【解決手段】第1、第2の外部電極51,52と、第1、第2の外部電極51,52間にわたって接続された可溶導体53と、可溶導体53に接続され、溶融した可溶導体を吸引する吸引部材70とを有し、吸引部材70は、第1、第2の外部電極51,52間に配設された第1の絶縁基板55と、第1の絶縁基板55の可溶導体53と対向する表面55aに形成された発熱体57と、発熱体57を覆う絶縁部材62と、発熱体57と接続されるとともに、第1の絶縁基板55の表面55aに形成され、可溶導体53の一部と接続された発熱体引出電極63と、第1の絶縁基板55の厚さ方向に設けられ、発熱体引出電極63と連続する貫通孔58とを備え、吸引部材70を複数有し、可溶導体53が溶融することにより第1、第2の外部電極51,52間の電流経路を遮断する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0014】
[第1の実施の形態]
本発明が適用された保護素子1は、
図1に示すように、第1の絶縁基板10と、第1の絶縁基板10の表面10aに搭載された可溶導体13とを有し、第1の絶縁基板10の表面10aには、溶融した可溶導体13を吸引する吸引孔20が開口されている。そして、保護素子1は、外部回路に組み込まれることにより、可溶導体13が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断するものである。
【0015】
第1の絶縁基板10は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、第1の絶縁基板10は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0016】
第1の絶縁基板10の表面10aの相対向する両端部には、第1、第2の電極11,12が形成されている。第1、第2の電極11,12は、それぞれ、Cu配線等の導電パターンによって形成され、表面に適宜、酸化防止対策としてSnメッキ等の保護層が設けられている。また、第1、第2の電極11,12は、第1の絶縁基板10の側面を介して裏面10bに至る導電層11b,12bを介して、裏面10bに形成された第1、第2の外部接続電極11a,12aと接続されている。保護素子1は、第1、第2の外部接続電極11a,12aが外部回路を構成する回路基板に接続されることにより、当該回路基板の電流経路上に接続される。そして、保護素子1は、第1、第2の電極11,12間にわたって後述する可溶導体13が搭載されることにより、可溶導体13が第1、第2の外部接続電極11a,12aを介して回路基板の電流経路の一部となる。
【0017】
また、第1の絶縁基板10は、第1、第2の電極11,12の間に、吸引孔20が形成されている。吸引孔20は、可溶導体13が過電流による自己発熱により溶融すると、毛管現象によってこの溶融導体13aを吸引し、溶融導体13aの体積を減少させるものである(
図2参照)。保護素子1は、大電流用途に対応するために可溶導体13の断面積を増大させることにより、溶融量が増大した場合にも、吸引孔20に吸引させることで、溶融導体13aの体積を減少させることができる。これにより、保護素子1は、遮断時のアーク放電による溶融導体13aの飛散を軽減し、絶縁抵抗の低下を防止し、また、可溶導体13の搭載位置の周辺回路への付着による短絡故障を防止することができる。
【0018】
吸引孔20は、内面に導電層21が形成されている。導電層21が形成されることにより、吸引孔20は、溶融導体13aを吸引しやすくすることができる。導電層21は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、吸引孔20の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層21は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を吸引孔20内に挿入することにより形成してもよい。
【0019】
また、吸引孔20は、第1の絶縁基板10の厚さ方向に貫通する貫通孔として形成されることが好ましい。これにより、吸引孔20は、溶融導体13aを第1の絶縁基板10の裏面10b側まで吸引することができ、より多くの溶融導体13aを吸引し、溶断部位における溶融導体13aの体積を減少させることができる。なお、吸引孔20は、非貫通孔として形成してもよい。
【0020】
第1の絶縁基板10の表面10aには、吸引孔20の導電層21と接続された表面電極22が形成されている。表面電極22は、可溶導体13が接続される支持電極となる。また、表面電極22は、導電層21と連続することにより、可溶導体13が溶融すると、溶融導体13aが凝集し吸引孔20内に導きやすくする。
【0021】
また、第1の絶縁基板10の裏面10bには、吸引孔20の導電層21と接続された裏面電極23が形成されている。裏面電極23は、導電層21と連続することにより、可溶導体13が溶融すると、吸引孔20を介して移動した溶融導体13aが凝集する(
図3参照)。これにより、保護素子1は、より多くの溶融導体13aを吸引し、溶断部位における溶融導体13aの体積を減少させることができる。
【0022】
なお、保護素子1は、吸引孔20を複数形成することにより、可溶導体13の溶融導体13aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体13aを吸引することで、溶断部位における溶融導体13aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0023】
次いで、可溶導体13について説明する。可溶導体13は、第1及び第2の電極11,12間にわたって実装され、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を遮断するものである。
【0024】
可溶導体13は、過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0025】
また、可溶導体13は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、
図1に示すように、可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層13b、低融点金属層13bに積層された外層として高融点金属層13cを有する。可溶導体13は、第1、第2の電極11,12及び表面電極22上にハンダ等の接合材料を介して接続される。
【0026】
低融点金属層13bは、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である(たとえば千住金属工業製、M705等)。低融点金属層13bの融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層13cは、低融点金属層13bの表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、保護素子1をリフロー炉によって外部回路基板上に実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0027】
このような可溶導体13は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。なお、可溶導体13は、高融点金属層を内層とし、低融点金属層を外層として構成してもよく、また低融点金属層と高融点金属層とが交互に積層された4層以上の多層構造とするなど、後に説明するように、様々な構成によって形成することができる。
【0028】
可溶導体13は、内層となる低融点金属層13bに、外層として高融点金属層13cを積層することによって、リフロー温度が低融点金属層13bの溶融温度を超えた場合であっても、可溶導体13として溶断するに至らない。したがって、保護素子1は、リフローによって効率よく実装することができる。
【0029】
また、可溶導体13は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。このとき、可溶導体13は、溶融した低融点金属層13bが高融点金属層13cを浸食することにより、高融点金属層13cが溶融温度よりも低い温度で溶融する。したがって、可溶導体13は、低融点金属層13bによる高融点金属層13cの浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、可溶導体13の溶融導体13aは、上述した吸引孔20による吸引作用に加えて、表面電極22及び第1、第2の電極11,12の物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断することができる。
【0030】
また、可溶導体13は、内層となる低融点金属層13bに高融点金属層13cが積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、可溶導体13は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0031】
また、可溶導体13は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、可溶導体13は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、可溶導体13は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層13cが設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、可溶導体13は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0032】
なお、可溶導体13は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス14が塗布されている。また、保護素子1は、第1の絶縁基板10がカバー部材15に覆われることによりその内部が保護されている。カバー部材15は、上記第1の絶縁基板10と同様に、たとえば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。
【0033】
[回路構成]
このような保護素子1は、
図4に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック30内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック30は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル31〜34からなるバッテリスタック35を有する。
【0034】
バッテリパック30は、バッテリスタック35と、バッテリスタック35の充放電を制御する充放電制御回路40と、バッテリスタック35の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル31〜34の電圧を検出する検出回路36とを備える。
【0035】
バッテリスタック35は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル31〜34が直列接続されたものであり、バッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bを介して、着脱可能に充電装置45に接続され、充電装置45からの充電電圧が印加される。充電装置45により充電されたバッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0036】
充放電制御回路40は、バッテリスタック35から充電装置45に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子41、42と、これらの電流制御素子41、42の動作を制御する制御部43とを備える。電流制御素子41、42は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部43によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック35の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部43は、充電装置45から電力供給を受けて動作し、検出回路36による検出結果に応じて、バッテリスタック35が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子41、42の動作を制御する。
【0037】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック35と充放電制御回路40との間の充放電電流経路上に接続される。
【0038】
検出回路36は、各バッテリセル31〜34と接続され、各バッテリセル31〜34の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路40の制御部43に供給する。
【0039】
以上のような構成からなるバッテリパック30に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、
図5に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極11aがバッテリスタック35側と接続され、第2の外部接続電極12aが正極端子30a側と接続され、これにより可溶導体13がバッテリスタック35の充放電経路上に直列に接続される。
【0040】
[保護素子の動作]
バッテリパック30に定格を超える過電流が通電されると、保護素子1は、可溶導体13が自己発熱により溶融し、バッテリパック30の充放電経路を遮断する。このとき、
図2、
図3に示すように、保護素子1は、溶融導体13aが毛管現象により表面電極22を介して吸引孔20に吸引されるため、大電流用途に対応するために可溶導体13の断面積を増大させた場合にも、遮断時における溶融導体13aの体積を減少させ、アーク放電による溶融導体13aの飛散を軽減することができる。また、保護素子1は、可溶導体13を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、効率よく可溶導体13を吸引孔20に吸引することができる。
【0041】
なお、本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、過電流による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0042】
[発熱体]
また、本発明が適用された保護素子は、
図6に示すように、第1の絶縁基板10に可溶導体13を溶断する発熱体25を設けてもよい。なお、以下の説明において上述した保護素子1と同じ部材については同じ符号を付して、その詳細を省略する。
【0043】
発熱体25が設けられた保護素子24は、例えばバッテリパックに組み込まれると、過電流時における可溶導体13の自己溶断に加え、バッテリセルの過電圧を検知して発熱体25を通電、発熱させ、可溶導体13を溶断させることにより、バッテリパックの充放電経路を遮断することができる。
【0044】
発熱体25は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、第1の絶縁基板10の表面10aにスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。
【0045】
発熱体25は、第1の絶縁基板10の表面10a上において絶縁層26に被覆されている。絶縁層26上には、表面電極22が積層される。絶縁層26は、発熱体25の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体25の熱を効率よく表面電極22及び可溶導体13へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。表面電極22は、発熱体25によって加熱されることにより、可溶導体13の溶融導体13aを凝集しやすくするとともに、吸引孔20内へ吸引させやすくすることができる。
【0046】
発熱体25は、一端が表面電極22と接続され、表面電極22を介して、表面電極22上に搭載された可溶導体13と電気的に接続される。また、発熱体25は、他端が図示しない発熱体電極と接続されている。発熱体電極は、第1の絶縁基板10の表面10aに形成されるとともに、裏面10bに形成された第3の外部接続電極27(
図9参照)と接続され、この第3の外部接続電極27を介して外部回路と接続される。そして、保護素子1は、外部回路を構成する回路基板に実装されることにより、第3の外部接続電極27を介して発熱体25が回路基板に形成された発熱体25への給電経路に組み込まれる。
【0047】
また、
図7に示すように、保護素子24は、発熱体25を第1の絶縁基板10の裏面10bに形成してもよい。発熱体25は、第1の絶縁基板10の裏面10bに形成されるとともに、裏面10b上において絶縁層26に被覆される。絶縁層26上には、裏面電極23が積層される。
【0048】
発熱体25は、一端が裏面電極23と接続され、吸引孔20に形成された導電層21及び表面電極22を介して、表面電極22上に搭載された可溶導体13と電気的に接続される。また、発熱体25は、他端が図示しない発熱体電極を介して第3の外部接続電極27と接続される。
【0049】
発熱体25を第1の絶縁基板10の裏面10bに形成することにより、保護素子24は、裏面電極23が発熱体25によって加熱されることにより、より多くの溶融導体13aを凝集しやすくなる。したがって、保護素子24は、表面電極22から導電層21を介して裏面電極23へ溶融導体13aを吸引する作用を促進させ、確実に可溶導体13を溶断することができる。
【0050】
また、
図8に示すように、保護素子24は、発熱体25を第1の絶縁基板10の内部に形成してもよい。この場合、発熱体25は、ガラス等の絶縁層によって被覆する必要はない。また、発熱体25は、一端が表面電極22又は裏面電極23と接続され、表面電極22上に搭載された可溶導体13と電気的に接続される。また、発熱体25は、他端が図示しない発熱体電極を介して第3の外部接続電極27と接続される。
【0051】
発熱体25を第1の絶縁基板10の内部に形成することにより、保護素子24は、導電層21を介して表面電極22及び裏面電極23が発熱体25によって加熱されることにより、より多くの溶融導体13aを凝集しやすくなる。したがって、保護素子24は、表面電極22から導電層21を介して裏面電極23へ溶融導体13aを吸引する作用を促進させ、確実に可溶導体13を溶断することができる。
【0052】
なお、発熱体25は、第1の絶縁基板10の表面10b、裏面10b又は内部に形成するいずれの場合においても、吸引孔20の両側に形成することが、表面電極22及び裏面電極23を加熱し、またより多くの溶融導体13aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0053】
[回路構成]
このような保護素子24は、
図9に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック30内の回路に組み込まれて用いられる。なお、以下の説明においては、上述したバッテリパック30と同じ部材については、同じ符号を付してその詳細を省略する。
【0054】
バッテリパック30は、バッテリスタック35と、バッテリスタック35の充放電を制御する充放電制御回路40と、バッテリスタック35の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子24と、各バッテリセル31〜34の電圧を検出する検出回路36と、検出回路36の検出結果に応じて保護素子24の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子37とを備える。
【0055】
保護素子24は、例えば、バッテリスタック35と充放電制御回路40との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子37によって制御される。
【0056】
検出回路36は、各バッテリセル31〜34と接続され、各バッテリセル31〜34の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路40の制御部43に供給する。また、検出回路36は、いずれか1つのバッテリセル31〜34が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子37を制御する制御信号を出力する。
【0057】
電流制御素子37は、たとえばFETにより構成され、検出回路36から出力される検出信号によって、バッテリセル31〜34の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子24を動作させて、バッテリスタック35の充放電電流経路を電流制御素子41、42のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0058】
以上のような構成からなるバッテリパック30に用いられる、本発明が適用された保護素子24は、
図10に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子24は、第1の外部接続電極11aがバッテリスタック35側と接続され、第2の外部接続電極12aが正極端子30a側と接続され、これにより可溶導体13がバッテリスタック35の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子24は、発熱体25が発熱体電極及び第3の外部接続電極27を介して電流制御素子37と接続されるとともに、発熱体25がバッテリスタック35の開放端と接続される。これにより、発熱体25は、一端を表面電極22を介して可溶導体13及びバッテリスタック35の一方の開放端と接続され、他端を第3の外部接続電極27を介して電流制御素子37及びバッテリスタック35の他方の開放端と接続され、電流制御素子37によって通電が制御される発熱体25への給電経路が形成される。
【0059】
[保護素子の動作]
バッテリパック30に定格を超える過電流が通電されると、保護素子24は、可溶導体13が自己発熱により溶融し、バッテリパック30の充放電経路を遮断する。このとき、保護素子24は、溶融導体13aが毛管現象により表面電極22を介して吸引孔20に吸引されるため、大電流用途に対応するために可溶導体13の断面積を増大させた場合にも、遮断時における溶融導体13aの体積を減少させ、アーク放電による溶融導体13aの飛散を軽減することができる。また、保護素子24は、可溶導体13を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、効率よく可溶導体13を吸引孔20に吸引することができる。
【0060】
また、検出回路36がバッテリセル31〜34のいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子37へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子37は、発熱体25に通電するよう電流を制御する。保護素子24は、バッテリスタック35から、第1の電極11、可溶導体13及び表面電極22を介して発熱体25に電流が流れ、これにより発熱体25が発熱を開始する。保護素子24は、発熱体25の発熱により可溶導体13が溶断し、バッテリスタック35の充放電経路を遮断する。
【0061】
このとき、保護素子24は、溶融導体13aが毛管現象により表面電極22を介して吸引孔20に吸引されるため、大電流用途に対応するために可溶導体13の断面積を増大させた場合にも、確実にバッテリパック30の充放電経路を遮断することができる。また、保護素子24は、可溶導体13を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間で溶断することができる。
【0062】
なお、保護素子24は、可溶導体13が溶断することにより、発熱体25への給電経路も遮断されるため、発熱体25の発熱が停止される。
【0063】
本発明に係る保護素子24は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0064】
[第2の実施の形態]
[保護素子の構成]
次いで、第2の実施の形態について説明する。
図11(A)及び
図11(B)に示すように、保護素子50は、第1及び第2の外部電極51,52と、第1及び第2の外部電極51,52間にわたって積層された可溶導体53と、可溶導体53に接続され、可溶導体53の溶融導体53aを吸引する吸引部材54とを備える。吸引部材54は、第1、第2の外部電極51,52間に配設された絶縁基板55と、絶縁基板55の表面55aに形成され、可溶導体53の一部と接続された表面電極56と、絶縁基板55に設けられた発熱体57と、絶縁基板55の厚さ方向に設けられ、表面電極56と連続する貫通孔58とを備える。保護素子50は、発熱体57が発熱することにより可溶導体53を溶融させる。このとき、保護素子50は、吸引部材54によって可溶導体53が溶融した溶融導体53aを吸引し、確実に可溶導体53を溶断させ、第1の外部電極51と第2の外部電極52との間の電流経路を遮断する。
【0065】
第1及び第2の外部電極51,52は、保護素子50を外部回路に接続する接続端子であり、保護素子50の内部で可溶導体53を介して接続されている。第1及び第2の外部電極51,52は、保護素子50の外筐体に支持されることにより保護素子50の内外にわたって配設されている。なお、第1及び第2の外部電極51,52は、吸引部材54の絶縁基板55上に形成してもよく、或いは絶縁基板55と隣接あるいは一体となったエポキシ樹脂等からなる絶縁素材に形成するようにしてもよい。
【0066】
可溶導体53は、過電流状態によって、及び発熱体57の発熱によって溶融するものであり、したがって、溶断する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。なお、可溶導体53は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなる高融点金属と、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属との積層体であってもよく、また、低融点金属層と高融点金属層とが交互に積層された4層以上の多層構造とするなど、後に説明するように、様々な構成によって形成することができる。
【0067】
絶縁基板55は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、ヒューズ溶断時の温度に留意する必要がある。
【0068】
発熱体57は、比較的抵抗値が高く、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金或いは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板55の裏面55b上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。発熱体57は、両端が、第1、第2の発熱体電極59,60と接続されている。第1、第2の発熱体電極59,60は、発熱体57と同じ絶縁基板55の裏面55bに設けられている。第1の発熱体電極59は、後述する発熱体引出電極63を介して可溶導体53と接続され、第2の発熱体電極60は、第3の外部接続電極61(
図12、
図13参照)と接続され、これにより発熱体57を発熱させるための電源に接続する。
【0069】
発熱体57は、ガラス等の絶縁部材62によって覆われ、この絶縁部材62を介して発熱体57に対向するように発熱体引出電極63が配置される。この絶縁部材62は、発熱体57が内部に一体的に積層された積層基板であってもよい。また、発熱体57は、後述する裏面電極64の両側に設ける他に、裏面電極64の一方の側のみ、又は、裏面電極64を囲むように設けてもよい。
【0070】
絶縁基板55の表面55aには表面電極56が形成されている。表面電極56は、半田等の接続材料を介して、第1、第2の外部電極51,52間を接続する可溶導体53と接続されている。また、表面電極56は、絶縁基板55の厚さ方向に形成された貫通孔58と連続されている。表面電極56は、可溶導体53が発熱体57の発熱により溶融すると、溶融導体53aが凝集し、毛管現象により貫通孔58内に吸引させることができる。これにより、保護素子50は、大電流用途に対応するために可溶導体53の断面積を増大させた場合にも、溶融導体53aが絶縁基板55の表面55a上に過剰に凝集することが無く、確実に第1、第2の外部電極51,52間の電流経路を遮断することができる。
【0071】
図11(A)に示すように、貫通孔58は、表面電極56の幅方向に中央に設けられている。なお、貫通孔58は、複数設けてもよい。ここでは、複数の貫通孔58が直線状に一列に並んで設けられている。
【0072】
貫通孔58の内周面には、表面電極56と連続する導電層65が設けられている。導電層65は、例えば、溶融導体53aがぬれ広がる金属材料で、ペースト処理、メッキ処理等で形成される。これにより、保護素子50は、表面電極56に凝集した溶融導体53aを貫通孔58内に引き込みやすくなり、より多くの溶融導体53aを吸引させることができる。
【0073】
また、保護素子50は、絶縁基板55の裏面55bに貫通孔58及び導電層65と連続する裏面電極64が設けられている。保護素子50は、裏面電極64を設けることにより、導電層65を伝って貫通孔58内に吸引された溶融導体53aが裏面電極64に凝集することから、さらにより多くの溶融導体53aを吸引させることができる。
【0074】
また、上述したように、裏面電極64の近傍、例えば両側、一方側又は周囲には、上述した発熱体57が設けられている。これにより、保護素子50は、発熱体57の熱が効率よく裏面電極64、導電層65、及び表面電極56へ伝達され、速やかに可溶導体53を加熱、溶断させることができる。
【0075】
また、保護素子50は、貫通孔58内の一部又は全部に可溶導体53と同一若しくは類似の材料又は可溶導体53より融点の低い予備ハンダ66が充填されている。予備ハンダ66は、発熱体57が発熱したとき、絶縁基板55の裏面55b側の温度が表面55a側の温度より高くなり、更に、導電層65や表面電極56や裏面電極64や発熱体引出電極63が絶縁基板55より先に温度が高くなることによって、可溶導体53より先に溶融し、次いで溶融導体53aを貫通孔58に呼び込むことができる。これにより、溶融導体53aは、絶縁基板55の表面55aから裏面55bに移動し、姿勢に拘わらず、第1の外部電極51と第2の外部電極52との間の電流経路を確実に遮断することができる。
【0076】
絶縁基板55の裏面55bに設けられる発熱体引出電極63は、裏面55bの裏面電極64と重畳して電気的に接続される。また、発熱体引出電極63は、裏面電極64,貫通孔58及び予備ハンダ66、表面電極56を介して可溶導体53と接続され、一端に形成されたタブ63aが第1の発熱体電極59に接続されている。
【0077】
なお、絶縁基板55の表面55aの表面電極56の外側には、離間して島状電極67a,67bが設けられている。島状電極67a,67bは、可溶導体53が溶断したとき、ぬれ性によって、溶融導体53aの一部を、表面電極56や第1、第2の外部電極51,52と離間して保持する。
【0078】
以上のような保護素子50では、発熱体57を絶縁基板55の裏面55b側に設けることで、発熱体57が発熱したとき、裏面55b側が表面55a側より温度が高くなる。加えて、導電層65、表面電極56及び裏面電極64や発熱体引出電極63は、一般に銅パターン等の導電材料で熱伝導性にも優れている。また、裏面55bの裏面電極64は、発熱体57の間に設けられ、発熱体57の熱が効率よく伝わる構成となっている。したがって、保護素子50は、より多くの溶融導体53aを絶縁基板55の裏面55b側に吸引させることができ、大電流に対応するために可溶導体53の断面積を増大させ、溶断時の溶融導体53aの溶融量が多くなった場合にも、可溶導体53を安定して溶断することができる。
【0079】
また、保護素子50は、貫通孔58内に予備ハンダ66を充填することにより、導電層65や表面電極56や裏面電極64や発熱体引出電極63が絶縁基板55より先に温度が高くなることによって、予備ハンダ66が可溶導体53より先に溶融し、溶融導体53aを貫通孔58に呼び込むことができる。これにより、溶融導体53aを、効率よく絶縁基板55の表面55aから裏面55bに吸引し、姿勢に拘わらず、第1の外部電極51と第2の外部電極52との間の電流経路を確実に遮断することができる。なお、吸引部材54は、予備ハンダ66と共に、又は予備ハンダ66に代えて、フラックスを貫通孔58内の一部又は全部に充填させてもよい。フラックスを充填させることによっても、可溶導体53の濡れ性を高め、効率よく溶融導体53aを貫通孔58に呼び込むことができる。
【0080】
[保護素子の使用方法]
保護素子50は、
図12に示すように、上述したリチウムイオン二次電池のバッテリパック30内の回路に用いられる。保護素子50は、保護素子10と同様に、バッテリスタック31と充放電制御回路32との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子34によって制御される。
【0081】
バッテリパック30において、保護素子50は、
図13に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子50は、第1、第2の外部電極51,52間にわたって接続されるとともに絶縁基板55の表面55aに形成された表面電極56と接続された可溶導体53と、表面電極56を介して通電、発熱されることにより可溶導体53を溶融する発熱体57とからなる回路構成である。発熱体57は、一端が第1の発熱体電極59、発熱体引出電極63、裏面電極64及び導電層65を介して表面電極56に接続され、他方が第2の発熱体電極60を介して第3の外部接続電極61に接続される。保護素子50では、可溶導体53が第1、第2の外部電極51,52の間の充放電電流経路上に直列接続され、発熱体57が表面電極56を介して可溶導体53と接続されるとともに、第3の外部接続電極61を介して電流制御素子34と接続される。
【0082】
このような回路構成からなるバッテリパック30は、バッテリセル31〜34の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、電流制御素子37が保護素子50を動作させて、バッテリスタック35の充放電電流経路を電流制御素子41,42のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。具体的に、保護素子50は、発熱体57が発熱し、
図14(A)に示すように、可溶導体53及び貫通孔58内の予備ハンダ66を加熱する。この際、絶縁基板55は、発熱体57が配設された裏面55b側の方が表面55a側より温度が高い温度勾配となる。絶縁基板55の裏面55b側の裏面電極64や発熱体引出電極63や貫通孔58の導電層65や絶縁基板55の表面55aの表面電極56は、セラミック等の絶縁基板55より熱伝導性に優れる。
【0083】
したがって、発熱体57の熱は、主に、発熱体57の間に設けられた裏面電極64、発熱体57上の発熱体引出電極63、貫通孔58の導電層65、表面55aの表面電極56の経路で、絶縁基板55の表面55aに伝達され、経路にある予備ハンダ66と可溶導体53を溶融する。勿論、可溶導体53は、効率は劣るが、絶縁基板55のセラミック等の絶縁層を介して伝わる熱によっても溶融される。これにより、
図14(B)に示すように、予備ハンダ66は、可溶導体53より先に溶融開始し、次第に、表面電極56、導電層65、裏面電極64、発熱体引出電極63のぬれ性によって、絶縁基板55の裏面11bへ移動し、予備ハンダ66に遅れて溶融した可溶導体53も、ぬれ性によって貫通孔58を介して絶縁基板55の裏面55b側に引きずられるようにして移動する。また、溶融導体53aの一部は、絶縁基板55の表面55aの島状電極67a,67bにも保持される(
図14(A)中矢印参照)。これにより、保護素子50は、第1及び第2の外部電極51,52間の電流経路上にある可溶導体53を確実に溶断することができる。
【0084】
本発明の保護素子50は、上述したように、大量の可溶導体53(ハンダ)を絶縁基板55の表面55aから裏面55bに導くことにより、可溶導体53を容易に溶断することができる。ここでは、保護素子50が配置された姿勢に拘わらず安定して可溶導体53を溶断できるかを確認するため、
図15及び
図16に示す実験を行った。ここで、
図16は、
図15(A)−(E)に示した本発明の保護素子50の各姿勢と溶断時間の関係を示す。なお、ここでは、保護素子50を15Wで動作させている。
【0085】
・
図15(A)は、絶縁基板55の表面55a側を上向きにして、絶縁基板55の裏面55b側を下向きにして載置した保護素子50の溶断後の状態を示す平面図である。
・
図15(B)は、保護素子50を
図15(A)の姿勢から90°倒立させて貫通孔58を水平方向に向けるとともに、第2の外部電極52を上向きにして上下方向に可溶導体53を支持した保護素子50の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図15(C)は、更に
図15(B)の姿勢から90°回転し、貫通孔58を上下方向に並列させるとともに、可溶導体53を水平方向に支持した保護素子50の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図15(D)は、
図15(A)の姿勢を裏向きにした状態である。すなわち、絶縁基板55の表面55a側を下向きにして、絶縁基板55の裏面55b側を上向きにして載置した保護素子50の溶断後の状態を示す平面図である。
・
図15(E)は、第1の外部電極51を上向きに倒立させた姿勢から絶縁基板55を面内方向に45°回転し、貫通孔58が斜めに並列するとともに、可溶導体53を斜めに支持した保護素子50の溶断後の状態を示す側面図である。
【0086】
図16に示すように、本発明の保護素子50は、どの様な姿勢であっても、溶断時間にバラツキが無く、確実に、可溶導体53を溶断できることを確認することができる。
【0087】
図17は、本発明の比較例となる保護素子100で、凝集方式のものを示す。この保護素子100は、
図17(A)及び(B)に示すように、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面101aの端に形成された第1及び第2の外部電極102,103と、絶縁基板101の表面101aに設けられた発熱体104と、第1及び第2の外部電極102,103にわたって積層され、発熱体104を横断し、発熱体104による加熱により、第1の外部電極102と第2の外部電極103との間の電流経路を溶断する可溶導体105とを備える。発熱体104は、両端が絶縁基板101の表面101aに設けられ、発熱体104に電流を流して発熱させるために電源を接続する第1、第2の発熱体電極106,107と接続されている。
【0088】
第1、第2の発熱体電極106,107は、絶縁基板101の表面101aに形成されている。第1の発熱体電極106は、発熱体104と接続されるとともに発熱体引出電極108のタブ108aが接続されている。第2の発熱体電極107は、発熱体104と接続されるとともに、図示しない外部接続電極と接続されている。
【0089】
発熱体引出電極108は、一端が可溶導体105と接続され、他端が発熱体引出電極108のタブ108aによって第1の発熱体電極106に接続されている。また、発熱体104の外側には、発熱体104と離間して島状電極109a,109bが設けられている。島状電極109a,109bは、可溶導体105が溶断したとき、ぬれ性によって、可溶導体105が溶融した溶融導体105aを保持し、第1の外部電極102と第2の外部電極103との間の電流経路を溶断する。すなわち、この保護素子100は、絶縁基板101に貫通孔が設けられておらず、溶融導体105aが絶縁基板101の裏面101bに移動することはない。
【0090】
この保護素子100も、保護素子50と同様な用い方がされ、
図12に示すように、検出回路36から出力される検出信号によって、バッテリセル31〜34の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、電流制御素子37は、保護素子100を動作させて、バッテリスタック35の充放電電流経路を電流制御素子41,42のスイッチ動作によらず遮断する。これにより、発熱体104は発熱し、
図17(C)に示すように、可溶導体105を溶断し、溶融導体105aの一部は、島状電極109a,109bに保持され、電流経路を遮断する。
【0091】
図19は、参考例となる保護素子100の姿勢と溶断時間の関係を示す。なお、ここでは、保護素子100を15Wで動作させている。また、
図18(A)−(E)の各姿勢は、
図15(A)−(E)の各姿勢と対応している。
【0092】
・
図18(A)は、絶縁基板101の表面101a側を上向きにして、絶縁基板101の裏面101b側を下向きにして載置した保護素子100の溶断後の状態を示す平面図である。
・
図18(B)は、保護素子100を
図18(A)の姿勢から90°倒立させて、第1の外部電極102を上向きにして上下方向に可溶導体105を支持した保護素子100の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図18(C)は、更に
図18(B)の姿勢から90°回転し、可溶導体105を水平方向に支持した保護素子100の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図18(D)は、
図18(A)の姿勢を裏向きにした状態である。すなわち、絶縁基板101の表面101a側を下向きにして、絶縁基板101の裏面101b側を上向きにして載置した保護素子100の溶断後の状態を示す平面図である。
・
図18(E)は、第1の外部電極102を上向きに倒立させた姿勢から絶縁基板101を面内方向に45°回転し、可溶導体105を斜めに支持した保護素子100の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図19は、本発明の保護素子100を
図18(A)−(E)のような姿勢にしたときの可溶導体105の溶断時間を示す。
【0093】
図19に示すように、比較例の保護素子100は、保護素子100の配線姿勢によって溶断時間にバラツキが大きいことを確認することができる。すなわち、本発明の保護素子50は、参考例の保護素子100と比較して姿勢に拘わらず溶断時間のバラツキを小さくすることができ、したがって、姿勢に拘わらず、略一定の時間で確実に可溶導体53を溶断することができる。
【0094】
なお、
図20に示すように、貫通孔58は、
図11(B)に示すように、直線状に一列設ける場合の他、
図20(A)に示すように、2列にしても良いし、それ以上設けても良い。また、
図20(B)に示すように、複数の貫通孔で構成するのではなく、細長いスリット58aで構成するようにしても良く、複数本であってもよい。
【0095】
[発熱体]
また、本発明が適用された保護素子は、
図21に示すように、発熱体57を絶縁基板55の表面55a側に形成した吸引部材70を用いてもよい。なお、以下の説明において、上述した保護素子50と同じ部材については、同じ符号を付してその詳細を省略する。発熱体57が絶縁基板55の表面55a側に形成された吸引部材70を用いた保護素子71は、発熱体57が絶縁基板55の表面55aに形成されるとともに、絶縁部材62によって被覆されている。
【0096】
発熱体57は、両端が同じく絶縁基板55の表面55aに形成された第1、第2の発熱体電極59,60と接続されている。第1の発熱体電極59は、発熱体引出電極63を介して可溶導体53と接続され、これにより発熱体57が可溶導体53と接続される。また、第2の発熱体電極60は、第3の外部接続電極61(
図12、
図13参照)と接続され、これにより発熱体57が発熱させるための電源に接続される。
【0097】
発熱体57は、絶縁部材62によって覆われ、この絶縁部材62を介して発熱体57に対向するように発熱体引出電極63が配置される。この絶縁部材62は、発熱体57が内部に一体的に積層された積層基板であってもよい。また、発熱体57は、表面電極56の両側に設ける他に、表面電極56の一方の側のみ、又は、表面電極56を囲むように設けてもよい。
【0098】
また、発熱体引出電極63は、絶縁基板55の表面55aに、絶縁部材62を介して発熱体57と重畳して形成されている。発熱体引出電極63は、表面電極56を介して可溶導体53と接続され、一端に形成されたタブ63aが第1の発熱体電極59に接続されている。
【0099】
なお、保護素子71は、上述した保護素子50と同様に貫通孔58が形成されるとともに、導電層65や裏面電極64を設け、貫通孔58内の一部又は全部には予備ハンダ66を充填させてもよい。また、吸引部材70は、予備ハンダ66と共に、又は予備ハンダ66に代えて、フラックスを貫通孔58内の一部又は全部に充填させてもよい。フラックスを充填させることによっても、可溶導体53の濡れ性を高め、効率よく溶融導体53aを貫通孔58に呼び込むことができる。
【0100】
保護素子71は、発熱体57を絶縁基板55の表面55a側に設けることにより、発熱体57が発熱したとき、熱を効率よく可溶導体53に伝えることができ、速やかに可溶導体53を溶断させることができる。また、保護素子71は、発熱初期においては、絶縁基板55の表面55a側が裏面55b側よりも温度が高い温度勾配となる。したがって、保護素子71は、溶融導体53aが高温の表面電極56上に凝集するとともに、表面電極56と連続する導電層65を介して貫通孔58内に速やかに吸引させることができ、断面積が大きく多量の溶融導体53aが溶融した場合にも、確実に可溶導体53を溶断させることができる。
【0101】
[実施例]
本発明の保護素子71は、上述したように、大量の可溶導体53を絶縁基板55の表面55aから裏面55bに導くことにより、可溶導体53を容易に溶断することができる。ここでは、保護素子71が配置された姿勢に拘わらず安定して可溶導体53を溶断できるかを確認するため、
図22及び
図23に示す実験を行った。実験に用いた保護素子71は、絶縁基板55として厚さ0.635mmのアルミナ系基板に、0.85φの貫通孔58を形成し、内側面にNi/Auめっき処理を施した。また、可溶導体53として、厚さ0.35mmのSn‐Ag‐Cu系金属箔に厚さ6μmのAgメッキ処理を施したものを用いた。
【0102】
このような保護素子71を31Wで動作させたときの、
図22に示す各姿勢における可溶導体53の溶断時間を計測した。ここで、
図23は、
図22(A)−(E)に示した本発明の保護素子71の各姿勢と溶断時間の関係を示す。また、
図22(A)−(E)の各姿勢は、
図15(A)−(E)の各姿勢と対応している。
【0103】
・
図22(A)は、絶縁基板55の表面55a側を上向きにして、絶縁基板55の裏面55b側を下向きにして載置した保護素子71の溶断後の状態を示す平面図である。
・
図22(B)は、保護素子71を
図22(A)の姿勢から90°倒立させて貫通孔58を水平方向に向けるとともに、第2の外部電極52を上向きにして上下方向に可溶導体53を支持した保護素子71の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図22(C)は、更に
図22(B)の姿勢から90°回転し、貫通孔58を上下方向に並列させるとともに、可溶導体53を水平方向に支持した保護素子71の溶断後の状態を示す側面図である。
・
図22(D)は、
図22(A)の姿勢を裏向きにした状態である。すなわち、絶縁基板55の表面55a側を下向きにして、絶縁基板55の裏面55b側を上向きにして載置した保護素子71の溶断後の状態を示す平面図である。
・
図22(E)は、第2の外部電極52を上向きに倒立させた姿勢から絶縁基板55を面内方向に45°回転し、貫通孔58が斜めに並列するとともに、可溶導体53を斜めに支持した保護素子71の溶断後の状態を示す側面図である。
【0104】
図23に示すように、本発明の保護素子71は、どの様な姿勢であっても、溶断時間にバラツキが無く、確実に、可溶導体53を溶断できることを確認することができる。
【0105】
なお、本発明が適用された保護素子は、発熱体57を絶縁基板55の表面55aや裏面55bに形成する他、絶縁基板55の内部に形成してもよい。この場合、発熱体57は絶縁部材62で被覆する必要はなく、また、発熱体57は導電層65を介して表面電極56又は裏面電極64と接続される。
【0106】
[凝集基板]
また、本発明が適用された保護素子は、吸引部材54,70に加え、溶融導体53aを凝集し、可溶導体53の溶断を補助する凝集部材75を併用してもよい。
図24(A)(B)は、吸引部材70及び凝集部材75を併用した保護素子74の断面図である。
図24(A)(B)に示すように、凝集部材75は、第2の絶縁基板76と、第2の絶縁基板76の表面76a上に設けられた発熱体77と、発熱体77を被覆する絶縁部材78と、絶縁部材78上に積層され、溶融導体53aを凝集する集電極79とを備える。
【0107】
凝集部材75は、第2の絶縁基板76、発熱体77及び絶縁部材78として、保護素子50の絶縁基板55、発熱体57及び絶縁部材62と同様の部材を用いることができる。また、集電極79は、例えばAgやCu等の高融点金属ペーストを印刷、焼成すること等により形成することができる。
【0108】
図25に保護素子74の回路図を示す。凝集部材75は、発熱体57と同様に、発熱体77が図示しない発熱体電極を介して第3の外部接続電極61と電気的に接続され、外部回路に設けられた電流制御素子37等によって、吸引部材70の発熱体57と連動して通電が制御されている。また、凝集部材75は、発熱体77が図示しない発熱体電極を介して集電極79と接続され、集電極79を介して可溶導体53と電気的に接続されている。
【0109】
凝集部材75は、集電極79が可溶導体53の吸引部材70が設けられた面と反対側の面に接続されている。したがって、保護素子74は、吸引部材70の発熱体57が通電、発熱されると、同時に凝集部材75の発熱体77も通電、発熱し、可溶導体53を両側から加熱することにより、速やかに溶融させる。
【0110】
このとき、保護素子74は、吸引部材70によって溶融導体53aを貫通孔58内に吸引するとともに、凝集部材75によって溶融導体53aを集電極79に凝集させることにより、溶融導体53aを吸引、保持する許容量が増大されている。したがって、保護素子74は、断面積が大きく高定格化された可溶導体53を用いて、多量の溶融導体53aが発生した場合にも、確実に溶断させることができ、定格の向上を図りつつ溶断特性を維持、向上させることができる。
【0111】
また、保護素子74は、可溶導体53として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、可溶導体53を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属で被覆された可溶導体53は、発熱体57,77が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子74は、吸引部材54及び凝集部材75を備え、同時に発熱体57,77を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子74によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0112】
また、保護素子74は、凝集部材75の集電極79を吸引部材70の貫通孔58と対向させることが好ましい。これにより、貫通孔58上により多くの溶融導体53aが集まり、効率よく溶融導体53aを貫通孔58内に吸引させることができ、速やかに可溶導体53を溶断することができる。
【0113】
[複数の吸引部材]
また、本発明が適用された保護素子は、
図26(A)(B)に示すように、吸引部材54,70を複数備え、可溶導体53の表面及び裏面に配設してもよい。
図26に示す保護素子80は、例えば上述した吸引部材54が、可溶導体53の表面及び裏面にそれぞれ配設されている。
図27は、保護素子80の回路図である。可溶導体53の表面及び裏面に配設された各吸引部材54は、それぞれ発熱体57の一端が、第1の発熱体電極59及び発熱体引出気電極63を介して可溶導体53と接続され、発熱体57の他端が第2の発熱体電極60及び第3の外部接続電極61を介して発熱体57を発熱させるための電源に接続される。
【0114】
保護素子80は、可溶導体53を溶断する際には、各吸引部材54,54の発熱体57がそれぞれ発熱するとともに溶融導体53を各貫通孔58内に吸引する。したがって、保護素子80は、大電流用途に対応するために可溶導体13の断面積を増大させ溶融導体53aが多量に発生した場合にも、複数の吸引部材54によって吸引し、確実に可溶導体53を溶断させることができる。また、保護素子80は、複数の吸引部材54によって溶融導体53aを吸引することにより、より速やかに可溶導体53を溶断させることができる。
【0115】
保護素子80は、可溶導体53として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、可溶導体53を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属で被覆された可溶導体53は、発熱体57が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子80は、複数の吸引部材54を備え、同時に各発熱体57を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子80によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0116】
また、保護素子80は、
図26に示すように、一対の吸引部材54,54が対向して可溶導体53に接続されることが好ましい。これにより、保護素子80は、一対の吸引部材54,54で、可溶導体53の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに溶融導体53aを吸引することができ、より速やかに可溶導体53を加熱、溶断することができる。
【0117】
なお、保護素子80は、吸引部材として発熱体57が絶縁基板55の裏面55b側に設けられた上記吸引部材54を用いる他、発熱体57が絶縁基板55の表面55a側に設けられた吸引部材70を複数用いてもよく、あるいは両吸引部材54,70を併用してもよい。
【0118】
[可溶導体の構成]
上述したように、可溶導体13,53は、低融点金属と高融点金属とを含有してもよい。低融点金属としては、Snを主成分とするPbフリーハンダなどのハンダを用いることが好ましく、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。このとき、可溶導体13,53は、
図28(A)に示すように、内層として高融点金属層90が設けられ、外層として低融点金属層91が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合、可溶導体13,53は、高融点金属層90の全面が低融点金属層91によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。高融点金属層90や低融点金属層91による被覆構造は、メッキ等の公知の成膜技術を用いて形成することができる。
【0119】
また、
図28(B)に示すように、可溶導体13,53は、内層として低融点金属層91が設けられ、外層として高融点金属層90が設けられた可溶導体を用いてもよい。この場合も、可溶導体13,53は、低融点金属層91の全面が高融点金属層90によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。
【0120】
また、可溶導体13,53は、
図29に示すように、高融点金属層90と低融点金属層91とが積層された積層構造としてもよい。
【0121】
この場合、可溶導体13は、
図29(A)に示すように、第1、第2の電極11,12や表面電極22、あるいは第1、第2の外部電極51,52や表面電極56に接続される下層と、下層の上に積層される上層からなる2層構造として形成され、下層となる高融点金属層90の上面に上層となる低融点金属層91を積層してもよく、反対に下層となる低融点金属層91の上面に上層となる高融点金属層90を積層してもよい。あるいは、可溶導体13,53は、
図29(B)に示すように、内層と内層の上下面に積層される外層とからなる3層構造として形成してもよく、内層となる高融点金属層90の上下面に外層となる低融点金属層91を積層してもよく、反対に内層となる低融点金属層91の上下面に外層となる高融点金属層90を積層してもよい。
【0122】
また、可溶導体13,53は、
図30に示すように、高融点金属層90と低融点金属層91とが交互に積層された4層以上の多層構造としてもよい。この場合、可溶導体13,53は、最外層を構成する金属層によって、全面又は相対向する一対の側面を除き被覆された構造としてもよい。
【0123】
また、可溶導体13,53は、内層を構成する低融点金属層91の表面に高融点金属層90をストライプ状に部分的に積層させてもよい。
図31は、可溶導体13,53の平面図である。
【0124】
図31(A)に示す可溶導体13,53は、低融点金属層91の表面に、幅方向に所定間隔で、線状の高融点金属層90が長手方向に複数形成されることにより、長手方向に沿って線状の開口部92が形成され、この開口部92から低融点金属層91が露出されている。可溶導体13,53は、低融点金属層91が開口部92より露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属との接触面積が増え、高融点金属層90の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。開口部92は、例えば、低融点金属層91に高融点金属層90を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0125】
また、可溶導体13,53は、
図31(B)に示すように、低融点金属層91の表面に、長手方向に所定間隔で、線状の高融点金属層90を幅方向に複数形成することにより、幅方向に沿って線状の開口部92を形成してもよい。
【0126】
また、可溶導体13,53は、
図32に示すように、低融点金属層91の表面に高融点金属層90を形成するとともに、高融点金属層90の全面に亘って円形の開口部93が形成され、この開口部93から低融点金属層91を露出させてもよい。開口部93は、例えば、低融点金属層91に高融点金属層90を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0127】
可溶導体13,53は、低融点金属層91が開口部93より露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属との接触面積が増え、高融点金属の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。
【0128】
また、可溶導体13,53は、
図33に示すように、内層となる高融点金属層90に多数の開口部94を形成し、この高融点金属層90に、メッキ技術等を用いて低融点金属層91を成膜し、開口部94内に充填してもよい。これにより、可溶導体13,53は、溶融する低融点金属が高融点金属に接する面積が増大するので、より短時間で低融点金属が高融点金属を溶食することができるようになる。
【0129】
また、可溶導体13,53は、低融点金属層91の体積を、高融点金属層90の体積よりも多く形成することが好ましい。可溶導体13,53は、発熱体25,57の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、可溶導体13,53は、低融点金属層91の体積を高融点金属層90の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極11,12間、あるいは第1、第2の外部電極51,52間を遮断することができる。
【0130】
また、可溶導体13,53は、
図34に示すように、略矩形板状に形成され、外層を構成する高融点金属によって被覆され主面部96よりも肉厚に形成された相対向する一対の第1の側縁部97と、内層を構成する低融点金属が露出され第1の側縁部97よりも薄い厚さに形成された相対向する一対の第2の側縁部98とを有してもよい。
【0131】
第1の側縁部97は、側面が高融点金属層90によって被覆されるとともに、これにより可溶導体13,53の主面部96よりも肉厚に形成されている。第2の側縁部98は、側面に、外周を高融点金属層90によって囲繞された低融点金属層91が露出されている。第2の側縁部98は、第1の側縁部97と隣接する両端部を除き主面部96と同じ厚さに形成されている。
【0132】
保護素子1においては、可溶導体13は、第1の側縁部97が第1、第2の電極11,12の幅方向に沿って搭載され、第2の側縁部98が、通電方向の両側端となる向きで、第1、第2の電極11,12間に跨って接続されている。同様に、保護素子50においては、可溶導体53は、第1の側縁部97が第1、第2の外部電極51,52の幅方向に沿って搭載され、第2の側縁部98が、通電方向の両側端となる向きで、第1、第2の外部電極51,52間に跨って接続されている。
【0133】
これにより、保護素子1,50は、可溶導体13,53が速やかに溶断し、外部回路の電流経路を遮断させることができる。
【0134】
すなわち、第2の側縁部98は、第1の側縁部97よりも相対的に薄肉に形成されている。また、第2の側縁部98の側面は、内層を構成する低融点金属層91が露出されている。これにより、第2の側縁部98は、低融点金属層91による高融点金属層90の溶食作用が働き、かつ、溶食される高融点金属層90の厚さも第1の側縁部97に比して薄く形成されていることにより、高融点金属層90によって肉厚に形成されている第1の側縁部97に比して、少ない熱エネルギーで速やかに溶融させることができる。これに対し、第1の側縁部97は、高融点金属層90によって肉厚に被覆され、第2の側縁部98に比して溶断するまでに多くの熱エネルギーを要する。
【0135】
したがって、保護素子1,50は、発熱体25,57が発熱することにより、直ちに、第2の側縁部98がわたされている第1の電極11と第2の電極12との間、あるいは第1の外部電極51と第2の外部電極52との間が溶断する。これにより、保護素子1,50は、第1、第2の電極11,12間、あるいは第1、第2の外部電極51,52間の充放電経路が遮断するとともに、発熱体25,57への給電経路が遮断され、発熱体25,57の発熱が停止される。
【0136】
このような構成を有する可溶導体13,53は、低融点金属層91を構成するハンダ箔等の低融点金属箔を、高融点金属層90を構成するAg等の金属で被覆することにより製造される。低融点金属層箔を高融点金属被覆する工法としては、長尺状の低融点金属箔に連続して高融点金属メッキを施すことができる電解メッキ法が、作業効率上、製造コスト上、有利となる。
【0137】
電解メッキによって高融点金属メッキを施すと、長尺状の低融点金属箔のエッジ部分、すなわち、側縁部において電界強度が相対的に強まり、高融点金属層90が厚くメッキされる(
図34参照)。これにより、側縁部が高融点金属層によって肉厚に形成された長尺状の導体リボン95が形成される。次いで、この導体リボン95を長手方向と直交する幅方向(
図34中C−C’方向)に、所定長さに切断することにより、可溶導体13,53が製造される。これにより、可溶導体13,53は、導体リボン95の側縁部が第1の側縁部97となり、導体リボン95の切断面が第2の側縁部98となる。また、第1の側縁部97は、高融点金属によって被覆され、第2の側縁部98は、端面(導体リボン95の切断面)に上下一対の高融点金属層90と高融点金属層90によって囲繞された低融点金属層91が外方に露出されている。