【課題】モータを取り付ける相手側メカに対してモータシャフトの芯出しをしつつモータを相手側メカに回転止めするために、相手側メカ側に複雑な構造を用いることになると、使い勝手がよいとはいえない。
【解決手段】モータであって、シャフトを有する回転子と、回転子の外周を覆うハウジングと、ハウジングの回転子の軸方向端部を覆う端部プレートと、を備え、端部プレートは、外部から接触可能に、シャフトの延伸方向に突出した突出部を有し、シャフトの延伸方向に垂直な断面において突出部の外周面が非円形状を有し、突出部においてシャフトに対向する面を貫通した開口が設けられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1においては、ギヤボックスに対するモータシャフトの芯出しをしつつモータをギヤボックスに回転止めするために、ギヤボックス側に複雑な構造を用いることになってしまい、使い勝手がよいとはいえなかった。同様に、特許文献2においても、モータを取り付けるケース側にモータの軸方向端面から突出した突起を挿入する複数の穴をもうけることになり、ケース側に複雑な構造を用いることになってしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な構成でモータを取り付けの相手側の部材に回転止めすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、モータであって、シャフトを有する回転子と、回転子の外周を覆うハウジングと、ハウジングの回転子の軸方向端部を覆う端部プレートと、を備え、端部プレートは、外部から接触可能に、シャフトの延伸方向に突出した突出部を有し、シャフトの延伸方向に垂直な断面において突出部の外周面が非円形状を有し、突出部においてシャフトに対向する面を貫通した開口が設けられる。これにより、モータが他の部材に取り付けられる場合に、平坦面を当該他の部材に接触させることにより、簡便な構成でモータの回転トルクに抗した回転止めとすることができる。
【0007】
突出部は、シャフトに対して平行な複数の平坦面を有し、複数の平坦面は前記シャフトの中心に対して回転対称に設けられ、かつ外部から接触可能に露出していてもよい。これにより、突出部を簡便な構成とすることができる。
【0008】
複数の平坦面は、正多角形の各辺を形成する3以上の面であってもよい。これにより、回転止めになる平坦部を簡便な構成とすることができる。
【0009】
非円形状は、予め定められた角度について回転対称であってよい。これにより、モータの取付の自由度を高めることができる。
【0010】
端部プレートは、シャフトの中心と同心の円形係合部を更に有してもよい。これにより円形係合部で正確に芯出しをすることができる。
【0011】
円形係合部は凹形状を有し、突出部の内側に設けられていてもよい。これにより、芯出しをする相手側の部材が凸形状である場合に対応することができる。
【0012】
突出部の外周面からシャフトまでの距離は、ハウジングからシャフトまでの距離より短くてもよい。これにより、モータの径方向の長さを大きくすることなく、全体を小型化することができる。
【0013】
突出部の内側には、シャフトを支持する軸受を更に備えてもよい。これにより、モータの軸方向の長さを大きくすることなく、全体を小型化することができる。
【0014】
端部プレートと突出部とが、同一部材で一体成形されていてもよい。これによりプレス加工等の簡便な加工で平坦部を形成することができる。
【0015】
ハウジングおよび端部プレートが同一部材で一体成形されていてもよい。これにより、プレス加工等の簡便な加工で端部プレートおよび平坦部を形成することができる。
【0016】
ハウジングが端部プレートを保持していてもよい。これにより、端部プレートをハウジングと別体で形成することができる。
【0017】
本発明の第2の態様においては、モータ組み込み装置であって、上記いずれかのモータと、モータが組み込まれる装置本体と、装置本体に連結し、突出部の非円形状の少なくとも一部に当接することによりモータがシャフトの周りに回転することを規制する回転規制部とを備える。モータの非円形状部と回転規制部との当接により、モータ組み込み装置において、モータの回転トルクに抗して容易に回転を規制することができる。
【0018】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は本実施形態に係るモータ10の側面図であり、
図2はモータ10の正面図であり、
図3はモータ10の背面図である。
図4は、モータ10の断面図である。
【0022】
図1から
図4に示すモータ10は、外部電源から供給される電流に基づいて回転駆動力を出力する。モータ10は、例えばDCモータであって、自動車のパワーウィンドウ、パワーシート等に用いられる。モータ10は、ハウジング40と、ハウジング40に組み込まれたコネクタ56と、ハウジング40に保持された端部プレート70とを有する。
【0023】
ハウジング40は円筒部42と端面60とを有する。ハウジング40は例えば金属製であって、プレス加工により一体的に形成される。
図4に示すように、ハウジング40の内周にはマグネット50が配されている。ハウジング40は回転子20を収容している。言い換えると、ハウジング40は回転子20の外周を覆っている。
【0024】
回転子20は、シャフト22と、当該シャフト22に取り付けられたコミテータ24および電機子26を有する。電機子26は、コア30と、コア30に巻かれた巻線28とを有する。
【0025】
シャフト22にはさらに、回転子20の回転位置を検出するのに用いられる検出用マグネット31、検出用マグネット31を保持するブッシュ33、および、回転子20の軸方向の遊びを吸収するスプリング34が取り付けられる。これら検出用マグネット31、ブッシュ33およびスプリング34はシャフト22と一体的に回転する。
【0026】
コネクタ56は、カーボンブラシ54を保持するブラシホルダ52と連結されている。カーボンブラシ54はコミテータ24に接触する。これによりコネクタ56から入力された電気信号が、カーボンブラシ54、コミテータ24を介して、対応する巻線28を流れる。これにより回転子20が回転してシャフト22から外部へ回転駆動力が供給される。コネクタ56およびブラシホルダ52は例えば絶縁性の樹脂製であり、さらに上記電気信号のための配線を有する。
【0027】
ハウジング40における端面60と反対側には、端部プレート70が取り付けられる。言い換えると、端部プレート70はハウジング40の回転子20の軸方向の端部を覆っている。端部プレート70は例えば金属製であってプレス加工により形成される。端部プレート70とハウジング40にはそれぞれ爪94、46が設けられている。端部プレート70と一体に形成される爪94は、ハウジング40の端部に係合することで位置決めされ、ハウジング40と一体に形成される爪46を折り曲げることにより、端部プレート70がハウジング40に固定されて保持される。また、爪46はハウジング40の端部からモータ軸方向に凸状に設けられるものであっても良いが、ハウジング40の端部を切り曲げることで形成されるものであっても良い。
【0028】
端部プレート70は略円形であって、中央に突出部71が設けられる。突出部71はシャフト22の軸方向における回転子20から離れる方向に突出しており、シャフト22と同心の円筒形を有する。すなわち、突出部71背面側から見た場合に
図3に示すように外形が円形をなす。突出部71はその内側に軸受90を収容している。軸受90の内周は、例えば円筒形、または、一部に径の異なる凹凸部を有する略円筒形である。軸受90にはシャフト22の軸方向の一端が挿入され、当該一端を支持する。軸受90の外周は突出部71の内周に対応した形状である。
図2の例においては、突出部71の内周が略円筒形であることに対応して、軸受90の外周も略円柱形である。なお、軸受90の外周は球面であってもよい。突出部71の先端の中央には開口92が設けられ、開口92を通じてシャフト22の動力が外部へと伝達可能となっている。
【0029】
ハウジング40は
図1の左側すなわち正面側の端面60から突出した突出部62を有する。突出部62は、正面側から見た場合に
図2に示すように、外形が角の丸い正六角形を有する。すなわち、突出部62の軸方向に垂直な断面は、互いに平行な三組の平坦面64と、隣接する平坦面64どうしを連結する3つの曲面65を有する。各平坦面64はシャフト22の軸方向に対して平行である。
【0030】
端面60および突出部62はハウジング40の一部であって、当該ハウジング40のプレス加工時に一体的に加工される。すなわち、端面60および突出部62はハウジング40と同一部材で一体的に形成された端部プレートの一例であるともいえる。
【0031】
平坦面64は取り付け時に他の部材が接触可能となるように露出している。言い換えると、平坦面64の周囲にはモータ10自身の他の部材が張り出したりしていない。なお、
図2の例ではコネクタ56に近い位置に突出部62の曲面65が配されているが、これに対して位相を30°ずらして、コネクタ56に近い位置に突出部62の平坦面64が配されるようにしてもよい。
【0032】
突出部62はその内側に軸受66を収容している。軸受66の内周は、例えば円筒形、または、一部に径の異なる凹凸部を有する略円筒形である。軸受66にはシャフト22の軸方向の一端が挿入され、当該一端を支持する。軸受66の外周は突出部62の内周に内接した円筒形である。なお、軸受66の外周は突出部62の内周に内接した球面であってもよい。突出部62の先端の中央には開口68が設けられ、開口68を通じてシャフト22の動力が外部へと伝達可能となっている。
【0033】
上記構成において、モータ10が他の部材に取り付けられる場合に、平坦面64を当該他の部材に面接触させる。これにより、モータ10の回転駆動力の反力としてモータ10自体を回転させようとする回転トルクに抗して、平坦面64と他の部材との接触面でモータ10自体の回転を止めることができる。特に、U字溝のような構造を用いて当該他の部材で互いに平行な平坦面64を挟み持つことにより、モータ10を簡単な構造で確実に保持することができる。さらに、平坦面64で他の部材と面接触していることにより、大きな力が加わっても平坦面64および当該他の部材が変形しにくい。さらに、突出部62は、モータ10が取り付けられる場合のシャフト22の芯出しに用いられる。
【0034】
なお、他の部材とは面接触に限られず、平坦面64から突出する突起を設けたり、当該他の部材に突起等を設けることにより、線接触や点接触するようにしてもよい。線接触および点接触の場合には、接触している他の部材との間で径方向の力が働かないように、3か所以上で、かつ、隣り合う接触位置が周方向に180度以上離れないよう接触することが好ましい。これにより、モータ10自体を回転させる回転トルクに抗する力の、径方向の成分をバランスさせつつ、モータ10の回転を止めることができる。さらに、突起等により線接触または点接触させる場合には、平坦面で面接触する場合に比べて寸法精度が要求されないという利点がある。また、平坦面64には誤挿入防止の切欠き等を設けるなど、平坦面64の一部が平坦になっていなくてもよい。
【0035】
また、各平坦面64は軸方向から見たときの正六角形の各辺に対応するので、シャフト22の中心に対して60°の回転対称に設けられている。よって、突出部62の部分でモータ10を取り付ける場合に、
図2の実線の向きから、60°ずつ回転したいずれの向きで取り付けることができる。例えば、
図2にはシャフト22の中心に対して反時計回りに60°回転させた状態におけるコネクタ56の位置が点線で示されているが、ハウジング40および突出部62は60°回転させても外形は回転前と一致する。複数の回転位置のいずれかで取り付け可能であることにより、受け手側を変更することなく、取り付けの自由度が高くなる。例えば、狭い領域においても、コネクタ56が他の部材と干渉しないような向きに取り付けることができる。また、隣接する平坦面64は曲面65で連結しているので、平坦面64どうしが直接つながる場合におけるエッジへの応力集中を防ぐことができる。
【0036】
図5は突出部が異なるモータ12の側面図であり、
図6はモータ12の正面図であり、
図7はモータ12の背面図である。モータ12においてモータ10と同一の構成には同一の参照番号を付して説明を省略する。同様に、モータ12のハウジング40の内部および回転子の構造は、特に説明する点を除いてはモータ10と同じである。
【0037】
モータ12において、端部プレート72の側に平坦面82および曲面84を有する突出部80が設けられる。一方、モータ12の端面60の側には円筒形の突出部61が設けられる。
【0038】
図7に示すように、シャフト22の軸方向から見た場合に平坦面82は正六角形の各辺を構成する。当該正六角形の頂点に対応する部分には曲面84が設けられ、隣接する平坦面82を滑らかに連結している。平坦面82もモータ10の平坦面64と同様に、取り付け時に他の部材が接触可能となるように露出している。
【0039】
図8は端部プレート72の背面図であり、
図9は端部プレート72の側面図であり、
図10は端部プレート72の断面図である。端部プレート72はハウジング40とは別体で、プレス加工される。端部プレート70は略円形の端面81を有し、その中央に突出部80が形成される。よって、端部プレート72と突出部80の平坦面82とは同一部材で一体成形されている。端部プレート72は、端部プレート72の爪94およびハウジングの爪46によりハウジング40に固定され、保持される。
【0040】
突出部80はさらに軸方向内側に折り曲げられて、凹形状の円形係合部86が形成される。円形係合部86は軸方向に垂直な断面の内形がシャフト22と同心の円形であり、当該円形部分に軸受90を収容する。軸受90は例えば圧入や加締めにより当該円形部分に固定される。軸受90にはシャフト22が挿通される挿通口95が設けられる。なお、この例では円形係合部86はその全体が突出部80の内側に配されているが、円形係合部86の一部が軸方向について突出部80の外側に延伸していてもよい。軸受90の構成はモータ10の軸受90と同じであってよい。
【0041】
モータ12の突出部80も、モータ10の突出部62と同様に、互いに平行な平坦面82を挟んで持つように取り付けられることにより、モータ12を回転止めして確実に保持することができる。また、シャフト22の中心に対して60°ずつ回転したいずれの位置に取り付けることもできる。
【0042】
また、軸受90が突出部80の内部に保持されているので、シャフト22の軸方向について突出部80を長くすることなく、モータ12の全体を軸方向について小型化することができる。さらに、突出部80を端部プレート72の側に配したので、ハウジング40とは別のプレス加工で、突出部80の形状を容易に加工することができる。
【0043】
また、モータ12の平坦面82は、モータ10の平坦面64よりも、シャフト22の中心からの径方向の距離が大きい。よって、モータ12においては、より効率的にモータの回転を止めることができる。ただし、モータ12において、平坦面82からシャフト22までの距離は、ハウジング40からシャフト22までの距離より短い。すなわち、突出部80は径方向についてハウジング40よりも小さい。よって、モータ12の全体として、径方向の外形を小型化することができる。また、平坦面が設けられていない突出部61の径は互いに向かい合う平坦面64の間の距離よりも小さいことも、小型化に寄与している。
【0044】
モータ10は側面図における左側に突出部62が配されており、モータ12は側面図における右側に突出部80を有する。これに加えて、一つのモータの一端に突出部62を設け、他端に突出部80のいずれかを設けてもよい。
【0045】
なお、モータ12における円形係合部86は内周が円筒形であるが、内周の形状はこれに限られない。例えば、円形係合部86は内周が、円筒形の軸受90の外周が内接するような、多角柱状であってもよい。
【0046】
また、上記モータ10の突出部62、モータ12の突出部80のそれぞれの外周は、少なくとも一対の互いに平行な平坦面を有している。しかしながら、突出部は必ずしも一対の平行な平坦面を有していなくてもよい。回転トルクに抗して回転を規制するという観点からは、シャフト22の延伸方向に垂直な断面において、突出部の外周面が非円形状であればよい。
【0047】
非円形状の例として、一対の平行な平坦面の他に、シャフト22の延伸方向に垂直な断面において円周の一部の曲率が異なる形状が挙げられる。この場合に、円周の一部が突出していてもよいし、窪んでいてもよい。これにより、簡易な構造で回転を規制することができる。さらに、円周から突出した部分が、シャフト22を中心軸として180度、120度、90度等の予め定められた角度について回転対称に複数設けられてもよい。同様に、窪んだ部分がシャフト22を中心軸として180度、120度、90度等の予め定められた角度について回転対称に複数設けられてもよい。突出した部分または窪んだ部分が回転対称であることにより、モータを取り付けるときの取付角度の自由度を高めることができる。
【0048】
非円形状の更に他の例として、一部が直線である円弧形状が挙げられる。この場合にも、簡易な構造で回転を規制することができる。非円形状のさらに他の例として、円弧形状、小判型の他に、3か所以上の直線部分があってもよい。
【0049】
上記いずれの場合も、突出部の内周を外周と異なる形状にしてもよい。例えば、突出部の内周を円筒形にしてもよい。これにより、外周が円筒状または球面の軸受を収容することができる。さらに他の例として、突出部の内周は外周と異なる非円形状にしてもよい。
【0050】
図11は、軸受に関する別例の概略断面図である。
図11は一例として、モータ10の突出部62の側の別例を示す。
【0051】
図11において、突出部62の内周には軸受保持部100が当接している。これにより軸受保持部100はその内周に軸受66を保持している。軸受保持部100は、例えば弾性を有する硬質のプラスチック製である。
【0052】
図12および
図13は軸受保持部100の斜視図である。軸受保持部100の外周108は、突出部62の内周に対応した形状を有する。
図12および
図13の例においては、突出部62の内周が角の丸い正六角柱であることに対応して、軸受保持部100の外周108も角の丸い正六角柱となっている。すなわち、6個の平坦面102と、それらを連結する曲面104とから成っている。また、曲面104には切欠き部106が設けられている。切欠き部106により、軸受保持部100を突出部62に容易に挿入することができる。
【0053】
軸受保持部100の内周112は、軸受66の外周に対応した形状を有する。
図12および
図13の例においては、軸受66の外周が円筒形であることに対応して、軸受保持部100の内周112も円筒形となっている。これにより、突出部62の内周と軸受66の外周の形状の違いを吸収しつつ、軸受66を突出部62内に固定することができる。従って、突出部62および軸受66の設計の自由度を高くすることができる。さらに、軸受保持部100が弾性を有することにより、軸受保持部100自体が突出部62の内周に固定されると共に、軸受保持部100が軸受66の外周を保持して固定する。
【0054】
なお、軸受66の外周が球面である場合には、軸受保持部100の内周112も球面であってよい。軸受66の外周と軸受保持部100の内周112とが球面で接することにより、シャフト22を挿入する場合に軸受66が軸受保持部100に対して回転することを許容して、個々の部品の個体差を吸収しシャフト22を確実に挿入させることができる。
【0055】
軸受保持部100におけるシャフト22に対向する部分には、開口110が設けられている。開口110は軸受保持部100を貫通しており、開口68、110を介して、外部からシャフト22へのアクセスを可能にしている。
【0056】
図11から
図13において、軸受保持部100をモータ10の突出部62の内周に設ける例を説明した。軸受保持部100は他の個所に設けられてもよい。例えば、軸受保持部100がモータ10の突出部71の内周、および、モータ12の突出部61の内周に設けられ、それぞれ軸受66、90を保持してもよい。
【0057】
さらに、軸受保持部100がモータ12の円形係合部86の内周に設けられ、軸受90を保持してもよい。
【0058】
図14は、パワーシートスライド装置200の斜視図であり、
図15は、パワーシートスライド装置200にモータ10を組み込む組み込み装置120の概略平面図である。
【0059】
パワーシートスライド装置200は、自動車の床面に固定される一対の下レール202と、対応する下レール202の上をスライド可能な一対の上レール204と、一対の上レールのそれぞれに固定され、シートが取り付けられる一対のクッションフレーム208を有する。一対の上レール204の間には、棒状に延伸したフレーム126、130が配される。
【0060】
組み込み装置120は、弾性を有する保持部材122、および、同じく弾性を有する回転規制部124を有する。保持部材122および回転規制部124は例えばゴム製である。
【0061】
保持部材122は貫通孔を有しており、モータ10のハウジング40が当該貫通孔に圧入されて、ハウジング40を保持する。さらに保持部材122に設けられた他の貫通孔にフレーム126、130が挿入されることで、保持部材122が組み込み装置120に保持される。
【0062】
図16は、
図15をモータ10の突出部62の側から見た正面図である。回転規制部124には、貫通孔140が設けられている。貫通孔140の内周は突出部62の外周に対応して、非円形状となっている。
図16の例においては、突出部62の外周が略六角柱であることに対応して、貫通孔140の内周も略六角柱になっている。
【0063】
回転規制部124はさらに二つの貫通孔を有し、それぞれの貫通孔にフレーム126、130が挿入される。これにより、回転規制部124が組み込み装置120に保持される。ここで、モータ10の突出部62が回転規制部124の貫通孔140に挿入されることにより、モータ10のシャフト22が組み込み装置120に対して位置決めされる。さらに、モータ10の突出部62の外周と回転規制部124の内周とが非円形状で当接していることにより、回転規制部124がモータ10自体を回転させる回転トルクに抗して、回転を規制することができる。
【0064】
モータ10の突出部62の開口68には、回転シャフト128が挿入される。回転シャフト128はモータ10のシャフト22に連結されて、シャフト22の回転駆動力をシート等の駆動対象物に伝達する。同様に回転シャフト132は突出部71の開口92を介してシャフト22に連結されている。
【0065】
回転シャフト128、132の先端にはギヤ機構210が設けられている。ギヤ機構210のそれぞれはスライドスクリュー206と噛み合っている。これにより、モータ10のシャフト22が回転することで回転シャフト128、132を介して回転駆動力がギヤ機構210に伝達され、ギヤ機構210が回転することによりスライドスクリュー206上をギヤ機構210が移動する。ギヤ機構210の移動に伴って、上レール204およびクッションフレーム208が移動する。これにより、自動車のシートが移動する。
【0066】
図15および
図16の実施形態によれば、モータ10の非円形状部と回転規制部124との当接により、組み込み装置120において、モータ10の回転トルクに抗して容易に回転を規制することができる。なお、
図15および
図16の実施形態において、回転規制部124と保持部材122とが離間して設けられている。これに代えて、回転規制部124と保持部材122との対向面のおける一方に爪を設け、他方に凹部を設けて、それらを嵌合させることで、回転規制部124と保持部材122とを連結させてもよい。
【0067】
図17は、他の組み込み装置150の一例を示す概略斜視図である。
図17において
図15および
図16と同じ構成については同じ参照番号を付して説明を省略する。
図17の組み込み装置150において、モータ10は組み込み装置150の本体の一部である基板152に保持される。基板152は例えば金属の板であって、基板152の一部が切り起こされて一対の固定爪154が形成されている。一対の固定爪154の間にモータ10のハウジング40が挿入されて、固定爪154によりモータ10が保持される。
【0068】
組み込み装置150はさらに、回転規制部160を有する。回転規制部160は例えば弾性を有するゴム製である。回転規制部160は一対のネジ162、164により基板152に固定される。
【0069】
図18は
図17をモータ10の突出部62の側から見た正面図である。回転規制部160は下方から切り込まれた凹部166を有する。凹部166は、突出部62の外周における少なくとも非円形状の部分に対応した形状を有する。
図18の例においては、凹部166の上部は、突出部62の上半分に対応して、略六角柱の一部分の形状を有する。凹部166の下部は突出部62を基板152との間で挟みやすいように一対の平行面となっている。
【0070】
モータ10の突出部62が回転規制部160の凹部166に挿入されて、回転規制部160と基板152との間に挟み持たれることにより、モータ10のシャフト22が組み込み装置150に対して位置決めされる。さらに、モータ10の非円形状部と回転規制部160との当接により、組み込み装置150において、モータ10の回転トルクに抗して容易に回転を規制することができる。
【0071】
なお、
図15から
図18の例において、モータ10のコネクタ56がハウジング40の上部に位置する姿勢で組み込み装置に組み込まれている。しかしながら、モータ10の姿勢はこれに限られない。これに代えて、コネクタ56がハウジング40の側方、例えば
図3における真横、に位置する姿勢で組み込み装置に組み込まれてもよい。特に、コネクタ56がシャフト22の軸方向と直交するハウジング40の高さ方向の直径内に配置されていれば、コネクタ56がハウジング40の側方に位置する姿勢で組み込み装置に組み込まれた場合に、モータ10の全体の高さがハウジング40の直径で決まる。よって、モータ10を組み込む場合に、コネクタ56の分の高さ方向のスペースを小さくすることができる。これは、高さ方向のスペースに制約があるパワーシートスライド装置に対して特に有効である。さらに、コネクタ56がハウジング40の側方に位置する姿勢において、コネクタ56が、ハウジング40の高さ方向に直交しかつシャフト22の軸方向と平行な面を有している場合には、当該面もモータ10の組み込みにおける位置決めに用いることができる。
【0072】
また、
図15から
図18の例に代えて、モータ10のハウジング40をスナップフィット等で保持してもよいし、ハウジング40にフランジを設けて当該フランジをねじ止めしてもよい。
【0073】
また、
図15から
図18の例において、回転規制部124,160はゴム製の部材であるが、これに代えて、回転規制部を金属製の板材としてもよい。また、
図15から
図18ではモータ10を組み込む例を説明したが、これに代えてモータ12が組み込まれてもよい。その場合には、モータ12の突出部80の外周の少なくとも一部が回転規制部に当接することで、回転が規制されることが好ましい。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。