【解決手段】第1繊維強化樹脂層11と、第2繊維強化樹脂層12と、第1および第2繊維強化樹脂層11、12の間に形成された発泡樹脂層13を有した第1複合部10と、発泡樹脂層13の端部13aに隣接して形成され、繊維強化樹脂からなる第2複合部20と、を備えており、発泡樹脂層13のうち、第2複合部20に隣接した部分が、発泡樹脂層13の他の部分に比べて密度が高い高密度層13bとなっている。
前記第2複合部は、前記第1繊維強化樹脂層の少なくとも一部が連続した第1連続層と、前記第2繊維強化樹脂層の少なくとも一部が連続した第2連続層とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化複合体。
前記繊維強化複合体の周縁部に、前記第1複合部の周りを囲うように、前記第2複合部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維強化複合体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の繊維強化複合体の端面は、発泡樹脂層の端面がそのまま露出している。ここで、たとえば、繊維強化複合体の端面を含む端部をさらに強化しようと、繊維強化樹脂層を新たに並設した場合、この繊維強化樹脂層と、発泡樹脂層との間の強度差が起因して、この境界部分に応力が集中することが想定される。
【0006】
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発泡樹脂層の端部に隣接して繊維強化樹脂を形成したとしても、これらの境界における応力集中を低減することができる繊維強化複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を鑑みて、本発明に係る繊維強化複合体は、第1繊維強化樹脂層と、第2繊維強化樹脂層と、前記第1および第2繊維強化樹脂層の間に形成された発泡樹脂層を有した第1複合部と、前記発泡樹脂層の端部に隣接して形成され、繊維強化樹脂からなる第2複合部と、を備えており、前記発泡樹脂層のうち、前記第2複合部に隣接した部分が、前記発泡樹脂層の他の部分に比べて密度が高い高密度層となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1複合部は、第1および第2繊維強化樹脂層の間に発泡樹脂層が形成されているので、繊維強化複合体をより軽量化することができるとともに、繊維強化複合体の衝撃吸収性を高めることができる。
【0009】
さらに、発泡樹脂層のうち、第2複合部に隣接した部分が、発泡樹脂層の他の部分に比べて密度が高い高密度層となっているので、発泡樹脂層の他の部分の密度に比べて、高密度層の密度は、第2複合部の繊維強化樹脂の密度に近い。これにより、発泡樹脂層の端部に隣接して第2複合部の繊維強化樹脂を一体的に形成したとしても、これらの強度差は小さくなるため、これらの境界における応力集中を低減することができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記高密度層の層厚みは、前記発泡樹脂層の他の部分の層厚みよりも薄くなっている。この態様によれば、高密度層の層厚みが、発泡樹脂層の他の部分の層厚みよりも薄くなっているので、発泡樹脂層の高密度層が第2複合部に接触する部分(端部)を、小さくすることができる。このため、高密度層と第2複合部との界面を小さくし、これらの剥がれを抑えることができる。
【0011】
より好ましい態様としては、前記高密度層の層厚みは、前記第2複合部に近づくに従って、薄くなっている。この態様によれば、高密度層の層厚みが、第2複合部に近づくに従って薄くなっているため、高密度層に段差等が形成され難くなり、高密度層における応力集中を低減することができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記高密度層の密度は、前記第2複合部に近づくに従って、高くなっている。この態様によれば、高密度層の密度が、第2複合部に近づくに従って、高くなるため、高密度層の強度が、第2複合部に近づくに従って、第2複合部の強度に近づく。これにより、発泡樹脂層と、第2複合部との強度差が起因となった応力集中を低減することができるばかりでなく、高密度層とその他の発泡樹脂層との境界における強度差が起因となった応力集中も回避することができる。
【0013】
さらに好ましい態様としては、前記第2複合部は、前記第1繊維強化樹脂層の少なくとも一部が連続した第1連続層と、前記第2繊維強化樹脂層の少なくとも一部が連続した第2連続層とを含む。この態様によれば、第2複合部は、第1および第2繊維強化樹脂層のそれぞれに連続した第1および第2連続層を有するため、第1複合部と第2複合部との間の強度を高めることができる。
【0014】
第1および第2連続層を有したさらに好ましい態様としては、前記第2複合部には、前記第1連続層と前記第2連続層との間に、第3繊維強化樹脂層がさらに積層されている。本発明によれば、第1連続層と第2連続層との間に、第3繊維強化樹脂層が形成されているため、第2複合部の強度をより高めることができる。これにより、第2複合部に貫通孔を穿設する等の機械加工等を簡単に行うことができる。
【0015】
第1および第2連続層を有した別の好ましい態様としては、前記第2複合部は、前記第1連続層と前記第2連続層とが接合して積層された積層構造である。この態様によれば、第2複合部は、第1および第2連続層が接合して積層された積層構造であるため、第2複合部全体を、第1複合部に連続した部分にすることができる。これにより、第1複合部と第2複合部との間の強度を高めることができる。
【0016】
さらに好ましい態様としては、前記繊維強化複合体の端部に、前記第2複合部が形成されている。この態様によれば、繊維強化複合体の端部に、第2複合部が形成されているため、繊維強化複合体の端部の強度を高めるとともに、その他の部分には、発泡樹脂層が形成されているため、繊維強化複合体の軽量化を図り、衝撃吸収性を高めることができる。
【0017】
さらに別の好ましい態様としては、前記繊維強化複合体の周縁部に、前記第1複合部の周りを囲うように、前記第2複合部が形成されている。この態様によれば、第2複合部が第1複合部の周りを囲うように形成されているため、繊維強化複合体の全体の強度を高めることができる。また、周縁部以外の部分には、発泡樹脂層が形成されているため、繊維強化複合体の軽量化を図り、衝撃吸収性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る繊維強化複合体によれば、発泡樹脂層の端部に隣接して繊維強化樹脂を形成したとしても、これらの境界における応力集中を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の本発明に係る第1および第2実施形態に係る繊維強化複合体を、
図1〜
図9を参照しながら説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
1.繊維強化複合体1について
図1に示すように、第1実施形態に係る繊維強化複合体1は、平板状の形状であり、第1複合部10と第2複合部20とを備えている。第2複合部20は、繊維強化複合体1の両端部に形成されており、これらの間に、第1複合部10が各第2複合部20と一体的に形成されている。本実施形態では、第1および第2複合部10、20は、略同じ厚みである。なお、本実施形態では、繊維強化複合体1は、平板状であるが、たとえば、これが湾曲した形状、捩じれた形状であってもよく、特にその形状は限定されない。また、本実施形態では、第1および第2複合部10、20は、略同じ厚みであるが、たとえば、第1複合部10と第2複合部20との間で、応力集中がしないのであれば、これらの厚みが異なる厚みであってもよい。
【0022】
図2および
図3(a)に示すように、第1複合部10は、第1繊維強化樹脂層11と、第2繊維強化樹脂層12と、第1および第2繊維強化樹脂層11、12の間に形成された発泡樹脂層13と、を有した積層構造である。第2複合部20は、発泡樹脂層13の端部13aに隣接して、これに接触するように形成され、繊維強化樹脂からなる部分であり、本実施形態では複数の繊維強化樹脂層が積層された積層構造である。
【0023】
第1複合部10は、上述したように、第1繊維強化樹脂層11と、第2繊維強化樹脂層12と、第1および第2繊維強化樹脂層11、12の間に形成された発泡樹脂層13とを備えている。第1および第2繊維強化樹脂層11、12は、繊維強化複合体1の外皮に相当する外側層11a、12aと、その内側に相当する内側層11b、12bと、を備えており、これらは、すべて、繊維強化樹脂(FRP)で構成されている。
【0024】
図2および
図3(b)に示すように、第2複合部20は、発泡樹脂層13の端部13aに隣接して形成され、繊維強化樹脂からなる。第2複合部20は、第1繊維強化樹脂層11の少なくとも一部である外側層11aに連続した第1連続層21と、第2繊維強化樹脂層12の少なくとも一部である外側層12aに連続した第2連続層22とを含む。これにより、第2複合部20は、第1および第2繊維強化樹脂層11、12の外側層11a、12aのそれぞれに連続した第1および第2連続層21、22を有するため、第1複合部10と第2複合部20との間の強度を高めることができる。
【0025】
特に、第2複合部20の第1連続層21は、第1繊維強化樹脂層11の強化繊維を構成する基材(例えば織物基材)が連続した層であることが好ましい。同様に、第2複合部20の第2連続層22は、第2繊維強化樹脂層12の強化繊維を構成する基材(例えば織物基材)が連続した層であることが好ましい。これにより、第1複合部10と第2複合部20との間の強度をより一層高めることができる。
【0026】
第2複合部20には、第1連続層21と第2連続層22との間に、第3繊維強化樹脂層23がさらに積層されている。第3繊維強化樹脂層は、複数の繊維強化樹脂層が積層された層である。このように、第1連続層21と第2連続層22との間に、第3繊維強化樹脂層23が形成されているため、第2複合部20の強度をより一層高めることができる。これにより、第2複合部20に貫通孔を穿設する等の機械加工を簡単に行うことができる。
【0027】
ここで、第1複合部10および第2複合部20の繊維強化樹脂は、強化繊維と、強化繊維同士を結合する合成樹脂(マトリクス樹脂)で構成されている。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;またはボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維、またはアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的強度を有している。
【0028】
強化繊維は、長繊維または短繊維のいずれであってもよいが、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、または強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。繊維強化基材は、一枚の繊維強化基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の繊維強化基材を積層して積層繊維強化基材として用いてもよい。
【0029】
合成樹脂は、強化繊維に含浸されて、強化繊維同士を結合する樹脂である。含浸させた合成樹脂によって、強化繊維同士を結着一体化させることができる。強化繊維に含浸させる合成樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれの樹脂であってもよいが、より好ましくは、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、マレイミド系樹脂、ビニルエステル系樹脂、シアン酸エステル系樹脂、またはマレイミド系樹脂とシアン酸エステル系樹脂を予備重合した樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、エポキシ系樹脂、またはビニルエステル系樹脂が好ましい。これらの合成樹脂によれば、弾性に優れた繊維強化樹脂を形成することができ、得られる繊維強化複合体1の耐衝撃性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。繊維強化樹脂は、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)により成形されてもよい。
【0030】
繊維強化樹脂における熱硬化性樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が少な過ぎると、強化繊維同士の結着性や第1および第2繊維強化樹脂層11、12と発泡樹脂層13との接着性が不十分となり、第1および第2繊維強化樹脂層11、12の機械的強度や繊維強化複合体1の耐衝撃性を十分に向上することができないおそれがある。また、熱硬化性樹脂の含有量が多過ぎると、第1および第2繊維強化樹脂層11、12の機械的強度が低下して、繊維強化複合体1の耐衝撃性を十分に向上させることができないおそれがある。
【0031】
繊維強化複合体1を構成する発泡樹脂層13は、素材として発泡した合成樹脂を含んでいる。合成樹脂は、シアノ基、ヒドロキシ基(水酸基)、カルボニル基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲン原子、オキソ基、またはフェニル基などの極性基を有していることが好ましい。極性基を有している合成樹脂を用いることによって、これを含む発泡樹脂層13と第1および第2繊維強化樹脂層11、12とを強固に一体化させることができる。これにより、繊維強化複合体1に衝撃が加わった際に発泡樹脂層13と第1および第2繊維強化樹脂層11、12との剥離を低減させて、繊維強化複合体1の耐衝撃性をより向上させることが可能となる。
【0032】
発泡樹脂層13に用いられる合成樹脂として、具体的には、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、発泡樹脂層13と、第1および第2繊維強化樹脂層11、12とをより強固に一体化することができることから、熱可塑性ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましく、熱可塑性ポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0033】
本実施形態では、発泡樹脂層13には、第2複合部20に隣接した部分(端部13a)は、発泡樹脂層13の他の部分に比べて密度が高い高密度層13bとなっている。より具体的には、高密度層13bの密度は、第2複合部20に近づくに従って、高くなっている。高密度層13bの密度は0.2〜0.9g/cm
3の範囲にあることが好ましく、発泡樹脂層13の他の部分は、高密度層13bの密度が高いことを前提として、0.05〜0.3g/cm
3の範囲にあることが好ましい。なお、本明細書でいう高密度層の密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に準拠して測定される値をいう。
【0034】
このように、発泡樹脂層13には、高密度層13bが形成されているので、発泡樹脂層13の他の部分の密度に比べて、高密度層13bの密度は、第2複合部20の繊維強化樹脂の密度に近い。これにより、発泡樹脂層13の端部に隣接して第2複合部20の繊維強化樹脂を一体的に形成したとしても、これらの強度差は小さくなるため、これらの境界における応力集中を低減することができる。
【0035】
これに加えて、本実施形態では、高密度層13bの密度が、第2複合部20に近づくに従って、高くなるため、高密度層13bの強度が、第2複合部20に近づくに従って、第2複合部20の強度に近づく。このようにして、発泡樹脂層13と、第2複合部20との強度差が起因となった応力集中を低減することができるばかりでなく、高密度層13b内における強度差が起因となった応力集中も回避することができる。
【0036】
また、本実施形態では、高密度層13bの層厚みは、発泡樹脂層13の他の部分の層厚みよりも薄くなっている。より具体的には、高密度層13bの層厚みは、第2複合部20に近づくに従って、薄くなっている。さらに、高密度層13bに隣接する第1繊維強化樹脂層には、樹脂溜り部15が形成されている。この樹脂溜り部15は、上述した繊維強化樹脂または合成樹脂のいずれかにより形成され、後述するインサート材15’の素材により、選択することができる。
【0037】
本実施形態では、高密度層13bの層厚みは、発泡樹脂層13の他の部分の層厚みよりも薄くなっているので、発泡樹脂層13の高密度層13bが第2複合部20に接触する部分(端部)を小さくすることができる。このため、高密度層13bと第2複合部20との界面を小さくし、これらの剥がれを抑えることができる。
【0038】
これに加えて、高密度層13bの層厚みが、第2複合部20に近づくに従って薄くなっているため、高密度層13bに段差等が形成され難くなり、発泡樹脂層13における応力集中を低減することができる。さらに、樹脂溜り部15を設けることにより、繊維強化複合体1にボイドが形成されることを回避することができる。
【0039】
ここで、高密度層13bの幅(層の厚さ方向に対して直交する方向の長さ)bは、5〜20mmであることがより好ましく、高密度層13bを除く他の部分の層の厚み(すなわち高密度層13bの層の最大厚み)tは、1〜20mmであることがより好ましく、t/bは、5〜20mmの範囲にあることがより好ましい。この範囲を満たすことにより、発泡樹脂層13の端部13aに隣接して繊維強化樹脂を一体的に形成したとしても、これらの境界における応力集中を低減することができる。
【0040】
さらに、高密度層13bを除く他の部分の層の厚みtと、第1および第2繊維強化樹脂の各層の厚みTとの比であるt/Tは、0.5〜0.225の範囲にあることがより好ましい。この範囲を満たすことにより、繊維強化複合体1の剛性を確保しつつ、繊維強化複合体1の衝撃吸収性をより確保することができる。
【0041】
2.繊維強化複合体1の製造方法について
図4は、
図1に示す繊維強化複合体1の製造方法を説明するための図である。
図4に示すように、繊維強化複合体1の内側層11b、12bに相当する相当する繊維強化樹脂シート11b’、12b’を準備し、これらの間に、予備発泡させた発泡樹脂シート13’を挟み込んだ積層体10’を成形する。次に、積層体10’を上型51と下型52との間に配置する。
【0042】
次に、積層体10’の発泡樹脂シート13’に隣接した位置に、複数の繊維強化樹脂シートを積層した繊維強化樹脂ブロック23’を配置する。次に、積層体10’と繊維強化樹脂ブロック23’の間に、インサート材15’を配置する。インサート材15’は、繊維強化樹脂シートの樹脂と同じ種類の合成樹脂からなってもよく、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂であってもよい。次に、これらを覆うように、外側層11a、12aおよび連続層21、22に相当する繊維強化樹脂シート11a’、12a’を積層する。
【0043】
そして、上型51と下型52との間に、繊維強化樹脂シート11a’、12a’に覆われた積層体10’、繊維強化樹脂ブロック23’、インサート材15’を配置し、上型51と下型52とでこれらを加圧しながら、加熱する。また、この時の加熱温度は、発泡樹脂シート13’が発泡する温度以上であることを前提に、繊維強化樹脂シートの合成樹脂が、熱可塑性樹脂である場合には、この軟化点温度以上である。一方、繊維強化樹脂シートの合成樹脂が、熱硬化性樹脂である場合には、硬化点温度以上である。
【0044】
型締めにより、発泡樹脂シート13’は、所定の厚みまで発泡し、発泡樹脂シート13’の端部13a’はインサート材15’に押圧される。これにより、発泡樹脂シート13’の端部13a’の発泡が抑制され、発泡樹脂層13には、第2複合部20に隣接した部分が、発泡樹脂層13の他の部分に比べて高い密度となる高密度層13bとして成形される。高密度層13bの密度は、第2複合部20に近づくに従って、高くなる。
【0045】
さらに、インサート材15’が、押圧により、発泡樹脂シート13’の端部13a’を変形させるので、高密度層13bの層厚みを、発泡樹脂層13の他の部分の層厚みよりも薄くすることができ、高密度層13bの層厚みを、第2複合部20に近づくに従って、薄くすることができる。
【0046】
3.その他の変形例
図5(a)〜
図5(c)は、
図1に示す繊維強化複合体1の変形例を示した要部断面図である。たとえば、
図2では、発泡樹脂層13の高密度層13bの一方側(第1繊維強化樹脂層11側)の界面を傾斜させることにより、高密度層13bの層厚みが、第2複合部20に近づくに従って、薄くなっていた。
【0047】
しかしながら、
図5(a)に示すように、発泡樹脂層13の高密度層13bの両方(第1繊維強化樹脂層11側および第2繊維強化樹脂層12側)の界面を傾斜させることにより、高密度層13bの層厚みが、第2複合部20に近づくに従って、薄くなっていてもよい。このような形状の高密度層13bは、積層体10’と繊維強化樹脂ブロック23’間の両側にインサート材15’を配置することにより、成形することができる。
【0048】
さらに、
図5(b)に示すように、発泡樹脂層13の一方側を凹ませることにより、高密度層13bの層厚みを略均一にしてもよく、
図5(c)に示すように、発泡樹脂層13の両側を凹ませることにより、高密度層13bの層厚みを略均一にしてもよい。
【0049】
〔第2実施形態〕
1.繊維強化複合体1Aについて
図6は、本発明の第2実施形態に係る繊維強化複合体1Aの構造を説明するための模式的斜視図であり、
図7は、
図6に示す繊維強化複合体1AのD−D線に沿った断面図である。なお、第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、第2実施形態に係る繊維強化複合体1Aは、立体形状(プレート状)である。繊維強化複合体1Aの底部1aおよび立ち上がり部1bが、第1複合部10により形成されており、第1複合部10の周りを囲うように、第2複合部20が形成されている。すなわち、本実施形態では、繊維強化複合体1Aの周縁部1cに、リング状の第2複合部20が形成されている。なお、本実施形態では、繊維強化複合体1Aは、プレート状であるが、たとえば、カップ状、平板状、底有筒状、またはドーム状などであってもよく、第1複合部10の周りを囲うように、第2複合部20が形成されているのであれば、特にその形状は限定されるものではない。
【0051】
このように、第2複合部20が第1複合部10の周りを囲うように形成されているため、繊維強化複合体1Aの周縁部1cの強度を高めることにより、繊維強化複合体1A全体の強度を高めることができる。また、第2複合部20が第1複合部10の周りを囲うように形成されているため、発泡樹脂層13に水分が侵入することを回避することができる。さらに、周縁部1c以外の部分には、第1複合部10の発泡樹脂層13が形成されているため、繊維強化複合体1Aの軽量化を図り、衝撃吸収性を高めることができる。
【0052】
ここで、
図7に示すように、第2複合部20は、第1連続層21と第2連続層22とが接合して積層された積層構造である。このため、第1実施形態とは異なり、第2複合部20全体を、第1複合部10に連続した部分にすることができる。これにより、第1複合部10と第2複合部20との間の強度を高めることができる。さらに、本実施形態では、第1実施形態と同様に、発泡樹脂層13には、第2複合部20に隣接した部分が、発泡樹脂層13の他の部分に比べて密度が高い高密度層13bとなっているため、第1複合部10と第2複合部20との間の応力集中を回避することができる。
【0053】
なお、高密度層13bの密度は、第2複合部20に近づくに従って、高くなっており、高密度層13bの層厚みは、発泡樹脂層13の他の部分の層厚みよりも薄く、かつ、第2複合部20に近づくに従って、薄くなっている。これにより、第1実施形態で説明した効果と同様の効果を期待することができる。
【0054】
2.繊維強化複合体1Aの製造方法について
図8は、
図7に示す繊維強化複合体1Aの製造方法を説明するための図である。
図8に示すように、繊維強化複合体1Aの第1および第2繊維強化樹脂層11、12に相当する相当する繊維強化樹脂シート11’、12’を準備し、これらの間に予備発泡させた発泡樹脂シート13’を挟み込んだ積層体10’を成形する。
【0055】
そして、上型51Aと下型52Aとの間に、積層体10’を配置し、上型51Aと下型52Aとでこれらを加圧しながら、加熱する。また、この時の加熱温度は、第1実施形態で説明した温度と同様である。
【0056】
型締めにより、発泡樹脂シート13’は、所定の厚みまで発泡するが、発泡樹脂シート13’の端部13a’は、上型51Aにより押圧されているので、他の部分に比べて、発泡が抑制される。これにより、発泡樹脂層13には、第2複合部20に隣接した部分の密度が発泡樹脂層13の他の部分の密度に比べて高くなり、この部分が高密度層13bとして成形される。高密度層13bの密度は、第2複合部20に近づくに従って、高くなる。
【0057】
さらに、上型51Aの形状により、発泡樹脂シート13’の端部を変形させるので、高密度層13bの層厚みを、発泡樹脂層13の他の部分の層厚みよりも薄くすることができ、高密度層13bの層厚みを、第2複合部20に近づくに従って、薄くすることができる。
【0058】
3.その他の変形例
図9は、
図6に示す繊維強化複合体1Aの変形例を示した模式的斜視図である。
図9に示すように、繊維強化複合体1Aは、繊維強化複合体1Aの底部1aおよび周縁部1cが、第2複合部20A、20Bにより形成され、立ち上がり部1bが、第1複合部10により形成されている。底部1aには、開口部1dが形成されている。
【0059】
この変形例では、繊維強化複合体1Aの立ち上がり部1bの第1複合部10の底部側の周りを囲うように、円板状の第2複合部20Aが形成され、繊維強化複合体1Aの立ち上がり部1bの第1複合部10の開口側の周りを囲うように、リング状の第2複合部20Bが形成されることになる。これにより、底部1aに、開口部1dが形成されていても、第1複合部10の発泡樹脂層が露出することはない。
【0060】
図10(a)〜
図10(c)は、
図7に示す繊維強化複合体1Aの変形例を示した要部断面図である。たとえば、
図7では、発泡樹脂層13の高密度層13bの一方側(第1繊維強化樹脂層11側)の界面を傾斜させることにより、高密度層13bの層厚みが、第2複合部20に近づくに従って、薄くなっていた。
【0061】
しかしながら、
図10(a)に示すように、発泡樹脂層13の高密度層13bの両方(第1繊維強化樹脂層11側および第2繊維強化樹脂層12側)の界面を傾斜させることにより、高密度層13bの層厚みが、第2複合部20に近づくに従って、薄くなっていてもよい。
【0062】
さらに、
図10(b)に示すように、発泡樹脂層13の一方側を凹ませることにより、高密度層13bの層厚みを略均一にしてもよく、
図10(c)に示すように、発泡樹脂層13の両側を凹ませることにより、高密度層13bの層厚みを略均一にしてもよい。
【0063】
〔第3実施形態〕
図11(a)は、第3実施形態に係る繊維強化複合体1Bの要部を説明するための模式的断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)の参考例に係る繊維強化複合体1Bの要部を説明するための模式的断面図である。本実施形態が、第1実施形態と相違する点は、端部被覆層12cおよび連続層12dをさらに設けた点である。なお、第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、第2繊維強化樹脂層12の内側層12bと連続して、第1複合部10の端面を覆う端部被覆層12cが形成され、端部被覆層12cと連続して、第2複合部20の一部として積層される連続層12dがさらに形成されている。内側層12bの強化繊維の織物基材である場合、この織物基材が、端部被覆層12cおよび連続層12dに連続して形成されている。
【0065】
端部被覆層12cは、第1および第2複合部10、20を仕切る位置に形成されており、端部被覆層12の強化繊維は、これらの隣接する端面に沿って配向されている。この実施形態によれば、第2繊維強化樹脂層12の内側層12bに連続して、端部被覆層12c、連続層12dが形成されているので、第1複合部10と第2複合部20の接合強度を高めることができる。
【0066】
これに加えて、端部被覆層12cが、第1複合部10の端面を覆い、第1複合部10の端面に端部被覆層12cの強化繊維が配向されているので、製造時において、第3繊維強化樹脂層23の合成樹脂が、発泡樹脂層13に含浸されることを抑えることができる。この結果、第3繊維強化樹脂層23の合成樹脂が、発泡樹脂層13に含浸されることで、繊維強化複合体1Bの表面に凹みが形成されることを抑えることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、発泡樹脂層13に高密度層13bが形成されることが前提であるが、
図11(b)に示すように、高密度層13bを設けず、端部被覆層12cを形成してもよい。この場合であっても、製造時に繊維強化複合体1Bの表面に凹みが形成されることを抑え、第1複合部10と第2複合部20の接合強度を高めることができる。
【実施例】
【0068】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
図1に示す繊維強化複合体を、
図4を参照して説明した製造方法に従って製造した。まず、繊維強化複合体の内側層に相当する炭素繊維の織物基材に未硬化のエポキシ系樹脂を含浸した繊維強化樹脂シート(プリプレグ)を準備し、これらの間に、予備発泡させた発泡樹脂シート(ポリエステル系樹脂発泡シート)を挟み込んだ積層体を成形した。
【0070】
この積層体の発泡樹脂シートに隣接した位置に、上述したものと同様の繊維強化樹脂シートを複数積層した繊維強化樹脂プレートを配置した。次に、積層体と繊維強化樹脂プレートの間に、繊維強化樹脂からなるインサート材を配置した。さらにこれらを覆うように、外皮用繊維強化樹脂シートを積層した。
【0071】
そして、上型と下型との間に、外皮用繊維強化樹脂シートに覆われた、積層体、繊維強化樹脂プレート、およびインサート材を配置し、上型と下型とでこれらを加圧しながら、熱処理を130℃で30分実施し、40℃になるまで自然冷却した。得られた繊維強化複合体の断面を観察した。この結果を
図12に示す。
図12に示すように、第1複合部の第1および第2繊維強化樹脂層(FRP層)の間には、発泡樹脂層が形成され、第2複合部に近づくに従って、層厚みが薄くなっていた。
【0072】
さらに、
図12に示す断面において、第2複合部に近づくに従って、層厚みが薄くなっている発泡樹脂層の密度と、発泡樹脂層の他の部分の密度を測定した。この結果、層厚みが薄くなっている発泡樹脂層の密度が、発泡樹脂層の他の部分の密度よりも高くなり、薄くなっている発泡樹脂層は、第2複合部に近づくに従って高くなった高密度層が形成されていることがわかった。
【0073】
以上、本発明のいくつか実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0074】
たとえば、
図2および
図5に示す第1実施形態に係る構造を、
図7および
図10に示す第2実施形態係る構造に適用してもよく、
図7および
図10に示す第2実施形態に係る構造を、
図2および
図5に示す第1実施形態に係る構造に適用してもよい。