特開2018-158900(P2018-158900A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-158900DNMTのS−ニトロシル化阻害剤、がん治療薬及びそのスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-158900(P2018-158900A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】DNMTのS−ニトロシル化阻害剤、がん治療薬及びそのスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20180914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
   A61K31/4184
   A61P35/00
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-56367(P2017-56367)
(22)【出願日】2017年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭博
(72)【発明者】
【氏名】カム ワイ.ジェイ.ザン
(72)【発明者】
【氏名】クマール アシュトシュ
(72)【発明者】
【氏名】岡田 太
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】DNMTのS−ニトロシル化阻害剤、がん治療薬及び素クリーニング方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)
【化1】

(R、Rは、同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。Yは、2価の連結基を示す。)
で表される化合物又はその塩を有効成分とする、DNAメチル基転位酵素(DNMT)のS−ニトロシル化阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(R、Rは、同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。Yは、2価の連結基を示す。)
で表される化合物又はその塩を有効成分とする、DNAメチル基転位酵素(DNMT)のS−ニトロシル化阻害剤。
【請求項2】
DNMT3のS−ニトロシル化を特異的に阻害する、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
下記式(I)
【化2】
(R、Rは、同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。Yは、2価の連結基を示す。)
で表される化合物を有効成分とするがん治療薬。
【請求項4】
一酸化窒素発生剤及び候補物質の存在下でDNAメチル基転位酵素(DNMT)を含む細胞を培養し、S−ニトロシル化されたDNMTを検出する工程を含む、がん治療薬のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNMTのS−ニトロシル化阻害剤、がん治療薬及びそのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAメチル基転移酵素(DNMT)は共通のメチル供与体であるS-アデノシルメチオニンからDNA分子の特定の部位にメチル基を転移させる。いくつかの生物機能はDNAにおけるメチル化塩基によるものとされている。DNAのメチル化異常はがん化に深く関係していることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】京府医大誌 118(8)、515-521、2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な作用メカニズムを有するがん治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題に鑑み検討を重ねた結果、DNMTはシステイン残基のチオール基がNO によって酸化されて,酵素活性が抑制されること、細胞のNO処理によって,DNAの脱メチル化が亢進し,がん化を促進する遺伝子の発現が上昇することを見出し、DNMTの活性を維持しつつS−ニトロシル化を選択的に阻害する阻害剤を見出し、この阻害剤ががん化を抑制することを見出した。
【0006】
本発明は、以下のDNMTのS−ニトロシル化阻害剤、がん治療薬及びそのスクリーニング方法を提供するものである。
項1. 下記式(I)
【化1】
(R、Rは、同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。Yは、2価の連結基を示す。)
で表される化合物又はその塩を有効成分とする、DNAメチル基転位酵素(DNMT)のS−ニトロシル化阻害剤。
項2. DNMT3のS−ニトロシル化を特異的に阻害する、項1に記載の阻害剤。
項3. 下記式(I)
【化2】
(R、Rは、同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。Yは、2価の連結基を示す。)
で表される化合物を有効成分とするがん治療薬。
項4. 一酸化窒素発生剤及び候補物質の存在下でDNAメチル基転位酵素(DNMT)を含む細胞を培養し、S−ニトロシル化されたDNMTを検出する工程を含む、がん治療薬のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のDNAメチル基転位酵素(DNMT)の活性中心にあるシステイン残基は、NOによりS−ニトロシル化され、酵素活性が低下する。DNMTのS−ニトロシル化を抑制する物質は、活性中心のシステイン残基と相互作用するため、DNMTの酵素活性を低下させることが予測される。DNMTの酵素活性を低下させる物質は、DNMTのS−ニトロシル化を抑制したとしてもがん治療薬としては使用できない。
【0008】
本発明のDNMTのS−ニトロシル化阻害剤は、DNMTの酵素活性を維持しつつS−ニトロシル化を抑制できるので、がん治療薬として有用である。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明のDNMTのS−ニトロシル化阻害剤は、DNMT3のS−ニトロシル化を特異的に阻害することができる。DNMTはがん化以外にも多様な生理活性に関与しており、DNMTのS−ニトロシル化を非特異的に阻害すると毒性を発現することが予測されるが、DNMT3のS−ニトロシル化を特異的に阻害することで、毒性を抑えつつがん化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Maintenance DNA methylation by DNMT1
図2】NOによるDNMT3B活性調節機構
図3】タンパク質Cys残基を介した酸化ストレス/レドックスシグナル伝達
図4】S-nitrosylation of DNMTs (1)。「input」は、含量コントロール(各サンプルに同じくらい当該タンパク質がある)を意味する。
図5】S-nitrosylation of DNMTs (2)
図6】DNMT3B特異的抗体の作出
図7】DNMT活性評価方法
図8】Inhibitory effect of NO on DNMT activity
図9】DNMT3Bのホモロジーモデリング
図10】SNO-DNMT形成へのDBICの影響
図11】SNO化を抑制する濃度では酵素活性に影響はない。(a)DBICによるS−ニトロシル化の程度。○はDNMT3B、●はDNMT3A、△はDNMT1である。(b)hDNMT3Bの酵素活性の測定結果。
図12】NOによる細胞増殖効果はDBIC処理で解除される。(a)CCND2もしくはACTBの発現量、(b)細胞数
図13】スフェアアッセイ
図14】NOによるスフェア形成能に対するDBICの抑制効果(1)
図15】NOによるスフェア形成能に対するDBICの抑制効果(2)
図16】炎症性発がんモデル
図17】抗体アレイを用いた新規NO結合タンパク質の網羅的スクリーニング法の概略
【発明を実施するための形態】
【0011】
DNAメチル基転位酵素(DNMT)として、DNMT1(図1)、DNMT2、DNMT3A、DNMT3B(図2)、DNMT3Lが知られている。DNMT1は複製依存性DNAメチラーゼ、DNMT2はRNAメチラーゼ、DNMT3A, DNMT3BはDe novo DNAメチラーゼである。
【0012】
本発明の好ましいDNMTのS−ニトロシル化阻害剤は、DNMT3(DNMT3A、DNMT3B、DNMT3L)を特異的に阻害するものであり、より好ましくはDNMT3A、DNMT3Bを特異的に阻害するものであり、特にDNMT3Bを特異的に阻害するものである。DNMT3/DNMT3B特異的阻害剤は、DNMT1、DNMT2を阻害しないので、副作用を低減することができる。
【0013】
ヒトのDNMT3AとDNMT3Bのアミノ酸配列のアラインメントは図9に示され、これらは非常に相同性が高い。本発明の好ましい阻害剤は、意外にもDNMT3BのS−ニトロシル化を特異的に阻害するものであり、このような結果は、到底予測できないものである。
【0014】
図3に示すように、タンパク質のシステイン残基のSH基は、S−酸化、S−ニトロシル化又はS−スルフヒドリル化されることが知られている。DNMT、特にDNMT3BがS−ニトロシル化されるとメチル基転位活性が低下してシトシン残基の脱メチル化が生じ、CCND2などのがん化を促進する遺伝子発現が増大する(図2)。一方、DNMT、特にDNMT3BのS−ニトロシル化が抑制されると、メチル基転位活性が維持され、シトシン残基のメチル化が促進され、CCND2などのがん化を促進する遺伝子発現は抑制される(図2)。したがって、本発明のDNMTのS−ニトロシル化阻害剤は、がん治療薬として有用である。
【0015】
本発明において、DNMTのS−ニトロシル化阻害剤及びがん治療薬として有用な化合物は、一般式(I)で表される。
【0016】
【化3】
【0017】
(R、Rは、同一又は異なって、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。Yは、2価の連結基を示す。)
本発明の1つの好ましい実施形態において、R、Rの一方が置換されていてもよいアリール基であり、他方が置換されていてもよいヘテロアリール基である。
【0018】
本発明の他の好ましい実施形態において、R、Rの両方が置換されていてもよいアリール基である(RとRは、同一であっても異なっていてもよい)。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態において、R、Rの両方が置換されていてもよいヘテロアリール基である(RとRは、同一であっても異なっていてもよい)。
【0020】
アリール基としては、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、ビフェニリル、テトラヒドロナフチル、クロマニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニル、インダニル及びフェナントリルが挙げられる。
【0021】
ヘテロアリール基としては、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員の芳香環からなる単環又は多環系の基を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環が芳香環であればよい。具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾ[b]チエニル及びベンズイミダゾリルが挙げられる。
【0022】
置換基としては、OH、NH、COOH、NO,NO、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基、アリールオキシ基、低級アルキルチオ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、低級アルコキシカルボニル基、シクロアルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、モノ低級アルキル置換カルバモイル基、ジ低級アルキル置換カルバモイル基、低級アルコキシカルボニルアミノ基などが挙げられ、置換基の数は、例えば1〜5個、好ましくは1〜3個である。
【0023】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0024】
低級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどの直鎖状又は分枝鎖状のC1−6アルキル基が挙げられる。
【0025】
アリール基としては、上記のものが挙げられる。
【0026】
低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどの直鎖状又は分枝鎖状のC1−6アルコキシ基が挙げられる。
【0027】
アリールオキシ基としては、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、フルオレニルオキシ、アントリルオキシ、ビフェニリルオキシ、テトラヒドロナフチルオキシ、クロマニルオキシ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルオキシ、インダニルオキシ及びフェナントリルオキシが挙げられる。
【0028】
低級アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、tert−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ヘキシルチオなどの直鎖状又は分枝鎖状のC1−6アルキルチオ基が挙げられる。
【0029】
モノ低級アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、イソペンチルアミノ、ヘキシルアミノなどのC1−6アルキルでモノ置換されたアミノ基が挙げられる。
【0030】
ジ低級アルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジn−プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジn−ブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、ジtert−ブチルアミノ、ジn−ペンチルアミノ、ジイソペンチルアミノ、ジヘキシルアミノなどのC1−6アルキルでジ置換されたアミノ基が挙げられる。
【0031】
アシル基としては、C1−6アルキルカルボニル、アリールカルボニル又はアリール置換C1−4アルキルカルボニルが挙げられる。
【0032】
1−6アルキルカルボニルとしては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニルが挙げられる。
アリールカルボニルとしては、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、フルオレニルカルボニル、アントリルカルボニル、ビフェニリルカルボニル、テトラヒドロナフチルカルボニル、クロマニルカルボニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルカルボニル、インダニルカルボニル及びフェナントリルカルボニルが挙げられる。
【0033】
アリール置換C1−4アルキルカルボニルとしては、ベンジルカルボニル、ナフチルメチルカルボニル、フルオレニルメチルカルボニル、アントリルメチルカルボニル、ビフェニリルメチルカルボニル、テトラヒドロナフチルメチルカルボニル、クロマニルメチルカルボニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルメチルカルボニル、インダニルメチルカルボニル及びフェナントリルメチルカルボニル、フェネチルカルボニル、ナフチルエチルカルボニル、フルオレニルエチルカルボニル、アントリルエチルカルボニル、ビフェニリルエチルカルボニル、テトラヒドロナフチルエチルカルボニル、クロマニルエチルカルボニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルエチルカルボニル、インダニルエチルカルボニル及びフェナントリルエチルカルボニルが挙げられる。
【0034】
アシルオキシ基としては、C1−6アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ又はアリール置換C1−4アルキルカルボニルオキシが挙げられる。
【0035】
1−6アルキルカルボニルオキシの具体例としては、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、n−プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシが挙げられる。
【0036】
アリールカルボニルオキシの具体例としては、フェニルカルボニルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ、フルオレニルカルボニルオキシ、アントリルカルボニルオキシ、ビフェニリルカルボニルオキシ、テトラヒドロナフチルカルボニルオキシ、クロマニルカルボニルオキシ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルカルボニルオキシ、インダニルカルボニルオキシ及びフェナントリルカルボニルオキシが挙げられる。
【0037】
アリール置換C1−4アルキルカルボニルオキシの具体例としては、ベンジルカルボニルオキシ、ナフチルメチルカルボニルオキシ、フルオレニルメチルカルボニルオキシ、アントリルメチルカルボニルオキシ、ビフェニリルメチルカルボニルオキシ、テトラヒドロナフチルメチルカルボニルオキシ、クロマニルメチルカルボニルオキシ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルメチルカルボニルオキシ、インダニルメチルカルボニルオキシ及びフェナントリルメチルカルボニルオキシ、フェネチルカルボニルオキシ、ナフチルエチルカルボニルオキシ、フルオレニルエチルカルボニルオキシ、アントリルエチルカルボニルオキシ、ビフェニリルエチルカルボニルオキシ、テトラヒドロナフチルエチルカルボニルオキシ、クロマニルエチルカルボニルオキシ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルエチルカルボニルオキシ、インダニルエチルカルボニルオキシ及びフェナントリルエチルカルボニルオキシが挙げられる。
【0038】
アシルアミノ基としては、C1−6アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ又はアリール置換C1−4アルキルカルボニルアミノが挙げられる。
【0039】
1−6アルキルカルボニルアミノの具体例としては、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノ、n−ブチルカルボニルアミノ、イソブチルカルボニルアミノ、tert−ブチルカルボニルアミノ、n−ペンチルカルボニルアミノ、イソペンチルカルボニルアミノ、ヘキシルカルボニルアミノが挙げられる。
【0040】
アリールカルボニルアミノの具体例としては、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ、フルオレニルカルボニルアミノ、アントリルカルボニルアミノ、ビフェニリルカルボニルアミノ、テトラヒドロナフチルカルボニルアミノ、クロマニルカルボニルアミノ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルカルボニルアミノ、インダニルカルボニルアミノ及びフェナントリルカルボニルアミノが挙げられる。
【0041】
アリール置換C1−4アルキルカルボニルアミノの具体例としては、ベンジルカルボニルアミノ、ナフチルメチルカルボニルアミノ、フルオレニルメチルカルボニルアミノ、アントリルメチルカルボニルアミノ、ビフェニリルメチルカルボニルアミノ、テトラヒドロナフチルメチルカルボニルアミノ、クロマニルメチルカルボニルアミノ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルメチルカルボニルアミノ、インダニルメチルカルボニルアミノ及びフェナントリルメチルカルボニルアミノ、フェネチルカルボニルアミノ、ナフチルエチルカルボニルアミノ、フルオレニルエチルカルボニルアミノ、アントリルエチルカルボニルアミノ、ビフェニリルエチルカルボニルアミノ、テトラヒドロナフチルエチルカルボニルアミノ、クロマニルエチルカルボニルアミノ、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニルエチルカルボニルアミノ、インダニルエチルカルボニルアミノ及びフェナントリルエチルカルボニルアミノが挙げられる。
【0042】
低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルなどの直鎖状又は分枝鎖状のC1−6アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0043】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0044】
低級アルケニル基としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、イソプロペニル、1−、2−若しくは3−ブテニル、2−、3−若しくは4−ペンテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、5−ヘキセニル、1−シクロペンテニル、1−シクロヘキセニル、3−メチル−3−ブテニルなどのC2−6アルケニル基が挙げられる。
【0045】
低級アルキニル基としては、エチニル、1−若しくは2−プロピニル、1−、2−若しくは3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニルなどのC2−6アルキニル基が挙げられる。
【0046】
モノ低級アルキル置換カルバモイル基としては、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、イソブチルカルバモイル、tert−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、イソペンチルカルバモイル、ヘキシルカルバモイルなどのC1−6アルキルでモノ置換されたカルバモイル基が挙げられる。
【0047】
ジ低級アルキル置換カルバモイル基としては、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジn−プロピルカルバモイル、ジイソプロピルカルバモイル、ジn−ブチルカルバモイル、ジイソブチルカルバモイル、ジtert−ブチルカルバモイル、ジn−ペンチルカルバモイル、ジイソペンチルカルバモイル、ジヘキシルカルバモイルなどのC1−6アルキルでジ置換されたカルバモイル基が挙げられる。
【0048】
低級アルコキシカルボニルアミノ基としては、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、イソプロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、イソブトキシカルボニルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノ、ペンチルオキシカルボニルアミノ、イソペンチルオキシカルボニルアミノ及びヘキシルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
【0049】
で表される2価の連結基としては、単結合、−R−、−O−、−S−、−NR−、−COO−、−CONR−、−CH=N−NHCO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−CONR−、−OR−、−SR−、−NR−R−、−R−O−R−、−R−S−R−、−R−NR−R−、−R−CONH−、−CONH−R−、−R−CONH−R−、−R−COO−、−COO−R−、−R−COO−R−、−R−NHCOO−、−NHCOO−R−、−R−NHCOO−R
(式中、Rは水素原子又は前記低級アルキル基を示し、Rは、同一又は異なって、CH、CHCH、CHCHCH又はCHCHCHCHを示す。XはCl、Br又はIを示す。)が挙げられる。
【0050】
本発明の一般式(I)の化合物は、公知化合物と新規化合物を含み、新規化合物は、例えば下記のように、化合物(I−1)に対しほぼ等モルの化合物(I−2)を必要に応じて溶媒、縮合剤、塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の存在下に室温から100℃又は溶媒の沸騰する温度下に1〜24時間程度反応させることにより有利に進行する。
【0051】
溶媒としては、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0052】
縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、水溶性カルボジイミド(WSC)、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。縮合剤は、エステル又はアミド結合の形成のために用いることができる。
【0053】
塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、NaH、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられる。
【0054】
【化4】
【0055】
(R、Y、Rは、前記に定義されるとおりである。)
1a、Y1b、Yの組み合わせを以下に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
本発明の好ましい一般式(I)の化合物は、Rが置換されていてもよいフェニル基であり、Rが置換されていてもよい含窒素へテルアリール基である。
【0058】
本発明のがん治療薬のスクリーニング方法は、一酸化窒素(NO)発生剤及び候補物質の存在下でDNAメチル基転位酵素(DNMT)を含む細胞を培養し、S−ニトロシル化されたDNMTを検出する工程を含む。NO発生剤としては、NOC−18、SNOC(S-ニトロソシステイン)、GSNO(Sーニトロソグルタチオン)等が挙げられる。
【0059】
NO発生剤の培養液中濃度としては、10-200μM程度である。
S−ニトロシル化されたDNMTの検出は、ビオチンスイッチ法後に抗体を用いたウェスタンブロット解析を行ってもよく、図17に示す抗体アレイを用いた新規NO結合タンパク質の網羅的スクリーニング法に従い行ってもよい。図17に示す方法は基本的にビオチンスイッチ法と同じであり,抗体アレイ上にDNMTの抗体が存在することが必要となる。ビオチンスイッチ法は、その開発と原理に関する論文(Jaffrey SR, Erdjument-Bromage H, Ferris CD, Tempst P, Snyder SH. Nat Cell Biol. 2001 Feb;3(2):193-7.)、ビオチンスイッチ法に基づく抗体アレイを利用したS−ニトロシル化タンパク質の網羅的同定法に関する論文(Numajiri N, Takasawa K, Nishiya T, Tanaka H, Ohno K, Hayakawa W, Asada M, Matsuda H, Azumi K, Kamata H, Nakamura T, Hara H, Minami M, Lipton SA, Uehara T. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Jun 21;108(25):10349-54. doi: 10.1073/pnas.1103503108.)の記載に従い行うことができる。
【実施例】
【0060】
本発明は以下の実施例によってさらに例示されるが、これらはさらなる限定として解釈されるべきではない。
なお、実施例において、「old SNOC」は、SNOC調製後,数日間経過してNOを放出しなくなったものである。
【0061】
実施例1
HEK293T細胞に全長のhDNMT1(Negishi M, Saraya A, Miyagi S, Nagao K, Inagaki Y, Nishikawa M, Tajima S, Koseki H, Tsuda H, Takasaki Y, Nakauchi H, Iwama A. Biochem Biophys Res Commun. 2007 Feb 23;353(4):992-8)、hDNMT3A(Suetake I, Mishima Y, Kimura H, Lee YH, Goto Y, Takeshima H, Ikegami T, Tajima S. Biochem J. 2011 Jul 1;437(1):141-8. doi: 10.1042/BJ20110241.)、hDNMT3B(Mizuno S, Chijiwa T, Okamura T, Akashi K, Fukumaki Y, Niho Y, Sasaki H. Blood. 2001 Mar 1;97(5):1172-9)でトランスフェクトし、各DNMTを発現する細胞を得た。
得られた3種の細胞を、old SNOC又はSNOC(0,50、100又は200μM)の存在下に37℃で30分間培養し、DNMT1、DNMT3A、DNMT3Bのニトロシル化の程度を、ビオチンとアビジンを使用する図17に示すビオチンスイッチ法に従い測定した。結果を図4,5に示す。
DNMT1、DNMT3A、DNMT3Bは、NO発生剤であるSNOCにより濃度依存的にニトロシル化されることが明らかになった。
【0062】
実施例2
HEK293T細胞に代えて胃粘膜上皮癌由来のAGS細胞を用いた以外は実施例1と同様にしてS−ニトロシル化DNMT3Bを測定した。HEK293Tについての内在性DNMT1のS−ニトロシル化の結果と合わせて図6に示す。
【0063】
実施例3
組換えhDNMT1、hDNMT3A、hDNMT3Bについて、old SNOC又はSNOC(0,0.1、1又は10μM)の存在下に37℃で2時間処理し、図7に示す方法で各DNMTの酵素活性を測定した。結果を図8に示す。
図8に示すように、DNMT1、DNMT3A、DNMT3BはS−ニトロシル化により酵素活性が低下することが明らかになった。
【0064】
実施例4
組換えhDNMT1、hDNMT3A、hDNMT3B、hPTENを組み込んだHEK293細胞について、old SNOC又はSNOC(100 μM)の存在下(+)又は非存在下(−)、各濃度(0,10,50,75,100nMまたは1μM)の化合物DBIC
【0065】
【化5】
【0066】
の存在下に37℃で1時間処理し、S−ニトロシル化の程度を電気泳動により測定した。結果を図10に示す。DBICは、濃度依存的にDNMTのS−ニトロシル化を抑制することが明らかになった。
【0067】
実施例5
組換えhDNMT3Bを組み込んだHEK293細胞について、SNOC(100 μM)の存在下、各濃度(0nM(DMSOのみ、コントロール),10nM,10nM,10nM,10nM)のDBICによるS−ニトロシル化の程度を測定した。結果を図11(a)に示す。
また、組換えhDNMT3Bを組み込んだHEK293細胞について、SNOC(100 μM)の存在下、各濃度(0μM(DMSOのみ),1μM,10μM、100μM)のDBIC又は阻害剤TF−3(10μM)の存在下に37℃で2時間処理し、hDNMT3Bの酵素活性を測定した。結果を図11(b)に示す。
S−ニトロシル化を抑制する濃度ではhDNMT3Bの酵素活性にほとんど影響しないことが明らかになった。
【0068】
実施例6
胃粘膜上皮癌由来のAGS細胞をold SNOC(100μM)、SNOC(100μM)、DBIC(100nM)、5−Aza(10 μM)、GSNO(10 μM)の存在下又は非存在下に37℃で72時間培養し、細胞数、CCND2もしくはACTBの発現量を評価した。結果を図12に示す。
【0069】
実施例7
図13に示す方法に従い、in vitroでのがん化形質獲得の評価のために、96ウェル低接着プレートを用い、スフェアアッセイを行い、播種後1,2,3,4,5,6,7日後のスフェア数を測定した。図13中、
「化合物」は、DBICを意味する。
「カクテル」は、15% DMSO/17.5% CremophorEL/8.75% ethanol/8.75% HCO-40/50% PBSを意味する。
「NOC18」はNO発生剤であり、126μMの濃度で使用した。
「NaOH」は、1.26 mMの濃度で使用した。
「溶媒」は、水である。
「FPCK−1−1」は、培養ヒト大腸腺腫細胞を意味する。
「FPCKpP−4」は、実験的にマウスに生じさせた慢性炎症下にFPCK−1−1を置いた際に発生した大腸癌か ら樹立した培養大腸癌細胞株を意味する。
結果を図14図15に示す。
DBICは、NOによるスフェア形成を抑制することが明らかになった。
【0070】
実施例8
ゼラチンスポンジ移植の前日より25 mg/kg DBIC in 15% DMSO/17.5% CremophorEL/8.75% ethanol/8.75% HCO-40/50% PBSを腹腔内投与した(これ以降,1日1回同様に投与)。つぎに,炎症反応を誘発するゼラチンスポンジ(10×5×3 mm)を皮下に形成した間隙内に移入,さらに,1 x 105個のQR32細胞を移入ゼラチンスポンジ内に接種した。腫瘍を形成したマウスの数ならびに腫瘍径を経時的に測定した。実験は2回繰り返した(Experiment I、Experiment II)。結果を図16に示す。なお、QR32細胞は炎症反応に伴う活性酸素種や窒素種により癌化するだけでなく悪性化(転移の獲得)を進展することが知られている。DBICが炎症による発がんを抑制できることが明らかになった。
図1
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