音源であるエンジンEを有するエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル50の車室側に、エンジンEから離間して配置されるポリウレタンフォーム11からなる防音材10について、ポリウレタンフォーム11は表面の少なくとも一部に表面層12を有し、ダッシュパネル50の車室側に正対する面のポリウレタンフォーム11の一側表面は、少なくともオープンセル状態の表面層12A又はコアを有し、一側表面と反対にある他側表面の表面層12Bをクローズドセル状態の表面層とした。
前記防音材は、非音源側空間を構成する構成材により形成される空間に、前記ポリウレタンフォームの外周部と前記構成材とが密着して使用されることを特徴とする請求項4に記載の防音材。
前記ポリウレタンフォームの外周部の大きさは、非音源側空間を構成する前記構成材により形成される空間よりも大きいことを特徴とする請求項5又は6に記載の防音材。
前記防音材は、前記仕切材と前記ポリウレタンフォームの前記一側表面との間に、閉塞された空間を有することを特徴とする請求項4から8の何れか一項に記載の防音材。
前記防音材は、前記ポリウレタンフォームの前記一側表面と隣接する全ての表面の表面層が、クローズドセル状態の表面層であることを特徴とする請求項1から13の何れか一項に記載の防音材。
金型の型面に離型剤を塗布した後、金型内にポリウレタンフォーム原料を注入し、発泡させることにより、表面に表面層を有するポリウレタンフォームからなる防音材を製造する方法において、
前記防音材は、音源に対し、離間又は少なくとも一部が密着して配置されるものであり、
少なくとも前記音源と対向する前記ポリウレタンフォームの一側の面を形成する型面には、少なくとも直鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤を塗布し、
少なくとも前記ポリウレタンフォームの前記一側表面の反対にある他側の面を形成する型面には分岐鎖状炭化水素ワックスを有する離型剤を塗布し、
少なくとも前記直鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤を塗布した型面で、オープンセル状態の表面層を前記ポリウレタンフォームの一側の面の少なくとも一部に形成し、
前記分岐鎖状炭化水素ワックスを有する離型剤を塗布した型面で、クローズドセル状態の表面層を前記ポリウレタンフォームの前記一側と反対にある他側の面に形成することを特徴とする防音材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の防音材の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示す防音材10は、車両のエンジンE(音源)があるエンジンルームと車室を仕切るダッシュパネル50の車室側表面側の少なくとも一部に配置されるものである。前記防音材10はポリウレタンフォーム11で構成されており、その全表面に表面層12を有し、少なくとも前記ダッシュパネル50の車室側表面と正対する前記ポリウレタンフォーム11の一側表面に形成されている表面層12Aは少なくともオープンセル状態の表面層を有し、少なくとも前記一側表面の反対にある他側表面(すなわち車室側)の表面層12Bはクローズドセル状態の表面層からなっている。本発明の防音材10は、表面層12が防音材10の全面に亘り、ほぼ均一に形成されている。特に、クローズドセル状態の表面層12Bの一部に、通気性の大きい領域があると、遮音性が大きく低下するため、クローズドセル状態の表面層12Bは、防音材10の全面に亘り均一に形成されることが好ましい。なお、前記ポリウレタンフォーム11の外周部(側面)の表面層12は、オープンセル状態の表面層であっても、クローズドセル状態の表面層であっても何れでもよい。
【0023】
前記表面層12は、前記ポリウレタンフォーム11の内部(コア)よりも密度が高くなったポリウレタンフォーム表面の層状部分であり、前記ポリウレタンフォーム11の発泡成形時に金型の型面と接触して形成される部分である。なお、前記コアは、前記ポリウレタンフォームの11の内部を構成する部位であり、前記表面層12を有していない。
【0024】
図2(2−1)、(2−2)及び
図3(3−1)、(3−2)を用いて一実施形態の前記防音材10の車両への配置を説明する。前記防音材10は、前記ダッシュパネル50の車室側表面の全面に亘り、前記非音源側空間を構成する構成材である左側部構成材51、右側部構成材52、下側部構成材57のそれぞれに隙間無く密着して配置されることが好ましい。なお、前記防音材10の前記ダッシュパネル50との固定は、ボルトやクリップ等の固定具を用いて行うことができる。
【0025】
非音源側空間(車両の車室)を構成する前記構成材(51、52、57)と密着する前記防音材10の外周部(右側部、左側部、下側部)は、非音源側空間(車両の車室)を構成する前記構成材(51、52、57)の形状に合わせた形状であり、前記構成材(51、52、57)の形状と略一致している。
【0026】
このように、前記防音材10の外周部は、前記非音源側空間(車両の車室)を構成する前記構成材により形成される空間の形状と略一致しており、前記構成材により形成される空間の形状に隙間無く密着して配置されるため、前記音源側で発生した音を前記ダッシュパネル50全面で遮音することができる。
【0027】
また、前記防音材10の大きさは、前記非音源側空間(車両の車室)を構成する構成材により形成される空間の形状と同じかまたは大きくなっている。前記防音材10の大きさが、前記構成材により形成される空間の形状よりも大きい場合、前記構成材により形成される空間の形状に前記防音材10が配置された後、前記防音材10を構成する前記ポリウレタンフォーム11の有する反発力により、前記ポリウレタンフォーム11が前記構成材を押す方向に反発力が掛かり、前記構成材との密着性がより高まり、遮音性をより高めることができる。前記防音材10の大きさは、前記防音材10の特性値(密度等の機械物性値)や前記構成材により形成される空間の形状等により、適宜設定されるが、前記構成材により形成される空間の形状に対し、0〜5%大きいことが好ましく、0〜2%大きいことがより好ましい。前記防音材10の大きさが5%を超えると、前記防音材10を前記構成材により形成される空間に配置し難くなり、前記防音材10の組付けに多くの時間が必要となったり、前記防音材10を配置する際に破損(破れ等)が生じるおそれがある。なお、本実施形態の前記防音材10は、前記構成材により形成される空間の形状よりも、0.5%大きく設定されている。
【0028】
前記防音材10は、前記ダッシュパネル50の車室側表面の形状と前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の少なくとも一部の形状とが、略一致するように構成されている。このため、車両の走行時等に振動が発生しても前記ダッシュパネル50と前記防音材10とが擦れることがなく、前記ダッシュパネル50と前記防音材10との擦れ等に由来する異音の発生を防止することができる。
【0029】
一実施形態では、前記ダッシュパネル50の車室側表面の全面に亘り前記防音材10を配置しているが、一部にのみ前記防音材10を配置してもよい。また、前記防音材10は、一個の部品から構成されてもよく、二個以上の部品を組合せて構成してもよい。
【0030】
一実施形態では、前記ポリウレタンフォーム11の一側表面をオープンセル状態の表面層12Aのみから構成したが、オープンセル状態の表面層12Aとコアとから構成されていても、コアのみから構成されていてもよく、更には、それらの一側表面の一部にクローズドセル状態の表面層12Bを有してもよい。
【0031】
本発明の防音材の一実施形態の変更例について図面を用いて説明する。
図4(4−1)及び(4−2)に示す防音材10は、車両のエンジンE(音源)から離間した前記ダッシュパネル50に配置され、前記防音材10を構成するポリウレタンフォーム11の一側表面に1以上の凹部が形成され、前記ダッシュパネル50と前記防音材10との間に閉塞した空間Sを有している。前記ダッシュパネル50と前記防音材10との間に閉塞した空間Sを有すると、エンジンEから発生した騒音が該ダッシュパネル50と該防音材10との間での固体伝搬音の伝搬を減らすことができ、遮音性を高めることができる。このため、閉塞された空間Sは、ダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11の一側表面とが接触せずに構成されていればよい。固体伝搬音の伝搬を減らすためには、閉塞された空間Sにおけるダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11の一側表面との非接触部分の割合を増やすことがより好ましい。
【0032】
また、閉塞された空間Sを構成するダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11の一側表面との間隔は、同じであってもよく、異なっていてもよい。ダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11の一側表面との間隔が異なる例として、階段状に段差を付けたり、半円形状や三角形状等が挙げられる。また、これらの形状を組合せて閉塞された空間Sを構成してもよい。一方、空気伝搬音は、空気層(閉塞された空間S)よりも防音材10(ポリウレタンフォーム11)の方が、減衰効果が大きいため、防音材10の割合が大きくなるように構成することが好ましい。
【0033】
図4(4−1)及び(4−2)に示す閉塞された空間S(凹部)は、金型の形状によりオープンセル状態の表面層12Aを有するようにしたが、金型の形状により作製されたオープンセル状態の表面層12Aを切削等の後加工により作製してもよい。切削等の後加工により作製した場合、ポリウレタンフォーム11の一側表面がオープンセル状態の表面層12Aとコアとから構成されることとなる。ポリウレタンフォーム11の一側表面の一部がコアから構成されても、コアの通気性は、オープンセル状態の表面層12Aと同じか大きいため、ポリウレタンフォーム11中への音の入射量も同じか大きくなり、良好な遮音性を得ることができる。
【0034】
閉塞された空間Sを構成するダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11との接触割合(ダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11との接触面積)は、10〜99%であることが好ましく、20〜90%であることがより好ましく、30〜85%であることが更に好ましい。ダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11との接触割合を上記範囲とすることにより、ダッシュパネル50と防音材10との間での固体伝搬音の伝搬が減り、遮音性を高めることができる。
【0035】
図4(4−3)に示す防音材10は、車両のダクトD(音源)から離間して配置され、前記ダクトDの3方向を覆うように配置されている。前記防音材10でダクトDを覆うことにより、特定の方向に対する遮音性を高めることが可能となる。本実施形態では、前記ダクトDの3方向を覆うように配置したが、1方向(ダクトDと正対させる)のみとしてもよく、2方向(ダクトDとL字状に対向させる)としてもよく、全方向(ダクトDの外周を覆う)としてもよい。なお、前記防音材10の固定は、前記ダクトDと該防音材10の一部をボルトやクリップ等の固定具で直接行ってもよく、前記エンジンE内の別の部品(ホース類、配管類等)に固定してもよい。また、前記防音材10は、一個の部品から構成されてもよく、二個以上の部品を組合せて構成してもよい。前記防音材10の前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の形状は、前記ダクトDの外周部の形状と少なくとも一部が略一致するように構成されている。
図4(4−3)では、前記ダクトDは矩形形状に形成されているため、前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の一部も矩形形状に形成され、略一致している。前記ダクトDの円形形状の場合、前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の一部を半円形状に形成することが好ましい。なお、前記ダクトD(音源)と防音材10との間隔は、配管類の配置や防音材10を配置可能なスペース等により適宜設定されるが、2〜40mmとすることが好ましい。
【0036】
本発明の防音材の他の実施形態について図面を用いて説明する。
図5(5−1)に示す防音材10は、エンジンEの外周面の一部と密着するように配置されている。前記防音材10はポリウレタンフォーム11で構成され、その全表面に表面層12を有し、前記エンジンEの外周面の一部を覆う前記ポリウレタンフォーム11の一側表面に形成されている表面層12Aは少なくともオープンセル状態の表面層を有し、少なくとも前記一側表面の反対にある他側表面(すなわちエンジンEと反対側)の表面層12Bはクローズドセル状態の表面層からなっている。前記防音材10の前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の形状は、前記エンジンEの外周面の形状と少なくとも一部が略一致するように構成されている。
図5(5−1)では、前記エンジンEの外周面の一部の形状と前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の一部の形状とが略一致している。なお、前記防音材10の固定は、ボルトやクリップ等の固定具を用いて行うことができる。また、前記防音材10は、一個の部品から構成されてもよく、二個以上の部品を組合せて構成してもよい。
【0037】
他の実施形態では、前記ポリウレタンフォーム11の一側表面をオープンセル状態の表面層12Aのみから構成したが、オープンセル状態の表面層12Aとコアとから構成されていても、コアのみから構成されていてもよく、更には、それらの一側表面の一部にクローズドセル状態の表面層12Bを有してもよい。
【0038】
図5(5−2)に示す防音材10は、エンジンEと前記防音材10との間に閉塞された空間Sを有するように、前記エンジンEの外周面の一部と密着するように配置されている。前記エンジンEと前記防音材10との間に閉塞した空間Sを有すると、該エンジンEから発生した固体伝搬音が防音材10に伝搬することを減らせるため、遮音性を高めることができる。固体伝搬音の伝搬を減らすためには、閉塞された空間Sにおけるダッシュパネル50とポリウレタンフォーム11の一側表面との非接触部分の割合を増やすことがより好ましい。前記防音材10の前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の形状は、前記エンジンEの外周面の形状と少なくとも一部が略一致している。
図5(5−2)では、前記エンジンEの外周面の一部の形状と前記ポリウレタンフォーム11の一側表面の一部の形状とが略一致している。
図5(5−2)に示す閉塞された空間S(凹部)は、金型の形状によりオープンセル状態の表面層12Aを有するように作製したが、金型の形状により作製されたオープンセル状態の表面層12Aを切削等の後加工により作製してもよい。なお、前記エンジンE(音源)と防音材10との間隔は、防音材10を配置可能なスペース等により適宜設定されるが、2〜40mmとすることが好ましい。
【0039】
なお、前記ポリウレタンフォーム11の外周部(側面)の表面層12は、オープンセル状態の表面層であっても、クローズドセル状態の表面層であっても何れでもよいが、クローズドセル状態の表面層であることが好ましい。前記ポリウレタンフォーム11の外周部(側面)の表面層12をクローズドセル状態の表面層とすることにより、前記エンジンEから発生する音を効果的に遮音することができる。
【0040】
防音材10を前記音源の全面を覆うように配置した場合、音源から外部に漏れる騒音を極めて効果的に遮断することができる。一方、音源の形状や音源に接続されるホース類や配管類の配置のため、防音材10で音源の全面を覆えない場合や部品点数を減らしたい場合等であっても、特に音の発生の大きい箇所に前記防音材10を部分的に配置することにより、効果的に騒音を遮断することができる。
【0041】
なお、エンジンE及びダクトDは音源、エンジンルームは音源側空間、車室は非音源側空間、ダッシュパネル50は音源側空間と非音源側空間を仕切る仕切材に相当する。エンジンルームと車室を仕切る仕切材はダッシュパネルに限られるものではなく、音源側空間と非音源側空間を仕切る仕切材であれば配置して使用可能である。
【0042】
本発明における前記防音材10は、前記ポリウレタンフォーム11で構成され、その表面には
図1、
図4、
図5に示したように表面層12を少なくとも一部に有し、少なくとも前記音源と対向する前記ポリウレタンフォーム11の一側表面は少なくともオープンセル状態の表面層12A又はコアを有し、少なくとも前記一側表面の反対にある他側表面(すなわち音源の反対側)の表面層12Bはクローズドセル状態の表面層からなっていることを特徴とする。
【0043】
前記オープンセル状態の表面層12Aとは、セル数(JIS K6400−1:2004 附属書1(参考))が20〜100個/25mmであり、より好ましくは30〜100個/25mmの表面層である場合をいう。一方、前記クローズドセル状態の表面層12Bとは、セル数(JIS K6400−1:2004 附属書1(参考))が0〜18個/25mmであり、より好ましくは0〜3個/25mmあり、更に好ましくは0〜1個/25mmの表面層である場合をいう。前記コアのセル数は、セル数(JIS K6400−1:2004 附属書1(参考))が20〜100個/25mmであり、より好ましくは30〜100個/25mmのである。
【0044】
表面層の通気性(JIS K6400−7 B法:2012/ISO 7231:2010)は、前記オープンセル状態の表面層12Aの方が前記クローズドセル状態の表面層12Bよりも大である。具体的には、前記オープンセル状態の表面層12Aの通気性は3〜30ml/cm
2/sであり、より好ましくは5〜30ml/cm
2/sであり、前記クローズドセル状態の表面層12Bの通気性は3ml/cm
2/s以下が好ましく、1ml/cm
2/s以下がより好ましく、0.5ml/cm
2/s以下が更に好ましい。内部(コア)の通気性は3〜50ml/cm
2/sである。前記オープンセル状態の表面層12Aの通気性は、前記ポリウレタンフォーム11中により多くの音源より発生した音を取り入れたい(音の入射量を大としたい)ため、大きい方が好ましく、前記クローズドセル状態の表面層12Bの通気性は、前記ポリウレタンフォーム11中に入射し、前記車室側へ透過しようとする音を極力遮断したい(入射してきた音の反射量を大としたい)ため、小さい方が好ましい。
【0045】
表面層の厚みは、表面層の表面とポリウレタンフォーム11のセルの最上部との距離を計測することにより測定した。前記オープンセル状態の表面層12Aでは、表面層のセルが開口した(表面層が存在しない)状態で形成されており、表面層の厚みを測定することができなかった。一方、前記クローズドセル状態の表面層12Bでは、表面層の平均厚みは、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、8μm以上が更に好ましい。前記クローズドセル状態の表面層12Bの平均厚みの上限は、100μm程度である。表面層の平均厚みを上記の範囲とすることにより、表面層の通気性を小さくすることができ、遮音性が良好になる。
【0046】
前記ポリウレタンフォーム11は、表面層を含む全体密度(JIS K7222:2005/ISO 845:1988)が80〜300kg/m
3が好ましく、85〜250kg/m
3がより好ましく、90〜200kg/m
3が更に好ましい。全体密度が、80kg/m
3以下の場合、前記ポリウレタンフォーム11単独での遮音性が低下するおそれがあり、300kg/m
3以上の場合、軽量化の求められる車両などの用途にあっては好ましくない。また、前記ポリウレタンフォーム11の厚みは適宜決定されるが、例として10〜100mm程度を挙げる。
【0047】
前記防音材10の製造方法は、金型にポリウレタンフォーム原料を注入して発泡させる公知のモールド発泡方法を利用して行われる。
図6〜
図9を用いて一実施形態の前記防音材10の製造方法について説明する。
【0048】
図6〜
図9に示す金型60は下型61と上型65とからなる。前記下型61の型面62は、前記防音材10がダッシュパネル50と正対する面を形成する型面である。一方、前記上型65の型面66は、前記防音材10の車室側の表面を形成する型面である。前記金型60は、公知の加熱方法で40〜80℃に加熱される。加熱方法は、前記金型60を加熱炉に収容して行う方法や下型61及び上型65の外面に加熱媒体が循環する配管を設けて行う方法などがあり、限定されない。
【0049】
図6に示すように、前記防音材10がダッシュパネル50に正対する面を形成する下型61の型面62の全面に、直鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤W1を塗布し、一方、前記防音材10の車室側の表面を形成する上型65の型面66の全面に、分岐鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤W2を塗布する。
直鎖状炭化水素ワックスとしては、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等が挙げられ、有機溶剤に分散させた溶剤系離型剤、乳化剤を用いて水に分散させた水系離型剤等が使用できる。
分岐鎖状炭化水素ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、変性ポリエチレンワックス等が挙げられ、溶剤系離型剤や水系離型剤等が使用できる。
【0050】
一実施形態では、前記防音材10がダッシュパネル50に正対する面を形成する下型61の型面62の全面に離型剤W1を塗布したが、下型61の型面62の全面に離型剤W1を塗布した後、下型61の型面62の一部に離型剤W2を重ねて塗布し、前記防音材10の前記ポリウレタンフォーム11の一側表面を前記オープンセル状態の表面層12Aとクローズドセル状態の表面層12Bとからなるように構成してもよい。なお、前記ポリウレタンフォーム11の一側表面におけるクローズドセル状態の表面層12Bは、遮音性が要求される箇所に限定することが好ましい。
【0051】
直鎖状炭化水素ワックスは、主に直鎖状の炭化水素からなる主鎖から構成されるため、分岐鎖状炭化水素ワックスに比べ、末端メチル基の比率が低く、極性が強くなる傾向となり、分岐鎖状炭化水素ワックスは、主に分岐鎖状の炭化水素から構成されるため、末端メチル基の比率が高く、極性が弱くなる傾向となる。
このため、後述するポリウレタンフォームを構成するポリウレタンフォーム原料と直鎖状炭化水素ワックスとの極性の差(溶解性)は、ポリウレタンフォーム原料と分岐鎖状炭化水素ワックスとの極性の差(溶解性)よりも相対的に小さく、直鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤W1を用いた場合、ポリウレタンフォーム表面に表面層が形成され難く、形成される表面層は薄くオープンセル状態の表面層となり易い。一方、分岐鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤W2を用いた場合、ポリウレタンフォーム表面に表面層が形成され易く、形成される表面層は厚くクローズドセル状態の表面層となり易い。
なお、離型剤の塗布は、スプレー又は刷毛等、公知の方法で行い、離型剤の塗布量は、10〜300g/m
2である。
【0052】
前記下型61の型面62と前記上型65の型面66に前記離型剤を塗布した後、
図7に示すように金型60内にポリウレタンフォーム原料Fを注入する。
ポリウレタンフォーム原料Fはポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、適宜の添加剤を含む。
【0053】
ポリオールは、ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のエーテル系ポリオール、エステル系ポリオール、エーテルエステル系ポリオール、ポリマーポリオール等を単独であるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0054】
エーテル系ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。さらにポリオール中にエーテル基とエステル基の両方を含むエーテルエステル系ポリオールやエーテル系ポリオール中でエチレン性不飽和化合物等を重合させて得られるポリマーポリオールを使用することもできる。
【0055】
イソシアネートとしては、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0056】
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。
【0057】
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。なお、その他ウレタンプレポリマーも使用することができる。また、イソシアネートはそれらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートと芳香族系イソシアネートとを併用してもよい。イソシアネートインデックスは、90〜115が好ましく、95〜110がより好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリウレタンの分野で使用される指数であって、原料中の活性水素基(例えばポリオール類の水酸基及び発泡剤としての水等の活性水素基等に含まれる活性水素基)に対するイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表した数値である。
【0058】
発泡剤は、特に限定されないが、水が好適である。また、二酸化炭素ガスやペンタン、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等を発泡助剤として、発泡剤である水と併用してもよい。なお、HFOは、オゾン層破壊係数(ODP)が0であり、地球温暖化係数(GWP)が小さい、化合物である。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して0.3〜3重量部が好適である。
【0059】
触媒は、ポリウレタンフォーム用として公知のものを用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルグアニジン、イミダゾール系化合物等のアミン触媒や、スタナスオクトエート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の一般的な量は、ポリオール100重量部に対して0.2〜3重量部が好適である。
【0060】
適宜配合される添加剤としては、整泡剤、着色剤、架橋剤、充填材(フィラー)、難燃剤、酸化防止剤等の合成樹脂安定剤などを挙げることができる。整泡剤は、ポリウレタンフォームに用いられるものであればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。着色剤は、顔料や染料等、求められる色に応じたものが用いられる。
【0061】
前記ポリウレタンフォーム原料Fを金型60に注入後、
図8に示すように閉型し、ポリウレタンフォーム原料の発泡反応が行われる。なお、図示の例では、金型60を開いた状態で注入する例を示したが、上型65に注入口(図示せず)を設け、金型60を閉じた状態で注入口からポリウレタンフォーム原料Fを金型60内に注入してもよい。
【0062】
前記ポリウレタンフォーム原料Fの発泡反応によって金型60内に、ポリウレタンフォーム11からなる防音材10が形成される。前記ポリウレタンフォーム11は、前記発泡成形時に下型61の型面62で形成される表面、すなわち前記防音材10がダッシュパネル50に正対する面には、前記下型61の型面62の全面に塗布されている直鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤W1によって、オープンセル状態の表面層が全面に形成される。一方、前記発泡成形時に上型65の型面66で形成される表面、すなわち前記防音材10の車室側表面(ダッシュパネル50とは反対側の表面)には、前記上型65の型面66の全面に塗布されている分岐鎖状炭化水素ワックスを含有する離型剤W2によって、クローズドセル状態の表面層が全面に形成される。
【0063】
その後、
図9に示すように前記金型60を開け、前記ポリウレタンフォーム11からなる防音材10が取り出される。前記金型60から取り出された防音材10は、
図1に示したように、前記ダッシュパネル50の車室側表面に正対する面とされる前記ポリウレタンフォーム11の一側表面に、少なくともオープンセル状態の表面層12Aを有し、一側表面の反対にある他側表面に、クローズドセル状態の表面層12Bを有する。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
図10の配合からなるポリウレタンフォーム原料を用いて、モールド発泡方法により500mm角×厚み25mm(透過損失の測定用)と500mm角×厚み30mm(密度、通気性、セル数等の測定用)のポリウレタンフォームからなる防音材(テストピース)をそれぞれ製造した。なお、比較例1はフェルトで防音材を構成した。
図10の配合における各成分の数値は重量部を示す。使用した金型は、金型を開けて注入するタイプである。金型の加熱は温水により行い、下型61は60℃に固定し、上型65を45〜70℃に変化させた。
【0065】
・ポリオール:ポリエーテルポリオール、官能基数3、重量平均分子量5000、水酸基価35mgKOH/g
・発泡剤:水
・アミン触媒1:エアープロダクツジャパン社製、「DABCO 33LSI」
・アミン触媒2:エアープロダクツジャパン社製、「DABCO BL−19」
・整泡剤:東レ・ダウコーニング社製、「SZ−1346E」、シリコーン整泡剤
・イソシアネート:ポリメリックMDI、イソシアネート基含有率(NCO%)31.5%
・離型剤W1:コニシ社製、「URM−520」、直鎖状炭化水素ワックス
・離型剤W2:中京油脂社製、「N−915」、分岐鎖状炭化水素ワックス
【0066】
実施例1〜6は、ダッシュパネルと正対する側(下型の型面)に離型剤W1(直鎖型)、車室側(上型の型面)に離型剤W2(分岐鎖型)を使用し、発泡剤及びイソシアネートの量を変化させた例である。実施例1〜6は、下型61の温度を60℃とし、実施例1及び実施例3は、上型65の温度を70℃、45℃にそれぞれ変化させた例であり、実施例2及び実施例4〜6は、上型65の温度を60℃とした例である。なお、実施例1〜6は、下型61の型面62の全面に離型剤W1を使用し、上型65の型面66の全面に離型剤W2を使用したが、下型61の型面62に離型剤W1と離型剤W2とを併用してもよい。また、下型61の型面62の全面に離型剤W2を使用し、上型65の型面66の全面に離型剤W1を使用してもよいし、離型剤W1と離型剤W2とを併用してもよい。
【0067】
比較例1はフェルト(フジコー社製、材質:羊毛、目付:800g/m
2、厚み:25mm)で防音材を構成した例である。比較例2はダッシュパネルと正対する側(下型の型面)及び車室側(上型の型面)の何れも離型剤W2(分岐鎖型)を使用した例である。比較例3は実施例1〜6とは逆にダッシュパネルと正対する側(下型の型面)に離型剤W2(分岐鎖型)、車室側(上型の型面)に離型剤W1(直鎖型)を使用した例である。比較例4はダッシュパネル側(下型の型面)及び車室側(上型の型面)の何れも離型剤W1(直鎖型)を使用した例である。比較例2〜4は、下型61及び上型65の温度を何れも60℃とした例である。
【0068】
実施例1〜6及び比較例2〜4に対してダッシュパネルと正対する側と車室側、コアについて、通気性、表面層の構造(オープンセル又はクローズドセル)、表面層の厚み、透過損失、密度、セル数について測定した。表面層の構造については、セル数、通気性、外観(目視)により判断した。なお、比較例1については透過損失のみを測定した。測定結果を
図10に示す。
図10の測定結果において、音源側はダッシュパネルと正対する側であり、一方非音原側は車室側であり、また、コアは防音材の内部である。
【0069】
表面層の厚みの測定は、走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−IT100)を用いて行った。具体的には、所定形状にカットした表面層を有するポリウレタンフォームに、プラチナ蒸着装置(日本電子社製:JEC−3000FC)によりプラチナを蒸着させて走査電子顕微鏡による観察をし易くした後、表面層付近を300倍に拡大して写真を撮影し、表面層の表面(最外面)とセルの最上部との距離を測定した。表面層の厚みは、撮影した写真における最も厚い厚み(L1)と2番目に厚い厚み(L2)と3番目に厚い厚み(L3)、最も薄い厚み(S1)と2番目に薄い厚み(S2)と3番目に薄い厚み(S3)の6点を測定し、その平均値を表面層の平均厚みとした。
図11(11−1)は、クローズドセル状態の表面層付近を、
図11(11−2)は、オープンセル状態の表面層付近をそれぞれ300倍に拡大して撮影した写真の模式図であり、符号91は表面層、93はセル、Xは表面層91の表面とセル93の最上部との距離を示す。
【0070】
透過損失の測定は、JIS A1441−1:2007/ISO 15186−1:2000に基づいて行った。試験片は、金属鋼板(サイズ:500mm角×厚み1mm)の片面に全面(上下面及び側面)に表面層を有する500mm角×厚み25mmのポリウレタンフォームからなる防音材をオープンセル状態の表面層またはクローズドセル状態の表面層が密着するように重ね、防音材の四隅をボルトで金属鋼板に固定して作成した。なお、透過損失の測定は、金属鋼板を前記ダッシュパネル50に見立て、金属鋼板側から音を入射させ、1600Hzにおける数値を測定した。
【0071】
セル数の測定は、500mm角×厚み30mmのポリウレタンフォームからなる防音材をダッシュパネル側と車室側とコア(内部)とに3分割し、ダッシュパネルと正対する側表面(表面層側)、コアの分割面、車室側表面(表面層側)に対して、それぞれJIS K6400−1:2004 附属書1(参考)に基づいて、拡大鏡を倍率30倍として行った。
【0072】
通気性の測定は、500mm角×厚み30mmの防音材をダッシュパネル側と車室側とコア(内部)とに3分割し、各厚みが10mmとなるように試験片を作成し、ダッシュパネルと正対する側、コア、車室側に対して、それぞれJIS K6400−7 B法:2012/ISO 7231:2010に基づいて行った。
【0073】
密度の測定は、500mm角×厚み30mmの防音材の全体密度と500mm角×厚み30mmの防音材をダッシュパネルと正対する側と車室側とコア(内部)とに3分割し、各厚みが10mmとなるようにしたダッシュパネルと正対する側、コア、車室側に対して、それぞれJIS K7222:2005/ISO 845:1988に基づいて行った。なお、ダッシュパネルと正対する側は上面及び側面に、車室側は下面及び側面に、コアは側面に、それぞれ表面層を有している。
【0074】
実施例1は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が21ml/cm
2/s、コアが21ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が1.2ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可であり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み7μmである。透過損失は46dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%である。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が131kg/m
3、コアが127kg/m
3、車室側(非音源側)が135kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が59個/25mm、コアが51個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。
【0075】
実施例2は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が20ml/cm
2/s、コアが20ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が0.7ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可であり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み11μmである。透過損失は48dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%である。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が132kg/m
3、コアが126kg/m
3、車室側(非音源側)が136kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が59個/25mm、コアが53個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。
【0076】
実施例3は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が19ml/cm
2/s、コアが20ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が0.2ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可であり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み20μmである。透過損失は51dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%である。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が133kg/m
3、コアが126kg/m
3、車室側(非音源側)が137kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が59個/25mm、コアが55個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。
【0077】
実施例4は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が28ml/cm
2/s、コアが31ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が2.6ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可であり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み5μmである。透過損失は50dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%である。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が91kg/m
3、コアが81kg/m
3、車室側(非音源側)が92kg/m
3、全体が90kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が59個/25mm、コアが45個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。なお、実施例4は、全体密度が90kg/m
3と軽く、防音材を伝搬する固体伝搬音が減るため、全体密度が130kg/m
3の実施例2よりも透過損失(遮音性)を高めることができたと考えられる。
【0078】
実施例5は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が2.5ml/cm
2/s、コアが3ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が0.3ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可であり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み13μmである。透過損失は46dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%である。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が205kg/m
3、コアが185kg/m
3、車室側(非音源側)が210kg/m
3、全体が200kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が72個/25mm、コアが69個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。
【0079】
実施例6は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が20ml/cm
2/s、コアが20ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が0.8ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可であり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み11μmである。透過損失は透過損失の測定用に作製したテストピース(ポリウレタンフォームからなる防音材)の接触割合を変化させながら測定を行った。実施例6−1の透過損失は、52dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は80%であり、実施例6−2の透過損失は、53dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は60%であり、実施例6−3の透過損失は、54dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は40%である。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が132kg/m
3、コアが126kg/m
3、車室側(非音源側)が136kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が59個/25mm、コアが53個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。なお、実施例6は、ダッシュパネルと防音材との間に閉塞した空間を有しており、ダッシュパネルから防音材への固体伝搬音の伝搬が減少しており、実施例2よりも透過損失(遮音性)を高めることができたと考えられる。
【0080】
比較例1(フェルト)は、1600Hzにおける透過損失が39dBであり、実施例1〜6よりも遮音性が劣っている。
【0081】
比較例2は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が0.8ml/cm
2/s、コアが18ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が0.7ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み10μmであり、車室側(非音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み11μmである。透過損失は39dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%であり、実施例1〜6よりも遮音性が劣っている。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が135kg/m
3、コアが124kg/m
3、車室側(非音源側)が137kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が0個/25mm、コアが55個/25mm、車室側(非音源側)が0個/25mmである。
【0082】
比較例3は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が0.7ml/cm
2/s、コアが21ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が18.6ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、クローズドセル状態の表面層であり、平均厚み10μmであり、車室側(非音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層のため、表面層の厚みは測定不可である。透過損失は36dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%であり、実施例1〜6よりも遮音性が劣っている。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が137kg/m
3、コアが126kg/m
3、車室側(非音源側)が133kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が0個/25mm、コアが55個/25mm、車室側(非音源側)が59個/25mmである。
【0083】
比較例4は、通気性については、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が19ml/cm
2/s、コアが19ml/cm
2/s、車室側(非音源側)が18ml/cm
2/sである。ダッシュパネルと正対する側(音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層であり、車室側(非音源側)の表面層は、オープンセル状態の表面層であり、共に表面層の厚みは測定不可である。透過損失は43dBであり、金属鋼板と防音材との接触割合は100%であり、実施例1〜6よりも遮音性が劣っている。密度はダッシュパネルと正対する側(音源側)が132kg/m
3、コアが126kg/m
3、車室側(非音源側)が132kg/m
3、全体が130kg/m
3である。セル数は、ダッシュパネルと正対する側(音源側)が59個/25mm、コアが55個/25mm、車室側(非音源側)が59個/25mmである。
【0084】
上記のように、実施例1〜6は透過損失が46〜54dBであったのに対し、比較例1〜4は透過損失が36〜43dBであり、実施例1〜6は比較例1〜4よりも遮音性に優れている。
【0085】
このように、本発明のポリウレタンフォームからなる防音材は、音源に対し、離間又は少なくとも一部が密着するように配置し、ポリウレタンフォームは表面の少なくとも一部に表面層を有し、少なくとも音源と対向するポリウレタンフォームの一側表面は、少なくともオープンセル状態の表面層又はコアを有し、少なくとも一側表面の反対にある他側表面の表面層がクローズドセル状態の表面層であることにより、良好な遮音性を得ることができる。このため、密度を過度に大にしなくても遮音性を高めることができ、軽量性が求められる車両用の防音材として好適なものである。