【解決手段】車両との相対位置に応じて上下・左右移動が可能に配置され、車両の両側面の放射線量を測定する第1検出器と、車両との相対位置に応じて上下・回転・左右移動が可能に配置され、車両の前面、後面、上面、荷台面の放射線量を測定する第2検出器と、車両との相対位置に応じて上下・左右移動が可能に配置され、荷台の内側側面の放射線量を測定する第3検出器とで構成される検出器群が取り付けられた門型を固定設置し、車両が乗った台座を移動させて門型を通過させながら、検出器群から得られた検出結果に基づいて、汚染箇所の有無を特定する制御部を備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車両汚染検査装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて1実施例を示し、具体的に説明する。
本発明は、台座上で停止した車両の相対位置を補正し、検出器群を備えて固定配置された門型ユニットに対して、台座を移動させながら車両を通過させ、車両の通過位置に応じて検出器群を移動させて車両の表面および荷台の放射線量を、高速、高精度に検査できる構成を備える点を技術的特徴としている。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における車両汚染検査装置の概要を説明するための全体構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1において、台座上に停車した車両が門型ユニットを通過することで放射線量の自動検査が行われる際の台座駆動手順を示した説明図である。また、
図3は、本発明の実施の形態1における車両汚染検査装置の機能ブロック図である。これら
図1〜
図3を用いて、本実施の形態1における車両汚染検査装置の構成および機能について説明する。
【0013】
施設内の測定室100内には、主制御装置10、門型ユニット20、台座30、報知器40が配置されている。ここで、報知器40には、スピーカー41、表示器42が含まれる。また、測定室100には、被検査対象である車両300が出入りする際に開閉されるシャッター101、102が設けられている。
【0014】
一方、測定室100とは別の離れた場所に設けられた総合監視室200内には、被検査対象である車両の寸法データに基づいた移動経路データを生成して検査を実行させ、オペレータが放射性物質の汚染状態をモニタリングするための監視モニタ50が配置されている。また、屋外から測定室100への誘導路の近傍であり、かつ、シャッター101の手前には、これから検査を行う車両のIDを読み取るための車両情報読取装置60が設置されている。
【0015】
なお、門型ユニット20と台座30を備えて構成される検査レーンを、測定室100内に複数設け、1台の主制御装置10で複数の検査レーンを統括管理する構成とすることも可能である。ただし、複数のレーンのそれぞれは、同一の自動検査を実行するものであり、以下の説明では、1レーン分の自動検査について、詳細に説明する。
【0016】
主制御装置10は、門型ユニット20と監視モニタ50との間で通信の中継器の役割を果たす。従って、監視モニタ50は、主制御装置10を中継して門型ユニット20と相互に通信を行うことができるとともに、直接、車両情報読取装置60と相互に通信を行うことができる。
【0017】
また、台座30は、自動検査を行うための車両300が停止して乗せられた状態で、門型ユニット20に対する車両300の相対位置を補正し、かつ、相対位置が補正された車両300が門型ユニット20を通過するように駆動制御される。このような駆動制御を実現するために、台座30は、回転駆動機構部31、前後駆動機構部32、左右駆動機構部33を備えており、詳細は、
図2、
図3を用いて説明する。
【0018】
次に、台座30上に停止した車両300が、門型ユニット20を通過することで放射線量の自動検査が行われる際の、台座30の駆動手順について、
図2を用いて詳細に説明する。なお、台座30の駆動制御の詳細は、
図3を用いて後述するが、門型ユニット20内の制御部21によって行われる。
【0019】
(台座駆動手順1)車両300の回転初期位置補正を実施する。
門型ユニット20は、固定配置されている。その一方で、放射線量の検査を行うために測定室100内に侵入した車両300は、門型ユニット20の直前に移動した台座30上で停車する。そこで、制御部21は、車両300の前面位置が門型ユニット20と対向するように、回転駆動機構による回転量を制御する。
【0020】
測定室100内に侵入した車両300が台座30上で停車する初期位置および初期角度は、測定室100から各レーンまでの距離に応じて、あらかじめ規定することができる(詳細は、
図9を用いて後述する)。従って、回転駆動機構による台座駆動手順1での回転量は、レーンごとに、あらかじめ固定値として設定しておくことができる。
【0021】
(台座駆動手順2)車両300の左右初期位置補正を実施する。
台座駆動手順1で回転位置が補正された後、制御部21は、車両300の前方側部が門型ユニット20に設けられた距離センサで計測可能となる位置まで、車両300が乗った台座30を前進させる。そして、制御部21は、距離センサによる車両300の右側面までの距離と左側面までの距離が均等になるようにして、車両のセンター位置が門型ユニット20のセンター位置と一致するように、左右駆動機構の位置制御を行う。
【0022】
なお、制御部21は、右側面までの距離と左側面までの距離が均等になるように左右駆動機構の位置制御を行った後、車両の前後方向の別の位置で、右側面までの距離と左側面までの距離が均等であるか否かをチェックする。そして、制御部21は、複数の位置において右側面までの距離と左側面までの距離が均等となるように、回転駆動機構および左右駆動機構の位置制御を行うことで、門型ユニット20に対する車両300のセンター位置合せを完了する。
【0023】
(台座駆動手順3)門型ユニット20に対して車両300を前後方向に駆動制御し、放射線量の計測を実施する。
制御部21は、台座駆動手順1、2による位置補正後、台座30を前後方向に移動させることで、車両300が門型ユニット20を通過するように駆動制御し、放射線量の自動計測を実施する。なお、この台座駆動手順3に伴って自動計測を行う際に、制御部21は、門型ユニット20内の車両300の相対位置に応じて、門型ユニット20に設けられた複数の検出器の移動制御を行う必要があり、詳細は、
図4、
図5を用いて後述する。
【0024】
また、
図3に示したように、門型ユニット20は、制御部21、放射線検出器22、駆動機構部23、および各種センサ24を含んで構成されている。なお、門型ユニット20の機能の詳細は、後述する。
【0025】
また、台座30は、回転駆動機構部31、前後駆動機構部32、および左右駆動機構部33を含んで構成されている。これらの各駆動部31〜33は、制御部21によって駆動制御される。
【0026】
次に、
図1〜
図3を用いて、車両300の放射性物質の汚染状態を検査する際の一連の流れについて、概要を説明する。
(ステップ1)車両300の移動、および初期位置合せ
まず、被検査対象である車両300は、車両情報読取装置60でIDが読み取られた後、シャッター101を通過して、目的の検査レーンの台座30の位置まで移動し、停止する。
【0027】
その後、車両300は、上述した台座駆動手順1、2が行われることで、門型ユニット20に対する相対的な初期位置合せが完了する。
【0028】
(ステップ2)車両300について、放射性物質の汚染状態を検査
総合監視室200内の監視モニタ50は、車両情報読取装置60での読取結果に基づいて、放射能を検出すべき対称測定面の位置を特定し、門型ユニット20を用いて、車両の前面、後面、右側面、左側面、上面とともに、被検査対象であるトラックの荷台(荷台の内側・側面、底面)および運転席裏面について、放射性物質の汚染状態を検査する。
【0029】
この際、上述した台座駆動手順3が行われ、固定設置された門型ユニット20内を、センター位置合せが完了した車両300が通過することで、被測定対象である車両300について、放射性物質の汚染状態の検査が行われる。
【0030】
(ステップ3)検査結果に応じたその後の処理
総合監視室200内の監視モニタ50は、門型ユニット20を用いた汚染状態の検査が終了後、検査結果を表示するとともに、検査結果に基づいて、すべての表面汚染状態が異常なしと判断した場合には、被検査車両300の区域外への移動を許可する。その結果、車両300は、シャッター102を通過して測定室100から退出する。
【0031】
一方、監視モニタ50は、1箇所でも汚染状態が検出された場合には、表面汚染状態が異常ありと判断し、汚染の報知と除染を促す報知を行うとともに、被検査車両300の区域外への移動を許可する。なお、このような報知は、レーンごとにスピーカー41および表示器42を設けておくことで実施することができる。その結果、車両300は、シャッター102を通過して測定室100から退出する。
【0032】
従って、上述したステップ1〜3をまとめると、監視モニタ50は、報知器であるスピーカー41および表示器42を制御することで、被検査車両300の誘導、停止、退出を以下のように行わせることができる。
・汚染状態の測定前において、監視モニタ50は、スピーカー41からの音声出力および表示器42からの表示出力により、車両の運転者に対して適切な報知を行うことで、被検査車両300を適切な位置まで誘導し、停止させる。
・汚染状態の測定後において、監視モニタ50は、スピーカー41からの音声出力および表示器42からの表示出力により、車両の運転者に対して適切な報知を行うことで、被検査車両300を測定室100から退出させる。
【0033】
なお、本発明における車両汚染検査装置は、複数の検査モード、例えば、任意の検査スピードと車両表面から任意の間隔に検出器位置を選ぶことで表面汚染の測定感度と精度を任意に選べるモードを有する。表示内容、および検査モードの詳細は、後述する。
【0034】
次に、本発明に係る車両汚染検査装置の特徴について説明する。本発明の技術的特徴は、以下の2点に集約される。
(特徴1)門型ユニットの採用による、検査の高速化、高精度化
(特徴2)制御方法の工夫による装置性能の向上
そこで、これら2点の特徴について、以下に詳細に説明する。
【0035】
(特徴1)門型ユニットの採用による、検査の高速化、高精度化について
本願は、台座30上で停止した車両の相対位置を補正し、検出器群を備えて固定配置された門型ユニット20に対して台座30を移動させながら車両300を通過させ、車両300の通過位置に応じて検出器群を移動させて車両300の表面および荷台の放射線量を、高速、高精度に検査できる構成を備える点を技術的特徴としている。
【0036】
図4は、本発明の実施の形態1における門型ユニット20に取り付けられる検出器群の構成に関する説明図である。門型ユニット20は、
図4に示したように、一対の第1検出器25、第2検出器26、および一対の第3検出器27を備えて構成されている。
【0037】
また、
図5は、本発明の実施の形態1における第2検出器26の構成に関する説明図である。なお、
図5においては、第2検出器26が回動する様子を示しているが、第1検出器25および第3検出器27に関しても、図示は省略するが、以下に説明するように、回動可能に構成されている。
【0038】
ここで、一対の第1検出器25は、車両300の車体側面の汚染状態を検出するための検出器である。そして、一対の第1検出器25は、
図4に示すように、門型ユニット20を構成する一対の縦柱の内側に、配置されている。さらに、一対の第1検出器25は、車両300の車両高さに合わせて検査の開始位置を最適にするために移動可能であり、検査中は車両300の車両形状に合わせて表面から一定の間隔を維持しながら移動可能な構成を備えている。また、例えば、車両300の車体側面のコーナー部分について汚染状態を検出したい場合には、第1検出器25の検出面を回動させることで対応可能である。
【0039】
第2検出器26は、例えば、
図5に示すように、検出面を90°方向に向けた第1状態と、検出面を0°方向に向けた第2状態と、検出面を−90°方向に向けた第3状態との間で、自由に変位可能な構成を備えている。そして、第2検出器26は、車両300の車体前面、車体後面、運転席天井面、運転席裏面、荷台底面、荷台後面の汚染状態を検出する。
【0040】
一対の第3検出器27は、車両300の荷台内側の側面の汚染状態を検出するための検出器である。そして、この一対の第3検出器27は、第2検出器26とともに、車両300の形状に合わせて高さ方向に移動可能であり、検査中は車両300の進行方向に対する傾きと車両形状に合わせて表面から一定の間隔を維持しながら移動可能な構成を備えている。さらに、第2検出器26は、車両300の形状に合わせて自由に変位が可能である。また、例えば、車両300の荷台内側のコーナー部分について汚染状態を検出したい場合には、第3検出器27の検出面を回動させることで対応可能である。
【0041】
また、第2検出器26および一対の第3検出器27は、門型ユニット20を構成する一対の縦柱の上端部間に設けられた横柱に配置され、上述したような変位が可能な機構を備えている。
【0042】
図6は、本発明の実施の形態1における第1検出器25、第2検出器26、第3検出器27による測定部位をまとめた図である。本実施の形態1における車両汚染検査装置は、門型ユニット20を使用して、車両の形状に合わせて検出器の高さや方向を一定の間隔に調整しながら連続移動させることで、車両表面の汚染状態を連続し計測することができる。
【0043】
この結果、特許文献1のような従来技術と比較して、車両表面の汚染状況の計測時間を大幅に短縮でき、さらに、検出器の短辺方向は一定で細かいピッチの分解能で汚染状況を正確に計測できることで、検査の高速化、高精度化を実現できる。
【0044】
(特徴2)制御方法の工夫による装置性能の向上
本実施の形態1における車両汚染検査装置は、特徴1で説明した高性能化に加え、駆動機構とソフトウェア処理による制御方法により、特許文献1のような従来技術と比較して、高速化、高性能化を実現しており、以下に詳細に説明する。
【0045】
[1]連続検査による高速化の実現について
本願では、被測定対象の車両300を限定し、その寸法データを、車両IDと対応付けて、監視モニタ50が有する記憶部にあらかじめ記憶させることを行っている。限定する車両としては、例えば、10tダンプカーおよび10t平ボディ車の2車種が考えられる。
【0046】
従って、総合監視室200の内の監視モニタ50は、車両情報読取装置60で読み取られた車両IDに対応する寸法データを記憶部から読み出すことで、被測定対象の車両の表面形状を特定することができる。
【0047】
さらに、
図1〜
図3では、詳細な図示を省略しているが、門型ユニット20は、各種センサ24として、距離センサ、安全センサおよび車両位置センサを備えている。
【0048】
車両位置センサは、台座30上で停車した車両300の、進行方向に対する傾きを計測するためのセンサである。車両位置センサで計測された傾き情報は、通信により主制御装置10を経由して、総合監視室200の内の監視モニタ50へ送信される。なお、傾きを計測する方法は、カメラを使用する方法であってもよい。
【0049】
そして、監視モニタ50は、被測定対象の車両に関して取得した寸法データと傾き情報から、台座30上で停車した車両300の表面から一定距離となるように放射線検出器22を移動させるための移動経路データを生成する。生成された移動経路データは、主制御装置10を介して、門型ユニット20内の制御部21に送信される。
【0050】
また、距離センサは、放射線検出器22が車両表面から所定距離離れた位置を維持することができるように、車両表面からの距離を定量的に計測するセンサである。そして、制御部21は、監視モニタ50から取得した移動経路データに基づいて、車両300が停車した台座30を移動させるとともに、車両300と門型ユニット20の相対位置に応じて、第1検出器25の高さ、奥行き、第2検出器26の高さ、左右の位置、角度、第3検出器27の高さ、左右の位置を、駆動機構部23により位置制御している。
【0051】
この結果、制御部21は、一対の第1検出器25、第2検出器26、および一対の第3検出器27を、車両300と門型ユニット20との相対位置に応じて、適切に位置決めすることができ、放射線検出器22を停止させることなく、連続検査を実現することができる。さらに、一対の第3検出器27により、荷台の内側側面における汚染状態も検査することができ、計測方向の死角をなくすことができる。
【0052】
また、連続検査を可能とすることで、特許文献1のように、停止して計測した複数のエリアに跨がる汚染箇所の特定処理が不要であり、汚染箇所の大きさを容易に特定することができる。
【0053】
さらに、制御部21は、安全センサからの信号を読み取ることで、連続検査中に、放射線検出器22が車両300などと接触することを未然に防止することができる。
【0054】
[2]門型ユニットを固定配置し、停車した車両を乗せた台座30を駆動することによるメリットについて
門型ユニット20を用いて車両300の全面を検査するには、以下の2つの手法が考えられる。
(手法1)門型駆動方式
車両300を停車させた状態で、門型ユニット20を移動させる手法。
(手法2)台座駆動方式
門型ユニット20を固定させた状態で、台座30に乗った停車中の車両300を移動させる手法。
【0055】
本発明では、後者の手法2による台座駆動方式を採用しており、そのメリットについて、以下に説明する。手法2は、台座駆動手順1、2として説明したように、車両300を乗せた台座30を回転および左右に移動することにより、門型ユニット20の中心に車両300を初期位置合せさせることができる。このことから、手法2は、以下の効果1〜効果3を得ることができる。
【0056】
<効果1>10tダンプカ−の車両および荷台幅がほぼ一定であることから、検出器25、27については、横方向について、検出器〜車両表面間、および検出器〜荷台内側・側面間の車両距離補正は、必要であるが、横方向の距離制御は、不要になる。
<効果2>検出器26についても、所定の位置に降下させることができ、横方向の位置制御が不要になる。
<効果3>門型走行の駆動機構が不要になる。
【0057】
なお、検出器26、27については、荷台底面(上下方向)との距離制御機能は、必要である。以上の説明における「横方向」および「上下方向」に関しては、
図4中で、両矢印として示している。
【0058】
一方、手法2の台座駆動方式を採用することで、門型ユニット20に対して車両300をまっすぐに中心に配置するためには、台座30の左右および回転角制御が必要になる。さらに、各検出器の上下駆動に合わせた台座30の走行制御が必要になる。
【0059】
図7は、本発明の実施の形態1における台座駆動方式と、門型駆動方式との駆動機構数および制御項目数の比較をまとめた図である。なお、
図7中の○、×、△は、以下の意味を示している。
○:駆動機構あるいは距離(または位置)制御として必須の項目
×:駆動機構あるいは距離(または位置)制御として不要の項目
△:駆動機構あるいは距離(または位置)制御として、オプションで追加可能の項目
【0060】
上述した効果1〜3をまとめると、
図7に示したように、門型駆動方式から台座駆動方式にすると、駆動機構数が9台から8台に低減し、距離制御数も9式から6式に低減することがわかる。
【0061】
別の効果として、台座駆動方式を採用することで、門型駆動方式を採用した場合と比較してスクリ−ニング施設面積の低減を実現できる。
図8は、門型駆動方式による車両汚染検査装置を実現するために必要なスクリ−ニング施設面積を示した図である。これに対して、
図9は、本発明の実施の形態1における台座駆動方式による車両汚染検査装置を実現するために必要なスクリ−ニング施設面積を示した図である。
【0062】
門型駆動方式による車両スクリ−ニンク施設に車両をまっすぐ進入させるためには、ある程度の車両回転半径を確保する必要がある。ここで、門型駆動方式を採用する場合には、
図8に示したように、車両300を門型ユニット20に対して真っ直ぐに誘導させるためには、車両回転半径を確保する必要がある。
【0063】
これに対して、本実施の形態1による台座駆動方式を採用する場合には、
図9に示したように、車両300を門型ユニット20に対して真っ直ぐに誘導させるためには、台座30の回転機構を有効活用することができ、門型駆動方式において必要となる車両回転半径を確保する必要がなくなる。この結果、スクリ−ニング施設の面積を低減できる。
【0064】
なお、車両300を載せる台座30の走行スパンを出口側まで延長し、検査後にも台座30を回転駆動できる構成とすることで、出口側の退出エリアに関しても、スクリ−ニング施設の面積を低減することができる。
【0065】
[3]検査精度(検出限界)の任意設定
本実施の車両汚染検査装置は、検出器の走査速度および検出器と検出対象の距離を自由に設定することができ、これによりシステムの検査精度(検出限界)を設定することができる。
【0066】
次に、フローチャートを用いて、台座駆動方式による自動検査の一連処理について具体的に説明する。
図10は、本発明の実施の形態1における車両汚染検査装置による放射線量の検出処理に関する一連処理をまとめたフローチャートである。まず、ステップS1001において、監視モニタ50は、車両情報読取装置60から通信を介して取得した、被測定対象の車両300のIDを読み取る。
【0067】
次に、ステップS1002において、監視モニタ50は、読み取ったIDに基づいて、被測定対象の車両300が、あらかじめ寸法データが登録されている検査可能車両であるか否かを判断する。そして、監視モニタ50は、検査可能車両でないと判断した場合には、ステップS1003に進み、手動による放射線量の測定を行う必要があることを報知し、一連処理を終了する。
【0068】
一方、監視モニタ50は、検査可能車両であると判断した場合には、ステップS1004に進み、車両300を測定室100に誘導する報知を行い、車両300を測定室100内に入室させ、対応する検査レーンの前で停車させる。一方、制御部21は、上述した台座駆動手順1、2を実行することにより、門型ユニット20に対する車両300の初期位置合せを行う。
【0069】
さらに、監視モニタ50は、ステップS1005において、門型ユニット20に対して、監視モニタ50で生成された移動経路データを送信し、車両300の放射線量の計測を指示する。一方、制御部21は、上述した台座駆動手順3を実行することにより、門型ユニット20に対して車両300を前後方向に駆動制御しながら、放射線検出器22の位置制御を行うことで、放射線量の計測を実施する。
【0070】
このステップS1005において、所望の検査モードの一例として、以下のような高速検査と高精度検査の2種類の検査モードのどちらかを選択してもよい。
【0071】
制御部21は、ステップS1005において高速な検査を実行する際には、一例として、40Bq/cm
2以上の表面汚染を確実に計測できるスピードと車両表面からの位置で、放射線検出器22を移動させながら、連続検査を実行することとなる。一方、制御部21は、高精度な検査を実行する際には、一例として、4Bq/cm
2以上の表面汚染を計測できる感度と精度で、先の高速な検査モードよりも低速で、かつ、接近した位置で、放射線検出器22を移動させながら、連続検査を実行することとなる。
【0072】
そして、ステップS1006において、監視モニタ50は、主制御装置10を中継して、門型ユニット20から、検査結果を受信し、表面汚染状態異常なしと判断した場合には、ステップS1007に進み、車両300を測定室100の外に誘導する報知を行い、一連の処理を終了する。
【0073】
一方、監視モニタ50は、ステップS1006において、受信した検査結果から表面汚染状態異常ありと判断した場合には、ステップS1008に進み、汚染箇所を監視モニタ50上に表示させるとともに、スピーカー41、表示器42で汚染を知らせる報知と除染を促す報知を行う。その後、ステップS1007に進み、車両300を測定室100の外に誘導する報知を行い、一連の処理を終了する。
【0074】
このように、所望の検査モードを適時選択することにより、高速、高精度に、表面全体の検査を実行し、汚染状態の判断を行うことを可能にしている。この結果、基準値以上の放射線物質で汚染された車両が区域外に出て行くことを、確実に防止することができる。
【0075】
さらに、台座駆動方式による自動検査を行うことで、上述したように、門型駆動方式による自動検査と比較して優れた効果を実現できる。
【0076】
図11は、本発明の実施の形態1における監視モニタ50上に表示される放射線測定結果の表示例である。監視モニタ50上には、
図11に例示したような、第1表示エリア51〜第6表示エリア56の6つの情報を表示することができる。
【0077】
(1)第1表示エリア51
被測定対象である車両300のID情報を表示させるエリアである。この表示内容により、オペレータおよび監視モニタ50は、被測定対象である車両を特定することができる。
【0078】
(2)第2表示エリア52
本発明の実施形態1における門型ユニット20、主制御装置10それぞれの、通信状態が正常であるか異常であるかを表示させるエリアである。この表示内容により、オペレータは、部位毎の通信状態を容易に把握することができる。
【0079】
(3)第3表示エリア53
車両300の汚染状態の結果として、検出器の短辺方向は一定で細かいピッチの分解能で汚染箇所の有無を表示させるエリアである。この表示内容により、オペレータおよび監視モニタ50は、車両全体として汚染箇所が有るか無いかを確実に把握することができる。
【0080】
(4)第4表示エリア54
測定箇所の位置を通し番号で表示させるエリアである。この表示内容により、オペレータは、後述する第5表示エリア55および第6表示エリア56の表示内容との対応関係を容易に把握することができる。
【0081】
(5)第5表示エリア55
車両表面に関する検査結果を図的に表示させるエリアである。この表示内容により、オペレータは、表面検査で汚染箇所と判定された部分を容易に特定でき、除染作業を効率的に行うことができる。
図11の例では、第5表示エリア55中で、黒く塗りつぶされた長方形の部分が、汚染箇所として検出された部分に相当する。
(6)第6表示エリア56
荷台内側に関する検査結果を図的に表示させるエリアである。この表示内容により、オペレータは、荷台検査で汚染箇所と判定された部分を容易に特定でき、除染作業を効率的に行うことができる。
図11の例では、第6表示エリア56中で、黒く塗りつぶされた長方形の部分が、汚染箇所として検出された部分に相当する。
【0082】
なお、
図11で示した具体例では、第4表示エリア54には、被検査対象である車両を前方および後方から見た斜視図を表示させた上で、測定箇所の位置の通し番号が重ねて表示されている。さらに、第5表示エリア55および第6表示エリア56には、被検査対象である車両を、正投影図(または第三角法による図)によって表示させた上で、検査結果に基づく汚染箇所が重ねて表示されている。
【0083】
そして、このような斜視図、正投影図は、車両IDと対応付けて、監視モニタ50が有する記憶部に、寸法データとともに、あらかじめ記憶させることができる。従って、監視モニタ50は、車両情報読取装置によって読み取られた車両のID情報に対応した斜視図、正投影図を記憶部から読み出して、それぞれの表示エリアに表示させ、さらに、検査結果に基づく汚染箇所を重ねて表示させることができる。
【0084】
この結果、オペレータは、第4表示エリア54、第5表示エリア55、第6表示エリア56の表示内容を見ることで、汚染箇所の特定を迅速に行うことが可能となる。
【0085】
なお、第5表示エリア55、第6表示エリア56に表示させる正投影図は、正面図、上面図、側面図などの2次元表現であるが、複数の視点から見た3次元的な表現を採用して、第5表示エリア55、第6表示エリア56に表示させることも可能である。
【0086】
以上のように、実施の形態1によれば、放射線検出器のハード的な高性能化と、駆動機構とソフトウェア処理による制御方法の工夫により、検出器を連続移動させながら、車両の表面および荷台を、高速、高精度に検査し、汚染箇所を特定することが可能となる。
【0087】
さらに、台座駆動方式を採用することで、門型駆動方式を採用する場合と比較して、駆動機構数および制御項目数の低減を図ることができるとともに、スクリ−ニング施設面積の低減を実現できる。