【解決手段】レーザ加工装置1は、板状のワークWを載置するパレット2と、ワークWの上方に配置され、パレット2に載置されたワークWに対してレーザ光を照射するレーザヘッド4と、パレット2に載置されたワークWに対して移動し、且つレーザヘッド4を支持し、レーザヘッド4をワークWに対して少なくとも水平方向に移動させるキャリッジ5と、キャリッジ5に垂設され、ワークWの表面に接触するブラシ6と、キャリッジ5を移動させることにより、ブラシ6をレーザ加工されたワークWの表面に接触させながら移動させる制御部8と、を備えるレーザ加工装置。
前記ブラシは、前記ワークの表面に接触する位置と前記ワークの表面から退避した位置との間を移動可能である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
前記ブラシは、前記キャリッジに対して回転し、前記ワークの表面に接触する位置と前記ワークの表面から退避した位置との間を移動する、請求項4に記載のレーザ加工装置。
前記ブラシが前記ワークの表面から退避した位置では、前記ブラシの先端は前記ワークの表面に接触する位置に対して、前記レーザヘッドから離れる、請求項4又は請求項5に記載のレーザ加工装置。
前記ワークの表面を吸着することにより、前記パレットに対して前記ワークを搬出する搬送装置を備える、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。また、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれについて、適宜、矢印の先の側を+側(例、+X側)と称し、その反対側を−側(例、−X側)と称する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るレーザ加工装置を示す斜視図である。レーザ加工装置(第1加工装置)1は、金属製の板状のワークWに対してレーザ加工を行う。レーザ加工装置1は、ワークWに対してレーザ加工を施すことにより、ワークWの一部を所望の形状の製品Waに切断する。レーザ加工装置1は、パレット2、パレット搬送装置3、レーザヘッド4、キャリッジ5、ブラシ6、搬送装置7、及び制御部8を備える。
【0014】
加工領域R1は、レーザ加工装置1によりワークWの加工が行われる領域である。加工領域R1は、フレーム10により囲まれるように設定される。フレーム10は、上下方向に起立しかつX方向に伸びる板状の2つのメインフレーム10aと、2つのメインフレーム10aの下部において両者を連結する下部フレーム10bと、を備える。メインフレーム10aは、加工領域R1の+Y側及び−Y側のそれぞれに、X方向に沿って配置され、キャリッジ5を支持する。下部フレーム10bは、加工領域R1の下部に配置され、パレット2を支持する。なお、フレーム10の構成は任意であり、メインフレーム10aや下部フレーム10bの形状、大きさ及び数は、任意である。また、フレーム10は、パレット2を昇降させるための昇降装置を備えてもよい。
【0015】
パレット2(加工パレット)は、板状のワークWを載置する。パレット2は、ベースプレート2a及び支持プレート2bを有する。支持プレート2bは、矩形状のベースプレート2aの上面に立った状態でX方向に並んで配置される。支持プレート2bは、その上端部でワークWの下面を支持する。支持プレート2bは、X方向に並んで複数設けられる。各支持プレート2bの上端部は、例えば鋸歯状に形成される。これにより、各支持プレート2bは、ワークWに対する接触面積を小さくし、レーザ加工によってワークWが支持プレート2bに溶着することを抑制することができる。各支持プレート2bの上端部は、ベースプレート2aからの高さが(Z方向の位置)が同一となるように形成される。
【0016】
複数の支持プレート2bの上には、ワークWが載置される。ワークWは、各支持プレート2bの上端部の高さが同一であるため、パレット2に、ほぼ水平に載置される。なお、各支持プレート2bの上端部は、
図1に示すような鋸歯状とすることに限定されず、例えば、剣山状や波形状としてもよい。また、パレット2は、複数の支持プレート2bを用いることに限定されず、例えば、複数のピンがベースプレート2a上に起立した状態で配置されたものでもよい。
【0017】
パレット搬送装置3は、パレット2の加工領域R1への搬入および搬出に用いられる。パレット搬送装置3は、レール(搬送経路)12を備える。パレット2は、ワークWを保持してレール12に沿って移動可能である。パレット2は、レール12上を走行可能な車輪を備える。レール12は、加工領域R1からアンロード位置UPまでX方向に直線的に延びている。アンロード位置UPは、レーザ加工によって製品Waが形成されたワークWから製品Waを抜き出す際に、ワークWが配置される位置である。パレット搬送装置3は、パレット2を牽引することによって、レール12に沿ってパレット2を搬送する。例えば、パレット2には、ワイヤと接続されたフックが掛けられ、このワイヤが駆動部に巻き取られることでパレット2が牽引される。なお、パレット2を移動させる機構は適宜変更可能であり、例えば、パレット2が自走式でもよい。
【0018】
レーザヘッド4は、下方にレーザ光を射出する。レーザヘッド4は、キャリッジ5に搭載される。レーザヘッド4は、下方に開口するノズル14(
図3(A)参照)を有し、ノズル14からレーザ光を射出する。レーザヘッド4は、加工領域R1に配置されたパレット2に載置されたワークWに対してレーザ光を照射する。レーザヘッド4は、光ファイバなどの光伝送体(不図示)を介してレーザ光源(不図示)に接続される。レーザ光源としては、例えばファイバーレーザなどの固体レーザの光源が用いられる。これにより、例えば炭酸ガスレーザなどに比べて熱密度の高いレーザ光が得られるため、高速で切断等を行うことが可能となる。レーザヘッド4は、制御部8に接続され、レーザ光の出力等の動作は、制御部8により制御される。
【0019】
レーザヘッド4には、アシストガスGが供給される(
図3(A)参照)。レーザヘッド4は、アシストガスGをノズル14から噴射しながらレーザ光を照射する。レーザヘッド4は、ワークWにレーザ光を照射することによりワークWを溶融し、溶融したワークWを、ノズル14からアシストガスGを高速に噴射することにより吹き飛ばす。レーザヘッド4が、アシストガスGをノズル14から噴射しながらレーザ光を照射する場合、アシストガスGにより、レーザ光によるワークWの溶融物を除去できるので、レーザ加工を精度よく行うことができる。アシストガスGの噴射は、制御部8により制御される。
【0020】
次に、キャリッジ5について説明する。キャリッジ5(レーザヘッド駆動部)は、レーザヘッド4を支持し、レーザヘッド4を移動させる。キャリッジ5は、パレット2に載置されたワークWに対してX方向に移動し、且つレーザヘッド4をワークWに対して少なくとも水平方向(X方向及びY方向)に移動させる。キャリッジ5は、ワークWの上方に配置される。キャリッジ5は、移動方向(X方向)に直交する直交方向(Y方向)に長い長尺状である。キャリッジ5は、例えば、直交方向(Y方向)の長さが、パレット2の直交方向(Y方向)の長さよりも長く設定される。レーザヘッド4は、キャリッジ5の長尺方向(Y方向)に沿って移動可能である。キャリッジ5は、ガントリー5a、スライダ5b、昇降部5c、ブラシ6、及びブラシ駆動部16(
図3(B)参照)を有する。ガントリー5aは、各部を支持する。ガントリー5aは、Y方向に延びており、Y方向に沿って配置される。ガントリー5aは、直交方向(Y方向)の長さが、パレット2の直交方向(Y方向)の長さよりも長く設定される。ガントリー5aは、メインフレーム10a上面側に形成される一対のガイドレール5d上に配置される。一対のガイドレール5dは、加工領域R1をY方向に挟んでX方向に沿って互いに平行に配置される。キャリッジ5は、ガントリー5aをX方向に移動させる不図示の駆動装置を有する。この駆動装置は、例えば、モータなどのアクチュエータである。ガントリー5aは、駆動装置により、ガイドレール5dに沿ってX方向に移動可能である。この駆動装置は、制御部8に接続され、制御部8により動作が制御される。
【0021】
ガントリー5aの上面(+Z側の面)には、ガイド5eが設けられる。ガイド5eは、Y方向に沿って形成され、スライダ5bをガイドする。スライダ5bは、ガントリー5aの上面から−X側の面にわたって配置される。キャリッジ5は、スライダ5bをX方向に移動させる不図示の駆動装置を有する。この駆動装置は、例えば、モータなどのアクチュエータである。スライダ5bは、この駆動装置により、ガイド5eに沿ってY方向に移動可能である。この駆動装置は、制御部8に接続され、制御部8により動作が制御される。なお、スライダ5bを案内するガイドは、ガントリー5aの−X側の面に形成されてもよい。
【0022】
スライダ5bの−X側の面には、ガイド5fが設けられる。ガイド5fは、上下方向に沿って形成され、昇降部5cを案内する。昇降部5cは、スライダ5bの−X側の面上に配置される。キャリッジ5は、昇降部5cを上下方向に移動させる不図示の駆動機構を有する。この駆動装置は、例えば、モータなどのアクチュエータである。昇降部5cは、この駆動機構により、ガイド5fに沿って上下方向に移動可能である。この駆動装置は、制御部8に接続され、制御部8により動作が制御される。
【0023】
上記レーザヘッド4は、昇降部5cの下部に保持される。キャリッジ5は、ガントリー5aがX方向に移動することでレーザヘッド4、スライダ5b及び昇降部5cが一体となり、X方向に移動する。スライダ5bがY方向に移動することでレーザヘッド4及び昇降部5cが一体となりY方向に移動する。昇降部5cが上下方向に移動することでレーザヘッド4が上下方向に移動する。これにより、レーザヘッド4は、加工領域R1の上方をX方向、Y方向及びZ方向に移動可能である。なお、キャリッジ5は、レーザヘッド4を少なくとも水平方向(X方向及びY方向)に移動可能な構成であれば、上記した構成に限定されない。例えば、キャリッジ5は、レーザヘッド4をZ方向に移動しない構成でもよく、例えば、レーザヘッド4(昇降部5c)がスライダ5bに固定されてもよい。
【0024】
ここで、レーザ加工により発生するスラグについて説明する。
図2(A)から(C)は、レーザ加工の説明図である。レーザ加工では、
図2(A)に示すように、レーザヘッド4からワークWに対してレーザ光Lを照射することでワークWを溶融し、溶融したワークWを、アシストガスGを高速で下方に噴射することにより、溶融物をワークWの下方に吹き飛ばす。このとき、ワークWの溶融物の一部が気化するため、ワークW(製品Wa)上にスラグS(ドロス)として残留することがある。
【0025】
また、
図2(B)に示すように、ワークWの加工点の直下に支持プレート2bがある場合、アシストガスGにより、ワークWの溶融物をワークWの下方に吹き飛ばすことができないため、ワークW上にスラグS(ドロス)が発生し易くなる。また、
図2(C)に示すように、アシストガスGの噴射により浮遊する程度のサイズのワークW片が生じる加工を行う場合、ワークWの加工点の直下に支持プレート2bがあると、アシストガスGの噴射でワークWの下方に吹き飛ばすことができないため、ワークW片が穴に嵌まり込んだり、ワークWの上方に吹き飛んだりして、ワークW上にスラグSとして残り易くなる。このようにスラグSが製品Wa(ワークW)上に存在すると、例えば吸着装置を用いた搬送装置により製品Waを搬送する際、製品Waと吸着装置との間にスラグSが入り、吸着装置による製品Waの吸着が不良となり、搬送不良の原因となる。また、レーザ加工の次の工程が成形加工あるいはタップ加工等である場合、加工を行う部分にスラグSが存在すると、スラグSが、成形に用いる金型あるいはタップ等の加工工具とワークWとの間に挟み込まれ、加工不良の原因となる。
【0026】
そこで、本実施形態のレーザ加工装置1は、上記のようなスラグSにより生じる悪影響を抑制するために、ワークW上のスラグSを除去するブラシ6を備える。
図3(A)及び(B)は、キャリッジを示す図である。
図3(A)は−X側から見た正面図である。
図3(B)は(A)に示すA方向(−Y方向)から見た矢視図である。
【0027】
ブラシ6は、キャリッジ5に設けられている。ブラシ6は、キャリッジ5に垂設され、ワークWの表面に接触する。ブラシ6は、制御部8がキャリッジ5をX方向に移動させることにより、レーザヘッド4によるレーザ加工後のワークWの表面に接触しながら移動する(
図3(B)参照)。ブラシ6がキャリッジ5に設けられる場合、ブラシ6の移動にキャリッジ5の駆動装置を用いるので、新たな駆動装置を設ける必要がなく、装置の構成を簡単にすることができる。
【0028】
ブラシ6は、ガントリー5aの下方に設けられる。ブラシ6は、ガントリー5aに垂設され、ワークWの表面に接触する。ブラシ6がガントリー5a(キャリッジ5)の下方に設けられる場合、ワークWとブラシ6との距離が近いので、サイズをコンパクトにすることができる。ブラシ6は、キャリッジ5のキャリッジの長尺方向(Y方向)に沿って設けられる。ブラシ6はY方向に沿って列をなし隙間なく形成されている。上記のようにキャリッジ5の直交方向に長い長尺状とされ、レーザヘッド4がキャリッジ5の長尺方向(Y方向)に沿って移動可能であり、ブラシ6がキャリッジ5の長尺方向に沿って設けられる場合、キャリッジ5の一方向(X方向)の移動によりワークW上のスラグSを除去できるので、ワークW上のスラグSを効率よく除去することができる。
【0029】
ブラシ6は、ブラシ6を装着する取り付け部材18を介して、ガントリー5aの下方にに垂設される。ブラシ6は、取り付け部材18に対して取り外し可能に装着される。ブラシ6が取り付け部材18に対して取り外し可能な場合、ブラシ6を容易に交換することができる。取り付け部材18は、ヒンジ部材19を介して、ガントリー5aの下方に取り付けられている(
図3(B)参照)。取り付け部材18は、ヒンジ部材19(回転部材)によりY方向と平行な回転軸周りに回転可能である。すなわち、取り付け部材18及びブラシ6は、ガントリー5a(キャリッジ5)に対して回転可能である。ブラシ6は、上記の回転により、ワークWの表面に接触する位置(接触位置)P1とワークの表面から退避した位置(退避位置)P2との間を移動する。ブラシ6が接触位置P1と退避位置P2との間を移動可能である場合、無駄なブラシ6の動作を抑制することができ、ブラシ6の動作を効率的にすることができる。ブラシ6は、ブラシ6をY方向と平行な回転軸周りに回転させるブラシ駆動部16の駆動により回転する。ブラシ駆動部16は、例えば、モータなどのアクチュエータである。ブラシ駆動部16は、制御部8に接続され、制御部8により動作が制御される。退避位置P2は、
図3(B)に示す例では、接触位置P1からY方向と平行な軸を中心として反時計回りに90度程度回転させた位置に設定される。退避位置P2では、ブラシ6の先端は接触位置P1に対して、レーザヘッド4から離れている。ブラシ6が、キャリッジ5に対して回転可能し、接触位置P1と退避位置P2との間を移動する場合、簡単な構成で、ブラシ6を接触位置P1と退避位置P2との間を移動させることができる。退避位置P2では、ブラシ6の先端は接触位置P1に対して、レーザヘッド4から離れている場合、レーザ光によるブラシ6の劣化を抑制することができる。
【0030】
ブラシ6の長手方向(直交方向、Y方向)の長さは、パレット2に載置可能な最大の大きさの矩形状のワークWに対応して設けられる。ブラシ6の長手方向の長さは、例えば、パレット2に載置可能な最大の大きさの矩形状のワークWの短辺より若干長く設定される。ブラシ6の長手方向の長さが、パレット2に載置可能な最大の大きさの矩形状のワークWに対応して設けられる場合、ワークWの大きさに依存せず、確実にワークW全体をブラシ6で処理することができる。
【0031】
ブラシ6の位置は、例えば、ブラシ6をワークWの下端の高さに接触可能に設定される。この場合、ワークWの穴(貫通孔)内までブラシ6が届くので、確実にワークWをブラシ6で処理することができる。
【0032】
ブラシ6の材質は、ワークWに傷をつけないようにするため、ワークWよりも硬度が低い材料が用いられる。例えば、ブラシ6の材質は樹脂である。
【0033】
次に、ブラシ6の動作について説明する。
図4は、ブラシの動作を示す図である。制御部8は、キャリッジ5を移動させることにより、ブラシ6をレーザ加工されたワークWの表面に接触しながら移動させる。ブラシ6は、レーザヘッド4によるワークWの加工後に動作する。レーザヘッド4によるワークWの加工後、制御部8によるキャリッジ5の駆動により、
図4に点線で示すように、ブラシ6はワークWの一方の端部(
図4では−X側の端部)に対して離間する位置に(
図4では−X方向)配置される。続いて、ブラシ6はブラシ駆動部16により回転し、接触位置P1に配置される。続いて、キャリッジ5は、ブラシ6がワークWの表面に接触する状態で、ブラシ6をワークWの他方の端部(
図4では+X側の端部)まで移動する。このブラシ6の移動により、
図4に実線で示すように、ワークWがブラシ6で掃かれ、ワークWの表面などに存在するスラグSが除去される。ブラシ6により除去されたスラグSは、ブラシ6により収集される。収集されたスラグSは、ブラシ6の+X方向の移動により、ワークWの+X側の端部から落下し、パレット2におけるワークWの他方の端部側に設けられる回収容器21に回収される。回収容器21を備える場合、除去したスラグSが回収されるので、スラグSを容易に処理することができる。このようにブラシ6を用いてスラグSを除去する場合、スラグSを収集し回収するので、スラグSの拡散を抑制することができる。例えば、スラグSを気体で吹き飛ばすことでワークWから除去する場合、スラグSは拡散してしまう。また、ブラシ6を用いてスラグSを除去する場合、簡単な構成で、ワークW上のスラグSを効果的に除去することができる。例えば、スラグSを吸引装置による吸引により回収する場合、サイズが大きいスラグSは吸引装置の吸引力が小さいと回収できず、吸引力を強くするには装置が複雑になりコストがかかる。これに対して、本実施形態のようにブラシ6を用いる場合、比較的大きいサイズのスラグSを、簡単な構成で、容易に回収することができる。また、本実施形態のように、レーザヘッド4によるワークWの加工後に、ブラシ6をワークWの表面に接触させながら移動させる場合、レーザ加工により生じたワークW上のスラグSを一度にまとめて除去できるので、ワークW上のスラグSを効率よく除去することができる。
【0034】
次に、
図1の説明に戻り、搬送装置7を説明する。搬送装置7は、ワークW(製品Wa)の表面を吸着することにより、パレット2に対してワークW(製品Wa)を搬出する。搬送装置7は、レーザ加工後にアンロード位置UPに配置されるパレット2の製品Waを、製品搬出エリアPAに搬出する。搬送装置7は、X方向に延びるXガイド24に取り付けられている。Xガイド24は、アンロード位置UPから製品搬出エリアPAまで延びている。Xガイド24は、不図示の走行台車に支持される。Xガイド24は、この走行台車のY方向の移動により、Y方向に移動する。搬送装置7は、例えば、Xガイド24に沿って移動可能なX移動体26と、X移動体26に設けられたZ移動体27と、Z移動体27の下端に設けられる吸着部28とを備える。X移動体26は、アンロード位置UPに配置されたパレット2の上方と製品搬出エリアPAとの間を移動可能である。Z移動体27は、吸着部28を保持しながら、X移動体26に対して上下方向(Z方向)に移動可能である。吸着部28は、上記の走行台車によりY方向に移動し、X移動体26によりX方向に移動し、Z移動体27によりZ方向に移動する。
【0035】
図5(A)から(C)は、搬送装置の動作を示す図である。
図5(A)に示すように、吸着部28の下面側(−Z側)には、複数の吸着パッド29が設けられる。吸着部28は、真空、減圧により製品Waを吸着するが、磁気などで吸着するものでもよい。吸着部28は、アンロード位置UPにおいて、X方向およびY方向の移動によりワークW上の製品Waと位置合わせされる。続いて、吸着部28は、
図5(B)に示すように、下方(−Z側)へ移動することによりワークWに接近して、製品Waを吸着する。本実施形態では、上記した
図4に示すように、ブラシ6でワークW上のスラグSを除去しているので、吸着パッド29による製品Waの吸着を確実に行うことができる。続いて、吸着部28は、
図5(C)に示すように、製品Waを吸着した状態で、上方(+Z側)へ移動して製品Waを持ち上げ、X方向およびY方向の移動により製品Waを、製品搬出エリアPA(
図1参照)の所定の位置へ移載する。このように、ワークWの表面を吸着することにより、パレット2に対してワークWを搬出する搬送装置7を備える場合、ワークWを効率よく搬出することができる。なお、上記の例では、搬送装置7がワークWを所定位置に搬出する例を示したが、これに限定されず、搬送装置7はパレット2に対してワークWを搬入する装置でもよい。
【0036】
制御部8は、レーザ加工装置1の各部を制御する。制御部8は、中央演算処理装置(CPU)、メモリ、ハードディスク等の記憶装置、各種制御に必要なプログラム等を備えている。制御部8は、例えば、レーザヘッド4の位置(キャリッジ5の駆動)、レーザヘッド4のレーザ光の出力、ブラシ6の動作等を制御する。例えば、制御部8は、キャリッジ5を移動させることにより、ブラシ6をレーザ加工されたワークWの表面に接触させながら移動させる。
【0037】
次に、レーザ加工装置1の動作を説明する。
図6は、レーザ加工装置1の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、加工領域R1内に、ワークWが搬入される。ワークWは、
図1に示すアンロード位置UPに配置されるパレット2に載置された状態で、加工領域R1内に搬入される。続いて、ステップS2において、ブラシ6を退避位置P2(
図2(B)参照)に移動する。ブラシ6は、ブラシ駆動部16により、退避位置P2に移動する。続いて、ステップS3において、レーザヘッド4によりワークWの加工が行われる。レーザヘッド4によるワークWの加工は、キャリッジ5によりレーザヘッド4がワークWに対して相対的に移動し、ワークWに対してアシストガスGを噴出しながらレーザ光を照射することにより行われる。続いて、ステップS4において、ブラシ6をワークWの一方の端部に移動する。
図4に点線で示すように、キャリッジ5を−X方向に駆動することにより、ブラシ6をワークWの一方の端部(
図4では−X側の端部)に対して離間する位置に移動する。続いて、ステップS5において、ブラシ6をワークWの表面に接触させながら、ブラシ6をワークWの他方の端部(
図4では+X側の端部)まで移動する。例えば、
図4に実線で示すように、キャリッジ5を+X方向に駆動することにより、ブラシ6をワークWの+X側の端部まで移動する。このブラシ6の移動により、
図4に実線で示すように、ワークWがブラシ6で掃かれ、ワークWの表面などに存在するスラグSが除去される。ブラシ6により除去されたスラグSは、ブラシ6により収集される。収集されたスラグSは、上記のブラシ6の+X方向の移動により、ワークWの+X側の端部から落下し、パレット2におけるワークWの他方の端部側に設けられる回収容器21(
図4参照)に回収される。続いて、ステップS6において、レーザ加工したワークWを搬出する。
図1に示すパレット搬送装置3により、レーザ加工後のワークWが載置されたパレット2を加工領域R1から搬出し、アンロード位置UPに移動する。続いて、ステップS7において、製品Waを所定位置に搬出する。
図5(A)から(C)に示すように、吸着部28は、アンロード位置UPにおいて、X方向およびY方向の移動によりワークW上の製品Waと位置合わせされ、下方(−Z側)へ移動することによりワークWに接近して、製品Waを吸着する。続いて、吸着部28は、
図5(C)に示すように、製品Waを吸着した状態で、上方(+Z側)へ移動して製品Waを持ち上げ、X方向およびY方向の移動により製品Waを、製品搬出エリアPAの所定の位置へ移載する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のレーザ加工装置1は、簡単な構成で、レーザ加工時に発生したワークW上のスラグSを効率よく除去することができる。
【0039】
[第2実施形態]
本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
図8は、第2実施形態に係る板材加工システムを示す上面図である。板材加工システムSYSは、レーザ加工装置1と、レーザ加工装置1に配置されたワークWを移送(搬送)する移送装置30と、移送装置30によりレーザ加工装置1からワークWを移送する途中に、ワークWを加工する加工装置31と、を備える。
【0040】
板材加工システムSYSは、ワークWに対して、レーザ加工装置1の第1加工領域R1でレーザ加工を行い、加工装置31で加工を行う。レーザ加工装置1は、−Y側のメインフレーム10aに開口部35を備える。加工装置31は、フレーム10に開口部36を備える。移送装置30は、ワークホルダ30aによりワークWを把持して、開口部35及び開口部36を介して、レーザ加工装置1と加工装置31との間においてワークWを移送する。移送装置30は、不図示のガイド及び駆動装置によりY方向に移動する。
【0041】
加工装置31は、ワークWを加工する加工工具38を有しワークWを加工する。加工装置31は、加工工具38によりワークWを加工する領域として第2加工領域R2を有する。第2加工領域R2は、第1加工領域R1の−Y側に配置される。第2加工領域R2において、ワークWが移送装置30によってY方向に移送され、かつ、加工工具38がX方向に移動することにより、ワークWの任意の部分に加工工具38を位置決めし加工することができる。加工装置31による加工は、例えば成形加工、あるいはタップ加工などである。加工工具38は、各加工に適した工具が使用される。
【0042】
板材加工システムSYSは、フォーク装置40を備える。フォーク装置40は、レーザ加工装置1の第1加工領域R1においてパレット2上のワークWを受け取って、支持テーブルとして機能する。フォーク装置40は、基部40aと、腕部40bとを有する。基部40aは、X方向に延びて形成される。腕部40bは、棒状であり、基部40aの上面にX方向に複数並んで設けられる。フォーク装置40の腕部40bと後述する固定テーブル42の棒状部42bとは、交互に配置される。フォーク装置40の腕部40bの上面には、不図示のブラシ部が所定間隔で設けられてもよい。このブラシ部は、ワークWの移送時の抵抗を低減し、ワークWの下面に傷が付くのを抑制する。また、ブラシ部の代わりに、複数のフリーボールベアリング(ボールが全方向に転動可能)が配置されてもよい。
【0043】
フォーク装置40は、不図示の駆動装置及び不図示のガイドを備え、フォーク装置40の少なくとも一部を待機領域R3から第1加工領域R1に対して進退可能である。待機領域R3は、第2加工領域R2の−Y側に配置されている。
【0044】
また、板材加工システムSYSは、固定テーブル42を備える。固定テーブル42は、待機領域R3から第2加工領域R2に向けて設けられる。固定テーブル42は、X方向に延びる棒状の支持部42aと、支持部42a上から+Y側に延びる複数の棒状部42bと、を備える。複数の棒状部42bのX方向のピッチは、フォーク装置40の腕部40bにおけるX方向のピッチとほぼ同様に設定される。各棒状部42bの上面には、フォーク装置40の腕部40bと同様に、不図示のブラシ部やフリーボールベアリングが設けられてもよく、ワークWの移送時の抵抗を低減してワークWの下面に傷が付くことを抑制してもよい。
【0045】
次に、板材加工システムSYSの動作を説明する。板材加工システムは、ワークWを載置したパレット2がレーザ加工装置1に搬入される。パレット2は、例えば、アンロード位置UP(
図1参照)から−X方向に走行してワークWを搬入する。パレット2に載置されたワークWは、レーザ加工装置1の第1加工領域R1に配置される。
【0046】
次に、移送装置30は、+Y方向に移動して、ワークホルダ30aによりワークWの−Y側の端部を把持する。続いて、レーザ加工装置1は、第1加工領域R1に配置されたワークWをレーザ加工する。レーザ加工装置1は、レーザヘッド4をワークWに対して相対的に移動させ、アシストガスGを噴出しながらレーザ光Lを照射することによりワークWを加工する。
【0047】
次に、第1実施形態と同様に、キャリッジ5を−X方向に駆動することにより、ブラシ6を、ワークWの一方の端部に対して離間する位置に移動する。続いて、キャリッジ5を+X方向に駆動することにより、ブラシ6をワークWの表面に接触させながら、ブラシ6をワークWの他方の端部まで移動する。このブラシ6の移動により、ワークWがブラシ6で掃かれて、ワークWの表面などに存在するスラグSが除去される。ブラシ6により除去されたスラグSは、ブラシ6により収集される。収集されたスラグSは、ブラシ6の+X方向の移動により、ワークWの+X側の端部から落下し、パレット2におけるワークWの他方の端部側に設けられる回収容器21(
図4参照)に回収される。
【0048】
次に、フォーク装置40を待機領域R3から+Y方向に移動させて、腕部40bをワークWの下方に配置する。次に、パレット2を下降させる。これにより、ワークWはパレット2の支持プレート2b上から腕部40b上に移載される。次に、ワークWは、移送装置30によって、ワークWの移送途中に設定された第2加工領域R2に配置される。ワークWは、所定部分が第2加工領域R2において位置決めされ、加工装置31によって加工される。加工装置31による加工は、例えば成形加工あるいはタップ加工などである。本実施形態では、ブラシ6でワークW上のスラグSを除去しているので、スラグSによる加工の不良を抑制することができる。
【0049】
加工装置31による加工の後、ワークWは、待機領域R3に移送された後、他の搬送装置によって外部に搬送されてもよく、また、再度+Y方向に移送されてレーザ加工装置1によってレーザ加工が行われてもよい。また、再度レーザ加工を行ったワークWは、パレット2に載置された状態でレーザ加工装置1の外側に搬送されてもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の板材加工システムSYSは、レーザ加工時に発生したワークW上のスラグSを効率よく除去することができるので、ワークW上のスラグSによる加工不良を抑制することができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0052】
なお、上述の例では、ブラシ6の数が1つの例を説明したが、ブラシ6は複数設けられてもよい。例えば、
図1等に示すブラシ6がX方向に並んで2列で設けられてもよい。また、上述の例では、ブラシ6がキャリッジ5に対して回転することにより接触位置P1と退避位置P2との間を移動する構成の例を説明したが、ブラシ6を移動する構成はこれに限定されず、例えば、ブラシ6は鉛直方向(上下方向)に移動して接触位置P1と接触位置P1から退避する退避位置P2との間を移動する構成でもよい。