【解決手段】スピンドルの所定の回転速度を保持するために必要な圧縮空気の供給圧力と工具の逃げ面摩耗量との対応を示す第1の関係式を求め、所定の加工距離における圧縮空気の供給圧力の測定値に基づいて加工距離と圧縮空気の供給圧力との対応を示す第2の関係式を求め、第2の関係式により、次の加工距離における供給圧力予測値を推定し、供給圧力予測値と第1の関係式を用いて次の加工距離での工具の逃げ面摩耗量を推定する。
圧縮空気により回転するスピンドルを工具主軸とし、前記スピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力を調整することにより前記スピンドルの回転速度を制御する回転速度制御機構を有する工作機械の工具損耗推定方法であって、
前記スピンドルの所定の回転速度を保持するために必要な前記圧縮空気の供給圧力と工具の逃げ面摩耗量との対応を示す第1の関係式を求めること、
所定の加工距離における前記圧縮空気の供給圧力の測定値に基づいて加工距離と前記圧縮空気の供給圧力との対応を示す第2の関係式を求めること、
前記第2の関係式により、次の加工距離における供給圧力予想値を推定すること、
前記供給圧力予測値と前記第1の関係式を用いて次の加工距離での工具の逃げ面摩耗量を推定すること
を含む工具損耗推定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の工具損耗検知機能センサ付き切削工具では、測定分解能は細線間隔に比例するので、細線の幅や間隔は求めたい分解能に応じて設定するようになっているものの、切削工具の逃げ面上に導電性材料により形成可能な細線の幅や間隔には限界があり、微小な摩耗の進行を検知することができないという問題がある。また、消耗品であるスローアウェイ型切削工具そのものにセンサ機能を設けるため、コスト面で問題となる。
【0006】
そこで、本発明においては、工具そのものにセンサを設けることなく、工具損耗を加工中のインプロセスで推定することが可能な工具損耗推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
圧縮空気により回転するスピンドルを工具主軸とし、スピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力を調整することによりスピンドルの回転速度を制御する回転速度制御機構を有する工作機械では、工具逃げ面摩耗量が大きくなると、切削抵抗が増加するために、スピンドルの回転速度を保持するために回転速度制御機構がスピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力を上昇させる。つまり、工具逃げ面摩耗量とスピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力との間には相関が存在し、本発明の工具損耗推定方法では、この相関から工具の逃げ面摩耗量を推定する。
【0008】
すなわち、本発明の工具損耗推定方法は、スピンドルの所定の回転速度を保持するために必要な圧縮空気の供給圧力と工具の逃げ面摩耗量との対応を示す第1の関係式を求めること、所定の加工距離における圧縮空気の供給圧力の測定値に基づいて加工距離と圧縮空気の供給圧力との対応を示す第2の関係式を求めること、第2の関係式により、次の加工距離における供給圧力予測値を推定すること、供給圧力予測値と第1の関係式を用いて次の加工距離での工具の逃げ面摩耗量を推定することを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の工具損耗推定方法は、スピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力の測定値が供給圧力予測値から外れたときに工具の異常摩耗であると推定することを含むことが望ましい。本発明に係る工作機械では、工具逃げ面摩耗量が大きくなると、スピンドルの回転速度を保持するために回転速度制御機構がスピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力を上昇させるが、工具にチッピングなどの異常摩耗が発生した際、瞬間的に切削抵抗が減り、回転速度制御機構はスピンドルの回転速度を保持するためにスピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力を急減少させる。このとき、スピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力の測定値が供給圧力予測値から外れるので、工具の異常摩耗であると推定する。
【発明の効果】
【0010】
(1)スピンドルの所定の回転速度を保持するために必要な圧縮空気の供給圧力と工具の逃げ面摩耗量との対応を示す第1の関係式を求め、所定の加工距離における圧縮空気の供給圧力の測定値に基づいて加工距離と圧縮空気の供給圧力との対応を示す第2の関係式を求め、第2の関係式により、次の加工距離における供給圧力予測値を推定し、供給圧力予測値と第1の関係式を用いて次の加工距離での工具の逃げ面摩耗量を推定する構成により、工具そのものにセンサを設けることなく、工具逃げ面摩耗量を加工中のインプロセスで推定することが可能となる。
【0011】
(2)スピンドルに供給する圧縮空気の供給圧力の測定値が供給圧力予測値から外れたときに工具の異常摩耗であると推定することにより、工具そのものにセンサを設けることなく、チッピングなどの異常摩耗を加工中のインプロセスで推定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<工作機械の構成>
図1は本発明の実施の形態における工作機械を示す図、
図2は
図1の静圧空気軸受スピンドル装置を示す断面図、
図3は
図1の工作機械の工具主軸の回転速度制御機構の概要図、
図4は
図1の工作機械の工具主軸の回転速度制御系のブロック線図、
図5は圧力レギュレータの一例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態における工作機械は、ベース1と、このベース1に三次元駆動機構2を介して三次元方向(X,Y,Z軸方向)へ移動可能に設けられ上面にワークを載置するテーブル3と、ベース1に立設されたコラム4と、このコラム4に支持アーム5を介してテーブル3の真上に設置された静圧空気軸受スピンドル装置6とから構成されている。
【0015】
静圧空気軸受スピンドル装置6は、
図2に示すように、先端にエンドミルなどの回転工具7を取り付けたスピンドル10と、このスピンドル10を、空気層(空気隙間)を介して回転可能に支持したエアーベアリング機構20と、スピンドル10を圧縮空気により回転させる回転駆動機構40と、圧縮空気をエアーベアリング機構20および回転駆動機構40に供給するエアー供給手段50とを備える。
【0016】
スピンドル10は、
図2に示すように、所定長さの軸部11と、この軸部11の途中に設けられ、軸部11の径よりも径大なフランジ部12とを有する。本発明の実施の形態における工作機械は、このスピンドル10を工具主軸とするものである。
【0017】
エアーベアリング機構20は、
図2に示すように、スピンドル10を収納する収納孔22を有する軸受本体21と、この軸受本体21の収納孔22内に固定され、スピンドル10を空気隙間を介して回転可能に支持する軸受部材31,32とを有する。
【0018】
軸受部材31,32は、軸部11の外周面との間に所定のラジアル隙間33を有する内径およびラジアル隙間33に空気を噴出するエアー噴出孔34を有するラジアル軸受部材31A,32Aと、これらラジアル軸受部材31A,32Aと一体的に形成され、フランジ部12の端面との間に所定のスラスト隙間35およびスラスト隙間35に空気を噴出するエアー噴出孔36を有するスラスト軸受部材31B,32Bとから構成されている。
【0019】
軸受本体21には、中心軸方向にスピンドル10を収納する収納孔22が形成されているとともに、外部にエアーベアリング用エアー供給口23およびエアータービン用エアー供給口24が形成されている。また、内部には、エアーベアリング用エアー供給口23から各軸受部材31,32のエアー噴出孔34,36に連通するエアー供給路25と、エアータービン用エアー供給口24からエアータービン41の外周に臨むエアー供給路26が形成されている。
【0020】
回転駆動機構40は、
図2に示すように、スピンドル10の基端側(回転工具7を取り付けた端部とは反対側)に固定されたエアータービン41と、軸受本体21に形成され、エアータービン41に向けて圧縮空気を噴射する空気噴射ノズルとしてのエアー供給路26とによって構成されている。これにより、エアー供給手段50からの圧縮空気がエアー供給路26を通じてエアータービン41に供給されると、エアータービン41が回転され、これと一緒にスピンドル10が回転される。
【0021】
エアー供給手段50は、
図3に示すように、圧縮空気を供給するコンプレッサ等の空気供給源51と、空気供給源51とエアーベアリング用エアー供給口23との間に設けられ、空気を所定圧に制御するエアーベアリング用圧力レギュレータ54と、空気供給源51とエアータービン用エアー供給口24との間に設けられたエアータービン用圧力レギュレータ55と、スピンドル10の回転速度を検出する回転速度検出センサ57からの信号と設定回転速度との差に相当する信号をエアータービン用圧力レギュレータ55に与える回転速度コントローラ56とから構成されている。スピンドル10の回転速度を制御する回転速度制御機構は、エアータービン用圧力レギュレータ55、回転速度コントローラ56および回転速度検出センサ57により構成されている。
【0022】
エアータービン用圧力レギュレータ55は、圧力を高速かつ精密に目標圧力に保持する超精密高速応答圧力レギュレータ(HPQR:High Precision Quick response pneumatic pressure Regulator)であり、例えば特開2009−110033号に開示された圧力レギュレータを用いることができる。エアーベアリング用圧力レギュレータ54についても同じHPQRを用いることができる。
【0023】
エアータービン用圧力レギュレータ55は、
図5に示すように、空気供給源51から供給される空気の流入流量を規制するサーボ弁71と、このサーボ弁71を通った空気を流入し、等温状態に保持する等温化圧力容器72と、この等温化圧力容器72内へ流入する空気の流入流量を計測する流量計73と、等温化圧力容器72内の空気の圧力を検出する圧力計74と、等温化圧力容器72内の空気の圧力微分値を検出する圧力微分計75と、流量計73、圧力計74および圧力微分計75で検出された信号をA/D変換するA/D変換器76と、このA/D変換器76を通じて与えられる信号を基に制御電圧を算出し、その制御電圧をD/A変換器78を介してサーボ弁71へ与える圧力制御手段77とを備える。
【0024】
エアータービン用圧力レギュレータ55が起動され、等温化圧力容器72内の空気の圧力Pが所定の目標値に整定された状態にあるとする。このとき、サーボ弁71は、等温化圧力容器72の流出口から流出する流出流量と、流入口から流入する流入流量とがバランスする開度に調整されている。ここで、空気供給源51からの空気の圧力P、または、等温化圧力容器72から流出する空気の流出流量G
outに変動が生じ、等温化圧力容器72内の圧力Pが目標値P
refから変化すると、エアータービン用圧力レギュレータ55は空気の圧力の変動を補償するために、圧力制御手段77によって、流量計73で計測された流入流量G
in、圧力計74で計測された圧力Pおよび圧力微分計75で計測された圧力微分値dP/dtをA/D変換器76を介して受信し、これらの受信した計測データに基づいてサーボ弁71に対する制御電圧E
iを算出し、この算出した制御電圧E
iをD/A変換器78を介してサーボ弁71に与える。すると、サーボ弁71は、圧力制御手段77によって算出された制御電圧E
iに応じた開度にサーボ弁71を制御し、その開度に応じた流入流量G
inで等温化圧力容器72に空気を流入する。これによって、等温化圧力容器72内の空気の圧力Pが目標値P
refに整定されるように制御される。
【0025】
回転速度コントローラ56は、
図4に示すように、PIコントローラにより回転速度をフィードバックして制御する回転速度制御系に、切削による外乱τ
disが発生したときのスピンドル10のモデル誤差を供給空気圧力Pと回転速度Nの関係から補償することができる外乱オブザーバを適用したものである。外乱オブザーバは、外乱によりスピンドル10のモデルに誤差が生じた場合、供給空気圧力Pと回転速度Nの関係から外乱を推定し、モデルの誤差を補償することができる。この回転速度コントローラ56を用いた回転速度制御機構により、加工時における加工負荷が生じた際や静圧空気軸受への供給空気圧の変動においても回転速度を高速かつ安定的に制御できるようになっている。
【0026】
<工具損耗の推定>
上記構成の工作機械により、工具寿命の直接的判定方法として工具の逃げ面摩耗量V
Bmaxを測定した。具体的には、NCフライス盤(大阪機工製らくらくミル3V)に静圧空気軸受スピンドル装置6を取り付けて実験を行った。また、回転工具7として表1に示す仕様の超硬ボールエンドミルを使用した。また、被削材として、高硬度であり難削材と言われる合金工具鋼(SKD11 HRC58)を使用した。被削材の仕様は表2に示す通りである。
【0027】
表3は加工条件を示している。切削は切り屑の巻き込みや不規則なピッチングを防ぐために少量の潤滑油をエアで吹き付けるセミドライ加工方式により行った。工具は被削材の300mmの辺(X軸方向)の端面を加工し、順次内側へと向かいながら断続的に加工を繰り返した。
図6は工具の軌道を示している。
【0031】
工具の逃げ面摩耗量は、摩耗進行が不安定な初期摩耗時は15m加工するごとに60mまで、それ以降は安定的に摩耗が進行するため30m加工するごとに測定した。測定にはワイヤレスのデジタル顕微鏡(Anyty 3R−WM401PC)を使用し、機上で測定することで工具の取り付け・取り外しの工程を省略し、取り付け時の突き出し量の変動を最小限に抑えるようにした。なお、寿命の判定基準として、逃げ面摩耗幅の最大値が工具半径の10%、つまり逃げ面摩耗量が0.1mm(=100μm)に達した時点で工具の寿命と判断し、加工実験を終了した。
【0032】
図7は各回転速度における加工距離に対する逃げ面摩耗量を示している。また、無負荷回転速度の圧力平均値と加工開始から終了時までの圧力平均値の差を圧力上昇量ΔPとし、工具摩耗(逃げ面摩耗量V
Bmax)との相関を調査した。圧力上昇量で評価する理由として、同一の回転速度でも気温や湿度などの影響により必要な供給圧が変わり、実験結果に差が発生する。この差をなくすために圧力上昇量を相対的に評価することで異なる実験結果を比較することができる。
図8は各回転速度における供給圧力の上昇量に対する逃げ面摩耗量を示している。また、供給圧力の上昇量と逃げ面摩耗量から算出した相関係数を表4に示した。
【0034】
図8からスピンドル10への供給圧力の上昇量と逃げ面摩耗量で比較を行うと、どの実験においても近い傾向を示していることが分かる。また、表4からいずれの実験の場合でも0.8以上の強い相関がみられ、特に20000min
-1の実験においては0.9以上の非常に強い相関が見られた。
【0035】
以上のことにより、スピンドル10への供給圧力の上昇量ΔPを用いることで、例えば次式により工具の逃げ面摩耗量V
Bmaxの推定が可能である。なお、a,b,cは実験結果から求められる係数である。
【0037】
あるいは、逃げ面摩耗が急速に進行する初期摩耗を除外して、
【数2】
【0038】
上記実験結果では、工具の逃げ面摩耗が進行すると供給圧力が上昇する傾向が見られた。しかしながら、一部の実験結果では工具の逃げ面摩耗が進行しても供給圧力が上昇せず、推定式や近似式から外れる場合があった。
【0039】
図9は被削材にSKD61を使用した際の実験結果を示している。
図9に示すように、Case:Aでは、工具の逃げ面摩耗が進行すると供給圧力が上昇する傾向がみられ、相関係数を算出すると0.973と高い値を示した。一方、Case:Bでは途中から工具の逃げ面摩耗が進行しても供給圧力が上昇せず、相関係数も0.685と低い値を示した。
【0040】
図10はCase:AとCase:Bの場合のそれぞれの工具の摩耗状態を示している。
図10に示されるように、Case:Aでは、逃げ面両端部に通常の摩耗が発生していた。一方、Case:Bでは、工具中心部に大きなくぼみ(チッピング)が発生していた。このことから、供給圧力の上昇量と工具の逃げ面摩耗量の相関が低くなった場合、チッピングなどの工具の異常摩耗であると推定できる。すなわち、スピンドル10に供給する圧縮空気の供給圧力の上昇量が工具の逃げ面摩耗量との関係により想定される推移量から外れたときに、工具の異常摩耗であると推定できる。
【0041】
次に、具体的な工具損耗の推定方法について説明する。
【0042】
図11は逃げ面摩耗量の推定について説明する図であり、(a)は圧縮空気の供給圧力(横軸)と逃げ面摩耗量(縦軸)を示し、(b)は加工距離(横軸)と供給圧力(縦軸)を示している。図中の◆は、加工の初期に近い段階で、所定の加工距離を3点決め、そこでの供給圧力と逃げ面摩耗量を測定した結果を示している。
【0043】
本実施形態における工作機械では、より加工が進み、工具の逃げ面摩耗量が大きくなると、スピンドル10の回転速度を保持するために回転速度制御機構がスピンドル10に供給する圧縮空気の圧力を上昇させる。そこで、
図11(a)に示すように、測定値から直線近似式を導くことで、より加工が進んだ場合にスピンドル10の所定の回転速度を保持するために必要な圧縮空気の供給圧力と工具の逃げ面摩耗量との対応を示す第1の関係式を求める。
【0044】
また、
図11(b)では、同じく測定値から直線近似式を導くことで、所定の加工距離における圧縮空気の供給圧力の測定値に基づいて加工距離と圧縮空気の供給圧力の対応を示す第2の関係式を求める。そして、第2の関係式を外挿して、次の加工距離における供給圧力予測値(図中の□)を推定する。同図では初期の3点の測定値から以後の加工距離における供給圧力予測値を推定している。この供給圧力予測値と、
図11(a)にて決定した第1の関係式から、より加工が進んだ場合の逃げ面摩耗量を推定することができる。
【0045】
また、圧縮空気の供給圧力は回転速度制御機構から自動的に入手することが可能であるため、
図11(b)は、次の加工距離(測定点)に達した場合には、そこでの供給圧力の測定値を用いて第2の関係式を更新して、さらにその次の加工距離における供給圧力予測値の推定精度を上げることが可能である。
【0046】
なお、実際の運用においては、次の加工距離での供給圧力予測値と
図11(a)の第1の関係式から推定される逃げ面摩耗量が寿命判定基準以下ならば加工を続行し、判定基準を超える場合はオペレータの判断を仰ぐことになる。オペレータの判断としては、工具寿命と判定して同工具での加工を終了するか、次の加工距離(測定点)を短く設定して加工を続行する等の選択があり得る。
【0047】
図12は、異常摩耗の推定について説明する図であり、チッピングが発生したときの加工距離(横軸)と供給圧力(縦軸)の関係を示している。図中の□は供給圧力予測値であり、図中●は供給圧力の測定値である。楕円の破線で囲ってある表記は、次の加工距離での供給圧力予測値を推定する3点の測定値が順次推移していることを示している。
【0048】
同図のデータ点の一番右において、供給圧力予測値(□)と測定値(●)が乖離しており、測定値の方が予測値より低くなっている。これは通常の予測される逃げ面摩耗よりも切削抵抗が減少したために、回転速度制御機構が供給圧力を下げたことを示しており、何らかの異常摩耗(今回の例ではチッピング)が発生したと推定することができる。異常摩耗と推定するための供給圧力予測値と測定値の乖離の程度の判定基準としては、例えば±20%以上と決めておくことができる。
【0049】
なお、実際の運用においては、異常摩耗の場合は、同工具での加工を即時終了し、その状態での被加工品の加工品質を検査するか、工具を交換して加工を再開することになる。
【0050】
なお、供給圧力と逃げ面摩耗量の対応を示す第1の関係式は、加工の途中で決定するのではなく、予め実験等により決定しておいても良い。その場合、加工途中では、加工距離と供給圧力の対応を示す第2の関係式のみを決定する。
【0051】
また、第1の関係式および第2の関係式ともに直線近似式でなくてもよい。関係式が決定できるだけの個数の測定値が得られれば、高次の近似式を適用することが可能である。