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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-160110(P2018-160110A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】静電容量式キーボード装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/023 20060101AFI20180914BHJP
   H03M 11/10 20060101ALI20180914BHJP
   H03M 11/12 20060101ALI20180914BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20180914BHJP
   H03M 11/20 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
   G06F3/023 310J
   G06F3/02 F
   G06F3/023 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-57121(P2017-57121)
(22)【出願日】2017年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000219233
【氏名又は名称】東プレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】峯崎 重樹
【テーマコード(参考)】
5B020
【Fターム(参考)】
5B020EE23
5B020FF04
(57)【要約】
【課題】押下したキーの押下速度を高精度に検出することが可能な静電容量式キーボード装置を提供する。
【解決手段】複数のドライブラインMと複数のセンシングラインNとの交差点に設けられたキーKyと、各キーに設けられ、キーの押下量に応じてドライブラインMとセンシングラインNとの間の静電容量が変化する静電容量素子と、各キーをスキャンし、静電容量素子の静電容量変化に基づいて、キーの押下量を検出する押下量検出部を有する。押下量検出部にて検出される押下量が、予め設定した基準値(Th0)に達した場合に、このキーのスキャン周期を短くするように制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のドライブライン、及び前記ドライブラインと交差する複数のセンシングラインと、
前記各ドライブラインと各センシングラインとの交差点に設けられたキーと、
前記各キーに設けられ、該キーの押下量に応じて前記ドライブラインとセンシングラインとの間の静電容量が変化する静電容量素子と、
各キーをスキャンし、前記静電容量素子の静電容量変化に基づいて、キーの押下量を検出する押下量検出部と、
前記押下量検出部にて検出される押下量が、予め設定した基準値に達した場合に、このキーのスキャン周期を短くするように制御する入力制御部と、
を備えたことを特徴とする静電容量式キーボード装置。
【請求項2】
前記入力制御部は、全てのキーの押下量が前記基準値に達していない場合には、全てのキーを順繰りにスキャンし、一のキーの押下量が前記基準値に達した場合には、前記一のキーについて全体のキー数よりも少ない間隔でスキャンすること
を特徴とする請求項1に記載の静電容量式キーボード装置。
【請求項3】
前記入力制御部は、押下量が前記基準値に達するキーが複数存在する場合には、この複数のキー全てについて、全体のキー数よりも少ない間隔でスキャンすること
を特徴とする請求項2に記載の静電容量式キーボード装置。
【請求項4】
前記基準値よりも大きい第1閾値、及び前記第1閾値よりも大きい第2閾値を設定し、
押下量が第1閾値に達してから、第2閾値に達するまでの所要時間を測定する所要時間測定部
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電容量式キーボード装置。
【請求項5】
前記入力制御部は、
一のキーの押下量が前記第2閾値に達した場合には、その後、押下量が前記基準値未満となるまで、前記一のキーのスキャンを実行しないように制御すること
を特徴とする請求項4に記載の静電容量式キーボード装置。
【請求項6】
前記キーの押下量の閾値を3以上設定し、前記所要時間測定部は、複数の閾値間の所要時間を測定すること
を特徴とする請求項4または5に記載の静電容量式キーボード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のキーを有するキーボードに係り、特に、キーが押下されたときの静電容量の変化並びにキーの押下時間を検出して、キーの押下速度を検出する静電容量式キーボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キーを押下することによる静電容量の変化に基づいて、キー操作を検出する静電容量式キーボード装置が提案され、実用に供されている。その一方で、アスキーキーボード等の複数のキーを有するキーボード装置を、MIDI(musical instrument digital interface)鍵盤として使用したり、或いはゲーム機の操作器として用いることが提案されている。このため、キー操作時の押下速度を検出することが望まれる。押下速度を検出するためには、各キーの押下量を少なくとも2点で検出する。キー押下時の2点間の時間差に基づいて押下速度を検出する。具体的には、それぞれのキーに第1押下量、及び第1押下量よりも深い第2押下量を設定し、第1押下量から第2押下量に達するまでの所要時間を演算し、この所要時間に基づいてキー押下時の押下速度を検出する。
【0003】
静電容量式キーボード装置で、キーの押下量を検出するためには、各キーを順繰りにスキャンする。例えば、n個のキーKy1、Ky2、Ky3、・・Kynが存在する場合には「Ky1→Ky2→・・Kyn→Ky1→・・・」といったように、各キーを順繰りにスキャンし、例えば、キーKy1で押下量が第1閾値Th1に達したことが検出され、次回以降のキーKy1のスキャンで押下量が第2閾値Th2に達したことが検出された場合には、第1閾値Th1が検出された時刻から第2閾値Th2が検出された時刻までの所要時間に基づいて、押下速度を演算する。
【0004】
しかし、上記の方法では、複数のキーを順繰りにスキャンするので、スキャン周期が長くなってしまい、今回のスキャンから次回のスキャンまでに長時間を要する。このため、正確な押下速度を検出できない可能性が有る。以下詳細に説明する。
図11は、横軸を時間、縦軸を電圧としている。静電容量式のキーボード装置は、キーの押下に伴って静電容量が変化し、ひいてはキーに生じる電圧が変化するので、電圧を測定することによりキーの押下量を検出する。従って、縦軸を「押下量」ということもできる。図11に示す直線q1は、任意のキー(これを「キーKy1」とする)が押下されたときに生じる電圧、及びキーKy1をスキャンするタイミングを示している。
【0005】
上述したように、n個のキーを順繰りにスキャンするので、キーKy1のスキャンタイミングを、時刻t1、t2、t3としている。即ち、t1〜t2の時間、t2〜t3の時間がキーボードのスキャン周期(前回のスキャンから今回のスキャンまでの所要時間)である。時間の経過に伴ってキーKy1の押下量が増加するので、直線q1は一次関数的に増加している。キーKy1の押下量の第1閾値をTh1、第2閾値をTh2で示している。
【0006】
いま、図11に示すように、時刻t1でキーKy1の押下量が第1閾値Th1に達したことが検出され、その後、時刻t3で第2閾値Th2に達したことが検出された場合には、第1閾値Th1に達してから第2閾値Th2に達するまでにt1〜t3の時間ΔT11を要していることが検出される。従って、時間ΔT11に基づいてキーKy1の押下時の押下速度を求めることができる。
【0007】
一方、図12に示す直線q2では、時刻t1にて押下量が第1閾値Th1に達していない。その後、時刻t2で第1閾値Th1に達したことが検出され、更に、時刻t3で第2閾値Th2に達したことが検出される。この場合には、第1閾値Th1が検出されてから第2閾値Th2が検出されるまでにt2〜t3の時間ΔT12を要していることが検出される。この場合、実際には時刻t1の直後に押下量が第1閾値Th1に達しているにも関わらず、時刻t2までこれが検出されないので、押下量が第1閾値Th1に達してから第2閾値Th2に達するまでの時間に大きな誤差が生じてしまう。従って、押下速度の演算精度が低下するという問題が発生する。
【0008】
そこで、押下速度の演算精度を向上させることを目的としたキーボードとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1では、第1スイッチ及び第2スイッチを有する2点スイッチ式のキー(鍵盤)を備えた電子楽器が開示され、第1スイッチを定期的にスキャンし、第2スイッチは第1スイッチがオンであるキーを含むキー群(鍵盤群)のみをスキャンすることが示されている。第1スイッチがオンとされていないキー群のスキャンを行わないことにより、第2スイッチのスキャン周期を短縮化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−165471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、各キーを複数のキー群に区分する方法を採用しているので、第1スイッチがオンとされたキーを含むキー群については、第1スイッチがオンとされていなくても第2スイッチのスキャンが実施されることになり、スキャン周期をより短縮化して押下速度を高精度に検出したいという要望が高まっていた。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、押下したキーの押下速度を高精度に検出することが可能な静電容量式キーボード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願発明は、複数のドライブライン(M)、及び前記ドライブラインと交差する複数のセンシングライン(N)と、前記各ドライブラインと各センシングラインとの交差点に設けられたキー(Ky)と、前記各キーに設けられ、該キーの押下量に応じて前記ドライブラインとセンシングラインとの間の静電容量が変化する静電容量素子と、各キーをスキャンし、前記静電容量素子の静電容量変化に基づいて、キーの押下量を検出する押下量検出部と、前記押下量検出部にて検出される押下量が、予め設定した基準値(Th0)に達した場合に、このキーのスキャン周期を短くするように制御する入力制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る静電容量式キーボード装置では、押下したキーの押下速度を高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る静電容量式キーボード装置及びその周辺機器の構成を模式的に示す説明図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る静電容量式キーボード装置で用いられるキーの詳細な構成を示す分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る静電容量式キーボード装置で用いられるキーの、2つの電極とコイルスプリングの関係を模式的に示す説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る静電容量式キーボード装置の、ドライブ回路、センシング回路、及び制御回路の詳細な構成を示すブロック図である。
図5図5は、時間経過に対するキーの押下量の変化を示すグラフであり、直線a1はキーの押下速度が速い場合、直線a2はキーの押下速度が遅い場合を示している。
図6図6は、本発明の実施形態に係る静電容量式キーボード装置の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施形態に係る静電容量式キーボード装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、時間経過に対する押下量の変化、パラメータF0、F1の変化、タイマカウンタTcの変化を示すグラフである。
図9図9は、本発明の第1実施形態に係り、押下されたキーのスキャン周期を短くしたときの、スキャンタイミング及び押下量の変化を示すグラフである。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係り、押下されたキーのスキャン周期を短くしたときの、スキャンタイミング及び押下量の変化を示すグラフである。
図11図11は、従来における静電容量式キーボード装置で任意のキーの押下量を測定するタイミングを示すグラフである。
図12図12は、従来における静電容量式キーボード装置で任意のキーの押下量を測定するタイミングを示すグラフであり、押下量がTh1に達するタイミングが時刻t1よりも若干遅れた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る静電容量式キーボード装置の構成を模式的に示す説明図である。図1に示すように、本実施形態に係る静電容量式キーボード装置10は、複数(図では、個数i)のドライブラインM(M-1,M-2,M-3,・・,M-i)と、複数(図では、個数j)のセンシングラインN(N-1,N-2,N-3,・・,N-j)が互いに交差して配置されている。なお、以下では、ドライブラインを特定せずに示す場合には、符号「M」を付して示し、個々のドライブラインを特定して示す場合には「M-1」のようにサフィックスを付して示すことにする。センシングラインについても同様に、個々を特定せずに示す場合には、符号「N」を付し、個々を特定して示す場合には「N-1」のようにサフィックスを付する。
【0016】
図1に示すように各ドライブラインMは、ドライブ回路11に接続され、各センシングラインNは、センシング回路12に接続されている。ドライブ回路11、及びセンシング回路12は、制御回路15に接続されており、該制御回路15の制御によりドライブ回路11及びセンシング回路12の駆動が制御される。
制御回路15、ドライブ回路11、及びセンシング回路12は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0017】
各ドライブラインMと各センシングラインNは、それぞれの交差点においてキーKyにより接続されており、通常時(キーKyが押下されていないとき)には双方のラインM,Nは互いの交差点にて電気的に導通していない。そして、後述するように、キーKyは可変容量コンデンサ(静電容量素子)を備えているので、図では各キーKyを可変容量コンデンサの記号にて示している。
【0018】
キーKyは、図2に示すように、一対の電極Q1、Q2を有する基板21、及びハウジング22を備えており、基板21とハウジング22との間には、円錐形状のコイルスプリング23と、柔軟性を有するラバー24、及びプランジャ25が設けられている。なお、電極Q1、Q2とコイルスプリング23は、図示しない絶縁層にて電気的に絶縁されているので、コンデンサを構成する。更に、ハウジング22の上方にキートップ26が設けられており、操作者がこのキートップ26を押下することにより、コイルスプリング23が付勢されて、電極Q1、Q2間の静電容量が変化する。即ち、キーKyは、キートップ26を押下する際の押下量に応じて電極Q1、Q2間の静電容量が増大するように構成されている。
【0019】
図2に示したキーKyは、特に構造を規定するものではなく、キートップ26を押下する際の押下量に応じて、電極間の静電容量が増大するように構成されているものであれば良い。また、キーの押下量に応じて電圧が単調に増加する構成であれば良い。直線的に増加するものが好ましい。
なお、以下では、複数のキーKyを特定しない場合には符号「Ky」を付して示し、個々を特定する場合には、交差点となるドライブラインMの番号とセンシングラインNの番号を括弧内に付して示すことにする。例えば、ドライブラインM-4とセンシングラインN-5との交差点に設けられるキーは「キーKy(4,5)」と示す。
【0020】
そして、上述したキーKyに設けられる2つの電極Q1、Q2のうちの、一方の電極Q1がドライブラインMに接続され、他方の電極Q2がセンシングラインNに接続されている。具体的には、図3の模式図に示すように、電極Q1と電極Q2が一定の距離をもって対向配置されており、電極Q1はドライブラインMに接続され、電極Q2はセンシングラインNに接続されている。そして、2つの電極Q1、Q2間に設けられるコイルスプリング23の伸縮状態(即ち、図2に示すキートップ26の押下量)に応じて電極Q1、Q2間の静電容量が変化するので、これに伴って電極Q1から電極Q2に向けて流れる電流が変化する。従って、センシング回路12(図1参照)で検出される電圧が変化することになる。
【0021】
以下、図4に示すブロック図を参照して、ドライブ回路11、センシング回路12、及び制御回路15の詳細について説明する。制御回路15は、主制御部41と、記憶制御部42と、記憶部44、及び出力インターフェース43を備えている。
【0022】
主制御部41は、制御回路15を総括的に制御すると共に、ドライブ回路11及びセンシング回路12に各種の制御信号を出力する。具体的には、ドライブ回路11に対して、各ドライブラインMを択一的にHレベルとするためのドライブ制御信号を出力する。また、センシング回路12に対して、マルチプレクサ31(後述)の切替制御信号を出力し、ピークホールド回路32(後述)のリセット信号を出力し、A/D変換回路33(後述)の変換開始信号を出力する。
【0023】
また、主制御部41は、A/D変換回路33より出力される各キーKyに生じる電圧に基づいて、キーKyの押下量を演算する。即ち、主制御部41は、各キーKyをスキャンし、可変容量コンデンサ(静電容量素子)の静電容量変化に基づいて、キーKyの押下量を検出する押下量検出部としての機能を備える。
更に、主制御部41は、押下量が後述する基準値Th0に達するキーKyが存在する場合に、このキーKyのスキャン周期を短くするように制御する入力制御部としての機能を備えている。
【0024】
記憶部44は、各キーKyに対しての記憶領域を有している。具体的には、m番目のドライブラインM、n番目のセンシングラインNに対して、それぞれ記憶領域を有しており、センシング回路12で検出される電圧を、キーKy(m,n)に対応する電圧Vk(m,n)として記憶する。更に、記憶部44には、後述するようにキーKyの押下速度を演算するための、タイマカウンタTc(m,n)が設定されている。
【0025】
記憶制御部42は、HレベルとされたドライブラインMと、各センシングラインNに生じる電圧に基づいて、各交差点に設けられるキーKyに対応する電圧を取得し、取得した電圧を記憶部44に設定された各キーKyに対応する記憶領域に書き込む。更には、記憶領域に記憶されている電圧を読み出す制御を行う。また、上述したタイマカウンタTc(m,n)に記憶されたカウント値に基づいて、キーKyの押下量が後述する第1閾値Th1に達してから、第2閾値Th2に達するまでの時間を測定する。即ち、記憶制御部42は、所要時間測定部としての機能を備えている。
【0026】
なお、基準値Th0、第1閾値Th1、第2閾値Th2は、任意に設定することができる。また、各キーKy毎に、押下量と発生電圧の間にばらつきが存在する場合には、このばらつきを補正するために、各キー毎に上記の基準値Th0、第1閾値Th1、第2閾値Th2を異なる数値とすることも可能である。
【0027】
出力インターフェース43は、主制御部41にて演算される各キーKyの押下量の情報をキーコードに変換し、ホストコンピュータ16(図1参照)に送信する。ホストコンピュータ16では、キーKyの押下量の時間的な変化に基づいて、押下速度を演算することができる。
【0028】
ドライブ回路11は、制御回路15より出力される制御指令(ドライブ制御信号)に基づき、各ドライブラインM(M-1〜M-i)に対して択一的に一定時間だけHレベル(ハイレベル)の電圧を印加するように制御する。具体的には、M-1、M-2、・・、M-i、M-1・・の順に各ドライブラインMの電圧をHレベルとする。それ以外のドライブラインMの電圧は、Lレベル(ローレベル)とする。なお、電圧を印加する順序は、上記に限定されず、一定の周期で択一的にドライブラインMの電圧をHレベルとすればよい。
【0029】
なお、上述したように各ドライブラインMはドライブ回路11の制御により、Hレベル及びLレベルが切り替えられるので、図4では、この切替を便宜的にスイッチSW、及びドライブ制御信号を示す矢印で示している。即ち、制御回路15より出力されるドライブ制御信号により、ドライブラインMをHレベルとする指令が供給された場合には、スイッチSWが、「L」から「H」に切り替わり、キーKyにHレベルの電圧が印加されることになる。
【0030】
また、後述するように制御回路15は、任意のキーKyにて発生電圧が基準値Th0に達する押下量が検出された場合には、このキーKyのスキャン周期が短くなるようにスキャンの順序を変更する制御を実施する。例えば、基準値Th0に達する押下量のキーKyについては4回毎にスキャンを実施するように制御する。
【0031】
センシング回路12は、各センシングラインNに流れる電流に応じた電圧を検出する。以下、詳細に説明する。図4に示すようにセンシング回路12は、抵抗R1とR2の直列接続回路を備え、各抵抗R1、R2の接続点P1は、キーKyの出力端(即ち、図3に示す電極Q2)に接続されている。なお、図4では、各ドライブラインMについてそれぞれ1つのキーKyを記載しているが、実際には、図1に示すように、1つのドライブラインMに対して、j個のキーKyが設けられている。
【0032】
抵抗R1の一端は電源電圧VBの端子に接続され、抵抗R2の一端はグランドに接続されている。そして、この直列接続回路は、上記したように各センシングラインN毎にそれぞれ設けられており、接続点P1はマルチプレクサ31に接続されている。抵抗R1とR2は同一の抵抗値を有している。従って、接続点P1の電圧は、センシング回路12に供給される電源電圧VBとグランド電圧との中間値の電圧となる。
【0033】
マルチプレクサ31は、各キーKy(Ky(1,1)〜Ky(i,j))を経由してセンシングラインNに流れる電流に応じた電圧(接続点P1に生じる電圧)を一定の周期で択一的に切り替えて、ピークホールド回路32に出力する。具体的には、キーKy(1,1)、Ky(1,2)、Ky(1,3)、・・Ky(1,j)、Ky(2,1)、Ky(2,2)、Ky(2,3)、・・Ky(2,j)、Ky(3,1)、・・・Ky(i,j)の順に電圧を出力する。
【0034】
ピークホールド回路32は、接続点P1に生じる電圧のピーク値を検出し、検出したピーク値を保持する。制御回路15よりリセット信号が与えられた際に、保持したピーク値をリセットする。
【0035】
A/D変換回路33は、制御回路15より変換開始信号が与えられた際に、ピークホールド回路32で保持した電圧のピーク値をデジタル化し、このデジタルデータを制御回路15に出力する。ピーク値のデジタルデータは、記憶部44に記憶される。
【0036】
従って、図4に示すスイッチSWがオフからオンに切り替わり(即ち、ドライブラインMの電圧がLレベルからHレベルに切り替わり)、このとき操作者の操作により、キーKyが押下されている場合には、電極Q1、Q2間の静電容量が増加し電流が流れるので、接続点P1の電圧が増加する。この電圧は、マルチプレクサ31を経由してピークホールド回路32に供給され、該ピークホールド回路32に一時的に保持された状態で、A/D変換回路33でデジタル化され、制御回路15に出力される。つまり、キーKyの押下量に対して一次関数的に変化する電圧が検出される。
【0037】
主制御部41は、デジタル化された電圧値を読み取ることにより、キーKyが押下されたか否かを判定する。また、ピークホールド回路32で検出されるピーク値に基づいて、押下されたキーKyの押下量を検出する。そして、各キーKyについての押下情報をキーコードに変換し、出力インターフェース43を介してホストコンピュータ16に送信する。ホストコンピュータ16では、キーKyの押下量の時間的な変化に基づいて、押下速度を演算する。
【0038】
[押下速度の検出方法の説明]
次に、キーKyを押下したときの、押下速度の検出方法について説明する。図5はキーKyが押下されたときの、時間経過に対する押下量の変化を示すグラフであり、直線a1は、キーKyを強い力で押下した場合、直線a2は相対的に弱い力で押下したときのキーKyに生じる電圧の変化を示している。なお、キーKyの押下量と、キーKyに発生する電圧は厳密には比例関係とならないが、ここでは便宜的に比例関係とする。即ち、図5の縦軸を「電圧(押下量)」としている。
【0039】
図5に示す直線a1では、キーKyの押下量が時刻t1にて第1閾値Th1に達し、時刻t3にて第2閾値Th2に達している。従って、t1〜t3の時間ΔT21に基づいて押下速度を演算できる。一方、直線a2では、押下量が時刻t2にて第1閾値Th1に達し、時刻t4にて第2閾値Th2に達している。従って、t2〜t4の時間ΔT22に基づいて押下速度を演算できる。
【0040】
しかし、前述した図11図12で説明したように、各キーKyのスキャン周期が長いと、押下量が第1閾値Th1及び第2閾値Th2に達した時刻を高精度に検出できないことがある。本実施形態では、図5に示した第1閾値Th1よりも低い基準値Th0を設定し、押下量が基準値Th0に達したキーKyが検出された際に、このキーKyのスキャン周期を短くする制御を行う。以下、詳細に説明する。
【0041】
上述したように、全てのキーKyを順繰りにスキャンする方法を採用すると、一のキーKyについて今回のスキャンから次回のスキャンまでの時間に、全てのキーKyについての1回のスキャンが実施されるので、長時間を要してしまう。例えば、全体のキー数が100個である場合には、一のキーKyの今回のスキャンから、それ以外の99回のスキャン後に一のキーKyの次回のスキャンが実施されることになる。本実施形態では、押下量が基準値Th0に達したキーKyについてのスキャン周期を短くするために、スキャンの周期を4回毎とする。即ち、全体のキー数よりも少ない間隔でスキャンする。
【0042】
例えば、1回目のスキャンで、キーKy(1,1)の押下量が基準値Th0に達した場合には、Ky(1,1)、Ky(1,2)、Ky(1,3)、Ky(1,1)、Ky(1,4)、Ky(1,5)、Ky(1,6)、Ky(1,1)、Ky(1,7)、Ky(1,8)、Ky(1,9)、Ky(1,1)、・・・Ky(i,j)の順にスキャンする。つまり、キーKy(1,1)については、短い周期(4回毎)でスキャンが実施されることになる。なお、本発明は、4回毎のスキャンに限定されない。
【0043】
図4に示す主制御部41にて、ドライブ回路11に出力するドライブ制御信号、及びマルチプレクサ31に出力する切替制御信号を制御することにより、キーKyのスキャン周期が短くなるように制御する。また、複数(例えば、2個)のキーKyが押下され基準値Th0に達した場合には、押下された全てのキーKyのスキャン周期を短くする。
【0044】
[処理手順の説明]
以下、図6図7に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る静電容量式キーボード装置10の具体的な処理手順について説明する。初めに、図6のステップS11において、主制御部41は、演算に用いる各パラメータを初期化する。また、上述した基準値Th0、第1閾値Th1、及び第2閾値Th2を設定する。この処理は、図4に示した主制御部41に予め設定されているか、或いは、操作者が初期入力操作により設定することができる。更に、後述するタイマカウンタTc(m,n)の値を全て0に設定し、図1に示すドライブライン(行数)を示す符号m、センシングライン(列数)を示す符号nをそれぞれ「1」とし、更に、今回のスキャンと次回のスキャンのインターバルのスキャン回数(詳細は後述)を示す符号Lを「0」に設定する。
【0045】
ステップS12において、主制御部41は、ドライブ制御信号を出力して各ドライブラインM-1〜M-iに印加する電圧を順次「H」レベルに切り替え、センシング回路12で検出される電圧を測定する。更に、測定した電圧を、キーKyに対応させて記憶部44に記憶する。具体的には、m行、n列のキーKy(m,n)にて検出された電圧Vk(m,n)を記憶部44に記憶する。初期的には、m=1、n=1であるから、キーKy(1,1)にて検出された電圧Vk(1,1)を、記憶部44に設定した記憶領域に記憶する。
【0046】
ステップS13において、電圧Vk(m,n)と基準値Th0を比較する。「Vk(m,n)<Th0」である場合には、キーKy(m,n)は押下されていないものと判断し、ステップS14において、F0(m,n)、F1(m,n)をそれぞれ「0」に設定する。F0(m,n)は、キーKyの押下量が基準値Th0に達したことを示すパラメータ、F1(m,n)は、キーKyの押下量が第2閾値Th2に達したことを示すパラメータである。一方、「Vk(m,n)≧Th0」である場合には、キーKy(m,n)は押下されたものと判断し、ステップS15において、F0(m,n)を「1」に設定する。
【0047】
ステップS16において、主制御部41はインターバルのスキャン回数を示すパラメータLをインクリメントし(L=L+1とし)、更に、ステップS17において、「L=3」であるか否かを判断する。「L=3」である場合には、ステップS18において高速スキャンを実施する。「L=3」でなければ、高速スキャンを実施せずにステップS20に処理を進める。「高速スキャン」とは、ステップS51〜ステップS63までの処理手順を指しており、全てのキーKyを順繰りにスキャンする通常スキャンに割り込んで、基準値Th0に達したキーKyについての電圧測定を含む処理のことである。
【0048】
以下、図7に示すフローチャートを参照して、図6のステップS18に示す高速スキャンの処理手順について説明する。初めに、図7のステップS51において、行数を示す符号m’、列数を示す符号n’を初期化する。即ち、「m’=1」、「n’=1」とする。なお、図7では、図6のフローチャートで使用したm、nと区別するために、各符号m、nに「’」を付して示している。
【0049】
ステップS52において、主制御部41は、対象となるキーKyについて、「F0(m',n')=1」であるか否かを判断する。図6に示したステップS15の処理が実行されている場合、即ち、キーKy(m',n')が押下されて電圧が基準値Th0に達した場合に、ステップS52にてYES判定となり、ステップS53に処理を進める。一方、NO判定の場合には、対象となるキーKyについてはスキャンを行わず、ステップS60に処理を進める。
【0050】
ステップS53において、主制御部41は、「F1(m',n')=1」であるか否かを判断する。上述したように、F1(m,n)は押下量が第2閾値Th2に達したときに「1」となるので、初期的には「0」であり、NO判定となって、ステップS54に処理を進める。
【0051】
ステップS54において、主制御部41は、キーKy(m',n')に生じる電圧Vk(m',n')の測定を実施する。この処理では、キーKy(1,1)、Ky(1,2)、・・のように、各キーKyに生じる電圧を順繰りに測定することになるが、実際には、図6のS13で押下が検出されたキーKyについてのみ電圧検出を実行するので、短時間での実施が可能である。即ち、図6のS12に示した処理と対比して、図7のS54に示した処理は、処理時間が極めて短い。
【0052】
ステップS55において、キーKy(m',n')にて検出された電圧Vk(m',n')が第1閾値Th1以上であるか否かを判断する。第1閾値Th1に達していない場合には(ステップS55でNO)、ステップS60に処理を進める。即ち、電圧が第1閾値Th1に達しない場合には押下速度を演算する必要が無いので、後述するステップS56〜S59の処理を実施しない。
【0053】
一方、第1閾値Th1以上である場合には(ステップS55でYES、後述する図9のt7に対応)、ステップS56において、キーKy(m',n')についてのタイマカウンタTc(m',n')をインクリメントする。上述したように、タイマカウンタTc(m',n')は、初期的には「0」である。
【0054】
ステップS57において、主制御部41は、キーKy(m',n')にて検出された電圧Vk(m',n')が第2閾値Th2以上であるか否かを判断する。第2閾値Th2に達していない場合には(ステップS57でNO)、ステップS60に処理を進める。第2閾値Th2以上である場合には(ステップS57でYES、図9のt22に対応)、ステップS58に処理を進める。
【0055】
ステップS58において、主制御部41は、キーKy(m',n')についてのタイマカウンタTc(m',n')を、図4に示す出力インターフェース43より、ホストコンピュータ16に出力する。ホストコンピュータ16では、タイマカウンタTc(m',n')に基づいて、キーKy(m',n')が押下されたときの押下速度を演算する。即ち、キーKyを押下することにより生じる電圧が第1閾値Th1から第2閾値Th2に達するまでの時間が検出されるので、キーKyを押下する際の押下速度を算出することができる。
【0056】
ステップS59において、主制御部41は、タイマカウンタTc(m',n')を「0」とし、パラメータF1(m',n')を「1」とする。パラメータF1(m',n')を「1」とすることにより、次回の処理では、図7のステップS53にてYES判定となり、電圧の測定は行われない。
【0057】
ステップS60において、主制御部41は、m’をインクリメントする。ステップS61において、主制御部41は、m’がi+1(iは行数)となったか否かを判断する。つまり、最終行に達したか否かを判断する。m’=i+1でなければ(ステップS61でNO)、ステップS52に処理を戻す。 m’=i+1であれば(ステップS61でYES)、ステップS62に処理を進める。
【0058】
ステップS62において、主制御部41は、m’を「1」とし、n’をインクリメントする。ステップS63において、主制御部41は、n’がj+1(jは列数)となったか否かを判断する。つまり、最終列に達したか否かを判断する。n’=j+1でなければ(ステップS63でNO)、ステップS52に処理を戻す。n’=j+1であれば(ステップS63でYES)、図6のステップS19に処理を進める。
【0059】
図6のステップS19において、主制御部41は、「L=0」とし、ステップS20に処理を進める。
ステップS20において、主制御部41は、mをインクリメントし、更に、ステップS21において、m=i+1であるか否かを判断する。m=i+1でなければ(ステップS21でNO)、ステップS12に処理を戻し、m=i+1であれば(ステップS21でYES)、ステップS22に処理を進める。
【0060】
ステップS22において、主制御部41は、mを「1」とし、nをインクリメントする。ステップS23において、主制御部41は、nがj+1となったか否かを判断する。つまり、最終列に達したか否かを判断する。n=j+1でなければ(ステップS23でNO)、ステップS12に処理を戻す。n=j+1であれば(ステップS23でYES)、ステップS24において、nをインクリメントし、ステップS12に処理を戻す。
こうして、各ドライブラインM、センシングラインNをスキャンし、電圧値が基準値Th0に達したキーKyの押下量を短い周期(4回のスキャン毎)で測定して、押下速度を演算することができる。
【0061】
図8は、時間経過と任意のキーKyに生じる電圧との関係、及び上述したパラメータF0、F1、タイマカウンタTcの変化を示すグラフである。
図8(a)に示すように、任意のキーKyが押下されると、このキーKyに生じる電圧が徐々に増加し、その後キーが離されると徐々に低下するように変化する。時刻t31にて電圧が基準値Th0に達すると、図8(b)に示すように、パラメータF0を「0」から「1」に切り替える。即ち、図6のステップS15の処理が実行される。
【0062】
時刻t32にて電圧が第1閾値Th1に達すると、図8(d)に示すように、タイマカウンタTcがカウントを開始する。即ち、図7のステップS56の処理が実行される。
時刻t33にて電圧が第2閾値Th2に達すると、図8(c)、(d)に示すように、パラメータF1を「0」から「1」に切り替える。更に、タイマカウンタTcがカウントを終了する。即ち、図7のステップS59の処理が実行される。このときのタイマカウント値X1は、キーKyの押下量が第1閾値Th1から第2閾値Th2に達するまでの所要時間を示すから、キーKyの押下速度に対応する。このタイマカウント値は図4に示す出力インターフェース43よりホストコンピュータ16に出力される。
【0063】
時刻t34にて電圧が基準値Th0未満まで低下すると、パラメータF0、F1をそれぞれ「0」とする。即ち、図6のステップS14の処理が実行される。次に、時刻t35にてキーKyが再度押下され押下量が基準値Th0に達するまで維持される。こうして、タイマカウント値X1が求められ、ホストコンピュータ16に送信されるので、該ホストコンピュータ16では、キーKyを押下したときの押下速度を演算することができる。
【0064】
次に、上記の処理を実施したことによる、キーKyのスキャンタイミングと電圧の変化について図9に示すグラフを参照して説明する。
図9は、キーKy(1,1)が押下されたときのスキャンのタイミングと、押下により生じる電圧の変化を示す特性図である。図6のステップS17の処理でL=3としたことにより、3回のインターバル(即ち、4回毎)に、キーKy(1,1)のスキャンが実施されることになる。このため、図9に示すように時刻t2、t3、・・・t22、t23のタイミングでスキャンが実施されている。前述した図5に示したスキャン周期と対比して、スキャン周期が短くなっていることが理解される。このため、図9に示す時刻t2にて電圧が基準値Th0に達し、時刻t7にて電圧が第1閾値Th1に達し、更に、時刻t22にて電圧が第2閾値Th2に達したことを検出できる。
【0065】
このため、キーKy(1,1)の押下量が第1閾値Th1に達してから第2閾値Th2となるまでの時間ΔTを高精度に検出することが可能となる。ひいては、キーKy(1,1)を押下したときの押下速度を高精度に演算することが可能となる。
【0066】
このようにして、第1実施形態に係る静電容量式キーボード装置10では、複数のキーKyを順繰りにスキャンし、一のキーKy(上述の例では、キーKy(1,1))の押下量が基準値Th0に達したことが検出された場合には、このキーKyについて、スキャン周期を短くしている。具体的には、4回のスキャン毎にこのキーKyのスキャンを実施している。従って、押下量検出の分解能が向上し、キーKyの押下量が第1閾値Th1に達した時刻、及び第2閾値Th2に達した時刻を高精度に検出することができる。その結果、押下速度を高精度に演算でき、MIDI鍵盤として用いる場合に極めて有用である。
【0067】
また、キーKyの押下量が第2閾値Th2に達した場合には、その後、このキーKyについて高速スキャン内の電圧の測定並びにカウンタタイマのインクリメントを行わない。即ち、キーKyの押下量(電圧値)が第2閾値Th2に達した場合には、図7のステップS57でYES判定となり、その後、ステップS59の処理でパラメータF1が「1」に設定される。このため、次回のスキャンでは、ステップS53の処理でYES判定となり、ステップS54の電圧の測定並びにステップS56のカウントタイマのインクリメントを行わない。従って、不要な演算が行われることを防止でき、演算負荷を軽減できる。
次に、キーKyが離され押下量が減っても、パラメータF1が「1」に設定されているので、上記状態が維持される。更に、キーKyの押下量が基準値Th0未満まで一旦低下し、再度基準値Th0に達するまで維持される。
【0068】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。装置構成は、図1図4に示したものと同様であるので、構成説明を省略する。第2実施形態では、前述した第1閾値Th1、第2閾値Th2に加えて、第2閾値Th2よりも大きい第3閾値Th3を設定している点で、前述した第1実施形態と相違する。即ち、キーKyの押下量の閾値を3以上設定している。
【0069】
図10は、キーKy(1,1)の押下量が基準値Th0に達し、更に、第1閾値Th1,第2閾値Th2、第3閾値Th3に達したときの、スキャンタイミングを示すグラフである。具体的には、時刻t2にて基準値Th0に達し、時刻t7にて第1閾値Th1に達し、時刻t14にて第2閾値Th2に達し、時刻t22にて第3閾値Th3に達した場合を示している。
【0070】
この場合には、時刻t7〜t14までの時間ΔT1、時刻t14〜t22までの時間ΔT2、及び時刻t7〜t22までの時間ΔT3を検出できる。即ち、複数の閾値間の所要時間を測定できる。従って、時間ΔT1、ΔT2、ΔT3のうちのいずれか一つを選択して押下速度を求めることができる。
【0071】
本発明の第2実施形態により、例えば、押下量がTh0→Th1→Th2→Th3の順に大きくなり、その後、Th1とTh2の間の押下量に戻され、再度Th2→Th3を超えるように変化することが有る。このような場合には、Th2とTh3との間の時間であるΔT2を用いて押下速度を求めることにより、アコースティックピアノの連打感を表現することが可能となる。
【0072】
このように、第2実施形態に係る静電容量式キーボード装置では、第1、第2閾値に加えて、第3閾値Th3を設定することにより、より汎用性に富む押下速度の演算が可能になる。このため、MIDI機器用の鍵盤として用いる場合には、楽器の種別に応じてより楽器自体の音源に近づけた音色を出力することが可能となる。
【0073】
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。装置構成は、図1図4に示したものと同様であるので、構成説明を省略する。第3実施形態では、一のキーKyが押下され押下速度を演算しているときに、他のキーKyが押下された場合の、スキャン順序を変更する。
【0074】
キーKy(1,1)、Ky(1,2)の2キーが押下され、押下量が基準値Th0に達した場合には、スキャン順序は以下のようになる。
Ky(1,1)、Ky(1,2)、Ky(1,3)、Ky(1,1)、Ky(1,2)、Ky(1,4)、Ky(1,5)、Ky(1,6)、Ky(1,1)、Ky(1,2)、・・・Ky(2,1)、Ky(1,1)、Ky(1,2)、Ky(2,2)、Ky(2,3)、Ky(2,4)、Ky(1,1)、Ky(1,2)、・・・Ky(m,n)
つまり、複数のキーKyが押下された場合には、これ以外のキーKyが3回スキャンされる毎に、押下されたキーKyのスキャンを実行する。こうすることにより、複数のキーKyが押下された場合でも、押下されたキーKyのスキャン周期を短くして、高精度な押下速度演算を行うことができる。
【0075】
以上、本発明の静電容量式キーボード装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0076】
例えば、上記した実施形態では、各ドライブラインMと各センシングラインNの交差点にそれぞれキーKyが配置される構成を示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、交差点にキーKyが配置されていない箇所が存在しても良い。また、ドライブラインMとセンシングラインNの数は同数であってもよい。即ち、i=jとすることもできる。
【0077】
更に、上述した実施形態では、センシング回路12に設ける2つの抵抗R1、R2の抵抗値が同一である例について説明したが、本発明はこれに限定されず、異なる抵抗値としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 静電容量式キーボード装置
11 ドライブ回路
12 センシング回路
15 制御回路
16 ホストコンピュータ
21 基板
22 ハウジング
23 コイルスプリング
24 ラバー
25 プランジャ
26 キートップ
31 マルチプレクサ
32 ピークホールド回路
33 A/D変換回路
41 主制御部
42 記憶制御部
43 出力インターフェース
44 記憶部
Q1,Q2 電極
R1 抵抗
R2 抵抗
SW スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12