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特開2018-158340石炭灰造粒物及び石炭灰造粒物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-158340(P2018-158340A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】石炭灰造粒物及び石炭灰造粒物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20180914BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
   B09B3/00 301M
   B09B3/00ZAB
   C04B18/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-57030(P2018-57030)
(22)【出願日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-58090(P2017-58090)
(32)【優先日】2017年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】及川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】中本 健二
(72)【発明者】
【氏名】井上 智子
(72)【発明者】
【氏名】樋野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勝
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AA37
4D004AB03
4D004AB08
4D004BA02
4D004CA14
4D004CA15
4D004CB50
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC13
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】多硫化物を用いずに重金属の溶出を抑制できる石炭灰造粒物及び石炭灰造粒物の製造方法を提供する。
【解決手段】石炭灰造粒物は、石炭灰とセメントと消石灰との混合物からなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰とセメントと消石灰との混合物からなることを特徴とする石炭灰造粒物。
【請求項2】
前記混合物は、前記セメントの割合が前記石炭灰の総質量に対して10質量%以上15質量%以下であり、且つ、前記消石灰の割合が前記石炭灰の総質量に対して3質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の石炭灰造粒物。
【請求項3】
石炭灰とセメントと消石灰とからなる石炭灰混合物を生成する石炭灰混合ステップと、
前記石炭灰混合物を混合しながら反応水を添加して一次造粒物を生成する造粒ステップと、
前記一次造粒物に含まれる前記セメントと前記反応水とを水和反応させて石炭灰造粒物を生成する反応ステップと、を含むことを特徴とする石炭灰造粒物の製造方法。
【請求項4】
前記石炭灰混合ステップで混合される前記セメントは、前記石炭灰の総質量に対する割合が10質量%以上15質量%以下であり、
前記石炭灰混合ステップで混合される前記消石灰は、前記石炭灰の総質量に対する割合が3質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の石炭灰造粒物の製造方法。
【請求項5】
前記反応ステップの開始から終了までの期間を養生期間とし、
前記反応ステップは、前記養生期間において前記一次造粒物に追加反応水を少なくとも1回散水することを特徴とする請求項3又は4に記載の石炭灰造粒物の製造方法。
【請求項6】
前記反応ステップの開始から終了までの期間を養生期間とし、
前記反応ステップは、前記一次造粒物に追加反応水を10日に1回以上の頻度で散水し、
前記養生期間は、28日よりも長い期間であることを特徴とする請求項3又は4に記載の石炭灰造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰造粒物及び石炭灰造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所では、大量の石炭灰が排出される。石炭灰は、例えば、石炭灰造粒物に加工される。石炭灰造粒物は、石炭灰に添加物等を加えて粒形状に加工したものである。石炭灰造粒物は、例えば、埋め立て材等に用いられている。
【0003】
ここで、石炭灰は、一般的に重金属を含んでいる。したがって、石炭灰造粒物は、水中環境で用いる場合に、重金属の溶出が懸念される。重金属を固定化する方法として、石炭灰造粒物に多硫化物を添加する方法が知られている。例えば、特許文献1には、多硫化カルシウムが添加された石炭灰造粒砂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−119341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、多硫化物を石炭灰造粒物に添加した場合には、硫化物イオンの溶出が懸念される。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、多硫化物を用いずに重金属の溶出を抑制できる石炭灰造粒物及び石炭灰造粒物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る石炭灰造粒物は、石炭灰とセメントと消石灰との混合物からなる。
【0008】
これによれば、石炭灰造粒物は、石炭灰造粒物に含まれる重金属の溶出を抑制できる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記混合物は、前記セメントの割合が前記石炭灰の総質量に対して10質量%以上15質量%以下であり、且つ、前記消石灰の割合が前記石炭灰の総質量に対して3質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0010】
これによれば、石炭灰造粒物は、石炭灰造粒物に含まれる重金属の溶出をより抑制できる。
【0011】
本発明の一態様に係る石炭灰造粒物の製造方法は、石炭灰とセメントと消石灰とからなる石炭灰混合物を生成する石炭灰混合ステップと、前記石炭灰混合物を混合しながら反応水を添加して一次造粒物を生成する造粒ステップと、前記一次造粒物に含まれる前記セメントと前記反応水とを水和反応させて石炭灰造粒物を生成する反応ステップと、を含む。
【0012】
これによれば、重金属の溶出を抑制可能な石炭灰造粒物を製造できる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記石炭灰混合ステップで混合される前記セメントは、前記石炭灰の総質量に対する割合が10質量%以上15質量%以下であり、前記石炭灰混合ステップで混合される前記消石灰は、前記石炭灰の総質量に対する割合が3質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0014】
これによれば、重金属の溶出をより抑制可能な石炭灰造粒物を製造できる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記反応ステップの開始から終了までの期間を養生期間とし、前記反応ステップは、前記養生期間において前記一次造粒物に追加反応水を少なくとも1回散水することが好ましい。
【0016】
これによれば、石炭灰造粒物の水和反応を促進することができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記反応ステップの開始から終了までの期間を養生期間とし、前記反応ステップは、前記一次造粒物に追加反応水を10日に1回以上の頻度で散水し、前記養生期間は、28日よりも長い期間であることが好ましい。
【0018】
これによれば、石炭灰造粒物の水和反応を促進することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多硫化物を用いずに重金属の溶出を抑制できる石炭灰造粒物及び石炭灰造粒物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る石炭灰造粒物を製造するための石炭灰造粒システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態の造粒装置の模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る石炭灰造粒物の製造方法を説明するフローチャートである。
図4図4は、本実施形態に係る石炭灰造粒物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
(石炭灰造粒システム)
図1は、本実施形態に係る石炭灰造粒物を製造するための石炭灰造粒システムの構成を模式的に示すブロック図である。図2は、本実施形態の造粒装置の模式図である。図1及び図2を参照して、石炭灰造粒物Aを製造するための石炭灰造粒システム10について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る石炭灰造粒システム10は、石炭灰混合装置20、造粒装置30、及び養生室40を有する。
【0023】
石炭灰混合装置20は、石炭灰とセメントと消石灰とを混合して、紛体状の石炭灰混合物A1を生成する装置である。石炭灰混合装置20は、例えば、紛体を空練するミキサーである。石炭灰は、例えば、フライアッシュである。フライアッシュは、石炭火力発電所のボイラ排ガス中を浮遊する灰である。フライアッシュは、例えば、電気集塵器で集められる。なお、石炭灰は、例えば、クリンカアッシュなどでもよい。セメントは、例えば、高炉セメントである。なお、セメントの種類は特に限定されない。
【0024】
石炭灰混合装置20には、石炭灰とセメントと消石灰とが所定の割合で投入される。石炭灰の総質量に対するセメントの割合は、10質量%以上15質量%以下である。また、石炭灰の総質量に対する消石灰の割合は、3質量%以上5質量%以下である。石炭灰混合装置20は、投入された石炭灰とセメントと消石灰とを空練して混合する。
【0025】
次に、石炭灰混合装置20には、石炭灰とセメントと消石灰とを空練した状態で水W1が添加される。水W1は、石炭灰とセメントと消石灰とを湿らせることにより、石炭灰とセメントと消石灰とを付着させる。これにより、後述する一次造粒物A2の造粒を容易にすることができる。以下の説明においては、石炭灰とセメントと消石灰とに水W1を添加して混合された粉体を石炭灰混合物A1と称する。水W1の添加量は、例えば、石炭灰混合物A1の総質量に対して、10質量%以上30質量%以下である。なお、水W1の添加量は、これに限定されない。水W1の添加量は、石炭灰混合物A1を湿らせる程度の量であればよい。石炭灰混合物A1を湿らせる程度の量とは、石炭灰とセメントとが完全に水和する量よりも少ない量である。したがって、石炭灰混合物A1は、水和により固化した水和物となっているものではなく、石炭灰とセメントと消石灰とが混合された状態で存在する紛体状になっている。
【0026】
図2に示すように、造粒装置30は、軸部31と、容器部32と、を備える。軸部31は、動力によって回転する軸である。軸部31は、例えば、電動機のシャフトと一体に回転する。容器部32は、略円筒形状の容器である。容器部32は、円筒の内周が軸部31の周囲を囲むように配置されている。容器部32は、軸部31に固定されている。したがって、容器部32は、軸部31と一体に回転する。
【0027】
容器部32には、石炭灰混合物A1が投入される。造粒装置30は、軸部31を回転させて、容器部32に投入された石炭灰混合物A1を転動させる。造粒装置30は、転動中の石炭灰混合物A1に反応水W2を添加する。水W1及び反応水W2は、石炭灰混合物A1を集合させる。すなわち、水W1及び反応水W2は、石炭灰混合物A1を粒形状に造粒するためのバインダとして用いられる。反応水W2は、石炭灰混合物A1中のセメントを水和反応させるための水でもある。反応水W2の添加量は、石炭灰混合物A1の10質量%以上30質量%以下である。造粒装置30は、反応水W2を添加した石炭灰混合物A1を転動して整粒する。これにより、造粒装置30は、複数の一次造粒物A2を生成する。一次造粒物A2は、粒径が5mm以上50mm以下の粒体である。一次造粒物A2は、紛体であるセメントと石炭灰と消石灰とが集合した塊(造粒体)である。つまり、一次造粒物A2は、水和反応が開始する前、又は、水和反応中の状態である。したがって、一次造粒物A2は、ある程度の粘性を有する粘性体である。
【0028】
養生室40は、一次造粒物A2を養生する部屋である。一次造粒物A2は、養生室40に所定の期間養生される。所定の期間とは、例えば、28日である。養生室40に載置された一次造粒物A2は、反応水W2により水和反応が進行して固化する。また、養生室40で養生された一次造粒物A2には、10日毎に追加反応水W3が散水される。追加反応水W3は、一次造粒物A2中のセメントとの水和反応を促進する。これにより、一次造粒物A2の固化がさらに進む。
【0029】
ここで、石炭灰は、主成分がシリカ及びアルミナである。また、セメントは、水和反応において水酸化カルシウムを生成する。これによれば、一次造粒物A2には、ポゾラン反応が生じる。ポゾラン反応とは、シリカ及びアルミナと水酸化カルシウムとの反応である。一次造粒物A2には、ポゾラン反応の過程で微細な空隙が形成される。このような反応により、一次造粒物A2は、比表面積の大きい多孔質材料である石炭灰造粒物Aとなる。
【0030】
(石炭灰造粒物の製造方法)
図3は、本実施形態に係る石炭灰造粒物の製造方法を説明するフローチャートである。図3を参照して、石炭灰造粒システム10を用いた石炭灰造粒物Aの製造方法について詳細に説明する。図3に示すように、石炭灰造粒システム10は、石炭灰混合装置20により、石炭灰とセメントと消石灰とを混合する(ステップS10)。ここでの空練の時間は、例えば、30秒である。
【0031】
次に、石炭灰造粒システム10は、石炭灰混合装置20により、石炭灰とセメントと消石灰とに水W1を添加して混合し、石炭灰混合物A1を生成する(ステップS12)。ここでの空練の時間は、例えば、1分である。
【0032】
次に、石炭灰造粒システム10は、造粒装置30により、石炭灰混合物A1と反応水W2を混練させて、一次造粒物A2を生成する(ステップS14)。
【0033】
次に、石炭灰造粒システム10は、一次造粒物A2を養生室40内に載置する(ステップS16)。これにより、養生室40に載置された一次造粒物A2は、自然乾燥される。養生室40に載置された一次造粒物A2は、水和反応が進行する。
【0034】
次に、石炭灰造粒システム10は、一次造粒物A2の載置開始(乾燥開始)から10日経過したか否かを判断する(ステップS18)。載置開始から10日経過していないと判断した場合(ステップS18、No)、ステップS16へと戻る。乾燥開始から10日経過したと判断した場合(ステップS18、Yes)、一次造粒物A2に追加反応水W3を散水する(ステップS20)。これにより、一次造粒物A2は、追加反応水W3と一次造粒物A2中のセメントとの水和反応が促進される。なお、追加反応水W3の散水方法は、特に限定されない。追加反応水W3の散水は、例えば、作業員が手作業で行ってもよい。また、追加反応水W3の散水は、例えば、所定の周期で散水する散水装置によって行ってもよい。散水装置とは、例えば、スプリンクラーである。
【0035】
次に、石炭灰造粒システム10は、前回の散水から10日経過したか否かを判定する(ステップS22)。直前の散水から10日経過していないと判断した場合(ステップS22、No)、載置開始から28日が経過したか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24で載置開始から28日が経過していないと判定した場合(ステップS24、No)、ステップS22へと戻る。
【0036】
ステップS22で直前の散水から10日経過したと判定した場合(ステップS22、Yes)、ステップS20へと戻る。ステップS24で載置開始から28日が経過したと判断した場合(ステップS24、Yes)、石炭灰造粒物Aが生成されて、処理は終了となる。なお、ステップS16の開始時点からステップS24の終了時点までの期間を、養生期間とする。したがって、本実施形態においては、養生期間が28日である。
【0037】
なお、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、一次造粒物A2を養生室40に載置して自然乾燥させたがこれに限定されない。例えば、乾燥装置内に一次造粒物A2を載置してもよい。乾燥装置とは、例えば、所定湿度に調整可能な容器である。この場合、ステップS20で一次造粒物A2に散水するときのみ乾燥装置から取出して散水し、再び乾燥装置の内部へ一次造粒物A2を載置してもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、石炭灰混合ステップと、造粒ステップと、反応ステップとを有する。石炭灰混合ステップは、ステップS10及びステップS12を含む。造粒ステップは、ステップS14を含む。反応ステップは、ステップS16からステップS24を含む。石炭灰混合ステップでは、石炭灰とセメントと消石灰とを混合して紛体状の石炭灰混合物A1を生成する。造粒ステップでは、石炭灰混合物A1に反応水W2を添加して一次造粒物A2を生成する。反応ステップは、一次造粒物A2と反応水W2及び追加反応水W3とを水和反応させて、石炭灰造粒物Aを生成する。
【0039】
本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、養生期間が28日である。さらに、石炭灰造粒物Aの製造方法は、養生期間の間、10日毎の頻度で一次造粒物A2に散水をする。これによれば、石炭灰造粒物Aの製造方法は、一次造粒物A2と反応水W2及び追加反応水W3との水和反応を促進させることができる。これによれば、石炭灰造粒物Aの製造方法は、石炭灰造粒物A中に残留する水酸化物イオンを減少させることができる。その結果、石炭灰造粒物Aの製造方法によって製造された石炭灰造粒物Aは、水中に使用された場合でも、水域のph値に与える影響を抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、反応ステップで、一次造粒物A2に10日毎に散水するとしたが、これに限定されない。反応ステップで一次造粒物A2に散水をする回数、及び頻度は、石炭灰混合物A1に含まれる石炭灰、消石灰、及びセメントの性状に合わせて調整してよい。また、反応ステップで一次造粒物A2に散水をする回数、及び頻度は、天候、温度等の気候条件に合わせて調整してもよい。
【0041】
なお、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、養生期間が28日であるとしたが、これに限定されない。養生期間は、石炭灰混合物A1に含まれる石炭灰、消石灰、及びセメントの性状に合わせて調整してよい。また、養生期間は、天候、温度等の気候条件に合わせて調整してもよい。
【0042】
(石炭灰造粒物)
図4は、本実施形態に係る石炭灰造粒物を示す模式図である。図4を参照して、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aについて説明する。図4に示す孔hは、上述のポゾラン反応によって形成された孔である。図4に示すように、石炭灰造粒物Aは、比表面積の大きい多孔質材料となる。これによれば、石炭灰造粒物Aは、硫化水素を吸着できる。したがって、石炭灰造粒物Aは、例えば、内湾や入江、湖沼などの閉鎖性水域などの水底を覆うことで、該水域の環境改善を行なうことができる。
【0043】
ここで、石炭は、一般に、一定量の重金属を成分に含む。重金属とは、例えば、六価クロム、砒素、及びふっ素等である。石炭灰は、石炭を燃焼した際に排出される灰である。このため、石炭灰は、石炭同様に重金属を成分に含む。したがって、石炭灰造粒物は、一定量の重金属を含有する。このため、石炭灰造粒物を種々の用途に使用する場合には、適用された場所(埋立、土壌改質、及び河川の覆砂等)に重金属が溶出することが懸念される。
【0044】
ここで、石炭灰造粒物から重金属が溶出することを抑制するために、多硫化物を石炭灰造粒物に添加することが知られている。多硫化物は、重金属と反応する硫化物イオンを放出する。したがって、多硫化物が添加された石炭灰造粒物は、重金属を水に不溶な硫化金属に変化させる。しかしながら、多硫化物を石炭灰造粒物に添加した場合には、硫化物イオンの溶出が懸念される。硫化物イオンは、例えば、硫化水素又は硫化物を発生させる可能性がある。
【0045】
それに対し、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aは、消石灰を含む。消石灰に含まれるカルシウムイオンは、重金属と作用して、重金属類の溶出を抑制する(不溶化する)。また、消石灰の重金属に対する作用は比較的長期間にわたって安定的に働く。したがって、消石灰を含む石炭灰造粒物Aは、重金属の溶出を長期的に抑制することができる。さらに、石炭灰造粒物Aは、多硫化物が添加されていないため、硫化水素又は硫化物を発生させる可能性が小さくなる。その結果、石炭灰造粒物Aは、硫化水素又は硫化物を発生する可能性が小さくなり、重金属の溶出を抑制することができる。
【0046】
したがって、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aは、より多くの用途に適用することができる。より多くの用途とは、例えば、環境修復材、地盤改良材、埋め立て材等である。石炭灰造粒物Aは、例えば、環境修復材として閉鎖性水域の水底に覆砂される。上述のように、石炭灰造粒物Aは、重金属の溶出を抑制しつつ、硫化水素を吸着することができる。したがって、閉鎖性水域の水質を改善することができる。
【0047】
(実施例)
次に、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの実施例について説明する。本実施例で使用した石炭灰は、石炭火力発電所から排出された石炭灰である。石炭火力発電所の燃料には、異なる石炭種5種を用いた。各石炭種を燃焼して排出されたそれぞれの石炭灰を石炭灰K、石炭灰L、石炭灰M、石炭灰N、石炭灰Oとする。セメントは、高炉セメントB種を用いた。セメントは、石炭灰の総質量に対して15質量%使用した。消石灰は、石炭灰の総質量に対して3質量%又は5質量%とした。なお、以下の溶出試験において、定量下限より小さく、未検出であった場合には、「<」を記載する。
【0048】
(実施例1−10)
本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法を用いて実施例1−10に係る石炭灰造粒物Aを製造した。また、比較例1−5に係る石炭灰造粒物を製造した。実施例1,3,5,7,9には、石炭灰の総質量に対して消石灰を3質量%添加した。実施例2,4,6,8,10には、石炭灰の総質量に対して消石灰を5質量%添加した。比較例1−5は、石炭灰混合ステップで消石灰を添加していない点で実施例1−10と相違する。実施例1−10、及び比較例1−5の養生期間は、28日とした。
【0049】
実施例1、実施例2、及び比較例1には、石炭灰Kを用いた。実施例3、実施例4、及び比較例2には、石炭灰Lを用いた。実施例5、実施例6、及び比較例3には、石炭灰Mを用いた。実施例7、実施例8、及び比較例4には、石炭灰Nを用いた。実施例9、実施例10、及び比較例5には、石炭灰Oを用いた。
【0050】
そして、実施例1−10、及び比較例1−5に対して5種の重金属(六価クロム、砒素、セレン、ふっ素、及びほう素)の溶出試験、及び溶出液のpH測定を実施した。ここで、重金属の溶出試験は、「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成3年度環境庁告示46号)で定められた方法で実施した。溶出液のpHとは、6時間振とう後の溶出液のpHである。後述の実施例及び比較例における重金属の溶出試験及びpH測定も同様の方法で実施した。次に示す表1は、実施例1−10、及び比較例1−5の溶出試験結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、実施例1−10は、比較例1−5と比較して、全ての重金属の溶出濃度が低下した。すなわち、消石灰を添加した実施例1−10は、消石灰が添加されていない比較例1−5と比較して、重金属の溶出を抑制できることが示された。ここで、実施例1−10は、5種類の石炭の石炭灰から製造されている。したがって、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法によれば、複数種の石炭から生成された石炭灰を用いた場合でも、石炭灰造粒物Aから重金属が溶出することを抑制できることが示された。
【0053】
(実施例11−20)
本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法を用いて実施例11−20に係る石炭灰造粒物Aを製造した。また、比較例6−10に係る石炭灰造粒物を製造した。実施例11,13,15,17,19には、石炭灰の総質量に対して消石灰を3質量%添加した。実施例12,14,16,18,20には、石炭灰の総質量に対して消石灰を5質量%添加した。比較例6−10は、石炭灰混合ステップで消石灰を添加していない点で実施例11−20と相違する。実施例11−20、及び比較例6−10の養生期間は、91日とした。
【0054】
実施例11、実施例12、及び比較例6には、石炭灰Kを用いた。実施例13、実施例14、及び比較例7には、石炭灰Lを用いた。実施例15、実施例16、及び比較例8には、石炭灰Mを用いた。実施例17、実施例18、及び比較例9には、石炭灰Nを用いた。実施例19、実施例20、及び比較例10には、石炭灰Oを用いた。
【0055】
そして、実施例11−20、及び比較例6−10に対して5種の重金属(六価クロム、砒素、セレン、ふっ素、ほう素)の溶出試験、及び溶出液のpH測定を実施した。次に示す表2は、実施例11−20及び比較例6−10の溶出試験結果を示す表である。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すように、実施例11−20は、比較例6−10と比べて砒素、セレン、及びふっ素の溶出濃度が低下した。すなわち、消石灰を添加した実施例11−20は、消石灰が添加されていない比較例6−10と比較して、砒素、セレン、及びふっ素の溶出を抑制できることが示された。
【0058】
さらに、実施例11−20は、実施例1−10よりも溶出液のpHが中性に近い。具体的には、表2に示すように、実施例11−20の溶出液のpHは、全て9.3以下である。これは、実施例11−20の養生期間が実施例1−10の養生期間よりも長いことに起因する。つまり、養生期間を91日よりも長くすることで、石炭灰造粒物Aの溶出液のpHを9.3以下にすることができる。これによれば、石炭灰造粒物Aの溶出液のpHをより中性に近づけることができる。したがって、養生期間を91日以上とすることで、石炭灰造粒物Aが水中環境に使用された場合でも、水域のph値に与える影響をより抑制することができる。
【0059】
本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、養生期間を28日よりも長い期間としたが、pHが所定の値以下となるまでを養生期間としてもよい。所定の値のpHとは、例えば、9.3である。これによれば、石炭灰造粒物Aの溶出液のpHをより中性に近づけることができる。これにより、石炭灰造粒物Aが水中環境に使用された場合でも、水域のph値に与える影響を抑制することができる。その結果、石炭灰造粒物Aをより多くの環境で使用することができる。
【0060】
(実施例21−30)
本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法を用いて実施例21−30に係る石炭灰造粒物Aを製造した。また、比較例11−15に係る石炭灰造粒物を製造した。実施例21,23,25,27,29には、石炭灰の総質量に対して消石灰を3質量%添加した。実施例22,24,26,28,30には、石炭灰の総質量に対して消石灰を5質量%添加した。比較例11−15は、石炭灰混合ステップで消石灰を添加していない点で実施例21−30と相違する。実施例21−30、及び比較例11−15の養生期間は、855日とした。
【0061】
実施例21、実施例22、及び比較例11には、石炭灰Kを用いた。実施例23、実施例24、及び比較例12には、石炭灰Lを用いた。実施例25、実施例26、及び比較例13には、石炭灰Mを用いた。実施例27、実施例28、及び比較例14には、石炭灰Nを用いた。実施例29、実施例30、及び比較例15には、石炭灰Oを用いた。
【0062】
そして、実施例21−30、及び比較例11−15に対して5種の重金属(六価クロム、砒素、セレン、ふっ素、ほう素)の溶出試験、及び溶出液のpH測定を実施した。次に示す表3は、実施例21−30及び比較例11−15の溶出試験結果を示す表である。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示すように、実施例21−30は、比較例11−15と比べて砒素、セレン、及びふっ素の溶出濃度が低下した。すなわち、消石灰を添加した実施例21−30は、消石灰が添加されていない比較例11−15と比較して、砒素、セレン、及びふっ素の溶出を抑制できることが示された。
【0065】
さらに、実施例21−30は、実施例11−20と比較して、溶出液のpHの変化が小さい。具体的には、表3に示すように、実施例21−30の溶出液のpHは、全て9.3以下である。これは、養生期間を91日よりも長くしても、石炭灰造粒物Aの溶出液のpHの変化が少ないことが分かる。したがって、養生期間を91日以上とすることで、石炭灰造粒物Aが水中環境に使用された場合でも、水域のpH値に与える影響をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 石炭灰造粒システム
20 石炭灰混合装置
30 造粒装置
31 軸部
32 容器部
40 養生室
A 石炭灰造粒物
A1 石炭灰混合物
A2 一次造粒物
W1 水
W2 反応水
W3 追加反応水
h 孔
図1
図2
図3
図4