【解決手段】中空円筒体1Aを遠心成形するための管状の金型本体11と、該金型本体11の開口を閉塞するシール板32とを有する遠心成形型10Aであって、シール板32の内面に成形された中空円筒体1Aの内周縁1iに沿って凸部2を形成するための凹部32aが、シール板32の中心に対し等半径位に設けられている。この遠心成形型10Aに樹脂Rを注入し、中空円筒体1Aを遠心成形する。
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の遠心成形型に原料樹脂を注入し、遠心成形することにより、端面に凹部又は凸部が形成された中空円筒体を成形し、次いで脱型する工程を有する中空円筒体の製造方法。
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の遠心成形型に原料樹脂を注入し、遠心成形することにより、端面に凹部又は凸部が形成された中空円筒体を成形し、次いで脱型する工程を有する中空円筒体の内径精度の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
中空円筒体を遠心成形する場合、遠心成形型の偏心などにより、中空円筒体1の端面1aにおける内孔1hの内周縁1iが規定直径の円とならなかったり、内周縁1iが規定位置からずれたりすることがある。
【0010】
本発明は、このような中空円筒体端面の内周縁の形状不正を容易に発見することができる遠心成形型及びそれを用いた中空円筒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の遠心成形型は、中空円筒体を遠心成形するための管状の金型本体と、該金型本体の開口を閉塞する閉塞部材とを有する遠心成形型であって、該閉塞部材の遠心成形型内方を向く閉塞部材内面に、成形された中空円筒体の端面に凸部又は凹部を形成するための凹部又は凸部が同心円上に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様では、前記閉塞部材内面の凹部又は凸部が、中空円筒体の内周縁近傍に設けられている。
【0013】
本発明の一態様では、前記閉塞部材内面の凹部又は凸部が、中空円筒体の内周縁に沿って設けられている。
【0014】
本発明の一態様では、前記閉塞部材の凸部又は凹部の断面稜線が、曲線で構成される。
【0015】
本発明の一態様では、前記閉塞部材の凸部又は凹部は、中空円筒体の内径精度を検査するために設けられる。
【0016】
本発明の一態様では、前記閉塞部材の凸部又は凹部は、周方向に間隔をおいて複数個設けられている。
【0017】
本発明の一態様では、前記閉塞部材の凸部又は凹部は周方向に連続して設けられている。
【0018】
本発明の中空円筒体の製造方法は、本発明の遠心成形型に原料樹脂を注入し、遠心成形することにより、端面に凹部又は凸部が形成された中空円筒体を成形し、次いで脱型する工程を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の遠心成形型を用いて中空円筒体を成形する場合、原料樹脂の注入量は、金型本体の内周面に沿って遠心成形される中空円筒体の目的とする内径の大きさに合致する量とする。
【0020】
本発明の遠心成形型を用いて遠心成形された中空円筒体にあっては、該凹部又は凸部によって形成された凸部又は凹部が同心円状に存在する。正規形状に遠心成形される中空円筒体にあっては、形成された凸部又は凹部がなす同心円と、中空円筒体の内径がなす円形状との間隔が一定となる。また、形成された凸部又は凹部がなす同心円と、中空円筒体の内径がなす円形状との間隔が、正規製品の許容範囲(公差)に入っていることを目視で瞬時に判断することができる。なお、公差の範囲は、目的とする中空円筒体の大きさや用途に応じて設定することができる。一方、遠心成形型に偏心があり、正規形状に遠心成形されない中空円筒体にあっては、中空円筒体の内径がなす円形状との間隔が不均一となったり、形成された凸部又は凹部が不均一に欠けたり、消滅したりする。
【0021】
従って、中空円筒体の端面を目視観察したときに、形成された凸部又は凹部がなす同心円と、中空円筒体の内径がなす円形状との間隔が正規製品の許容範囲(公差)から外れて大きすぎたり、小さすぎたりすることや、凸部又は凹部が形成する同心円が崩れていたり、不均一に欠けたりいることを確認することにより、中空円筒体が正規形状となっているかどうかを確認することができる。すなわち、前記閉塞部材内面に設けられた凹部又は凸部は、中空円筒体の中空部の位置及び内径精度を確認するためにある。これによれば、中空円筒体を切断しなくても厚み形状の均一性に関する異常に検知できる。また、検査治具を使用するなどの、従来の内径精度を確認する場合と比較して、簡便に早く確認が可能である。さらに、中空円筒体に凸部又は凹部が存在するため、作業ミスが起こりづらい。くわえて、収縮する樹脂組成物であっても、アニーリング工程を待たずに成形後直ぐに確認が可能である。このように、本発明によれば、効果的に中空円筒体の生産効率を高めることができる。
【0022】
また、本発明によれば、遠心成形型から円筒成形体を取出し後すぐに、遠心成形回転装置における設備トラブル(例えば、回転ピンが摩耗する、回転軸がずれるなど)を容易に検知することできる。これにより、効果的に生産効率を向上させることができ、特に、遠心成形回転装置を自動化する場合には、画期的に生産効率を高めることができる。
【0023】
また、凸部又は凹部は、中空円筒体の内周縁近傍に形成されるよう、設けられるようことが好ましい。これによれば、中空円筒体の端面を目視観察したときに、凸部又は凹部と内周縁との間隔の均一性が瞬時に判別しやすいため、中空円筒体の偏心や成形不良や、中空円筒体の内径精度が正規製品の許容範囲(公差)に入っているかどうかに即時に気付くことができる。したがって、凸部又は凹部は、内周縁に触れていることが好ましい。また、凸部又は凹部が内周縁に触れていない場合は、凸部又は凹部における内周縁からの最短長さは、例えば、0〜6.0(mm)、さらには、0〜2.5(mm)であることが好ましい。同様の理由から、凸部又は凹部は、少なくとも一部が内周縁に接していることが好ましい。なお、中空円筒体端面には凸部が、遠心成形型の閉塞部材内面には凹部が設けられることが好ましい。
【0024】
また、前記閉塞部材の凸部又は凹部の断面稜線が、曲線で構成される。これにより、中空円筒体を遠心成形型から脱型する際の剥離性を向上させ、バリの残存やこれによる不良品の発生を防ぐことができる。また、遠心成形型の閉塞部材の清掃が容易となるとともに、成形体の外観を向上させることができる。
【0025】
成形された中空円筒体の内周縁が中空円筒体の端面において偏心している場合には、一部の凸部又は凹部が存在しなかったり、また一部の凸部又が凹部は内周縁から離隔して存在していたりするので、中空円筒体が正規形状となっていないことを容易に確認することができる。
【0026】
内周縁が中空円筒体の外周縁と同心円となってはいるが、正規形状よりも小径であるときには、端面の凸部又は凹部が内周縁から離隔して存在しているので、中空円筒体が正規直径よりも小さいことを容易に確認することができる。
【0027】
内周縁が中空円筒体の外周縁と同心円となってはいるが、正規形状よりも大径であるときには、すべての凸部又は凹部が存在しないので、中空円筒体が正規直径よりも大きいことを容易に確認することができる。
【0028】
内周縁が正規形状よりも小径又は大径であり、且つ内周縁が中空円筒体の外周縁に対し偏心している場合も、同様にして中空円筒体が正規形状となっていないことを容易に確認することができる。
【0029】
なお、本発明で用いる樹脂材料に特に限定はなく、モノマーキャスト法により得られるポリアミド等のアニオン重合性ポリアミド、2液硬化型ウレタン樹脂など各種のものが適用可能である。なかでも、機械強度等の理由から、アニオン重合性ポリアミドを用いることが好ましい。
【0030】
本発明方法によって成形された中空円筒体は、これを用いて樹脂歯車を製造するのに好適である。樹脂歯車を製造するための中空円筒体は、極めて高い内径精度が要求される。中空円筒体から樹脂歯車を製造するには、中空円筒体を所定厚みに輪切り状に切断してリング体とする。そして、このリング体の内孔に金属製ハブを嵌着し、リング体の外周を切削加工して歯を形成する。
【0031】
このリング体の内孔はリング体の外周と高精度にて目的の内径を有した同心状(同軸状)となっているので、製造された樹脂歯車は形状精度がきわめて良好である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
図1は第1の実施の形態を示すものであり、(a)は遠心成形型10Aの一端側を示し、(b),(c)はこの遠心成形型10Aを用いて遠心成形された中空円筒体2を示している。
図24はこの遠心成形型10Aのシール板32の底面図である。
【0034】
この実施の形態の遠心成形型10Aでは、シール板32の遠心成形型内面のうち、中空円筒体の内周縁1iの形成予定位置に沿って複数の凹部32aが間隔をおいて設けられている。この凹部32aは、この実施の形態では半球状である。遠心成形型10Aのその他の構成は、ロック機構が省略されている点を除いて
図23の遠心成形型10と同一であり、同一部分に同一符号が付されている。なお、凹部32aは8個設けられているがこれに限定されない。
【0035】
この遠心成形型10Aを用いて中空円筒体2を成形する場合、原料樹脂の注入量は、金型本体11の内周面に沿って遠心成形される中空円筒体1Aの端面1aの内周縁1iが凹部32aの端部(シール板32の中心側の縁部)に合致する量とする。
【0036】
これにより、
図1(b),(c)の通り、遠心成形された中空円筒体1Aにあっては、端面1aの内周縁1iに沿って、凹部32aによって形成された凸部2が存在する。凸部2は、半球を直径方向に2つに割断した四分半球状であり、この割断部分が中空円筒体1Aの内周縁1iに沿っている。遠心成形型10Aに偏心がなく、正規形状に遠心成形された中空円筒体1Aにあっては、凸部2が規定間隔で内周縁1iに沿って規定個数(
図1(b)では8個)の凸部2が存在する。従って、中空円筒体1Aの端面1aを目視観察したときに、凸部2が内周縁1iに沿って規定間隔で規定個数配列していることを確認することにより、中空円筒体1Aが正規形状となっていることを確認することができる。
【0037】
なお、内周縁1iが偏心している場合には、一部の凸部2が存在せず、また他の一部の凸部2は内周縁1iから離隔して存在しているので、直ぐに中空円筒体1Aが正規形状となっていないことを確認することができる。
【0038】
内周縁1iが中空円筒体1Aの外周縁と同心円となってはいるが、正規形状よりも小径であるときには、すべての凸部2が内周縁1iから離隔して存在しているので、直ぐに中空円筒体1Aが正規形状となっていないことを確認することができる。
【0039】
内周縁1iが中空円筒体1Aの外周縁と同心円となってはいるが、正規形状よりも大径であるときには、全ての凸部2が存在しないので、直ぐに中空円筒体1Aが正規形状となっていないことを確認することができる。
【0040】
内周縁1iが正規形状よりも小径又は大径であり、且つ内周縁1iが中空円筒体1Aの外周縁に対し偏心している場合も、同様にして直ぐに中空円筒体1Aが正規形状となっていないことを確認することができる。
【0041】
図1では、遠心成形型10Aのシール板32に半球状の凹部32aを設けており、この凹部32aの約半分に原料樹脂が充填されることにより、形成された凸部2は四分半球状となっている。ただし、凹部32aの形状は、半楕円球状、円柱形、角柱形などであってもよい。なお、凹部を半球状又は半楕円球状など、入口側ほど広がった形状とすると、脱型が容易となるので、好ましい。
【0042】
図2は、凸部2Bが半球状となっている中空円筒体1Bを示している。凸部2Bの数は図示に限定されない。凸部2Bは内周縁1iに沿って配置されている。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0043】
図3は、凸部2Cが半球の一部(
図3では約1/4程度)を切り欠いた形状となっている中空円筒体1Cを示す。凸部2Cは、この切り欠いた部分が中空円筒体1Cの内周縁1iに沿うように配置されている。凸部2Cの数は図示に限定されない。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0044】
図4は、凸部2Dが四分楕円球となっている中空円筒体1Dを示している。凸部2Dは、楕円の長径方向を中空円筒体1Dの径方向とし、楕円の短径方向を中空円筒体1Dの内周縁1iに沿わせるように配置されている。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0045】
図5は、半楕円球の一部を切り欠いた形状の凸部2Eを有する中空円筒体1Eを示している。凸部2Eは、楕円の長径方向を中空円筒体1Eの径方向とし、切り欠き面を中空円筒体1Eの内周縁1iに沿わせるように配置されている。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0046】
図6は、四角錐の一部を切り欠いた形状の凸部2Fを有する中空円筒体1Fを示している。四角錐は、長い対角線と短い対角線とを有した、平面視(端面1aの正対視)が菱形となる形状のものであり、且つ長い対角線方向の一端側を切り欠いた形状となっている。凸部2Fは、長い対角線方向を中空円筒体1Fの径方向とし、切り欠いた部分を中空円筒体1Fの内周縁1iに沿わせるように配置されている。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0047】
図7は、半円錐形の凸部2Gを有した中空円筒体1Gを示している。凸部2Gは、円錐を径方向に半分に割断した形状となっている。凸部2Gは、この割断した部分を中空円筒体1Gの内周縁1iに沿わせるように配置されている。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0048】
図8は、半円柱形の凸部2Hを有した中空円筒体1Hを示している。凸部2Hは、円柱を径方向に半分に割断した形状となっている。凸部2Hは、この割断した部分を中空円筒体1Hの内周縁1iに沿わせるように配置されている。その他の構成は
図1(b),(c)と同様である。
【0049】
図9は、平面視が略涙滴形の凸部2Iを有した中空円筒体1Iを示している。凸部2Iは、一端側が湾曲し、他端側が流線形に端部に向って細長く延在した平面視形状であり、該一端側が長手方向と直交方向に割断された形状となっている。凸部2Iは、この割断された部分が中空円筒体1Iの内周縁1iに沿うように配置されている。
【0050】
図1〜9では、凸部は中空円筒体の内周縁に沿って配置されているが、内周縁以外にも凸部を設けてもよい。
【0051】
図10(a),(b)は、その一例に係る中空円筒体1Jを示すものである。中空円筒体1Jの端面1aの内周縁に凸部2が設けられている。中空円筒体1Jの端面1aの内周縁と外周縁との間に、複数の凸部2Jが周方向に等間隔に設けられている。各凸部2Jは、中空円筒体1Jの軸心に対して等半径位に位置している。
図10(c),(d)は、
図10(a),(b)よりも樹脂注入量を少なくすることによって成形された中空円筒体1J’を示すものであり、
図10(c)は端面図、
図10(d)は
図10(c)のD−D線断面図である。この中空円筒体1J’は、端面に複数の凸部2Jのみが存在する。
図25は、該中空円筒体1J,1J’を成形するための遠心成形型10A’の断面図、
図26はそのシール板32の底面図である。凹部32a’により凸部2Jが形成される。遠心成形型10A’のその他の構成は遠心成形型10Aと同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0052】
例えば、本発明の正規形状に遠心成形された中空円筒体が
図10(a),(b)に係る中空円筒体1Jである場合であって、公差の範囲を凸部2Jが発現し、凸部2もまた発現するものと設定した場合、
図10(c),(d)の例に係る中空円筒体1J’は、凸部2が発現しないことから、公差の範囲を外れた不良品であることが即時に判断される。さらに、正規形状に遠心成形された中空円筒体1Jであっても、凸部2がどの程度発現しているか、凸部2と内周縁との距離がどの程度離れているかを目視で確認することにより、どの程度の誤差が生じているか即時に判断できる。
【0053】
また、例えば、本発明の正規形状に遠心成形された中空円筒体が
図10(c),(d)に係る中空円筒体1J’である場合であって、公差の範囲を凸部2Jが発現し、凸部2は発現しない範囲と設定する場合、
図10(a),(b)の例に係る中空円筒体1Jは、凸部2が発現することから、公差の範囲を外れた不良品であることが即時に判断される。さらに、正規形状に遠心成形された中空円筒体1J’であっても、凸部2Jと内周縁との距離がどの程度離れているか、凸部2Jがどの程度発現しているかを目視で確認することにより、どの程度の誤差が生じているか即時に判断できる。
【0054】
このように、本発明の遠心成形型を用いて遠心成形された中空円筒体は、公差の範囲にあるかどうかを即時に判断できる。さらに、中空円筒体の外径が同一であれば、目的とする中空円筒体の内径が異なる場合であっても、樹脂注入量と公差の範囲を変更することにより、同一の金型で製造することもできる。
【0055】
なお、凸部2,2Jの形状は、
図1〜9の凸部のいずれのものでもよく、また、これら以外でもよい。
【0056】
図1〜10では、凸部2,2A〜2Jは独立した突起となっているが、
図11の中空円筒体1Kのように、内周縁1iに沿って延在する凸条よりなる凸部2aとしてもよい。また、同心円上に形成される突起は、必ずしも1つの形状でなく、2以上の形状であってもよい。
図11では、凸部2aは内周縁1iの全周にわたって連続しているが、途中の1又は2以上の箇所で途切れてもよい。また、内周縁1iの全周にわたって連続する曲線には、凹凸があってもよい。
【0057】
図12の中空円筒体1Lのように、内周縁1iに沿う凸条よりなる凸部2aと、内周縁1iと外周縁との間に凸部2aと同心円状の凸条よりなる凸部2a’とを設けてもよい。3重以上の同心円となるように、さらに他の凸条を設けてもよい。
【0058】
図1〜12の中空円筒体1A〜1Lでは、凸部を形成しているが、遠心成形型のシール板32に凹部32aの代りに凸部(図示略)を設けることにより、
図13の中空円筒体1Mのように凹部3を端面1aの内周縁1iに沿って設けてもよい。この場合も、内周縁1iが偏心したり、正規形状よりも大径又は小径となっているときには、少なくとも一部の凹部3が存在しなかったり、内周縁1iから離隔しなかったりするので、直ぐに中空円筒体1Aが正規形状となっていないことを確認することができる。
【0059】
図13では、凹部3が独立した凹穴状となっているが、内周縁1iに沿って延在する凹条であってもよい。この場合、凹条は内周縁1iの全周を周回するものであってもよく、途中の1又は2以上の箇所で途切れたものであってもよい。凹部を前記
図12の凸条のように、二重又は多重の同心円状に設けてもよい。
【0060】
なお、
図14は、
図1の遠心成形型において、ロック機構を設けた遠心成形型10Bを示している。このロック機構は前記
図23と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0061】
上記実施の形態では、遠心成形された中空円筒体1A〜1Mの端面1aは中空円筒体1A〜1Mの軸心線方向と垂直となっているが、
図17の中空円筒体1Nのように、端面1aが内周縁1i側ほど中空円筒体の長手方向中央側になるように傾斜したテーパ面であってもよい。
【0062】
このようなテーパ状端面1aを有した中空円筒体1Nを成形するための遠心成形型10Cを
図15に示す。
【0063】
図15の遠心成形型10Cにあっては、シール板32は、蓋12の内面に、前記金型本体11の管状部開口31を覆うように設けられている。このシール板32は、蓋12を貫通する3本のガイドボルト33によって金型軸線方向に移動可能に支持されるとともに、このガイドボルト33に外装した圧接スプリング34によって前記管状部開口31の方向に向けて付勢されている。
【0064】
前記圧接スプリング34は、蓋12を金型本体11に装着して前記ロック爪24の係止部26をフランジ13に係止させた状態で、前記シール板32を強い力で金型本体端面に押し付ける。これにより、管状部開口31を確実にシールすると同時に、前記係止部26とフランジ13との係止状態を前記ロックスプリング25と共に保持する。
【0065】
シール板32の内面に、管状部開口31の端面をシールするための円盤状のパッキン41を設けるとともに、このパッキン41の内面側に、管状部開口31の口径に対応した外径を有する円盤状の金属製内蓋42を設けてある。
【0066】
前記パッキン41は、シール板32の内面全体を覆うように設けられている。このパッキン41として、シール板32側に適当なクッション性を有するシリコン系パッキン材41aを、金型本体11側に耐熱性に優れたフッ素樹脂系パッキン材41bを積層配置し、これによって十分なシール性を得ながら、十分な耐熱性を得ることができるようにしている。
【0067】
前記金属製内蓋42は、金型本体11の管状部分の端部に挿入された状態となる略円盤状であって、中央が金型内部方向に突出した円錐面に形成されている。この金属製内蓋42は、シール板32の中心を貫通したボルト43により、シール板32の内面との間に前記パッキン41を挟むようにして固定されている。
【0068】
シール板32の内面にこのような金属製内蓋42を設けることにより、金型本体11内に注入された原料樹脂は、そのほとんどが金属製内蓋42と接触することになり、パッキン41と原料樹脂との接触を最少に抑えることができるので、パッキン41の長寿命化を図ることができる。また、金属製内蓋42の内面を円錐面としたことにより、成形後の製品と金属製内蓋42との剥離性を向上させることができる。また、金属製内蓋42を交換するだけで管状部の径が異なる複数種の金型本体に対応することが可能となる。
【0069】
この内蓋42に複数の凹部42aが設けられている。各凹部42aは、内蓋42の中心軸に対して等半径位(内周縁1iの形成予定位置)に位置している。即ち、各凹部42aから金型本体11の内周面までの距離は等しい。中空円筒体を遠心成形する場合、原料樹脂は、遠心成形された中空円筒体の内周面が凹部42aの縁部(内蓋42の中心側の縁部)に合致する量だけ注入される。
【0070】
図16は、この遠心成形型10C内に原料樹脂Rを注入し、遠心成形型10Cをその軸心回りに回転させて遠心成形した状態を示し、
図17(a)はこの遠心成形により成形され、遠心成形型10Cから脱型された直後の中空円筒体1Nを示している。
図17(b)は、
図16(a)のB部分の拡大図である。
図17の通り、中空円筒体1Nの端面1aはテーパ状となっている。
【0071】
ところで、この遠心成形型10Cを用いた遠心成形では、原料樹脂Rに遠心力が作用するため、金型本体11の端面とパッキン41(フッ素樹脂系パッキン材41b)との間に原料樹脂Rが入り込み易い。そのため、脱型して得られた中空円筒体1Nの端面1aの外周縁からは放射方向に張り出すバリ1bが形成され易い。
【0072】
このバリ1bが成形品すなわち、中空円筒体1Nと一体となって脱型されるならば、遠心成形型内にバリ1bが残留しない。ところが、
図15の遠心成形型10Cでは、円錐状の内蓋42の外周縁が金型本体11の内周面の直近に位置しているため、中空円筒体1Mの端面1aと外周面1cとが交わる外周縁は、その断面形状が90゜未満の鋭角状となっている。そのため、この中空円筒体1Nにあっては、バリ1bの付根部分、すなわちバリ1bと中空円筒体1Nとの連結部分が肉薄となっており、バリ1bがその付根から分断され易い。脱型時にバリ1bが付根から分断されると、バリ1bが遠心成形型10C内に残留し、次回の遠心成形工程で不良品を発生させるおそれがある。
【0073】
そこで、本発明は、その一態様において、中空円筒体の端面の外周縁にバリが形成されても、このバリと中空円筒体との結合強度が高く、中空円筒体を脱型した際にバリが中空円筒体と共に遠心成形型から取り出される遠心成形型と、この遠心成形型を用いた中空円筒体の製造方法を提供する。
【0074】
かかる一態様の遠心成形型は、中空円筒体を遠心成形するための管状の金型本体と、該金型本体の開口を閉塞する閉塞部材とを有する遠心成形型であって、該閉塞部材の遠心成形型内方を向く閉塞部材内面に、遠心成形型内方に突出する、遠心成形型内方に向って縮径する円錐形又は円錐台形の内蓋が設けられており、該内蓋の外周縁が金型本体の内周面から所定距離Lだけ離隔しており、該内蓋よりも外周側は、遠心成形型の軸心線方向と垂直面となっていることを特徴とする。
【0075】
かかる遠心成形型によって成形された中空円筒体は、後述の
図19、
図20(b)の中空円筒体1Pのように、その端面の外周側が中空円筒体の軸心線方向と垂直な垂直面となる。このため、中空円筒体の端面の外周縁に形成されるバリの付根部分の肉厚が
図17の中空円筒体1Nよりも大きくなり、バリと中空円筒体の本体部分との結合強度が高いものとなる。
【0076】
この結果、遠心成形型から中空円筒体を脱型する際にバリが付根から分断されることが防止され、バリが中空円筒体と一体となって脱型される。この結果、バリが遠心成形型内に残留することが防止され、次回以降の成形サイクルで成形される中空円筒体に不良品が発生することが防止される。
【0077】
図18は、かかる態様に係る遠心成形型10Dを示し、
図19はこの遠心成形型10Dを用いて遠心成形された中空円筒体1Pを示している。
【0078】
この実施の形態の遠心成形型10Dでは、内蓋42Aが
図15の遠心成形型10Cの内蓋42よりも小径の円錐形となっており、内蓋42Aの外周縁は金型本体11の内周面から所定距離Lだけ離隔している。遠心成形型10Dのその他の構成は、
図15の遠心成形型10Cと同一であり、同一部分に同一符号が付されている。
【0079】
この遠心成形型10Dを用いて中空円筒体1Pを成形する場合、原料樹脂の注入量は、金型本体11の内周面に沿って遠心成形される中空円筒体1Pの内周縁1iが凹部42aの内蓋中心側の縁部に合致する量とする。これにより、中空円筒体1Pの端面1aは、内蓋42Aに接することにより形成されたテーパ面1dと、前記Lの範囲におけるパッキン41(フッ素樹脂系パッキン材41b)に接することにより形成された、中空円筒体1Pの軸心線方向と垂直な垂直面1eとによって構成される。中空円筒体1Pの半径方向における垂直面1eの幅t
2は、上記距離Lに合致した値となる。テーパ面1dの該半径方向における幅t
1と、該幅t
2との和(T=t
1+t
2)が中空円筒体1Eの半径方向の厚みである。
【0080】
テーパ面1dの垂直面1eに対する傾斜角度θは10〜50゜特に15〜40°程度が好ましい。なお、立ち上り部と中心部の角度を変えることも好ましい。
【0081】
垂直面1eの幅t
2すなわち距離Lは、中空円筒体1Eの厚みTにもよるが、0.5mm以上、50mm以下で、0.8mm以上特に2.0mm以下であることが好ましい。なお、t
2が小さいと、バリ1bの付根付近の厚さが十分には大きくならない。t
2が過度に大きいと、相対的にt
1が小さくなり、円錐状内蓋42Aを設けたことの効果が低くなる。
【0082】
このような垂直面1eを形成したことにより、端面1aの外周縁(端面1aと外周面1cとの交差角縁部)から放射方向に張り出すように形成されるバリ1bは、付根の厚みが
図17の中空円筒体1Nよりも大きくなり、バリ1bと中空円筒体1Pとの連結強度が大きくなる。その結果、中空円筒体1Pを脱型する際に、バリ1bが付根付近で分断されることなく、中空円筒体1Pの本体部分と一体となって脱型される。これにより、バリ1bが遠心成形型10D内に残留することが防止され、不良品発生が防止される。
【0083】
なお、この実施の形態では、シール板32、パッキン41及び内蓋42Aと蓋12とによって閉塞部材が構成されている。
【0084】
図18では、内蓋42Aは円錐形であり、内蓋42Aの内面(遠心成形型10Dの内部を向く面)は全体として円錐面となっているが、
図20に示す遠心成形型50のように、シール板60の内面側に取り付けられた内蓋70を円錐台形状としてもよい。即ち、この内蓋70の遠心成形型50内を向く面は、外周縁近傍がテーパ面71となっており、それ以外は遠心成形型50の軸心線方向と垂直な平面72となっている。内蓋70の外周縁は、金型本体51の内周面から距離Lだけ離隔している。
【0085】
該平面72に複数の凹部75が設けられている。各凹部75は、内蓋70の中心軸に対して等半径位に位置している。
【0086】
なお、シール板60の板央部には開口61が設けられており、内蓋70から突設された凸部73が該開口61に嵌合している。内蓋70は、シール板60を貫通して内蓋70に螺合したボルト(図示略)によってシール板60に固定されているが、内蓋70の固定方式はこれに限定されない。
【0087】
シール板60と内蓋70との間に介在されたパッキン80は、シール板60に重なるシリコン系パッキン材81と、内蓋70に重なるフッ素樹脂系パッキン材82とを積層配置したものとなっている。
【0088】
遠心成形型50の金型本体51の端部にはフランジ53が設けられている。金型本体51の端面に対してパッキン80を介してシール板60が重なる。
【0089】
図示は省略するが、シール板60を金型本体51に固定するための蓋が設けられている。この蓋としては、上記蓋12と同様の構成のものを用いることができる。シール板60、内蓋70及びパッキン80と該蓋とによって閉塞部材が構成される。
【0090】
この遠心成形型50を用いて中空円筒体3を成形する場合、原料樹脂の注入量は、金型本体11の内周面に沿って遠心成形される中空円筒体3の端面3aが、テーパ面71と平面72の外周側にも接し、内周縁3iが凹部75の中央側の縁部に合致する量とする。これにより、中空円筒体3の端面3aは、平面72に接することにより形成された、成形体3の軸心線方向と垂直な垂直面3fと、テーパ面37に接することにより形成されたテーパ面3dと、前記Lの範囲におけるパッキン80(フッ素樹脂系パッキン材82)に接することにより形成された、成形体3の軸心線方向と垂直な垂直面3eとによって構成される。垂直面3eの半径方向幅t
3の好適範囲は前記
図2のt
2と同様である。内周縁3iに沿って凸部3gが存在する。
【0091】
この中空円筒体3にあっても、端面3aと外周面3cとの交差外周縁から張り出すバリ3bの付根付近の厚さが大きくなる。これにより、脱型時にバリ3bが分断されることが防止され、不良品発生が防止される。また、凸部3gにより、中空円筒体3の形状検査を容易に行うことができる。
【0092】
上記実施の形態では閉塞部材として蓋12とシール板32,60とを設けているが、蓋を省略し、シール板のみで閉塞部材を構成するものとしてもよい。
【0093】
凸部2,2A〜2J,2a,2a’,2b,3gや凹部3の好ましい大きさは、内径の公差を踏まえて決定することが好ましい。
【0094】
凸部または凹部は、独立した形状である場合、3点以上あれば同心円状であることの認識がしやすく、32点以内であれば、バリの発生を抑えやすいため好ましい。8点程度が特に好適である。
【0095】
図14〜16の遠心成形型10B〜10Dでは、
図23に示すロック機構を備えるものとしているが、ロック機構はこれに限定されず、各種のものを採用することができる。かかるロック機構付き遠心成形型の一例を
図21,22に示す。
【0096】
図21の遠心成形型100は、管状の金型本体111と、該金型本体111の開口を閉塞するための蓋112とを有する。蓋112に前記凹部又は凸部が設けられている。金型本体111内に原料樹脂を注入し、蓋112を装着した後、金型軸線を中心として高速回転させることにより、金型本体111の内周面に沿う筒状の成形品が成形される。蓋112は、金型本体111の開口端面を閉塞する円盤状の蓋板113と、該蓋板113の外周から金型本体111の外周面に対して一定間隔を空けて沿うように設けられた筒状の側筒部114とを有している。
【0097】
蓋112を金型本体111に固定するためのロック装置121は、蓋112の側筒部114に複数箇所、例えば等間隔で3〜4箇所に設けられたロック爪支持部122と、各ロック爪支持部122にそれぞれ取り付けられたロック爪123と、該ロック爪123をロック位置方向に付勢するスプリング124と、側筒部114の先端に設けられたロック解除リング125とを有している。
【0098】
ロック爪支持部122は、ロック爪123を軸支するためのピン(支軸)126を取り付けるピン孔と、前記スプリング124を装着するためのスプリング収納部127と、前記ロック解除リング125を支持するボルト128を取り付ける雌ねじ部とを有している。なお、ボルト128を取り付ける雌ねじ部は、側筒部114の全周にわたって設けられるロック解除リング125を支持するものであるから、ロック爪支持部122の位置とは関係なく、側筒部114の任意の位置に設けることができる。
【0099】
ロック解除リング125は、金型本体外周面と側筒部内周面との間に挿入されるロック解除片131と、側筒部外周面に沿う状態の取付片132と、取付片131,132を連結する連結片33とからなる断面コ字状のものである。前記取付片132には、前記ボルト128の取付位置に対応するように、金型軸線方向に長軸を有する長孔134が設けられている。このロック解除リング125は、前記長孔134を挿通した前記ボルト128により、側筒部114の先端に金型軸線方向に対して移動可能な状態で取り付けられる。
【0100】
ロック爪123は、前記ピン126に基端部が支持されて回動可能な状態となっており、回動端(内端)は、側筒部内周面から金型本体側に突出して金型本体外周面に当接可能な状態となっている。このロック爪123は、前記スプリング124によって突出方向に付勢されており、蓋112を金型本体111に装着していない状態では、ロック解除リング125におけるロック解除片131の先端に当接する位置まで回動した状態に保持されている。このとき、ロック解除リング125は、スプリング124により付勢されたロック爪123によって側筒部先端から離れた位置(反蓋板側)に押し付けられた状態になるとともに、このときのロック爪123の回動端は、金型本体外周面に相当する位置よりも内周側に突出した状態となっている。
【0101】
このように形成したロック装置121は、蓋112を金型本体111に装着する際に、ロック爪123の回動端が金型本体外周面に接触することにより、スプリング124の付勢力に抗してロック爪123が蓋板113側に押し戻される状態になる。蓋112が金型本体111の開口を閉塞する位置となり、蓋板113に設けたパッキン115が押し潰された閉塞状態になると、ロック爪123は、スプリング124の付勢力によって回動端が金型本体外周面に当接した状態に保持される。
【0102】
そして、この閉塞状態において、ロック爪123の回動端が金型本体111の外周面に当接する位置は、前記ピン126よりも開口側(蓋板113側)に位置するように各部の寸法や位置関係が設定されている。これにより、ピン126を中心として回動するロック爪123は、ピン126と回動端当接部との位置関係により、金型本体と側筒部との間に楔状に食い込んだロック状態となる。したがって、開き方向への蓋112の移動が阻止されることになり、蓋112が金型本体111の開口を閉塞した状態に保持されることになる。すなわち、蓋112は、金型本体111に対して軸線方向に組み付けるだけで自動的に閉塞状態に保持されることになる。
【0103】
一方、成形後に蓋112を金型本体111から取り外す場合は、前記ロック解除リング125を蓋板側に移動させ、ロック解除片131によってロック爪123を蓋板側に回動させることにより、回動端と金型本体外周面との当接状態、即ちロック爪123によるロック状態を解除することができる。
【0104】
図22の遠心成形型200は、管状の金型本体211と、該金型本体211の開口を閉塞するための蓋212とを有するものであって、蓋212に前記凹部又は凸部が設けられている。金型本体211内に原料樹脂を注入し、蓋212を装着した後、金型軸線を中心として高速回転させることにより、金型本体211の内周面に沿う筒状の成形品を得るものである。
【0105】
蓋212を金型本体211に固定するためのロック装置221は、蓋212の外周3箇所に等間隔で設けられたロック爪支持部222と、各ロック爪支持部にそれぞれ取り付けられたロック爪223とを有している。ロック爪支持部222は、ロック爪223を挟む一対の支持片224を有するものであって、各支持片224は、蓋212の外周を切削して形成されるとともに、ロック爪支持部222の上面222aを蓋外周側が下がるように傾斜させた状態としている。また、支持片224には、ロック爪223を支持するためのピン225を取り付けるピン孔が設けられている。
【0106】
ロック爪223は、その先端部に、金型本体211に設けられているフランジ213に係止する係止部226を有するとともに、後端部に、ナット螺合用の雄ねじ部を有している。このロック爪223は、中間部に設けられた爪長手方向の長孔227に前記ピン225を挿通させた状態で前記支持片224に軸支されることにより、金型軸線方向に移動可能かつ法線方向に傾動可能な状態となっている。
【0107】
また、ロック爪223は、蓋212に取り付けるときに、後端部の雄ねじ部に螺合させたナット228と前記ロック爪支持部222との間に、ワッシャー229を介してコイルスプリング230を圧縮状態で装着している。このコイルスプリング230は、先端側がロック爪支持部222の上面222a、即ちコイルスプリング当接面に対して外周側が爪先端方向に変位した状態で圧接するため、外周側の撓み量に比べて内周側の撓み量が大きくなる。したがって、ロック爪223には、コイルスプリング230の復元力によって後端部側(ナット側)が蓋外周に倒れる方向の力が作用し、係止部226をフランジ213に係止させる方向の力となる。
【0108】
このように形成したロック装置221は、蓋212を金型本体211に装着した状態では、前記コイルスプリング230の作用でロック爪223の係止部226がフランジ213に確実に係止した状態になるとともに、蓋212を金型本体211の開口に押し付けた状態となる。このとき、コイルスプリング230の性能を適当に選択することにより、必要十分な押し付け力で蓋212を金型本体211に密着させることができる。また、ロック爪223へのナット228の螺合量を変えることにより、コイルスプリング230による押し付け力を微調整することが可能である。
【0109】
ロック装置221のロック解除は、ロック爪223の後端を蓋内周側に傾動させることによって行うことができる。このロック爪223の傾動操作は、内周に蓋側が拡開した円錐状のテーパー面を有するロック解除治具(図示略)を金型軸線方向に押し付けることによって容易に行うことができる。また、ロック解除治具のテーパー面を蓋212に対応した最大径を有する円錐面状に形成しておくことにより、3箇所のロック爪223を、これらの位置に関係なく同時に傾動させることができる。したがって、このような円錐面を有するロック解除用の治具と、蓋212を把持する治具とを組み合わせることにより、金型本体211に対する蓋212の着脱及びロック装置221の開閉操作を自動的に行うことが可能となる。
【0110】
本発明では、中空円筒体の内孔は中空円筒体の外周面と完全に同軸状である必要はなく、若干偏心していてもよい。
【0111】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。本発明では、成形された中空円筒体の内面にメッキ(例えばクロムメッキ)やプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。また、中空円筒体の内面にシリコン系材料やフッ素系材料などの層を形成して積層構造としてもよい。