【実施例】
【0023】
図1に示すように、本発明に係るヘリカルギヤの成形装置10(以下、単に成形装置10と記す。)は、成形金型20を用いてヘリカルギヤ(はすば歯車)12を成形するための装置である。
成形金型20は、複数のセグメントダイス30、30と、それら複数のセグメントダイス30、30を摺動可能に保持する保持リング40とからなる。
【0024】
成形装置10は、保持リング40を固定するボルスター11と、セグメントダイス30を下方から支える昇降可能なダイプレート13と、このダイプレート13を上方へ付勢する圧縮ばね14と、ボルスター11及びダイプレート13を貫通するノックアウト15と、ヘリカルギヤ12を上方から抑えるインナーパンチ16と、セグメントダイス30を上方から押圧するアウターパンチ17とを備えている。
【0025】
以下、成形装置10の主要素の構造を詳しく説明する。
【0026】
図2は
図1の2−2線断面図である。
図2に示すように、セグメントダイス30は、円筒状のダイスを周方向に複数個(例えば、12個)に等分割してなるものであり、正面に歯成形部31を有し、背面に被保持面32を有している。被保持面32はV字断面の凸斜面とされ、保持リング40の凹ガイド面42に係合する凸ガイド面33を構成する。
【0027】
保持リング40は、複数のセグメントダイス30を円周状に保持するものであり、セグメントダイス30の被保持面32を保持するダイス保持面41を有している。ダイス保持面41はV字断面の凹斜面とされ、セグメントダイス30の凸ガイド面33に対応する凹ガイド面42を構成する。
【0028】
凸ガイド面33及び凹ガイド面42のテーパ角θは等しく、いずれも鈍角(90°を超え、180°未満の角度)となっている。なお、(内角+外角)=360°と定義した場合に、テーパ角θは内角に相当する。
【0029】
隣り合うセグメントダイス30の間には、付勢部材45が配置されている。付勢部材45の例としては圧縮コイルばねが挙げられる。
付勢部材45は、セグメントダイス30に対して、隣り合うセグメントダイス30を互いに引き離すように付勢する。この付勢により、付勢部材45を通る仮想円46の径が拡がり、この作用により、被保持面32がダイス保持面41に当接するようにセグメントダイス30が保持リング40側へ付勢される。
【0030】
図3(a)はセグメントダイス30の正面図であり、
図3(b)はセグメントダイス30の側面図、
図3(c)はセグメントダイス30の背面図である。
【0031】
図3(c)に示すように、セグメントダイス30の背面は段差の無い一様な面となっており、セグメントダイス30の背面全体が被保持面32とされている。その上で、凸ガイド面33が被保持面32の全面にわたって設けられている。このように、セグメントダイス30の背面全体を被保持面32とし、被保持面32の全面にわたって凸ガイド面33を設けることで、凸ガイド面33の面積を極力大きくとることができ、凸ガイド面33が受ける単位面積当たりの力(面圧)を下げることができる。
【0032】
図3(a)に示すように、歯成形部31は、ねじれ角分だけ鉛直軸36に対して傾斜している。そして、凸ガイド面33が正面に向くようにセグメントダイス30を正投影視した場合に、凸ガイド面33の稜線37は鉛直軸36と重なっており、この稜線37は、歯成形部31の歯すじ31aの高さ方向中央C(略中央を含む。)で歯成形部31と交叉している。
なお、
図3(b)に示すように、セグメントダイス30の上部には、付勢部材(
図2、符号45)を収納する凹部35が設けられている。
【0033】
図4(a)は保持リング40の断面図であり、
図4(b)は
図4(a)のb−b線断面図である。
【0034】
図4(a)に示すように、保持リング40の内周面には、下方へ向かうほど縮径する円錐状テーパ面が形成されており、この円錐状テーパ面がダイス保持面41となる。以降、ダイス保持面41に沿って上下方向へ延びる線43をダイス保持面41の母線43と呼ぶ。この母線43は、ダイス保持面41を正投影視した場合に、
図3(a)の鉛直線36と重なる。
【0035】
図4(b)に示すように、ダイス保持面41は、凹ガイド面42を円周状に並べて構成される。
【0036】
以上の構成からなる成形装置10の作用を、
図1に基づいて説明する。
・
図1にて、アウターパンチ17及びインナーパンチ16が上昇した状態では、圧縮ばね14の付勢作用によりダイプレート13が上昇し、このダイプレート13と共にセグメントダイス30、30が上昇する。セグメントダイス30、30は、保持リング40のダイス保持面41に沿って上昇すると共に、付勢部材45の付勢作用により保持リング40側へ付勢される。
【0037】
・この状態で、被成形品であるヘリカルギヤ12をダイプレート13上に載せ、上方からインナーパンチ16で抑える。
・この状態で、アウターパンチ17及びインナーパンチ16を下降させると、セグメントダイス30、30とヘリカルギヤ12とダイプレート13とが一緒に下降する。このときに、セグメントダイス30、30は保持リング40のダイス保持面41に沿って水平に前進し、ヘリカルギヤ12の歯形を成形する。
【0038】
・成形後、アウターパンチ17及びインナーパンチ16を上昇させると、圧縮ばね14の付勢作用によりダイプレート13が上昇し、このダイプレート13と共にセグメントダイス30、30が保持リング40のダイス保持面41に沿って上昇する。
このとき、セグメントダイス30、30がヘリカルギヤ12に食い付くが、付勢部材45の付勢作用によりヘリカルギヤ12から強制的に分離される。
・最後にノックアウト15を上昇させ、成形済みのヘリカルギヤ12を払い出す。
【0039】
次に変更例を説明する。なお、変更例において
図2と共通する要素は、
図2の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
図5に示すように、凸ガイド面33及び凹ガイド面42は、円弧断面であってもよい。
【0040】
また、
図6に示すように、凸ガイド面33及び凹ガイド面42は、台形断面であってもよい。
また、
図7に示すように、セグメントダイス30の被保持面32側に凹ガイド面42を設け、保持リング40のダイス保持面41側に凸ガイド面33を設けてもよい。
【0041】
以上に述べたヘリカルギヤの成形金型20によれば、次に述べる効果が発揮される。
【0042】
保持リング40のダイス保持面41とセグメントダイス30の被保持面32とのいずれか一方に凹ガイド面42を設け、ダイス保持面41と被保持面32とのいずれか他方に凸ガイド面33を設けてなる成形金型20において、凹ガイド面42を凹斜面とし、凸ガイド面33を凸斜面としたので、凹斜面と凸斜面とが互いに係合することでセグメントダイス30がガイドされる。よって、ダイス保持面41と被保持面32との間にガタつきが生じず、ヘリカルギヤ成形時に歯形のねじれ角に基づく反力がセグメントダイス30に作用しても、セグメントダイス30が傾くことが無いため、結果、歯形の精度を高めることができる。
【0043】
また、被保持面32の全面を凸ガイド面33とし、これに係合する凹ガイド面42を円周状に並べてダイス保持面41を構成することで、両ガイド面33、42の面積を極力大きくとることができ、各ガイド面33、42が受ける面圧を下げることができる。よって、凹ガイド面42及び凸ガイド面33の耐久性を向上させることができる。
【0044】
凹ガイド面42及び凸ガイド面33は、断面V字、断面円弧状、断面台形状のいずれでも良いが、断面V字が好ましい。すなわち、凹ガイド面42及び凸ガイド面33はV字断面であることが推奨され、これにより、凸ガイド面33による楔作用を利用して、セグメントダイス30の傾きを確実に防止することができる。
【0045】
更に好ましくは、凹ガイド面42のテーパ角θ及び凸ガイド面33のテーパ角θを鈍角とすることが推奨される。鈍角であれば、凸ガイド面33の過度の楔作用が抑えられ、セグメントダイス30を保持リング40に対してスムーズに摺動させることができる。
【0046】
更に好ましくは、凸ガイド面33が正面に向くようにセグメントダイス30を正投影視した場合に、凸ガイド面33の稜線37を歯成形部31の歯すじ方向中央Cで歯成形部31と交叉するようにすることが推奨される。
これにより、ヘリカルギヤ成形時、セグメントダイス30が歯成形部31から受ける反力を、稜線37を境に凸ガイド面33へ左右均等に作用させることができる。結果、セグメントダイス30の傾きを確実に防止することができると共に、セグメントダイス30を保持リング40に対してスムーズに摺動させることができる。
【0047】
以上、成形金型20について述べたが、成形装置10にあっても、次に述べる効果が発揮される。
【0048】
ヘリカルギヤの成形金型20を備えた成形装置10において、セグメントダイス30の被保持面が保持リング40のダイス保持面41に当接するようにセグメントダイス30を付勢する付勢部材45を備えているので、凹ガイド面42と凸ガイド面33とを常に接触させ続けることができ、ヘリカルギヤ成形時の全工程において、上述した成形金型20の機能を発揮させることができる。
【0049】
成形装置10において、付勢部材45の配置形態は任意であるが、隣り合うセグメントダイス30、30の間に配置することが好ましい。これにより、デッドスペースを有効利用し、成形装置10の小型、軽量化を図ることができる。
【0050】
付勢部材45は、シリンダユニット、ゴムブロック、スポンジブロックなどであってもよいが、好ましくは圧縮コイルばねとする。圧縮コイルばねは安価であり、成形装置10の設備コストの低減に寄与する。
【0051】
尚、ヘリカルギヤの成形装置10の構成は、
図1に限定されるものではなく、構造を変更することは任意である。