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特開2018-161145単回使用バイオリアクターにおける可撓性フィルムバッフル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-161145(P2018-161145A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】単回使用バイオリアクターにおける可撓性フィルムバッフル
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20180921BHJP
   B01F 13/08 20060101ALI20180921BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   C12M3/00 A
   B01F13/08 Z
   C12M1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-123367(P2018-123367)
(22)【出願日】2018年6月28日
(62)【分割の表示】特願2016-508942(P2016-508942)の分割
【原出願日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/813,726
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カラ・ダー
(72)【発明者】
【氏名】アン・ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・マクスウィーニー
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ピアソンズ
(72)【発明者】
【氏名】エイミー・ウッド
【テーマコード(参考)】
4B029
4G036
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC13
4B029DA10
4B029DB01
4B029DC05
4B029GA08
4B029GB09
4G036AC24
(57)【要約】
【課題】高剪断速度のリスクなしに良好な混合効率を可能にするバイオリアクターの提供。
【解決手段】この課題は、流体処理用のバイオリアクターであって、可撓性材料から形成された容量部と、該バイオリアクター内にある1個以上の入口と、該バイオリアクター内にある1個以上の出口と、該バイオリアクターの該容量部内に少なくとも部分的に取り付けられたインペラアセンブリと、該バイオリアクターの該容量部内にある可撓性材料から形成されたX字形バッフルとを備え、該X字形バッフルは第1脚部と第2脚部とを備え、該第2脚部は該第1脚部と交差し、かつ、該第1脚部に取り付けられていてよく、該X字形バッフルは、該バイオリアクター内において高剪断速度なしに高い混合効率のために水平部品及び垂直部品を具備するように該バイオリアクター内に配置される、バイオリアクターによって解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理用のバイオリアクターであって、可撓性材料から形成された容量部と、該バイオリアクター内にある1個以上の入口と、該バイオリアクター内にある1個以上の出口と、該バイオリアクターの該容量部内に少なくとも部分的に取り付けられたインペラアセンブリと、該バイオリアクターの該容量部内にある可撓性材料から形成されたX字形バッフルとを備え、該X字形バッフルは第1脚部と第2脚部とを備え、該第2脚部は該第1脚部と交差し、かつ、該第1脚部に取り付けられていてよく、該X字形バッフルは、該バイオリアクター内において高剪断速度なしに高い混合効率のために水平部品及び垂直部品を具備するように該バイオリアクター内に配置される、バイオリアクター。
【請求項2】
前記第1脚部と前記第2脚部とが両方の脚部の長手方向中間点で取り付けられている、請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項3】
前記第1脚部及び前記第2脚部のそれぞれが前記バイオリアクターの内壁に固定された末端部を備える、請求項1又は2に記載のバイオリアクター。
【請求項4】
前記バイオリアクターが0.2:1、1:1、1.6:1又は2:1のアスペクト比を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のバイオリアクター。
【請求項5】
前記容量部が200L〜2000Lの範囲の密閉容量部である、請求項1〜4のいずれかに記載のバイオリアクター。
【請求項6】
前記可撓性材料が、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度又は中密度ポリエチレンを含むポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン・酢酸ビニル(EVOH);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリ酢酸ビニル(PVA);エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA共重合体);熱可塑性樹脂のブレンド;異なる熱可塑性樹脂の共押出物;又は異なる熱可塑性樹脂の多層積層体を含む重合体組成物から形成された単層又は多層可撓性壁である、請求項1〜5のいずれかに記載のバイオリアクター。
【請求項7】
200L〜2000Lの折り畳み可能な容器であって、
可撓性材料から形成された容量部と、該容器内にある1個以上の入口と、該容器内にある1個以上の出口と、該容器の該容量部内に少なくとも部分的に取り付けられたインペラアセンブリと、該容器内の流体の所定容量と、
該容器の該容量内にあるX字形バッフルと
を備え、該X字形バッフルは、該容器内において水平部品及び垂直部品を備え、該X字形バッフルは該容器の内径寸法に延在し、該X字形バッフルは、低剪断混合を維持しつつ全体的なパワー入力を低減させるために、該流体の所定容量に部分的にのみ沈められる容器。
【請求項8】
前記折り畳み可能な容器が二次元ピローバッグ又は三次元バッグである、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記流体が細胞を含む、請求項7又は8に記載の容器。
【請求項10】
前記流体が前記細胞用のマイクロキャリアをさらに含む、請求項7〜9のいずれかに記載の容器。
【請求項11】
請求項1のバイオリアクター又は請求項7に記載の容器内において流体を混合させる方法であって、次の工程:
容量部を画定するバイオリアクター又は容器を準備し;
該バイオリアクター又は該容器の該容量部内に少なくとも部分的に取り付けられたインペラアセンブリを準備し;
該バイオリアクター又は該容器内において水平部品及び垂直部品を具備するように該バイオリアクター又は該容器の該容量部内にX字形バッフルを配置し;
混合される流体を該バイオリアクター又は該容器に該X字形バッフルを部分的にのみ沈めるレベルにまで導入し;及び
該インペラアセンブリを駆動させて該流体を混合させ、これにより、該X字形バッフルが該混合の間に任意の渦の形成を最小限に抑えること
を含む方法。
【請求項12】
前記流体が細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体が前記細胞用のマイクロキャリアをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
マイクロキャリアの分布を低いパワー入力で得ることができ、剪断レベルを低下させることができ、マイクロキャリアに対する損傷及び/又は細胞外キャリアの移動の危険を減少させることができる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年4月19日に出願された米国仮出願第61/813,726の優先権を主張し、その開示を参照によりここで援用する。
【0002】
ここで開示する実施形態は、バイオリアクターとして有用な容器に関する。特に、ここで開示する実施形態は、特に単回使用撹拌タンクバイオリアクターでの使用に適した、該容器内に配置されたときに垂直部品及び水平部品の両方を有する可撓性フィルムバッフルを含む。
【背景技術】
【0003】
背景
従来、流体は、ステンレス鋼製の容器を利用するシステムで処理されてきた。これらの容器は、使用後に滅菌されるため、再利用できる。滅菌手順は、高価で面倒なだけでなく、時間が無駄である。
【0004】
製造におけるより大きな柔軟性を提供し、かつ、装置の有効な再生を行うのに必要な時間を削減するために、製造業者は、製品バッチで一度使用し、その後処分されるバッグなどの使い捨て滅菌容器を利用し始めている。
【0005】
これら使い捨てバッグの使用例は、少なくとも一方が液体で、他方が液体又は固体である2種以上の成分を混合するための系におけるものであり、このバッグは、内容物をできるだけ均一に混合させるための混合部材などを有する。
【0006】
例えば、ワクチンの製造では、関連する液体は、アジュバントとしてアルミニウム塩を含有する場合が多い。このアルミニウム塩は、身体の免疫応答を増強することによってワクチンの有効性を改善する。残念ながら、アルミニウム塩は、0.2μmよりも大きいサイズの粒子を有するため、無菌フィルタリングは、一般的には選択肢ではない。結果として、ワクチンを移動させる必要がある容器の数を最小限に抑えることが有利な場合が多い。というのは、それぞれの移動は、無菌性の潜在的な突破口となり、生じた汚染をろ過することができないからである。したがって、出荷される可撓性使い捨てバッグなどの同一の容器内においてワクチンを混合できることが有利である。
【0007】
別の例は、細胞が懸濁液の状態又はマイクロキャリア上にあり、そしてバッグが液体、気体及び場合によってはバッグの内部の周囲にある細胞を循環させる循環部材を有するバイオリアクター又は発酵槽である。
【0008】
いくつかの従来のバイオリアクターは、混合を改善させるためのバッフルとして機能する硬質金属インサートを保持するためのスリーブを備える。しかし、大容量のバイオリアクター、例えば、1000L及び2000L容量のバイオリアクターは、このような硬質バッフルを実現するには課題がある。というのは、これらのシステムの高さの増大により、バイオリアクターの上部から剛性のインサートを導入することが困難になるからである。さらに、より小さなスケールで見られる下から上への混合は、高さ対幅のアスペクト比が減少した場合であっても、バイオリアクターの全体的な高さが増大するとさらに顕著になる。
【0009】
バイオリアクタープロセスの最適化のためには良好な混合が重要である。うまく設計された混合システムは、次の3つの基本機能を提供する:均一な分布で一定の生息条件(栄養素、pH、温度など)を生じさせること;O2を供給しCO2を引き出すためのガスの分散;及び熱伝達の最適化。バイオリアクター容器のスケールが増加すると、損傷性のせん断効果を付与することなく許容可能な混合を与えることはより困難になる。いくつかの市販のバイオリアクタープラットフォームは、単一の底部搭載インペラを備える。停滞区域による渦の形成は、この単一の撹拌機に関連する場合が多い。バッフルが渦形成を抑制するために追加でき、流体を軸方向及び半径方向流れの好ましい流れパターンに移動させるために設置できる。うまく設計されたバッフルを設けることにより、複数のインペラ及び/又は高インペラ速度に関連する追加の高剪断リスクなしで良好な混合効率が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、バイオリアクターにおける最適な細胞培養増殖性能に必要な均一な混合を達成するために、改良されたバッフルシステムを有する流体用使い捨て又は一回使用容器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
所定の実施形態によれば、本明細書に開示されるのは、任意に1個以上の入口と、1個以上の出口と、容器に含まれる又は添加される1種以上の成分を混合させ、分散させ、均質化させ及び/又は循環せるための容器に関連したミキサーとを有する使い捨て又は一回使用の容器といった容器である。所定の実施形態によれば、この容器は、混合を改善させるために、特に低剪断混合を改善させるために成形されかつ容器内に配置された可撓性バッフルを備える。所定の実施形態によれば、バッフルは、ミキサーによって形成された渦を破壊する又は渦の形成を防止するように容器内に配置される。所定の実施形態によれば、バッフルは、剪断効果を制限するために単一のインペラと共に使用される。所定の実施形態によれば、バッフルは、容器全体の高さにわたって渦の破壊を向上させ、そして全ての動作容量を通して均質な混合を提供するために、水平方向及び垂直方向の両方の部材で成形される。所定の実施形態によれば、バッフルは、X字形である。
【0012】
また、開示されるのは、内部容量部を有する容器内において流体を混合するためのシステムであって、容器と、インペラアセンブリと、該インペラアセンブリ用のドライブと、混合中に形成された任意の渦を破壊し、その形成を防止し又は最小限に抑えるために該容器の内部容量部内に配置されるバッフルとを備えるものである。
【0013】
また、開示されるのは、インペラアセンブリと、混合中に形成された任意の渦を破壊し、その形成を防止し又は最小限に抑えるために容器内に配置されたバッフルとを有する容器内において流体を混合させる方法である。
【0014】
所定の実施形態によれば、この方法は、容器に流体を導入し、ここで、該容器には、インペラアセンブリが少なくとも部分的に収容され、かつ、密閉されており、該インペラアセンブリのブレード又は羽根を駆動させてバッグ内の流体を撹拌させることを含む。該容器内のバッフルは、回転ブレードによって形成されることのある任意の渦を破壊し、又は任意の渦の形成を防止し若しくは最小化させる。所定の実施形態では、インペラアセンブリ用のドライバは、バッグの外部にあり、かつ、インペラアセンブリを磁気により駆動させる。
【0015】
ここで開示する実施形態は、バッフルによって与えられる均一な混合状態をもたらし、そして接着細胞のための支持マトリックス、例えば幹細胞(これに限定されない)を含めた所定の細胞の良好な増殖の可能性を高めるマイクロキャリアの均一な分布を与えることができる。マイクロキャリアの良好な分布を低いパワー入力で得ることができ、このシステム内での剪断レベルを低下させ、それによってマイクロキャリアに対する損傷及び/又は細胞外キャリアの移動の危険を減少させることができる。
【0016】
剪断に対する感度の増加した所定のプロセス又は細胞株について、全体的なパワー入力を低減させることができると共に、依然として良好な混合を維持することができる。低いパワー入力は、より低い剪断力に変換される。これは、極端なプロセス、すなわち、より低いパワー入力を必要とするプロセスのための良好な解決策となる。低いパワー入力でのより均一な混合により、細胞培養プロセスのためのより大きなプロセスウィンドウが提供され、最適なプロセス条件を見出す際に大きな柔軟性がもたらされる。高い細胞密度を達成するように設計されたプロセスについては、パワー入力の増加を必要とすることなく良好な混合を得ることができる。
【0017】
14W/m3の基準条件について30秒を下回る混合時間(1000L及びそれ未満について)が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、所定の実施形態に係るバッフルを有する容器の断面図である。
図2図2は、所定の実施形態に係るバッフルの断面図である。
図3図3は、所定の実施形態に係るバッフルの厚さ対容器容量のグラフ、及び所定の実施形態に係るバッフルの表面積対容器カラムのグラフである。
図4図4は、混合時間を示す様々なバッフル設計の図である。
図5図5は、混合時間対パワー入力に関する応答曲線である。
図6図6は、200L〜2000Lの容量にわたる3つのシステム(バッフルなし、パドルバッフル、X−バッフル)の性能を示すグラフである。
図7図7は、200L〜2000Lの容量にわたって、パドルバッフルとX字形バッフルとを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
特定の実施形態によれば、流体を受け取りかつ保持するように設計された使い捨て容器は、ポリエチレンなどの重合体組成物から形成された単層又は多層可撓性壁から形成できる。ポリエチレンとしては、超高分子量ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン;低密度又は中密度ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン・酢酸ビニル(EVOH);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリ酢酸ビニル(PVA);エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA共重合体);様々な熱可塑性樹脂のブレンド;異なる熱可塑性樹脂の共押出物;異なる熱可塑性樹脂の多層積層体などが挙げられる。「異なる」とは、EVOHの1以上の層を有するポリエチレン層などの異なる重合体タイプ並びに同じ重合体タイプであるが異なる特性、例えば分子量、直鎖又は分岐重合体、充填剤などのものを含むことを意味する。典型的には、医療グレード、好ましくは動物を含まないプラスチックが使用される。これらは、一般に、例えば蒸気、エチレンオキシド又はベータ若しくはガンマ放射線などの放射線によって滅菌可能である。ほとんどは、良好な引張強度、低いガス移送を有し、透明又は少なくとも半透明のいずれかである。好ましくは、この材料は、溶接可能であり、支持されていない。好ましくは、この材料は、透明又は半透明であり、内容物の視覚的な監視を可能にする。容器は、1個以上の入口と、1個以上の出口と、1個以上の任意のベント通路とを備えることができる。容器は、混合される細胞及び培養培地などの流体を含むのに十分なサイズのものである。所定の実施形態では、容器は、細胞培養の状況において細胞を成長させることができるものなどの生物学的に活性な環境をサポートすることができるバイオリアクターであることができる。
【0020】
所定の実施形態では、容器は、バイオ医薬流体などの内容物を流体の状態で収容することのできる、単回使用のために滅菌可能な閉じた容量部を画定し、かつ、混合装置を容器の内部に部分的に又は完全に収容することができる使い捨ての変形可能で折り畳み可能なバッグであることができる。所定の実施形態では、閉じた容量部を、例えば適切なバルブ操作により開いて容量部に流体を導入し、そして、例えば混合が完了した後に流体を排出させることができる。
【0021】
所定の実施形態では、容器は、二次元若しくは「ピロー」バッグとすることができ、又は三次元バッグとすることができる。容器の特定の形状は特に限定されない。所定の実施形態では、容器は、剛体基部を備えることができ、このものは、ポートや通気口などのアクセスポイントを与える。各容器は、1個以上の入口及び出口と、任意に容器内の液体について、導電率、pH、温度、溶存ガスなどのパラメータを感知するための滅菌ガス通気口又はポートなどの他の機能を備えることができる。
【0022】
所定の実施形態では、各容器は、その内部において部分的に又は完全に、該容器内に含まれる1種以上の液体、気体及び/又は固体を混合、分散、均質化及び/又は循環させるためのインペラアセンブリを収容する。所定の実施形態によれば、インペラアセンブリは、例えば軸周りの回転や振動により可動できる1個以上のブレードを備えることができる。所定の実施形態では、インペラアセンブリは、回転運動を、それと接触している流体を混合させる力に変換する。インペラアセンブリは、ブレードの少なくとも一部にわたって形成された保護フードを有することができ、該フードの下部表面とブレードの外形寸法との間には、該ブレード及び該ブレードと該フードの下部表面との間にある液体の自由な動きを可能にするように空間が含まれる。このフードは、容器を損傷するおそれのあるブレードから容器を保護するように利用される。
【0023】
所定の実施形態によれば、容器は、少なくとも1個のバッフル部材を備え、該バッフル部材は、容器が流体を含有するときにバッフル部材が流体中に沈められた水平部品及び垂直部品の両方を有するように容器内に配置される。所定の実施形態によれば、バッフル部材全体に満たない部分は流体中には沈められない。所定の実施形態によれば、バッフルは、容器の内径寸法に延在する。所定の実施形態によれば、バッフル部材は、X字形である。
【0024】
インペラ/バッフルの組み合わせの適切な設計及び実装は、広範囲の容量及びアスペクト比にわたる混合解決手段を提供し、優れた規模設定性及び明確な性能を有するバイオリアクターシステム群の開発を可能にする。
【0025】
所定の実施形態によれば、バッフル部材は、「X」の一方の脚部が、インペラアセンブリの作動により渦が形成する位置付近又はその位置で流体の表面を通って延在するように容器内に配置される。流体表面を通してスライシングするバッフルの垂直部品及び水平部品の両方を有するこの配置は、流体の円形流路を妨害する渦防止装置として作用する。X字形状は、厳密に垂直又は厳密に水平のバッフルの他の構成と比較すると、流体のバルク内の流路を良好に崩壊させ、底部から頂部への混合の傾向を低減させ(インペラアセンブリが容器の底部に配置された状態)、そしてより短期間でより均一な分布を与えることを可能にする。
【0026】
所定の実施形態によれば、バッフル部材は、流体の表面で渦形成を破壊するのに十分な広さ(容器の半径方向寸法に関して)とすべきであるが、ただし、容器内の側部から側部まで流れを阻止するほど広すぎてはならない(容量部全体を混合するための時間を増加させると考えられる)。
【0027】
ここで、図1を参照すると、基部14と、1個以上の可動ブレード又は羽根16とを有するインペラアセンブリ10を有する容器1が示されている。ブレード16の数及び形状は特に限定されないが、ただし、これらは、作動時に容器内の流体を十分に撹拌することを条件とする。基部及び1以上のブレードは、ポリエチレンなどのプラスチック材料又はポリプロピレン共重合体などのガンマ線照射に耐性のある任意の重合体から構成できる。所定の実施形態では、基部14は、混合インペラオーバーモールドマグネットなどのインペラの磁性基部を収容する軸方向延長部材22を備え、ここで、ブレード16は、部材22の上に軸方向に延在し、その際、これらは、磁性インペラが駆動磁石によって駆動されるときに自由に回転する。所定の実施形態では、インペラアセンブリ10が使い捨て容器1内に設置される場合には、延長部材22は、容器1の外部に突出し、そしてこのもの及び/又は基部14は、容器1にシールされる。インペラアセンブリ10の残りの部分は、容器1内に収容される。好ましくは、インペラアセンブリは、容器が混合位置(吊り下げ位置など)にあり、かつ、容器の入口30に近接している場合には、容器の底部に又はその近くに位置する。
【0028】
図1に示す実施形態では、使い捨て容器1は、ポリエチレンなどの溶接可能なプラスチックから作製され、かつ、密閉される。容器1の内部への流体アクセスは、第1導管(図示せず)にシールされている入口30を介し、容器から外への流体アクセスは、第2導管(図示せず)にシールされている出口を介する。所定の実施形態では、容器1は、200Lの最小作業容量及び1000Lの最大作業容量を有する。所定の実施形態では、インペラアセンブリの少なくとも一部は容器の内部にあり、インペラアセンブリ用のドライバは容器1の外部にある。
【0029】
0.2:1のアスペクト比及び2000Lまでの高容量という挑戦的な点であっても、均質な分散で比較的短い混合時間が実証されている。
【0030】
図2は、バッフル50の実施形態を示す。所定の実施形態では、バッフルは、ポリエチレンなどの溶接可能なプラスチック製のフィルムである。バッフル50は、第1脚部51及び第1脚部51と交差し、任意にそれに取り付けられる第2脚部52を備える。所定の実施形態では、脚部51及び52の取り付け位置は、両方の脚部の長手方向の中間点53である。しかし、これら2個の脚部が互いに実際に接触し又は結合することは必要ではない。各脚部の各末端Tは、好ましくは、各脚部の本体に対して約45°の角度で屈曲している。
【0031】
これらの末端のそれぞれは、容器1内の所定の位置にバッフルを固定するために、例えば溶接などによって該容器の内壁に固定できる。所定の実施形態では、容器がバッグであル場合には、それらの末端は、バッグの縫い目内でヒートシールされている。図2に例示するように、所定の実施形態では、これらの縫い目は、インペラの後方(12時)でかつバッグにわたって6時の位置に並ぶ。底部は、バッグの最も低い水準で取り付けられ、頂部は、バッグの最大容量の上にある水準で取り付けられる。容器を支持するシステムの基部に直接バッフルを取り付けること及び/又は側面の代わりに容器の頂部に取り付けることを含めて、他の取り付け位置も可能である。実際には、そうすることによって、バッフルに許容可能な「たるみ」を導入することができる。特定の取り付け位置にかかわらず、上側脚部は、流体の外に、すなわち、バッグの最大容量よりも上に(液体中に完全に沈められるのではなく)延在することが好ましい。これは、混合時間を約50%短縮する。
【0032】
バッフルの特定の寸法は、容器のサイズに少なくとも部分的に依存する。図3に示すように、バッフルの厚さは容器の容量に比例し、方程式y=0.0006x+0.9098(R2=0.9959)により容器の容量に関連する。同様に、バッフルの表面積は、容器の容量に比例し、方程式y=0.1601x+33.869(R2=0.9858)により容器の容量に関連する。
【0033】
好ましくは、バッフルは、ある水準で渦(又は渦がバッフルの非存在下で形成することになる領域)を通って延びるように容器内に配置される。渦の位置は、アスペクト比と共に変化する。渦がバッフルの非存在下で形成することになる領域は、経験から決定でき、又は操作で使用されることになる同様の混合条件の下で、ただし、バッフルの非存在下でかつ渦が形成する場所に留意して容器内の流体を混合させることによって決定できる。「渦マップ」を作成することができ、所定の容器のアスペクト比、容器の容積、インペラ位置及びインペラサイズについて渦の位置を記録する。1000L容器における1:1のアスペクト比について、渦は、一般に6時の位置にある。2000L容器における2:1のアスペクト比及び200Lの容器における1.6:1のアスペクト比について、渦は、一般に、9時の位置にある。
【0034】
容器内に適切に配置された「X」形状のバッフルは、均質な混合で比較的短い混合時間を与えるものの、他の形状も好適であるが、ただし、バッフルは、渦形成の領域と交差することを条件とする。好適な形状としては、ジグザグ、三角形及び対角バッフルが挙げられる。
【実施例】
【0035】
例1
満200Lタンク内において可撓性バッフルのサンプルによって生じた混合時間及び品質を評価した。結果を図4に示す。A及びBは、タンク内部の所定の位置でフィルムバッフルを保持する金属棒を表す。これらをコントロールとして実行して、混合に及ぼす任意の影響がホルダーではなくバッフルによって生じることを確認した。Eは、標準的な剛性パドルバッフルを表す。
【0036】
表2は、図4のサンプルのそれぞれにおいて使用されるバッフルの厚さを示す。バッフルのほとんどが渦を排除したが、混合時間は広く変化した。X字形バッフルは、均一の混合で最短の混合時間であった。
【0037】
例2
この例を、13インチのインペラ及びX字形バッフルを有するバイオリアクターについての混合性能を特徴付けるために実施して、パワー入力の変化が混合性能にどのように影響を与えるのかを決定し、200L〜2000Lの容量範囲にわたってインペラ/バッフル設計の有効性を決定した。
【0038】
典型的なバイオプロセスのパラメータとしては、多くの場合、特に、温度、酸素レベル、pH及びパワー入力についての仕様が挙げられる。混合性能を向上させるために、一般にはパワー入力を増大させる。しかしながら、パワー入力が増大すると、剪断による細胞損傷の危険性も増大する場合がある。バイオリアクターシステムの機能を完全に理解するためには、エンドユーザがプロセス条件を最適化してそれらの特定の細胞株の要望を満たすことを可能にするように混合時間とパワー入力との関係を理解することが有用である。
【0039】
機器を幅広く選択して様々な条件下で混合性能を特徴付けるように試験を実施した。この試験に基づき、選択された設計の一つは、X字形バッフルを有する13インチの4枚ブレードインペラに基づいていた。
【0040】
この設計の特徴付けは、1000Lの容量で、10W/m3未満から最大30W/m3までのパワー入力にわたる混合時間の測定を含む。さらに、様々な容量についての混合時間(10W/m3の一定のパワーで)も記録した。
【0041】
フェノールフタレイン混合試験を実施して、13インチのインペラ及びX字形バッフルでの混合の有効性を評価した。Levitronix(登録商標)制御ソフトウェアを使用して、速度及び駆動電流を含めたインペラの作業率を監視した。これらのデータを使用して、試験を行ったそれぞれのrpmでのパワーを次式に従って算出した:
パワー=トルク×回転速度
トルク=(駆動電流A+駆動電流B)/2×トルク定数/100
トルク定数は、Levitronix(登録商標)によって、LPS−4000モータについて21.32であると定義される。
回転速度=2×3.14/60×rpm。
【0042】
フェノールフタレイン指示薬を使用することによって、酸及び塩基の添加により容器内の液体のpHが変化したときに混合パターンを観察することが可能になる。混合時間は、全容量を通した完全な色の変化にかかる時間として定義される。フェノールフタレイン(phth)混合方法を使用して、混合時間及び品質に関する視覚的比色情報を得た。このプロトコルは、次のように概説される:
【0043】
材料:
・フェノールフタレイン溶液:0.5重量%、1Lのphth溶液=5gのphth+600mLのエタノール+残部容量のDI水
・6M水酸化ナトリウム(NaOH)
・5M塩酸(HCl)
・DI水
・秒表示付きタイマー
・ビデオ機能
・pH値を監視するためのpH計。
【0044】
方法:
1.タンクに所望の容量まで水を満たす。タンク内の水の各100Lについて、phth溶液21mLを添加する。
2.ミキサーを回してタンク内に均質な環境を確保し、その後、水のサンプルを取り、そしてpHを測定する。
3.酸/塩基を添加してpHレベルを約6.9に調整する。
4.ビデオをオンにする。タンク内における水の各100Lについて、6MのNaOHを4mL添加する(溶液がピンク色に変化する)。
5.タンクを混合しながら、溶液の色が変化したときに混合パターンを観察し、観察された任意の区域的影響を記録する。完全な混合を達成するのにかかる時間を記録する(ビデオの再生を使用してこの時間をさらに正確に記録する)。ビデオをオフにする。
6.さらに数分間にわたって又は均質な環境を確保するようにタンクを混合する。ビデオをオンにする。タンク内において水各100Lについて、5MのHClを3.4mL添加する(溶液が透明に変化する)。
7.工程5を繰り返す。
【0045】
記:
このプロセスを複数の試験のために反復できる。しかし、pHを定期的にチェックして、操作が約6.9〜8.5の範囲内にあることを確認する必要がある(色の変化がpH=8.2で生じる)。必要に応じてバルクpHを調整する。ある程度の時間後、タンクはその緩衝能力に達する可能性があるため、タンクを排水して、再度始動させる必要がある。
【0046】
表1.これらの混合試験で使用される共通の容量に必要なphth、酸及び塩基の容量:
【表1】
【0047】
ほとんどの場合、データは、1の標準偏差の信頼区間による3回の試験の平均である。
【0048】
1000Lでの13インチインペラ及びX字形バッフルについてのパワー入力に対する混合時間に関連する応答曲線を図5に示す。この曲線は、30秒以下の混合時間の目標が10W/m3以上のパワー入力について満たされることを明らかに示す。全ての条件で、X−バッフルの追加により均一な混合が生じる。
【0049】
例3
特性評価試験の第2シリーズは、200L〜2000Lの全範囲の容量にわたってX字形バッフルの有効性を検討した。一定のタンク直径では、容量の変化はアスペクト比の変化に相当し、0.2:1で200Lの最小容量及び2:1で2000Lの最高容量である。図6の結果は、特に、従来のパドルバッフル及びバッフルなしと比較して、このアスペクト比の全範囲にわたるX−バッフルの有効性を実証する。
【0050】
図7は、単にバッフルを有するシステムについてのデータに非常に近い。ここで、X−バッフルは容量の増加には影響を受けにくく、混合時間は、200L〜1000Lの全ての容量にわたって30秒では比較的一定であることが明らかになった。これは、200Lで36秒の混合時間を有するパドルバッフルに匹敵し、1000Lで42秒に対して15%を超えて増加する。2000Lの最高容量で、X−バッフルの値は最も明白である。パドルバッフルでは、200L〜2000Lの混合時間が145%増加するのに対し、X−バッフルでの増加は67%に過ぎない。X−バッフルは、最低アスペクト比及び最高アスペクト比の両方で、システムに一貫した混合性能を与える。
【0051】
混合時間が10W/m3程度に低いパワー入力について30秒未満のときにこのバイオリアクターのためのプロセスウィンドウを開くことができた。このインペラ/X−バッフル設計は、約200L〜約2000Lの容量、約0.2:1〜約2:1のアスペクト比で少なくとも有効である。
【符号の説明】
【0052】
1 容器
10 インペラアセンブリ
14 基部
16 可動ブレード
22 軸方向延長部材
30 入口
50 バッフル
51 第1脚部
52 第2脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7