特開2018-161753(P2018-161753A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-161753(P2018-161753A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】一体押出成形体及び建築用部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/02 20060101AFI20180921BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20180921BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180921BHJP
   B29C 47/02 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   B32B3/02
   B32B15/08 M
   B32B27/18 Z
   B29C47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-58808(P2017-58808)
(22)【出願日】2017年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也
(72)【発明者】
【氏名】輪湖 潤一
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB10
4F100AB31
4F100AK01B
4F100AK03
4F100AK53
4F100AP00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00C
4F100DD05A
4F100DE01B
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EH17C
4F100GB07
4F100JK06
4F100JL11C
4F100YY00B
4F100YY00C
4F207AA01
4F207AA03
4F207AD03
4F207AD18
4F207AG03
4F207AH46
4F207KA01
4F207KA17
4F207KA20
4F207KB18
4F207KK84
4F207KL58
(57)【要約】
【課題】 金属製芯材2の一部にのみ被覆層3が設けられている場合であっても、被覆層3の端部からの剥離を防止することができる一体押出成形体1を提供する。
【解決手段】 金属製の芯材2の表面の一部に、木粉を含有する合成樹脂製の被覆層3と、前記被覆層3と前記芯材2との間に形成される接着層4を有する一体押出成形体1であって、前記芯材2は、押出成形方向に交差する方向における断面において、前記被覆層3及び接着層4の端部近傍に、最奧部位に拡張部11を有する剥離防止溝10を備え、
前記被覆層3及び接着層4が前記剥離防止溝10に充填されている。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の芯材の表面の一部に、木粉を含有する合成樹脂製の被覆層と、前記被覆層と前記芯材との間に形成される接着層を有する一体押出成形体であって、
前記芯材は、押出成形方向に交差する方向における断面において、前記被覆層及び接着層の端部近傍に、奧部位に拡張部を有する剥離防止溝を備え、
前記被覆層及び接着層が前記剥離防止溝に充填されることを特徴とする、一体押出成形体。
【請求項2】
被覆層が0.7〜5mmの厚みを有し、接着層が0.05〜0.5mmの厚みを有することを特徴とする、請求項1に記載の一体押出成形体。
【請求項3】
前記被覆層及び接着層は、前記金属製芯材の外部に露出する露出面に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の一体押出成形体。
【請求項4】
前記芯材は、押出成形方向に交差する方向における断面形状が、天面及び側面を有する形状であり、前記側面の端部近傍に前記内側に突出する溝形成片を有し、
前記剥離防止溝は、前記側面の及び溝形成片内面に囲まれた領域に画定されることを特徴とする、請求項3に記載の一体押出成形体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の一体押出成形体からなる建築用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、金属製芯材入り一体押出成形体および建築用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製芯材入り一体押出成形体として、アルミニウムなどの金属からなる基材と基材に押出被覆される被覆層とを有し、該被覆層が少なくとも熱可塑性合成樹脂、特にポリエチレン、および木粉を含む複合押出被覆材が知られている(特許文献1)。そのような複合押出被覆材は被覆層に木粉が含有されるため、上質な木質感が得られる。
【0003】
しかしながら上記した押出被覆材は、芯材と被覆層との間で十分な接着性が得られないことが問題となっていた。例えば、長期の保管または使用、寒熱の繰り返し、水との接触などの要因により接着性が低下していた。このような接着性の低下は、温度変化による芯材と被覆層の伸縮の違いにより芯材が見えるなどの不具合を引き起こしたり、異型断面形状の場合に被覆層の出隅、入隅部が製造時や使用時に浮いてきたり、表面樹脂に傷が付くと被覆層が剥がれ易くなる、といった問題を生じていた。
【0004】
この問題に対し、アルミニウム製基材と、合成樹脂、特にアクリル系樹脂を含む被覆層との間に、α−オレフィンとエポキシ基含有不飽和モノマーを重合させてなる共重合体を含有する接着層を形成することによって、接着性を向上させる技術が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−120333号公報
【特許文献2】特開2012−66403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の押出成形体においても、金属製芯材の一部にのみ被覆層が設けられている場合には、被覆層の端部が剥がれやすくなるという問題があった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、金属製芯材の一部にのみ被覆層が設けられている場合であっても、被覆層の端部からの剥離を防止することができる一体押出成形体及び建築用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の一体押出成形体及び建築用部材を提供する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、金属製の芯材の表面の一部に、木粉を含有する合成樹脂製の被覆層と、前記被覆層と前記芯材との間に形成される接着層を有する一体押出成形体であって、
前記芯材は、押出成形方向に交差する方向における断面において、前記被覆層及び接着層の端部近傍に、奧部位に拡張部を有する剥離防止溝を備え、
前記被覆層及び接着層が前記剥離防止溝に充填されることを特徴とする、一体押出成形体を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、被覆層が0.7〜5mmの厚みを有し、接着層が0.05〜0.5mmの厚みを有することを特徴とする、第1態様の一体押出成形体を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記被覆層及び接着層は、前記金属製芯材の外部に露出する露出面に設けられていることを特徴とする、第1又は第2態様の一体押出成形体を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、前記芯材は、押出成形方向に交差する方向における断面形状が、天面及び側面を有する形状であり、前記側面の端部近傍に前記内側に突出する溝形成片を有し、
前記剥離防止溝は、前記側面及び溝形成片内面に囲まれた領域に画定されることを特徴とする、第3態様の一体押出成形体を提供する。
【0013】
上記の一体押出成型体は、建築用化粧材、建築用手摺り、防犯用面格子、デッキ材、バルコニールーバー等の建築用部材として用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属製芯材との剥離が生じやすい被覆層の端部近傍に、剥離防止溝を備え当該剥離防止溝に被覆層及び接着層が充填されることにより当該充填部位が浮き上がることなく被覆層の剥離を防止する。その結果、被覆層の芯材に対する良好な接着性が発揮され、長期間の保管または使用、寒熱の繰り返しおよび水との接触によっても、十分な接着性が発揮される。また、剥離防止溝は、その最奧部分に拡張部を有するので、溝内の被覆層及び接着層が溝から脱落することが防止され、被覆層及び接着層の剥離を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一体押出成形体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の一体押出成形体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の一体押出成形体のさらなる他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態の一体押出成形体を製造するための共押出式の一体押出成形機の構成を模式的に示す断面図である。
図5】本実施形態にかかる一体押出成型体の剥離防止構造の例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図6】本実施形態にかかる一体押出成型体の剥離防止構造の他の例を模式的に示す部分拡大断面図である。
図7】本実施形態にかかる一体押出成型体の剥離防止構造のさらなる他の例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る一体押出成形体について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態にかかる一体押出成形体1a,1bは、芯材2の外表面に被覆層3を有し、該被覆層3と芯材2との間にさらに接着層4を有するものである。詳しくは、例えば図1及び図2に示すように、被覆層3および接着層4は一体押出成形体1a,1bの押し出し方向Mにおいて連続的に形成され、接着層4は被覆層3と芯材2との間に形成される。被覆層3および接着層4は、芯材2の押し出し方向に直行する断面において、芯材2の一部の外表面にのみ形成される。
【0018】
本明細書中、一体押出成形とは、接着層用材料および被覆層用材料をそれぞれ押出成形すると同時に、それらの層を、送り込まれた芯材に順次被覆して一体化することを意味し、そのような方法で形成されたものを一体押出成形体という。
【0019】
芯材2はアルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス、亜鉛メッキ鋼、銅等の金属からなるものであり、建築用部材として必要な軽量性及び加工容易性の観点から好ましくアルミニウムまたはアルミニウム合金が好適である。なお、一例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中空または中実の芯材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出成形により形成可能である。特に中空形状やコ字形状・L字形状等種々の異形状の断面を有する芯材の製造には、押出成形が有用である。なお、本発明において「アルミ製」とは、「アルミニウム合金製」もその範疇に含むものである。芯材の断面とは芯材の押出方向に対して垂直な方向の芯材断面である。
【0020】
アルミ製芯材が中空の形態を有する場合、平板形状を有する場合、および異形状断面を有する場合のアルミ部分の厚みは0.8〜5.0mm、特に1.1〜3.0mmであることが、アルミの剛性及び押出加工性の観点から好ましい。また芯材が中空または中実の形態を有する場合の全体寸法は特に制限されるものではなく、得られる一体押出成形体の用途に応じて適宜設定されればよい。なお、建築用部材としての剛性及び表面加飾性が求められることからすれば、前記厚みに加えて、芯材幅方向として20mm以上、好ましくは30mm以上の長さを有することが好ましい。
【0021】
芯材2は中空または中実の形態を有してよく、その全体形状は特に制限されず、例えば、図1に示すように、断面において天面7及び側面8を備えたコの字状のもの、図2に示すように対向する2つの天面7と側面8とを備えた断面形状が中空矩形のものなどが用いられる。
【0022】
芯材が中空形状を有する場合において、その断面形状は特に制限されるものではなく、例えば、略円形、略楕円形等であってよい。
【0023】
一体押出成形体を建築用部材として使用する場合において芯材2は、図1および図2に示すような各面が平坦に構成されているような形状だけではなく、例えば、図3に示すような建築部材としての用途を実現することができるような異形状を有することが多いが、一体押出成形体はこのような異形状であってもよい。なお、図3においては、被覆層3と接着層4とは、一体的に図示している。
【0024】
被覆層3及び接着層4は、芯材2の外表面のうち一部分にのみ設けられている。後述するように被覆層3は木材のような外観を有し、一体押出成形体の表面装飾性の向上のため、使用時において外部に露出する部分にのみ設けることが好ましい。
【0025】
本実施形態にかかる一体押出成形体の被覆層3及び接着層4が外表面の一部にのみ設けられているため、被覆層3の端部から剥離が生じやすい。このため、本実施形態の一体押出成形体は、後述するように剥離を防止するための構造を有している。
【0026】
被覆層3は少なくともベース樹脂および木粉を含有する樹脂層である。ベース樹脂はポリオレフィン系樹脂が好適に使用できる。ポリオレフィン系樹脂は1種類または2種類以上のα−オレフィンをモノマーとして含有する単独重合体または共重合体である。α−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ヘキセンのような炭素原子数2〜8、好ましくは2〜6のα−オレフィンが挙げられる。好ましいα−オレフィンは、エチレン、プロピレンである。ポリオレフィン系樹脂はモノマーとしてα−オレフィン以外の他のモノマーを含有してもよい。そのような他のモノマーとして、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが挙げられる。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂の具体例として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。好ましいポリオレフィン系樹脂はポリオレフィン、特にポリエチレン、ポリプロピレンである。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂は、従来から公知の方法、例えば、懸濁重合法、溶液重合法等によって製造できるし、または市販品として入手することもできる。特にポリオレフィン系樹脂としてのポリオレフィンは、廃棄されたポリオレフィン製品由来の再生品を利用することもできる。不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の市販品として、例えば、ユーメックス1010(三洋化成工業社製)等が使用できる。
【0029】
本実施形態においては、ベース樹脂にポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂が含有されることを妨げるものではない。他の樹脂として、例えば、アクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂が挙げられる。
【0030】
木粉は、スギ、ヒノキ、ベイツガ等の木材、ならびにそのような木材の端材および廃材を粉砕したもの、おが屑等が好適に用いられ、その粒径は10〜500メッシュのものを用いることができるが、より好適なのは60〜100メッシュ程度である。木粉として端材および廃材を粉砕したものを用いると、環境負荷が低減されるので好ましい。
【0031】
木粉の含有量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。
【0032】
被覆層3は単層型であってもよいが、2層以上の多層型であってもよい。多層型被覆層は前記した範囲内の被覆層が2層以上で一体成形されればよい。
【0033】
被覆層3の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、接着性、外観性、生産性の観点から好ましくは0.7〜5mmである。触ったときの木質感および被覆層の接着性のさらなる向上の観点から、被覆層の厚みは1〜3mm、特に1.5〜2.5mmが好ましい。被覆層が多層型の場合、それらの合計厚みが上記範囲内であればよい。
【0034】
接着層4はエポキシを含有するポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂を用いることが好ましい。このようなエポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂は少なくともα−オレフィンとエポキシ基含有不飽和モノマーを重合させてなる共重合体である。エポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂を用いることにより、接着層と被覆層との接着性および接着層と芯材との接着性が向上し、結果として被覆層の芯材に対する接着性が向上する。
【0035】
接着層の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、接着性、生産性の観点から好ましくは0.05〜0.5mmであり、より好ましくは0.1〜0.3mmである。
【0036】
本発明の一体押出成形体は、生産性、長尺物成形、製品特性の一定性という面から、被覆層および接着層の押出成形と同時に被覆層および接着層を芯材と一体化させる、いわゆる一体押出法によって製造される。例えば、図4に示すような共押出式の一体化押出成形機において、各樹脂層を形成する材料を溶融・混練するための各押出機(図4中、5a,5b)より押し出された樹脂を1個のダイス6内で積層すると同時に、それらの層を、送り込まれた芯材2に順次被覆して一体化する。一体化された後は、通常、冷却され、所望の長さ寸法に切断される。図4では被覆層及び接着層用にそれぞれ1台の押出機が使用されているが、これに制限されず、被覆層を多層化するときは、その数に応じて適宜設置することができる。
【0037】
このようにして構成された、芯材は、押出方向に沿って同形状の断面を有するものであり、押出時において、ダイス6により画定される形状に被覆層3,接着層4が形成される。
【0038】
また、上記のように、本実施形態にかかる一体押出成型体は、芯材の外表面の一部にのみ被覆層3及び接着層4が設けられる。このため、押出方向に垂直な方向の断面形状における被覆層3及び接着層4が芯材2から剥離することを防止するための構造を有している。
【0039】
図5から図7は、本実施形態にかかる一体押出成型体の剥離防止構造の例を模式的に示す部分拡大断面図である。本実施形態にかかる一体押出成型体1は、剥離を防止するための構成として、図5から図7に示すように、芯材2に被覆層3及び接着層4が設けられる端部の近傍に、押出方向に伸びる剥離防止溝10を設け、さらに、被覆層3及び接着層4を剥離防止溝10内に充填するように構成されている。
【0040】
剥離防止溝10は、芯材の表面に設けられた溝であり、内部に被覆層3及び接着層4を充填することができるように構成されている。剥離防止溝10の深さ寸法Dpは、上記の被覆層3及び接着層4を押出成型によりダイスに加えられる圧力によって充填可能なサイズであればよく、例えば、1.0〜10.0mmであり、より好ましくは2.0〜5.0mmである。また、同様に、幅寸法Wは好ましくは0.5〜10.0mmであり、より好ましくは0.5〜7.0mmである。なお、幅寸法Wは、溝内での被覆層3及び接着層4の折損を防止するために被覆層3及び接着層4の合計厚みよりも大きくすることが好ましい。
【0041】
剥離防止溝10は、芯材2を押出成形による形成と同時に形成することができる。例えば、アルミ製芯材の押出成形時において、所定の長手方向の剥離防止溝10に対応した凸部を内面に有する金型を押出口に使用することによって、所定の長手方向の剥離防止溝10を芯材外表面に形成可能である。
【0042】
長手方向の剥離防止溝10が、アルミ製芯材を押出成形するときに同時形成されると、溝がより短時間で形成され得るため、一体押出成形体1の生産性が顕著に優れる。しかも、溝がより均一に形成され、接着層との接着性が顕著に優れる。
【0043】
剥離防止溝10は最奧部分に、拡張部11が設けられている。拡張部11は、特に制限されるものではないが、剥離防止溝10の開口部分10aよりも広がった形状でかつ、被覆層3及び接着層4が充填されやすいものであればよく、その形状は、例えば、図5に示すような円形、図6に示すような矩形、図7に示すようなくさび型、その他、鉤型などが例示できる。また、上記例では、拡張部は剥離防止溝10の最奥部位に設けられているが、溝の中間位置に設けられていてもよい。
【0044】
剥離防止溝10は、被覆層3及び接着層4の端部近傍に相当する芯材2の表面であればどこに設けられてもよい。すなわち、被覆層3及び接着層4の形成位置に応じて剥離防止溝10の設置位置を決定すればよい。例えば、図5の例では、芯材2の側面8に設けられており、図6の例では、芯材2の側面8の下端小口面9に設けた例を示している。剥離防止溝10を中空の芯材の側面8や天面7に設ける場合は、図5に示すように、芯材のアルミ部分の肉厚が全体的に大きくなることを防止するため、肉厚部8aを設け、当該肉厚部8aに剥離防止溝10が形成されるようにしてもよい。
【0045】
また、図7に示すように、剥離防止溝10を形成するために、側面8の内側に溝形成片12を設け、当該溝形成片12と側面8とで囲まれた領域を剥離防止溝10とすることもできる。溝形成片12を設けることで、小口面9の肉厚に較べ大きい剥離防止溝10を設けることができ、一体押出成型体1の軽量化を図ることができる。
【0046】
図7の例では、溝形成片12は、側面の下端部位近傍において、断面L字型に形成されており、芯材の押出成型時に同時に設けられる。
【0047】
被覆層3及び接着層4は、押出成型器による押出工程において、剥離防止溝10内に充填され、芯材2の表面の被覆層3及び接着層4と一体的に構成されている。また、被覆層3及び接着層4は、その端部からわずかに内側に剥離防止溝10が形成されるように構成されることが好ましい。
【0048】
本実施形態の金属製芯材入り一体押出成形体は、建築用化粧材、建築用手摺り、防犯用面格子、デッキ材、バルコニールーバー等の建築用部材、および家具、什器、照明器具等の部材として有用である。特に建築用部材は、野外での使用において、経年劣化、寒熱の繰り返し、水との接触などの機会が多く、被覆層3が剥離しやすい環境で使用される。本実施形態にかかる一体押出成形体は、剥離防止のための構成を有しているため、上記の被覆層の剥離の問題に対して効果的であり、建築用素材として有用である。
【0049】
以上説明したように、本実施形態にかかる一体押出成形体によれば、金属製芯材との剥離が生じやすい被覆層の端部近傍に、剥離防止溝を備え当該剥離防止溝に被覆層及び接着層が充填されることにより当該充填部位が浮き上がることなく被覆層の剥離を防止する。その結果、被覆層の芯材に対する良好な接着性が発揮され、長期間の保管または使用、寒熱の繰り返しおよび水との接触によっても、十分な接着性が発揮される。また、剥離防止溝は、その最奧部分に拡張部を有するので、溝内の被覆層及び接着層が溝から脱落することが防止され、被覆層及び接着層の剥離を防止することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、金属製芯材の形状は図1から図3に示したものではなく、単なる板状体や筒状部材などにおいても用いることができる。
【0051】
また、剥離防止溝10の形状においては、特に制限はなく、また、設置位置は、被覆層3などの端部近傍であれば特に限定されるものではない。また、芯材の形状によっては、入隅の壁面に設けることも可能である。さらに、剥離防止溝10を画定する溝形成片12の形状や大きさも特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1,1a,1b,1c 一体押出成形体
2 芯材
3 被覆層
4 接着層
5a,5b 押出機
6 ダイス
7 天面
8 側面
8a 肉厚部
9 小口面
10 剥離防止溝
11 拡張部
12 溝形成片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7