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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-157898(P2018-157898A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】レトラクター固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20180914BHJP
   A61B 90/50 20160101ALI20180914BHJP
【FI】
   A61B17/02
   A61B90/50
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-55832(P2017-55832)
(22)【出願日】2017年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】517100831
【氏名又は名称】株式会社プラスオーソ
(71)【出願人】
【識別番号】517100842
【氏名又は名称】トゥルーシード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宰司
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA08
4C160AA12
4C160MM22
(57)【要約】
【課題】術者のワーキングスペースをより広くすることができ、かつ、レトラクターから生体組織が外れることを防止して手術をスムーズに行うことができるレトラクター固定装置を提供する。
【解決手段】寝台に載置された患者の生体組織を保持するレトラクター固定装置であって、前記患者の体側に配置され、生体組織を保持した前記レトラクターを下方に引張して前記寝台に固定する固定ユニットを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台に載置された患者の生体組織を保持するレトラクター固定装置であって、
前記患者の体側に配置され、生体組織を保持した前記レトラクターを下方に引張して前記寝台に固定する固定ユニットを備えることを特徴とするレトラクター固定装置。
【請求項2】
前記固定ユニットは、一端にレトラクターを保持するレトラクター保持部が設けられたロッド部と、前記ロッド部の長軸方向に移動可能に挿通されて、前記ロッド部を前記寝台に固定するハンドル部とを備えることを特徴とする請求項1記載のレトラクター固定装置。
【請求項3】
前記レトラクター保持部は、前記レトラクターを前記ロッド部に対して摺動可能に支持するものであり、
前記ハンドル部は、前記寝台に対して前記ロッド部を回転可能に固定することを特徴とする請求項2記載のレトラクター固定装置。
【請求項4】
前記ロッド部の他端は、終端に向かって径が大きくなるように構成された略円錐形状の留め具が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載のレトラクター固定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の生体組織を保持するレトラクター固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術に用いられるレトラクター(開創器)は、切開した部位に差し入れて切開創を広げたり、臓器や筋肉等を持ち上げたりすることによって手術野を確保するためのものであり、このレトラクターを保持する装置として例えば特許文献1の装置がある。
【0003】
特許文献1の装置は、寝台に横たわる患者の上方まで延伸する可動アームと、可動アームの先端に取り付けられるレトラクターと、可動アームの基端が連結される寝台に設けられた支持ポストとを備え、この支持ポストに設けられたジャッキ機構によって、レトラクターが保持する生体組織、例えば胸骨を鉛直方向に持ち上げる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5756161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、可動アームが寝台に横たわる患者の上方まで伸びているので、この患者の上方に伸び出た部分が術者のワーキングスペースに入り込み、ワーキングスペースを制限するという問題がある。また、特許文献1では臓器や筋肉等の生体組織を引っ掛けたレトラクターを可動アームで吊り上げているので、術中で使用する外科用ドリル等の器具の振動や患者の呼吸や寝返り等の少しの振動でレトラクターから生体組織が外れてしまい手術が中断してしまうという問題も生じる。さらに、可動アームでレトラクターを吊り上げる構成では、装置が大型化しやすく設置作業や滅菌作業などを考慮すると、術者にとって使い勝手が悪いものとなる。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであって、術者のワーキングスペースを制限することなく、かつ、レトラクターから生体組織が外れにくくすることによって、手術をスムーズに行うことができるレトラクター固定装置を提供することをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレトラクター固定装置は、寝台に載置された患者の生体組織を保持するものであって、前記患者の体側に配置され、生体組織を保持した前記レトラクターを下方に引張して前記寝台に固定する固定ユニットを備えることを特徴とする。
【0008】
上述の構成によって、レトラクターを下方に引張して寝台に固定する固定ユニットは患者の体側に配置されるので、固定ユニットが術者のワーキングスペースに入り込むことを防ぎ、術者のワーキングスペースを制限することを防止できる。また、下方に引張して固定されるレトラクターは患者の体に沿って配置されるので、手術時に用いられる器具の振動や患者の移動によって外れにくくなり、レトラクターが外れることによって手術が中断されることを防止できる。さらに、固定ユニットがレトラクターを下方に引張するというシンプルな構成を有するので、従来のものと比べて部品点数を減らして、装置が大型化することを防止でき、設置作業や滅菌作業を簡便に実施することができる。
【0009】
本発明のレトラクター固定装置の具体的な一態様としては、前記固定ユニットは、一端にレトラクターを保持するレトラクター保持部が設けられたロッド部と、前記ロッド部の長軸方向に移動可能に挿通されて、前記ロッド部を前記寝台に固定するハンドル部とを備えるものを挙げることができる。
【0010】
上述の構成によって、ロッド部を寝台に固定するハンドル部が、ロッド部に挿通されるとともに長軸方向に移動可能に構成されるので、ハンドル部によってロッド部の長さを変えてレトラクターと寝台との距離を適宜調整することができる。そのため、患者の体形や手術内容、レトラクターの仕様に合わせて、レトラクターを最適な位置に位置合わせして固定することができ、術者の使い勝手を向上させることができる。
【0011】
本発明のレトラクター固定装置の具体的な一態様としては、前記レトラクター保持部は、前記レトラクターを前記ロッド部に対して摺動可能に支持するものであり、前記ハンドル部は、前記寝台に対して前記ロッド部を回転可能に固定するものを挙げることができる。
【0012】
上述の構成によって、レトラクター保持部はロッド部に対してレトラクターを摺動可能に支持するので、手術時に用いられる器具の振動や患者の移動によってレトラクターがずれたとしても、このずれに対応してレトラクターがロッド部に対して摺動するので、レトラクターがレトラクター保持部から外れてしまうことを確実に防止できる。さらに、ハンドル部は寝台に対してロッド部を回転可能に固定するので、レトラクターのずれに追従してロッド部がずれても、ロッド部が寝台から外れてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
本発明のレトラクター固定装置の具体的な一態様としては、前記ロッド部の他端は、終端に向かって径が大きくなるように構成された略円錐形状の留め具が設けられているものを挙げることができる。
【0014】
手術時には、清潔域と不潔域とを区別するため、手術を行う領域以外の部分を覆う覆布が用いられている。ロッド部の他端に略円錐形状の留め具を設けることによって、ロッド部の他端がこの覆布を突き破ってしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、術者のワーキングスペースをより広くすることができ、かつ、レトラクターから生体組織が外れることを防止して手術をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態におけるレトラクター固定装置を示す概略図。
図2】第1実施形態におけるレトラクター固定装置を示す概略図。
図3図1に示したA部分の拡大図。
図4】第1実施形態のレトラクター固定装置の斜視図。
図5】第1実施形態のロッド部の先端を示す斜視図。
図6】第2実施形態におけるレトラクター固定装置を示す斜視図。
図7図6に示したB部分の拡大図。
図8図7のCC部分断面図。
図9図7のCC部分断面図。
図10】第2実施形態における寝台側固定部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のレトラクター固定装置について、以下それぞれ実施形態毎に図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態のレトラクター固定装置1は、術中に視野の妨げとなる生体組織を持ち上げるレトラクター100を固定するための装置であって、図1及び図2に示すように、患者の体側に配置され、生体組織を保持したレトラクター100を下方に引張して寝台101に固定する固定ユニット2を備える
【0019】
レトラクター100は、術者の視野の妨げとなる生体組織(臓器や筋肉等)をテコの原理で持ち上げて切開創の術野を広げるために使用されるものであって、図5に示すように扁平な板状体で構成されるとともに、体外に露出する一端部には複数の孔部が設けられている。なお、レトラクター100は、術式や生体組織の種類によってその形状や素材が適宜変更される。
【0020】
患者を載置する寝台101には、図1及び図2に示すように、側面にレール101bが設けられている。また、このレール101bには挿通して固定されたクランプ101aが設けられ、クランプ101aには、鉛直方向に貫通する貫通孔が設けられている。なお、このクランプ101aは術式やベッドの仕様によって適宜変更される。
【0021】
固定ユニット2は、図2図4に示すように患者の体側に配置され、レトラクター100を鉛直下方に引張するものであって、レトラクター100を保持するロッド部3と、ロッド部3の長軸方向に移動可能に挿通されて、ロッド部3を寝台101に固定するハンドル部4とを備える。
【0022】
ロッド部3は、図1図4に示すように、長尺な棒体形状をなすものであり、先端にレトラクター100を保持するレトラクター保持部3aが設けられるとともに、他端に終端に向かって径が大きくなるように構成された略円錐形状の留め具3bが設けられている。この留め具3bは面取りがなされている。
【0023】
レトラクター保持部3aは、鉤状に折れ曲がった形状をなし、図5に示すようにレトラクター100の生体を保持しない他端に設けられた孔部に差し込んで引っ掛けることによってレトラクター100を保持するものである。このとき、レトラクター100はレトラクター保持部3aと1点で接触するのでロッド部3に対して摺動可能に保持される。
【0024】
ハンドル部4は、図3及び図4に示すように、ロッド部3に挿通され、長軸方向に移動可能なハンドル部本体5と、ハンドル部本体5を寝台101に固定するためのハンドル側固定部7と、ハンドル部本体5とハンドル側固定部7とを接続するリング6と、寝台101に設けられてハンドル側固定部7を寝台101に固定する寝台側固定部8とを備える。
【0025】
ハンドル部本体5は、略くの字形状に屈曲した両端部にロッド部3が挿通する貫通孔がそれぞれ設けられた屈曲板で構成されている。この屈曲板は、その両端部に術者が指をかけるための持ち手5aがそれぞれ設けられ、鉛直下方に配置する一端には、リング6が接続されるための貫通孔5bが設けられ、このリング6を介してハンドル側固定部7に接続される。
【0026】
この屈曲板は弾性を有し、両端部が互いに離間する方向に力が作用している状態で、ロッド部3が貫通孔にそれぞれ差し込まれている。そのため、この屈曲板の両端部を互いに近づけるように力を加えると、ロッド部3が貫通孔にひっかかることなく長軸方向に移動可能となる。一方、屈曲板の両端部に加えた力を離すと、屈曲板の両端部の互いに離間する方向に作用する力によって、貫通孔の側端部にロッド部3がひっかかってロッド部3の長尺方向の移動を制限してロッド部3を固定する。
【0027】
また、屈曲板の両端部にそれぞれ設けられた貫通孔は、患者と近接する鉛直上方に配置する一端部に設けられたものの方が、患者と離間する他端部に設けられたものよりも大きくなるように構成されている。
【0028】
ハンドル側固定部7は、図3及び図4に示すように、円環体7aの一部にU字形状をなす環状体7bを連結させたものである。また、円環体7aには斜め方向に延伸し先端が円形状をなす板状体7cが設けられており、この板状体7cの先端には孔が設けられて、この孔にリング6が連結される。
【0029】
寝台側固定部8は、図3及び図4に示すように、円柱形状をなし一端が水平方向に折れ曲がった胴体部8aと、該胴体部8aの先端を覆うように配置され、胴体部8aの径よりも大きな径を有する円柱形状の留め具8bとを備える。この胴体部8aは、鉛直方向に延伸する部分がクランプ101aの貫通孔に挿入されて、クランプ101aに連結される。また、胴体部8aは、ハンドル側固定部7の環状体7bと同じ径を備える。
【0030】
なお、今回図示していないが実際の手術現場においては清潔域と不潔域とを区分けするための覆布が患者にかかっている。上述したロッド部3、ハンドル部本体5、リング6、ハンドル側固定部7はすべて清潔域に配置されたものであるが、寝台側固定部8は不潔域に配置されていてもよいし、清潔域に配置されたものであってもよい。なお、不潔域に配置されている場合には、ハンドル側固定部7と寝台側固定部8との間には覆布が介在することとなる。寝台側固定部8を不潔域に配置すれば、手術毎に滅菌する必要がなくなり、設置作業や滅菌作業の手間を省くことができる。
【0031】
上述のように構成したハンドル部4は、ハンドル部本体5がリング6を介してハンドル側固定部7に連結された状態で、円環体7aを留め具8bに通した後、環状体7bを胴体部8aに嵌合させることにより寝台101に固定される。このとき、環状体7bは胴体部8aに対して回転可能となるので、ハンドル部4は、寝台101に対してロッド部3を回転可能に固定することになる。
【0032】
上述のように構成した本実施形態のレトラクター固定装置1の動作について説明する。
【0033】
術者は、ハンドル部4によってロッド部3が寝台101に固定された状態で、レトラクター100で目的の生体組織を持ち上げて、患者の体側側にレトラクター100を寄せる。次に、レトラクター保持部3aをレトラクター100の生体を保持しない端部に設けられた孔部に差し込んで引っ掛ける。最後に、ロッド部3を鉛直下方に押し込むと、レトラクター100は下方に引張されて、患者の体側に配置された固定ユニット2によって固定される。このとき、レトラクター100は患者の体に沿って配置される。なお、レトラクター100の位置を調整する場合には、屈曲板の両端部を近づけるように力を加えてロッド部3を長軸方向に移動させればよい。
【0034】
上述のように構成した第1実施形態のレトラクター固定装置1は、以下のような格別の効果を奏する。
【0035】
つまり、レトラクター100を下方に引張して寝台に固定する固定ユニット2は患者の体側に配置されるので、固定ユニット2が術者のワーキングスペースに入り込むことを防ぎ、術者のワーキングスペースを制限することを防止できる。また、下方に引張して固定されるレトラクター100は患者の体に沿って配置されるので、手術時に用いられる器具の振動や患者の移動によってレトラクター100が外れにくい。そのため、レトラクター100が外れることによって手術が中断されることを防止できる。さらに、レトラクター100を寝台101に固定するのに固定ユニット2のみで足りるので、従来のものと比べて部品点数を減らして、装置が大型化することを防止できる。また、この大型化を防止することができるので、設置作業や滅菌作業を簡便に実施することができる。
【0036】
また、ロッド部3を寝台101に固定するハンドル部4が、ロッド部3に挿通されるとともに長軸方向に移動可能に構成されるので、ハンドル部4によってロッド部3の長さを変えてレトラクター100と寝台101との距離を調整することができる。そのため、患者の体形や手術内容によって適宜変更されるレトラクター100の仕様に合わせて、レトラクター100を最適な位置に位置合わせして固定することができ、術者の使い勝手を向上させることができる。
【0037】
さらに、手術時に用いられる器具の振動や患者の移動によってレトラクター100がずれたとしても、レトラクター100を摺動可能に支持するレトラクター保持部3aがこのずれに対応して摺動するので、レトラクター100がレトラクター保持部3aから外れてしまうことを確実に防止できる。さらに、ハンドル部4は寝台101に対してロッド部3を回転可能に固定するので、レトラクター100のずれに追従してロッド部3がずれても、ロッド部3が寝台101から外れてしまうことを防ぐことができる。
【0038】
手術時には、清潔域と不潔域とを区別するため、手術を行う領域以外の部分を覆う覆布が用いられているが、ロッド部3の他端に略円錐形状の留め具3bを設けることによって、ロッド部3の他端がこの覆布を突き破ってしまうことを防止できる。
【0039】
加えて、術者は、ロッド部3を鉛直下方に押し込むだけでレトラクターを固定することができ、またロッド部3の位置合わせが必要な場合には、屈曲板の屈曲する両端部を互いに近づけるように力を加えるだけでよいので、レトラクター100の位置合わせを簡単に行うことができ、さらに術者の使い勝手を向上させることができる。
【0040】
また、屈曲板の両端部にそれぞれ設けられた貫通孔は、患者と近接する一端部に設けられたものの方が、患者と離間する他端部に設けられたものよりも大きくなるように構成されている。そのため、患者と離間する屈曲板の他端部に設けられた貫通孔を支点として、ロッド部3をしならせることができ、レトラクター100のずれに追従してロッド部3を移動させてレトラクター100の自由度をさらに向上させることができるとともに、ロッド部3の長尺方向の移動をよりスムーズに行うことができる。
【0041】
加えて、寝台側固定部8を不潔域に配置することができるので、滅菌する部品点数を減らすことができる。また、第1実施形態のレトラクター固定装置1は、上述したように簡単な装置構成を有することから、滅菌時に煩雑な作業となることを防いで作業効率を向上させることができる。
【0042】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態におけるレトラクター固定装置30について図面を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0043】
第2実施形態のレトラクター固定装置30は、固定ユニット31のハンドル部32の構成が第1実施形態と異なっている。
【0044】
第2実施形態におけるハンドル部32は、図6及び図7に示すように、ロッド部3を寝台101に固定するものであり、ロッド部3の鉛直下方の移動は許容するが、鉛直上方への移動を阻止するワンウェイ方式のものである。
【0045】
ハンドル部32は、図6に示すように、ハンドル部本体32aと、ハンドル部本体32aを寝台101に固定するハンドル側固定部32bと、寝台101側に設けられてハンドル部本体32aをハンドル側固定部32bを介して寝台101に固定する寝台側固定部33とを備える。
【0046】
ハンドル部本体32aは、図7に示すように、ロッド部3に挿通された本体部34と、本体部34の一部を覆うように配置されるブレーキ部35とを備える。
【0047】
この本体部34は、図7図8及び図9に示すように、筐体形状をなしロッド部3のレトラクター保持部3a側から留め具3b側に向かって円柱形状の貫通孔34aが設けられている。この貫通孔34aにはロッド部3が挿通される。また、レトラクター保持部3a側に配置する上面と留め具3b側に配置する下面とを接続する一側面は下面に向かって傾斜しており、この傾斜面と対向する面にブレーキ部35が設けられている。
【0048】
ロッド部3と平行に配置する面には、図7図8及び図9に示すように、ハンドル側固定部7に連結するための連結孔36が設けられるとともに、ロッド部3が挿通される貫通孔34aに繋がる孔37が設けられている。この孔37は開口径が異なる2つの円を上下に組み合わせた形状をなしており、開口径が大きいものが下方に配置され、開口径の小さいものが貫通孔34aに繋がっている。
【0049】
ブレーキ部35は、図7図8及び図9に示すように、傾斜面と対向する面を覆うとともにロッド部3と平行に配置する両面の一部を覆いながら延伸するように折り曲げられた略コの字形状の屈曲片で構成されている。本体部34の傾斜面と対向する面を覆う位置にはバネ35aが設けられている。また、ロッド部3と平行に配置する面を覆う両端部には、それぞれ本体部34の孔37と合わさる位置に調整孔35bが形成されており、この調整孔35bは横長の形状を備える。
【0050】
調整孔35b及び孔37を貫通するようにピン38が配置されており、このピン38の両端部分には、調整孔35bの開口よりも大きい留めが設けられている。
【0051】
このハンドル部本体32aは。ブレーキ部35に何も力を作用させていない状態においては、図8に示すようにピン38が本体部34に設けられた開口径の小さい上方の孔37に配置しており、この状態において、ピン38は孔37と連通する貫通孔34aに突出してロッド部3と接触し、ロッド部3を固定している。
【0052】
次に、術者がロッド部3を鉛直下方に押し込むと、図9に示すようにブレーキ部35が本体部34により近接するようにバネ35aが縮まり、ピン38が本体部34のロッド部3と平行に配置する面に設けられた開口径の大きい下方の孔37に移動し、ロッド部3が鉛直下方に移動する。
【0053】
最後に術者がロッド部3の押圧をやめると、バネ35aの反発力によって本体部34とブレーキ部35とが離間するように配置され、ピン38が本体部34に設けられた開口径の小さい上方の孔37に再度移動する。この位置においてピン38は孔37と連通する貫通孔34aに突出してロッド部3と接触し、ロッド部3を固定する。
【0054】
このとき、ロッド部3を鉛直上方に移動させようとしても、ロッド部3と接触したピン38がかみ込んでロッド部3の移動を阻むため、ロッド部3は鉛直上方に移動することができない。そのため、本実施形態におけるハンドル部本体32aはワンウェイ方式のものとなる。
【0055】
ハンドル側固定部32bは、図6に示すように本実施形態ではタオル鉗子で構成されたものであって、挟持部分の一方をハンドル部本体32aに設けられた連結孔36に挿通するとともに、挟持部分で寝台側固定部33を挟持することによって、ハンドル部本体32aと寝台側固定部33とを連結するものである。
【0056】
寝台側固定部33は、図10に示すように、レトラクター100の固定位置を微調整するものであって、寝台101に設けられたクランプ101aに鉛直方向に挿入される複数の棒体40と、この複数の棒体40の先端に垂直方向に保持される調整板43とを備える。なお、この寝台側固定部33は、第1実施形態と同様に清潔域に配置されてもよいし、不潔域に配置されたものであってもよい。
【0057】
複数の棒体40は、断面が略円形状をなす第1棒体40aと、断面が平板形状をなす第2棒体40bとで構成されている。この第1棒体40a及び第2棒体40bは、その少なくとも一方が、寝台101に設けられたクランプ101aに挿入して固定される。
【0058】
第1棒体40aの調整板43が取り付けられる先端部には、調整板43と嵌合する第1嵌合部41aと、第1嵌合部41aを可動させて調整板43を水平方向、鉛直方向及び軸方向に回転移動させる第1可動部42aとが設けられている。また、第2棒体40bの調整板43が取り付けられる先端部分には、調整板43と嵌合する第2嵌合部41bと、第2嵌合部41bを可動させて調整板43を水平方向、鉛直方向及び軸方向に回転移動させる第2可動部42bとが設けられている。
【0059】
第1嵌合部41a及び第2嵌合部41bは、第1棒体40a又は第2棒体40bの先端部の側面の一部に取り付けられるものであって、水平方向に長尺な平板形状をなすものである。平板の両面には、水平方向に配置する両端部に、平板の中心を軸として放射状に凹凸が形成されている。
【0060】
第1可動部42a及び第2可動部42bは、第1嵌合部41a又は第2嵌合部41bをそれぞれの平板の中心を軸として回転可能に保持するとともに、水平方向に移動可能に保持するものである。具体的には、第1可動部42a及び第2可動部42bは、第1嵌合部41a又は第2嵌合部41bに形成された凹凸と嵌合する凹凸が形成された部材を備え、これら凹凸がギアのように噛み合うことによって、第1嵌合部41a又は第2嵌合部41bを可動させるものである。
【0061】
また、第1可動部42a及び第2可動部42bは、第1棒体40a又は第2棒体40bの長軸方向に移動可能に固定されるので、第1嵌合部41a及び第2嵌合部41bもそれぞれ、第1可動部42a及び第2可動部42bの鉛直方向の移動に対応して移動する。
【0062】
調整板43は、水平方向に長尺な平板形状をなし、その両面に貫通する複数の貫通孔43aが水平方向に等間隔に設けられている。また、この複数の貫通孔43aには円柱形状をなす複数の調整棒43bがそれぞれ挿入されており、調整棒43bの先端は胴体部分の径よりも大きな径を備える留め具43cが設けられている。
【0063】
この調整板43の第1棒体40a及び第2棒体40b側に配置する一面には、図示されていないが第1嵌合部41a及び第2嵌合部41bに設けられた凹凸に対応する凹凸が設けられている。この調整板43に設けられた凹凸と第1嵌合部41a及び第2嵌合部41bに設けられた凹凸とが嵌合すると、第1嵌合部41a又は第2嵌合部41bに連動して調整板43が第1嵌合部41a又は第2嵌合部41bの平板の中心を軸として回転移動するとともに、鉛直・水平方向に移動する。
【0064】
上述のように構成した第2実施形態のレトラクター固定装置30は、固定ユニット31がワンウェイ方式のものであるため、手術時の振動等によってロッド部3が鉛直上方に移動してレトラクター100が生体から外れてしまうことを防ぎ、より確実にレトラクター100を保持することが可能となる。また、ロッド部3を押し込むだけで容易にレトラクター100の固定を行うことができるとともに鉛直上方への移動がないワンウェイ方式のものであるので、術者が誤ってロッド部3を移動させることを防ぎ、使い勝手をより向上させることができる。
【0065】
また、寝台側固定部33が、調整板43を、第1嵌合部41a又は第2嵌合部41bの平板の中心を軸とした回転移動させるとともに、水平・鉛直方向に移動させるので、調整板43の位置を微調整してレトラクター100の位置をより精度よく位置決めすることが可能となる。そのため、レトラクター100を術者の所望する位置で固定し、レトラクター100が術中に外れることを防止して円滑に手術を行うことができる。
【0066】
寝台101に設けられたクランプ101aの形状は病院によって適宜異なるが、本実施形態では断面形状の異なる複数の棒体40を備えることにより、クランプ101aの形状に限定されずに使用することができる。
【0067】
本発明は、上述の構成に限られたものではない。
【0068】
例えば、ハンドル側固定部や寝台側固定部は上述の構成に限られず、ハンドル側固定部を上記以外の鉗子で構成したり、結束バンド、ゴムブッシュなどで構成したりしてもよい。また、リングとしてゴム素材のものやシリコン素材のものを用いることもできる。加えて、その形状も適宜変更することができ、ハンドル側固定部と寝台側固定部とを一体に構成してもよい。
【0069】
また、第2実施形態におけるレトラクター固定装置において、棒体は、第1棒体及び第2棒体で構成されていたが、3以上の棒体で構成されていてもよく、単体で構成されていてもよい。調整棒や貫通孔の数等についても適宜変更することができる。
【0070】
さらに、ハンドル本体の構成も上述のものに限られたものではなく、例えば第2実施形態において本体部はそのままでブレーキ部だけをレバーのように構成し、このレバーを長尺方向にストロークさせることによって、ロッド部が自由に動けるように構成してもよい。このように構成すれば術者がレトラクター固定装置の配置されたベッドの反対側にいる場合でもレバー操作を行うことでロッド部の位置合わせを行うことができるので、術者にとってさらに使い勝手の良いものとなる。
【0071】
本発明は、その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1・・・レトラクター固定装置
2・・・固定ユニット
3・・・ロッド部
3a・・・レトラクター保持部
4・・・ハンドル部
図1
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