(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-159076(P2018-159076A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】優れた耐応力亀裂性を有するポリエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20180914BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20180914BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20180914BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20180914BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/06
C08F4/654
C08F210/02
C08F2/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2018-92721(P2018-92721)
(22)【出願日】2018年5月14日
(62)【分割の表示】特願2017-526509(P2017-526509)の分割
【原出願日】2015年10月27日
(31)【優先権主張番号】62/081,411
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ゲルド・マンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ローター・マークツィンク
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルドゥス・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・シュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヤコボス・ヴィットリアス
(72)【発明者】
【氏名】ハリラオス・マブリディス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB05W
4J002BB05X
4J002GF00
4J002GG02
4J002GL00
4J002GT00
4J011AA05
4J011AB02
4J011AB04
4J011AB06
4J011AB09
4J011AC03
4J011BA01
4J011BA03
4J011BB01
4J011BB02
4J011BB07
4J011BB16
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100AA16Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA14
4J100DA15
4J100DA42
4J100DA43
4J100DA52
4J100FA09
4J100FA22
4J100FA34
4J100FA41
4J100FA47
4J100JA67
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC05
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128CA16A
4J128CB23A
4J128DA02
4J128EA02
4J128EB02
4J128EC01
4J128ED01
4J128ED03
4J128ED04
4J128ED09
4J128EF01
4J128EF03
4J128EF04
4J128EF05
4J128EF06
4J128FA04
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】押出コーティングに適した低密度ポリエチレンの提供。
【解決手段】一つ以上のエチレン共重合体で構成されるか、又は一つ以上のエチレン共重合体を含み、エチレン共重合体に存在する共単量体がブテン−1及びヘキセン−1から選択されるいずれか一つ以上であり、A)0.945g/cm
3以上の密度及び1〜25g/10分のISO1133に従った2.16kg荷重下の190℃における溶融流れ指数MIEを有する40〜60質量%のエチレン単独重合体または共重合体;及びB)A)のMIE値より低いMIE値を有する40〜60質量%のエチレン共重合体、を含むポリエチレン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のエチレン共重合体で構成されるか、または一つ以上のエチレン共重合体を含み、エチレン共重合体に存在する共単量体がブテン−1及びヘキセン−1から選択されるいずれか一つ以上であり、
1)23℃でISO 1183に従って測定した、0.930〜0.945g/cm3の密度;
2)MIFが21.60kgの荷重下の190℃における溶融流れ指数であり、MIPが5kgの荷重下の190℃における溶融流れ指数であり、いずれもISO1133に従って測定された時、10〜30未満のMIF/MIP比;
3)3〜25g/10分のMIF;
4)GPC−MALLS(多角度光散乱法と結合したゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した、1,500,000g/mol以上のMz;
5)1,000,000g/molの分子量において0.55以下の長鎖分岐指数LCBI;
を有し、前記LCBIはGPC−MALLSで測定した、測定平均二乗回転半径Rg対同一分子量を有する線形PEに対する平均二乗回転半径の比であり、
A)0.945g/cm3以上の密度及び1〜25g/10分のISO1133に従った2.16kg荷重下の190℃における溶融流れ指数MIEを有する40〜60質量%のエチレン単独重合体または共重合体;及び
B)A)のMIE値より低いMIE値を有する40〜60質量%のエチレン共重合体、
を含む、
ポリエチレン組成物。
【請求項2】
300,000g/mol以上のMw値を有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
チーグラーナッタ(Ziegler−Natta)重合触媒を用いて得られる、請求項1または2に記載のポリエチレン組成物。
【請求項4】
上記チーグラーナッタ重合触媒が下記a)〜c)、
a)MgCl2上に担持されたTi化合物を含む固体触媒成分であって、前記成分が130〜150℃の温度において選択的に非活性媒質の存在下で、チタニウム化合物をMgCl2、または前駆体Mg化合物と接触させて得られた個体触媒成分;
b)有機−Al化合物;および任意に
c)外部電子供与体化合物;
の反応生成物を含む請求項3に記載のポリエチレン組成物。
【請求項5】
下記のさらなる特徴、
−20〜35のMw/Mn値;
−MIP:0.05〜1.5g/10分;
−0.9〜2の0.5s−1、T=150℃における伸長硬化;
−0.9〜2.5の0.1s−1、T=150℃における伸長硬化;
−組成物の総質量に対して3〜8質量%の共単量体含有量、
のうち、少なくとも一つを有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項6】
下記A)及びB)、
A)0.945g/cm3以上の密度及び0.8〜10g/10分のISO1133に従った2.16kg荷重下の190℃における溶融流れ指数MIEを有する40〜60質量%のエチレン単独共重合体または共重合体;及び
B)A)のMIE値より低いMIE値を有する40〜60質量%のエチレン共重合体、
を含む、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項7】
請求項1のポリエチレン組成物を含む、製造された物品。
【請求項8】
単層または多層メンブレンの形態であり、少なくとも一つの層が請求項1のポリエチレン組成物を含む、請求項7に記載の製造された物品。
【請求項9】
全ての重合工程がMgCl2上に担持されたチーグラーナッタ重合触媒の存在下で行なわれる、請求項1に記載のポリエチレン組成物の製造方法。
【請求項10】
下記工程、
a)水素の存在下で、気相反応器においてエチレンを選択的に一つ以上の共単量体と共に、重合する工程;
b)工程a)より少ない量の水素の存在下で、他の気相反応器からエチレンと一つ以上の共単量体と共重合する工程;
を任意の相互順序で含み、
前記気相反応器のうち少なくとも一つにおいて、成長する重合体粒子の高速流動化または輸送条件下に、第1重合ゾーンを通じて上向きに流れ、上記上昇部を離れた後、第2重合ゾーンに入り、上記第2重合ゾーンを通じてこれら重力の作用下に、下向きに流れ、前記第2重合ゾーンを離れた後、上記第1重合ゾーン内に再び投入することによって、前記の二つの重合ゾーン間に重合体の循環を確立する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、0.930〜0.945g/cm
3の密度及び優れた耐環境応力亀裂性を有するポリエチレン組成物を提供する。このようなポリエチレン組成物は膜、特に、ジオメンブレン(geomembrane)の製造に用いることができる。
【0002】
ジオメンブレンは一般に廃棄物の格納、採掘の用途または水の格納及び運搬に用いられる。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレン材料はジオメンブレンを製造するのに用いられることが知られている。
【0004】
実際、中密度ないし高密度のポリエチレン材料は化学慣性、柔軟性及び加工性における適切なバランスを特徴とする。
【0005】
ジオメンブレンに用いるためのもう一つの重要な要件として、 耐環境応力亀裂性(Environmental Stress Cracking Resistance, ESCR)がある。
【0006】
しかし、前記ポリエチレン物質はESCRと加工性との間の優れたバランスを得ることが非常に困難である。
【0007】
実際、特にジオメンブレンを吹込みフィルムの圧縮によって製造する場合、良好な加工性を達成させるためには高度な溶融強度が必要とされるが、溶融強度の増加は一般にESCRの減少と関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下では、組成物の分子量及び分子構造を適宜選択することによって溶融した重合体の伸長硬化の増加に起因する溶融強度と、ESCRの均整改善が達成されることが現在明らかになった。
【0009】
本開では、下記の特徴を有するポリエチレン組成物を提供する。
1)23℃でISO 1183に従って測定した、0.930〜0.945 g/cm
3、好ましくは0.935〜0.942の密度;
2)MIFが、21.60kgの荷重下の190℃での溶融流れ指数であって、MIPが5gの荷重下の190℃における溶融流れ指数であり、いずれもISO 1133に従って測定した時、10〜30未満、特に15〜28のMIF/MIPの比;
3)3〜25g/10分、好ましくは5〜20g/10分、さらに好ましくは5〜18g/10分のMIF;
4)GPC−MALLS(多角度光散乱法に結合されたゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した、1,500,000g/mol以上、好ましくは2,000,000g/mol以上のMz;
5)0.55以下、好ましくは0.50以下の長鎖分岐指数のLCBI;
ここで、LCBIは1,000,000g/molの分子量においてGPC−MALLSにより測定された、測定平均二乗回転半径Rg対、同一分子量を有する線形PEに対する平均二乗回転半径半径の比である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は以下の詳細な説明、添付の特許請求範囲及び添付の図面を参照することによりさらによく理解できることであろう。
【
図1】本明細書に記載された様々な実施形態のポリエチレン組成物を製造するために、本明細書に開示のエチレン重合方法のさまざまな実施形態に従って使用するために適した、2つの直列で連結された気相反応器の簡略な工程のフローチャートの例示的実施形態である。
【0011】
様々な実施形態は、図面に示された配置及び手段により限定されないことを理解すべきである。
【0012】
「ポリエチレン組成物」という表現は、代案として、単一のエチレン重合体及びエチレン重合体組成物、特に、好ましく異なる分子量を有する二つ以上のエチレン重合体成分の組成物をいずれも含むものとして意図され、これらの組成物も関連分野において「バイモーダル(bimodal)」または「マルチモーダル(multimodal)」重合体と称される。
【0013】
典型的には、本発明のポリエチレン組成物は1つ以上のエチレン共重合体で構成されるか、または1つ以上のエチレン共重合体を含んでいる。
【0014】
前記で定義された特徴1)ないし5)を含む、本明細書で定義された特徴は、前記エチレン重合体またはエチレン重合体組成物に関するものである。技術分野で通常使用される添加剤のような他の成分の添加は、前記特徴のうち1つ以上を変更してもよい。
【0015】
IMF/MIPの比は、分子量分布のレオロジー尺度(rheological measure)を提供する。
【0016】
分子量分布の他の尺度は、Mw
_MALLS/M
_GPCの比によって提供され、ここで、Mw
_MALLSは実施例で説明されているように、GPCに結合されたMALLSにより測定した質量平均物質量であり、Mn_
GPCはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した数平均物質量である。
【0017】
本発明のポリエチレン組成物のMw
_MALLS/M
_GPC値は20〜35の範囲が好ましい。
【0018】
Mw
_MALLS値は好ましくは300,000g/mol以上、さらに好ましくは350,000以上、特に300,000g/molまたは350,000〜600,000g/molである。
【0019】
本発明のポリエチレン組成物のMzの具体的で好ましい範囲は1,500,000〜3,500,000g/mol、さらに好ましくは2,000,000〜3,500,000g/molである。
【0020】
また、本発明のポリエチレン組成物は、好ましくは下記のさらなる特徴の少なくとも一つを有する。
−MIP:0.05〜1.5g/10分;
−0.9以上、特に0.9〜2の0.5s
−1、T=150℃における伸長硬化;
−0.9以上、特に0.9〜2.5の0.1s
−1、T=150℃における伸長硬化;
−組成物の総質量に対して8質量%以下、特に3〜8質量%の共単量体含有量。
【0021】
エチレン共重合体に存在する共単量体または共単量体らは一般的に、式CH
2=CHRであって、ここでRは炭素数1〜10の線形または分岐型のアルキルラジカルであるオレフィンから選択される。
【0022】
具体的な例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1及びデセン−1である。特に好ましい共単量体はヘキセン−1である。
【0023】
本発明のポリエチレン組成物の具体的で好ましいLCBIの範囲は0.55〜0.30、さらに好ましくは0.50〜0.30である。
【0024】
特に、好ましい実施形態において、本発明の組成物は下記を含む。
A) 0.945g/cm
3以上の密度及びISO 1133に従った2.16kgの荷重下の190℃において0.8〜10g/10分の溶融流れ指数MIEを有する40〜60質量%のエチレン単独重合体または共重合体(共重合体が好ましい);及び
B) A)のMIE値より低いMIE値、好ましくは0.5g/10分未満のMIF値を有する40〜60質量%のエチレン共重合体。
【0025】
前記百分率の量はA)+B)の質量全体に対して与えられる。
【0026】
前述したとおり、本発明のポリエチレン組成物はメンブレン、特に、ジオメンブレンの用途に有利に使用することができる。
【0027】
実際には、これはFNCT 80℃/4 MPaにより測定した、好ましくは800h以上、さらに好ましくは1,000h以上、特に800または1,000hないし2,500hのESCR値を特徴とする。
【0028】
また、本発明のポリエチレン組成物は、圧力振動及び流れの不安定性を受けずに驚くべきほどの高い値のぜん断速度(shear rate)で溶融加工することができる。
【0029】
メンブレンは単層または多層であってもよく、少なくとも一つの層に本発明のポリエチレン組成物を含む。
【0030】
前記メンブレン、特にジオメンブレンは当該分野に周知の装置及び方法、特にフラット押出、吹き込み押出(blown extrusion)及びラミネーションによって製造することができる。
【0031】
共押出によって多層構造を製造することができ、共押出においては、単一の層を構成する重合体材料を異なる押出機に供給し、別の層の上部に一つの層を共押出したり、または個別に単一の層を押出して熱によって前記層らを共に積層することによって多層構造を得る。
【0032】
原則的には、使用される重合方法及び触媒の種類に必要な制限は存在しないことが知られているが、本発明のポリエチレン組成物はチーグラーナッタ(Ziegler-Natta)触媒の存在下で気相重合の方法により製造できることが明らかになっている。
【0033】
チーグラーナッタ触媒は元素周期律表の第1族、第2族または第13族の有機金属化合物と元素周期律表の4族〜10族の遷移金属化合物との反応生産物を含む(新しい表記法)。特に、遷移金属化合物は、Ti、 V、Zr、Cr及びHfの化合物の中から選択することができ、MGCL
2上に担持されることが好ましい。
【0034】
特に好ましい触媒は、前記元素周期律表の1族、2族または13族の有機金属化合物とMGCL
2上に担持されたTi化合物を含む固体触媒成分と反応生成物を含む。
【0035】
好ましい有機金属化合物は有機−Al化合物である。
【0036】
従って、好ましい実施形態において、本発明のポリエチレン組成物はチーグラーナッタ触媒、より好ましくはMgCl
2上に担持されたチーグラーナッタ触媒、さらにより好ましくは下記の反応生成物を含むチーグラーナッタ触媒を用いることによって得ることができる;
a)MgCl
2 上に担持されたTi化合物を含む固体触媒成分;
b)有機−Al化合物;及び任意に、
c)外部電子供与化合物ED
ext.
【0037】
適したチタニウム化合物の中にはテトラハライドまたは式TiX
n(OR
1)
4-nの化合物があり、式中、0≦n≦3であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、R
1は C
1−C
10炭化水素基である。四塩化チタンが好ましい化合物である。
【0038】
前記固体触媒成分において、仮に少量のさらなる担体を用いることができるとしても、MgCl
2が基本的な支持体である。 MgCl
2は、それ自体として使用されてもよく、ハロゲン化化合物との反応によってMgCl
2で置換できる前駆体として使用されるMg化合物から得ることができる。チーグラーナッタ触媒の支持体として特に文献に広く知られている活性型 MgCl
2の使用が特に好ましい。米国特許第4,298,718号及び米国特許第4,495,338号はチーグラーナッタ触媒作用においてこれらの化合物の使用を最初に記載した。これらの特許からオリフィンの重合のための触媒成分で支持体または共支持体として使用された活性型マグネシウムジハライドがX線スペクトルにより特徴づけられ、このスペクトルにおいて非活性ハライドのスペクトルのASTMカードリファレンスにおいて現れる最も強い回折線が、強度が減少して広がることが知られている。活性型の好ましいマグネシウムジハライドのX線スペクトルにおいて、上記の最も強い線が強度が減少し、最大強度が最も強い線のものと比較してさらに低い角度に変位するハロで置換される。
【0039】
本発明のポリエチレン組成物の製造に特に適する触媒は、固体触媒成分が、a)130〜150℃、特に135〜150℃の温度において選択的に非活性媒体の存在下でチタニウム化合物をMgCl
2、または前駆体Mg化合物と接触させて得られる触媒である。
【0040】
チタニウム化合物との接触は1回以上行なうことができる。また、電子供与体化合物の存在下で行なうことができる。電子供与体化合物の例は、外部電子供与体化合物ED
extに対し以下に記載されたものと同様である。
【0041】
一般にチタニウム化合物との接触は、総時間長0.5〜2時間の間上記温度で行なわれる。
【0042】
上記で言及したように、MgCl
2の前駆体を出発必須Mg化学物として使用することができる。これは、例えば式MgR'
2のMg化合物の中から選択してもよく、式中、R'基は独立して任意に置換されたC1-C20炭化水素基であり、OR基、OCOR基または塩素であってもよく、ここで、Rは任意に置換されたC1−C20炭化水素基であり、ただしR'基は同時に塩素ではない。また、MgCl
2と適したルイス塩基間のルイス付加物が前駆体として適している。特に好ましい部類はMgCl
2 (R”OH)
m付加物で構成され、ここでR”基はC1-C20炭化水素基、好ましくはC1-C10アルキル基であり、mは0.1〜6、好ましくは0.5〜3、さらに好ましくは0.5〜20である。このようなタイプの付加物は一般的に付加物と混和が可能でない非活性炭化水素の存在下でアルコールとMgCl
2を混合し、付加物の溶融温度(100〜130℃)で攪拌条件下で操作することによって得られる。次いで、エマルジョンを急冷し、これによって付加物を球形粒子の形態に凝固する。これらの球形付加物の製造に関する代表的な方法は、例えば米国特許4,469,648号、米国特許第4,399,054号及び国際公開第WO98/44009号に報告されている。球粒化のために用いられる他の方法としては、例えば、米国特許第5,100,849号、第4,829,034号に記載されている噴霧冷却がある。
【0043】
特に、興味深いものはMgCl
2(EtOH)
m付加物であり、ここで、mは0.15〜1.7であり、これはさらに高いアルコール含有量を有する付加物にアルコール含有量が上記の値に減少する時まで、50℃〜150℃の間に含まれる温度において窒素流れの下で熱的脱アルコール化工程を行なうことにより得られる。このようなタイプの工程はEP395083に記載されている。
【0044】
また、脱アルコール化は付加物を、アルコールと反応可能な化合物と接触させることによって化学的に行なうことができる。
【0045】
一般に、これらの脱アルコール化された付加物はまた、0.1μm以下の半径を有する加工による多孔度(水銀法と推定)が、0.15〜2.5cm
3/g、好ましくは0.25〜1.5cm
3/gの範囲であることを特徴とする。
【0046】
本方法の最後に、固体は通常の方法(例えば、液体の沈降及び除去、ろ過、遠心分離)で懸濁液の分離により回収され、溶媒で洗浄することができる。上記洗浄が、典型的に非活性炭化水素の液体を使用して行なったとしても、さらに極性の溶媒(例えば、さらに高い誘電率を持つ)、例えばハロゲン化炭化素水素を使用することも可能である。
【0047】
上記で言及したように、上記固体触媒成分は周知の方法に従って、これを元素周期律表の1,2または13族の有機金属化合物、特にAl−アルキル化合物と反応させることによりオリフィン重合用触媒に転換される。
【0048】
アルキル−Al化合物は、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムの中から選択される。また、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライドまたはアルキルアルミニウムセスキクロライド、例えば、 ALET
2CL及びA1
2ET
3CL
3を選択的に上記トリアルキルアルミニウム化合物との混合物として使用することもできる。
【0049】
前記チーグラーナッタ触媒を製造するために選択的に使用される外部電子供与体化合物ED
extは、好ましくはエーテル、エステル、アミン、ケトン、ニトニル、シラン及びこれらの混合物で構成された群から選択される。
【0050】
本発明の組成物を製造するためにエチレン重合を行なう前に、触媒はポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンの縮小量を製造することによって、公知の技術に従い、予備重合を行なうことができる。製造された予備重合体の量は、成分a)のg当たり500g以下であってもよい。
【0051】
上述の重合触媒を使用することによって、本発明のポリエチレン組成物は、下記段階を任意の相互順序で含む方法により製造できることが明らかになった;
a)水素の存在下で、気相反応器においてエチレンを選択的に一つ以上の共単量体と共に、重合する段階;
b)段階a)より少ない量の水素の存在下で、他の気相反応器からエチレンを一つ以上の共単量体と共重合する段階;
ここで、上記気相反応器のうち、少なくとも一つにおいて、成長する重合体粒子の高速流動化または輸送条件の下に、第1重合ゾーン(上昇部)を通じて上向きに流れ、上記上昇部を離れた後、第2重合ゾーン(下降部)に入り、上記第2重合ゾーンを通じてこれらが重力の作用の下に下向きに流れ、上記下降部を離れた後、上記上昇部内に再び投入することによって前記の二つの重合ゾーンの間に重合体の循環を確立する。
【0052】
第1重合ゾーン(上昇部)では、一つ以上のオレフィン(エチレン及び共単量体)を含む気体混合物を重合体粒子の輸送速度より速い速度で供給することによって、速い流動化条件が確立される。上記気体混合物の速度は、好ましくは0.5〜15m/s、より好ましくは0.8〜5m/sに含まれる。「輸送速度」及び「速い流動化条件」という用語は、当該技術分野に公知されてあり;それの定義は例えば、文献[D. Geldart, Gas Fluidisation Technology, page 155 et seq., J. Wiley & Sons Ltd., 1986]を参照する。
【0053】
第2重合ゾーン(下降部)において、重合体粒子は高密度化された形で重力の作用下に流れ、固体の密度が高い値(反応器の体積当たりの重合体の質量)に到達し、これは重合体のバルク密度に近接する。
【0054】
言い替えれば、重合体がプラグフロー(充填フロー方式)で下降部を通じで垂直に下向きに流れ、重合体粒子間に少量の気体のみが飛沫同伴しない。
【0055】
このような方法は、段階b)から得られたエチレン共重合体よりさらに低い分子量を有するエチレンの重合体を段階a)から得ることができるようにする。
【0056】
好ましくは、比較的低い分子量のエチレン共重合体を製造するためのエチレンの共重合(段階a)は、比較的高い分子量のエチレン共重合体を製造するためのエチレンの共重合(段階b)より上流で行なわれる。この目的のために、段階a)で、エチレン、水素、共単量体及び非活性気体を含む気体の混合物は、第1気相反応器、好ましくは気相流動層反応器に供給する。重合は前述のチーグラーナッタ触媒の存在下で行なわれる。
【0057】
水素は使用される特定の触媒によって、そしてどのような場合にも段階a)で溶融の流れ指数MIEが0.8〜10g/10分であるエチレン重合体を得るのに適した量で供給される。上記 MIEの範囲を得るために、段階a)で水素/エチレンのモル比は指示的に0.5〜2.5であり、エチレン単量体の量は重合反応器に存在する気体の体積全体を基準として、2〜15体積%、好ましくは3〜10体積%である。供給混合物のうち、仮に残留部分があるとすれば、非活性気体及び一つ以上の共単量体として表される。重合反応により発生する熱を分散させるために必要な非活性気体は、窒素または飽和炭化水素から簡便に選択され、もっとも好ましくはプロパンである。
【0058】
段階a)の反応器における作動温度は50〜120℃、好ましくは65〜100℃から選択され、作動圧力は0.5〜10MPa、好ましくは2.0〜3.5 MPaである。
【0059】
好ましい実施形態において、段階a)で得られたエチレン重合体は工程全体、即ち、第1及び第2の直列に接続された反応器において製造されるエチレン重合体全体の40〜60質量%を示す。
【0060】
次いで、段階a)から出るエチレン重合体及び飛沫同伴気体は、第1重合反応器から出る気体混合物が、段階b)の反応器(第2気相重合反応器)に入ることを防ぐために、固体/気体の分離段階を通過する。上記気体混合物は第1重合反応器に再び再循環し得るが、分離されたエチレン重合体は段階b)の反応器に供給される。重合体が第2反応器に供給される好ましい地点は下降部と上昇部間の接続部にあり、ここで固体濃度が特に低いので流動条件が否定的な影響を受けない。
【0061】
段階b)における作動温度は65〜95℃の範囲であり、圧力は1.5〜4.0 MPaの範囲である。第2気相反応器はエチレンを1つ以上の共単量体と共重合することによって、比較的高分子量のエチレン共重合体を製造することを目的とする。また、最終的なエチレン重合体の分子量の分布を広げるために、段階b)の反応器は簡便に上昇部及び下降部内の単量体及び水素の濃度の異なる条件を確立することによって作動することができる。
【0062】
このような目的のために、段階b)において重合体粒子を飛沫同伴して、上昇部から出てくる気体混合物が下降部から入ることが部分的または全体的に防げるので、二つの異なる気体組成物ゾーンを得る。これは降下部の適切な地点、好ましくはその上部に位置するラインを通じて下降部内に気体及び/または液体混合物を供給することによって達成することができる。上記気体及び/または液体混合物は上昇部に存在する気体混合物と異なる、適した組成を有していなければならない。上記気体及び/または液体混合物の流れは重合体粒子の流れに逆流する気体の上向き流れが、特にこの上段で発生するように調節することができ、これは上昇部から出てくる重合体粒子のうち、飛沫同伴気体の混合物に対するバリアとして作用する。特に、下降部においてさらに高分子量の重合体分画を製造するために、水素含有量が低い混合物を供給することが有利である。一つ以上の共単量体が段階b)の下降部に選択的にエチレン、プロパンまたは他の非活性気体と共に供給することができる。
【0063】
段階b)の下降部において、水素/エチレンのモル比は0.005〜0.2の間に含まれ、エチレンの濃度は前記下降部に存在する気体の体積全体を基準として、0.5〜15体積%、好ましくは0.5〜10体積%に含まれ、共単量体の濃度は0.2〜1.2体積%に含まれる。残りはプロパンまたは類似の非活性気体である。非常に低い水濃度の水素が下降部に存在するため、本発明の工程を行なうことによって、高分子量のポリエチレン分画に相対的に多量の共単量体を結合させることが可能である。
【0064】
下降部から出てくる重合体粒子は、段階b)の上昇部に再投入される。
【0065】
重合体粒子が反応を維持し、それ以上共単量体が上昇部に供給されないため、上記共単量体の濃度は、上記上昇部に存在する気体の体積全体を基準として0.1〜0.8体積%の範囲で低下する。実際に、共単量体の含有量は、最終的なポリエチレンの所望の密度を得るために調節できる。段階b)の上昇部において、水素/エチレンのモル比は0.2〜1の範囲にあり、エチレンの濃度は上記上昇部に存在する気体の体積全体を基準として、5〜15体積%の間に含まれる。残りはプロパンまたは他の非活性気体である。
【0066】
上記記載の重合方法に対するさらに詳細な事項は、国際公開第WO2005019280号に提供されている。
【実施例】
【0067】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物及び方法の実施および利点は、以下の実施例に開示される。これらの実施例は、単に例示的なものであり、如何なる方法によっても添付の特許請求範囲の範囲が限定されるものではない。
【0068】
下記の分析方法は重合体組成物を特徴化するために用いられる。
【0069】
[密度]
【0070】
23℃でISO 1183に従って測定。
【0071】
[分子量分布の測定]
【0072】
モル質量の分布及び数平均分子量Mnの測定は2003年発行のISO 16014−1、−2、−4に記載の方法を用いて高温ゲル浸透クロマトグラフィーにより行なった。これに由来する質量平均の分子量Mw, z−平均Mz、および Mw/Mnは、下記に記載のとおりGPCに結合されたMALLSにより測定した。言及されたISO標準による詳細事項は下記のとおりである:溶媒1、2、4−トリクロロベンゼン(TCB)、装置及び溶液の温度135℃及び濃度検出器としてTCBと共に使用可能なPolymerChar(Valencia, Paterna 46980, Spain)IR−4赤外線検出器、直列で連結された下記の予備カラムSHODEX UT-G及び分離カラムSHODEX UT 806 M(3x) 及びSHODEX UT 807(Showa Denko Europe GmbH, Konrad-Zuse-Platz 4, 81829 Muenchen, Germany)が備えられたウォーターズ アライアンス(WATERS、Alliance)2000を用いた。溶媒を窒素下で真空蒸留し、2、6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0,025質量%を使用して安定化した。使用された流速は1m/分であり、注入量は500μlであり、重合体濃度は0.01%(W/W)超過〜0.05%(W/W)未満の範囲であった。分子量の較正はPolymer Laboratories(現在Agilent Technologies、ドイツ、Herrenberger Str. 130, 71034、Boeblingen)の単分散ポリスチレン(PS)の標準を580g/mol〜11600000g/molの範囲で使用し、付加的にヘキサデカンと共に用いて行なった。次に、較正曲線(Universal Calibration)方法(Benoit H., Rempp P. and Grubisic Z., & in J. Polymer Sci., Phys. Ed., 5, 753(1967))でポリエチレン(PE)に適用した。従って、使用されたマルク-ホウインク(Mark-Houwing)パラメーターはPSの場合k
PS=0.000121 dl/g、α
PS=0.706であって、PEの場合k
PE=0.000406 dl/g、α
PE=0.725であって、135℃でTCBにおいて有効であった。データの記録、較正及び計算はそれぞれNTGPC_Control_V6.02.03及び NTGPC_V6.4.24(hs GmbH, Hauptstrasse 36, D-55437 Ober-Hilbersheim, Germany)を用いて行なった。
【0073】
[溶融流れ指数]
【0074】
特定の荷重下にて190℃でISO 1133に従って測定。
【0075】
[長鎖分岐指数(LCBI)]
【0076】
LCB指数は10
6g/molの分子量に対して測定された分岐因子g’に相応する。高いMwで長鎖分岐を測定できるようにする分岐因子g’を多角度レーザー光散乱法(MALLS)と結合したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCから溶出したそれぞれの分画に対する回転半径(上記記載のとおりであるが、0.6ml/分の流速及び30μm粒子でパッキングされたカラムを使用)はMALLS(検出器Wyatt Dawn EOS、Wyatt Technology、カリフォルニア、サンタバーバラ)を使用し、様々な角度から光散乱を分析することによって測定した。波長658nmの120mWのレーザー光源を使用した。比屈折率(specific index of refraction)が0.104ml/gで得られた。データ評価は Wyatt ASTRA 4.7.3及びCORONA1.4ソフトウェアで行なった。LCB指数は下記に記載されたように測定する。
【0077】
パラメーターg’は、同一分子量を有する線形重合体の平均二乗回転半径に対する測定平均二乗回転半径の比である。線形分子は1のg’を表すが、LCBの存在下では1未満の値を示す。分子量Mの関数としての値は下記数式から計算された。
g'(M) = <Rg
2>
サンプル,M/<Rg
2>
線形 参照,M
ここで、<Rg
2>、Mは分子量Mの分画に対する回転半径である。
【0078】
GPCから溶出されたそれぞれの分画に対する回転半径(上記記載のとおりであるが、0.6ml/分の流速及び30μm粒子で充填されたカラムを使用)は様々な角度から光散乱を分析することによって測定する。従って、このようなMALLS構成から分子量M及び<Rg
2>
サンプル,Mを測定し、測定M=10
6g/molからg'を定義することが可能である。<Rg
2>
線形 参照,Mは溶液中の線形重合体に対する回転半径と分子量間の確立された関係によって計算され(Zimm and Stockmayer WH 1949)、記載された同じ装置及び方法論を用いて線形PEの参照を測定することによって確認される。
【0079】
同一プロトコルが下記文献に記載されている
Zimm BH, Stockmayer WH (1949) The dimensions of chain molecules containing branches and rings. J Chem Phys 17
Rubinstein M., Colby RH. (2003), Polymer Physics, Oxford University Press
【0080】
[共単量体含有量]
【0081】
共単量体の含有量はBrukerのFT-IR分光光度計Tensor27を用いてASTM D 6248 98に従ってIRで測定し、共単量体としてブテンまたはヘキセンそれぞれに対してPE内のエチル-またはブチル-側鎖を測定するためのケモメトリックモデルを用いて較正する。結果は重合方法の物質収支(mass-balance)に由来し、予測された共単量体含量と比較され一致することが確認された。
【0082】
[フルノッチクリープ試験(FNCT)による耐環境応力亀裂性]
【0083】
重合体サンプルの耐環境応力亀裂性を界面活性剤水溶液中で国際標準ISO 16770(FNCT)に従って測定する。重合体サンプルから圧縮成形された厚さ10mmのシートを製造した。四角形断面(10xl0x100mm)を有するバー(bars)を、応力方向に垂直に4つの面上にカミソリの刃を用いてノッチする。文献[M. Fleissner in Kunststoffe 77 (1987), pp. 45]に記載されているノッチング装置が1.6mmの深さを有する鋭いノッチのために使用される。加えられた荷重は、引張力を初期結束領域(ligament area)に分けて計算する。結束領域は、試験片の断面積全体からノッチ領域を切り取った残りの領域である。FNCT試験片の場合、10x10mm
2−台形のノッチ領域×4=46.24mm
2となる(破損過程/亀裂伝播に対する残りの断面)。テスト試験片に非イオン性界面活性剤ARKOPAL N100 2質量%の水溶液及び5%の陰イオン性界面活性剤GENAPOLペースト(Clariant CAS 68891-38-3)内で80℃の温度で4Mapの一定荷重をISO 16770が提示する標準条件に従って加える。テスト試験片が破裂するまでの時間を測定する。
【0084】
[伸長硬化]
【0085】
伸長硬化は正常な状態の粘度の値と比較した一定の伸長速度(elongational rate)を有する一軸伸長下で、測定溶融粘度の増加、即ちη
E,max /η
sである。流量計実験において、速い伸長速度でこのような値が高い程(典型的には1s
−1及び5s
−1の伸長速度において)加工中溶融した重合体がさらに安定し、ここで高い伸長及び縮小の比は、例えば、押出コーテイング時に関連する。
【0086】
伸長硬化(変形硬化とも称される)の測定は一軸伸長の間、一定の伸長速度でT=150℃で行なった。
【0087】
上記測定は、Sentmanant伸長レオロジー(Sentmanant Elongational Rheology,SER)の手段が具備されたアントンパール(AntonPaar)の回転流量計装備Physica MCR 301上で行なった。上記測定は測定温度で5分間のアニーリング時間の後150℃で行なった。上記測定は、0.01s
−1〜10s
−1の間で変化する伸長速度、典型的には0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10s
−1でそれぞれサンプルの異なる試験片に対して繰り返して行なった。それぞれの測定に対して、一軸伸長溶融粘度が時間の関数として記録された。
【0088】
テスト試験片を下記のとおり、測定するために製造した:2.2gの物質を秤量し、これを使用して70×40×1mmのモールデイングプレートを納めた。上記プレートをプレスにいれて25barの圧力下に1分間200℃まで加熱した。200℃の温度に到達した後、サンプルを4分間100barで圧縮した。圧縮時間終了後、前記物質を常温で冷却させ、プレートを前記形態から除去した。1mmの厚さの圧縮された重合体プレートから12×11mmの長方形のフィルムを切断して測定した。
【0089】
一軸伸長の際、伸長硬化は同一時間での線形反応η
sに対する特定の伸長速度で測定最大溶融伸長粘度η
E,maxの比である。停滞期がない場合、η
E,maxは特定の伸長以後に観察され、変形開始後、時間t=3×1/(伸長速度)、また、伸長L(t)/L(0) ≧3(例えば、t=3秒以後11/sの伸長速度の場合及びt=0.6秒以後51/sの伸長速度の場合)に測定された、150℃の温度での特定の伸長速度を有する一軸伸長下の最大重合体溶融粘度値として定義されてもよい。
【0090】
線形粘弾性反応ηsは、マルチ-モードマックスウェル(multi-mode Maxwell)モデルを用いて同一温度でG’及びG”の線形レオロジーデータをフィッテイングし、一時的な剪断粘度を計算し、3(トルートン比)を掛けて計算する。上記測定が理想的な一軸伸長ではなく事実により、トルートン比は全ての測定伸長速度において正常な状態の伸長粘度曲線をフィッテイングすることを目的に3〜4の間であってもよい。
【0091】
上記方法は、文献[Mackosko C.W. Rheology Principles, Measurements and Applications, 1994, Wiley-VCH, New York]に記載されている。当該技術分野に知られているように、PEにおける一軸伸長の際、変形硬化と長鎖分岐化間に直接的な相関関係がある。
【0092】
[実施例1]
【0093】
[工程構成]
【0094】
本発明の工程は、
図1に図示されるとおり、2つの直列連結された気相反応器を含むプラントにおいて連続的条件下で行なわれた。
【0095】
固体触媒成分は下記のとおり製造される。
【0096】
塩化マグネシウム及び約3モルのアルコールを含有するアルコールを付加物を10000RPMの代わりに2000RPMにおいて作業したことを除き、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載の方法に従って製造する。上記付加物をアルコールを25%の質量の含有量に到達するまで50〜150℃の温度の範囲で窒素流れ下で熱処理した。2Lの四口丸のフラスコに窒素をパージングし、1LのTiCl
4を約0℃で導入する。次いで、ほとんど同じ温度で、25質量%のエタノールを含有して前記記載のように製造された70gの球形のMgCl
2/EtOH付加物を攪拌下に添加した。温度を約2時間内に約140℃に上昇させ、約60分間維持させる。次に、攪拌を中断し、固体生成物が沈殿するようにした後、上澄液をサイフォンに吸入する。
【0097】
次に、固体残留物を80℃にてヘプタンで1回洗浄し、25℃にてヘキサンで5回洗浄した後、30℃で真空下にて乾燥させる。
【0098】
上記報告された合成経路に従って製造された固体触媒成分の十分な量を、国際公報第WO01/85803号の実施例7に記載の方法に従って、1gポリプロピレン/触媒成分のgの量をプロピレンを使用して予備重合させた。
【0099】
[重合]
【0100】
12.0g/hの固体触媒成分を、5.0kg/hの液体プロパンを使用して予備接触装置に供給し、ここにさらにトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を投入した。アルミニウムアルキルと固体触媒成分との間の質量比は2.0g/gであった。予備接触段階は120分の全滞留時間で40℃において攪拌することによって行なった。
【0101】
触媒がライン(10)を通じて
図1の第1気相重合反応器(1)に入る。第1反応器において、非活性希釈剤としてプロパンの存在下で分子量の調節剤としてH
2を用いてエチレンを重合した。43kg/hのエチレン及び25g/hの水素をライン(9)を通じて第1反応器に供給した。1.1kg/hの共単量体(1−ヘキセン)を第1反応器に供給した。
【0102】
重合を80℃の温度及び2.9MPaの圧力で行なった。第1反応器内から得られた重合体ををライン(11)を通じて不連続的に排出させて、気体/固体の分離器(12)内で気体を分離した後、ライン(14)を通じて第2の気相反応器に再導入させた。
【0103】
第1反応器内で製造された重合体は2.7g/10分の溶融指数 MIE及び0.952kg/dm
3の密度を有した。
【0104】
第2反応器は約80℃及び2.5MPaの圧力の重合条件下で作動した。22kg/hのエチレン及び4.4kg/hの1−ヘキセンをライン(46)を通じて第2反応器の下降部(33)に投入した。5.0kg/hのプロパン、26kg/hのエチレン及び10g/hの水素をリサイクリングシステム内にライン(45)を通じて供給した。
【0105】
最終的なエチレン重合体の分子量分布を広げるために、第2反応器を、上昇部(32)及び下降部(33)内の単量体及び水素濃度の異なる条件を確立して作動させた。これは、下降部(33)の上部に330kg/hの液体ストリーム(液体バリア)をライン(52)を通じて供給することにより達成する。上記液体ストリームは上昇部内に存在する気体混合物と異なる組成を有する。前記第2反応器の上昇部、下降部内の単量体及び水素の異なる濃度及び液体バリアの組成を表1に示した。ライン(52)の液体ストリームは54℃及び2.45MPaの作動条件のコンデンサ(49)内の凝縮段階から出、ここからリサイクルストリームの一部が冷却され部分的に凝縮する。
図1に図示されているように、分離容器及びポンプがコンデンサ(49)のダウンストリームに順番に配置される。最終重合体がライン(54)を通じて不連続的に排出された。
【0106】
第2反応器内の重合工程は比較的高い分子量のポリエチレン分画を製造した。表1に、最終生成物の特性を記載した。最終生成物の溶融指数が第1反応器内で製造されたエチレン樹脂に比べて減少し、これは第2反応器内で高分子量の分画が形成されたことを示していることが分かる。
【0107】
第1反応器が、第1及び第2反応器の両方で製造された最終的なポリエチレン樹脂の量全体の約45質量%(分割質量%)を製造した。同時に、得られた21.7と等しいMIF/MIP比によって示されるように、比較的広い分子量の分布を有している。
【0108】
共単量体(ヘキセン-1)の量は約5質量%であった。
【0109】
[比較例1]
【0110】
本比較例の重合体は、市販名Marlex K306 (ChevronPhillips)で市販中のループ重合工程で製造されたポリエチレン組成物である。
【表1】
【外国語明細書】