特開2018-158634(P2018-158634A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-158634(P2018-158634A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】燃料油移送システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20180914BHJP
   F23K 5/04 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
   B63B11/04 B
   F23K5/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-56428(P2017-56428)
(22)【出願日】2017年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】598063041
【氏名又は名称】ホクシン産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075144
【弁理士】
【氏名又は名称】井ノ口 壽
(72)【発明者】
【氏名】千々波 孝泰
【テーマコード(参考)】
3K068
【Fターム(参考)】
3K068AA13
3K068AB20
3K068BA01
3K068CA11
3K068CA28
(57)【要約】
【課題】複数のタンクに貯留されている燃料油の消費に無駄が生じるのを抑えることが可能な燃料油移送システムを提供する。
【解決手段】燃料油澄タンク3の燃料油を用いて移送先の燃料油貯蔵タンク2Bを予熱する移送経路に第1補助流入管10が用いられ、移送元の燃料油貯蔵タンク2Aの燃料油が移送ポンプ6から吐出されて移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに向け移送される移送経路に第2補助流入管100および迂回燃料油路101が用いられ、移送元から移送先の燃料油貯蔵タンクに燃料油を移送するとき、第2補助流入管100を流れる燃料油の一部を第1補助流入管10を介して移送ポンプ6側に還流することを特徴とする。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料油貯蔵タンクのうちの一つから移送ポンプにより移送された燃料油を燃料油澄タンクによって加熱し、加熱済みの燃料油を流下ポンプにより前記燃料油貯蔵タンクに戻して該燃料油貯蔵タンク内の燃料油と混合させることにより前記燃料油貯蔵タンク内の燃料油の温度を部分的に高めることが可能な燃料油移送システムにおいて、
前記一つの燃料油貯蔵タンクを移送元とし、これ以外を移送先の燃料油貯蔵タンクとしたとき、前記燃料油澄タンクから前記移送先の燃料油貯蔵タンクへ若しくは該燃料油澄タンクから前記移送ポンプの燃料油吸引側へ燃料油を移送可能な第1補助流入管と、前記移送ポンプの燃料油吐出側と第1補助流入管との間に連通する第2補助流入管と、該第1補助流入管と分岐して前記移送先の燃料油貯蔵タンクへ燃料油を移送可能な迂回燃料油路とを備え、
前記移送先の燃料油貯蔵タンクの燃料油を予熱するときに前記第1補助流入管を用いて前記燃料油澄タンクの加熱済み燃料油を前記移送先の燃料油貯蔵タンクの燃料油と混合するための移送経路と、前記第2補助流入管および前記迂回燃料油路を用いて前記移送元の燃料油貯蔵タンクの燃料油を前記移送先の燃料油貯蔵タンクに導入する移送経路とが選択可能であり、移送先への燃料油貯蔵タンクに向け燃料油を移送するときに前記第1補助流入管を用いて前記移送ポンプの燃料油導入側に移送元の燃料油の一部を還流することを特徴とする燃料油移送システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料油移送システムにおいて、
前記第1補助流入管および第2補助流入管にはそれぞれ第1,第2の流下ポンプおよびヒータが備えられていることを特徴とする燃料油移送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料油移送システムにおいて、
前記移送元の燃料油貯蔵タンクから移送先の燃料油移送タンクに燃料油を移送するとき、前記第2補助流入管および迂回燃料油路を流れる燃料油の量に対して第1補助流入管に流れる燃料油の量を少なく設定可能であることを特徴とする燃料油移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油移送システムに関し、さらに詳しくは、燃料油貯蔵タンク間で燃料油を移し替えるための燃料油移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や発電機などのボイラに用いられる燃料油は、タンクなどの貯留部に収容され、内燃機関等に供給されて消費される。また、燃料油とは別に内燃機関などの主機を対象とした潤滑油も燃料油と同様にタンクなどの貯留部に収容されて用いられる。
船舶に用いられる燃料油や潤滑油の貯留部は、性状の種類や異なる貯留量などに応じて複数のタンクを準備される場合がある(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、内燃機関で消費されることにより減少した潤滑油を補充する際に性状の異なる潤滑油を貯蔵している複数のタンクの一つが選択される構成が開示されている。
性状の異なる潤滑油から選択されるのは、内燃機関内の潤滑油の性状に適合する潤滑剤を供給することにより、内燃機関での運転状況が悪化する原因となる潤滑剤の不足を防ぐためである。
【0003】
特許文献1に開示されている構成は、燃料油とは異なるものの、内燃機関内に供給される物質を対象として複数のタンクから供給している点で燃料油と概念が共通している。
しかし、特許文献1に開示されている構成は、複数のタンクのいずれかを選択することが前提となっているだけで、燃料油という同じ性状を持つ対象物をタンク同士で移送することを考慮してはいない。
このため、タンク内に残った少量の燃料油は消費されないまま放置されるので、燃料消費の無駄を抑える省エネを実施するには不利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−86866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、複数のタンクに貯留されている燃料油の消費に無駄が生じるのを抑えることが可能な燃料油移送システムを提供することにある。特に、複数のタンク同士で燃料油の移送を行う時に燃料油の粘度上昇や流動抵抗の増加を防止しながら燃料油の移し替えが可能な燃料油移送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、本発明は、複数の燃料油貯蔵タンクのうちの一つから移送ポンプにより移送された燃料油を燃料油澄タンクによって加熱し、加熱済みの燃料油を流下ポンプにより前記燃料油貯蔵タンクに戻して該燃料油貯蔵タンク内の燃料油と混合させることにより前記燃料油貯蔵タンク内の燃料油の温度を部分的に高めることが可能な燃料油移送システムにおいて、前記一つの燃料油貯蔵タンクを移送元とし、これ以外を移送先の燃料油貯蔵タンクとしたとき、前記燃料油澄タンクから前記移送先の燃料油貯蔵タンクへ若しくは該燃料油澄タンクから前記移送ポンプの燃料油吸引側へ燃料油を移送可能な第1補助流入管と、前記移送ポンプの燃料油吐出側と第1補助流入管との間に連通する第2補助流入管と、該第1補助流入管と分岐して前記移送先の燃料油貯蔵タンクへ燃料油を移送可能な迂回燃料油路とを備え、前記移送先の燃料油貯蔵タンクの燃料油を予熱するときに前記第1補助流入管を用いて前記燃料油澄タンクの加熱済み燃料油を前記移送先の燃料油貯蔵タンクの燃料油と混合するための移送経路と、前記第2補助流入管および前記迂回燃料油路を用いて前記移送元の燃料油貯蔵タンクの燃料油を前記移送先の燃料油貯蔵タンクに導入する移送経路とが選択可能であり、移送先への燃料油貯蔵タンクに向け燃料油を移送するときに前記第1補助流入管を用いて前記移送ポンプの燃料油導入側に移送元の燃料油の一部を還流することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料油貯蔵タンク内の燃料油を移し替えることができるので、燃料を残すことがなく消費に無駄が出ない。特に、移し替えに際して、燃料油の流動抵抗を抑えることができるので、円滑な移し替えが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る燃料油移送システムに用いられる燃料油移送装置の構成および燃料油加熱時での燃料油の流れを示す模式図である。
図2図1に示した燃料油移送装置で実行される燃料移送時での燃料油の流れを示す模式図である。
図3図1に示した燃料油移送装置に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
図4図3に示した制御部で実施される所定条件判定に用いられる原理を説明するための線図である。
図5図1に示した構成を前提とした燃料油移送システムの構成を説明するための模式図である。
図6図5に示した構成を対象とした燃料油の移送状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明を実施するための形態に係る燃料油移送システムに用いられる燃料油移送装置1の構成である。
燃料油移送装置1は、一対を含む複数の燃料油貯蔵タンク2に連通する燃料油澄タンク3,燃料油サービスタンク4を備えている。
燃料油澄タンク3は、燃料油を加熱するために用いられるタンクであり、図示しないヒータにより、一例として70〜80℃の温度に燃料油が加熱される。
【0010】
燃料油貯蔵タンク2と燃料油澄タンク3とは移送管5によって連通されており、その途中には、移送ポンプ6、温度センサ7および圧力センサ8が配置されている。
温度センサ7は、例えば、移送ポンプ6の燃料油入り口側、いわゆる吸入側の温度を計測している。
圧力センサ8は、移送ポンプ6内に吸入される燃料油の圧力変化を監視するために設けられている。圧力変化は、燃料油の粘度変化に応じた流動抵抗の変化を判断するために用いられる。特に、粘度が高くなり流動抵抗が増加した場合には、移送ポンプ6の入り口側の圧力が真空化傾向となる。従って、真空化傾向の圧力変化が検知されると燃料油の粘度を下げるための加熱が必要となる。
燃料油澄タンク3には、移送ポンプ6によって吸入された燃料油の液面を検知するためのレベルセンサ9が設けられている。
レベルセンサ9は、燃料油澄タンク3内に燃料油が所定量導入されたときの液面を検知できるセンサである。レベルセンサ9は、燃料油澄タンク3内に燃料油が所定量導入されたことを検知すると、移送ポンプ6の駆動を停止させるために用いられる。
センサは、上述した位置に限らず、燃料油貯蔵タンク2の内部にも設けられている(図5参照)。このセンサLG1,LG2は、燃料油貯蔵タンク内の燃料残量をレベルあるいは圧力により検知する残量センサである。
【0011】
燃料油サービスタンク4は、加熱された燃料油を清浄化した後、一時的に貯留し、内燃機関等に向け燃料油を供給するために用いられるタンクである。燃料油貯蔵タンク2と燃料油サービスタンク4とは吸入管10により連通されており、その途中には、流下ポンプ11が配置されている。燃料油サービスタンク4に貯留されている燃料油の一部は流下ポンプ11によって燃料油貯蔵タンク2に流下されて燃料油貯蔵タンク2内の燃料油の温度を高める。
この場合にいう流下ポンプ11の名称は、燃料油サービスタンク4が燃料油貯蔵タンク2よりも高い位置に配置されている構成を前提としていることが理由である。つまり、上位の燃料油サービスタンク4から、これよりも下位の燃料油貯蔵タンク2に燃料油を流れ落とすように繰り出すことを意味させて流下という表現としている。
【0012】
図1に示す構成では、燃料油澄タンク3および燃料油サービスタンク4がそれぞれ吸入管10に連通された構成を採用している。従って、これら両方のタンク3,4あるいは何れかのタンクから燃料油貯蔵タンク2に向けた加熱済み燃料油の流路が設定できるように各タンク3,4の燃料油の出口の流路に弁12が設けられている。
【0013】
以上の燃料油移送装置1は、移送ポンプ6によって燃料油貯蔵タンク2から燃料油澄タンク3に吸入された燃料油が加熱され、加熱された燃料油が清浄化されたうえで燃料油サービスタンク4に導入され、貯留された燃料油が内燃機関等への供給に備えられる。
燃料油澄タンク3およびまたは燃料油サービスタンク4において一時的に貯留されている燃料油の一部は、流下ポンプ11によって燃料油貯蔵タンク2に戻される。この結果、燃料油貯蔵タンク2内の燃料油は加熱された燃料油と混合されることにより部分的に36〜40℃に加熱される。
【0014】
本実施形態においては、ポンプ同士の稼働時間として、例えば、移送ポンプ6が15分程度そして流下ポンプ11が45分程度を選択されて交互に稼働される。この時間のうちで移送ポンプ6の稼働時間は、例えば、前述した燃料油澄タンク3内のレベルセンサ9によって燃料油の液面が検知されるまでの時間に対応させることができる。つまり、移送ポンプ6の回転数、駆動電流等の定格に基づいた流量で燃料油を流したときの稼働時間内に燃料油の液面がレベルセンサ9によって検知されると燃料油の流動抵抗を生じない燃料油の粘度であると判断でき、この稼働時間を超える場合には燃料油の粘度が高く流動性が悪いと判断できる。また、レベルセンサ9は、燃料油澄タンク3内に導入される燃料油が所定量に達したことを検知すると、移送ポンプ6の稼働を停止させて燃料油が溢れるのを防止する。
なお、停泊中などのように燃料油の消費がないときは、移送ポンプ6の稼働時間が短く、レベルセンサ9が作動するまでの時間が例えば6分程度となる。
【0015】
移送ポンプ6を用いて燃料油貯蔵タンク2から燃料油澄タンク3に向けて燃料油を吸入するルートは、図1において符号F1〜F5で示されている。流下ポンプ11を用いて燃料油サービスタンク4から燃料油貯蔵タンク2に向け燃料油を流下させるルートは、図2において矢印F10〜F13で示されている。
このような構成を用いる燃料油移送装置1は、その主要部の構成が本出願人の先願である特開2012−17123号公報に開示されている。
【0016】
以上の構成を備えた燃料油移送装置1は、燃料油の流動抵抗が増加するのを抑止する加熱方法が用いられる。
この場合の加熱とは、加熱された燃料油を加熱されていない燃料油と混合させることにより加熱されていない燃料油の温度を高めることを意味している。
以下、燃料油移送装置を用いて実行される加熱方法について説明する。
【0017】
燃料油移送装置1は、燃料油の粘度が低く、流動抵抗が少ない場合に実行される通常運転モードと、上記粘度が高く、流動抵抗が増加した場合に実行される加熱運転モードのいずれかを選択可能である。通常運転モードは、レベルセンサ9の作動状態に応じて稼働する移送ポンプ6および燃料油貯蔵タンク2内へ燃料油の供給を行う流下ポンプ11が交互に運転されて燃料油が循環されるモードである。加熱運転モードは、移送ポンプ6を強制的に停止したうえで、移送ポンプ6の吸入側で堰き止められている燃料油を加熱すると共に、燃料油貯蔵タンク2に戻される燃料油によって燃料油貯蔵タンク2内の燃料油も加熱するモードである。加熱運転モードは、移送ポンプ6側で堰き止められている燃料油の粘度が流動抵抗を増加させない値に達するまで実行されることが望ましい。
加熱運転モードを実行するための条件として次に挙げるパラメータがデータとして用いられる。
すなわち、パラメータは、少なくとも、移送ポンプ6に吸入される燃料油の温度、圧力および移送ポンプ6の稼働時間が用いられる。移送ポンプ6の稼働時間に関しては、前述したように、レベルセンサ9が作動するまでの稼働時間や移送ポンプ6自身に備えられたタイマの計時時間が参照される。これら各パラメータの全てもしくはいずれか一つまたは複数が、加熱を必要とする所定条件に一致すると加熱運転モードが実行される。
【0018】
以下、この運転モードを実行するための構成および作用について図3を用いて説明する。
移送ポンプ6および流下ポンプ11は、その稼働状態を、図3に示す制御部20によって制御される。
【0019】
制御部20は、移送管5に設けられている温度センサ7、圧力センサ8、レベルセンサ9が入力側に接続されている。制御部20の出力側には、移送ポンプ6の駆動部および流下ポンプ11の駆動部がそれぞれ接続されている。移送ポンプ6および流下ポンプ11は、いずれもモータ(図1、2中、符号M1、M2で示す部材)が回転制御されることにより流量や流速を制御できるタイプが用いられる。
【0020】
図3において符号15は、例えば、各ポンプ6,11の稼働時間や燃料油の流量などを表示するためおよび燃料消費量さらには戻し量などの必要条件を入力するために用いられる操作パネルであり、符号16はタイマである。
タイマ16は、例えば、移送ポンプ6が稼働し始めた時点からレベルセンサ9により液面検知が行われるまでの所要時間を計測する。従って、移送ポンプ6が稼働しながらレベルセンサ9による液面検知までの稼働時間が必要以上に長くなるときは粘度が高く流動抵抗が大きいと判断できる。換言すれば、移送ポンプ6の稼働時間が必要以上に長くなるときには移送ポンプ6を流れる燃料油の粘度が高く、流動抵抗が大きい状態であることを判断できる。移送ポンプ6は、稼働時間を計測するタイマを自らが備えている場合もある。この場合には、自身のタイマに予め設定されている稼働時間以上に移送ポンプ6が稼働したときに燃料油の粘度が高く流動抵抗が高い状態であることを判断できる。
移送ポンプ6は、予め設定されている稼働時間を超える時、強制的に停止され、後で説明する加熱運転モードに備えられる。
【0021】
また、燃料油の粘度が流動抵抗を増加させる粘度であることを判断する所定条件に用いる監視対象項目として、移送ポンプ6の駆動源に用いられるモータの駆動電流値を対象とすることができる。
駆動電流値は、予めセットされているモータの回転数、トルクを得るために決められているが、回転数やトルクが変化した場合には元の状態に復帰させるように変化し、特に回転数やトルクが低下した場合には駆動電流値は上昇する。そこで、駆動電流値が上昇した場合を監視することにより燃料油の粘度が上昇したことを判断でき、運転モードの切り換えが行える。
【0022】
制御部20により選択される通常運転モードは、燃料油の粘度が流動抵抗を増加させない値である場合に保温しながら燃料油を循環させる。この運転モードによれば、燃料油貯蔵タンク2内に貯蔵されている燃料油の温度が低くなるのを抑えて粘度が高くなるのを防止する状態が維持される。
通常運転モード時の制御部20は、移送ポンプ6に導入される燃料油の温度、圧力そして移送ポンプ6の稼働時間、さらに加えて移送ポンプ6の駆動源であるモータに対して印加される駆動電流値の変化を監視する。
これらの監視対象項目は、例えば次に挙げる4種類のケースが発生した場合に燃料油の粘度変化、特に粘度が上昇したことを判断する所定条件として用いられる。
(1)燃料油の粘度が上昇して流動抵抗が増加する温度以下に達している場合。
(2)移送ポンプ6の燃料油導入側の圧力変化が真空化傾向発生状態である場合。
(3)レベルセンサ9が作動するまでの移送ポンプ6の稼働時間が長大化している場合。
(4)移送ポンプ6の駆動源に対する駆動電流値が上昇している場合。
これらの所定条件を満たしていないで燃料油の粘度上昇が発生していない場合に通常運転モードが実行される。
通常運転モード実行時には、燃料油貯蔵タンク2から燃料油澄タンク3へ燃料油を吸入するサイクルと燃料油澄タンク3およびまたは燃料油サービスタンク4内の一部の燃料油を燃料油貯蔵タンク2へ向け流下させるサイクルとが交互に繰り返される。ただし、サイクル途中であっても、レベルセンサ9の作動に応じて移送ポンプ6は停止される。この運転モード実行時での各ポンプ6,11の稼働状態が操作パネル15に表示される。
【0023】
上記監視対象項目の監視が継続されて通常運転モードが実行されているときに、該監視対象項目により導かれる所定条件の全て、いずれか一つあるいは複数が一致した場合には、通常運転モードから加熱運転モードに切り換えられる。
【0024】
加熱運転モードでは、移送ポンプ6が強制的に停止され、流下ポンプ11を稼働させて加熱された燃料油が燃料油貯蔵タンク2に流される。このとき、加熱された燃料油は、移送ポンプ6の燃料油吸入側に堰き止められている燃料油と混合されながら燃料油貯蔵タンク2に向け流れる。燃料油は、例えば、フィルタ(図2において符号FTで示す部材)に対して逆流するように流れると、フィルタの詰まりを解消する機能を発揮する。
【0025】
制御部20では、監視対象項目のうちで温度、圧力は直接センサにより監視ができるが、レベルセンサ9を用いて液面を検知するまでの移送ポンプ6の稼働時間に関しては、図4に示す状態に基づいて加熱運転モードを実行するかどうかを判定する。
図4は、縦軸が燃料油の量(レベルセンサ9が作動する量)を示し、横軸が時間を示している。
同図において、燃料油の粘度が高くなるに従い、移送ポンプ6を一定出力とした場合にレベルセンサ9が作動するまでの時間が長くなる。
従って、粘度が低い燃料油が燃料油澄タンク3内へ導入されてレベルセンサ9が作動するまでの時間(図4中、符号Tで示す時間)を基準として、その時間よりも長大化した場合(図4中、符号T1で示す時間)には燃料油の粘度が高いことが判断できる。なお、移送ポンプ6自身にタイマを備えている場合には、タイマの設定時間と実際の稼働時間とを比較して実際の稼働時間が長大化している場合に燃料油の粘度が高いと判断することができる。
【0026】
監視対象項目から導かれる所定条件の全て、あるいは一部または複数が一致した場合に加熱運転モードが選択されると、加熱された燃料油が燃料油貯蔵タンク2に向け送られる。これにより、燃料油貯蔵タンク2内の燃料油に直接混合されるだけでなく、移送ポンプ6の吸入側に堰き止められている燃料油とも混合されて燃料油の温度を上昇させることができる。結果として、移送ポンプ6に燃料油が吸入される直前の油路において燃料油が加熱されるので、移送ポンプ6に流れ込む燃料油の粘度低下を確保できる。
【0027】
監視対象項目である温度、圧力、移送ポンプの稼働時間さらには移送ポンプのモータでの駆動電流値の変化が粘度上昇を解消された条件に達し、所定条件に一致しなくなった場合には、通常運転モードに復帰する。
【0028】
以上の加熱方法に用いる燃料油移送装置1は、複数タンクからの燃料油の移し替えの時に、燃料油の粘度上昇や流動抵抗の増加を抑えながら移送できることを特徴としている。
以下、この特徴を得るための構成について説明する。
【0029】
図5は、図1に示した構成を対象として燃料油の移送経路を設定するために用いられる開閉弁に符号を付けると共に、一部の構成を付加した図である。
図5に示されている構成と図1に示されている構成との違いは次の通りである。
すなわち、一つの燃料油貯蔵タンクに相当する移送元の燃料油貯蔵タンク2Aから移送先の燃料油貯蔵タンク2Bの双方を直接連通させた関係として燃料油を移し替える構成を備えている点である。具体的には、図1に示した燃料油澄タンク3から移送ポンプ6の燃料油吸入側に連通する吸入管10を第1補助流入管として用いることに加えて吸入管10の一部で分岐された第2補助流入管100を用いる点にある。
【0030】
第1補助流入管10は、燃料油澄タンク3から吐出される加熱済み燃料油を移送ポンプ6の燃料油吸入側に混合させる経路を構成しているが、後述する第2補助流入管に連続する迂回燃料油路101と連通させてある。第1補助流入管10は、移送先の燃料油貯蔵タンク2B内の燃料油を加熱するために、燃料油澄タンク3の加熱済み燃料油を移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに向けて移送することが可能な経路である。
【0031】
第2補助流入管100は、移送ポンプ6の燃料油吐出側と第1補助流入管10との間に連通し、さらに、第1補助流入管10と分岐して移送先の燃料油貯蔵タンク2Bの燃料油導入側に接続された迂回燃料油路101が設けられている。第2補助流入管100は、移送ポンプ6から吐出された燃料油を迂回燃料油路101に向けて移送する流路として用いられる。
迂回燃料油路101は、第2補助流入管100を流れる燃料油が移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに向け移送されるための油路である。従って、第2補助流入管100および迂回燃料油路101は、移送元の燃料油貯蔵タンク2Aから移送ポンプ6によって汲み上げられた燃料油を直接、移送先の燃料油貯蔵タンク2Bの燃料油導入側に混合させる場合に用いられる。
第1補助流入管10には、流下ポンプ11を代用する第1流下ポンプ11が設けられ、第2補助流入管100には、これと連通する迂回燃料油路101に第2流下ポンプ110が設けられている。
第1補助流入管10および第2補助流入管100に連通する迂回燃料油路101には、第1,第2流下ポンプ11,110の燃料油吐出側に燃料油を加熱可能なヒータ111,111Hが設けられている。
【0032】
移送管5,第1補助流入管として用いられる吸入管10,第2補助流入管100および迂回燃料油路101には、燃料油の移送経路を設定するための開閉弁V1〜V8が配置されている。
これら開閉弁V1〜V8は、移送ポンプ6および第1、第2流下ポンプ11,110の駆動用モータM1,M2,M3の駆動制御に用いられる制御部20によって開閉状態が制御される。
【0033】
制御部20は、使用中の燃料油貯蔵タンク2Aの燃料油を他の新たな移送先となる燃料油貯蔵タンク2Bに移し替えるときに燃料油の移送経路を設定する。この場合の移し替えは、使用中の燃料油貯蔵タンク2Aの残量が少なくなった場合、あるいは使用中の燃料油貯蔵タンク2Aに不測の事態が生じて移し替えが必要となった場合などを対象として実行される。
制御部20は、現段階で使用中であって移送元に相当する燃料油貯蔵タンク2Aの残量センサLG1により検知された燃料残量に応じて燃料油を移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに移し替える処理を行う。不測の事態などにより燃料油を移し替える場合には、その指令が操作パネル15側から出されると、残量に応じて実行する場合と同様に移し替え作業が実行される。
【0034】
移し替えを行うときの燃料油の移送状態は、図6に示されている。
燃料油を移し替える時には、移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに至る燃料油の温度が低いのを解消するために、図6の(A)に示すように、燃料油澄タンク3から加熱済みの燃料油が移送先の燃料油貯蔵タンク2Bの燃料油導入側に移送される。このような燃料油の移送経路は、移送先の燃料油貯蔵タンク2Bへの燃料油の予熱油路として用いることができる。この結果、移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに移送される燃料油の粘度上昇が抑えられて移送抵抗が少ない状態が得られる。従って、この処理は、移送に先立ち、燃料油を円滑に移送するための準備として用いられる。
燃料油澄タンク3から移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに向け加熱済み燃料油を移送するとき制御部20は、移送経路を設定すべく開閉弁V7を開放する。燃料油澄タンク3に設けられている開閉弁12も同様に開放されて燃料油が移送される。
【0035】
次いで、移送先の燃料油貯蔵タンク2B内の燃料油の温度が予熱によってあるいは既に粘度上昇を招かない温度に達しているとき、移送元の燃料油貯蔵タンク2Aから移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに向けて燃料油が移送される。
燃料油の移送のために、図6の(B)に示す移送経路が用いられる。すなわち、移送元の燃料油貯蔵タンク2Aから移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに向け燃料油を移送できるように、第2補助流入管100および迂回燃料油路101が用いられる。
迂回燃料油路101に設けられているヒータ111Hは、ここを流れる燃料油の温度が粘度上昇を招く温度になることを防止するために加熱制御される。従って、迂回燃料油路101を流れる燃料油が放熱や周辺温度の影響を受けて粘度上昇を招く温度となるのを防ぐことができるので、燃料油の移送抵抗を増大させないで移送することができる。
【0036】
本実施形態では、第2補助流入管100に第1補助流入管10が連通している構成を用いることにより、図6の(B)において細線の矢印で示すように、迂回燃料油路101に流れる燃料油の一部を第1補助流入管10に分流させることができる。
第1補助流入管10を流れる燃料油の量は、移送ポンプ6により移送される燃料油の全量に対して迂回燃料油路101に向け流れる燃料油の量よりも少ない、例えば30%程度の量である。従って、移送元の燃料油貯蔵タンク2Aからの燃料油は、70%の量が移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに移送され、この量よりも少ない30%の量が移送ポンプ6の燃料油吸引(導入)側に移送される。この結果、移送ポンプ6に導入される燃料油の粘度上昇の原因となる温度低下が矯正され、移送ポンプ6の負荷増大が抑制される。第1補助流入管10に設けられているヒータ111は、迂回燃料油路101に設けられているヒータ111Hと同様に、流れる燃料油の温度が粘度上昇を招く温度になることを防止するために加熱制御される。
【0037】
制御部20は、図6の(B)に示す移送経路を設定すべく、燃料油の流れに沿って開閉弁V1,V3,V8,V7,およびV6,V5を開放する。
各開閉弁のうちで、第1補助流入管10に設けられている開閉弁V5,V6は、第2補助流入管100,迂回燃料油路101に設けられている開閉弁V7,V8に対して開き量を少なくされて、油路を絞られる。特に、開閉弁V8の全開よりも開閉弁V7の開放量を少なくすることにより、第2補助流入管100よりも迂回燃料油路101が絞られるので、第1補助流入管100に向けて燃料油を移送できる。開閉弁V7の開放量は、前述した第1補助流入管100での燃料油の量が得られる量に設定されることが望ましい。
制御部20は、第2補助流入管100を流れる燃料油の一部を第1補助流入管10に分流させるとき、前述した加熱運転モードとは異なる条件が用いられる。つまり、加熱運転モードは、移送ポンプ6が強制的に停止された場合を前提として行われるが、図6の(B)に示す状態は、移送ポンプ6が稼働を継続されていることを前提としている。このため、移送ポンプ6の燃料油吸引(導入)側の燃料油の温度が粘度上昇を招かない温度に維持されることが重要となる。そこで、本実施形態では、移送ポンプ6の燃料油吸引(導入)側への燃料油の混合率を調整して燃料油の温度低下を防止している。
【0038】
以上の実施形態に係る燃料油移送システムによれば、移送ポンプ6に導入される燃料油の温度および移送先の燃料油貯蔵タンクに移送される燃料油の温度を粘度上昇が発生しない温度に維持することができる。
特に、移送元から移送先の燃料油貯蔵タンクへの燃料油の移送は、燃料油貯蔵タンク同士を連通させて行うことができる。これにより、燃料油澄タンク3から移送先の燃料油貯蔵タンク2Bに供給する場合と違って、燃料油澄タンク3において燃料油の減少を抑えることができる。しかも、連通しているタンク間の移送路に予熱済み燃料油あるいは加熱済み燃料油を混合させて燃料油の温度低下を防止できるので、粘度上昇を防止しながら円滑な燃料油の移送が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、燃料油貯蔵タンク内の燃料油を新たな燃料油貯蔵タンクに移し替えることができるので、残りが少なくなった燃料油貯蔵タンク内の燃料油を放置することなく使用することができる。これにより、燃料の消費に無駄をなくすことができる点で利用可能性が高い。
特に、移し替えられる燃料をタンク同士の連通によって移し替えるので、燃料油澄タンクからの燃料油の繰り出し量を抑えることができ、しかも、移送される燃料油の温度低下を抑えて移し替えができる点で利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料油移送システムに用いられる燃料油移送装置
2 燃料油貯蔵タンク
2A 移送元の燃料油貯蔵タンク
2B 移送先の燃料油貯蔵タンク
3 燃料油澄タンク
5 移送管
6 移送ポンプ
7 温度センサ
8 圧力センサ
10 第1補助流入管に用いられる吸入管
11 第1流下ポンプに相当する流下ポンプ
20 制御部
100 第2補助流入管
101 迂回燃料油路
110 第2流下ポンプ
111,111H ヒータ
LG1,LG2 残量センサ
V1〜V8 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6