特開2018-161899(P2018-161899A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-161899(P2018-161899A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20180921BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20180921BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   B43K24/08 110
   B43K29/02 F
   B43K24/08 150
   B43K7/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-142270(P2018-142270)
(22)【出願日】2018年7月30日
(62)【分割の表示】特願2014-222506(P2014-222506)の分割
【原出願日】2014年10月31日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲宏
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA08
2C350KF05
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HC15
2C353HG04
2C353MA06
(57)【要約】
【課題】摩擦部材9をカバー14で被覆することで、摩擦部材9に触れることなくカバー14を押動しての操作が可能となり、紙面等に接触する摩擦部材9が汚れることを防止できる熱変色性ボールペン1を得る。
【解決手段】ノック体10が、固定カム12の後方に配した摩擦部材9を被覆可能なカバー14を有し、カバー14を固定カム12に嵌着させた状態で、カバー14の下部と固定カム12に形成した段部とが当接し、カバー14を押動することにより、カバー14で固定カム12を前進させ、ボールペンチップ6を軸筒4の前端孔4bより突出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後端開口から突出する弾性材料からなる摩擦部材を有したノック体を操作することにより、前記軸筒内に配設した固定カムを前進させると共に当該軸筒内に配設した回転カムを回動させ、前記軸筒の内部に収容したレフィルボールペンチップが該軸筒の前端孔より突出した状態となる熱変色性ボールペンであって、
前記ノック体が、前記固定カムの後方に配した前記摩擦部材を被覆可能なカバーを有し、
前記カバーを前記固定カムに嵌着させた状態で、前記カバーの下部と前記固定カムに形成した段部とが当接し、
前記カバーを押動することにより、前記カバーで前記固定カムを前進させ、前記ボールペンチップを前記軸筒の前端孔より突出させることを特徴とした熱変色性ボールペン。
【請求項2】
前記カバーが透明な硬質樹脂で形成される請求項1に記載の熱変色性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関し、詳細には、軸筒の後端開口から突出する弾性材料からなる摩擦部材を有したノック体を操作することにより、軸筒内に配設した固定カムを前進させると共に当該軸筒内に配設した回転カムを回動させ、軸筒の内部に収容した筆記体のペン先が該軸筒の前端孔より突出した状態となる熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、ペン先から熱変色性インキを吐出可能な筆記体を、軸筒内に前後方向へ移動可能に収容させ、軸筒後方のノック体を前方へ押動することにより、軸筒内に配設したコイルスプリングの弾発力に抗して、筆記体のペン先を軸筒の前端孔から突出させる熱変色性筆記具が開示されている。
特許文献1の熱変色性筆記具では、ノック体を弾性材料から一体で形成して外面に摩擦部を形成しており、特許文献2の熱変色性筆記具では、ノック体の外面に弾性材料からなる摩擦部を外皮として形成している。特許文献1および特許文献2の熱変色性筆記具は、弾性材料からなるノック体の摩擦部で熱変色性インキにより紙面等に形成された筆跡を摩擦して、その際に生じる摩擦熱により前記熱変色性インキの筆跡を熱変色させるものである。
このようなことから、ノック体に摩擦部を設けた熱変色性筆記具においては、摩擦を行いやすくするために、ノック体に設けた摩擦部が摩擦時に変形したり揺れ動かないようにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−156826号公報
【特許文献2】特開2011−230474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、ノック体に設けた弾性材料からなる摩擦部材が、摩擦時に変形したり揺れ動き難い構造の熱変色性筆記具を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「1.軸筒の後端開口から突出する弾性材料からなる摩擦部材を有したノック体を操作することにより、前記軸筒内に配設した固定カムを前進させると共に当該軸筒内に配設した回転カムを回動させ、前記軸筒の内部に収容した筆記体のペン先が該軸筒の前端孔より突出した状態となる熱変色性筆記具であって、前記回転カムに前記固定カムの開口部を貫通する突出部を形成し、前記固定カムに前記軸筒の後端開口より突出する筒部を形成し、前記摩擦部材に下方が開口する孔部と前記固定カムの筒部に形成した係止部に係止する係止受部とを設け、前記摩擦部材の前方を前記固定カムの筒部に挿通させ、前記固定カムの係止部を該摩擦部材の係止受部へ係止させると共に、前記回転カムの突出部を前記摩擦部材の孔部へ挿通させることを特徴とした熱変色性筆記具。
2.前記回転カムの突出部と前記摩擦部材の孔部との間に隙間を形成することを特徴とした前記1項に記載の熱変色性筆記具。
3.前記ノック体が、前記摩擦部材を被覆可能なカバーを有し、前記カバーの下部を前記固定カムの上部に嵌着させた状態で、前記カバーの下部と前記固定カムに形成した段部とが当接することを特徴とした前記1項または2項に記載の熱変色性筆記具。」である。
【0006】
摩擦部材を成形する弾性材料は、弾性を有する樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。尚、前記摩擦部材を成形する弾性材料は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)よりも、摩擦時に消しカスが生じない低摩耗性の弾性材料が好ましい。また、固定カムと回転カムは弾性材で形成された摩擦部材を支持させるために、硬質樹脂や金属など硬質材料で形成すればよい。
【0007】
固定カムの筒部に形成する係止部と摩擦部材に形成する係止受部との関係は、例えば固定カムの筒部の内側面に係止凸部または係止凹部を形成し、摩擦部材の外側面に前記係止凸部と係止する係止凹部または係止凸部を形成して互いを係止させることで得ることができ、あるいは固定カムの筒部の内側面に雌螺子部を形成し、摩擦部材の外側面に雄螺子部を形成して互いを螺合することでも得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱変色性筆記具によれば、ノック体に設けた摩擦部材の外側面が軸筒の後端開口から突出する固定カムに形成した筒部で支持され、且つ摩擦部材の孔部が回転カムに形成した突出部で支持されるので、摩擦時において摩擦部材が変形したり揺れ動くことを防止することができる。
さらに回転カムの突出部と摩擦部材の孔部との間に隙間を形成することで、ノック体の操作時において、回動しない摩擦部材の孔部内で回動する回転カムの突出部の動きが妨げられることがないので、回転カムを滑らかに回動させることができる。
さらに摩擦部材をカバーで被覆することで、摩擦部材に触れることなくカバーを押動しての操作が可能となり、紙面等に接触する摩擦部材が汚れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の内部に収容した状態を示した断面図である。
図2】本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の前端開口より突出させた状態を示した断面図である。
図3】本実施例のボールペンの要部を示した分解図である。
図4】本実施例のボールペンで筆記を行っている状態を示した斜視図である。
図5】本実施例のボールペンからカバーを外した状態を示す断面図である。
図6】本実施例のボールペンで摩擦を行っている状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図面を参照しながら、本実施例の熱変色性筆記具について説明を行う。尚、本実施例では、熱変色性筆記具としてボールペンについての説明を行うが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、図中の同じ部材、同じ部品については、同じ符号としてある。図中においてペン先がある側を前方とし反対側を後方として表現する。
【実施例】
【0011】
図1図3を用いて、本実施例のボールペン構造について説明を行う。
図1は本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の内部に収容した状態を示した断面図である。図2は本実施例のボールペンにおける筆記体のペン先を軸筒の前端開口より突出させた状態を示した断面図である。図3は本実施例のボールペンの要部を示した分解図である。
ボールペン1は、前軸2と後軸3とを螺合して形成した軸筒4内に、レフィル5を収容してある。レフィル5は、ボールペンチップをペン先6とし、ペン先6の後方にインキ収容筒7を装着してあり、軸筒4内に配したコイルスプリング8にて後方へ弾発され、軸筒4の後端開口4aから突出した摩擦部材9を有したノック体10を前方へ押動するように操作することによって、軸筒4の前端開口4bからペン先6を出没させることができる構造である。
【0012】
軸筒4の内部には、従来構造の回転カム機構が設けられており、後軸3の後端部3aの内壁面には複数のカム溝11を形成してあり、前方に山型状の凹凸部12aを形成し、外周面に前記カム溝11に係合する複数の突起12bを有した固定カム12を配設し、固定カム12の前方に、前記カム溝11に係合する複数のカム突起13aを外周面に周状に形成し、前記固定カム部12の凹凸部12aに噛合う噛合部13bを有した回転カム13を配設してあり、カム突起13aはカム溝11に係止して回転カム13はカム溝11に沿って前後に移動可能としてある。
また回転カム13の後方には、固定カム12の開口部12cを貫通する突出部13cを形成してあり、固定カム12の後方には、軸筒4の後端開口4aから突出する筒部12dを形成してある。本実施例の突出部13cは、下方の大径部131cと上方の小径部132cとで構成してある。
【0013】
本実施例のボールペン1は、図1に示した状態のノック体10を前方へ押動するように操作することで、固定カム12の前進に伴い回転カム13のカム突起13aがカム溝11の前端に移動し、固定カム12の凹凸部12aの傾斜により回転カム13のカム突起13aのカム斜面13dがカム溝11のカム斜面11aを滑り、レフィル5を介してコイルスプリング8で後方へ弾発された回転カム13のカム突起13aが複数のカム溝11間に形成された係合部11bに係合して、ペン先6を軸筒4の前端開口4bから突出させた状態で維持することができ、図2に示した状態のノック体10を再度前方へ押動するように操作することで、回転カム13のカム突起13aとカム溝11間の係合部11bの係合状態を解除して、回転カム13のカム突起13aと固定カム12の突起12bをカム溝11の後方へ後退させ、図1に示した状態のようにペン先6を軸筒4の内部に収容させることができる。
【0014】
また摩擦部材9は、下方の外側面9aに係止凹部9bを形成し、下方が開口する孔部9cを形成し、摩擦部材9の係止凹部9bに対して固定カム12の内方に突設した係止凸部12eを係止させ、摩擦部材9の孔部9cに対して回転カム13に形成した突出部13cの小径部132cを挿通させている。
またノック体10は、摩擦部材9をカバー14で被覆しており、カバー14を固定カム12の筒部12dに嵌着させた状態で、カバー14の下部14aと固定カム12に形成した段部12fとが当接するので、ノック体10の一部であるカバー14を押動することで固定カム14を前進させることができる構造としてある。
【0015】
カバー14は透明な硬質樹脂で形成しており、摩擦部材9は半透明な弾性樹脂で成形しており、カバー14を透して回転カム13に形成した突出部13cの小径部132cを見ることができ、小径部132cをインキ収容筒7内に収容したインキ色と同じ色としたことから、小径部132cの色にてボールペン1の筆記色を確認することができ便利である。 尚、本実施例のボールペン1は、ノック体10を操作してペン先6を軸筒4の前端開口4bから突出させた状態においても、回転カム13に形成した突出部13cの小径部132cが軸筒4の後端開口4aから突出した状態になるので(図2参照)、小径部132cの色で筆記色を確認することができた。
図4に示すように、本実施例のボールペン1は、軸筒4の前端開口4bから突出させたペン先6で紙面100に熱変色性インキの筆跡101を形成することができた。
【0016】
次に、図5および図6を用いて、本実施例のボールペンで摩擦を行う状態についての説明を行う。図5は本実施例のボールペンからカバーを外した状態を示す断面図である。図5に示すように本実施例のボールペンは、摩擦部材9の外側面9aが固定カム14に形成した筒部12dで支持され、且つ摩擦部材9の孔部9cが回転カム13に形成した突出部13cの小径部132cで支持されるので、図6に示した摩擦部材9による摩擦時においても、摩擦部材9が変形したり揺れ動くことを防止することができた。
【0017】
また本実施例では、回転カム13に形成した突出部13cの小径部132cと摩擦部材9の孔部9bとの間に隙間Sを形成することで、ノック体の操作時において、回動しない摩擦部材9の孔部9b内で回動する回転カム13に形成した突出部13cの小径部132cの動きが妨げられることがなく、回転カム13が滑らかに回動することができた。
さらに、摩擦部材9にカバー14を被覆したことで、摩擦部材9に触れることなくカバー14を押動する操作が可能となり、摩擦時において紙面100に接触する摩擦部材9の汚れを防止することができた。
【符号の説明】
【0018】
1…ボールペン、2…前軸、
3…後軸、3a…後端部、
4…軸筒、4a…後端開口、4b…前端開口、
5…レフィル、6…ペン先、
7…インキ収容筒、8…コイルスプリング、
9…摩擦部材、9a…外側面、9b…係止凹部、9c…孔部、
10…ノック体、
11…カム溝、11a…カム斜面、11b…係合部、
12…固定カム、12a…凹凸部、12b…突起、
12c…開口部、12d…筒部、12e…係止凸部
12f…段部、
13…回転カム、13a…カム突起、13b…噛合部、
13c…突出部、131c…大径部、132c…小径部、
13d…カム斜面、
14…カバー、14a…下部、
100…紙面、101…筆跡、
S…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6