(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-159414(P2018-159414A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】皿ばねの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 1/32 20060101AFI20180914BHJP
B23K 11/02 20060101ALI20180914BHJP
F16F 1/02 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
F16F1/32
B23K11/02 330
F16F1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-56171(P2017-56171)
(22)【出願日】2017年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿和
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼ 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】大倉 伸介
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AD04
3J059BA23
3J059BB01
3J059BC01
3J059EA02
3J059EA13
(57)【要約】
【課題】 溶接不良を低減可能な皿ばねの製造方法を開示する。
【解決手段】 C字状に形成された帯リング体の円周方向一端10Aと当該円周方向他端10Bと付き合わせ溶接する際に、一端10Aに設けられた尖端部10Eと他端10Bに設けられた尖端部10Fとを接触させる。次に、一対の尖端部10E、10Fの接触圧を増大させるように帯リング体10を加圧しながら、接触部に電圧を印加して当該接触部を発熱させて溶接する。そして、尖端部10E、10Fであれば、接触部の面積が小さくなるので、比較的大きな面積で接触する場合に比べて、接触部の発熱温度分布が均一化する。したがって、接触部が安定するので、良好な溶接を行うことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C字状に形成された帯リング体の円周方向一端と当該円周方向他端と付き合わせ溶接することにより、帯リング状の皿ばねを製造する方法において、
前記一端に設けられた尖端部と前記他端に設けられた尖端部とを接触させる圧接工程と、
一対の前記尖端部の接触圧を増大させるように前記帯リング体を加圧しながら、接触部に電圧を印加して当該接触部を発熱させる溶接工程と
を備える皿ばねの製造方法。
【請求項2】
前記一端の尖端部は、当該一端の幅方向略中央に設けられており、
前記他端の尖端部は、当該他端の幅方向略中央に設けられている請求項1に記載の皿ばねの製造方法。
【請求項3】
C字状に形成された帯リング体の円周方向一端と当該円周方向他端と付き合わせ溶接することにより、帯リング状の皿ばねを製造する方法において、
前記一端から前記他端までの円周長が、溶接後に比べて長いC字状の帯リング体を変形させて前記一端と前記他端とを接触させる圧接工程と、
前記一端と前記他端との接触部の面圧を増大させるように前記帯リング体を加圧しながら、前記接触部に電圧を印加して当該接触部を発熱させる溶接工程と
を備える皿ばねの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、帯リング状の皿ばねを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の皿ばねの製造方法では、平帯ばね鋼材にロール加工を施してC字状の円環(以下、帯リング体ともいう。)を成形し、当該帯リング体の円周方向一端と当該円周方向他端とを溶接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−225112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗溶接等の通電時の発熱を利用した溶接においては、溶接時に流れる電流は、帯リング体の表面を流れ易い。帯リング体の円周方向一端と当該円周方向他端とが比較的大きな面積で接触すると、接触部の発熱温度分布が不均一になり易い。接触部の発熱温度分布が不均一になると、溶接不良が発生し易くなる。本願は、溶接不良を低減可能な皿ばねの製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
C字状に形成された帯リング体(10)の円周方向一端(10A)と当該円周方向他端(10B)と付き合わせ溶接することにより、帯リング状の皿ばねを製造する方法では、一端(10A)に設けられた尖端部(10E)と他端(10B)に設けられた尖端部(10F)とを接触させる圧接工程と、一対の尖端部(10E、10F)の接触圧を増大させるように帯リング体(10)を加圧しながら、接触部(10C)に電圧を印加して当該接触部(10C)を発熱させる溶接工程とを備える。
【0006】
そして、尖端部(10E、10F)であれば、接触部の面積が小さくなるので、比較的大きな面積で接触する場合に比べて、接触部の発熱温度分布が均一化する。したがって、接触部が安定するので、良好な溶接を行うことができる。
【0007】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る皿ばね1の外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る帯リング体10の説明図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る製造方法を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る帯リング体10の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0011】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0012】
(第1実施形態)
1.皿ばね
本実施形態は、
図1に示す皿ばね1を製造する方法に本発明を適用したものである。皿ばね1は帯リング状の円環である。当該皿ばね1は、当該円環が略円錐テーパ状に構成されたものである。このため、(φ1×π)<(φ2+2×W)×πとなっている。
【0013】
2.皿ばねの製造方法
皿ばね1は、C字状に形成された帯リング体10(
図2参照)が溶接されて円環状に成形されたものである。なお、皿ばね1の製造装置は、平帯ばね鋼材にロール加工を施してC字状に形成された帯リング体10を成形する(
図2参照)。
【0014】
図3に示すように、帯リング体10の円周方向一端10A及び当該円周方向他端10Bそれぞれには、尖端部10E、10Fが設けられている。
尖端部10Eは尖端10Fが側に突出した鋭角状の部位である。尖端部10Fは尖端10Eが側に突出した鋭角状の部位である。本実施形態に係る尖端部10E、10Fは、一端10A及び他端10Bそれぞれの幅方中央が突出した略L字状又は略くの字状の尖端形状である。「幅方向」とは、
図1の寸法Wで示される方向である。
【0015】
皿ばね1の製造装置は、
図3に示すように、一端10Aに設けられた尖端部10Eと他端10Bに設けられた尖端部10Fとを付き合わせて圧接させた状態で溶接をする。当該製造装置による溶接工程は、以下の通りである。
【0016】
製造装置は、当該溶接工程において、一端10Aと他端10Bとの接触部10Cに電圧を印加して当該接触部10Cを発熱させながら、治具11A、11Bを介して接触部10Cを加圧圧縮する。このとき、製造装置は、少なくとも尖端部10E、10Fが消失するまで一端10A及び他端10Bを加圧圧縮する。
【0017】
製造装置は、溶接工程の終了後、帯リング体10に「焼きならし」を実施して金属組織の均質化を行う。その後、製造装置は、帯リング体10に冷間塑性加工を実施して当該帯リング体10を略円錐テーパ状(皿状)に成形する。次に、製造装置は、帯リング体10に「焼き入れ」及び「焼き戻し」を実施した後、当該帯リング体10にバレル研磨加工を実施する。
【0018】
3.本実施形態に係る製造方法の特徴
本実施形態では、接触部10Cが安定するので、良好な溶接を行うことができる。すなわち、溶接時に流れる電流は、帯リング体10の表面を流れ易い。このため、一端10Aと他端10Bとが比較的大きな面積で接触すると、接触部10Cの発熱温度分布が不均一になり易い。
【0019】
これに対して、尖端部10E、10Fであれば、接触部10Cの面積が小さくなるので、比較的大きな面積で接触する場合に比べて、接触部10Cの発熱温度分布が均一化する。したがって、接触部10Cが安定するので、良好な溶接を行うことができる。
【0020】
(第2実施形態)
本実施形態は、
図4に示すように、溶接前の帯リング体10の一端10Aから他端10Bまでの円周長が、溶接後の帯リング体10の円周長に比べて長い。製造装置は、当該帯リング体10を拡管させるよう変形させて一端10Aと他端10Bとを突き合わせて接触させた状態で、溶接工程を実施する。
【0021】
これにより、溶接工程が終了した帯リング体10に、大きな「引張残留応力」が発生することを抑制できる。
すなわち、製造装置は、溶接時に接触部10Cを加圧圧縮するので、溶接後の帯リング体10の円周長が溶接前の円周長に比べて短くなる。このため、溶接工程が終了した帯リング体10に、大きな「引張残留応力」が発生する可能性がある。
【0022】
しかし、本実施形態では、溶接前の円周長が溶接後の円周長に比べて長いので、溶接時に接触部10Cを加圧圧縮しても、大きな「引張残留応力」が発生し難い。
本実施形態に係る製造装置は、溶接工程時に、接触部10Cを加圧圧縮して当該接触部10Cの一部を外周側に膨出させる。製造装置は、溶接工程の終了後、当該溶接工程時に膨出した部位を研削加工又は研磨加工にて排除する。
【0023】
溶接前の円周長と溶接後の円周長との差分(ラップ代ともいう。)は、接触部10Cを加圧圧縮する際の圧縮寸法以上の所定寸法とすることが望ましい。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
【0024】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、アプセット溶接にて上記溶接工程を実施するものである。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではなく、その他の溶接手法を用いてもよい。
【0025】
上述の実施形態に係る尖端部10E、10Fは鋭角状の部位であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。つまり、本願に係る尖端部10E、10Fは、先端に近づくほど断面積が縮小する形状であればよい。したがって、例えば、鈍角状の部位、台形状の部位又は半円状の部位にて尖端部10E、10Fが構成されていてもよい。
【0026】
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。