション内で使用するのに必要な高トルク要件を満たすことのできる、改善された粉末金属キャリアアセンブリが依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
このセクションは、本開示の全般的な概要を提供するものであり、その範囲全体又はその特徴の全てを包括的に開示するものではない。
【0006】
種々の態様において、本教示は、ろう付けプリフォームを使用して一緒に焼結される、トランスミッションのためのプラネタリキャリアサブアセンブリを提供する。プラネタリキャリアサブアセンブリは、粉末金属キャリア部材であって、粉末金属キャリア部材から或る距離だけ延びる複数のキャリア脚部を有する粉末金属キャリア部材を含んでいてよい。粉末金属カバー部材であって、粉末金属カバー部材から或る距離だけ延びる複数のカバー脚部を含む粉末金属カバー部材が提供される。キャリア部材及びカバー部材は、キャリア脚部のそれぞれの端部がカバー脚部の端部と整列されるように位置決めされている。整列されたキャリア脚部及びカバー脚部のそれぞれの対の間に配置された少なくとも1つのろう付けプリフォームが提供される。ろう付けプリフォームはろう付け材料と犠牲バインダとを含む。ろう付けプリフォームは、後続の焼結プロセス中にろう付け材料流れを導くように構成されたジオメトリを備えていてよい。
【0007】
他の態様において、本教示は、粉末金属コンポーネントを接合する方法を提供する。本方法は、複数の成形済ろう付けプリフォームを第1の粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域と整列させることを含む。各成形済ろう付けプリフォームはろう付け材料と犠牲バインダとを含む。ろう付けプリフォームは、それぞれのあらかじめ定められたジョイント領域の形状に一致するジオメトリを有していてよい。本方法は、犠牲バインダをそれぞれのあらかじめ定められたジョイント領域に付着させかつろう付けプリフォームの相対移動を防止するのに充分な圧力を、ろう付けプリフォームに加えることを含んでよい。本方法はさらに、第1の粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域が第2の粉末金属コンポーネントの対応するジョイント領域と整列されるように、第2の粉末金属コンポーネントを第1の粉末金属コンポーネントと整列させて、サブアセンブリを形成するようにすることを含む。犠牲バインダを除去し続いてジョイント領域へろう付け材料流れを導くのに充分な温度までサブアセンブリを加熱することができる。本方法は、あらかじめ定められたジョイント領域にろう付けジョイント部を有する粉末金属アセンブリを形成するために、サブアセンブリを焼結することを含む。
【0008】
さらに別の態様において、本教示は、トランスミッションのためのプラネタリキャリアアセンブリを形成する方法を提供する。本方法は、ろう付けプリフォームを、粉末金属キャリア部材から一体的に延びる複数のキャリア脚部と整列させることを含む。ろう付けプリフォームはろう付け材料と犠牲バインダとを含んでいてよい。本方法は、粉末金属カバー部材から一体的に延びる複数のカバー脚部を前記粉末金属キャリア部材の前記複数のキャリア脚部と整列させることを含む。この整列は、キャリア脚部のそれぞれの端部とカバー脚部のそれぞれの端部とが互いに整列されて、サブアセンブリが形成されるように、行われる。本方法はまた、犠牲バインダを除去し続いてあらかじめ定められたジョイント領域へろう付け材料流れを導くのに充分な温度まで前記サブアセンブリを加熱することを含む。次いでサブアセンブリは、キャリア脚部とカバー脚部とのそれぞれの対の間にろう付けジョイント部を有するプラネタリキャリアアセンブリを形成するために、焼結される。
【0009】
本開示中に提供された説明から、さらなる適用可能分野、及び上記技術を向上させる種々の方法が明らかになる。この概要における説明及び具体例は、例示目的を意図するにすぎず、本開示の発明を限定することを意図するものではない。
【0010】
本教示は、詳細な説明及び添付の図面から、より充分に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、模範的従来技術の、3ピースの基本的なラビニヨキャリアアセンブリを示す斜視図である。
【0012】
【
図2】
図2は、本開示の種々の態様に係る、カバー部材に固定されたキャリア部材を備えたラビニヨキャリアアセンブリを示す斜視図である。
【0013】
【
図3】
図3は、
図2に示されたキャリアアセンブリを形成するのに有用な、焼結プロセス前の、キャリアサブアセンブリを示す分解斜視図である。
【0014】
【
図4A】
図4Aは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4E】
図4Eは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4F】
図4Fは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4G】
図4Gは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【
図4H】
図4Hは、本開示の種々の態様に係るろう付けプリフォームの非限定的な例を示す図である。
【0015】
【
図5】
図5は、キャリアアセンブリを形成するのに有用な、焼結プロセス前の、集成済サブアセンブリの、
図2の線5−5に沿って見た部分断面図である。
【0016】
【
図6A】
図6Aは、
図1の従来技術の3ピースラビニヨアセンブリの部分断面を示す概略図である。
【0017】
【
図6B】
図6Bは、
図2の2ピースラビニヨキャリアアセンブリの部分断面を示す概略図である。
【0018】
【
図7】
図7は、本開示の種々の態様に係る、キャリアプレートを含む粉末金属キャリア部材であって、キャリアプレートから一体的なキャリア脚部が延びている粉末金属キャリア部材を示す第1の側方斜視図である。
【0019】
【
図8】
図8は、
図7の粉末金属キャリア部材を示す第2の側方斜視図である。
【0020】
【
図9】
図9は、本開示の別の態様に係る、粉末金属キャリア部材の脚部を示す部分拡大図である。
【0021】
【
図10】
図10は、本開示の種々の態様に係る、キャリアプレートを含む粉末金属キャリア部材であって、キャリアプレートから一体的なキャリア脚部が延びている粉末金属カバー部材を示す斜視図である。
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示に示された図面は、ある特定の態様を説明することを目的として、本技術に含まれる装置及び方法の全般的な特徴を例示することを意図したものである、ことに言及されるべきである。これらの図面は、所与の態様の特徴を正確に反映しないことがあり、本技術の範囲内に特定の実施態様を規定又は限定することを必ずしも意図していない。さらに、ある特定の態様が、複数の図面の組み合わせから特徴を取り入れることもある。
【0024】
本技術は大まかに言えば、粉末金属コンポーネントを焼結するのに使用されるろう付けプリフォームに関する。1つの非制限的な例において、本技術は、ろう付けプリフォームを使用して形成される、焼結された粉末金属プラネタリキャリアアセンブリを提供する。プラネタリキャリアアセンブリは、トランスミッションの種々のピニオンギア及びコンポーネントを収容するために使用することができる。ラビニヨプラネタリキャリアアセンブリは、自動車用オートマチックトランスミッションに対し、特に有用である。キャリアアセンブリは、補助コンポーネントを含むことなく、2つの主要焼結済金属コンポーネントを含んでよい。第1の主要コンポーネントは粉末金属キャリア部材であり、粉末金属キャリア部材は概ね、複数の一体的なキャリア脚部を有するキャリアプレートを含んでもよく、キャリア脚部はキャリアプレートから或る距離だけ垂直に延びる。第2の主要コンポーネントは粉末金属カバー部材であり、粉末金属カバー部材は、複数の一体的なカバー脚部を有するカバープレートを含み、カバー脚部はカバープレートから垂直に延びる。種々の態様では、キャリアアセンブリは大まかに言えば、キャリア脚部のそれぞれの端部とカバー脚部のそれぞれの端部とが互いに整列されて互いにろう付けされるように、配置される。キャリア部材及びカバー部材の配置は、種々のピニオンギアを収納するように構成されたキャリアアセンブリの内部を画定する。整列されたキャリア脚部とカバー脚部とのそれぞれの対の間に配置された、少なくとも1つのろう付けプリフォームが提供される。ろう付けプリフォームは少なくともろう付け材料部分と犠牲バインダ部分とを含むことが好ましい。ろう付けプリフォームは、後続の焼結プロセス中にろう付け材料流れを導くように構成されたジオメトリを備えていてよい。例えば、ひとたび加熱されると、犠牲バインダが溶融し、蒸発し、かつ/又は気化し、ろう付け材料が焼結プロセスのための所望の場所に残される。
【0025】
種々のギア比を達成するためにオートマチックトランスミッション内でラビニヨプラネタリギア構造を使用することができ、ラビニヨプラネタリギア構造は、共通のキャリアを共有する2つの段又は階のピニオンギアを含むことができる。
図1は、模範的従来技術の、3ピースラビニヨキャリアアセンブリ20を示す斜視図である。図示のように、典型的な3ピースの従来技術のキャリアアセンブリ20は大まかに言えば、(1)支持部材22、(2)円筒状のシェル又はドラム24、及び(3)バッキング又はエンドプレート26を含む。
【0026】
オートマチックトランスミッションの場合、種々の他のピースをラビニヨプラネタリギア構造に連結することができ、これらのピースは補助ピース又は補助コンポーネントとしばしば称されることがある。一般的な補助コンポーネントはブレーキハブ、クラッチなどを含むことができる。中間固体金属環状スリーブを使用する、ある特定のラビニヨプラネタリギア構造が開発されており、このスリーブはギア構造に結合されており、これらのギア構造は補助部材に別々に結合されている。別々の連結は別々の連結工程を必要とするおそれがある。
【0027】
図2は、本開示の種々の態様に係る、粉末金属カバー部材54に固定された粉末金属キャリア部材52を備えた模範的ラビニヨキャリアアセンブリ50を示す斜視図である。
図3は、
図2に示されたキャリアアセンブリを形成するのに有用な、焼結プロセス前のキャリアサブアセンブリを示す分解斜視図である。
図3は、粉末金属キャリア部材52と粉末金属カバー部材54との間に整列された複数のろう付けプリフォーム55を示している。
【0028】
種々の態様において、キャリア部材52は、単一のモノリシックコンポーネントであってよく、ほぼ円形のキャリアプレート56部分を含み、キャリアプレート56部分は、キャリアプレート56と一体的な、角度的に互いに離間した複数のキャリア脚部58を含む。キャリア脚部58は、自由端60まで延びる、全体にわたりほぼ均一な長さ部分を備えてもよい。例えば、キャリアプレート56の外面56a(
図7参照)と、キャリア脚部58の自由端60との間の距離は、互いに離間したキャリア脚部58それぞれについて概ね同じであってよい。キャリア部材52の形状及び設計と同様に、種々の態様において、カバー部材54は、単一のモノリシックコンポーネントであってよく(すなわち、1つのコンポーネントとして形成されてよく)、ほぼ円形のカバープレート62を含み、カバープレート62は、カバープレート62と一体的な、角度的に互いに離間した複数のカバー脚部64を含む。カバー脚部64は、自由端66まで延びる、全体にわたりほぼ均一な長さ部分を備えてもよい。例えば、カバープレート62の外面62a(
図10参照)と、カバー脚部64の自由端66との間の距離は、互いに離間したカバー脚部64それぞれについて概ね同じであってよい。2ピースキャリアアセンブリ50は、キャリア脚部58のそれぞれの端部60とカバー脚部64の端部66とが少なくとも部分的に互いに整列されかつ互いに固定されるように、概ね配置されていてよい。種々の態様において、それぞれの端部は、ろう付けジョイント部によって一緒に接合され、これらのろう付けジョイント部は、非限定的な例として、好適なろう付け材料を使用して焼結プロセス中に形成することができる。キャリア部材52及びカバー部材54の配置は、種々のピニオンギア及び関連コンポーネントを収納するように構成されたキャリアアセンブリ50の内部80(
図5参照)を画定する。
【0029】
図2,3,5及び7から11、及びこれらに関連する説明は、プラネタリキャリアの目下選択された1つの実施態様に関するものであり、機能、目的、及び動作全体に影響を及ぼすことなしに、構成に種々の変更を加えることができる。ある特定の態様において、例えば、脚部は不均一なサイズ、形状、及び/又は長さを全体的又は部分的に有していてよいが、しかし依然として2ピースキャリアアセンブリを形成する。さらに、キャリア部材52及びカバー部材54がモノリシックな単一コンポーネントであることが好ましいかもしれないけれども、キャリア部材52又はカバー部材54の少なくとも一部が、機械的に(又は他の形式で)一緒に留められ、固定され、又はその他の形で接合された2つ又はそれよりも多くのコンポーネントを含む、ある特定の望ましい態様が存在してもよい。加えて、キャリアアセンブリ50が、ほぼ均等に互いに離間された4つのキャリア脚部58に接合された、互いに離間された4つのカバー脚部64を含むものとして種々の図面に示されているけれども、ある特定の構成が異なる数の脚部を利用し得ることが想定される。
【0030】
粉末冶金技術は、材料又はコンポーネントを金属粉末から形成する幅広い範囲の方法に及ぶ。このようなものとして、本技術の粉末金属組成は、特定の又は所望の最終用途に合わせて調整することができる。種々の態様において、キャリア部材52及びカバー部材54は同じ又はほぼ同様の粉末金属組成を含むことができる。他の態様において、キャリア部材52及びカバー部材54が異なる粉末金属組成を有することが望ましい場合もある。
【0031】
種々の態様において、手短に上述したように、自動車用トランスミッションの機能と協働する補助コンポーネントをも含むことが、キャリアアセンブリ50にとって望ましい場合がある。補助コンポーネントの非限定的な例はブレーキハブ、スリーブ、クラッチ、ワンウェイクラッチ、レース、軸受けなどを含んでよい。このように、キャリアアセンブリ50は、キャリア部材52及びカバー部材54のうちの一方又は両方に固定された少なくとも1つの補助コンポーネントを含んでいてよい。補助コンポーネントが複数の部品又は組み合わされたコンポーネントを含んでよいことが理解されるべきである。ある特定の態様において、補助部材を、ろう付けジョイント又は溶接を用いて取り付けることができる。
【0032】
本技術は大まかに言えば、ろう付けプリフォームを使用して2つ又は3つ以上の粉末金属コンポーネントを互いに接合する方法に関する。本開示中の種々の図面及び考察がプラネタリキャリアアセンブリのための構成に焦点を当てることがあるけれども、本技術は、キャリアアセンブリ及びトランスミッションコンポーネントに限定されるものではなく、種々のタイプの粉末金属コンポーネントを接合するのに等しく有用であり得る、ということが理解されるべきである。
【0033】
図4Aから4Hは、本開示の種々の態様に係る成形済ろう付けプリフォーム55の非限定的な例を示している。
図4Cから4Hに詳細に示された成形済ろう付けプリフォーム55は好ましくはろう付け材料57と、犠牲材料又はバインダ59、例えばワックスとを含む。ろう付けプリフォーム55は、サブアセンブリを形成するために、集成プロセス中に2つの粉末金属コンポーネント間に配置されてよい。ろう付けプリフォーム55のサイズ、形状、及び配置はそれぞれ、焼結プロセス中のろう付け流れを意図的に最適化するように設計されてよい。単にコンベンショナルな/周知のろう付け材料(すなわちコンベンショナルなペレット)を使用するのとは異なり、成形済ろう付けプリフォームを使用することによって、本技術は、より均一なろう付け溶接部と、指向された領域、具体的には目標の領域と、を提供するという目的を満たすことができる。例えば、ろう付け溶接部は強いだけではなく、同じ領域内に一貫して位置する。犠牲バインダ59は、焼結前の配置を助けることができ、焼結プロセス中に、溶融されたろう付けの流れをより充分に制御することができ、この流れを隣接する粉末金属コンポーネント同士間に導くようより充分に制御することができる。
【0034】
本技術において有用なろう付け材料57は限定的なものではなく、ろう付けプロセス中に重力及び毛管作用により最終的に溶融して流れる、粉末金属コンポーネントを焼結するために使用されるコンベンショナルなろう付け材料を含むことができる。同様に、犠牲バインダ59も、焼結プロセスに必要な温度を下回る適切な温度で溶融し、蒸発し、かつ/又は気化する一方で、ろう付け材料を所定の位置に保持するのに充分な、任意のバインダ材料、例えばワックスを含んでいてよい。好ましくは、犠牲バインダ59は、非反応性であり、望まれない残留物を残さない。犠牲バインダの非限定的な例は、フラックス及びワックスを含んでいてよい。ある特定のワックスはパラフィンワックス、石油ワックス、及び微結晶ワックスを含む。犠牲バインダはろう付け材料の溶融温度よりも著しく低い温度で分解することが好ましい。種々の態様では、犠牲バインダは約50℃から150℃の温度で溶融し始める。
【0035】
図4Aは、
図3に示されているように個別に配置されると、粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域、例えば複数の粉末金属キャリア脚部58の端部と、それぞれの一組の粉末金属カバー脚部64と、を焼結プロセスによって接合するのに有用な、複数のろう付けプリフォーム55を示している。
図5は、
図2の線5−5に沿って示す部分断面図であり、この部分断面図は、キャリアアセンブリ50の付加的な詳細、及び焼結プロセス前のろう付けプリフォーム55の位置を提供する。
図5に示されているように、ろう付けプリフォームは、整列されたキャリア脚部58とカバー脚部64とのそれぞれの対の間に配置されてよく、各ろう付けプリフォーム55は単一平面内に整列されてよい。
【0036】
図4Bは、単一の一体的に形成されたろう付けプリフォーム群68として一緒に結合された複数のろう付けプリフォーム55を示しており、ろう付けプリフォーム群68は、複数の結合部分70を含み、複数の結合部分70は、ろう付けプリフォームが粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域、例えばそれぞれのキャリア脚部58及びカバー脚部64の端部60,66、と整列されるように、ろう付けプリフォームを互いに離間しつつ接合する。種々の態様において、結合部分70は、個々のろう付けプリフォーム55で使用される犠牲バインダと同じ犠牲バインダ59を含んでよい。例えば、ろう付けプリフォーム群68は、ろう付け材料部分57のための別々の区画を有する適切なモールド(図示せず)を使用して、形成されてもよい。このモールドは続いて犠牲バインダ59で満たされ、犠牲バインダは各ろう付け材料部分57の少なくとも一部を取り囲んで結合部分70を形成する。結合部分70が個々のろう付けプリフォーム55を結合するのに使用される別々の部材であってもよいことも考えられる。より詳細に下述するように、ひとたびろう付けプリフォームが適切に整列されたら、焼結されることになるサブアセンブリを加熱する前に、余剰の犠牲バインダ、例えば結合部分70が除去されてよい。
【0037】
図4Cは、犠牲バインダ59の2つの膜又は層の間に位置するほぼ均一な厚さの膜又は層を有するものとして配置されたろう付け材料部分57を含む、ろう付けプリフォーム55の第1の形態を示している。膜又は層の厚さは種々様々であってよく、原寸に比例して図示されていない。種々の態様において、犠牲バインダ59は、意図した目的、例えば焼結前にろう付け材料57をあらかじめ定められたジョイント領域における適切な位置に保持するのに有用な量でもって提供されるだけでよい。種々の態様において、犠牲バインダ59の少なくとも一部は、後続の焼結プロセスの前にろう付けプリフォーム55をサブアセンブリの一部に付着させるように構成されていてよい。図示のように、ろう付けプリフォーム55は、接合されるべき粉末金属コンポーネントの一方又は両方のあらかじめ定められたジョイント領域のジオメトリにほぼ一致する外周71を画定するジオメトリを備えていてよい。図示の具体的な態様において、ろう付けプリフォームは、キャリア脚部58及びカバー脚部64の端部60,66の少なくとも1つのジオメトリにほぼ一致する外周71を画定する。これは、ろう付けプリフォーム55それ自体の形状及びサイズの非限定的な一例にすぎない、ということが理解されるべきである。それというのも、個々のろう付け材料部分57及び犠牲バインダ59の形状及びサイズは、これらが協働するとともに、究極的には、焼結プロセス中にろう付け材料57の流れを案内し導き、粉末金属コンポーネント内へのろう付け材料57の毛管作用移動を助けるように構成されるように、設計されていてよい、からである。種々の態様において、ろう付けプリフォーム55は、ジョイント領域のそれぞれのフットプリント又はサイズよりも小さくてよく、またあるときには大きくてもよい。
【0038】
図4Dは、犠牲バインダ59の単一の層に隣接して配置されたろう付け材料部分57を含むろう付けプリフォーム55の第2の形態を示している。ろう付けプリフォーム55は、同様のジオメトリ及び外周を有するろう付け材料部分57及び犠牲バインダを備えて示されてはいるものの、いずれのコンポーネントの変更も所望することができる。
図4Dに示された形態の場合、粉末金属コンポーネント、例えばキャリア部材52又はカバー部材54、より具体的にはキャリア脚部58又はカバー脚部64の端部60,66、と直接接触した状態で位置決めできるように、ろう付け材料57の少なくとも一部73を(自由端として)露出させてよい。
【0039】
図4Eは、犠牲バインダ59内部に完全に封入されたろう付け材料部分57を含むろう付けプリフォーム55の第3の形態を示しており、犠牲バインダ59はろう付けプリフォーム55の外周を画定している。ろう付けプリフォーム55の外周は、あらかじめ定められたジョイント領域の一部のジオメトリにほぼ一致してよい。他の態様では、ろう付け材料部分57は犠牲バインダ59内に部分的に封入されていてよい。
【0040】
図4Fは、2つの別々のろう付け材料部分57を含むろう付けプリフォーム55の第4の形態を示しており、ろう付け材料部分57はそれぞれ犠牲バインダ59内部に完全に封入されている。
図4Gは、2つのろう付け材料部分57を含むろう付けプリフォーム55の第5の形態を示している。これらのろう付け材料部分57は、ある特定の領域又は自由端73を露出させて、接合されるべき粉末金属コンポーネントのそれぞれのあらかじめ定められたジョイント領域と直接に接触するのに利用可能にしつつ、犠牲バインダ59内部に部分的に封入されている。
図4Hは、さらに別の変更例を示している。このさらに別の変形例は、
図4Gと同様であるが、犠牲バインダ59がより少ない、例えば厚さ及び/又は幅が低減された中央連結領域75を有している。
図4Aから4Hに示された特徴の種々の組み合わせを一緒に組み合わせて使用してよく、図示された別々の非限定的な態様は排他的な変更例とはならない、ということが理解されるべきである。
【0041】
図5を引き続き参照すると、種々の態様において、キャリア脚部58のそれぞれの端部60とカバー脚部64のそれぞれの端部64とがろう付けプリフォーム55によって、互いに整列されて固定される。ろう付けプリフォーム55は焼結後、単一平面74内に配置された(
図6Bに示された)ろう付けジョイント部82を形成する。ある特定の態様において、補助コンポーネント(図示せず)が同じ単一平面74内において、又は別の平面内、例えばキャリア脚部58によって画定される任意のレッジ(突出部)76において、キャリアアセンブリ50にろう付けジョイント部82によって固定されてもよい。図示のように、それぞれのキャリア脚部58及びカバー脚部64はそれぞれの内面又は内壁58a,64aを画定する。図示してはいないが、壁58a,64aは任意には互いにほぼ面一に整列されてもよく、それぞれの外面又は外壁58b,64bはろう付け平面の位置において互いにオフセットされていてよい。これにより、補助部材に適した接合面を提供することができる。
【0042】
キャリア部材52及びカバー部材54の配置は少なくとも部分的に、複数のピニオンギア及び種々の他の関連コンポーネントを収納するように構成された内部キャビティ80をキャリアアセンブリ50内部に画定する。キャリア部材52及びカバー部材54の形状は数多くの変更例を含んでいてよい。例えば、カバー部材54の底部は1つの平面67を画定するものとして示されてはいるものの、ある特定の構成では、自由端66の一部が残りの部分よりも大きい距離にわたって延びるように、1よりも多いレベル又は平面があってよい。
【0043】
図6Aは、
図1の従来技術の3ピースラビニヨアセンブリの部分断面を示す概略図である。比較のために、
図6Bは、本開示に係る、
図2のラビニヨキャリアアセンブリの部分断面を示す概略図である。両概略図は、同じサン軸線36を共有する同じ大サンギア28及び小サンギア30、並びに、長ピニオン軸線36上の同じ長ピニオンギア34、及び短ピニオン軸線40上の短ピニオンギア38を備えた形態を示している。
【0044】
図7は、キャリアプレート56の部分を含む模範的な粉末金属キャリア部材52の斜視図であり、キャリアプレート56の部分は、キャリアプレート56の部分から延びる一体的なキャリア脚部58を備える。
図8は、
図7の粉末金属キャリア部材52の底面図である。キャリアプレート56は、低下された又は面取りされたエッジ92を備えた平らなウェブ表面又は外面56aを有するほぼ円形の形状を備えていてよい。種々の態様において、エッジ92は機械加工によって形成されてよい。キャリア脚部58の種々の内壁58aは、ピニオンギア及び他のコンポーネントを収容するように湾曲され又は成形されてよい。脚部58の外壁58bの上側部分は外面56aのエッジ92とほぼ整列されてよい。上述のように、各脚部58は協働して任意のレッジ76を形成してもよく、このレッジはキャリアプレート56とほぼ平行であってよい。種々の他の態様において、レッジは設けられておらず、端部60は
図2及び
図3に示されたように平坦である。キャリア脚部のより低い部分は任意には、互いに離間されたスプライン94を含んでいてよい。キャリアプレート56に、種々の孔及び孔内に形成された他の特徴を、粉末金属製造プロセス中か又はその後の機械加工中に形成してもよい。例えば角度的に離間した第1の複数の孔96が長ピニオンギア34のピニオンシャフト(図示せず)のために設けられてよい。同様に、例えば角度的に離間した第2の複数の孔98が短ピニオンギア38のピニオンシャフトのために設けられてよい。また、他の孔97が設けられてもよい。図示のように、孔96,97,98はキャリアプレート56を通って延びるにすぎない。それというのも、キャリア脚部58の内壁58aは第2の複数の孔98の周りに成形されるからである。設計に応じてキャリア部材52の他の形態が使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0045】
種々の態様において、キャリア脚部58及び/又はカバー脚部64のうちの少なくとも一方が、ろう付け材料保持特徴78を画定しており、ろう付け材料保持特徴78内に、適切なろう付けプリフォーム55を焼結前に配置することができる。
図9に示されているように、例えばキャリア脚部58の端部66は、ろう付けプリフォーム55を所定位置に保持するのに適したプレスされた凹部又は穴79を含むことができる。
【0046】
図10は、カバープレート62の部分を含む模範的粉末金属カバー部材54の斜視図であり、カバープレート62の部分は、カバープレート62の部分から延びる一体的なカバー脚部64を備える。
図11は
図10の粉末金属カバー部材54の頂面図である。カバープレート62は、任意の面取りされた又は湾曲されたエッジ86を備えた平らなウェブ表面又は外面62aを有するほぼ円形の形状を備えていてよい。種々の態様において、湾曲されたエッジ86は機械加工によって形成されてよい。カバー脚部64の種々の内壁64aは、ピニオンギア及び他のコンポーネントを収容するように湾曲され又は成形されてよい。脚部64の外壁64bは外面62aのエッジ86とほぼ整列されてよい。カバープレート62に、種々の孔、及び孔内に形成された他の特徴を、粉末金属製造プロセス中るか又はその後の機械加工中に形成してもよい。例えば角度的に離間した第1の複数の孔88が長ピニオンギア34のピニオンシャフト(図示せず)のために設けられてよい。同様に、角度的に離間した第2の複数の孔90が短ピニオンギア38のピニオンシャフトのために設けられてよい。図示のように、第2の複数の孔90はカバープレート62及びカバー脚部64の両方を通って延びているのに対して、第1の複数の孔88はカバープレート62の部分だけを通って延びている。付加的な保持特徴、例えば成形孔が設けられていてもよい。所望の設計に応じてカバー部材54の他の形態が使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0047】
種々の態様において、本教示は大まかに言えば、粉末金属コンポーネントを接合する方法を提供する。これらの方法は、複数の成形済ろう付けプリフォーム55を第1の粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域と整列させることを含んでいてよい。各成形済ろう付けプリフォーム55はろう付け材料57と犠牲バインダ59とを含んでいてよい。ろう付けプリフォーム55はそれぞれのあらかじめ定められたジョイント領域の形状と一致するジオメトリを有していてよい。これらの方法は、犠牲バインダ59をそれぞれのあらかじめ定められたジョイント領域に付着させかつろう付けプリフォーム55の相対移動を防止するのに充分な圧力を、ろう付けプリフォーム55に加えることを含んでよい。これらの方法はさらに、第1の粉末金属コンポーネントのあらかじめ定められたジョイント領域が第2の粉末金属コンポーネントの対応するジョイント領域と整列されるように、第2の粉末金属コンポーネントを第1の粉末金属コンポーネントと整列させてサブアセンブリを形成するようにすることを含む。犠牲バインダを除去してろう付け材料の流れをジョイント領域へ導くのに充分な温度までサブアセンブリを加熱してよい。これらの方法は、サブアセンブリを焼結して、あらかじめ定められたジョイント領域にろう付けジョイント部を有する粉末金属アセンブリを形成するようにすることを含んでよい。
【0048】
上記方法の1つの具体例として、本教示は、トランスミッションのためのプラネタリキャリアアセンブリ、例えば2つのコンポーネントのラビニヨキャリアアセンブリを集成する方法を提供する。これらの方法は、キャリア部材52と、カバー部材54と、上述したような任意の所望の特徴を備えたろう付けプリフォーム55と、を含む粉末金属コンポーネントを形成することを含んでよい。粉末金属コンポーネントを形成することは、適宜の型を使用し、また形成ロッドなどを使用してグリーン粉末金属コンポーネントを成形し圧縮することを含んでよい。これらの方法は次いで、キャリアプレート56であってキャリアプレート56から複数の一体的なキャリア脚部58が延びるキャリアプレート56を含んでよい粉末金属キャリア部材52と、カバープレート62であってカバープレート62から複数の一体的なカバー脚部64が延びるカバープレート62を含んでよい粉末金属カバー部材54とを、これらの間に配置されたろう付けプリフォーム55と整列させることを含んでよい。種々の態様において、この整列の結果、あらかじめ定められたジョイント領域が形成され、すなわちキャリア脚部58のそれぞれの端部60及びカバー脚部64のそれぞれの端部66が互いに整列されて、
図2及び5に最良に示されたものと同様のサブアセンブリが形成される。これらの方法は、犠牲バインダをそれぞれのあらかじめ定められたジョイント領域(1又は複数)に付着させかつろう付けプリフォームの相対移動を防止するのに充分な、わずかばかりの圧力をろう付けプリフォーム55に加えることを含んでよい。ろう付けプリフォーム群68が使用される態様において、これらの方法は、サブアセンブリを加熱する前に余剰の犠牲バインダ、例えば結合部分70を除去することを含んでよい。種々の態様において、本方法は、
図9に示されているように、ろう付けプリフォーム55をろう付け材料保持孔78に隣接するように、又はろう付け材料保持孔78内に配向することを含んでよい。
【0049】
ひとたびサブアセンブリとして整列されたら、本方法は、プリフォーム55から犠牲バインダ59を除去するのに充分な温度までサブアセンブリを加熱することを含んでよい。例えば、犠牲バインダは、バインダが焼結プロセスの温度を充分に下回る温度で溶融し、蒸発し、かつ/又は気化するように、充分に低い融点を有していてよい。サブアセンブリは次いで、焼結プロセスを促進するために、さらに高温まで加熱され、その結果、あらかじめ定められたジョイント領域、例えば、任意には単一平面内で一緒にろう付けされたキャリア部材52及びカバー部材54のそれぞれの脚部60,66、においてサブアセンブリが互いに固定される。焼結プロセス後に別の補助部材がキャリアアセンブリ50に結合されてよい。
【0050】
前記記述は、例示及び説明を目的として提供されるものであり、開示内容、その適用、又は用途を限定することを意図したものではない。このことは、包括的なものであること、又は開示内容を限定することを意図するものではない。特定の実施態様の個々のエレメント又は特徴は全般的に見てその特定の実施態様に限定されるのではなく、適用可能な場合には、特に図示又は記載されない場合でも、選択された実施態様において相互に交換可能であり、使用可能である。このことはまた、多くの様式で変更されてもよい。このような変更例は本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、全てのこのような改変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0051】
本開示中に使用される、A,B及びCのうちの少なくとも1つ、という言い回しは、非排他論理「or」を用いた論理(A又はB又はC)を意味するものと解釈されるべきである。ある方法における種々のステップを、本開示の原理を変えることなしに、異なる順序で実施してもよいことが理解されるべきである。範囲の開示は、端点を含めて、範囲全体内の全ての範囲及び細分化された範囲を含む。
【0052】
本開示中に使用される見出し(例えば「背景」及び「概要」)及び小見出しは、本開示内におけるトピックの全般的な編成のみを意図したものであり、技術又は任意のその態様の開示を限定することを意図したものではない。提示された特徴を有する多数の実施態様の列挙は、付加的な特徴を有する他の実施態様、又は提示された特徴の種々異なる組み合わせを組み入れた他の実施態様を排除することを意図したものではない。
【0053】
本開示に使用された「備える、含む(comprise)」及び「含む(include)」という用語及びこれらの変化形は、連続した事項の列挙又はリストが、本技術の装置及び方法においてやはり有用であるかもしれない他の同様の事項を排除することのないように、非限定的であることが意図されている。同様に「できる(can)」及び「してもよい、かもしれない、し得る(may)」という用語、及びこれらの変化形は、実施態様がある特定のエレメント又は特徴を含むことができ又は含んでよいという記述が、これらのエレメント又は特徴を含まない本技術の他の実施態様を排除しないように、非限定的であることを意図している。
【0054】
本開示の幅広い教示内容は種々様々な形で実施することができる。したがって、この開示は具体例を含むが、本開示の真の範囲はそのように限定されるべきではない。それというのも、本明細書及び以下の特許請求の範囲を考察すれば当業者には他の改変が明らかになるからである。本開示における1つの態様又は種々の態様への言及は、実施態様又は具体的なシステムと関連して記載された具体的な特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施態様又は態様に含まれることを意味する。「1つの態様において」という言い回し(又はその変化形)の出現は、同じ態様又は実施態様を必ずしも参照しない。本開示中で考察された種々の方法ステップは、示されたものと同じ順序で行われる必要はなく、各方法ステップが各態様又は実施態様において必要とされるわけでもない、ということも理解されるべきである。
【外国語明細書】