特開2018-160878(P2018-160878A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-160878(P2018-160878A)
(43)【公開日】2018年10月11日
(54)【発明の名称】セルフカット支援システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20180914BHJP
   A45D 44/00 20060101ALI20180914BHJP
【FI】
   H04N7/18 U
   A45D44/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-77159(P2017-77159)
(22)【出願日】2017年3月21日
(11)【特許番号】特許第6318325号(P6318325)
(45)【特許公報発行日】2018年4月25日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】317005295
【氏名又は名称】寺島 祐
(71)【出願人】
【識別番号】512175960
【氏名又は名称】春日 貴章
(71)【出願人】
【識別番号】317005284
【氏名又は名称】味元 汰樹
(72)【発明者】
【氏名】春日 貴章
(72)【発明者】
【氏名】寺島 祐
(72)【発明者】
【氏名】味元 汰樹
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054FE12
5C054HA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】画像処理技術と専用の制御用電源タップを用いて電動クリッパーの動作を制御可能することで、操作のミスによる刈りすぎといった事故を防止することができるシステム及び設定したカットラインを、拡張現実感技術を用いることでカメラ画像上に重ねて表示し、ラインを確認しながら容易に髪形を整えることが可能となるシステムを提供する。
【解決手段】ラインの確認を行いながら容易に髪を整えることが可能なシステムは、画像処理技術と専用の制御用電源タップ5を用いることで、電動クリッパー3の動作を制御する。操作のミスによる刈りすぎといった事故を防止し、設定したカットラインを拡張現実感技術によってカメラ画像上に重ねて表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
髪を切る用途において使用されるセルフカット支援システムであって、
髪を切る人の頭部に取り付けられる基準マーカが設けられた位置決め用ヘアバンドと、
位置決め用ヘアバンドが取り付けられた人の頭部を撮影する撮影装置と、
撮影装置が撮影した画像が入力され、入力された画像に基づいて表示装置に表示する画像を形成する制御装置と、を備えており、
制御装置は、
髪をカットするカットラインを設定する機能と、
撮影装置が撮影した画像における位置決め用ヘアバンドに設けられた基準マーカの位置に基づいて、髪をカットするカットラインを撮影装置が撮影した画像に重ねて表示する機能と、を有している
ことを特徴とするセルフカット支援システム。
【請求項2】
位置検出用のマーカが設けられた電動クリッパーと、
電動クリッパーが接続され、電動クリッパーの作動を制御する、電源プラグを備える制御用タップを備えており、
制御装置は、
基準マーカと電動クリッパーのマーカに基づいて、制御用タップにより電動クリッパーの動作制御を調整する
ことを特徴とする請求項1記載のセルフカット支援システム。
【請求項3】
電動クリッパー用マーカには電動クリッパーに関する情報が含まれており、
電動クリッパーに対応した電動クリッパー用マーカを複数備えており、
制御装置は、
各電動クリッパー用マーカに応じて制御用タップによる電動クリッパーの動作制御を調整する
ことを特徴とする請求項1または2記載のセルフカット支援システム。
【請求項4】
制御装置は、
カットラインを自由描写する機能と、カットラインのテンプレート選択機能を備えていることを特徴とする請求項1、2または3記載のセルフカット支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自分の手で散髪を行う、セルフカットを選択する者を対象として、画像処理技術および専用の制御用電源タップを駆使することで電動クリッパーの動作を制御可能なセルフカット支援システムである。
【背景技術】
【0002】
散髪は美容院、理容院などの場所で専門家の手に任せるのが一般的であるが、自分が抱く理想的な髪形のイメージは口頭ではうまく伝わらないことも多い。また、店内が混雑していた場合、修正を頼むことは難しく、納得のいかない髪形であってもそのまま帰宅してしまう人も少なくない。そのため、そういった不満や金銭の浪費を嫌い、自分の手で散髪を行う、セルフカットを選択する人も多い。セルフカットに必要なものは鏡、電動クリッパー、すきバサミ程度であり、数千円の初期投資で自分の髪形を自由に維持することが可能である。加えてセルフカット用の指南書や、セルフカット用に長さが調節可能なアタッチメントが搭載された電動クリッパーも広く市販されている。このようにセルフカットを始めるまでのハードルは低くなってきているが、実際にセルフカットを行うにあたって大きな障害となっているのが、自分からでは確認が難しい後頭部および側頭部のカットである。方法として合わせ鏡によって確認を行う、またはUSBカメラとノートPCを使用して撮影しながらカットを行う、といった方法が挙げられる。しかし、前者は自分の顔が邪魔になってしまう、カットを行う場所によっては鏡の移動が必要になる、また複数枚の鏡が必要になるなど煩雑である。後者は後頭部の確認が容易であるという点において優れているが、自分の後ろ側で電動クリッパーを動かすという動作に慣れず、ミスを犯してしまう危険性は拭えない。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−187892
【発明の概要】
カメラを用いてカットを確認する方法として、特許文献1には、美容室、理容室の頭髪カットサービスにおいて、鏡と、モニターを備え、周囲にはカメラが設置され、頭髪カットサービス中、又は終了時に頭髪の状態をモニターに映し出し、頭髪形状確認を容易にするビジネスモデルが開示されている。この方法を採用すれば、後頭部、右側頭部、左側頭部の頭髪形状を常時確認でき、手持ち鏡を持つ手間を省くことが可能である。しかし、特許文献1の技術は、カメラでの確認を主目的とするものであり、自分でカットする際にカットを支援する技術ではない。
【発明の目的】
【0004】
本発明の目的は、電動クリッパーの操作ミスを防止すること、および容易に髪形を整えることが可能なセルフカット支援システムを提供することである。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像処理技術および専用の制御用電源タップを駆使することで、電動クリッパーの操作ミスを防止すること、および容易に髪形を整えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、セルフカットに特化した画像認識技術、および専用の制御用電源タップを用いた電動クリッパーの動作制御により操作ミスを防止すること、及び容易に髪形を整えることができると考えた。
【0007】
本発明は、以下の技術手段から構成される。
[1]電動クリッパーの操作ミスを防止すること、および容易に髪形を整えることが可能なセルフカット支援システム。セルフカット支援システムは、制御用マイコンと、通信用無線モジュールと、電源スイッチと、電源制御用リレーモジュールと、AC/DC変換器と、電源プラグを備える制御用電源タップと、基準マーカが設けられた位置決め用ヘアバンドと、電動クリッパー本体と、電動クリッパー用マーカと、USBカメラと、コンピュータと、コンピュータへの入力手段から構成される本体部を備えている。上記の構成物を使用して、基準となる位置決め用ヘアバンドを頭部に、電動クリッパー用マーカを電動クリッパーに取り付け、電動クリッパーの電源ケーブルを制御用電源タップに接続して使用する。また各マーカをUSBカメラによってコンピュータで認識させ、マーカの位置に応じて電動クリッパーへの電力供給のオン・オフを制御する手段を備える。
[2]ProcessingとAR技術用ライブラリを用いて作成した専用プログラム。プログラムの動作としては、プログラム上でUSBカメラによって撮影された頭部を確認しながら、希望するカットラインを設定する。カメラ画像上で電動クリッパー用マーカを認識することで、電動クリッパーの位置、及び角度を取得することが可能となり、設定されたカットラインを超えてカットしようとした際には制御用電源タップによって自動的に電動クリッパーの動作を停止させるアルゴリズムを備える。
【発明の効果】
【0008】
セルフカットを行う上で側頭部、後頭部のカットは目視での確認が難しく、刈りすぎやバランスの乱れといったミスが発生しやすい。本システムを利用することで、必要なカットのラインをカメラ画像上に重ねて表示しながらカットすることができ、また、ラインを超えてカットしようとした際には制御用電源タップによって電動クリッパーが自動的に停止するため、致命的なミスを防ぐことが出来る。本システムは、市販されている電動クリッパーにマーカと制御用電源タップを取り付けることで使用できるため、導入するにあたっての障害も少ない。また、本システムでは電動クリッパーの位置の取得にARマーカを用いていることから、電動クリッパーの角度も取得することが可能である。その為、直線的なカットのライン以外にも、斜めのラインや曲線にも対応可能である。
また、アタッチメントのカット長に合わせた電動クリッパー用マーカを装着することで、襟足やもみあげ以外の部位のカットにも対応できる。そのため、画面上に表示されたカットラインに合わせて電動クリッパーを動かすだけで、ミスなく自分の望んだバランスの髪形を作り上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】セルフカット支援システムの全体構成図である。
図2】制御用電源タップの構成図である。
図3】専用プログラムの構成図である。
図4】位置決め用ヘアバンド及び電動クリッパーに設置するマーカの構成図である。
図5】使用方法についてのフローチャートである。
図6】カットラインのテンプレート及びラインの分類図である。
図7】実施例の図である。
図8】カットラインの追従性の確認の図である。
【発明を実施するための形態】
本発明のセルフカット支援システムは、カメラによってカットを確認することを主目的とするのではなく、拡張現実感技術を用いたカットラインの表示、および電動クリッパーの動作制御を行うことに特徴を有する技術である。
【0010】
(システムの構成)
本システムは、図1に示すように、画面上にカットラインを表示するための原点となる基準マーカ1及び基準マーカ1が設けられた位置決め用ヘアバンド2、散髪を行うための電動クリッパー3、電動クリッパー3の位置を取得するための電動クリッパー用マーカ4、電動クリッパー3の動作を制御するための制御用電源タップ5、制御用タップを制御して電動クリッパー3への電力供給のオン・オフの制御を行う専用プログラム、頭部の撮影を行うためのUSBカメラ6、専用プログラムを動作させるためのコンピュータ7、専用プログラムの操作を行うためのマウス8及びコンピュータへの入力手段からなる。
(使用方法)
発明を実施するための形態を、実際に使用を行う手順の一例で説明する。
使用者は、まず電動クリッパー3に電動クリッパー用マーカ4を取り付け、電動クリッパー3の電源ケーブルを制御用電源タップ5に接続する。その後、位置決め用ヘアバンド2を頭部に装着する。使用者の正面にコンピュータ7を設置し、基準マーカ1とカットしたい部分が撮影できる位置にUSBカメラ6を設置する。
設置が終わった後、制御用電源タップ5のスイッチをオンにし、コンピュータ7上で専用プログラムを起動する。起動後、自動的にBluetoothもしくはZigBeeを用いて専用プログラムと制御用電源タップ5間でのペアリングが行われる(S1)。ペアリング終了後、基準マーカ1及び電動クリッパー用マーカ4の認識率、及び電動クリッパーの先端部分の位置を調整する(S2)。
調整後、使用者はカットラインの設定を行う(S3)。カットラインの描画はカメラ画像上に直接行う。描画を行う方法としては、テンプレートの使用(S4)、及び自由描画モード(S5)が選択できる。この際、襟足やもみあげのカットラインに加えて、カット長に合わせたカットラインの設定も可能である。
次に、専用プログラムの開始ボタンをクリックし、電動クリッパー3の電源スイッチをオンにする(S6)。
電動クリッパー3が作動すると、使用者は、カメラ画像上に重ねて表示されているカットラインに合わせて電動クリッパー3を動かし、カットを行う(S7)。
カット終了後、側頭部や追加のカットを続けて行う場合には、位置決め用ヘアバンド2、USBカメラ6、コンピュータ7の位置やカットラインを変更し、カットを継続する(S8)。
例えば、側頭部をカットする場合、位置決め用ヘアバンド2は図1のように取り付け、図6のような後頭部カットラインおよび側頭部カットラインのテンプレートを選択し画像における側頭部に配置する。
追加のカットを行わない場合には、電動クリッパー3の電源スイッチ、及び制御用電源タップ5のスイッチをオフにすることで、本システムを終了する。
本システムでは、カットミスを防ぐために、以下のように制御用電源タップ5から電動クリッパー3へ電力供給を制御している。
制御用電源タップ5から電動クリッパー3へ電力が供給される条件は4つであり、(1)制御用電源タップ5のスイッチがオンであること、(2)専用プログラム側で開始ボタンがオンであること、(3)基準マーカ1及び電動クリッパー用マーカ4が専用プログラム側において正常に認識されていること、(4)使用者が決定したカットラインよりも電動クリッパー先端の位置が外側であることの4つが満たされている時に電動クリッパー3は動作する。(3)の条件は、障害物等によってマーカが隠れてしまい、位置情報が正確に取得できていない状態での電動クリッパー3の操作ミスを防ぐためのものである。(4)は設定したカットラインを割り込むなど、意図しないカットを防ぐためのものである。
【0011】
(制御用電源タップ)
制御用電源タップ5は、図2に示すように制御用マイコン(Arduino、Raspberry Pi等)13、通信用無線モジュール(ZigBee、Bluetooth等)9、電源スイッチ12、電源制御用リレーモジュール10、AC/DC変換器11、電源プラグ14で構成されている。通信用無線モジュール9、電源スイッチ12、電源制御用リレーモジュール10、AC/DC変換器11は制御用マイコン13に接続されており、制御用マイコン13への電力は電源プラグ14をコンセントに差し込んだ際にAC/DC変換器11を通して供給される。制御用電源タップ5は無線通信モジュール9を介してコンピュータ7と無線接続され、後述の専用プログラムによって電動クリッパー3への電力供給が制御される。電源スイッチ12ではオン(セルフカット支援状態)、オフ(セルフカット支援無し状態)の切り替えが可能である。
【0012】
(位置決め用ヘアバンド)
位置決め用ヘアバンドは、樹脂製の一般的なヘアバンド2に基準マーカ1を取り付けたものである。基準マーカ1は蝶番型のジョイントでヘアバンドに固定されており、使用ケースによって基準マーカ1の角度を変更することが可能である。本発明で頭部の動きに合わせてカットラインを追従して表示させるためには、基準マーカ1の位置も追従して動く必要があり、例えば体にARマーカを取り付けた場合、頭部の動きに合わせてカットラインは追従しない。よって、ヘアバンド2によって基準マーカ1を頭部に固定する。例ではヘアバンド2を用いたが、頭部にマーカを固定することが可能なものであれば、カットラインを頭部に追従させることができる。取り付け位置は頭頂部に限定されず、頭部のいずれかの場所に位置決め用ヘアバンド2が装着されていれば本システムの動作要件を満たす。例えば、頭頂部のヘアバンド2が邪魔になって切りにくい位置のカットを行う場合には、基準マーカ1の角度を変更後、ヘアバンド2を後頭部等別の場所に取り付けることで、頭頂部のカットを行うことができる。また、側頭部のカットを行う場合には位置決め用ヘアバンドのヘアバンド2を前頭部から後頭部にまたがるように縦に取り付ける。
なお、ヘアバンドには、カチューシャやヘアクリップなどの一般的に頭部に取り付けることができるものを含んでいる。
【0013】
(専用プログラム)
専用プログラムは、図3に示すようなディスプレイ上に、全般設定ウィンドウ18を表示させる機能と、カットラインの描画設定ウィンドウ19を表示させる機能と、カメラ画面15を表示させる機能から構成されている。全般設定ウィンドウでは、制御用電源タップ5と専用プログラム間のペアリングと、電動クリッパー3のサイズ設定と、カットラインに対しての閾値の設定と、マーカ1,4の認識率の確認等を行うことが出来る。電動クリッパー3のサイズ設定は、電動クリッパー3の機種の違いによる電動クリッパー用マーカ4から電動刃先端までの長さや電動刃の幅を調節するための設定であり、電動クリッパー用マーカ4から先端までの距離と電動刃の幅を、画面上の数値を変更することで調節する。入力が完了すると、先端部(電動刃)を表すグラフィックス17が電動クリッパー用マーカ4の座標を元に描画される。使用者が電動クリッパー3を使用すると実際の電動刃は髪の毛で隠れて見えなくなるが、本発明では電動刃を表すグラフィックスにより、電動刃の位置を画面上で確認することが可能であるので、意図しないカットを防ぐことが出来る。
カットラインの描画設定ウィンドウでは、カットラインの自由描画、もしくはテンプレートの使用を選択できる。テンプレートとは図6に示すような、一般的にセルフカットに適しているツーブロック、角刈りなどの髪形のために予め用意されたカットラインの事を指す。カットラインを設定後は画面上にポインターを表示し、マウス、またはタッチパネル等の入力機器を用いてカメラ画像上で直接テンプレートの配置を行う、もしくはカットラインの自由描画を行うことが可能である。
テンプレートを使用する場合には、頭部の大きさに合わせて拡大、縮小及び縦横比の変更を行うことができる。この際、後頭部と側頭部のカットラインは連動して変更されるが、頭部の形状によって微調整が必要な場合もあるため、カットを行う前に位置決め用ヘアバンドを付け替えて後頭部、側頭部の両方に合わせて使用者が調整を行う。テンプレートの調整は、カメラ画像を確認しながら描画設定ウィンドウ上のコンソールで行う。
自由描画モードでは頭部が固定されている方が描きやすい場合も考えられるため、カメラ画像を静止画として取得したうえでカットラインを描けるモード、および描写を行ったカットラインを保存するモードも搭載する。カットラインを描画する際には、襟足やもみあげ用のラインを設定できるほか、カット長に合わせたカット範囲を指定することも可能である。
電動クリッパー用マーカ4は複数用意しておくことが望ましい。例えば、カット長によって電動クリッパー用マーカ4を変更することで現在のカット長を専用プログラム側に認識させることが可能になる。すると、この場合、専用プログラムに現在のカット長を認識させることが可能となるので、現在のカット長に合わせたカットラインを自動で表示させることが可能となる。
【0014】
(電動クリッパー3)
電動クリッパー3は広く市販されている、カット長調節用のアタッチメントが付いた電動の散髪用クリッパーを使用することができるが、とくに使用する電動クリッパー3は制限されない。市販されている電動クリッパーには充電式、交流電源式の二種類の給電方式があり、現在主流なのはコードレスでも交流電源でも使用できる充電・交流式である。本発明は制御用電源タップ5によって電動クリッパー3の動作を制御するため、交流式、充電・交流式に対応している。充電・交流式の場合には交流電源による給電状態での使用となる。
【0015】
(コンピュータ7)
コンピュータ7も一般的に使用されているものを使用することができ、とくに限定されない。例えば、コンピュータ7として、WindowsOSが搭載されたパソコンを使用することができる。また、コンピュータ7で作動するアプリケーションは、上述した専用プログラムの機能を実現できるものであればよく、とくに限定されない。例えば、アプリケーションとしてはグラフィックスに特化したプログラミング言語であるProcessingで記述した専用プログラムを挙げることができる。
【0016】
(USBカメラ6)
USBカメラ6も一般的に使用されているものを使用することができ、とくに限定されない。例えば、USBカメラ6は広く市販されている、200万画素のCMOSカメラを使用することができる。具体的には、専用プログラムの動作するコンピュータ7に接続して頭部の撮影を行うことができる機能を有するものであればよい。
【0017】
(マーカ1,4の構成)
本発明で使用するマーカ1,4には、拡張現実感技術に使用されるARマーカを使用することができる。ARマーカは白黒のパターン画像であり、USBカメラ等のカメラでマーカを撮影することで画面端及び基準マーカを原点とした他のマーカの座標及び角度を取得することが可能である。本発明ではARToolKitなどのライブラリで広く使用されている、正方形の黒枠内に左右非対称のパターンが描かれたマーカを使用したが、マーカとして用いることが可能であれば種類は問わない。マーカの材質は、プラスチック等の樹脂製であり、サイズに関しては、位置決め用ヘアバンドに取り付けられている基準マーカ1は例えば5cm×5cm程度、電動クリッパー用マーカ4は3cm×3cm程度である。基準マーカ1は側頭部をカットする際にマーカのつけ直しを省くため、裏表の両面にマーカを印刷する図4(1,23)。電動クリッパー用マーカ4はアタッチメントによってカット長を調節できる場合を想定して、例えば1mm、3mm、5mmなどカット長によってマーカのパターンを変更する図4(4,21,22)。
【0018】
本発明では電動クリッパー用マーカ4の座標は頭部に取り付けられた基準マーカ1の座標を原点として計算される。設定したカットラインも基準マーカ1の座標を原点として描画されるため、カットラインは頭部の動きに追従して表示される。電動クリッパーの3位置とカットラインは、どちらも基準マーカ1を原点としているため、例えば頭部が傾いていたとしても、カットラインを電動クリッパー3の先端が割り込んだかどうかは正常に判断される。そのため、使用者は頭部の動きを気にせずカットすることが可能である。
【実施例】
【0019】
実施例の画面を図7に示す。制御用電源タップを除いたソフトウェア部分を中心に開発を行い、実現可能性について検討を行った。ソフトウェアはプログラミン言語であるProcessing2.0を用いて作成し、拡張現実感(AR)技術に関してはProcessing向けのフリーのARライブラリであるNyARToolkitを使用した。
まず、カットラインの表示について確認した。図7に示す通り、基準マーカに合わせて赤いカットラインが表示されていることが分かる。このカットラインは基準マーカの位置に合わせて表示されているため、図8のように頭を傾けても追従して表示される。電動クリッパーの先端グラフィックスに関しても、図7に示すようにクリッパー用マーカの位置情報に合わせて表示されており、電動クリッパーを移動させてもマーカが認識されている限り追従する。このようにグラフィックスの表示に関して発明に必要な要件を満たしていることが確認できた。
【符号の説明】
【0020】
1 基準マーカ
2 位置決め用ヘアバンド
3 電動クリッパー
4 電動クリッパー用マーカ(1mm)用
5 制御用電源タップ
6 USBカメラ
7 コンピュータ
8 マウス
9 通信用無線モジュール
10 電源制御用リレーモジュール
11 AC/DC変換器
12 電源スイッチ
13 制御用マイコン
14 電源プラグ
15 カメラ画面
16 カットライン
17 電動クリッパーの先端を表すグラフィック
18 全般設定ウィンドウ
19 描写設定ウィンドウ
20 基準マーカ角度変更用ヒンジ
21 電動クリッパー用マーカ(3mm)用
22 電動クリッパー用マーカ(5mm)用
23 基準マーカ裏
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2017年11月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
髪を切る用途において使用されるセルフカット支援システムであって、
髪を切る人の頭部に取り付けられる基準マーカが設けられた位置決め用装身具と、
位置決め用装身具が取り付けられた人の頭部を撮影する撮影装置と、
撮影装置が撮影した画像が入力され、入力された画像に基づいて表示装置に表示する画像を形成する制御装置と、を備えており、
制御装置は、
髪をカットするカットラインを設定する機能と、
撮影装置が撮影した画像における位置決め用装身具に設けられた基準マーカの位置に基づいて、髪をカットするカットラインを撮影装置が撮影した画像に重ねて表示する機能と、を有しており、
位置検出用のマーカが設けられた電動クリッパーと、
電動クリッパーが接続され、電動クリッパーの作動を制御する、電源プラグを備える制御用タップを備えており、
制御装置は、
基準マーカと電動クリッパーのマーカに基づいて、制御用タップにより電動クリッパーの動作制御を調整する
ことを特徴とするセルフカット支援システム。
【請求項2】
電動クリッパー用マーカには電動クリッパーに関する情報が含まれており、
電動クリッパーに対応した電動クリッパー用マーカを複数備えており、
制御装置は、
各電動クリッパー用マーカに応じて制御用タップによる電動クリッパーの動作制御を調整する
ことを特徴とする請求項1記載のセルフカット支援システム。
【請求項3】
制御装置は、
カットラインを自由描写する機能と、カットラインのテンプレート選択機能を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のセルフカット支援システム。