【解決手段】複数のセクター10と、上下一対のサイドプレート20と、上下一対のビードリング40とを備える金型内1にグリーンタイヤ2を挿入して行うタイヤ加硫成型方法において、セクター10とサイドプレート20とが離れているときに、金型1内にグリーンタイヤ2を挿入し、グリーンタイヤ2のビード部3を成型位置よりもタイヤ赤道E側に位置させておき、セクター10とサイドプレート20とを閉じると同時又は閉じた後に、グリーンタイヤ2のビード部3を成型位置に移動させて、加硫成型を行う、タイヤ加硫成型方法。
円状に並べられた複数のセクターと、複数の前記セクターが形成する円の内径側に設けられた上下一対のサイドプレートと、前記サイドプレートの内径側に設けられた上下一対のビードリングとを備える金型内にグリーンタイヤを挿入して行うタイヤ加硫成型方法において、
前記セクターと前記サイドプレートとが離れているときに、前記金型内にグリーンタイヤを挿入し、前記グリーンタイヤのビード部を成型位置よりもタイヤ赤道側に位置させておき、
前記セクターと前記サイドプレートとを閉じると同時又は閉じた後に、グリーンタイヤのビード部を成型位置に移動させて、加硫成型を行う、タイヤ加硫成型方法。
隣り合う前記リングの間に0.05mm以上0.15mm以下の隙間を設け、複数の前記リングをタイヤ赤道側から成型位置に移動させるときに、前記隙間から前記金型内の空気を排出させる、
請求項2に記載のタイヤ加硫成型方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態のタイヤ加硫成型装置60について図面に基づき説明する。なお以下の実施形態は例示であり、以下の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更、置換、省略等を行うことができる。
【0012】
以下の説明において、径方向は、金型内に挿入されたグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)の径方向と一致し、図の左右方向とも一致する。また内径側および外径側とは、特に断りが無い限り、前記径方向の内径側および外径側のことである。
【0013】
図1に実施形態のタイヤ加硫成型装置60を示す。タイヤ加硫成型装置60は、加硫成型面を有する複数の部材からなるタイヤ加硫成型金型1(以下において「金型1」と表現する場合がある)と、金型1を保持するコンテナ70と、金型1を加熱する加熱装置と、金型1に挿入されたグリーンタイヤを内側から加圧するブラダー67と、金型1に挿入されたグリーンタイヤのビード部を保持するビードチャック部材50とを備える。
【0014】
金型1は、円状に並べられた複数のセクター10と、複数のセクター10の内径側に設けられた上下一対のサイドプレート20と、サイドプレート20の内径側に設けられた上下一対のビードリング40とを備える。複数のセクター10の内径側の面は、タイヤのトレッド部を成型する成型面を有する。上側のサイドプレート20の下面および下側のサイドプレート20の上面は、タイヤのサイドウォール部を成型する成型面を有する。上側のビードリング40の下面および下側のビードリング40の上面は、ビード部を成型する成型面を有する。
【0015】
複数のセクター10は径方向に移動可能である。金型1が開いた状態では、複数のセクター10は外径側に移動しており、隣り合うセクター10同士の間隔が開いている。金型1が閉じた状態では、複数のセクター10は内径側に移動しており、隣り合うセクター10同士が接している。
【0016】
コンテナ70は、セクター10の外径側に固定されたセグメント71と、セグメント71の外径側に設けられたジャケットリング72と、上側のサイドプレート20を保持する上側コンテナプレート73と、下側のサイドプレート20を保持する下側コンテナプレート74とを備える。
【0017】
ジャケットリング72の内径面は上側が小径で下側が大径となるように傾斜している。ジャケットリング72は図示しない第1昇降装置によって上下に移動可能となっている。
【0018】
セグメント71は1つのセクター10につき1つ設けられている。セグメント71と上側コンテナプレート73との間に上側スライド装置76が設けられ、セグメント71と下側コンテナプレート74との間に下側スライド装置77が設けられ、これによりセグメント71が径方向に移動可能となっている。セグメント71の外径面は上側が小径で下側が大径となるように傾斜している。セグメント71の外径面とジャケットリング72の内径面とは、同じ傾斜角となっており、摺動可能となっている。このような構造のため、ジャケットリング72が下降すると、ジャケットリング72の内径面がセグメント71を内径側に押し、セグメント71およびセクター10が内径側に移動する。反対にジャケットリング72が上昇するとセグメント71およびセクター10が外径側に移動する。
【0019】
上側コンテナプレート73は図示しない第2昇降装置によって上下に移動可能となっている。上側コンテナプレート73が上下に移動すると、これと一体となって、セグメント71、セクター10、上側のサイドプレート20、および上側のビードリング40も上下に移動する。
【0020】
加熱装置は、上側コンテナプレート73の上に設けられた上プラテン64と、下側コンテナプレート74の下に設けられた下プラテン65とを備える。上プラテン64および下プラテン65は、例えばその内部を加熱された流体が通過することによって加熱される。上プラテン64および下プラテン65が加熱されると、その熱が金型1に伝わり、金型1の内部のグリーンタイヤが加熱される。
【0021】
ブラダー67は金型1の内側に設けられている。ブラダー67は、加硫成型時にグリーンタイヤの内側で膨らみ、グリーンタイヤに対し内側から加圧する。
【0022】
ビードチャック部材50は、ブラダー67の上下両側において、ブラダー67の内部に対して進退可能になっている。ビードチャック部材50は、ブラダー67の内部に進出したとき、ブラダー67の内面に接触する。金型1が閉じた状態でビードチャック部材50がブラダー67の内部に進出すると、上下両側において、ビードリング40とビードチャック部材50とがグリーンタイヤのビード部を挟んでこれを保持する。このときビードチャック部材50とグリーンタイヤのビード部との間にはブラダー67が挟まれる。ビードチャック部材50は上下方向にも移動可能となっている。
【0023】
次に、実施形態のサイドプレート20の構造について説明する。
【0024】
図2に示すように、サイドプレート20は、プレート本体22と、プレート本体22の金型内側(つまり上側のサイドプレート20の下面側の場所と、下側のサイドプレート20の上面側の場所)に設けられた多層リング部24とを備える。多層リング部24は径方向(サイドプレート20の径方向でもある)に並ぶ複数のリングからなる。本実施形態では、内径側から順に第1〜第4リング26〜29が設けられている。第1〜第4リング26〜29は、加硫成型時の位置である成型位置とそれより金型内方の位置との間を上下方向に移動可能である。第1〜第4リング26〜29が成型位置にあるとき、第1〜第4リング26〜29の金型内側の面が1つの成型面25を形成している。また、多層リング部24の隣接するリング間(例えば第1リング26と第2リング27との間)には隙間が形成されている。金型内の空気はこのリング間の隙間を通り、さらに、プレート本体22に形成された図示しない隙間等を通って、金型の外へ出ることができる。第1〜第4リング26〜29が成型位置にあるとき、隣接するリング間の隙間の大きさは、0.05mm以上0.15mm以下であることが望ましい。
【0025】
第1リング26の内径側の面26aはビードリング40に密着し固定されている。これにより第1リング26とビードリング40とが一体となって移動可能となっている。
【0026】
多層リング部24における隣接する2つのリングが対向する場所において、内径側のリングには外径側へ突出する凸部が設けられ、外径側のリングには内径側へ突出する凸部が設けられている。内径側のリングの凸部は、外径側に隣接するリングを金型内方へ押す凸部(押し凸部とする)である。外径側のリングの凸部は、内径側に隣接するリングの押し凸部を受ける凸部(受け凸部とする)である。押し凸部と受け凸部とは、押し凸部が押す方向すなわち上下方向に間隔を空けて対向している。
【0027】
具体的には、まず、第1リング26の外径側かつ金型外側の場所には、外径側へ突出した押し凸部26bが形成されている。一方、第2リング27の内径側かつ金型内側の場所には、内径側へ突出した受け凸部27aが形成されている。受け凸部27aは、第1リング26の押し凸部26bと上下方向に重なりを有している。ただし、第1リング26および第2リング27が成型位置にあるとき、押し凸部26bと受け凸部27aとの間には上下方向に間隔が空いている。
【0028】
また、第2リング27の外径側かつ金型外側の場所には、外径側へ突出した押し凸部27bが形成されている。一方、第3リング28の内径側かつ金型内側の場所には、内径側へ突出した受け凸部28aが形成されている。受け凸部28aは、第2リング27の押し凸部27bと上下方向に重なりを有している。ただし、第2リング27および第3リング28が成型位置にあるとき、押し凸部27bと受け凸部28aとの間には上下方向に間隔が空いている。
【0029】
また、第3リング28の外径側かつ金型外側の場所には、外径側へ突出した押し凸部28bが形成されている。一方、第4リング29の内径側かつ金型内側の場所には、内径側へ突出した受け凸部29aが形成されている。受け凸部29aは、第3リング28の押し凸部28bと上下方向に重なりを有している。ただし、第3リング28および第4リング29が成型位置にあるとき、押し凸部28bと受け凸部29aとの間には上下方向に間隔が空いている。
【0030】
押し凸部26b、受け凸部27a、押し凸部27b、受け凸部28a、押し凸部28b、受け凸部29aは各リングの周方向に1周している。
【0031】
プレート本体22には貫通孔23が設けられている。貫通孔23には棒状部材21が挿入可能となっている。金型外側から貫通孔23に挿入された棒状部材21は、第1リング26を押すことができる。
【0032】
上記のように、第1〜第4リング26〜29は成型位置から金型内方(
図2の上下方向で、金型内に挿入されたグリーンタイヤのタイヤ赤道に向かう方向)に向かって移動可能となっている。
図3に示すように、図示しない挿入装置が棒状部材21をプレート本体22の貫通孔23に挿入すると、成型位置にあった第1リング26が棒状部材21に押されて金型内方に移動を始める。このときビードリング40も第1リング26と一体となって金型内方に移動する。第1リング26が一定距離だけ移動すると、第1リング26の押し凸部26bが第2リング27の受け凸部27aに当たって第2リング27を金型内方に押し始める。第2リング27が金型内方に一定距離だけ移動すると、第2リング27の押し凸部27bが第3リング28の受け凸部28aに当たって第3リング28を金型内方に押し始める。第3リング28が金型内方に一定距離だけ移動すると、第3リング28の押し凸部28bが第4リング29の受け凸部29aに当たって第4リング29を金型内方に押し始める。このようにして、第1〜第4リング26〜29が、ビードリング40の金型内方への移動に連動して、金型内方へ移動可能となっている。
図3に示すように、ビードリング40に近いリングほど、すなわち内径側のリングほど、成型位置よりも金型内方に大きく移動する。ビードリング40に近いリングほど金型内方に大きく移動すると、リング間に段差ができ、第1〜第4リング26〜29が階段状に並ぶ。第1〜第4リング26〜29およびビードリング40は金型外方へ押されることにより成型位置に戻る。
【0033】
なお、上側のサイドプレート20および下側のサイドプレート20は同じ構造となっている。
【0034】
次に、金型1を用いたタイヤ加硫成型方法およびタイヤ製造方法について説明する。
【0035】
空気入りタイヤの製造では、まず、カーカスプライにベルト層、トレッドゴム、サイドウォールゴム等が貼り付けられてグリーンタイヤ2が製造される。
【0036】
次に、第1昇降装置が稼働してジャケットリング72が上昇し、さらに、第2昇降装置が稼働して上側コンテナプレート73、セグメント71、セクター10、上側のサイドプレート20、および上側のビードリング40が上昇して、金型1が開く。また、上下両側のサイドプレート20のプレート本体22の貫通孔23に棒状部材21が挿入され、第1〜第4リング26〜29およびビードリング40が金型内方へ移動する。このとき、ビードリング40に近いリングほど金型内方へ大きく移動し、リング間に段差ができ、第1〜第4リング26〜29が階段状に並ぶ。さらに、上プラテン64および下プラテン65の加熱が始まる。
【0037】
次に、金型1の内側にグリーンタイヤ2が挿入される。このとき、グリーンタイヤ2の下側のビード部3が下側のビードリング40に載せられる。次に、
図4に示すように、ブラダー67が膨張して、グリーンタイヤ2がブラダー67によって内側から保持される。このとき、ブラダー67は最大の大きさになるまで膨張するのではなく、グリーンタイヤ2の上下のビード部3の間隔が加硫成型時よりも狭く保持されるように、小さめに膨張する。こうして、グリーンタイヤ2の上下のビード部3が、成型位置よりもタイヤ赤道E側に保持される。
【0038】
次に、第2昇降装置が稼働して上側コンテナプレート73が成型位置まで下降する。それに伴って、セグメント71、セクター10、上側のサイドプレート20、および上側のビードリング40も下降する。この下降の途中で、上側のビードリング40とグリーンタイヤ2の上側のビード部3とが接触する。
【0039】
上側コンテナプレート73が成型位置まで下降を完了し、
図5に示すようにプレート本体22が成型位置まで下降を完了したとき、金型1の上下両側において、ビードリング40とグリーンタイヤ2のビード部3とが接触し、また、サイドプレート20の第1〜第4リング26〜29とグリーンタイヤ2のサイドウォール部4とが接触している。このとき、第1〜第4リング26〜29が、成型位置よりもタイヤ赤道E側(金型内方)に移動した状態にあり、階段状に並んでいるため、グリーンタイヤ2のサイドウォール部4は第1〜第4リング26〜29が形成する階段の角部32に当たっている。このとき、グリーンタイヤ2は、上下のビード部3および上下のサイドウォール部4が成型位置よりもタイヤ赤道E側に位置した状態で、保持されている。またこのとき、セクター10はまだ開いていてサイドプレート20から離れている。
【0040】
次に、
図6に示すようにビードチャック部材50がブラダー67の内側へ進出し、ビードチャック部材50とビードリング40とがグリーンタイヤ2のビード部3を挟んで保持する。ビードチャック部材50とグリーンタイヤ2のビード部3との間にはブラダー67が挟まれる。
【0041】
次に、第1昇降装置が稼働してジャケットリング72が下降を始める。ジャケットリング72が下降を始めると、セグメント71およびセクター10が内径側へ移動を始める。
【0042】
また、サイドプレート20のプレート本体22の貫通孔23から棒状部材21が引き抜かれるとともに、ビードチャック部材50がタイヤ赤道Eから離れる方向へ移動し始め、また、ブラダー67がさらに大きく膨張し始める。これにより、ビードリング40およびグリーンタイヤ2のビード部3が成型位置に向かって移動を始め、その移動と連動して第1〜第4リング26〜29が成型位置に向かって移動を始める。
【0043】
第1〜第4リング26〜29が成型位置に向かって移動している間、第1〜第4リング26〜29が形成する階段の角部32にグリーンタイヤ2のサイドウォール部4が接触している。第1〜第4リング26〜29が成型位置に向かって移動するに従い、サイドプレート20とサイドウォール部4との間の空間が徐々に狭まっていく。サイドプレート20とサイドウォール部4との間の空間が狭まるに従い、サイドプレート20とサイドウォール部4との間の空気がリング間の隙間から金型1の外へ排出されていく。
【0044】
そして、セクター10とサイドプレート20とが接触して閉じると同時または閉じた後に、ビードリング40および第1〜第4リング26〜29の成型位置への移動が完了し、
図7に示すようにグリーンタイヤ2のビード部3およびサイドウォール部4の成型位置への移動が完了する。第1〜第4リング26〜29の成型位置への移動が完了したとき、第1〜第4リング26〜29が1つの成型面25を形成しており、この成型面25にグリーンタイヤ2のサイドウォール部4が接している。第1〜第4リング26〜29の成型位置への移動が完了した時またはそれより前に、サイドプレート20とサイドウォール部4との間の空気の金型外への排出が完了する。
【0045】
このようにして金型1が閉じた後は、グリーンタイヤ2が閉じた金型内で所定時間保持され、グリーンタイヤ2に対して加熱および加圧が行われる。加硫成型中であるこの所定時間中、ビード部3はビードチャック部材50とビードリング40とに保持されたままであっても良い。前記所定時間が経過すると、金型1が開いて加硫成型後の空気入りタイヤが取り出される。
【0046】
以上のタイヤ加硫成型方法によれば、セクター10とサイドプレート20とが離れている間は、グリーンタイヤ2のビード部3が成型位置よりもタイヤ赤道E側に配置されているので、グリーンタイヤ2はセクター10とサイドプレート20との隙間からタイヤ赤道E側に離れている。そして、セクター10とサイドプレート20とが閉じる(密着する)と同時又は閉じた後にビード部3が成型位置に移動するので、セクター10とサイドプレート20とが閉じると同時又は閉じた後にグリーンタイヤ2がセクター10とサイドプレート20の両方にまたがるように密着する。よってグリーンタイヤ2がセクター10とサイドプレート20との間に噛み込まれにくい。
【0047】
また、グリーンタイヤ2が金型内に挿入された後、グリーンタイヤ2のビード部3が、ビードチャック部材50とビードリング40とに保持され、保持されたままの状態でタイヤ赤道E側の位置から成型位置へ移動される。そのため、グリーンタイヤ2のビード部3が金型内の適正な位置に配置されて加硫成型されることとなり、ひいては空気入りタイヤの均一性が良くなる。
【0048】
また、サイドプレート20が第1〜第4リング26〜29を備えるため、グリーンタイヤ2のサイドウォール部4が成型位置に移動するときに、グリーンタイヤ2とサイドプレート20との間の空気が、隣接するリング間の隙間から排出される。そのため、金型内に空気が残りにくく、加硫成型後の空気入りタイヤのサイドウォール部にベア(金型内部に空気が残留していたために発生する、タイヤ表面の一部の欠損)が生じにくい。
【0049】
ここで、第1〜第4リング26〜29が、ビードリング40に近いリングほどタイヤ赤道E側に大きく移動可能であるため、第1〜第4リング26〜29が成型位置より金型内方にあるとき、第1〜第4リング26〜29は階段状に並ぶことになる。そのため、第1〜第4リング26〜29がタイヤ赤道E側の位置から成型位置へ移動する間、金型内のグリーンタイヤ2は第1〜第4リング26〜29が形成する階段の角部32に当たり、リング間の隙間近傍には当たらない。従って、グリーンタイヤ2とサイドプレート20との間の空気が完全に排出される前にリング間の隙間をグリーンタイヤ2が塞いでしまって金型内に空気が残るということが起こりにくく、加硫成型後の空気入りタイヤのサイドウォール部にベアが生じにくい。
【0050】
また、サイドプレート20の隣接するリング間の隙間が0.05mm以上0.15mmであれば、この隙間から金型内の空気が十分に排出され、しかも隙間内にグリーンタイヤのゴムが大量に侵入することがない。
【0051】
また、第1リング26がビードリング40に固定されているので、第1リング26とビードリング40との間にグリーンタイヤ2が噛み込まれるおそれがない。
【0052】
次に上記実施形態の変更例について説明する。
【0053】
まず、
図8に示すように、ビードチャック部材150はブラダー67の外側に設けられていても良い。その場合は、ビードチャック部材150とビードリング40とがグリーンタイヤ2のビード部3を保持したとき、ビードチャック部材150とグリーンタイヤ2のビード部3との間にブラダー67が挟まれることなく、ビードチャック部材150がグリーンタイヤ2のビード部3と接触することになる。
【0054】
また、サイドプレートの多層リング部のリング及びビードリング40を移動させる方法は、上記実施形態の方法に限定されない。
【0055】
変更例のサイドプレート120を
図9、
図10に示す。変更例のサイドプレート120は、上記実施形態と同様に、貫通孔123が設けられたプレート本体122と、多層リング部124とを備える。多層リング部124は径方向に並ぶ第1〜第4リング126〜129を備える。内径側から、第1リング126、第2リング127、第3リング128、第4リング129の順に並んでいる。第1リング126はビードリング40に固定されている。また、上記実施形態と異なり、プレート本体122と第1〜第4リング126〜129との間に、1枚の板状の板部材130が設けられている。板部材130は第1〜第4リング126〜129に接している。板部材130はビードリング40から遠い外径側に回転軸131を有する。
図10に示すように、貫通孔123に挿入された棒状部材21が板部材130を押すと、板部材130が回転軸131を支点にして所定範囲内の角度だけ回るように変位する。板部材130はビードリング40に近い部分ほど大きく変位する。板部材130が変位すると、第1〜第4リング126〜129が板部材130に押されて金型内方へ移動する。板部材130の変位量はビードリング40に近い部分ほど大きいため、多層リング部124ではビードリング40に近いリングほど大きく移動する。この板部材130は、サイドプレート120の周方向の少なくとも3箇所に設けられている。第1リング126の内径側の面126aはビードリング40に密着して固定されている。
【0056】
サイドプレート120が以上の構造を有するため、板部材130を変位させることによってビードリング40に近いリングほどタイヤ赤道側へ大きく移動させることができる。また、グリーンタイヤのビード部を成型位置に移動させることにより、それと連動させて、第1〜第4リング126〜129を成型位置に移動させることができる。
【0057】
また、タイヤ加硫成型方法に用いられるサイドプレートは、上記実施形態のように多層リング部を有するものでなくても良く、成型面が分割されていないサイドプレート220であっても良い。成型面が分割されていないサイドプレート220を有するタイヤ加硫成型装置260の全体を
図11に、また成型面が分割されていないサイドプレート220およびビードリング40を
図12に、それぞれ示す。成型面が分割されていないサイドプレート220を用いる場合は、
図13に示すようにビードリング40をサイドプレート220から分離して移動できるように設けておく。そして、ビードリング40とビードチャック部材50とでグリーンタイヤ2のビード部3を保持しながら移動させることにより、セクター10とサイドプレート220とが離れている状態の金型内においてグリーンタイヤ2のビード部3を成型位置よりもタイヤ赤道側に位置させておき、セクター10とサイドプレート220とを閉じると同時又は閉じた後に、グリーンタイヤ2のビード部3を成型位置に移動させる。