【解決手段】走行伝動機構よりも伝動下手側で、走行駆動系における伝動状態を断続可能な伝動状態切換手段30Aを備え、伝動状態切換手段30Aは、エンジンEの駆動力とアシストモータMの駆動力との双方の駆動力が前輪1F及び後輪1Rに伝えられる走行駆動状態と、走行伝動機構4側からの回生トルクがアシストモータM側へ伝えられる回生ブレーキ状態と、前輪1F及び後輪1Rへの動力伝達系の非伝動状態で、エンジンEの動力がアシストモータM側へ回生トルクとして伝達される非走行充電状態と、に伝動状態を切換可能に構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる多目的車両の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した多目的車両における走行機体の作業走行時における前進側の進行方向(
図2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0012】
〔全体構成〕
ここでは、本発明をユーティリティービークル(多目的車両に相当する)に適用した場合について説明する。
図1、
図2に示すように、ユーティリティービークルは、走行機体の骨組みを形成する車体フレーム1の前部に操向操作可能な左右一対の前車輪1Fを備え、車体フレーム1の後部には操向不能な左右一対の後車輪1Rが支持されている。
走行機体の前後方向での中央部で車体フレーム1の上方側には運転部10が備えられている。走行機体の後部で車体フレーム1の上方側に荷台2備え、この荷台2の下方位置に原動部3が備えられている。
【0013】
前車輪1F及び後車輪1Rには、後述する原動部3に備えたエンジンEやアシストモータMから駆動力が伝達可能に構成されている。これによって、ユーティリティービークルは、四輪駆動走行式の四輪駆動車に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用される。前記運転部10を取り囲む位置には、運転部10を保護するロプスフレーム11が備えられている。
【0014】
前記荷台2は、その後端寄りの位置における左右方向の横軸芯を中心にして前端側を上昇させることにより、積載物をダンプ式に排出できる機能を有するものであり、車体フレーム1に前記横軸心回りで揺動自在に支持されている。また、荷台2の前端側を昇降作動させる油圧式のアクチュエータ(図示せず)が備えられている。
【0015】
前記運転部10には、運転者が着座するための運転座席12と、前車輪1Fを操向制御するステアリングホイール13と、変速レバー14と、走行速度を制御するアクセルペダル15と、前車輪1F及び後車輪1Rのブレーキ装置17を操作するブレーキペダル16とが備えられている。尚、運転座席12に隣接して助手席が配置されるものであるが、この運転座席12は、横長の単一のシートベースと、横長の単一のシートバックとで成るベンチシートで構成されている。
運転座席12の下側に相当する座席下空間には、エンジンEに燃料を供給するための燃料タンク(図示せず)、及びアシストモータMに電力を供給するためのバッテリ8が配設されている。
【0016】
〔原動部の構造〕
図2および
図3に示すように、走行機体の後部には、荷台5の下方側に位置する状態で原動部3が設けられている。
原動部3には、内燃機関である水冷式のガソリンエンジンE(以下、単にエンジンと略称する)と、電動モータにより構成されているアシストモータM(以下、単にアシストモータと略称する)と、ミッションケース30と、乾式のCVT伝動装置4(本発明の走行伝動機構に相当する)と、が備えられている。ミッションケース30にはギヤ変速機構31と差動機構32とが内蔵されている。このミッションケース30の下端部には差動機構32からの駆動力を後車輪1Rに伝える左右一対の後輪駆動軸33が備えられている。
【0017】
ミッションケース30の下端部には前方へ突出する動力取出軸34が備えられている。走行機体の下部には動力取出軸34の駆動力が伝えられる伝動軸35が備えられ、走行機体の前部には伝動軸35の駆動力が伝えられる前輪差動機構36に伝えられ、この前輪差動機構36の駆動力を前車輪1Fに伝える前輪駆動軸37が備えられている。
左右一対の前輪駆動軸37の軸端と、左右一対の後輪駆動軸33の軸端とにはブレーキ装置17が備えられている。これらのブレーキ装置17は、前記ブレーキペダル16の操作により前車輪1Fと後車輪1Rとに制動力を作用させるように機能する。
【0018】
ミッションケース30に設けられたギヤ変速機構31は、前記変速レバー14の操作によって変速操作されるものである。このギヤ変速機構31は、変速レバー14の操作に従い、走行機体の走行速度の変更(高速と低速)と、走行方向の切換(前進と後進との切換)を実現する。前記変速レバー14では、走行速度の設定と、前後進の切換とを単一のレバー操作で行えるようにしたものであるが、例えば、変速を行うレバーと、前進と後進との切換を行う前後進レバーとを別々のレバーで構成したものであっても良い。
【0019】
図2、
図3、および
図5に示すように、原動部3にはクランク軸3aを横向き姿勢にしてエンジンEが配置されている。クランク軸3aの後方に隣接する位置に入力軸3bを横向き姿勢にしてミッションケース30が配置されている。エンジンEの後方側でミッションケース30の上方横側部に前後方向に長い姿勢のマフラー38(
図4を参照)が配置されている。
エンジンE及びミッションケース30の側部位置に、エンジンEの動力をミッションケース30に伝えるCVT伝動装置4が配置されている。このCVT伝動装置4を挟んで、エンジンEとは反対側にアシストモータMが配置されている。
【0020】
ミッションケース30の入力軸3bが設けられた箇所には、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30A(本発明の伝動状態切換手段に相当する)が設けられている。
この入力クラッチ30Aは、運転部10の適所に設けた入力クラッチ操作レバー18によって、人為的に入り切り操作可能に構成されている。
【0021】
入力クラッチ操作レバー18を入り操作して、前記入力クラッチ30Aが入り状態に操作されていると、CVT伝動装置4からミッションケース30内のギヤ変速機構31への動力伝達状態が維持される。
入力クラッチ操作レバー18を切り操作して、前記入力クラッチ30Aが切り状態に操作されると、CVT伝動装置4からミッションケース30内のギヤ変速機構31へ動力伝達が断たれた状態となる。
【0022】
〔CVT伝動装置〕
図3及び
図8に示すように、CVT伝動装置4は、ベルト巻回径の変更が可能な駆動プーリ41と、ベルト巻回径の変更が可能な従動プーリ42と、駆動プーリ41および従動プーリ42に亘って巻回されたゴム製の無端ベルト43を有する。これらは、変速ケース44に収容されている。尚、無端ベルト43として金属ベルトを用いても良い。
【0023】
エンジンEとCVT伝動装置4との間に、エンジンEのクランク軸3aからCVT伝動装置4への回転駆動力を断続する遠心クラッチ39が備えられている。この遠心クラッチ39の出力側に設けられた駆動軸40にCVT伝動装置4の駆動プーリ41が備えられている。
駆動軸40はエンジンE側の端部近傍部分がクラッチケース45に設けられた軸受45aにより回転自在に支持され、アシストモータM側の端部近傍部分が支持ブラケット47に設けられた軸受47aにより回転自在に支持されている。ミッションケース30の入力軸3bには従動プーリ42が備えられている。遠心クラッチ39の駆動軸40がクランク軸3aと同軸芯上に配置されている。
【0024】
前記遠心クラッチ39はクランク軸3aの回転速度が設定値未満の低速回転である場合に遮断状態にあり、クランク軸3aの回転力を駆動軸40に伝達しない。また、クランク軸3aの回転速度が設定値を超える場合には連結状態に達し、クランク軸3aの回転力を駆動軸40に伝えるように作動する。
【0025】
駆動プーリ41は、駆動軸40の基端側(エンジンEに近接する側)に配置される固定シーブ41Aと、駆動軸40の先端側に配置される可動シーブ41Bとを備えている。また、駆動軸40の突出端には可動シーブ41Bの位置を調節する巻回径調節機構46を備えている。
【0026】
この巻回径調節機構46は、駆動軸40の回転速度が高速化するほど可動シーブ41Bを固定シーブ41Aに接近する方向に移動させて駆動プーリ41のベルト巻回径の拡大を図るものである。これとは逆に、駆動軸40の回転速度が低速化するほど可動シーブ41Bを固定シーブ41Aから離間させる方向に移動させて駆動プーリ41のベルト巻回径の縮小を図るように構成されている。
【0027】
従動プーリ42は、入力軸3bの基端側(ミッションケース30に近接する側)に配置される可動シーブ42Aと、入力軸3bの先端側に配置される固定シーブ42Bと、可動シーブ42Aを固定シーブ42Bに接近させる方向に付勢力を作用させるコイルバネ42Cとを有している。
【0028】
このコイルバネ42Cは、無端ベルト43に作用する張力に対応して従動プーリ42の可動シーブ42Aの位置を決めるための付勢力を作用させる。つまり、駆動プーリ41のベルト巻回径が変化した場合には、無端ベルト43に作用する張力が変化する。この張力が増大するほど可動シーブ42Aを固定シーブ42Bから離間させ、張力が減少するほど可動シーブ42Aを固定シーブ42Bに接近させる作動を実現する。従って、駆動プーリ41のベルト巻回径が小さい場合には、従動プーリ42のベルト巻回径が大きい値に設定され、これとは逆に、駆動プーリ41のベルト巻回径が拡大した場合には、従動プーリ42のベルト巻回径が小さい値に設定される。
【0029】
駆動プーリ41を挟んでエンジンEの反対側に配置されたアシストモータMは、出力軸50が横方向(駆動プーリ41側)を向くように配置されている。本実施形態では、アシストモータMは支持ブラケット47の外側端部に、例えばボルト等により取り付けられている。また、出力軸50は駆動軸40と同軸芯状に配置されている。駆動軸40が出力軸50に延長され、出力軸50と駆動軸40とに亘ってカプラ48が設けられ、カプラ48と出力軸50とおよびカプラ48と駆動軸40とがスプライン嵌合されている。カプラ48が支持ブラケット47に設けられた軸受47aに支持されることにより、出力軸50と駆動軸40とが一体回転自在に支持される。
【0030】
図3及び
図8に示すように、変速ケース44(本発明のケース部材に相当)は、車体側(ミッションケース30とエンジンEとの少なくとも一方)に支持されるケース本体44Aと、このケース本体44Aに対して分離自在に支持されるカバー体44Bとを備えている。また、遠心クラッチ39を取り囲むクラッチケース45がエンジンEのシリンダブロックに連結され、このクラッチケース45が変速ケース44のケース本体44Aに連結されている。また、ケース本体44Aおよびクラッチケース45に対して、支持ブラケット47が、例えばボルト等により、取り付けられている。
【0031】
カバー体44Bは、駆動プーリ41と、巻回径調節機構46と、従動プーリ42とを横外方から収容し得る形状に形成されている。このカバー体44B及びケース本体44Aは、外周にフランジ面44Ba,44Aaを形成した構造を有している。そして、ケース本体44Aのフランジ面44Aaとカバー体44Bのフランジ面44Baとを対向させて、間にゴム等のシール材(図示せず)を挟み込む形態で、ケース本体44Aとカバー体44Bとがボルト等(図示せず)によって連結されている。
この構造により、ケース本体44Aは車体側(ミッションケース30とエンジンEとの少なくとも一方)に支持させたままの状態で、カバー体44Bのみを脱着することが可能である。
【0032】
図8に示すように、カバー体44Bのうち、アシストモータMの出力軸50やカプラ48が貫通する部位には開口部49が形成され、その開口部49に、前記出力軸50やカプラ48の外周側を覆う筒状部材51が差し込み状態で固定されている。
この筒状部材51は、駆動プーリ41に近い側の端部が前記開口部49を貫通し、支持ブラケット47に固定ボルト52を介して連結固定されている。
そして、筒状部材51のうち、アシストモータMに対向する側の端部は、アシストモータMを支持するモータ支持台6のモータ取付フレーム6Bに当接する状態で適宜ボルト等(図示せず)により連結固定されている。
【0033】
〔モータ支持台〕
アシストモータMを支持するモータ支持台6は、
図4乃至
図10に示すように構成されている。
このモータ支持台6は、車体フレーム1のうち、左横側部に位置する前後方向に長いメインフレーム1Aから左横外方へ向けて突出する延出フレーム部6Aと、その延出フレーム部6Aに対して、左右方向で相対移動可能に装着されたモータ取付フレーム6Bとを備えている。
【0034】
延出フレーム部6Aは、上向きの載置面60aを有した台板部材60と、その台板部材60の前後両端側で下向きに屈折した側部リブ61と、前後の側部リブ61の中間で台板部材60の下側に設けられた中間リブ62とを備えた形状に形成され、メインフレーム1Aに近い側の端部がメインフレーム1Aに溶接固定されて、車体フレーム1の一部を構成している。
【0035】
モータ取付フレーム6Bは、アシストモータMの出力軸50の方向に長手方向が沿う前後一対の横架部材64と、前後の横架部材64の左右両端側を連結する左右一対の縦枠部材65とで構成されたスライド枠体66を備えている。
スライド枠体66のうち、左右の縦枠部材65の前後両端部に、平面視でチャンネル状の合計四個の連結部材67の下部が、連結ボルト67aを介して取り付けられている。そして、この連結部材67の上部側に、左右一対の端部支持枠68が、連結ボルト67bを介して連結固定されることにより、アシストモータMを支持可能なモータ取付フレーム6Bが構成されている。
【0036】
アシストモータMは、その左右の端部が左右の端部支持枠68に対向し、左右の端部支持枠68に挟み込まれた状態で適宜連結ボルト等(図示せず)を介して左右の端部が端部支持枠68に連結される。
そして、アシストモータMを連結した左右の端部支持枠68がスライド枠体66に連結固定され、スライド枠体66が延出フレーム部6Aの台板部材60に搭載され、連結固定される。
【0037】
図7及び
図9,10に示すように、台板部材60の載置面60aには、連結ボルト63を挿通するための貫通孔60bが3箇所に設けられている。スライド枠体66側に設けた連結ブラケット69には、載置面60a側の貫通孔60bと対向する位置に連結孔69aが形成されている。
上記の台板部材60側の貫通孔60bと、スライド枠体66側の連結孔69aとにわたって挿通される連結ボルト63によって、台板部材60と、その載置面60aに載置されたスライド枠体66の連結ブラケット69が連結固定可能に構成されている。
【0038】
上記の台板部材60に形成された貫通孔60bと、連結ブラケット69に形成された連結孔69aとは、差し込まれた連結ボルト63の外径との間に多少の融通間隙が生じるように、その内径を連結ボルト63の外径よりも大きく形成してある。
これは、CVT伝動装置4を挟んでエンジンEとは反対側にアシストモータMを取り付けるにあたって、クランク軸3aの軸心と、CVT伝動装置4の駆動軸40の軸心とに、精度良くアシストモータMの出力軸50の軸心を合致させ易くするためである。
【0039】
つまり、メインフレーム1Aから左横外方へ向けて突出する延出フレーム部6Aに貫通孔60bを形成する加工、並びに、スライド枠体66側の連結ブラケット69に連結孔69aを形成する加工に際して、前記三者の軸心を完全に一致させるほどに精度良く加工することはきわめて困難であるが、上記のように、貫通孔60bの内径と連結孔69aの内径とを連結ボルト63の外径よりも大きく形成して、差し込まれた連結ボルト63の外径との間に多少の融通間隙が生じるようにすることにより、前記三者の軸心が合致するように、アシストモータMの出力軸50の軸心の向きを調整し易いものである。
【0040】
〔駆動制御〕
ユーティリティービークルの駆動制御の一例を説明する。
まず、入力クラッチ操作レバー18を入り状態に操作して、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30Aを入り状態(接続状態)としている場合、次のように駆動される。
【0041】
このユーティリティービークルは、図示しない起動スイッチによってエンジンEが起動される。そして、低速度時(低回転速度時)は、アシストモータMにより駆動され、高速度時(高回転速度時)はエンジンE(もしくは、エンジンEおよびアシストモータM)により駆動される。
具体的には、アクセルペダル15を操作すると給電ユニット(図示しない)よりアシストモータMに対して給電が行われ、アシストモータMが回転駆動する。
このとき、エンジンEは、アクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。しかし、遠心クラッチ39が連結状態となるエンジンの回転速度の設定値に対応した操作位置にアクセルペダル15が操作されて、エンジンの回転速度が設定値に達するまでは遠心クラッチ39は遮断状態である。このため、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力は、駆動軸40には伝達されず、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。
【0042】
アクセルペダル15がさらに操作されてエンジンEの回転速度が設定値に達すると、遠心クラッチ39が連結状態となり、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力が駆動軸40に伝達される。この状態では、エンジンEおよびアシストモータMの両者がアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動され、エンジンEおよびアシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。
【0043】
ユーティリティービークルの制動時には、アシストモータMによる回生ブレーキにより、制動や減速が行われる。この際に発生する電力がバッテリ8に蓄電される。
【0044】
上記のアシストモータMおよびエンジンEの回転速度の制御は、例えば、コントロールユニット(図示せず)により行われる。具体的には、アクセルペダル15に例えば回転センサ等の操作位置検出手段が設けられている。コントロールユニットは、操作位置検出手段からの検出信号に基づいて上記制御を行う。
【0045】
次に、入力クラッチ操作レバー18を切り状態に操作して、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30Aを切り状態(非接続状態)としている場合、次のように駆動される。
【0046】
CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達が断たれるため、ユーティリティービークルは停止した状態にある。
具体的には、アクセルペダル15を操作すると給電ユニット(図示しない)よりアシストモータMに対して給電が行われ、アシストモータMが回転駆動する。
このとき、エンジンEは、アクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。しかし、遠心クラッチ39が連結状態となるエンジンの回転速度の設定値に対応した操作位置にアクセルペダル15が操作されて、エンジンの回転速度が設定値に達するまでは遠心クラッチ39は遮断状態である。このため、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力は、駆動軸40には伝達されず、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30側に伝えられるが、入力クラッチ30Aが遮断状態であるため、ユーティリティービークルは停止したままの状態である。
【0047】
アクセルペダル15がさらに操作されてエンジンEの回転速度が設定値に達すると、遠心クラッチ39が連結状態となり、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力が駆動軸40に伝達される。この状態でエンジンEがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。
そして、エンジンの回転速度が、遠心クラッチ39を連結状態とし得る設定値に達したことを、回転センサ等の操作位置検出手段が検出すると、入力クラッチ操作レバー18の切り状態を検出する検出センサ(図示せず)からの検出信号との同時検出により、コントロールユニットからアシストモータMへの給電を断つ指令が出される。これにより、アシストモータMはバッテリ8からの給電による駆動が停止される。
しかしながら、アシストモータMの出力軸50は、CVT伝動装置4の駆動軸40と連結されており、CVT伝動装置4がエンジンEの駆動力によって駆動されるので、アシストモータMもエンジンEの駆動力によって駆動され、発電機として機能し、バッテリ8を充電する。このとき、入力クラッチ30Aは遮断状態であるため、ユーティリティービークルは走行を停止したままの状態に維持される。
【0048】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、走行伝動機構としてCVT伝動装置4を備えた構造のものを例示したが、これに限らず、例えば、単なるベルト伝動装置や、ギヤ伝動装置など、各種の走行伝動機構を備えたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0049】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、エンジンEの起動を起動スイッチで行うようにした構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、次のように、アクセルペダル15の操作度合いに応じてエンジンEの起動及び停止を行うように制御する構造のものであってもよい。
【0050】
ユーティリティービークルの駆動制御における別の実施形態の一例を説明する。
この別の実施形態による制御では、エンジンEの起動を起動スイッチで行うものではない。
まず、入力クラッチ操作レバー18を入り状態に操作して、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30Aを入り状態(接続状態)としている場合、次のように駆動される。
【0051】
このユーティリティービークルは、低速度時は、アシストモータMにより駆動され、高速度時はエンジンE(もしくは、エンジンEおよびアシストモータM)により駆動される。具体的には、アクセルペダル15を操作すると給電ユニット(図示せず)よりアシストモータMに対して給電が行われ、アシストモータMが回転駆動する。アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるまでは、エンジンEは駆動せず、アシストモータMのみがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で駆動する。この際、エンジンEは駆動していないため、エンジンEの回転速度が設定値未満であり、遠心クラッチ39は遮断状態にある。このため、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。
【0052】
アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるとエンジンが起動し、アクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。ただし、アクセルペダル15が、遠心クラッチ39が連結状態となるエンジンの回転速度の設定値に対応した操作位置(第2所定位置)に操作されるまでは、エンジンの回転速度は設定値未満であり、遠心クラッチ39は遮断状態である。
このため、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力は、駆動軸40には伝達されない。その結果、上記と同様に、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。アクセルペダル15の操作位置が第2所定位置に達するとエンジンEの回転速度が設定値に達し、遠心クラッチ39が連結状態となり、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力が駆動軸40に伝達される。アクセルペダル15が第2所定位置を超えて操作された状態では、エンジンEおよびアシストモータMがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動され、エンジンEおよびアシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。
【0053】
ユーティリティービークルの制動時には、エンジンEの駆動が停止され(エンジンの回転速度が設定値未満となり)、遠心クラッチ39が遮断状態となり、アシストモータMによる回生ブレーキにより、制動や減速が行われる。この際に発生する電力がバッテリ8に蓄電される。
【0054】
上記のアシストモータMおよびエンジンの起動、並びに、アシストモータMおよびエンジンEの回転速度の制御は、例えば、コントロールユニット(図示しない)により行われる。具体的には、アクセルペダル15に例えば回転センサ等の操作位置検出手段が設けられている。コントロールユニットは、操作位置検出手段からの検出信号に基づいて上記制御を行う。
【0055】
次に、入力クラッチ操作レバー18を切り状態に操作して、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30Aを切り状態(非接続状態)としている場合、次のように駆動される。
【0056】
CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達が断たれるため、ユーティリティービークルは停止した状態にある。
この状態でアクセルペダル15を操作すると、給電ユニット(図示しない)よりアシストモータMに対して給電が行われ、アシストモータMが回転駆動する。アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるまでは、エンジンEは駆動せず、アシストモータMのみがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で駆動する。この際、エンジンEは駆動していないため、エンジンEの回転速度が設定値未満であり、遠心クラッチ39は遮断状態にある。このため、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力されるが、入力クラッチ30Aも遮断状態であるため、ユーティリティービークルは停止したままの状態である。
【0057】
アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるとエンジンが起動し、アクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。ただし、アクセルペダル15が、遠心クラッチ39が連結状態となるエンジンの回転速度の設定値に対応した操作位置(第2所定位置)に操作されるまでは、エンジンの回転速度は設定値未満であり、遠心クラッチ39は遮断状態である。
このため、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力は、駆動軸40には伝達されない。したがって、上記と同様に、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力されるが、入力クラッチ30Aも遮断状態であるため、ユーティリティービークルは停止したままの状態である。
【0058】
アクセルペダル15の操作位置が第2所定位置に達するとエンジンEの回転速度が設定値に達し、遠心クラッチ39が連結状態となり、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力が駆動軸40に伝達される。アクセルペダル15が第2所定位置を超えて操作された状態では、エンジンEがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。
そして、アクセルペダル15の操作位置が第2所定位置に達したことを、回転センサ等の操作位置検出手段が検出すると、前記入力クラッチ操作レバー18の切り状態を検出する検出センサ(図示せず)からの検出信号との同時検出により、コントロールユニットからアシストモータMへの給電を断つ指令が出され、アシストモータMはバッテリ8からの給電による駆動が停止される。
しかしながら、アシストモータMの出力軸50は、CVT伝動装置4の駆動軸40と連結されており、CVT伝動装置4がエンジンEの駆動力によって駆動されるので、アシストモータMもエンジンEの駆動力によって駆動され、発電機として機能し、バッテリ8を充電する。このとき、入力クラッチ30Aは遮断状態であるため、ユーティリティービークルは停止したままの状態である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0059】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態の2では、入力クラッチ操作レバー18を切り状態に操作して、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30Aを切り状態(非接続状態)としている場合でも、アクセルペダル15が第1所定位置、または第2所定位置に操作されるまでは、アシストモータMのみがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で駆動するようにした構成のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、入力クラッチ操作レバー18を切り状態に操作して、CVT伝動装置4からミッションケース30への動力の伝達を断続するための入力クラッチ30Aを切り状態(非接続状態)としている場合であることが検出センサにより検出されると、アクセルペダル15が第1所定位置、または第2所定位置に操作されるまでの間での、アシストモータMの回転駆動も停止するようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。