【解決手段】被処理水を上向流で通水し、反応槽1、2内で流動する粒子と接触させることにより、被処理水中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる晶析方法であって、被処理水及び反応槽の処理水の一部を循環水として反応槽1、2の下部から供給することと、被処理水又は循環水の供給を停止するときに反応槽1、2の下部に設けられた被処理水又は循環水を供給するための供給管11、12に接続された弁6a、6bを閉じ、粒子の供給管11、12への逆流を抑制することを含む晶析方法である。
前記反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽で得られた難溶性塩の結晶からなる粒子を第2の反応槽以降の反応槽へ導入し、前記第2の反応槽以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶からなる粒子を前記第1の反応槽へ返送することを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の晶析方法。
前記反応槽と前記弁との間に、前記供給管及び前記反応槽の下部を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の晶析装置。
前記反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽で得られた難溶性塩の結晶からなる粒子を第2の反応槽以降の反応槽へ導入し、前記第2の反応槽以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶からなる粒子を前記第1の反応槽へ返送することを特徴とする請求項5又は6に記載の晶析装置。
前記反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽で得られる粒子を前記第1の反応槽の外部又は他の反応槽内へ供給可能なエアリフト管を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の晶析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置は、被処理水とマグネシウム塩及びアルカリ剤の適正な混合が難しく、混合状態を良好にするために上向流流速を上げると、未反応の被処理水が外部へ流出する場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載された発明は、被処理水とマグネシウムイオンを含む液がともに反応槽下部から流入され、結晶粒子を流動させながら結晶粒子表面でリン酸マグネシウムアンモニウムを結晶化させるため、被処理水とマグネシウムイオンを含む液が混合されやすく、被処理水が未反応のまま流出するというリスクを低減できる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された発明において反応槽内部で粒子結晶を十分に流動させるためには、被処理水及び循環水を一定流速以上で供給する必要がある。流速を維持するためには、例えば被処理水及び循環水の供給管の管径を小さくする方法などがあるが、反応槽内には結晶粒子が充填されているため、管径が小さくなると、結晶粒子の重力沈降により、反応槽内の結晶粒子が被処理水及び循環水の供給管に逆流するトラブルが発生する。その結果、結晶粒子の逆流による配管の閉塞や、配管及び配管周辺の機器が摩耗し、損傷する問題が顕在化してきている。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、反応槽内の液の混合状態を良好にでき、結晶粒子の供給管への逆流を抑制可能な晶析方法及び晶析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、反応槽内に供給する被処理水及び循環水を反応槽の下部から供給するとともに、被処理水又は循環水の供給管に弁を設け、被処理水又は循環水の供給を停止するタイミングで、弁を閉じるように制御することで、反応槽内の結晶粒子の供給管への逆流を有意に抑制できることが分かった。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、被処理水を上向流で通水し、反応槽内で流動する粒子と接触させることにより、被処理水中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる晶析方法であって、被処理水及び反応槽の処理水の一部を循環水として反応槽の下部から供給することと、被処理水又は循環水の供給を停止するときに反応槽の下部に設けられた被処理水及び循環水を供給するための供給管に接続された弁を閉じ、粒子の供給管への逆流を抑制することを含む晶析方法が提供される。
【0011】
本発明に係る晶析方法は一実施態様において、反応槽の下部に旋回流を発生させるように、被処理水及び循環水を反応槽の下部から供給することを含む。
【0012】
本発明に係る晶析方法は別の一実施態様において、反応槽と弁との間に、供給管及び反応槽の下部を洗浄するための洗浄水を供給することを更に含む。
【0013】
本発明に係る晶析方法は更に別の一実施態様において、反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽で得られた難溶性塩の結晶からなる粒子を第2の反応槽以降の反応槽へ導入し、第2の反応槽以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶からなる粒子を第1の反応槽へ返送することを含む。
【0014】
本発明は別の一側面において、被処理水を上向流で通水し、内部で流動する粒子と接触させることにより、被処理水中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応槽と、反応槽の下部に接続され、被処理水及び反応槽の処理水の一部を循環水として反応槽の下部から供給する供給管と、供給管に接続され、被処理水又は循環水の供給を停止するときに閉じられることにより、反応槽内の粒子の供給管への逆流を抑制する弁とを備える晶析装置が提供される。
【0015】
本発明に係る晶析装置は一実施態様において、反応槽と弁との間に、供給管及び反応槽の下部を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段を更に備える。
【0016】
本発明に係る晶析装置は別の一実施態様において、反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽で得られた難溶性塩の結晶からなる粒子を第2の反応槽以降の反応槽へ導入し、第2の反応槽以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶からなる粒子を第1の反応槽へ返送することを含む。
【0017】
本発明に係る晶析装置は更に別の一実施態様において、反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽で得られる粒子を第1の反応槽の外部又は他の反応槽内へ供給可能なエアリフト管を備える。
【0018】
本発明に係る晶析装置は更に別の一実施態様において、エアリフト管に洗浄水を供給するエアリフト洗浄水供給手段を更に備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、反応槽内の液の混合状態を良好にでき、結晶粒子の供給管への逆流を抑制可能な晶析方法及び晶析装置が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る晶析装置は、被処理水を上向流で通水し、内部で流動する粒子と接触させることにより、被処理水中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応槽1と、反応槽1の下部に接続され、被処理水及び反応槽の処理水の一部を循環水として反応槽の下部から供給する供給管(被処理水供給管11、循環水供給管12)と、被処理水供給管11、循環水供給管12に接続され、被処理水又は循環水の供給を停止するときに閉じられることにより、反応槽1内の粒子の供給管への逆流を抑制する弁6a、6bと、弁6a、6bを介して被処理水供給管11、循環水供給管12に接続されたポンプ61、62と、制御装置60とを備える。
【0023】
反応槽1には、流動層方式の晶析反応槽が用いられる。反応槽1における晶析反応によって、被処理水中に含まれる所望のイオン、例えば、リン酸イオン、カルシウムイオン、フッ素イオン、炭酸イオン、硫酸イオン等が除去される。反応槽1内には被除去イオンをその表面で結晶化させるための粒子(種晶)及び薬剤が装入され、図示しないpH計などにより、反応槽1内で生じる晶析反応に好適な条件に維持されている。
【0024】
反応槽1の上部には、処理水流出管13が接続されている。反応槽1で処理された処理水は、処理水流出管13を介して固液分離手段3へ供給される。固液分離手段3は、反応槽1で得られた処理水中に含まれる難溶性塩の結晶からなる微細な粒子を例えば沈降分離などにより固液分離することが可能な手段である。固液分離手段3としては、反応槽1よりもタンク径を大きくして液上昇流速を遅くするようにした沈殿槽を用いることが好ましい。固液分離手段3は省略することも可能である。
【0025】
固液分離手段3で得られた上澄み液は、固液分離手段3の処理水として固液分離手段3の上部から処理水流出管33を介して外部へ排出される。固液分離手段3の底部に沈積した難溶性塩の結晶からなる粒子は、固液分離手段3の底部に接続された抜取管34を介して抜き取られる。抜取管34は反応槽1に接続されており、抜き取られた粒子が反応槽1へ供給されるように構成されていてもよい。或いは、抜き取られた粒子が被処理水の貯留槽(図示せず)へ供給されるように構成されていてもよい。抜き取られた粒子を他の反応槽1や被処理水の貯留槽へ供給しなくともよい。処理水流出管33を介して外部へ排出される処理水の一部は、循環水として循環水返送管35、ポンプ62、弁6bを介して循環水供給管12から反応槽1内へ供給される。
【0026】
反応槽1は、その底部へ向けてその断面積が次第に小さくなる錐体状の粒子沈殿部1aを備えている。粒子沈殿部1aには、反応槽1内を流れる上向流に逆らって、重力により沈降した比較的粒径の大きな難溶性塩の結晶からなる粒子が堆積している。反応槽1の粒子沈殿部1aに堆積した粒子は、例えば、粒子沈殿部1aの底部に接続された抜取管14を介して回収することができる。抜取管14は必須の構成ではなく省略することもできる。
【0027】
粒子沈殿部1aには、被処理水供給管11及び循環水供給管12が接続されている。被処理水供給管11及び循環水供給管12を介して、被処理水及び循環水がそれぞれ供給されることにより、反応槽1の下部、即ち粒子沈殿部1a内に旋回流を生じさせることができるように構成されている。
【0028】
反応槽1で進行する晶析反応によって生成された結晶の粒子径が大きくなりすぎると、偏流が起こり、被処理水と循環水と粒子の接触効率が低下することがある。そこで、本実施形態では、反応槽1の下部に旋回流を発生させるように構成されることで、反応槽1内の混合状態を良好にできる。これにより、反応槽1の下部において、被処理水中の被除去イオンと、この被除去イオンと反応する粒子を含む液体とが直接接触することにより発生し得る微細な結晶粒子の生成を抑制することができる。
【0029】
粒子沈殿部1aに旋回流を生じさせる態様としては、以下に制限されるものではないが、例えば、反応槽1の下部から供給される被処理水及び循環水を、反応槽1の断面の接線方向からそれぞれ導入することが好ましい。
【0030】
具体的には、例えば
図2に示すように、被処理水供給管11及び循環水供給管12が、粒子沈殿部1aの側面が規定する円形状の断面の接線方向に接続されており、被処理水及び循環水を、反応槽1の側面の接線方向からそれぞれ導入することで、反応槽1の下部、即ち、粒子沈殿部1aに旋回流を発生させることが好ましい。
【0031】
被処理水供給管11及び循環水供給管12を利用して旋回流を発生させることにより、旋回流を発生させるための特別な装置を組み入れる場合に比べて、経済的で装置サイズを小さくすることができ、簡易な構成で槽内を安定した流動状態に維持できる。
【0032】
なお、
図2の例では、被処理水供給管11及び循環水供給管12の延在方向が互いに平行となるように粒子沈殿部1aに接続される例を示しているが、
図2に示す配置関係には限定されないことは勿論である。即ち、被処理水供給管11及び循環水供給管12は、必要に応じて設置箇所を変更したり、供給管の設置個数を変更したりすることもできることは勿論である。
【0033】
被処理水供給管11及び循環水供給管12が粒子沈殿部1aに接続される高さ方向の位置は、少なくとも、粒子沈殿部1aに沈殿した粒子を流動させることが可能な位置であれば特に制限されない。
【0034】
被処理水と循環水の供給線速度を上げるほど、液の旋回距離が長くなり、反応槽1の下部の混合状態が良好になる。そのため、循環水の反応槽1への流入量を増加させて循環水の供給線速度を高めることにより、より効果的に旋回流を生じさせることができる。
【0035】
以下に限定されるものではないが、例えば、被処理水の供給線速度を0.1〜2.0m/sとした場合に、循環水の供給線速度を0.5m/s以上、より典型的には1.0m/s以上、更に典型的には1.0〜5.0m/sとすることで、適正な旋回流を発生させることができる。旋回流の発生装置を反応槽1に配置しても構わない。
【0036】
循環水と被処理水の供給線速度が互いに異なるように、それぞれの供給線速度を調整してもよい。例えば、被処理水供給管11又は循環水供給管12の一方の管径を他方の管径よりも小さくすることにより、供給線速度を調整してもよい。
【0037】
図1に示すように、循環水返送管35には、イオン供給手段4が接続されている。イオン供給手段4は、循環水に対し、被処理水中に含まれる被除去イオンを補充する手段である。例えば、被処理水中に含まれる被除去イオンとして、マグネシウムイオンを除去したい場合には、イオン供給手段4から循環水返送管35を流れる循環水に対してマグネシウムイオンを添加することにより、反応槽1内にマグネシウムイオンがより拡散されやすくなり、反応槽1内に十分な量のマグネシウムイオンを流動させることができる。その結果、反応槽1内におけるリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)粒子の生成反応をより効率的に進めることができる。
【0038】
更には、反応槽1の下部から撹拌気体を供給し、反応槽1の下部に沈降した難溶性塩の結晶からなる粒子を流動させることが好ましい。粒径の大きな粒子は、沈降しやすく流動しにくいため、被処理水及び循環水を反応槽1の下部へ供給するだけでは、旋回流が適切に発生しない場合がある。反応槽1の下部から例えば圧縮空気などの気体を供給することで、反応槽1内に適切な流動状態を作り出すことが容易になる。
【0039】
図1の例では、反応槽1内撹拌のための撹拌気体の供給位置が、被処理水及び循環水が供給される位置よりも高い位置から供給される例を示しているが、反応槽1の下部、具体的には粒子沈殿部1aに沈降する粒子を流動させることができる態様であれば、その具体的設置位置は
図1に示す例に限定されないことは勿論である。
【0040】
従来の晶析反応槽においては、被処理水供給管111及び循環水供給管112の接続位置が、反応槽の高さ方向に垂直な断面に沿った円形状の反応槽断面の接線方向に対して垂直になるように接続されていた(
図3参照)。そのため、被処理水及び循環水が、反応槽内部に供給された直後に混合されて微細な粒子が生成され、この微細な粒子が槽内部の上向流に乗って反応槽外部へ排出される場合があった。
【0041】
本発明の実施の形態によれば、反応槽1の側面の接線方向、反応槽1の高さ方向に垂直な断面に沿った円形状の反応槽断面の接線方向に沿って被処理水供給管11及び循環水供給管12が接続されている。そのため、被処理水供給管11及び循環水供給管12から被処理水及び循環水を供給することによって、反応槽1の下部に旋回流を発生させることができる。これにより、反応槽1内の液の混合状態を良好にすることができ、微細な粒子の装置外部への排出を抑制することができる。
【0042】
制御装置60は、弁6a、6b、ポンプ61、62に電気的に接続されており、弁6a、6bの開閉及びポンプ61、62の駆動を制御することができる。制御装置60は省略してもよい。弁6a、6bとしては、空気作動式であっても電動であってもいずれでも構わない。ポンプ61、62が運転中の場合、即ち、被処理水が反応槽1内に供給されている間は、弁6a、6bは開状態に維持される。被処理水又は前記循環水の供給を停止するときには、ポンプ61、62の停止に連動して、弁6a、6bが閉状態になる。
【0043】
反応槽1の下部には、粒径の大きな粒子が沈降するため、被処理水又は循環水の供給状態によっては、粒子が被処理水供給管11及び循環水供給管12に逆流する恐れがある。粒子の被処理水供給管11及び循環水供給管12への逆流により、被処理水供給管11及び循環水供給管12、弁6a、6b及びポンプ61、62内へ粒子が侵入し、弁6a、6bやポンプ61、62の破損や摩耗が生じたり、被処理水供給管11及び循環水供給管12内へ粒子が逆流することにより供給管が閉塞したりする場合がある。
【0044】
本発明の実施の形態によれば、ポンプ61、62の駆動に連動して、弁6a、6bが開閉するように制御されるため、被処理水又は循環水が供給されない場合においても、反応槽1内の結晶粒子が被処理水供給管11及び循環水供給管12側へ逆流することを抑制できる。これにより、結晶粒子の逆流による配管の閉塞や、配管及び配管周辺の機器が摩耗し、損傷するトラブルを抑制することができる。
【0045】
図1の例では、被処理水供給管11及び循環水供給管12の両方に弁6a、6bが設けられた例を示しているが、弁6a、6bは被処理水供給管11及び循環水供給管12のうち、配管径が細い方のいずれかに設けてもよい。
【0046】
(第1変形例)
図4に示すように、本発明の実施の形態の第1の変形例に係る晶析装置は、被処理水を貯蔵するタンク7aと、循環水を貯蔵するタンク7bと、一方が弁6aとポンプ61との間の配管に接続され、他方がタンク7aに接続された循環ライン71aと、一方が弁6bとポンプ62との間の配管に接続され、他方がタンク7bに接続された循環ライン71bを備える点が、
図1に示す晶析装置と異なる。循環ライン71aには弁6cが設けられている。循環ライン71bには弁6dが設けられている。弁6c、6dは制御装置60に電気的に接続されている。他は、
図1の晶析装置と実質的に同様の構成を備えるため、重複した説明を省略する。
【0047】
制御装置60は、
図5に示すようなフローに従って、ポンプ61、62の駆動及び弁6a、6b、6c、6dの開閉を制御することができる。例えば、
図5に示すように、ステップS1において、ポンプ61、62に対して駆動を停止するためのポンプ停止信号が制御装置60に発信されると、ステップS2において、制御装置60は、まず、停止する側のポンプ61、62に接続された循環ライン71a、71bにある弁6c、6dを開く。ステップS3において、制御装置60は、ポンプ停止信号が発せられたポンプ61、62に隣接する弁6a、6bを閉状態にする。ステップS4において、制御装置60は、ポンプ停止信号が発せられたポンプ61、62を停止させる。ステップS5において、制御装置60は、停止する側のポンプ61、62に接続された循環ライン71a、71bにある弁6c、6dを閉状態にする。
【0048】
具体的には、制御装置60は、例えば、弁6aが開いた状態で、ポンプ61に停止信号が発せられた場合に、弁6aを開いたまま、弁6cを開く。次に、制御装置60は、弁6aを閉じ、ポンプ61を停止させる。ポンプ61の停止後、制御装置60は、弁6cを閉じる。
【0049】
ポンプ61、62は、定量供給性の高いポンプを使用することが多い。一般的に定量供給性の高いポンプ、例えば一軸ネジ式ポンプやダイヤフラムポンプなどを用いた場合は、ポンプの閉め切り運転を行うとポンプと閉め切り部の間で移送液が高圧となり、閉め切り部または移送配管を破損する恐れがある。定量供給性に劣る渦巻ポンプでも長期に閉め切り運転を行うと、ポンプ内部の液の温度が上がり、内部焼き付きを起こす原因となる恐れがある。
【0050】
本発明の実施の形態の第1の変形例によれば、
図5のフローに従って、ポンプ61、62の駆動及び弁6a、6b、6c、6dの開閉が制御されることにより、ポンプ61、62の閉め切り運転のリスクが低減されるため、ポンプ61、62の閉め切り運転により生じ得る上述のようなリスクを低減することが可能となる。
【0051】
(第2変形例)
図6に示すように、反応槽1と被処理水供給管11及び循環水供給管12の接続部分は、反応槽1内部の粒子の逆流及び粒子の逆流による供給管の閉塞が生じやすい。第2の変形例に示すように、反応槽1と弁6a、6bとの間に被処理水供給管11及び循環水供給管12及び反応槽1の下部を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段8が接続されることにより、反応槽1内部の粒子の逆流及び粒子の逆流による供給管の閉塞を抑制することができる。洗浄水としては、プラント用水、井水、市水など種々の水を利用することができる。
【0052】
(第3変形例)
図7に示すように、反応槽を2槽以上備え、第1の反応槽1で得られた難溶性塩の結晶からなる粒子を第2の反応槽2以降の反応槽へ導入し、第2の反応槽2以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶からなる粒子を第1の反応槽1へ返送するようにしてもよい。
【0053】
即ち、第1の反応槽1に隣接する流動層方式の第2の反応槽2が設けられていてもよい。第2の反応槽2は、第1の反応槽1と同様に、被処理水を上向流で通水し、及び第2の反応槽2の内部で流動する粒子と接触させることにより、被処理水中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる。第2の反応槽2の上部には、処理水流出管23が接続されている。第2の反応槽2で処理された処理水は、処理水流出管13及び処理水流出管23を介して固液分離手段3へ供給される。
【0054】
固液分離手段3の底部に接続された抜取管34は、第2の反応槽2に接続されており、固液分離手段3の底部に沈積した難溶性塩の結晶からなる粒子を連続的或いは間欠的に第2の反応槽2に供給することが可能である。処理水流出管33を介して外部へ排出される処理水の一部は、循環水として循環水返送管35を介して循環水供給管22から第2の反応槽2内へそれぞれ供給される。被処理水は被処理水供給管21を介して第2の反応槽2の下部から供給される。
【0055】
第2の反応槽2の粒子沈殿部2aに堆積した粒子は、粒子沈殿部2aの底部に接続された抜取管24を介して第1の反応槽1へ供給することができる。第2の反応槽2の粒子沈殿部2aに堆積した粒子を第1の反応槽1内へ供給することで、第1の反応槽1で晶析する難溶性塩の粒子サイズを大きくすることができる。なお、
図7では、第1の反応槽1の底部の抜取管14から粒子を回収する例を示しているが、反対の構成、即ち、第1の反応槽1の底部に沈殿した粒子を第2の反応槽2へ供給し、第2の反応槽2内において粒子を粗大化させ、粗大化した粒子を第2の反応槽2の底部から抜き出すような構成を採用しても構わない。また
図7の例では、被処理水供給管21、循環水供給管22に接続されるポンプ及び弁の図示を一部省略しているが、第1の反応槽2と同様に、第2の反応槽2にも、被処理水又は循環水を供給するためのポンプと連動する弁が配置され、ポンプを停止させる場合に弁を閉じて第2の反応槽2内の粒子の被処理水供給管21、循環水供給管22への逆流を抑制するための構成が配置されることは勿論である。
【0056】
第2変形例に示すように、反応槽(第1の反応槽1、第2の反応槽2)を2槽以上備えることにより、結晶粒子をより効率良く回収することができる。なお、
図7では反応槽を2槽備える例を開示しているが、必要に応じて3槽、4槽と槽数を増やしてもよいことは勿論である。
【0057】
(第4変形例)
図8に示すように、第1及び第2の反応槽1、2にそれぞれ、第1及び第2の反応槽1、2で得られる粒子を第1及び第2の反応槽1、2の外部へ排出可能なエアリフト管5a、5bをそれぞれ配置してもよい。エアリフト管5a、5bは、エアリフト管を洗浄するための洗浄水を供給するエアリフト洗浄水供給手段52a、52bと、エアリフト洗浄水供給手段52a、52bよりも下部に設けられたバルブ51a、51bと、エアリフト洗浄水供給手段52a、52bよりも上部に設けられた気泡分離部53a、53bと、気泡分離部53a、53bに接続され、気泡分離部53a、53bにおいて気泡が分離された粒子を含む液体を反応槽の外部へ排出するスラリー排出部54a、54bとを備える。
【0058】
エアリフト洗浄水供給手段52a、52bには循環水返送管35が接続され、これにより第1及び第2の処理水の一部の循環水を洗浄水として利用することが可能である。或いは、エアリフト洗浄水供給手段52a、52bから清水を供給し、洗浄水として供給するようにしてもよい。
図8の例では、エアリフト管5bは、第2の反応槽2で得られる粒子を第1の反応槽1内へ供給することができる。エアリフト管5aは、第1の反応槽1で得られる粒子を第1の反応槽1の外部へ排出することができる。
図8に示す晶析装置によれば、微細な結晶粒子の装置外部への流出を更に抑制することが更に可能となり、装置の洗浄及びメンテナンス作業も容易になる。
【0059】
このように、本発明の実施の形態に係る晶析装置及び晶析方法は種々の変形を加えることが可能であり、本発明は上記の開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によって表されるものである。そのため、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲において変形し具体化し得るものである。