特開2018-157316(P2018-157316A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-157316信号発生装置、信号調整システム及び信号調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-157316(P2018-157316A)
(43)【公開日】2018年10月4日
(54)【発明の名称】信号発生装置、信号調整システム及び信号調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/36 20060101AFI20180907BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20180907BHJP
   H03D 7/18 20060101ALI20180907BHJP
【FI】
   H04L27/36
   H04B1/04 J
   H03D7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-51299(P2017-51299)
(22)【出願日】2017年3月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 守
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】井出 基晴
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB07
5K060DD04
5K060FF06
5K060HH03
5K060HH21
5K060PP03
(57)【要約】
【課題】直交変調器が出力可能な周波数範囲全域でイメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を取得可能な信号発生装置、信号調整システム及び信号調整方法を提供する。
【解決手段】波形データ発生部11とD/A変換器13との間に配置され、波形データ発生部11から入力するI波形データとQ波形データの相対的な時間差を調整する時間差調整部12aと、イメージ抑圧比を所定値以下に調整するためのI波形データとQ波形データの時間差調整値を複数の周波数帯域にそれぞれ対応付けて格納する時間差調整テーブル21と、局部発振器15が出力中のキャリア信号のキャリア周波数が属する周波数帯域に対応付けられた時間差調整値を時間差調整テーブル21から読出し、該時間差調整値に基づいて時間差調整部12aにおける時間差の調整制御を行う制御部22と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するI波形データ及びQ波形データを出力する波形データ発生部(11)と、
所望のキャリア周波数のキャリア信号を出力する局部発振器(15)と、
前記キャリア信号をI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号で直交変調して変調信号として出力する直交変調器(16)と、
前記波形データ発生部と前記直交変調器との間に配置され、前記波形データ発生部から入力する前記I波形データと前記Q波形データの相対的な時間差を調整する時間差調整部(12a)を有し、前記時間差の調整によって前記直交変調器から出力される前記変調信号のイメージ抑圧比を調整するIQ調整部(12)と、
前記イメージ抑圧比を所定値以下に調整するための前記I波形データと前記Q波形データの時間差調整値を、前記局部発振器から出力可能なキャリア周波数範囲の連続する複数の周波数帯域にそれぞれ対応付けて格納する時間差調整テーブル(21)と、
前記局部発振器が出力する前記キャリア信号の前記キャリア周波数が属する前記周波数帯域に対応付けられた前記時間差調整値を前記時間差調整テーブルから読出し、該時間差調整値に基づいて前記時間差調整部における前記時間差の調整制御を行う時間差調整制御部(23)と、を備えたことを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
前記時間差調整部は、前記I波形データまたは前記Q波形データの少なくとも一方を遅延させる遅延回路で構成されることを特徴とする請求項1に記載の信号発生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の信号発生装置と、
前記信号発生装置の前記直交変調器から出力された前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値を出力するイメージ抑圧比測定装置(30)と、
前記信号発生装置に対して前記各周波数帯域の前記キャリア信号に基づく前記変調信号の出力を順次指示するとともに、前記直交変調器から順次出力される前記各周波数帯域の前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値に基づいて前記時間差調整部に順次異なる前記時間差調整値を設定する調整制御装置(40)と、を備え、
前記調整制御装置は、
前記各周波数帯の前記キャリア信号に基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値を前記イメージ抑圧比測定装置から順次取得する測定値取得部(41)と、
前記測定値取得部が取得した前記測定値に基づいて前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えているか否かを判定するイメージ抑圧比判定部(42)と、
前記イメージ抑圧比判定部により前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えていることが判定された場合、前記時間差調整部に順次異なる値の前記時間差調整値を設定する時間差調整値可変設定部(43)と、
前記異なる値の前記時間差調整値に基づき前記時間差が順次調整制御された前記I波形データと前記Q波形データに基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の前記測定値が前記所定値を超えていないことが前記イメージ抑圧比判定部により判定された場合、前記時間差調整テーブルを初期化し、前記時間差調整部に設定されている前記時間差調整値を出力中の前記キャリア信号の周波数帯域に対応付けて前記時間差調整テーブルに格納する格納制御部(44)と、を有することを特徴とする信号調整システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の信号発生装置を用いる信号調整方法であって、
前記イメージ抑圧比を所定値以下に調整するための前記I波形データと前記Q波形データの時間差調整値を、前記局部発振器から出力可能なキャリア周波数範囲の連続する複数の周波数帯域にそれぞれ対応付けて格納する格納ステップ(S16)と、
前記局部発振器が出力する前記キャリア信号の前記キャリア周波数を捕捉する捕捉ステップ(S21)と、
前記捕捉ステップにより捕捉した前記キャリア周波数が属する前記周波数帯域に対応付けられた前記時間差調整値を前記時間差調整テーブルから読出し、該時間差調整値に基づいて前記時間差調整部における前記時間差の調整制御を行う時間差調整制御ステップ(S22、S23)と、を含むことを特徴とする信号調整方法。
【請求項5】
請求項3に記載の信号調整システムを用いる信号調整方法であって、
前記各周波数帯の前記キャリア信号に基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値を前記イメージ抑圧比測定装置から順次取得する測定値取得ステップ(S13)と、
前記測定値取得ステップで取得した前記測定値に基づいて前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えているか否かを判定するイメージ抑圧比判定ステップ(S14)と、
前記イメージ抑圧比判定ステップにより前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えていることが判定された場合、前記時間差調整部に順次異なる値の前記時間差調整値を設定する時間差調整値可変設定ステップ(S12)と、
前記異なる値の前記時間差調整値に基づき前記時間差が順次調整制御された前記I波形データと前記Q波形データに基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の前記測定値が前記所定値を超えていないことが前記イメージ抑圧比判定部により判定された場合、前記時間差調整テーブルを初期化し、前記時間差調整部に設定されている前記時間差調整値を出力中の前記キャリア信号の周波数帯域に対応付けて前記時間差調整テーブルに格納する格納制御ステップ(S16)と、を含むことを特徴とする信号調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号調整システム及び信号調整方法に関し、特に、直交変調器を備える信号発生装置、該信号発生装置から出力される変調信号に含まれるイメージ抑圧比を低減する信号調整システム及び信号調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、I相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンド信号でキャリア信号を直交変調して、変調信号を発生させる信号発生装置が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
信号発生装置が備える直交変調器は乗算器(ミキサ)を含んでおり、図9のスペクトラム図に示すように、所望の変調信号101の周波数成分に加えて、キャリア信号が乗算器を介して変調信号にリークすることによるキャリアリーク102が発生する。また、I相成分の信号とQ相成分の信号との直交性にずれが生じた場合、あるいは両信号の間に時間差が生じた場合にイメージ信号103が発生する。なお、所望の変調信号101のレベルLdに対するイメージ信号のレベルLiの比Li/Ldは、イメージ抑圧比と呼ばれる。キャリアリークやイメージ信号が発生すると、変調信号を復調する場合に完全な元のデータ信号が得られない可能性が高まる。
【0004】
そこで、キャリアリークやイメージ抑圧比を低減する調整方法が従来から提案されている。例えば、特許文献1には、ベースバンドのデジタルの同相成分信号と直交成分信号とを出力するベースバンド信号発生部と、デジタルの同相成分信号と直交成分信号をアナログの同相成分信号と直交成分信号に変換する2つのD/A変換器との間に、直交変調器のオフセット誤差及び直交誤差を補償する誤差補償部を設け、入力される同相成分信号Iと直交成分信号Qに対して演算を行うことにより、オフセット誤差、振幅誤差及び位相誤差が補償された同相成分信号I´と直交成分信号Q´を生成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−116241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、直交変調器を用いた信号発生装置では、キャリア周波数(RF周波数)の周波数範囲が例えば100MHz〜6GHzと広く、キャリアリークやイメージ抑圧比の調整値もキャリア信号の周波数帯域によって異なるのが一般的である。また、この種の信号発生装置は、キャリア周波数が高くなるに従がってイメージ抑圧比が悪化する傾向にあり、例えば、5〜6GHz帯ではその傾向が高まるため、当該周波数範囲でのイメージ抑圧比の低減が望まれている。
【0007】
特許文献1には、直交誤差によって変調出力信号に含まれるイメージ成分をスペクトラムアナライザにより観測し、このイメージ成分のレベルが最小となるように直交変調器に入力される同相成分信号Iと直交成分信号Qの振幅と位相の調整を行う点が記載されている(段落0016参照)。
【0008】
しかしながら、従来の信号調整方法では、広範な周波数範囲を対象に、変調出力信号に含まれるイメージ成分をスペクトラムアナライザ等の外部装置により測定し、周波数範囲全域で出力信号が最適レベルに調整されるようにイメージ抑圧比を追い込む処理は行われていなかった。
【0009】
また、特許文献1に記載されるように、波形データ発生部とDACとの間に誤差補償部を設け、演算によってイメージ抑圧比等を低減する信号調整方法は従来から知られていた。しかしながら、特許文献1に記載のものに代表される従来の信号調整方法にあっては、信号発生装置の使用時の任意調整のために実施するのが前提であって、信号発生装置が出力可能な周波数範囲全域に亘って変調信号が最適化された状態に調整する方法は提案されていなかった。
【0010】
このように、従来は、信号発生装置のキャリア信号の周波数範囲を対象に外部装置(測定装置)を使用してその中のどの帯域においても出力変調信号が最適レベルとなるようイメージ抑圧比を追い込む処理は行われておらず、必然的に、上記最適レベルとなるイメージ抑圧比の調整値を上記周波数範囲の各周波数帯域に対応付けて記憶することも行われていなかった。このため、従来の信号発生装置は、直交変調器が出力可能な周波数範囲の各周波数帯域ごとにイメージ抑圧比を精度よく低減することができず、広範な周波数範囲に亘って直交変調出力の信号品質を良好に維持することができないという問題点があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、直交変調器が出力可能な周波数範囲全域に亘りイメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を取得可能な信号発生装置、信号調整システム及び信号調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の信号発生装置は、互いに直交するI波形データ及びQ波形データを出力する波形データ発生部(11)と、所望のキャリア周波数のキャリア信号を出力する局部発振器(15)と、前記キャリア信号をI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号で直交変調して変調信号として出力する直交変調器(16)と、前記波形データ発生部と前記直交変調器との間に配置され、前記波形データ発生部から入力する前記I波形データと前記Q波形データの相対的な時間差を調整する時間差調整部(12a)を有し、前記時間差の調整によって前記直交変調器から出力される前記変調信号のイメージ抑圧比を調整するIQ調整部(12)と、前記イメージ抑圧比を所定値以下に調整するための前記I波形データと前記Q波形データの時間差調整値を、前記局部発振器から出力可能なキャリア周波数範囲の連続する複数の周波数帯域にそれぞれ対応付けて格納する時間差調整テーブル(21)と、前記局部発振器が出力する前記キャリア信号の前記キャリア周波数が属する前記周波数帯域に対応付けられた前記時間差調整値を前記時間差調整テーブルから読出し、該時間差調整値に基づいて前記時間差調整部における前記時間差の調整制御を行う時間差調整制御部(23)と、を備えた構成である。
【0013】
この構成により、請求項1の信号発生装置は、時間差調整テーブルに各周波数帯域に対応付けて格納された時間差調整値に基づいてイメージ抑圧比を精度よく低減でき、イメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を広範な帯域に亘って取得できるようになる。
【0014】
また、本発明の請求項2の信号発生装置においては、前記時間差調整部は、前記I波形データまたは前記Q波形データの少なくとも一方を遅延させる遅延回路で構成されていてもよい。
【0015】
この構成により、請求項2の信号発生装置は、イメージ抑圧比を所定値以下に調整するためのI波形データとQ波形データの時間差を調整する時間差調整部の設計の自由度を高めることができる。
【0016】
また、本発明の請求項3の信号調整システムは、前記信号発生装置と、前記信号発生装置の前記直交変調器から出力された前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値を出力するイメージ抑圧比測定装置(30)と、前記信号発生装置に対して前記各周波数帯域の前記キャリア信号に基づく前記変調信号の出力を順次指示するとともに、前記直交変調器から順次出力される前記各周波数帯域の前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値に基づいて前記時間差調整部に順次異なる前記時間差調整値を設定する調整制御装置(40)と、を備え、前記調整制御装置は、前記各周波数帯の前記キャリア信号に基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値を前記イメージ抑圧比測定装置から順次取得する測定値取得部(41)と、前記測定値取得部が取得した前記測定値に基づいて前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えているか否かを判定するイメージ抑圧比判定部(42)と、前記イメージ抑圧比判定部により前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えていることが判定された場合、前記時間差調整部に順次異なる値の前記時間差調整値を設定する時間差調整値可変設定部(43)と、前記異なる値の前記時間差調整値に基づき前記時間差が順次調整制御された前記I波形データと前記Q波形データに基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の前記測定値が前記所定値を超えていないことが前記イメージ抑圧比判定部により判定された場合、前記時間差調整テーブルを初期化し、前記時間差調整部に設定されている前記時間差調整値を出力中の前記キャリア信号の周波数帯域に対応付けて前記時間差調整テーブルに格納する格納制御部(44)と、を有する構成である。
【0017】
この構成により、請求項3の信号調整システムは、直交変調器から出力可能なキャリア周波数範囲の各周波数帯域に対応付けてイメージ抑圧比が所定値以下となる時間差調整値を格納した時間差調整テーブルを確保でき、該時間差調整テーブルを用いてキャリア周波数範囲全域でイメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を取得可能となる。
【0018】
また、本発明の請求項4の信号調整方法は、前記信号発生装置を用いる信号調整方法であって、前記イメージ抑圧比を所定値以下に調整するための前記I波形データと前記Q波形データの時間差調整値を、前記局部発振器から出力可能なキャリア周波数範囲の連続する複数の周波数帯域にそれぞれ対応付けて格納する格納ステップ(S16)と、前記局部発振器が出力する前記キャリア信号の前記キャリア周波数を捕捉する捕捉ステップ(S21)と、前記捕捉ステップにより捕捉した前記キャリア周波数が属する前記周波数帯域に対応付けられた前記時間差調整値を前記時間差調整テーブルから読出し、該時間差調整値に基づいて前記時間差調整部における前記時間差の調整制御を行う時間差調整制御ステップ(S22、S23)と、を含む構成である。
【0019】
この構成により、請求項4の信号調整方法では、時間差調整テーブルに各周波数帯域に対応付けて格納された時間差調整値に基づいてイメージ抑圧比を精度よく低減でき、イメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を広範な帯域に亘って取得できるようになる。
【0020】
また、本発明の請求項5の信号調整方法は、前記信号調整システムを用いる信号調整方法であって、前記各周波数帯の前記キャリア信号に基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の測定値を前記イメージ抑圧比測定装置から順次取得する測定値取得ステップ(S13)と、前記測定値取得ステップで取得した前記測定値に基づいて前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えているか否かを判定するイメージ抑圧比判定ステップ(S14)と、前記イメージ抑圧比判定ステップにより前記イメージ抑圧比が前記所定値を超えていることが判定された場合、前記時間差調整部に順次異なる値の前記時間差調整値を設定する時間差調整値可変設定ステップ(S12)と、前記異なる値の前記時間差調整値に基づき前記時間差が順次調整制御された前記I波形データと前記Q波形データに基づく前記変調信号の前記イメージ抑圧比の前記測定値が前記所定値を超えていないことが前記イメージ抑圧比判定部により判定された場合、前記時間差調整テーブルを初期化し、前記時間差調整部に設定されている前記時間差調整値を出力中の前記キャリア信号の周波数帯域に対応付けて前記時間差調整テーブルに格納する格納制御ステップ(S16)と、を含む構成である。
【0021】
この構成により、請求項5の信号調整方法では、信号調整時には、直交変調器から出力可能なキャリア周波数範囲の各周波数帯域に対応付けてイメージ抑圧比が所定値以下となる時間差調整値を格納した時間差調整テーブルを確保することができ、信号発生装置を切り離して使用する際、時間差調整テーブルを用いてキャリア周波数範囲全域でイメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を取得できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、直交変調器が出力可能な周波数範囲全域に亘りイメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を取得可能な信号発生装置、信号調整システム及び信号調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る信号調整システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る信号調整システムにおける信号発生装置の制御部及び記憶部の構成を示すブロック図である。
図3図2における記憶部に設けられる時間差調整テーブルの構成を示す表図である。
図4】本発明の一実施形態に係る信号調整システムの信号調整処理に係る各装置間のコマンド送受信動作を示すシーケンス図である。
図5】本発明の一実施形態に係る信号調整システムを用いた信号調整方法の処理を示すフローチャートである。
図6図5のフローチャートにおけるイメージ信号調整処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る信号調整システムから切り離された信号発生装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施形態に係る信号調整システムから切り離された信号発生装置の信号調整方法の処理を示すフローチャートである。
図9】キャリアリークとイメージ抑圧比を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る信号発生装置、信号調整システム及び信号調整方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る信号調整システム1は、信号発生装置10と、イメージ抑圧比測定装置としてのスペクトラムアナライザ(SA)30と、調整制御装置40と、を備える。なお、調整制御装置40は、信号発生装置10内に搭載されていてもよい。
【0026】
信号発生装置10は、波形データ発生部11と、IQ調整部12と、D/A変換器(DAC)13と、ローパスフィルタ(LPF)14と、局部発振器15と、直交変調器16と、増幅器17と、表示部18と、操作部19と、記憶部20と、制御部22と、を備える。
【0027】
波形データ発生部11は、直交変調器16から出力される変調信号のベースバンド信号として、互いに直交するI相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンドの波形データ(ディジタル値)を出力するようになっている。なお、以降では、I相成分のベースバンドの波形データを「I波形データ」、Q相成分のベースバンドの波形データを「Q波形データ」ともいう。図1及び図7では、I波形データ、Q波形データを、それぞれ、I、Qの符号で識別している。
【0028】
I波形データ及びQ波形データが対応する通信規格としては、例えば、セルラ(LTE、LTE−A、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV−DO、TD−SCDMA等)、WLAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びディジタル放送(DVB−H、ISDB−T等)が挙げられる。
【0029】
例えば、波形データ発生部11は、様々な通信規格に対応したI波形データ及びQ波形データを個別の波形ファイルとして記憶しており、操作部19により選択された通信規格に対応した波形ファイルからI波形データ及びQ波形データを展開して、後段のIQ調整部12に出力するようになっている。あるいは、波形データ発生部11は、操作部19により選択された通信規格に対応したI波形データ及びQ波形データを、DSP(Digital Signal Processor)により逐次生成して出力するものであってもよい。
【0030】
IQ調整部12は、波形データ発生部11とDAC13との間に配置され、I波形データとQ波形データの相対的な時間差を調整することによって直交変調器16から出力される変調信号の信号レベル、具体的には、イメージ抑圧比を調整するものである。IQ調整部12は、例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)で構成される。
【0031】
IQ調整部12は、I波形データとQ波形データの相対的な時間差を調整する時間差調整部12aを有する。本実施形態において、時間差調整部12aは、Q波形データの伝送経路中に介挿され、時間差調整値が設定されると、別経路を伝送されるI波形データに対して、設定された時間差調整値に相当する時間だけQ波形データを遅らせる遅延回路により構成されている。
【0032】
DAC13は、ディジタル信号であるI波形データ及びQ波形データをそれぞれアナログ信号であるI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号に変換するようになっている。
【0033】
LPF14は、DAC13から出力されたI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号の出力信号の高周波成分を除去するようになっている。
【0034】
局部発振器15は、例えばPLL回路により構成されており、制御部22又は調整制御装置40からの制御信号に基づいた所望のキャリア周波数のキャリア信号を直交変調器16に出力するようになっている。例えば、局部発振器15は、1GHz〜6GHzの周波数範囲で2.5MHzのステップでキャリア信号を出力する。なお、局部発振器15の発振周波数のステップは2.5MHzのみならず、例えば1Hz単位で可変可能である。
【0035】
直交変調器16は、局部発振器15から入力されたキャリア信号を、LPF14を通過したI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号で直交変調して変調信号として出力するようになっており、移相器16aと、乗算器16b,16cと、加算器16dと、を備える。
【0036】
局部発振器15からのキャリア信号は、直接乗算器16bへ入力されるとともに、移相器16aで位相が90°移相された後、乗算器16cへ入力される。また、乗算器16b,16cには、それぞれLPF14を通過したI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号が入力される。
【0037】
乗算器16bは、キャリア信号とI波形アナログ信号とを乗算して加算器16dへ出力する。乗算器16cは、90°移相されたキャリア信号とQ波形アナログ信号とを乗算して加算器16dへ出力する。加算器16dは、各乗算器16b,16cからの出力を加算して変調信号として出力する。直交変調器16から出力された変調信号は、増幅器17で増幅される。
【0038】
表示部18は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部22からの制御信号に応じて各種表示内容を表示するようになっている。この表示内容には、複数の通信規格や、複数の波形データの一覧などが含まれる。
【0039】
操作部19は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、キーボード、タッチパネル、又はマウスのような入力デバイスを含んで構成される。あるいは、操作部19は、ボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象が表示部18に表示される構成であってもよい。例えば、ユーザは、操作部19を用いて、信号発生装置10から出力される変調信号の通信規格を複数の通信規格の中から選択することができる。また、操作部19により、局部発振器15からの出力信号の周波数を設定することなども可能である。
【0040】
記憶部20には、時間差調整テーブル21(図2参照)が設けられている。時間差調整テーブル21には、図3に示すように、直交変調器16が出力する変調信号のイメージ抑圧比を予め閾値として設定した所定値以下に調整するためのI波形データとQ波形データの時間差調整値が、局部発振器15から出力可能なキャリア周波数範囲内のそれぞれ所定の周波数幅を有する連続する複数の周波数帯域にそれぞれ対応付けて格納されている。
【0041】
具体的に、図3に示す時間差調整テーブル21には、直交変調器16が出力可能なキャリア信号のキャリア周波数範囲、例えば、1GHz〜6GHzのうちの、特に、5GHzから6GHzのキャリア周波数範囲を調整対象とし、このキャリア周波数範囲を例えば100MHz刻みの周波数幅を有する各帯域にそれぞれ対応付けて時間差調整値が格納されている。
【0042】
図3に示すように、時間差調整テーブル21において、5050MHz帯は、周波数5000MHz〜5099MHzの周波数幅に設定されている。5050MHz帯には、イメージ抑圧比を所定値以下に調整するためのI波形データとQ波形データの時間差調整値として、例えば、5ピコ秒(psec)が格納されている。
【0043】
同様に、5150MHz帯は、周波数5100MHz〜5199MHzの周波数幅に設定されており、5250MHz帯は、周波数5200MHz〜5299MHzの周波数幅に設定されている。5150MHz帯、5250MHz帯には、イメージ抑圧比を所定値以下に調整するためのI波形データとQ波形データの時間差調整値として、それぞれ、例えば、15ピコ秒(psec)が格納されている。
【0044】
5250MHz帯を超える各周波数帯についても、同様に、周波数幅が100MHz刻みで設定され、各帯域に対応付けてそれぞれ時間差調整値が格納されている。
【0045】
時間差調整テーブル21は、イメージ抑圧比を所定値以下とする時間差調整値として、例えばI波形データを基準とし、I波形データに対してQ波形データを遅らせる時間(遅延時間)を格納している。図3に示す時間差調整テーブル21を用いた場合、IQ調整部12は、Q波形データの伝送経路中に設けた時間差調整部12a(図1図7参照)において、設定された時間差調整値に基づき、Q波形データをI波形データに対して時間差調整値に相当する時間だけ遅延させるように調整することができ、これにより、イメージ抑圧比を所定値以下に調整することができる。
【0046】
時間差調整テーブル21に対する時間差調整値の格納制御は、例えば、後述する調整制御装置40の格納制御部44により行うことができる。時間差調整値の格納制御については、図4図6を参照して後で詳述する。
【0047】
制御部22は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータで構成され、信号発生装置10を構成する上記各部の動作を制御する。制御部22は、図2に示すように、所定のプログラムを実行することにより、IQ時間差調整制御部23をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0048】
IQ時間差調整制御部23は、信号発生装置10から調整制御装置40とSA30が切り離された状態で、局部発振器15が出力するキャリア信号のキャリア周波数を捕捉し、該捕捉したキャリア周波数が属する周波数範囲に対応付けられた時間差調整値を前記時間差調整テーブル21から読出して時間差調整部12aに設定し、該時間差調整値に基づいて時間差調整部12aにおけるI波形データに対してQ波形データの相対的な時間を調整する時間差調整制御を実行する。IQ時間差調整制御部23は、本発明の時間差調整制御部を構成する。
【0049】
SA30は、直交変調器16から出力された変調信号のキャリアリーク及びイメージ抑圧比を測定する。また、SA30は、調整制御装置40からの制御信号に応じて、変調信号(キャリア信号)の測定値[dBm]、キャリアリークの測定値[dBm]、又はイメージ抑圧比の測定値[dB]を出力するようになっている。特に、本実施形態において、SA30は、調整制御装置40からの測定値取得要求コマンド(図4参照)を受けることにより上記変調信号のイメージ抑圧比の測定値[dB]を出力するようになっている。SA30は、本発明のイメージ抑圧比測定装置を構成する。
【0050】
調整制御装置40は、IQ調整部12を制御するものである。具体的に、調整制御装置40は、信号発生装置10に対して自装置がカバーする各周波数帯域のキャリア信号に基づく変調信号の出力を順次指示するとともに、直交変調器16から順次出力される各周波数帯域の変調信号のSA30によるイメージ抑圧比の測定値に基づいて時間差調整部12aに順次異なる時間差調整値を設定する信号調整処理を行う。
【0051】
調整制御装置40は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むパーソナルコンピュータ(PC)で構成され、ROMに記憶された所定のプログラムをRAMに移して実行することにより、測定値取得部41と、イメージ抑圧比判定部42と、時間差調整値可変設定部43と、格納制御部44と、をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0052】
測定値取得部41は、信号発生装置10に対してそれぞれ異なるキャリア周波数での変調信号の出力を指示するコマンドを順次送出する一方で、SA30に対して測定値の取得を要求するコマンドを順次送出することにより、SA30からイメージ抑圧比の測定値を順次取得する。
【0053】
イメージ抑圧比判定部42は、測定値取得部41が取得した測定値に基づいてイメージ抑圧比が所定値を超えているか否かを判定する。イメージ抑圧比判定部42は、例えば、SA30によるイメージ信号103(図9参照)の測定値を電圧値に変換し、該電圧値を上記閾値として設定した所定値に対応する電圧値と比較し、その比較結果に基づいてイメージ抑圧比が所定値以下であるか否かを出力する構成とすることができる。
【0054】
なお、信号調整システム1において、SA30は、上述した信号調整処理に際して信号発生装置10から出力された変調信号を受信し、その変調信号の測定結果を、例えば、図9に示す態様で、変調信号101、キャリアリーク102及びイメージ信号103として図示しない表示部に表示可能な構成となっている。
【0055】
このため、イメージ抑圧比判定部42は、調整制御装置40を操作する操作者が、SA30に表示された変調信号101とイメージ信号103の大きさを比べることでイメージ信号103が所定値以下になったかどうかを目視判定し、その判定結果を調整制御装置40に入力する構成としてもよい。
【0056】
時間差調整値可変設定部43は、イメージ抑圧比判定部42によりイメージ抑圧比が所定値を超えていることが判定された場合、時間差調整部12aに順次異なる値の時間差調整値を設定する。
【0057】
格納制御部44は、異なる値の時間差調整値に基づき時間差が順次調整制御されたI波形データとQ波形データに基づいて直交変調器16から出力される変調信号のイメージ抑圧比の測定値が所定値を超えていないことがイメージ抑圧比判定部42により判定された場合、時間差調整テーブル21を初期化し、時間差調整部12aに設定されている時間差調整値を、局部発振器15が出力中のキャリア周波数が属する周波数帯域に対応付けて時間差調整テーブル21に格納する制御を行う。
【0058】
上述した構成を有する信号調整システム1において、SA30と調整制御装置40は、図1に示すように、それぞれ、GPIB(General Purpose Interface Bus)インタフェースを有し、互いにGPIB通信を行うことが可能な構成である。また、調整制御装置40と信号発生装置10はそれぞれイーサネット(登録商標)インタフェースを有し、相互にイーサネット(Ethernet)通信が可能な構成となっている。
【0059】
上記接続構成により、信号調整システム1では、信号発生装置10、SA30及び調整制御装置40が協働して、直交変調器16が出力する変調信号の精度低下の原因となる信号要素を低減する信号調整を行うことができるようになっている。特に、本実施形態に係る信号調整システム1では、IQ調整部12に設けた時間差調整部12aによって、直交変調器16に入力する前のI波形データとQ波形データ間の時間差を調整しつつイメージ抑圧比を低減する信号調整処理を行う。
【0060】
また、信号調整システム1は、上述した信号調整処理に合わせて、イメージ抑圧比を所定以下とし得る時間差調整値を、信号発生装置10が出力可能なキャリア周波数範囲内の規定の周波数幅を有する連続する各帯域にそれぞれ対応付けて時間差調整テーブル21に格納するテーブル生成処理を行う。
【0061】
テーブル生成処理を含む信号調整処理を実行するため、信号発生装置10、SA30及び調整制御装置40は、それぞれのマイクロコンピュータに信号調整用の所定のプログラムを実装し、当該各プログラムをそれぞれ実行し、相互に制御情報(コマンド)を送受可能な構成となっている。
【0062】
本実施形態に係る信号調整システム1の信号調整処理に係る各装置間のコマンド送受信動作について図4を参照して説明する。
【0063】
図4に示すように、信号調整システム1の信号調整処理においては、まず、調整制御装置40の測定値取得部41が信号発生装置10に対してキャリア周波数設定コマンドを送出し(S101a)、次いで、出力開始コマンドを送出する(S101a)。
【0064】
信号発生装置10は、キャリア周波数設定コマンド及び出力開始コマンドを受信すると、キャリア周波数設定コマンドによって指定されたキャリア周波数例えば(f)のキャリア信号を局部発振器15から出力させ、直交変調器16がそのキャリア信号をI波形アナログ信号及びQ波形アナログ信号で直交変調して変調信号として出力する。このとき、時間差調整部12aには、初期値の時間差調整値が設定され、信号発生装置10では、該時間差調整値に基づきI波形データとQ波形データ間の時間差調整が実行されたうえで直交変調器16により変調信号が生成され、出力される。
【0065】
次に、測定値取得部41は、SA30に対し、測定値取得要求コマンドを送出する(S103a)。SA30は、測定値取得要求コマンドを受信すると、信号発生装置10から出力された変調信号のイメージ抑圧比を測定し、その測定値を調整制御装置40に送出する(S104a)。
【0066】
調整制御装置40では、測定値取得部41がイメージ抑圧比の測定値を受信し、イメージ抑圧比判定部42により該測定値が所定値を超えていると判定された場合には、時間差調整値可変設定部43が信号発生装置10に初期値とは異なる新たな時間差調整値を設定することを示す時間差調整値可変設定コマンドを信号発生装置10に送出する(S105)。時間差調整値可変設定コマンドを受信すると、信号発生装置10は、時間差調整部12aに新たな時間差調整値を設定し、該時間差調整値に基づきI波形データとQ波形データ間の時間差調整を行ったうえで直交変調器16により変調信号を生成し、出力する。
【0067】
その後、測定値取得部41は、SA30に対して測定値取得要求コマンドを送出し(S103b)、その測定値取得要求コマンドに基づき信号発生装置10から送出されたイメージ抑圧比の測定値を受信する(S104b)。
【0068】
引き続き、調整制御装置40では、測定値取得部41がSA30から送出されたイメージ抑圧比の測定値を受信し、イメージ抑圧比判定部42により該測定値が所定値以下であると判定された場合、格納制御部44が信号発生装置10に時間差調整値の格納を指示する時間差調整値格納コマンドを送出する(S106)。
【0069】
信号発生装置10は、時間差調整値格納コマンドを受信すると、制御部22がステップS105aの時間差調整値可変設定コマンドに基づき時間差調整部12aに設定中の時間差調整値を時間差調整テーブル21にステップS101aで指定されたキャリア周波数(f)に対応付けて格納する。ここでは、格納制御部44が時間差調整値の格納を指示し、該指示に基づき信号発生装置10が時間差調整値を時間差調整テーブル21に格納する例を挙げているが、イメージ抑圧比判定部42により該測定値が所定値以下であると判定された場合に、格納制御部44が時間差調整テーブル21に時間差調整値を直接格納する構成としてもよい。
【0070】
さらに、調整制御装置40は、キャリア周波数(f+Δf)を設定することを指示するキャリア周波数設定コマンドを送出し(S101b)、次いで、出力開始コマンドを送出した後(S102b)、ステップS103からS106までの処理を実行する。その後も同様に、調整制御装置40は、順次Δf増加させたキャリア周波数を設定することを指示するキャリア周波数設定コマンドを例えばn回送出し、その都度、S101からS106までの処理を繰り返し実行する。これにより、格納制御部44は、キャリア周波数(f)から(f+n×Δf)までの周波数範囲における各帯域にそれぞれ対応付けてイメージ抑圧比を所定値以下とし得る時間差調整値を時間差調整テーブル21に格納できる。
【0071】
図4に示した信号発生装置10、SA30及び調整制御装置40のコマンド送受信動作を踏まえ、以下、本実施形態の信号調整システム1を用いた信号調整方法について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0072】
まず、調整制御装置40は、キャリア信号のキャリア周波数fの初期値f0を信号発生装置10の局部発振器15に設定する(ステップS1)。
【0073】
次に、調整制御装置40は、信号発生装置10の制御部22に制御信号(図6の出力開始コマンド)を送出して、信号発生装置10から変調信号を出力させる(ステップS2)。
【0074】
次に、測定値取得部41は、SA30に測定値取得要求コマンドを送出し、次いで、イメージ抑圧比判定部42は、測定値取得要求コマンドによりSA30から送出される変調信号のイメージ抑圧比の測定値が予め設定されている所定値(閾値)より大きいか否かを判断する(ステップS3)。ここで肯定判断の場合にはステップS4のイメージ信号処理に進む。否定判断の場合にはステップS5に進み、現時点で時間差調整部12aに設定されている時間差調整値は変更されない。なお、ステップS4の処理の詳細については後述する。
【0075】
ステップS5において調整制御装置40は、イメージ抑圧比の調整対象とされているキャリア周波数範囲(例えば、5GHz〜6GHz)内の全てのキャリア周波数(帯域)についての調整がステップS4の処理によって完了したか否かを判断する。ここで、肯定判断の場合には処理を終了する。否定判断の場合にはステップS6に進む。
【0076】
ステップS6において調整制御装置40は、キャリア周波数fを所定のステップΔfだけ増加させて、信号発生装置10の局部発振器15に設定し、ステップS2以降の処理を実行する。その後も調整制御装置40は、ステップS6で順次ステップΔfだけ増加させたキャリア周波数fを対象にステップS4の信号調整処理を繰り返し実行し、ステップS5で肯定判断がなされることにより、上記キャリア周波数範囲の全てのキャリア周波数(帯域)を対象とする一連の信号調整処理を終了する。
【0077】
次に、図6のフローチャートを参照しながら、図5のステップS4におけるイメージ信号調整処理について説明する。
【0078】
イメージ信号調整処理(図5のステップS4参照)が開始されると、時間差調整値可変設定部43は時間差調整値を更新し(S11)、該更新後の時間差調整値を時間差調整部12aに設定する(S12)。時間差調整値としては、それぞれ値が異なり、各値に応じてイメージ抑圧比を異なるレベルに調整できる複数のものが用意、若しくは発生されるようになっている。
【0079】
信号発生装置10では、時間差調整部12aが更新された時間差調整値に基づいてI波形データとQ波形データの相対的な時間差を調整する。これにより、直交変調器16からは上記時間差調整後のI波形データとQ波形データに基づく変調信号が出力される。
【0080】
次に、測定値取得部41はSA30に対して測定値取得要求コマンドを送出し、該測定値取得要求コマンドに基づきSA30から送出される更新後の時間差調整値に基づく変調信号のイメージ抑圧比の測定値を取得する(S13)。
【0081】
次いで、イメージ抑圧比判定部42は、ステップS13で取得した測定値に基づいてイメージ抑圧比が所定値(閾値)以下であるか否かを判定する(S14)。ここで、否定判断の場合には、ステップS11に戻る。ステップS11では、時間差調整値可変設定部43が時間差調整値を次の値に更新し(S11)、該更新後の時間差調整値を時間差調整部12aに設定する(S12)。
【0082】
引き続き、測定値取得部41は、ステップS12で設定された更新後の時間差調整値に基づく変調信号のイメージ抑圧比の測定値をSA30から取得し(S13)、イメージ抑圧比判定部42は、ステップS13で取得した測定値に基づいてイメージ抑圧比が所定値以下であるか否かを判定する(S14)。ここで否定判断の場合には、ステップS11に戻って、時間差調整値を次の値に更新し(S11)、以後、ステップS11からS14までの処理を続行する。
【0083】
この間、ステップS14で肯定判断がなされた場合、格納制御部44は、ステップS12で設定された時間差調整値をこのとき出力されているキャリア信号のキャリア周波数が属する帯域に対応する時間差調整値として時間差調整テーブル21に格納する。この格納処理が完了すると、図6におけるステップS5に移行する。
【0084】
このように、本実施形態に係る信号調整システム1は、測定値取得部41がイメージ抑圧比の測定値をSA30から順次取得し、取得した測定値に基づいてイメージ抑圧比が所定値を超えているか否かをイメージ抑圧比判定部42で判定し、該イメージ抑圧比判定部42によりイメージ抑圧比が所定値を超えていることが判定された場合には、時間差調整値可変設定部43が時間差調整部12aに順次異なる値の時間差調整値を設定し、異なる値の時間差調整値に基づき時間差が順次調整制御されたI波形データとQ波形データに基づいて直交変調器16から出力される変調信号のイメージ抑圧比の測定値が所定値以下であることがイメージ抑圧比判定部42により判定された場合、格納制御部44が、時間差調整テーブル21を初期化し、時間差調整部12aに設定されている時間差調整値を局部発振器15が出力中のキャリア信号の周波数帯域に対応付けて時間差調整テーブル21に格納するようになっている。
【0085】
上記信号調整処理(図5図6参照)によって、信号発生装置10の時間差調整テーブル21には、キャリア周波数(f)から(f+n×Δf)まで周波数範囲の所定周波数幅の各帯域にそれぞれ対応付けてイメージ抑圧比を所定値以下とし得る時間差調整値が格納される。
【0086】
図3に示す時間差調整テーブル21は、上記信号調整処理においてΔfを100MHzに設定し、信号発生装置10のキャリア信号のキャリア周波数5000MHzから6000MHzの周波数範囲を、例えば100MHz刻みの周波数幅の帯域に分けたうえで、各帯域にそれぞれ対応付けて時間差調整値を格納したものである。なお、時間差調整テーブル21を生成するに際し、局部発振器15から出力可能なキャリア周波数範囲における時間差調整対象帯域、及び該時間差調整対象帯域内の各周波数帯域の帯域幅(上記Δfに相当)は任意に設定することができる。
【0087】
次に、SA30及び調整制御装置40から切り離された信号発生装置10の動作について図7及び図8を参照して説明する。
【0088】
信号発生装置10は、SA30及び調整制御装置40から切り離されたときに、時間差調整テーブル21に例えば図3に示す時間差調整値が各帯域に対応付けて格納されている(図6のS16参照)。
【0089】
この状態で、信号発生装置10は、ユーザによる操作部19での操作に応じて各種動作を実行する。例えば、信号発生装置10において、操作部19で所定の宛先への発信操作がなされると、制御部22は、当該宛先への発信動作を開始する。発信等の動作が行われると、IQ時間差調整制御部23は図7に示すIQ時間差調整処理を実行する。
【0090】
IQ時間差調整処理において、IQ時間差調整制御部23は、まず、局部発振器15が出力しているキャリア周波数を検知(捕捉)する(S21)。次に、IQ時間差調整制御部23は、ステップS21で検知したキャリア周波数に対応付けて時間差調整テーブル21に格納されている時間差調整値を読み出す(S22)。
【0091】
引き続き、IQ時間差調整制御部23は、ステップS22で読み出した時間差調整値を時間差調整部12aに設定する(S23)。時間差調整部12aは、設定された時間差調整値に基づいてI波形データとQ波形データ間の相対的な時間差を調整する。本実施形態の信号発生装置10では、時間差調整部12aは、IQ調整部12におけるQ波形データの伝送経路中に介挿された遅延回路により構成される。時間差調整部12aは、時間差調整値が設定されると、例えば、別経路を伝送されるI波形データに対して、設定された時間差調整値の時間だけQ波形データを遅らせるように制御する。
【0092】
具体例として、局部発振器15が出力しているキャリア周波数が5050MHz帯である場合、IQ時間差調整制御部23は、時間差調整テーブル21から当該帯域に対応付けられている時間差調整値として5(psec)を読み出して時間差調整部12aに設定し、Q波形データをI波形データから5(psec)遅らせるように制御する。また、局部発振器15が出力しているキャリア周波数が5150MHz、あるいは5250MHz帯である場合、IQ時間差調整制御部23は、それぞれ、時間差調整テーブル21から時間差調整値として15(psec)を読み出して時間差調整部12aに設定し、Q波形データをI波形データから15(psec)遅らせるように制御する。
【0093】
IQ時間差調整制御部23は、ステップS23のIQ時間差調整処理を行いながら、操作部19で動作終了操作が行われるなどにより動作終了となったか否かを判定する(S24)。ここで、否定判断の場合、IQ時間差調整制御部23は、ステップS22で読み出した時間差調整値の設定を維持する(S21)。これに対し、肯定判断の場合、IQ時間差調整制御部23は、当該時間差調整処理を終了する。
【0094】
このように、本実施形態に係る信号発生装置10は、波形データ発生部11とDAC13との間に配置され、波形データ発生部11から入力するI波形データとQ波形データの相対的な時間差を調整する時間差調整部12aを有し、時間差の調整によって直交変調器16から出力される変調信号のイメージ抑圧比を調整するIQ調整部12と、イメージ抑圧比を所定値以下に調整するためのI波形データとQ波形データの時間差調整値を、局部発振器15から出力可能なキャリア周波数帯域の連続する複数の周波数範囲にそれぞれ対応付けて格納する時間差調整テーブル21と、を有し、IQ時間差調整制御部23により、局部発振器15が出力するキャリア信号のキャリア周波数が属する周波数帯域に対応付けられた時間差調整値を時間差調整テーブル21から読出し、該時間差調整値に基づいて時間差調整部12aにおけるI波形データとQ波形データ間の時間差の調整制御を行うようになっている。
【0095】
ここで、時間差調整テーブル21に各周波数帯域に対応付けて格納される時間差調整値は、信号発生装置10をSA30及び調整制御装置40と通信可能状態に接続した信号調整システム1での運用時に実施される信号調整処理(図4図6参照)によって、局部発振器15が出力中のキャリア信号が上記各周波数帯域にあるときにイメージ抑圧比を所定値以下に保ち得る値となっている。
【0096】
このため、信号発生装置10は、信号調整システム1から切り離した後、発信等の動作に合わせて図7に示すIQ時間差調整制御を実行することで、キャリア信号が直交変調器16から出力可能な変調信号の周波数範囲のどの帯域にあっても当該帯域に対応付けられた時間差調整値に基づいてイメージ抑圧比を精度よく低減でき、イメージ抑圧比による品質劣化の少ない高精度な変調信号を広帯域に亘って得ることが可能となる。
【0097】
なお、本発明は上述した実施形態に限らず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形及び応用が可能である。
【0098】
例えば、IQ調整部12は、波形データ発生部11とDAC13との間に配置する構成に限らず、波形データ発生部11と直交変調器16の間の適宜な位置に配置する構成としてもよい。例えば、IQ調整部12をDAC13とLPF14の間に設けた構成、若しくは、LPF14と直交変調器16の間に設けた構成とすることができる。いずれの構成も、IQ調整部12に設けた時間差調整部12aのI波形データ及びQ波形データ間の時間差調整制御によってイメージ抑圧比の所定値以下への低減が可能となる。
【0099】
また、本発明において、IQ調整部12は、時間差調整部12aをQ波形データの伝送経路中に介挿してI波形データに対してQ波形データを遅らせる構成に限らず(図1図7参照)、時間差調整部12aをI波形データの伝送経路中に介挿し、時間差調整値が設定されると、別経路で伝送されるQ波形データに対してI波形データを設定された時間差調整値に基づき遅らせる構成としてもよい。この場合、時間差調整テーブル21は、例えばQ波形データを基準とし、Q波形データに対してI波形データを遅らせる時間(遅延時間)を時間差調整値として格納した構成としてもよい。
【0100】
さらに本発明において、時間差調整テーブル21は、イメージ抑圧比を所定値以下とし得るI波形データ及びQ波形データ間の相対的な時間差を時間差調整値として格納するとともに、IQ調整部12は、I波形データの伝送経路及びQ波形データの伝送経路の双方にそれぞれ時間差調整部12aを介挿し、I波形データとQ波形データの相対的な時間差が、時間差調整テーブル21に格納された時間差調整値に相当する時間差となるようにI波形データ及びQ波形データの双方を適宜遅延させる構成としてもよい。要するに、本発明では、時間差調整部12aは、I波形データまたはQ波形データの少なくとも一方を遅延させる遅延回路で構成されることが望ましい。
【0101】
また、本発明において、IQ調整部12は、時間差調整部12aに加え、キャリアリークを低減するための各種パラメータ、例えば、I波形データ及びQ波形データの中心レベルをそれぞれ調整するためのパラメータであるDCオフセット(Iオフセット、Qオフセット)、I波形データとQ波形データの間の直交性を補正するためのパラメータである移相量、I波形データとQ波形データの振幅を調整するためのパラメータであるゲイン(Iゲイン、Qゲイン)を調整するレベル調整部が付加された構成であってもよい。
【0102】
この構成によれば、SA30と通信可能に接続される調整制御装置40を、信号発生装置10が出力する変調信号のSA30によるキャリアリークの測定値を電圧値に変換し、この電圧値が所定値以下となるゲイン、DCオフセット、移相量の調整値を算出し、算出した調整値をIQ調整部12のレベル調整部に設定する制御機能をソフトウェア的に実現する構成とすることで、変調信号のキャリアリークについても所定値(キャリアリーク閾値)以下となるように調整することができる。
【0103】
また、この構成において、例えば、図5に示す信号調整処理に際して、時間差調整値の可変設定に基づくイメージ信号調整処理(S4参照)に続いてキャリアリークを低減するための各種パラメータの可変調整に基づくキャリアリーク調整処理を実行し、キャリアリークを所定値以下に調整可能なパラメータ調整値についても、時間差調整値と同様、上述した各帯域に対応付けて格納するようにしてもよい。
【0104】
この構成によれば、信号調整システム1から切り離された後、信号発生装置10は、キャリア信号が直交変調器16から出力可能な変調信号の周波数範囲のどの帯域に属していても当該帯域に対応付けられた時間差調整値及びパラメータ調整値に基づいてイメージ抑圧比及びキャリアリークを精度よく低減でき、イメージ抑圧比及びキャリアリークによる品質劣化の少ない高精度な変調信号を広帯域に亘って取得可能となる。
【符号の説明】
【0105】
1 信号調整システム
10 信号発生装置
11 波形データ発生部
12 IQ調整部
12a 時間差調整部
13 DAC(D/A変換器)
15 局部発振器
16 直交変調器
20 記憶部
21 時間差調整テーブル
22 制御部
23 IQ時間差調整制御部(時間差調整制御部)
30 スペクトラムアナライザ(イメージ抑圧比測定装置)
40 調整制御装置
41 測定値取得部
42 イメージ抑圧比判定部
43 時間差調整値可変設定部
44 格納制御部
I I波形データ
Q Q波形データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9