(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-158992(P2018-158992A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】再生樹脂の原材料およびその製造方法と製造装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/04 20060101AFI20180914BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20180914BHJP
B29B 7/92 20060101ALI20180914BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20180914BHJP
B29K 311/10 20060101ALN20180914BHJP
【FI】
C08J11/04ZAB
B29B9/06
B29B7/92
B29K23:00
B29K311:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-56784(P2017-56784)
(22)【出願日】2017年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】512026765
【氏名又は名称】株式会社広島企業
(74)【代理人】
【識別番号】100161285
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】友永 文昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲生
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 俊二
【テーマコード(参考)】
4F201
4F401
【Fターム(参考)】
4F201AA04
4F201AA11
4F201AA50
4F201AB25
4F201BA01
4F201BA02
4F201BK13
4F201BL08
4F201BL34
4F201BL42
4F201BL44
4F401AA09
4F401AA10
4F401AC01
4F401BB10
4F401CA13
4F401CA14
4F401CA25
4F401CA26
4F401CA69
4F401CA79
4F401CB02
4F401CB26
4F401DC06
4F401FA01X
4F401FA07Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】
従来の押出成形機では、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂のペレットに、ケナフ片を混練押し出しを行うと、ケナフ繊維が、押出成形機の内部において、破断されると言う問題があった。
【解決手段】
再生樹脂の原材料のダイヘッド60は、破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維が40〜70パーセント含む使用済みのケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセントを混練させ混練押出機30で押し出す場合に、ダイヘッド60のノズル孔62が内側から外に向かって徐々に狭くなるように変化させている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維を40〜70パーセント含まれている使用済みのケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセント混練して押し出した後に、3〜5mmの長さのケナフ繊維を含む再生樹脂の原材料。
【請求項2】
前記再生樹脂材料の形状を直径の長さの3〜5倍の長さの円筒形とした請求項1記載の再生樹脂の原材料。
【請求項3】
破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維が40〜70パーセント含む使用済みのケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセントを混練させ混練押出機で押し出す場合に、ダイヘッドのノズル孔が内側から外に向かって徐々に狭くなるように変化させる再生樹脂の原材料のダイヘッド。
【請求項4】
請求項3のダイヘッドを用いて、破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維が40〜70パーセント含む使用済みのケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセントを混練させ混練押出機で押し出す再生樹脂の原材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルするために回収されたポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)またはポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂が混合したプラスチック(熱可塑性樹脂)と、ケナフ繊維とポリプロピレン樹脂を結合して板状に成形された後に廃棄されるケナフ成形品やケナフ成形品の端材(以下、ケナフ廃材と略す。)を、混練して再生樹脂の原材料にしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般社団法人プラスチック循環利用協会発行の「プラスチックリサイクルの基礎知識2016」(以下、単に「基礎知識2016」と略す。)によれば、廃プラスチックの総排出量は、横這い状態とは言え900万トン以上が排出されている(基礎知識2016の5頁)。
【0003】
また、「基礎知識2016」によれば、2015年度のプラスチックの生産量における樹脂別生産比率では、ポリエチレン樹脂が24.1パーセント、ポリプロピレン樹脂が23.1パーセントと、半分近くがポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂であった(11頁)。生産量の半分近くがポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂であれば、当然、廃プラスチックの総排出量の半分程度は、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂が占めていることになり、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂をリサイクルすることは非常に重要なものであった。
【0004】
プラスチックをリサイクルする場合には、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルとサーマルリサイクルと言う方法が行われているが、プラスチックの再利用であり、環境負荷が少なくなると考えられるマテリアルリサイクルによる方法が好ましいと考えられている。
【0005】
このマテリアルリサイクルを行う場合には、廃棄された様々な種類のプラスチックを回収して、同一の種類毎にプラスチックを選別すれば、より良質のプラスチック原材料として再利用が可能となる。しかしながら、選別の手段として行われている水を用いて水より重いものと軽いものを分ける比重選別については、ポリエチレン樹脂の比重が0.92前後、ポリプロピレン樹脂の比重が0.9前後と、両方ともに、比重が似通った比重であることと、両方とも水に浮くため、比重選別を使用することができなかった。
【0006】
このためポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂の選別については、目視や手触り等の人の感覚を用いて選別すると言う手間の掛かる方法によらず、自動化可能な簡単な手段によってポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を分別することは難しいと言う問題があった。
【0007】
なお、本願の出願人の一人においても、特許文献1に示す様に、混合廃プラスチックをマテリアルリサイクルするための方法を開示している。そして、特許文献1においても、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂について、混合した状態で再生処理するという方法であった。
【0008】
そして、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂が分別されてない状態でマテリアルリサイクルする場合には、どうしても、成形された再生プラスチック製品の強度はバージン材(未使用の原材料)に比較して強度が不足すると言う問題があった。
【0009】
近年の地球温暖化の問題から、短い育成期間で成長して二酸化炭素を吸収する植物であるケナフの繊維をプラスチックに結合させて、石油の使用量を減らすことが考えられている。そして自動車業界等においては、既にケナフ繊維とポリプロピレン樹脂とを結合させて所望する形状に成形された内装材が使用されている。
【0010】
この内装材を製品にする場合には、平板状の材料を加熱溶融し所望の型枠に流し込んで成型したのち、周辺の不要部分をトリミングすることが必要であった。そして、トリミングされた端材について、大量に発生しても廃棄するしかなかった。また、当然今後この複合材が多く流通する様になれば、ケナフ繊維とポリプロピレン樹脂の複合材の廃棄材も多量に発生することになり、ケナフ繊維とポリプロピレン樹脂の複合材の端材や廃棄材の再利用、特にはマテリアルリサイクルとして再利用することを考える必要があった。
【0011】
廃棄プラスチックをマテリアルリサイクルする場合には、プラスチック製品を製造する企業で直接にマテリアルリサイクルを行う手段も考えられるが、設備やマテリアルリサイクル後の製品の品質の安定性を考慮すれば、回収したプラスチックを粒状の原材料、所謂ペレットに加工して、プラスチック製品を製造する企業に供給する方法が、ペレット加工企業とプラスチック製品を製造する企業の両者にとって利点があるものであった。
【0012】
廃棄プラスチックをペレットに加工する場合についても、通常の熱可塑性プラスチックの押出成形によりペレットを造粒する必要がある。そして、熱可塑性プラスチック(溶融樹脂)に用いられる押出成形用ダイ(ダイヘッド)は、特許文献2の
図1〜
図5に示されている様に、ペレットの成形形状を安定させるためや押出成形用ダイの加工が容易であることから、熱可塑性プラスチックが押出成形用ダイの外部に射出する末端のノズルの部分においては、一定の長さにおいてノズルの孔の径を変化させず直線的にさせる箇所(ストレート部)、特許文献2の
図1の記載によれば整流部が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013−158926号公報
【特許文献2】特開2007−320056号公報
【特許文献3】特開2013−202988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3の従来の複合材の再生処理方法及び再生処理装置においては、ケナフ繊維(天然繊維)の長さについては、例えば、明細書の段落[0008]において、「上記構成の複合材の再生処理方法においては、長さが10〜50mmとなるまで複合材が繰り返し裁断される。この10〜50mmという長さは、再生される複合材の強度低下を防止するために設定されるものである。また、天然繊維はこの複合材の中に含まれることから、裁断後の長さは複合材が裁断される長さに依存している。」と記載されている様に、ケナフ繊維(天然繊維)の繊維の長さの要件に関しては、複合材の裁断の長さによってのみ決まるものとして説明されていた。しかしながら、ケナフ繊維(天然繊維)の繊維は、押出成形機の内部において、破断されると言う問題があった。
【0015】
(ケナフ繊維の長さ)
なお、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂の混合物にケナフ繊維を混練させる場合には、ケナフ繊維の量を増加させれば、強度は増加する。しかしながら、ケナフ繊維を増加させると押出成型機内部における流動性が悪くなるという問題がある。そのため、複合材の強度を増加させるには、複合材に含まれるケナフ繊維の量を増加させることなく、ケナフ繊維の長さを所定以上にすることが重用であった。
【0016】
また、押出成形機において、熱可塑性プラスチックだけを混練する場合とは異なり、ケナフ繊維を混練すると、押出成型機内部の温度を上げ過ぎると、天然繊維であるケナフ繊維が炭化し、複合材の強度が低下するおそれがあると言う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0018】
第1発明の再生樹脂の原材料は、破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維を40〜70パーセント含まれている使用済み(成形済みの場合も含まれる。以下同じ。)のケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセント混練して押し出した後に、3〜5mmの長さのケナフ繊維が含まれている。
第2発明の再生樹脂の原材料は、第2発明において、前記再生樹脂材料の形状を直径の長さの3〜5倍の長さの円筒形としている。
第3発明の再生樹脂の原材料のダイヘッドは、破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維が40〜70パーセント含む使用済みのケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセントを混練させ混練押出機で押し出す場合に、前記ダイヘッドのノズル孔が内側から外に向かって徐々に狭くなるように変化させている。
第4発明の再生樹脂の原材料の製造方法は、第3発明のダイヘッドを用いて、破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維が40〜70パーセント含む使用済みのケナフ廃材を、使用済みのポリプロピレン、使用済みのポリエチレン又は使用済みのポリプロピレンと使用済みのポリエチレンの混合樹脂に、10〜50パーセントを混練させ混練押出機で押し出している。
【発明の効果】
【0019】
以上のような、技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
第1発明によれば、ケナフ繊維の量を流動性が悪くならない程度に混練させて同時に強度が向上した再生樹脂の原材料になる。
第2発明によれば、第1発明を利用し、ケナフ繊維の割合を増加させることなく、再生樹脂の原材料の強度を増加させることができる再生樹脂のペレットになる。
第3発明によれば、ケナフ繊維の割合を増加させることなく、再生樹脂の原材料の強度を増加させることが可能なダイヘッドを提供できる
第4発明によれば、第3発明を利用し、ケナフ繊維の割合を増加させることなく、再生樹脂の原材料の強度を増加させることができる再生樹脂の原材料の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施形態を説明するための、再生樹脂の原材料の製造方法の概略を示した構成図(ブロック図)である。
【
図2】本発明に係る実施形態を説明するための、混練押出機及びこれを中心とした付属装置についての概念図である。
【
図3】本発明に係る実施形態を説明するための、ダイヘッドにおいて紐状の再生樹脂の原材料が出る側から見た図である。
【
図6】本発明に係る実施形態を説明するための、比較例2の再生樹脂の原材料から、ケナフ繊維を取り出した場合の顕微鏡写真である。
【
図7】本発明に係る実施形態における再生樹脂の原材料から、ケナフ繊維を取り出した場合の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる再生樹脂の原材料の製造方法及び製造装置について
図1乃至
図7に基づき説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の製造方法の概略について、
図1を用いて説明する。回収された廃プラスチックについては、前述の様に様々な種類のプラスチックが廃棄回収されており、これを破砕機11で破砕した後に、選別機12で、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂に選別し、その後、ペレット製造装置13により、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂の混合したペレット(以下、「PE・PPペレット6」と省略する。)としている。なお、より具体的な方法の一例としては、本願の出願人の一人において特許文献1に開示している方法による方法である。なお、選別機12については、前述の様にポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂が水に浮くことを利用した比重選別による方法で選別している。
【0023】
回収されたケナフ廃材は、ケナフ材破砕機16で破砕されている。ケナフ材破砕機16については、ケナフ材破砕機16の破砕片の大きさを一定の大きさ、本実施形態においては、約30mm×約30mm〜約50mm×約50mm程度の大きさにするために、一軸又は二軸破砕機を用いている。一軸又は二軸破砕機により、前述の大きさ程度に破砕した後、所定の網目、例えば、40mm×40mmの網目のスクリーン17を、1度又は複数回通過させることで、ケナフ廃材の破砕片の大きさを揃えている。なお、この大きさが揃えられたケナフ廃材の破砕片を以下、「ケナフ片7」と省略して呼ぶ。なお、ケナフ片7には破砕後長さ30〜50mmのケナフ繊維が40〜70パーセント含まれている。
【0024】
前述の様に製造されたPE・PPペレット6とケナフ片7は、混練押出機30にペレットコンベアー14とケナフコンベアー18で送られる。PE・PPペレット6を混練押出機30に送るペレットコンベアー14と、ケナフ片7を混練押出機30に送るケナフコンベアー18については、本実施形態については、スクリュー方式(シングルフライトスクリュー方式)のコンベアーとしているが、ベルト式のコンベアーによっても実施可能である。
【0025】
ペレットコンベアー14で送られてきた、PE・PPペレット6は、ペレットホッパー21で受けた後、ペレットフィーダー22でPE・PPペレット6を途切れない状態で、混練押出機30に搬送している。また、ケナフコンベアー18で送られた、ケナフ片7は、ケナフホッパー26で受けた後、ケナフフィーダー27でケナフ片7を途切れない状態で、混練押出機30に搬送している。混練押出機30の内部でPE・PPペレット6とケナフ片7は、加熱および混練されて、ダイヘッド60から紐状(ストランド)の再生樹脂(以下、「紐状再生樹脂8」と呼ぶ。)の状態で押し出される。この混練押出機30にダイヘッド60を接続したものが押出成形機になる。
【0026】
)
なお、ペレットホッパー21、ペレットフィーダー22、ケナフホッパー26、ケナフフィーダー27、ダイヘッド60が取り付けられた混練押出機30については、説明の便宜上、再生樹脂製造システム20と呼び、
図2においてさらに説明する。再生樹脂製造システム20を経た紐状再生樹脂8は、その後ペレタイザー70で切断してケナフ繊維が混練した複合材の再生樹脂の原材料のペレット(以下、「原材料ペレット9」と呼ぶ。)の状態に加工される。
【0027】
再生樹脂製造システム20およびペレタイザー70について、
図2を用いてさらに詳しく説明する。
図2は再生樹脂製造システム20を構成する装置やペレタイザー70について、その概要が分かる様に、内部の状態が分かる断面図的な図示方法や、不要な部材を省略し主要な構成部品のみを図示したシステムの概念図である。
【0028】
PE・PPペレット6は、ペレットホッパー21に投入されると、スクリュー23を電動機24で回転させてPE・PPペレット6を移送させる方式の、ペレットフィーダー22で、混練押出機30の上流側に送られる。ケナフ片7は、ケナフホッパー26に投入されると、コイルスクリュー28を電動機29で回転させてケナフ片7を移送させるケナフフィーダー27で混練押出機30の内部の移送範囲の略中間の位置に送られる。ケナフホッパー26とケナフフィーダー27の接続部には、ケナフ片7によるコイルスクリュー28への負荷が増大しない様に、ケナフ片7がコイルスクリュー28に安定して流れる制御板26aが、コイルスクリュー28の軸に対して60度の角度になる様にケナフホッパー26側に取り付けられている。ケナフ片7のフィダー装置について、コイルスクリュー28のフィダー装置としているのはケナフ片7がケナフフィーダー27の内部で破砕され難くするためである。
【0029】
ペレットフィーダー22とケナフフィーダー27の送出側は、混練押出機30に夫々接続されており、ペレットフィーダー22でPE・PPペレット6が、ケナフフィーダー27でケナフ片7が、混練押出機30の内部に送られる。混練押出機30の内部には、下流側に向かって、徐々に移送空間の容積が少なくなる様に作られたスクリュー31が設けられている。また、スクリュー31は電動機32により混練押出機30の内部で回転して、PE・PPペレット6とケナフ片7をダイヘッド60に向かって押し出している。
【0030】
混練押出機30とダイヘッド60には、温度センサーによって所定の温度の調整可能なヒーターが取り付けられている。なお、ヒーターは、混練押出機30とダイヘッド60の周囲を巻く様にして取り付けられており、混練押出機30とダイヘッド60を周囲から加熱している。温度センサーとヒーターを一体として組み合わせたものについては、混練押出機30の上流側より、1の位置のヒーターセット41、2の位置のヒーターセット42、3の位置のヒーターセット43、4の位置のヒーターセット44、5の位置のヒーターセット45、6の位置のヒーターセット46、7の位置のヒーターセット47、8の位置のヒーターセット48、9の位置のヒーターセット49、Aの位置のヒーターセット50およびダイヘッド60に取り付けられているDの位置のヒーターセット51の計11組である。
【0031】
この各位置におけるヒーターの設定温度の一例について表1を用いて説明する。
【0033】
表1に示す様に、1の位置のヒーターセット41から6の位置のヒーターセット46の混練押出機30の内部でPE・PPペレット6だけが移動する個所については、180℃に設定している。7の位置のヒーターセット47のケナフ片7が混練押出機30の内部に送り込まれる個所については、180℃に設定している。8の位置のヒーターセット48からAの位置のヒーターセット50のPE・PPペレット6とケナフ片7が混練しながら移動する個所については、150℃に設定している。最後のダイヘッド60のDの位置のヒーターセット51の個所については、160℃に設定している。以上の様に温度を設定することにより、ケナフ片7の繊維が炭化することを防止し可能な設定になっている。これにより、材料強度の低下することを防止することができる。
【0034】
再生樹脂製造システム20から紐状(ストランド)に押し出された紐状再生樹脂8については、ペレタイザー70で所定の長さで切断されている。ペレタイザー70は、ローラー状の長さ200mm、直径120mmの回転体の周囲に回転軸と平行に12枚の刃(以下、このローラー状の刃を一体として「回転刃71」と呼ぶ。)をインバーター式の電動機72で回転させている。そして、回転刃71は横長であることで、7本並列な状態で押し出されて来る紐状再生樹脂8を同時に切断している。
【0035】
なお、紐状再生樹脂8を切断してケナフ繊維が混練した複合材の再生樹脂の原材料ペレット9に切断する長さについては、通常のペレットが5mm程度であるが、本実施形態においては、9〜15mm程度の長さにしている。よって後述するノズル孔62の最小直径が3mmであるので、直径の長さの3〜5倍の長さに設定されている。また、ペレットの長さを通常よりも長くしていることで、通常の回転刃71に比較して、刃の枚数を少なくし、刃と刃の間に設けた谷(溝)の深さを23mmと深くしている。長く切断したペレットが回転刃71の刃と刃の間に設けた谷(溝)の部分に引っ掛からないようにするためである。また、ローラー状の回転刃71の回転については、切断寸法を可変にするために、インバーター式の電動機72により回転刃71の回転数が可変となる構成となっている。
【0036】
ダイヘッド60の形状の一例について、
図3〜
図5を用いて説明する。
図3はダイヘッド60の紐状再生樹脂8が出る側から見た図であり、
図4は
図3におけるA−A断面図であり、
図5は
図3におけるB−B断面図である。
【0037】
図3において、ダイヘッド60の本体61の外形は、混練押出機30の送出側に合わせて略円盤状に形成されている。本体61の中心線に沿ってピッチ19mmの等間隔に7個のノズル孔62が設けられている(
図4についても参照。)。線状に7個のノズル孔62が並んだ中心線と並行かつ両側に、7個のノズル孔62が設けられた外側面63を若干突出させる様に、段64が設けられている(
図5についても参照。)。また、段64と並行かつ外側に向かって両側に、等間隔で計8個の混練押出機30へ8個の六角レンチ穴ボルトで締結・定着させるためにボルトの頭部分が本体61に隠れる様に内部の径が途中で変化させているボルト孔65が設けられている。
【0038】
ダイヘッド60の側面で
図3における上側には、ダイヘッド60の内部圧力を測定する圧力計を取り付けるための圧力計用穴66と、Dの位置のヒーターセット51の温度センサー用穴67が設けられている(
図5についても参照。)。
【0039】
ノズル孔62の孔加工の一例について、さらに詳しく
図4および
図5を用いて説明する。ノズル孔62は、ダイヘッド60の内側面68においては直径30mmの孔であり、7個のノズル孔62が設けられた外側面63においては、直径30mmの孔と中心点を同一にして直径3mmの孔に滑らかに変化させて加工されている。内側面68の直径30mmの孔の部分については3〜5mmの間孔径が変化しない部分を設けているが、外側面63に向かって径を縮小する線との変曲点は発生しない様に、直径30mmの球の外形と近似させた曲面に加工して、滑らかに変化させている(
図4を参照。)。なお、7個のノズル孔62の変化する角度は、45度になっている。
【0040】
7個のノズル孔62についてはピッチ19mmの等間隔であるので、
図4においては、内側面68よりもさらに本体61の内部側の外側面63に近い箇所に加工面68aが形成されている。加工面68aについては、直径15mmの球の外形と近似させた曲面に加工して、滑らかに変化させている。なお、7個のノズル孔62が設けられた外側面63と内側面68とで形成される本体61の厚みは39mmであり、7個のノズル孔62が設けられた外側面63と加工面68aとで形成される厚みは約8mmである。
【0041】
以上の製造方法及び製造装置で製造した場合の再生樹脂の原材料の一例について表2および
図6、
図7を用いて説明する。表2は実施形態の再生樹脂の原材料の物性について、記載している。
【0042】
なお、比較例1については、本実施形態と同一のPE・PPペレット6だけを用いた場合の物性である。比較例2については、本実施形態のダイヘッド60ではない従来の末端のノズルの部分において、一定の長さにおいてノズルの孔の径を変化させず直線的にさせる箇所(ストレート部)が設けられたダイヘッド60により製造した再生樹脂の原材料である。
【0043】
図6は比較例2の再生樹脂の原材料から、ケナフ繊維を取り出した場合の顕微鏡写真である。また、
図7は実施形態の再生樹脂の原材料から、ケナフ繊維を取り出した場合の顕微鏡写真である。この顕微鏡写真で比較する様に明らかに実施形態の再生樹脂の原材料においては、ケナフ繊維の長さが4mm以上のものを多く含んでおり、その割合は、ケナフ繊維全体の割合において、40〜60パーセント含ませることが可能であった。比較例2においては、ケナフ繊維の長さが4mm以上の割合が、10パーセント以下であった。
なお、
図6または
図7の左下に図示されている目盛りは、0〜2000マイクロメートル(2mm)を示している。
【0044】
ケナフ繊維の取り出し方法については、本願の出願人の一人が開示している特開2012−207956号公報で開示された発明の名称「加熱式ソックスレー抽出装置と、これに用いられた円筒濾紙内の残渣に含まれる微量成分を抽出する簡易抽出装置と、加熱式ソックスレー抽出装置及び簡易抽出装置を用いたポリオレフィンを主成分として含む溶融混練した複合プラスチックの分析方法」により、樹脂と繊維を分離したのち、電子顕微鏡により、繊維を測定している。
【0045】
表2を用いて、発明を実施するための形態で説明した製造方法で製造した実施形態の再生樹脂の原材料の物性について説明する。
【0047】
衝撃強度については、ケナフ繊維を混練させているため実施形態に係る試験片については低下するが、樹脂の物性としての曲げ試験や引張の試験の材料強度に関する部分については、比較例1の試験片はもちろん、比較例2の試験片に対しても大きく向上している。また、材料の流動性(MFI試験)については、余り低下してはいないので、再生樹脂の原材料としてのペレットとして使用することに対しても適している。
【0048】
なお、表2の各試験値については、以下のJIS規格に規定される試験方法に従って実施した。
(a)曲げ試験
JIS K 7171に準拠して実施した。
(b)引張試験
JIS K 7162に準拠し1BA形小型試験片で試験を行った。
(c)シャルピー衝撃試験
JIS K 7111−1に準拠し試験片タイプ1でノッチ付き、エッジワイズで実施
した。
(d)MFI メルトフローインデックス試験
JIS K 6760に規定された試験機械を用いて、JIS K 7210に規定する試験方法に準拠して実施した。
【0049】
以上、本発明について、発明を実施するための形態に基づき説明してきたが、本発明は何らこれらの発明を実施するための形態の構成に限定するものではない。例えば、PE・PPペレット6については、その他の熱可塑性樹脂についても実施可能であり、ケナフ繊維については、セルロースを主成分とする植物性であれば特に限定されず、麻、竹、綿、バナナの葉、シュロの皮等が用いられる場合についても実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
請求項1乃至請求項4に記載された発明は、リサイクルするために回収された使用済みのPE・PPペレットと使用済みのケナフ廃材を、混練して再生樹脂の原材料の製品として、供給するものであるから、プラスチックリサイクルの一環として産業上に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
6:PE・PPペレット
7:ケナフ片
8:紐状再生樹脂
9:原材料ペレット
11:破砕機
12:選別機
13:ペレット製造装置
14:ペレットコンベアー
16:ケナフ材破砕機
17:スクリーン
18:ケナフコンベアー
20:再生樹脂製造システム
21:ペレットホッパー
22:ペレットフィーダー
23、31:スクリュー
24、29、32:電動機
26:ケナフホッパー
26a:制御板
27:ケナフフィーダー
28:コイルスクリュー
30:混練押出機
41〜51:ヒーターセット
60:ダイヘッド
61:本体
62:ノズル孔
63:外側面
64:段
65:ボルト孔
66:圧力計用穴
67:温度センサー用穴
68:内側面
68a:加工面
70:ペレタイザー
71:回転刃
72:インバーター式の電動機