【解決手段】少なくとも10-7MのKDでアクチビン受容体IIa型(ActRIIa)リガンドと結合するおよび)細胞におけるActRIIaシグナル伝達を阻害する効果を有する、アクチビン受容体IIa型(ActRIIa)タンパク質と免疫グロブリンのFc部分との融合タンパク質を含む薬学的組成物。
CHO細胞から発現されたActRIIa-Fc融合タンパク質を含む薬学的組成物であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、ジスルフィド結合により連結された二つのSEQ ID NO:7のポリペプチドから形成された二量体であり、但し、該ポリペプチドの一方または両方が、SEQ ID NO:7に示されるものと比べ、アミノ末端またはカルボキシ末端において1箇所、複数のアミノ酸が少なくてもよく、かつ二量体が3〜5個のシアル酸部分を有する、薬学的組成物。
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、静脈内または皮下に投与された場合に、正常で健康なヒトにおいて平均25〜32日の血清半減期および等価な生物学的利用能を有する、請求項1記載の薬学的調製物。
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分とコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤とコンジュゲートされたアミノ酸より選択される一つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、請求項6記載の方法。
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、請求項6記載の方法。
患者が、抗骨吸収治療を受容中であるか、またはActRIIa-Fc融合タンパク質の投与前の1年以内に受容したことがある、請求項6〜24のいずれか一項記載の方法。
抗吸収剤が、ビスホスホネート剤、RANKリガンドアンタゴニスト、およびオステオプロテジェリンアンタゴニストからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
アクチビン-ActRIIaアンタゴニストが、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、請求項29記載の方法。
有効量のActRIIa-Fc融合タンパク質を患者に投与する工程を含む、患者における骨成長の促進および骨吸収の阻害のための方法であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が、3個以上のシアル酸部分を含む、方法。
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分とコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤とコンジュゲートされたアミノ酸より選択される一つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、請求項48記載の方法。
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、請求項48記載の方法。
患者における骨成長の促進および骨吸収の阻害を目的とする医薬の製造のためのActRIIa-Fc融合タンパク質の使用であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、使用。
患者における骨成長の促進および骨吸収の阻害において使用するためのActRIIa-Fc融合タンパク質であって、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつ3個以上のシアル酸部分を含む、ActRIIa-Fc融合タンパク質。
【発明の概要】
【0010】
一部分、本開示は、骨塩密度を増加させ、骨成長を促進し、かつ/または骨強度を増加させるために、アクチビンまたはActRIIaアンタゴニスト活性を有する分子(「アクチビンアンタゴニスト」および「ActRIIaアンタゴニスト」、集合的に「アクチビン-ActRIIa」アンタゴニスト)が使用され得ることを証明する。特に、本開示は、可溶型のActRIIaが、アクチビン-ActRIIaシグナル伝達の阻害剤として作用し、インビボで骨塩密度、骨成長、および骨強度の増加を促進することを証明する。骨成長を促進するかまたは骨損失を阻害する大部分の薬学的薬剤は、抗異化剤(一般的に「異化剤」とも呼ばれる)(例えば、ビスホスホネート)または同化剤(例えば、適切に投薬された場合の副甲状腺ホルモンPTH)のいずれかとして作用するが、可溶性ActRIIaタンパク質は、二重の活性を示し、抗異化効果および同化効果の両方を有する。従って、本開示は、骨塩密度を増加させ、かつ骨成長を促進するために、アクチビン-ActRIIaシグナル伝達経路のアンタゴニストが使用され得ることを確立する。可溶性ActRIIaは、アクチビンアンタゴニズム以外の機序を通して骨に影響を与えているかもしれないが、にも関わらず、本開示は、望ましい治療剤がアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト活性に基づき選択され得ることを証明する。従って、ある種の態様において、本開示は、骨粗鬆症のような低い骨密度もしくは低い骨強度に関連した障害を処置するため、または骨折を有する患者のようなその必要のある患者において骨成長を促進するため、例えば、アクチビン結合ActRIIaポリペプチド、抗アクチビン抗体、抗ActRIIa抗体、アクチビンまたはActRIIaにより標的とされる低分子およびアプタマー、ならびにアクチビンおよびActRIIaの発現を減少させる核酸を含む、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストを使用する方法を提供する。本開示は、さらに、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストが、多発性骨髄腫腫瘍および乳房腫瘍により引き起こされた骨傷害の防止および/または修復において有効であることを証明し、さらに、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストが、多発性骨髄腫における腫瘍負荷を減じることを証明する。可溶性ActRIIaポリペプチドは、一貫して測定可能な筋肉量の増加を引き起こすことなく、骨成長を促進する。
【0011】
ある種の局面において、本開示は、アクチビンと結合する可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。ActRIIaポリペプチドは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的調製物として製剤化され得る。好ましくは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1mM未満、または100、10、もしくは1nM未満のK
Dでアクチビンと結合する。任意で、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、GDF11および/またはGDF8より選択的にアクチビンに結合し、好ましくは、GDF11および/またはGDF8より少なくとも10倍、20倍、または50倍低いK
Dでアクチビンに結合する。特定の作用機序に拘束されることは望まないが、GDF11/GDF8阻害と比べたアクチビン阻害に対するこの程度の選択性は、一貫して測定可能な筋肉に対する効果を伴わない、骨に対する選択的な効果を説明することが予想される。多くの態様において、ActRIIaポリペプチドは、骨に対する望ましい効果を達成する用量で、15%未満、10%未満、または5%未満の筋肉の増加を引き起こすよう選択されるであろう。好ましくは、組成物は、サイズ排除クロマトグラフィにより査定されるように、その他のポリペプチド成分に関して、少なくとも95%純粋であり、より好ましくは、組成物は少なくとも98%純粋である。そのような調製物において使用するためのアクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、SEQ ID NO:2、3、7、もしくは12より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはSEQ ID NO:2、3、7、12、もしくは13より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドのような、本明細書に開示されたもののいずれであり得る。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドには、C末端の10〜15アミノ酸(「テール」)を欠いている、SEQ ID NO:1〜3より選択される配列またはSEQ ID NO:2の配列の少なくとも10、20、または30アミノ酸を含むもののような、天然ActRIIaポリペプチドの機能性断片が含まれ得る。
【0012】
可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、天然に存在するActRIIaポリペプチドと比べて、アミノ酸配列に(例えば、リガンド結合ドメインに)一つまたは複数の改変を含んでいてもよい。改変されたActRIIaポリペプチドの例は、参照により本明細書に組み入れられるWO2006/012627の59〜60頁に提供される。アミノ酸配列の改変は、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、もしくはその他の真核細胞において産生される場合、ポリペプチドのグリコシル化を改変するかもしれないし、または天然に存在するActRIIaポリペプチドと比べてポリペプチドのタンパク質切断を改変するかもしれない。
【0013】
アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1個のドメインとしてのActRIIaポリペプチド(例えば、ActRIIaのリガンド結合部分)と、改良された薬物動態、より容易な精製、特定の組織へのターゲティング等のような望ましい特性を提供する1個または複数個の付加的なドメインとを有する融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在または分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製のうちの一つまたは複数を増強し得る。二量体化または多量体化は、増加したリガンド結合親和性を提供し得る。アクチビン結合ActRIIa融合タンパク質は、免疫グロブリンFcドメイン(野生型もしくは変異体)、または血清アルブミン、または改良された薬物動態、改良された溶解度、もしくは改良された安定性のような望ましい特性を提供するその他のポリペプチド部分を含み得る。典型的には、ActRIIa-Fc融合タンパク質は、ホモダイマー複合体として作製されるであろう。任意で、ActRIIa-Fc融合体は、Fcドメインと細胞外ActRIIaドメインとの間に位置する比較的非組織的なリンカーを含む。この非組織的リンカーは、ActRIIaの細胞外ドメインのC末端にあるおよそ15アミノ酸の非組織的領域(「テール」)に相当してもよいし、または比較的二次構造のない1、2、3、4、もしくは5アミノ酸、もしくは5〜15、20、30、50アミノ酸、もしくはそれ以上の長さの人工配列、またはその両方の混合物であってもよい。リンカーはグリシン残基およびプロリン残基に富んでいてもよく、例えば、トレオニン/セリンおよびグリシンの単一配列またはトレオニン/セリンおよびグリシンの反復配列を含有していてもよい(例えば、TG
4またはSG
4の一重配列または反復配列)。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合体のような精製サブシーケンスを含んでいてもよい。任意で、可溶性ActRIIaポリペプチドは、以下のものより選択される、一つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む:グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分とコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤とコンジュゲートされたアミノ酸。薬学的調製物は、骨障害を処置するために使用される化合物のような一つまたは複数の付加的な化合物を含んでいてもよい。好ましくは、薬学的調製物は、発熱性物質を実質的に含まない。一般に、患者における不都合な免疫応答の可能性を減じるため、ActRIIaタンパク質の天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株においてActRIIaタンパク質が発現されることが好ましい。ヒト細胞株およびCHO細胞株は、成功裡に使用されており、その他の一般的な哺乳動物発現系が有用であろうことが予想される。
【0014】
本明細書に記載されるように、ActRIIa-Fcと名付けられたActRIIaタンパク質は、GDF8および/またはGDF11と比べて選択的なアクチビンとの結合、高親和性リガンド結合、および動物モデルにおける2週間を越える血清半減期を含む望ましい特性を有する。ある種の態様において、本発明は、ActRIIa-Fcポリペプチド、およびそのようなポリペプチドと薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的調製物を提供する。
【0015】
ある種の局面において、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドは、上記のような可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドのコーディング配列を含み得る。例えば、単離された核酸は、ActRIIaの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列、ならびにActRIIaの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部または全部をコードするが、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインの内部に位置するか、または細胞外ドメインと細胞質ドメインもしくは膜貫通ドメインとの間に位置する終止コドンをコードするであろう配列を含み得る。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4もしくは5のような全長ActRIIaポリヌクレオチド配列、または部分的に短縮されたバージョンを含み得る。該単離されたポリヌクレオチドは、さらに、3'末端の少なくとも600ヌクレオチド前にあるか、またはポリヌクレオチドの翻訳が全長ActRIIaの短縮された部分と任意で融合された細胞外ドメインを生じるように位置付けられた転写終結コドンを含む。好ましい核酸配列はSEQ ID NO:14である。本明細書に開示された核酸は、発現のためプロモーターと機能的に連結されてもよく、本開示は、そのような組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。好ましくは、細胞はCHO細胞のような哺乳動物細胞である。
【0016】
ある種の局面において、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを作成する方法を提供する。そのような方法は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような適当な細胞において本明細書に開示された核酸(例えば、SEQ ID NO:4、5、または14)のいずれかを発現させることを含み得る。そのような方法は、(a)可溶性ActRIIa発現構築物で形質転換された細胞を可溶性ActRIIaポリペプチドの発現に適している条件の下で培養すること;および(b)そのように発現された可溶性ActRIIaポリペプチドを回収することを含み得る。可溶性ActRIIaポリペプチドは、粗画分、部分精製された画分、または高度に精製された画分として回収され得る。精製は、例えば、プロテインAクロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ(例えば、Qセファロース)、疎水性相互作用クロマトグラフィ(例えば、フェニルセファロース)、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィのうちの一つ、二つ、または三つ、またはそれ以上を任意の順序で含む一連の精製工程により達成され得る。
【0017】
ある種の局面において、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドのような、本明細書に開示されたアクチビン-ActRIIaアンタゴニストは、対象における骨成長の促進および骨密度の増加のための方法において使用され得る。ある種の態様において、本開示は、低い骨密度に関連した障害を処置するため、またはその必要のある患者において骨成長を促進するための方法を提供する。方法は、有効量のアクチビン-ActRIIaアンタゴニストをその必要のある対象へ投与することを含み得る。ある種の局面において、本開示は、本明細書に記載されるような障害または状態の処置を目的とする医薬を作製するためのアクチビン-ActRIIaアンタゴニストの使用を提供する。
【0018】
ある種の局面において、本開示は、骨の成長または石灰化の増加を刺激する薬剤を同定する方法を提供する。方法は、(a)アクチビンまたはActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインと結合する試験薬剤を同定すること;および(b)骨の成長または石灰化に対する薬剤の効果を評価することを含む。
以下に、本発明の基本的な諸特徴および種々の態様を列挙する。
[1]
CHO細胞から発現されたActRIIa-Fc融合タンパク質を含む薬学的組成物であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、ジスルフィド結合により連結された二つのSEQ ID NO:7のポリペプチドから形成された二量体であり、但し、該ポリペプチドの一方または両方が、SEQ ID NO:7に示されるものと比べ、アミノ末端またはカルボキシ末端において1箇所、複数のアミノ酸が少なくてもよく、かつ二量体が3〜5個のシアル酸部分を有する、薬学的組成物。
[2]
二量体が4個のシアル酸部分を有する、[1]記載の薬学的調製物。
[3]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、静脈内または皮下に投与された場合に、正常で健康なヒトにおいて平均25〜32日の血清半減期および等価な生物学的利用能を有する、[1]記載の薬学的調製物。
[4]
皮下投与に適している、[1]記載の薬学的調製物。
[5]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、他のタンパク質成分に関して少なくとも90%純粋である、[1]記載の薬学的調製物。
[6]
有効量のActRIIa-Fc融合タンパク質をヒト患者に投与する工程を含む、ヒト患者における癌に関連した骨損失を処置または防止する方法。
[7]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、以下からなる群より選択される、[6]記載の方法:
(a)SEQ ID NO:2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)SEQ ID NO:3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(c)SEQ ID NO:2の少なくとも50個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド。
[8]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、以下の特徴のうちの一つまたは複数を有する、[7]記載の方法:
(i)少なくとも10
-7MのK
DでActRIIaリガンドと結合する;および
(ii)細胞におけるActRIIaシグナル伝達を阻害する。
[9]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分とコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤とコンジュゲートされたアミノ酸より選択される一つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、[6]記載の方法。
[10]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、[7]記載の方法。
[11]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、[7]記載の方法。
[12]
ActRIIa-Fc融合タンパク質がSEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む、[7]記載の方法。
[13]
ActRIIa-Fc融合タンパク質がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、[7]記載の方法。
[14]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、[6]記載の方法。
[15]
ActRIIa-Fc融合タンパク質がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、[14]記載の方法。
[16]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が3〜5個のシアル酸部分を含む、[15]記載の方法。
[17]
患者の骨格筋量の10%未満の増加を引き起こす、[6]記載の方法。
[18]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、患者において少なくとも200ng/mLの血清濃度に達するよう投与される、[6]記載の方法。
[19]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、患者において少なくとも1000ng/mLの血清濃度に達するよう投与される、[18]記載の方法。
[20]
ActRIIa-Fc融合タンパク質がSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する、[6]記載の方法。
[21]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、正常で健康なヒトにおいて15〜40日の血清半減期を有する、[6]記載の方法。
[22]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、週に1回以下の頻度で患者に投与される、[20]記載の方法。
[23]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、月に1回以下の頻度で患者に投与される、[20]記載の方法。
[24]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、3ヶ月に1回以下の頻度で患者に投与される、[20]記載の方法。
[25]
患者が、抗骨吸収治療を受容中であるか、またはActRIIa-Fc融合タンパク質の投与前の1年以内に受容したことがある、[6]〜[24]のいずれか一項記載の方法。
[26]
抗吸収剤が、ビスホスホネート剤、RANKリガンドアンタゴニスト、およびオステオプロテジェリンアンタゴニストからなる群より選択される、[25]記載の方法。
[27]
放射線治療、細胞障害剤、または化学療法剤をヒト患者へ投与する工程をさらに含む、[6]〜[24]のいずれか一項記載の方法。
[28]
患者が多発性骨髄腫を有する、[6]〜[24]のいずれか一項記載の方法。
[29]
有効量のアクチビン-ActRIIaアンタゴニストを、その必要のある対象に投与する工程を含む、癌に関連した骨損失を処置または防止する方法。
[30]
アクチビン-ActRIIaアンタゴニストが、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、[29]記載の方法。
[31]
アクチビン-ActRIIaアンタゴニストが、
(a)抗アクチビン抗体;および
(b)抗ActRIIa抗体
からなる群より選択される抗体である、[29]記載の方法。
[32]
対象が多発性骨髄腫を有する、[29]記載の方法。
[33]
有効量のActRIIa-Fc融合タンパク質を患者に投与する工程を含む、患者における骨成長の促進および骨吸収の阻害のための方法であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が、3個以上のシアル酸部分を含む、方法。
[34]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、[33]記載の方法。
[35]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が3〜5個のシアル酸部分を含む、[34]記載の方法。
[36]
患者の骨格筋量の10%未満の増加を引き起こす、[33]記載の方法。
[37]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、患者において少なくとも200ng/mLの血清濃度に達するよう投与される、[33]記載の方法。
[38]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する、[33]記載の方法。
[39]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が正常で健康なヒトにおいて15〜40日の血清半減期を有する、[33]記載の方法。
[40]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、週に1回以下の頻度で患者に投与される、[33]記載の方法。
[41]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、月に1回以下の頻度で患者に投与される、[33]記載の方法。
[42]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、3ヶ月に1回以下の頻度で患者に投与される、[33]記載の方法。
[43]
患者が、ActRIIa-Fc融合タンパク質の投与前の1年以内に抗吸収治療を受容したことがある、[33]記載の方法。
[44]
患者が、ActRIIa-Fc融合タンパク質の投与時に抗吸収治療を受容中である、[33]記載の方法。
[45]
患者が、抗吸収剤をさらに受容する、[33]記載の方法。
[46]
抗吸収剤がビスホスホネート剤である、[43]〜[45]のいずれか一項記載の方法。
[47]
抗吸収剤が、RANKリガンドアンタゴニストまたはオステオプロテジェリンアンタゴニストである、[43]〜[45]のいずれか一項記載の方法。
[48]
有効量のActRIIa-Fc融合タンパク質を患者に投与する工程を含む、ヒト患者における多発性骨髄腫を処置または防止する方法。
[49]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、以下からなる群より選択される、[48]記載の方法:
(a)SEQ ID NO:2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(b)SEQ ID NO:3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(c)SEQ ID NO:2の少なくとも50個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド。
[50]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、以下の特徴のうちの一つまたは複数を有する、[49]記載の方法:
(i)少なくとも10
-7MのK
DでActRIIaリガンドと結合する;および
(ii)細胞におけるActRIIaシグナル伝達を阻害する。
[51]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分とコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤とコンジュゲートされたアミノ酸より選択される一つまたは複数の修飾されたアミノ酸残基を含む、[48]記載の方法。
[52]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、[49]記載の方法。
[53]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、[49]記載の方法。
[54]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む、[49]記載の方法。
[55]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、[49]記載の方法。
[56]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、[48]記載の方法。
[57]
ActRIIa-Fc融合タンパク質がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、[56]記載の方法。
[58]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が3〜5個のシアル酸部分を含む、[57]記載の方法。
[59]
患者の骨格筋量の10%未満の増加を引き起こす、[48]記載の方法。
[60]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、患者において少なくとも1000ng/mLの血清濃度に達するよう投与される、[48]記載の方法。
[61]
ActRIIa-Fc融合タンパク質がSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する、[48]記載の方法。
[62]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、正常で健康なヒトにおいて15〜40日の血清半減期を有する、[48]記載の方法。
[63]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、週に1回以下の頻度で患者に投与される、[61]記載の方法。
[64]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、月に1回以下の頻度で患者に投与される、[61]記載の方法。
[65]
ActRIIa-Fc融合タンパク質が、3ヶ月に1回以下の頻度で患者に投与される、[61]記載の方法。
[66]
ヒト患者における癌に関連した骨損失の処置または防止を目的とする医薬の製造のための、ActRIIa-Fc融合タンパク質の使用。
[67]
ヒト患者における癌に関連した骨損失の処置または防止において使用するための、ActRIIa-Fc融合タンパク質。
[68]
癌に関連した骨損失の処置または防止を目的とする医薬の製造のための、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストの使用。
[69]
ヒト患者における癌に関連した骨損失の処置または防止において使用するための、アクチビン-ActRIIaアンタゴニスト。
[70]
患者における骨成長の促進および骨吸収の阻害を目的とする医薬の製造のためのActRIIa-Fc融合タンパク質の使用であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつActRIIa-Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、使用。
[71]
患者における骨成長の促進および骨吸収の阻害において使用するためのActRIIa-Fc融合タンパク質であって、各々SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む二つのポリペプチドから形成された二量体であり、かつ3個以上のシアル酸部分を含む、ActRIIa-Fc融合タンパク質。
[72]
ヒト患者における多発性骨髄腫の処置または防止を目的とする医薬の製造のための、ActRIIa-Fc融合タンパク質の使用。
[73]
ヒト患者における多発性骨髄腫の処置または防止において使用するための、ActRIIa-Fc融合タンパク質。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
1. 概説
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントおよび構造モチーフを共有する種々の増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の多種多様な細胞種に対して生物学的効果を及ぼすことが知られている。このスーパーファミリーのメンバーは、胚発生期にパターン形成および組織特異化において重要な機能を果たし、脂肪生成、筋形成、軟骨形成、心発生、造血、神経発生、および上皮細胞分化をはじめとする様々な分化過程に影響し得る。このファミリーは、そのメンバーが多様な、多くの場合相補的な効果を有する2つの一般的分類:BMP/GDF分類およびTGF-β/アクチビン/BMP10分類に分割される。TGF-βファミリーのメンバーの活性を操作することで、生物に顕著な生理的変化をもたらし得る場合が多い。例えば、PiedmonteseおよびBelgian Blueウシ品種は、筋肉量の顕著な増加をもたらす、GDF8(ミオスタチンとも称される)遺伝子の機能喪失変異を有する。Grobet et al., Nat Genet. 1997, 17(1):71-4。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性対立遺伝子が、筋肉量の増加、および報告によれば並外れた強さと関連している。Schuelke et al., N Engl J Med 2004, 350:2682-8。
【0021】
アクチビンは二量体ポリペプチド増殖因子であり、TGF-βスーパーファミリーに属する。2つの密に関連したβサブユニットのホモ二量体/ヘテロ二量体(β
Aβ
A、β
Bβ
B、およびβ
Aβ
B)である3つの主要なアクチビン型(A、B、およびAB)が存在する。ヒトゲノムは、主に肝臓で発現するアクチビンCおよびアクチビンEもコードする。TGF-βスーパーファミリーの中で、アクチビンは、卵巣および胎盤細胞においてホルモン産生を刺激し得る、神経細胞の生存を支持し得る、細胞種に応じて正にまたは負に細胞周期の進行に影響し得る、および少なくとも両生類の胚において中胚葉の分化を誘導し得る、独特でかつ多機能の因子である(DePaolo et al., 1991, Proc SocEp Biol Med. 198:500-512;Dyson et al., 1997, Curr Biol. 7:81-84;Woodruff, 1998, Biochem Pharmacol. 55:953-963)。さらに、刺激したヒト単球性白血病細胞から単離された赤芽球分化誘導因子(EDF)が、アクチビンAと同一であることが見出された(Murata et al., 1988, PNAS, 85:2434)。アクチビンAは、骨髄において赤血球生成の天然の正の制御因子として作用することが示唆された。いくつかの組織において、アクチビンシグナル伝達は、その関連ヘテロ二量体、インヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出される過程において、アクチビンはFSHの分泌および合成を促進し、インヒビンはFSHの分泌および合成を防止する。アクチビンの生物活性を制御し得るおよび/またはアクチビンに結合し得るその他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、およびα
2-マクログロブリンが含まれる。
【0022】
TGF-βシグナルはI型およびII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体のヘテロ複合体によって媒介され、この複合体はリガンド刺激に際して下流のSmadタンパク質をリン酸化および活性化する(Massague, 2000, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 1:169-178)。これらのI型およびII型受容体は、全て、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/スレオニン特異性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体はシグナル伝達に必須であり;II型受容体は、リガンドとの結合およびI型受容体の発現に必要である。I型およびII型アクチビン受容体は、リガンド結合後に安定した複合体を形成し、II型受容体によってI型受容体がリン酸化される。
【0023】
2つの関連したII型受容体、ActRIIaおよびActRIIbが、アクチビンのII型受容体として同定されている(Mathews and Vale, 1991, Cell 65:973-982;Attisano et al., 1992, Cell 68: 97-108)。ActRIIaおよびActRIIbは、アクチビンに加えて、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含むいくつかの他のTGF-βファミリータンパク質と生化学的に相互作用し得る(Yamashita et al., 1995, J. Cell Biol. 130:217-226;Lee and McPherron, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. 98:9306-9311;Yeo and Whitman, 2001, Mol. Cell 7: 949-957;Oh et al., 2002, Genes Dev. 16:2749-54)。ALK4はアクチビン、特にアクチビンAの主要なI型受容体であり、ALK-7も同様にアクチビン、特にアクチビンBの受容体として機能し得る。
【0024】
本明細書において証明されるように、GDF8またはGDF11のような他のTGF-βファミリーメンバーと比べて、アクチビンAとの結合における実質的な優先を示す可溶性ActRIIaポリペプチド(sActRIIa)は、インビボで骨成長を促進し、かつ骨密度を増加させるのに有効である。特定の機序に拘束されることは望まないが、これらの研究において使用された特定のsActRIIa構築物により示された極めて強いアクチビン結合(ピコモル解離定数)のため、sActRIIaの効果は主としてアクチビンアンタゴニスト効果により引き起こされると予想される。機序にかかわらず、ActRIIa-アクチビンアンタゴニストが正常マウス、骨粗鬆症のマウスモデル、および多発性骨髄腫のマウスモデルにおいて骨密度を増加させることは、本明細書に提示されたデータから明白である。骨は動的な組織であり、成長または収縮および密度の増加または減少が、骨を生じ石灰化を刺激する因子(主として、骨芽細胞)および骨を破壊し脱石灰化する因子(主として、破骨細胞)のバランスに依ることに注意すべきである。骨成長および石灰化は、生産的な因子の増加により、破壊的な因子の減少により、またはその両方により増加し得る。「骨成長を促進する」および「骨石灰化を増加させる」という用語は、骨における観察可能な物理的変化をさし、骨の変化が起こる機序に関しては中性であるものとする。
【0025】
本明細書に記載された研究において使用された骨粗鬆症および骨成長/密度のマウスモデルは、ヒトにおける効力を高度に予測すると考えられ、従って、この開示は、ヒトにおいて骨成長を促進し、かつ骨密度を増加させるために、ActRIIaポリペプチドおよびその他のアクチビン-ActRIIaアンタゴニストを使用する方法を提供する。アクチビン-ActRIIaアンタゴニストには、例えば、アクチビン結合性の可溶性ActRIIaポリペプチド、アクチビン(特に、アクチビンのAサブユニットまたはBサブユニット、βAまたはβBとも呼ばれる)と結合し、ActRIIa結合を妨害する抗体、ActRIIaと結合し、アクチビン結合を妨害する抗体、アクチビンまたはActRIIaとの結合のため選択された非抗体タンパク質(そのようなタンパク質の例、ならびにそのような非抗体アフィニティ結合試薬の設計および選択の方法については、例えば、WO/2002/088171、WO/2006/055689、およびWO/2002/032925を参照のこと)、ならびにしばしばFcドメインに添付されるアクチビンまたはActRIIaとの結合のため選択されたランダム化ペプチドが含まれる。アクチビンまたはActRIIaとの結合活性を有する異なる二つのタンパク質(またはその他の部分)、特に、I型(例えば、可溶性I型アクチビン受容体)結合部位およびII型(例えば、可溶性II型アクチビン受容体)結合部位をそれぞれ阻止するアクチビン結合剤が、二機能性結合分子を作出するために一緒に連結され得る。アクチビン-ActRIIaシグナル伝達軸を阻害する核酸アプタマー、低分子、およびその他の薬剤。インヒビン(即ち、インヒビンアルファサブユニット)(しかし、インヒビンは全ての組織において普遍的にアクチビンに拮抗するのではない)、フォリスタチン(例えば、フォリスタチン-288およびフォリスタチン-315)、FSRP、アクチビンC、アルファ(2)-マクログロブリン、ならびにM108A(108位におけるメチオニンのアラニンへの変化)変異体アクチビンAを含む、様々なタンパク質が、アクチビン-ActRIIaアンタゴニスト活性を有する。一般に、アクチビンのオルタナティブな型、特に、I型受容体結合ドメインに改変を有するものは、II型受容体と結合することができ、活性三元複合体を形成することができず、従って、アンタゴニストとして作用する。さらに、アクチビンA、B、C、もしくはE、または特にActRIIaの発現を阻害するアンチセンス分子、siRNA、またはリボザイムのような核酸は、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストとして使用され得る。好ましくは、使用されるアクチビン-ActRIIaアンタゴニストは、TGFβファミリーの他のメンバーと比べて、特に、GDF8およびGDF11と比べて、アクチビンにより媒介されるシグナル伝達の阻害のための選択性を示すであろう。可溶性ActRIIbタンパク質はアクチビンと結合するが、野生型タンパク質はGDF8/11に対するアクチビン結合における有意な選択性を示さず、予備実験は、このタンパク質が骨に対する所望の効果を提供しない一方、実質的な筋肉成長も引き起こすことを示唆している。しかしながら、異なる結合特性を有する改変型のActRIIbが同定されており(例えば、参照により本明細書に組み入れるWO2006/012627、pp.55-59を参照のこと)、これらのタンパク質は、骨に対する所望の効果を達成するかもしれない。未処理ActRIIbまたは改変型ActRIIbは、第二のアクチビン選択的結合剤とのカップリングによりアクチビンに対する追加的な特異性を与えられるかもしれない。
【0026】
本明細書で使用する用語は一般に、本発明の状況および各用語が用いられる特定の状況における、当技術分野での通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびにそれらの作製および使用方法の記載に際して、実施者にさらなる手引きが提供されるように、特定の用語を以下または本明細書の他所で考察する。用語のいかなる使用の範囲または意味も、その用語が用いられる特定の状況から明らかになると考えられる。
【0027】
「約」および「およそ」は一般に、測定の性質または精度を前提として測定された量の許容可能な誤差の程度を意味するものとする。典型的には、例示的な誤差の程度は、所与の値または値域の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0028】
または、特に生物系においては、「約」および「およそ」という用語は、所与の値の1オーダー以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書で示す数量は、特記されない限り近似値であり、明確に記載されない場合でも、「約」または「およそ」という用語が推測され得ることを意味する。
【0029】
本発明の方法は、野生型配列と1つまたは複数の変異体(配列変種)をはじめとする、配列を相互に比較する段階を含み得る。そのような比較は典型的に、例えば当技術分野において周知である配列アライメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(数例を挙げると、例えば、BLAST、FASTA、およびMEGALIGN)を用いた、ポリマー配列のアライメントを含む。変異が残基の挿入または欠失を含むアライメントにおいて、配列アライメントは、挿入または欠失残基を含まないポリマー配列中に「ギャップ」(典型的には、ダッシュ記号または「A」で表される)を導入することを当業者は容易に理解し得る。
【0030】
「相同な」という用語は、その文法形態および綴りの変化形のすべてにおいて、同じ生物種のスーパーファミリーに由来するタンパク質、および異なる生物種に由来する相同タンパク質を含む、「共通の進化の起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指す。このようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、パーセント同一性の点からであれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、それらの配列類似性に反映される配列相同性を有する。
【0031】
「配列類似性」という用語は、その文法形態のすべてにおいて、共通の進化の起源を共有する可能性があるかまたはない核酸またはアミノ酸配列間の同一性または一致の程度を指す。
【0032】
しかし、一般的な使用および本出願において、「相同な」という用語は、「高度に」などの副詞で修飾される場合には、配列類似性を指し得、共通の進化の起源と関連する場合もあればそうでない場合もある。
【0033】
2. ActRIIaポリペプチド
ある種の局面において、本発明はActRIIaポリペプチドに関する。本明細書において使用されるように、「ActRIIa」という用語は、任意の種に由来するアクチビン受容体IIa型(ActRIIa)タンパク質のファミリー、および変異誘発またはその他の修飾によりそのようなActRIIaタンパク質から派生したバリアントをさす。本明細書において、ActRIIaの言及は、現在同定されている型のいずれかの言及であると理解される。ActRIIaファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチ領域を含むリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/トレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通型タンパク質である。
【0034】
「ActRIIaポリペプチド」という用語には、ActRIIaファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドのみならず、有用な活性を保持しているそれらの任意のバリアント(変異体、断片、融合体、およびペプチドミメティック型を含む)も含むポリペプチドが含まれる。例えば、ActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一の配列を有する、好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはそれ以上の同一性を有する任意の公知のActRIIaの配列に由来するポリペプチドが含まれる。例えば、本発明のActRIIaポリペプチドは、ActRIIaタンパク質および/またはアクチビンと結合し、それらの機能を阻害し得る。好ましくは、ActRIIaポリペプチドは、骨成長および骨石灰化を促進する。ActRIIaポリペプチドの例には、ヒトActRIIa前駆体ポリペプチド(SEQ ID NO:1)ならびに可溶性ヒトActRIIaポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2、3、7、および12)が含まれる。
【0035】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質配列は以下の通りである。
【0036】
シグナルペプチドには下線が引かれており;細胞外ドメインは太字で示され、可能性のあるN結合型グリコシル化部位には、二重下線が引かれている。
【0037】
プロセシング後のヒトActRIIa可溶性(細胞外)ポリペプチド配列は以下の通りである。
【0038】
細胞外ドメインC末端「テール」には下線が引かれている。「テール」が欠失した配列(Δ15配列)は以下の通りである。
【0039】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質をコードする核酸配列は以下の通りである(Genbank登録番号NM_001616のヌクレオチド164-1705)。
【0040】
ヒトActRIIa可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は以下の通りである。
【0041】
特定の態様において、本発明は可溶性ActRIIaポリペプチドに関する。本明細書において記載されるように、「可溶性ActRIIaポリペプチド」という用語は、一般に、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドをさす。「可溶性ActRIIaポリペプチド」という用語には、本明細書において使用されるように、ActRIIaタンパク質の任意の天然に存在する細胞外ドメインのみならず、その任意のバリアント(変異体、断片、およびペプチドミメティック型を含む)も含まれる。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドとは、アクチビン、特に、アクチビンAA、AB、またはBBと結合する能力を保持しているものである。好ましくは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1nM以下の解離定数でアクチビンAAと結合するであろう。ヒトActRIIa前駆体タンパク質のアミノ酸配列は以下に提供される。ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインは、アクチビンと結合し、一般に可溶性であり、従って、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドと名付けられ得る。可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの例には、SEQ ID NO:2、3、7、12、および13に例示された可溶性ポリペプチドが含まれる。SEQ ID NO:7はActRIIa-hFcと呼ばれ、実施例においてさらに説明される。可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドのその他の例には、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインに加えてシグナル配列、例えば、ミツバチメリチンリーダー配列(SEQ ID NO:8)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)リーダー(SEQ ID NO:9)、未改変ActRIIaリーダー(SEQ ID NO:10)が含まれる。SEQ ID NO:13に例示されたActRIIa-hFcポリペプチドはTPAリーダーを使用する。
【0042】
ActRIIaポリペプチドの機能的に活性な断片は、ActRIIaポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組み換えにより作製されたポリペプチドをスクリーニングすることにより入手され得る。さらに、断片は、従来のメリフィールド固相f-Mocまたはt-Boc化学のような当技術分野において公知の技術を使用して化学合成されてもよい。断片は、(組み換えまたは化学合成により)作製され、ActRIIaタンパク質またはアクチビンにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害剤)として機能し得るペプチジル断片を同定するために試験され得る。
【0043】
ActRIIaポリペプチドの機能的に活性なバリアントは、ActRIIaポリペプチドをコードする対応する変異誘発核酸から組み換えにより作製された修飾されたポリペプチドのライブラリーをスクリーニングすることにより入手され得る。バリアントは、作製され、ActRIIaタンパク質またはアクチビンにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害剤)として機能し得るものを同定するために試験され得る。ある種の態様において、ActRIIaポリペプチドの機能的なバリアントは、SEQ ID NO:2または3より選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一のアミノ酸配列を含む。ある種の場合において、機能的バリアントは、SEQ ID NO:2または3より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0044】
機能的バリアントは、治療効力の増強または安定性(例えば、エクスビボの貯蔵寿命およびインビボのタンパク質分解に対する抵抗性)のような目的のため、ActRIIaポリペプチドの構造を修飾することにより製造され得る。アクチビン結合を保持するよう選択された場合、そのような修飾されたActRIIaポリペプチドは、天然に存在するActRIIaポリペプチドの機能的等価物と見なされる。修飾されたActRIIaポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によっても作製され得る。例えば、単発的なロイシンのイソロイシンまたはバリンとの交換、アスパラギン酸のグルタミン酸との交換、トレオニンのセリンとの交換、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸との同様の交換(例えば、保存的変異)は、得られる分子の生物学的活性に対して主要な効果をもたらさないであろうと予想することは合理的である。保存的交換とは、側鎖に関して関連しているアミノ酸のファミリー内で行なわれるものである。ActRIIaポリペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的ホモログをもたらすか否かは、バリアントActRIIaポリペプチドの、野生型ActRIIaポリペプチドと同様の様式で細胞における応答を生じる能力を査定することにより、容易に決定され得る。
【0045】
ある態様において、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を変更するための、ActRIIaポリペプチドの特定の変異を意図する。そのような変異は、O結合またはN結合グリコシル化部位などの、1つまたは複数のグリコシル化部位を導入または排除するように選択され得る。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は一般に、適切な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識されるトリペプチド配列、アスパラギン-X-スレオニン(またはアスパラギン-X-セリン)(「X」は任意のアミノ酸)を含む。改変はまた、(O結合グリコシル化部位のための)野生型ActRIIaポリペプチドの配列に対する1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはそれらによる置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位または第3位アミノ酸の一方または両方における種々のアミノ酸置換または欠失(および/または第2位におけるアミノ酸欠失)により、改変トリペプチド配列で非グリコシル化が生じる。ActRIIaポリペプチド上の糖質部分の数を増大させる別の手段は、ActRIIaポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的結合による。使用する結合様式に応じて、糖は(a) アルギニンおよびヒスチジン;(b) 遊離カルボキシル基;(c) システインなどの遊離スルフヒドリル基;(d) セリン、スレオニン、またはヒロドキシプロリンなどの遊離ヒドロキシル基;(e) フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンなどの芳香族残基;または(f) グルタミンのアミド基に結合され得る。これらの方法は、1987年9月11日に刊行された国際公開公報第87/05330号、およびAplin and Wriston (1981) CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。ActRIIaポリペプチド上に存在する1つまたは複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物へのActRIIaポリペプチドの曝露を含み得る。この処理によって、アミノ酸配列をそのままにしつつ、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除く大部分またはすべての糖が切断される。化学的脱グリコシル化はさらに、Hakimuddin et al. (1987) Arch. Biochem. Biophys. 259:52、およびEdge et al. (1981) Anal. Biocehm. 118:131により記載されている。ActRIIaポリペプチド上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakura et al. (1987) Meth. Enzymol. 138:350に記載されているように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって達成され得る。哺乳動物、酵母、昆虫、および植物細胞はすべて、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得るため、ActRIIaポリペプチドの配列は、使用する発現系の種類に応じて適切に調節することができる。一般に、ヒトにおいて使用するためのActRIIaタンパク質は、HEK293またはCHO細胞株のような、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株で発現されるが、他の哺乳動物発現細胞株、グリコシル化酵素が操作された酵母細胞株、および昆虫細胞も同様に有用であると考えられる。
【0046】
本開示はさらに、ActRIIaポリペプチドの変異体、特にコンビナトリアル変異体のセット、および切断変異体を作製する方法を意図する;コンビナトリアル変異体のプールは、機能的変種配列を同定するのに特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用し得るか、または全体として新規な活性を有するActRIIaポリペプチド変種を作製することであってよい。種々のスクリーニングアッセイ法を以下に提供するが、そのようなアッセイ法を用いて変種を評価することができる。例えば、ActRIIaポリペプチド変種は、ActRIIaリガンドに結合する能力、ActRIIaリガンドのActRIIaポリペプチドに対する結合を妨害する能力、またはActRIIaリガンドによって引き起こされるシグナル伝達を妨げる能力に関してスクリーニングされ得る。
【0047】
ActRIIaポリペプチドまたはそのバリアントの活性は、細胞に基づくアッセイまたはインビボアッセイにおいても試験され得る。例えば、骨生成または骨破壊に関与する遺伝子の発現に対する変異型ActRIIaポリペプチドバリアントの効果が査定され得る。これは、必要に応じて、一つまたは複数の組換えActRIIaリガンドタンパク質(例えば、アクチビン)の存在下で実施され得、細胞が、ActRIIaポリペプチドおよび/またはそのバリアントを産生するよう、そして、任意で、ActRIIaリガンドを産生するようトランスフェクトされ得る。同様に、ActRIIaポリペプチドはマウスまたはその他の動物に投与され得、密度または体積のような一つまたは複数の骨特性が査定され得る。骨折の治癒速度も評価され得る。二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)は、動物における骨密度を査定するためのよく確立されている非侵襲的、定量的な技術である。ヒトにおいて、中枢DEXA系は、脊椎および骨盤における骨密度を評価するために使用され得る。これらは、全体の骨密度の最適な予測法である。末梢DEXA系は、例えば、手、手首、足首、および足の骨を含む末梢骨における骨密度を評価するために使用され得る。CATスキャンを含む伝統的なX線画像システムは、骨成長および骨折治癒を評価するために使用され得る。骨の機械的強度も評価され得る。
【0048】
天然に存在するActRIIaポリペプチドに比べて選択的な、または一般に増加した効力を有するコンビナトリアルに由来するバリアントが製造され得る。同様に、変異誘発は、対応する野生型ActRIIaポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有するバリアントを与えることができる。例えば、改変されたタンパク質は、未改変ActRIIaポリペプチドの破壊または不活化をもたらすタンパク質分解またはその他の細胞過程に対して、より安定に、またはより不安定にされ得る。そのようなバリアント、およびそれらをコードする遺伝子は、ActRIIaポリペプチドの半減期をモジュレートすることによりActRIIaポリペプチドレベルを改変するために利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的効果を与えることができ、患者体内の組換えActRIIaポリペプチドレベルのより厳密な制御を可能にすることができる。Fc融合タンパク質においては、タンパク質の半減期を改変するため、リンカー(もしあれば)および/またはFc部分において、変異が作成され得る。
【0049】
それぞれが潜在的ActRIIaポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーにより、コンビナトリアルライブラリーを作製する。例えば、潜在的ActRIIaポリペプチドヌクレオチド配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、またはより大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイ用に)発現され得るように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結し得る。
【0050】
潜在的相同体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製し得る、多くの方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成機で行い、次いでこの合成遺伝子を発現用の適当なベクターに連結することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成については、当技術分野で周知である(例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al., (1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam: Elsevier pp273-289;Itakura et al., (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al., (1984) Science 198:1056;Ike et al., (1983) Nucleic Acid Res. 11 :477を参照されたい)。他のタンパク質の定方向進化に、このような技法が使用されている(例えば、Scott et al., (1990) Science 249:386-390;Roberts et al., (1992) PNAS USA 89:2429-2433;Devlin et al., (1990) Science 249: 404-406;Cwirla et al., (1990) PNAS USA 87: 6378-6382;ならびに米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号を参照されたい)。
【0051】
または、他の形態の突然変異誘発法を利用して、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、例としてアラニンスキャン突然変異誘発法などを用いて(Ruf et al., (1994) Biochemistry 33:1565-1572;Wang et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:3095-3099;Balint et al., (1993) Gene 137:109-118;Grodberg et al., (1993) Eur. J. Biochem. 218:597-601;Nagashima et al., (1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892;Lowman et al., (1991) Biochemistry 30:10832-10838;およびCunningham et al., (1989) Science 244:1081-1085)、リンカースキャン突然変異誘発法により(Gustin et al., (1993) Virology 193:653-660;Brown et al., (1992) Mol. Cell Biol. 12:2644-2652;McKnight et al., (1982) Science 232:316);飽和突然変異誘発法により(Meyers et al., (1986) Science 232:613);PCR突然変異誘発法により(Leung et al., (1989) Method Cell Mol Biol 1:11-19);または化学的突然変異誘発法などを含むランダム突然変異誘発法により(Miller et al., (1992) A Short Course in Bacterial Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY;およびGreener et al., (1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)、ActRIIaポリペプチド変種を作製し、スクリーニングによりライブラリーから単離することができる。切断(生理活性)型のActRIIaポリペプチドを同定するのであれば、リンカースキャン突然変異誘発法が、特に組み合わせ設定において魅力的な方法である。
【0052】
当技術分野において、点突然変異および切断により作製したコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、およびさらには特定の性質を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための、多様な技法が周知である。このような技法は一般的に、ActRIIaポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発で作製した遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適応できる。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングに最も広汎に用いられている技法は、典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする段階、得られたベクターのライブラリーで適切な細胞を形質転換する段階、および、所望の活性を検出すれば検出された産物の遺伝子をコードするベクターを比較的容易に単離できるような条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させる段階を含む。好ましいアッセイには、アクチビン結合アッセイおよびアクチビン媒介性細胞シグナル伝達アッセイが含まれる。
【0053】
ある態様において、本発明のActRIIaポリペプチドは、ActRIIaポリペプチド中に天然に存在する翻訳後修飾に加えて、翻訳後修飾をさらに含み得る。そのような修飾には、これらに限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれる。結果として、改変ActRIIaポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの、非アミノ酸要素を含み得る。そのような非アミノ酸要素がActRIIaポリペプチドの機能性に及ぼす影響は、他のActRIIaポリペプチド変種に関して本明細書中に記載したように試験することができる。ActRIIaポリペプチドが、細胞内で新生型のActRIIaポリペプチドの切断によって産生される場合、翻訳後プロセシングはまた、タンパク質の正確な折りたたみおよび/または機能にも重要であり得る。異なる細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH-3T3、またはHEK293など)は、特定の細胞機構およびそのような翻訳後活性の特徴的な機構を有し、ActRIIaポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを確実にするよう選択され得る。
【0054】
ある局面において、ActRIIaポリペプチドの機能的変種または改変型は、ActRIIaポリペプチドの少なくとも一部および1つまたは複数の融合ドメインを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例には、非限定的に、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが含まれる。融合ドメインは、所望の特定を付与するように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインは、アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティー精製を目的とする場合には、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルト結合樹脂など、アフィニティークロマトグラフィーのための関連した充填剤を使用する。このような充填剤の多くは「キット」の形態で入手することができ、例えばPharmacia GST精製システム、および(HIS
6)融合パートナーと共に使用して有用であるQIAexpress(商標)システム(Qiagen)などがある。別の例として、融合ドメインは、ActRIIaポリペプチドの検出が容易になるよう選択され得る。そのような検出ドメインの例には、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、特異的抗体が入手可能な、通常短いペプチド配列である「エピトープタグ」が含まれる。特異的モノクローナル抗体が容易に入手できる周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘムアグルチニン(HA)、およびc-mycタグが含まれる。場合によっては、融合ドメインは、関連したプロテアーゼが融合タンパク質を部分消化し、そこから組換えタンパク質を遊離させることを可能にする、第Xa因子またはトロンビンなどのプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、遊離したタンパク質を、その後のクロマトグラフィー分離により融合ドメインから単離することができる。特定の好ましい態様において、ActRIIaポリペプチドは、インビボでActRIIaポリペプチドを安定化するドメイン(「安定化」ドメイン)に融合される。「安定化」とは、これが破壊の減少によるのか、腎臓による排除の減少によるのか、または他の薬物動態学的効果によるのかにかかわらず、血清半減期を延長させるいかなるものも意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範なタンパク質に対して所望の薬物動態学的特性を付与することが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンとの融合も所望の特性を付与し得る。選択され得る他の種類の融合ドメインには、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび(所望の通りに、骨成長または筋肉成長のさらなる促進などの、さらなる生物学的機能を付与する)機能的ドメインが含まれる。
【0055】
具体例として、本発明は、Fcドメインに融合された、ActRIIaの可溶性細胞外ドメインを含む、融合タンパク質を提供する(例えば、SEQ ID NO:6)。
【0056】
任意で、Fcドメインは、Asp-265、リジン322、およびAsn-434などの残基における1つまたは複数の変異を有する。ある場合において、これらの変異(例えば、Asp-265変異)の1つまたは複数を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、Fcγ受容体に結合する能力が低い。その他の場合において、これらの変異(例えば、Asn-434変異)の1つまたは複数を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が高い。
【0057】
融合タンパク質の異なる要素は、所望の機能性に合致する任意の様式で配列され得ることが理解される。例えば、ActRIIaポリペプチドは異種ドメインのC末端側に配置されてもよいし、または異種ドメインがActRIIaポリペプチドのC末端側に配置されてもよい。ActRIIaポリペプチドドメインと異種ドメインは融合タンパク質内で隣接する必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインのC末端もしくはN末端側に、またはそれらのドメインの間に含めることも可能である。
【0058】
ある態様において、本発明のActRIIaポリペプチドは、ActRIIaポリペプチドを安定化し得る1つまたは複数の修飾を含む。例えば、そのような修飾は、ActRIIaポリペプチドのインビトロ半減期を延長させる、ActRIIaポリペプチドの循環半減期を延長させる、またはActRIIaポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。そのような安定化修飾には、非限定的に、融合タンパク質(例えば、ActRIIaポリペプチドおよび安定化ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部分の改変(例えば、ActRIIaポリペプチドに対するグリコシル化部位の付加を含む)、および糖質部分の改変(例えば、ActRIIaポリペプチドからの糖質部分の除去を含む)が含まれる。融合タンパク質の場合、ActRIIaポリペプチドは、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化ドメインに融合される。本明細書で使用する「安定化ドメイン」という用語は、融合タンパク質の場合における融合ドメイン(例えば、Fc)を指すのみならず、糖質部分などの非タンパク質性修飾またはポリエチレングリコールなどの非タンパク質性ポリマーもまた含む。
【0059】
ある態様において、本発明は、他のタンパク質から単離された、またはさもなくば他のタンパク質を実質的に含まない、単離および/または精製型のActRIIaポリペプチドを提供する。ActRIIaポリペプチドは、一般に組み換え核酸による発現により産生される。
【0060】
3. ActRIIaポリペプチドをコードする核酸
ある局面において、本発明は、本明細書に開示する断片、機能的変種、および融合タンパク質をはじめとするActRIIaポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIaポリペプチド)のいずれかをコードする単離および/または組換え核酸を提供する。例えば、SEQ ID NO:4は天然のヒトActRIIa前駆体ポリペプチドをコードし、SEQ ID NO:5はプロセッシングされたActRIIaの細胞外ドメインをコードする。本核酸は、一本鎖であってもまたは二本鎖であってもよい。そのような核酸は、DNAまたはRNA分子であり得る。これらの核酸は、例えば、ActRIIaポリペプチドを作製する方法において、または直接的な治療物質として(例えば、遺伝子治療アプローチにおいて)使用され得る。
【0061】
ある局面において、ActRIIaポリペプチドをコードする本核酸は、SEQ ID NO:4または5の変種である核酸を含むことがさらに理解される。変種ヌクレオチド配列は、例えば対立遺伝子変種のような、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加、または欠失によって異なる配列を含む。
【0062】
ある態様において、本発明は、SEQ ID NO:4または5と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である単離または組換え核酸配列を提供する。当業者であれば、SEQ ID NO:4または5と相補的な核酸配列およびSEQ ID NO:4または5の変種もまた、本発明の範囲内に入ることを理解すると考えられる。さらなる態様において、本発明の核酸配列は、単離されても、組換えであっても、および/もしくは異種核酸配列と融合されても、またはDNAライブラリー中に存在してもよい。
【0063】
他の態様において、本発明の核酸はまた、SEQ ID NO:4もしくは5に示されるヌクレオチド配列に高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、SEQ ID NO:4もしくは5の相補配列、またはそれらの断片を含む。上記のように、当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件を変更できることを容易に理解すると考えられる。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件を変更できることを容易に理解すると考えられる。例えば、約45℃にて6.0 x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを行い、その後50℃にて2.0 x SSCで洗浄を行い得る。例えば、洗浄段階の塩濃度は、50℃における約2.0 x SSCという低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2 x SSCという高ストリンジェンシーまでの範囲で選択され得る。さらに、洗浄段階の温度は、室温、約22℃における低ストリンジェンシー条件から、約65℃における高ストリンジェンシー条件まで上げることができる。温度および塩の両方を変更することも可能であるし、またはその他の変数を変更して温度または塩濃度を一定に維持してもよい。1つの態様において、本発明は、室温における6 x SSCおよびその後の室温における2 x SSCでの洗浄という低ストリンジェンシー条件でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0064】
遺伝暗号の縮重により、SEQ ID NO:4または5に記載の核酸とは異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲内である。例えば、多くのアミノ酸は2つ以上のトリプレットにより指定される。同じアミノ酸を特定するコドン、または同義コドン(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに関して同義コドンである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響しない「サイレント」変異を生じ得る。しかし、本タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多型が、哺乳動物細胞間に存在すると考えられる。当業者は、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの約3〜5%まで)におけるこれらの変異が、自然の対立遺伝子変異に起因して、所与の種の個体間に存在し得ることを認識すると考えられる。任意の、および全てのそのようなヌクレオチド変異および生じるアミノ酸多型も、本発明の範囲内である。
【0065】
ある態様において、本発明の組換え核酸は、発現構築物内で1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列に機能的に連結され得る。制御ヌクレオチド配列は一般に、発現に使用する宿主細胞に適したものである。種々の宿主細胞に関して、多くの種類の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が当技術分野において公知である。典型的に、そのような1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列には、非限定的に、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたは活性化配列が含まれ得る。本発明では、当技術分野において公知である構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターが意図される。プロモーターは天然のプロモーターであっても、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターであってもよい。発現構築物はプラスミドなどのエピソーム上にあって細胞内に存在し得るか、または発現構築物は染色体内に挿入され得る。好ましい態様において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は当技術分野において周知であり、使用する宿主細胞によって異なる。
【0066】
本発明のある局面において、本核酸は、少なくとも1つの制御配列に機能的に連結されたActRIIaポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターとして提供される。制御配列は当技術分野において認識されており、ActRIIaポリペプチドの発現を指示するように選択される。したがって、制御配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、およびその他の発現調節エレメントを含む。例示的な制御配列は、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。例えば、これに機能的に連結された場合にDNA配列の発現を調節する多種多様な発現調節配列のいずれかを、これらのベクター中で使用して、ActRIIaポリペプチドをコードするDNA配列を発現させることができる。そのような有用な発現調節配列には、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、発現がT7 RNAポリメラーゼにより方向付けられるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α-接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、および原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を調節することが公知の他の配列、ならびにそれらの種々の組み合わせが含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、および/または発現が所望されるタンパク質の種類などの要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を調節する能力、およびベクターによってコードされる、抗生物質マーカーなどの任意の他のタンパク質の発現もまた考慮すべきである。
【0067】
本発明の組換え核酸は、クローン化遺伝子またはその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、トリ、昆虫、または哺乳動物)、またはその両方での発現に適したベクター中に連結することによって作製され得る。組換えActRIIaポリペプチドを産生させるための発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、大腸菌などの原核細胞における発現用の以下の種類のプラスミドが含まれる:pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、およびpUC由来プラスミド。
【0068】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を容易にするための原核生物配列、および真核細胞中で発現される1つまたは複数の真核生物転写単位の両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo、およびpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらベクターのいくつかは、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、pBR322などの細菌プラスミドの配列を用いて修飾される。または、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)などのウイルスの派生物を、真核細胞におけるタンパク質一過性発現に使用することができる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、下記の遺伝子治療送達系の説明において見出すことができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換で用いられる様々な方法が、当技術分野において周知である。原核細胞および真核細胞の両方に適した他の発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 3rd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)を参照されたい。場合によっては、バキュロウイルス発現系を使用して、組換えポリペプチドを発現させることが望ましいと考えられる。そのようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393、およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来ベクター(β-gal含有pBlueBac IIIなど)が含まれる。
【0069】
好ましい態様において、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)、およびpCI-neoベクター(Promega, Madison, Wisc.)などのベクターは、CHO細胞において本ActRIIaポリペプチドが産生されるように設計される。明らかなように、本遺伝子構築物を用いて、例えば精製を目的として融合タンパク質または変種タンパク質をはじめとするタンパク質を産生させるために、培養で増殖させた細胞中で本ActRIIaポリペプチドを発現させることができる。
【0070】
本開示はまた、本ActRIIaポリペプチドの1つまたは複数のコード配列(例えば、SEQ ID NO:4または5)を含む組換え遺伝子をトランスフェクションした宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってよい。例えば、本発明のActRIIaポリペプチドは、大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用する)、酵母、または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は当業者に周知である。
【0071】
従って、本発明は、さらに、本発明のActRIIaポリペプチドを作製する方法に関する。例えば、ActRIIaポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞が、ActRIIaポリペプチドの発現が起こることを可能にする適切な条件の下で培養され得る。ActRIIaポリペプチドが分泌され、ActRIIaポリペプチドを含有している細胞および培地の混合物から単離され得る。または、ActRIIaポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され、細胞が採集され、溶解させられ、タンパク質が単離されるかもしれない。細胞培養物は宿主細胞、培地、およびその他の副産物を含んでいる。細胞培養に適している培地は当技術分野において周知である。本発明のActRIIaポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、限外濾過、電気泳動、ActRIIaポリペプチドの特定のエピトープに対して特異的な抗体を用いたイムノアフィニティ精製、およびActRIIaポリペプチドと融合したドメインと結合する薬剤を用いたアフィニティ精製(例えば、プロテインAカラムがActRIIa-Fc融合体を精製するために使用され得る)を含む、タンパク質を精製するための当技術分野において公知の技術を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはその両方から単離され得る。好ましい態様において、ActRIIaポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含有している融合タンパク質である。好ましい態様において、精製は、例えば、以下のもののうちの三つ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィ工程により達成される:プロテインAクロマトグラフィ、Qセファロースクロマトグラフィ、フェニルセファロースクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了し得る。本明細書において証明されるように、ActRIIa-hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィにより決定されるような>95%の純度およびSDS PAGEにより決定されるような>98%の純度にまで精製された。このレベルの純度は、マウスにおける骨に対する望ましい効果、ならびにマウス、ラット、および非ヒト霊長類における許容される安全性プロファイルを達成するのに十分であった。
【0072】
別の態様においては、組換えActRIIaポリペプチドの所望の部分のN末端における、ポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子によって、Ni
2+金属樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製が可能になる。その後、エンテロキナーゼによる処理で精製リーダー配列を除去し、精製されたActRIIaポリペプチドを提供することができる(例えば、Hochuli et al., (1987) J. Chromatography 411:177;およびJanknecht et al., PNAS USA 88:8972を参照されたい)。
【0073】
融合遺伝子を作製する技法は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の連結は、連結のための平滑末端または付着末端、適切な末端をもたらすための制限酵素消化、必要に応じた付着末端の充填平滑化、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素による連結を使用する、従来の技法に従って行われる。別の態様では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技法により合成され得る。または、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突出部を生じるアンカープライマーを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行うことができ、その後アニーリングさせて、キメラ遺伝子配列を作製することもできる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。
【0074】
4. 代替的なアクチビンおよびActRIIaのアンタゴニスト
本明細書に提示されたデータは、アクチビン-ActRIIaシグナル伝達のアンタゴニストが骨成長および骨石灰化を促進するために使用され得ることを証明する。可溶性ActRIIaポリペプチド、特に、ActrIIa-Fcが好ましいアンタゴニストであり、そのようなアンタゴニストはアクチビンアンタゴニズム以外の機序を通して骨に影響を与えるかもしれないが(例えば、アクチビン阻害は、ある薬剤の、TGF-βスーパーファミリーのその他のメンバーをおそらく含むある範囲の分子の活性を阻害する傾向の指標となり得、そのような集合的な阻害は骨に対する所望の効果に通じるかもしれない)、抗アクチビン(例えば、A、B、C、またはE)抗体、抗ActRIIa抗体、ActRIIaの産生を阻害するアンチセンス、RNAi、もしくはリボザイム核酸、およびアクチビンまたはActRIIaのその他の阻害剤、特に、アクチビン-ActRIIa結合を妨害するものを含む、その他の型のアクチビン-ActRIIaアンタゴニストも有用であると予想される。
【0075】
ActRIIaポリペプチド、(例えば、可溶性ActRIIaポリペプチド)と特異的に反応性であり、ActRIIaポリペプチドと競争的にリガンドに結合するか、またはActRIIaにより媒介されるシグナル伝達を阻害する抗体が、ActRIIaポリペプチド活性のアンタゴニストとして使用され得る。同様に、アクチビンAポリペプチドと特異的に反応性であり、ActRIIa結合を妨害する抗体が、アンタゴニストとして使用され得る。
【0076】
ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドから得られた免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を標準的な手順により作製することができる(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual ed. by Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press: 1988)を参照されたい)。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳動物を、ActRIIaポリペプチドの免疫原性形態、抗体応答を誘発し得る抗原性断片、または融合タンパク質で免疫化し得る。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与する技法として、担体との結合または当技術分野で周知の他の技法が含まれる。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体力価を検出することによりモニターし得る。その免疫原を抗原とし、標準的なELISA法または他の免疫測定法を用いることで、抗体レベルを評価し得る。
【0077】
ActRIIaポリペプチドの抗原性調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、必要に応じて、血清からポリクローナル抗体を単離することができる。モノクローナル抗体を作製するには、免疫した動物から抗体産生細胞(リンパ球)を回収し、標準的な体細胞融合手順により骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を創出し得る。このような技法は当技術分野で周知であり、これには、例えばハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein, (1975) Nature, 256: 495-497により最初に開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbar et al., (1983) Immunology Tody, 4: 72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV-ハイブリドーマ技法(Cole et al., (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. pp. 77-96)が含まれる。ハイブリドーマ細胞は、ActRIIaポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、このようなハイブリドーマ細胞を含む培養物からモノクローナル抗体を単離することができる。
【0078】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、本ポリペプチドとやはり特異的に反応するその断片を包含することを意図している。抗体は慣用的技法を用いて断片化することができ、それらの断片を、抗体全体について上記と同様に有用性に関してスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)
2断片は、抗体をペプシンで処理することにより生成することができる。得られたF(ab)
2断片をジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab断片を生成することができる。本発明の抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域によって付与されるActRIIaまたはアクチビンポリペプチドに対する親和性を有する、二重特異性、一本鎖、キメラ、ヒト化、および完全ヒト分子を包含することをさらに意図している。抗体は、これに結合されて検出され得る標識(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であってよい)をさらに含み得る。
【0079】
ある種の態様において、抗体は組換え抗体である。この用語には、CDRグラフト抗体またはキメラ抗体、ライブラリーから選択された抗体ドメインから組み立てられたヒトまたはその他の抗体、単鎖抗体、および単一ドメイン抗体(例えば、ヒトV
Hタンパク質またはラクだV
HHタンパク質)を含む、一部、分子生物学の技術により製造された任意の抗体が包含される。ある種の態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、ある種の態様において、本発明は、新規の抗体を製造するための利用可能な方法を作成する。例えば、ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を製造する方法は、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な量の抗原ポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与すること、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を入手し、抗体産生ハイブリドーマを入手するため抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させること、および抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するため、抗体産生ハイブリドーマを試験することを含み得る。入手された後、ハイブリドーマは、細胞培養物中で、任意で、ハイブリドーマに由来する細胞が抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するような培養条件で、繁殖させられ得る。モノクローナル抗体は、細胞培養物から精製され得る。
【0080】
抗体に関して用いる場合の形容詞「〜に特異的に反応する」は、当技術分野において一般的に理解されているように、抗体が、関心対象の抗原(例えば、ActRIIaポリペプチド)と関心対象以外の他の抗原との間で十分に選択的であること、抗体が、少なくとも、特定の種類の生物試料中の関心対象の抗原の存在の検出に有用であることを意味することを意図している。治療用途など、この抗体を用いる特定の方法においては、より高度の結合特異性が望ましいと考えられる。モノクローナル抗体は、一般に(ポリクローナル抗体と比較して)、所望の抗原と交差反応性ポリペプチドとを効果的に識別する一層強い傾向を有する。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗体の抗原に対する親和性である。所望の特異性が種々の親和性の範囲で達成され得るが、一般に好ましい抗体は、約10
-6、10
-7、10
-8、10
-9、またはそれ未満の親和性(解離定数)を有する。アクチビンとActRIIaとの間の極めて強い結合を鑑みると、抗アクチビン抗体または抗ActRIIa抗体の中和は、一般に10
-10以下の解離定数を有することが予想される。
【0081】
加えて、所望の抗体を同定するために抗体をスクリーニングするのに用いる技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を溶液中の抗原と結合させるために用いるのであれば、溶液結合を試験することが望ましいと考えられる。抗体および抗原間の相互作用を試験して、特定の所望の抗体を同定するためには、多様な技法が利用可能である。そのような技法には、ELISA法、表面プラズモン共鳴結合アッセイ法(例えば、Biacore(商標)結合アッセイ法、Biacore AB, Uppsala, Sweden)、サンドイッチアッセイ法(例えば、IGEN International, Inc., Gaithersburg, Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウエスタンブロット法、免疫沈降アッセイ法、および免疫組織化学法が含まれる。
【0082】
アクチビンまたはActRIIaのアンタゴニストである核酸化合物のカテゴリーの例には、アンチセンス核酸、RNAi構築物、および触媒性核酸構築物が含まれる。核酸化合物は、一本鎖であってもよいし、または二本鎖であってもよい。二本鎖化合物は、鎖の一方または他方が一本鎖である突出または非相補性の領域を含んでいてもよい。一本鎖化合物は、化合物が、二重ヘリックス構造の領域を含む、いわゆる「ヘアピン」または「ステムループ」構造を形成することを意味する、自己相補性領域を含んでいてもよい。核酸化合物は、全長ActRIIa核酸配列またはアクチビンβAもしくはアクチビンβB核酸配列の1000ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、250ヌクレオチド以下、100ヌクレオチド以下、または50、35、30、25、22、20、もしくは18ヌクレオチド以下からなる領域と相補的なヌクレオチド配列を含み得る。相補性領域は、好ましくは、少なくとも8ヌクレオチドであり、任意で、少なくとも10または少なくとも15ヌクレオチド、任意で、15〜25ヌクレオチドであろう。相補性領域は、コーディング配列部分のような、標的転写物のイントロン、コーディング配列、または非コーディング配列の内部にあり得る。一般に、核酸化合物は、約8〜約500ヌクレオチドまたは塩基対長という長さを有し、任意で、長さは約14〜約50ヌクレオチドであろう。核酸は、DNA(特に、アンチセンスとして使用するため)、RNA、またはRNA:DNAハイブリッドであり得る。いずれの鎖も、DNAおよびRNAの混合物を含んでいてもよく、DNAまたはRNAのいずれかとして容易に分類され得ない修飾型を含んでいてもよい。同様に、二本鎖化合物はDNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAであり得、いずれかの鎖が、DNAおよびRNAの混合物を含んでいてもよく、DNAまたはRNAのいずれかとして容易に分類され得ない修飾型を含んでいてもよい。核酸化合物は、骨格(ヌクレオチド間結合を含む天然核酸における糖リン酸部分)または塩基部分(天然核酸のプリン部分もしくはピリミジン部分)への一つまたは複数の修飾を含む、多様な修飾のうちのいずれかを含んでいてもよい。アンチセンス核酸化合物は、好ましくは、約15〜約30ヌクレオチドの長さを有し、血清における安定性、細胞における安定性、または経口送達される化合物の場合には胃、吸入される化合物については肺のような、化合物が送達される可能性が高い場所における安定性のような特徴を改良するために一つまたは複数の修飾をしばしば含有しているであろう。RNAi構築物の場合、標的転写物に相補的な鎖は、一般に、RNAまたはその修飾であろう。他方の鎖はRNA、DNA、またはその他の変種であり得る。二本鎖または一本鎖の「ヘアピン」RNAi構築物の二重鎖部分は、好ましくは、18〜40ヌクレオチド長という長さを有し、任意で、それがダイサー基質として作用する限り、約21〜23ヌクレオチド長という長さを有するであろう。触媒性または酵素性の核酸は、リボザイムまたはDNA酵素であり得、修飾された型を含有していてもよい。核酸化合物は、生理学的条件下で、かつナンセンスまたはセンスの制御がほとんどまたは全く効果を有しないような濃度で、細胞と接触させられた場合、約50%、75%、90%、またはそれ以上、標的の発現を阻害し得る。核酸化合物の効果を試験するための好ましい濃度は、1、5、および10mMである。核酸化合物は、例えば、骨成長および石灰化に対する効果についても試験され得る。
【0083】
5. スクリーニングアッセイ法
ある局面において、本発明は、アクチビン-ActRIIaシグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(物質)を同定するためのActRIIaポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIaポリペプチド)およびアクチビンポリペプチドの使用に関する。このスクリーニングを通じて同定される化合物は、インビトロにおいて骨の成長または石灰化を調節する能力を評価するために、試験することができる。任意で、これらの化合物は、インビボにおいて組織増殖を調節する能力を評価するために、動物モデルでさらに試験することができる。
【0084】
アクチビンおよびActRIIaポリペプチドを標的とすることで組織増殖を調節する治療剤をスクリーニングするための多くのアプローチが存在する。ある態様においては、化合物のハイスループットスクリーニングを行い、骨に及ぼすアクチビン媒介性またはActRIIa媒介性効果を撹乱する物質を同定することができる。ある態様においては、アッセイを行い、アクチビンに対するActRIIaポリペプチドの結合を特異的に阻害するかまたは減少させる化合物をスクリーニングおよび同定する。または、アッセイを行って、アクチビンに対するActRIIaポリペプチドの結合を増強する化合物を同定し得る。さらなる態様において、化合物は、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドと相互作用する能力により同定され得る。
【0085】
様々なアッセイ形式が十分であり、本開示に照らして、本明細書に明確に記載していないものであっても当業者により理解されると考えられる。本明細書に記載するように、本発明の試験化合物(物質)は、任意のコンビナトリアル化学法によって作製され得る。または、本化合物は、インビボまたはインビトロで合成される天然生体分子であってよい。組織増殖の調節因子として作用する能力について試験しようとする化合物(物質)は、例えば、細菌、酵母、植物、または他の生物によって産生され得るか(例えば、天然物)、化学的に生成され得るか(例えば、ペプチド模倣体を含む小分子)、または組換えによって産生され得る。本発明の意図する試験化合物には、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、糖類、ホルモン、および核酸分子が含まれる。ある態様において、試験物質は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する小有機分子である。
【0086】
本発明の試験化合物は、単一の分離した実体として提供され得るか、またはコンビナトリアル化学によって作製されるような、より複雑なライブラリーの形態で提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテル、およびその他の種類の有機化合物を含み得る。試験化合物の試験系への提示は、単離形態であってもよいし、または特に最初のスクリーニング段階では化合物の混合物としてでもよい。任意で、化合物は他の化合物で任意で誘導体化され、化合物の単離を容易にする誘導体基を含み得る。誘導体基の非限定的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化架橋剤、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0087】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムでは、所与の期間内に調査する化合物数を最大限にするために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製または半精製タンパク質を用いて導かれ得るような無細胞系で行うアッセイ法は、試験化合物によって媒介される分子標的の変化の迅速な生成および比較的容易な検出が可能になるよう作製できるという点で、「初期」スクリーニングとして好ましい場合が多い。さらに、試験化合物の細胞毒性または生物学的利用能の影響は一般にインビトロ系では無視することができ、その代わりアッセイは、ActRIIaポリペプチドとアクチビンとの間の結合親和性の変化として示され得る、分子標的に及ぼす薬物の効果に主に焦点が当てられ得る。
【0088】
単なる例であるが、本発明の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心対象の化合物を、通常アクチビンに結合し得る単離および精製されたActRIIaポリペプチドと接触させる。次いで、化合物およびActRIIaポリペプチドの混合物に対して、ActRIIaリガンドを含む組成物を添加する。ActRIIa/アクチビン複合体の検出および定量化により、ActRIIaポリペプチドとアクチビンとの間の複合体形成を阻害する(または増強する)際の化合物の有効性を決定する手段が提供される。化合物の有効性は、様々な濃度の試験化合物を用いて得られるデータから用量反応曲線を作製することにより評価し得る。さらに、対照アッセイを同様に行って、比較のための基準を提供し得る。例えば、対照アッセイでは、単離および精製されたアクチビンを、ActRIIaポリペプチドを含む組成物に添加し、ActRIIa/アクチビン複合体の形成を試験化合物の非存在下で定量化する。一般に、反応物を混合し得る順序は変更でき、また同時に混合できることが理解される。さらに、精製タンパク質の代わりに細胞抽出物および溶解物を使用して、適切な無細胞アッセイ系を提供することも可能である。
【0089】
ActRIIaポリペプチドとアクチビンとの間の複合体形成は、様々な技法により検出することができる。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、放射標識(例えば、
32P、
35S、
14C、または
3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、または酵素標識したActRIIaポリペプチドまたはアクチビンなどの、検出可能に標識したタンパク質を用いて、免疫測定法によりまたはクロマトグラフィー検出により定量化することができる。
【0090】
ある態様において、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を直接または間接的に測定する際の、蛍光偏光アッセイ法および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ法の使用を意図する。さらに、光導波路(PCT出願国際公開公報第96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面荷電センサー、および表面力センサーに基づくようなその他の様式の検出も、本発明の多くの態様と適合する。
【0091】
さらに、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を破壊するかまたは増強する物質を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ法」としても公知の相互作用捕捉アッセイ法の使用を意図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos et al. (1993) Cell 72:223-232;Madura et al. (1993) J Biol Chem 268:12046-12054;Bartel et al. (1993) Biotechniques 14:920-924;およびIwabuchi et al. (1993) Oncogene 8:1693-1696を参照されたい)。特定の態様において、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、小分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を意図する。例えば、Vidal and Legrain, (1999) Nucleic Acids Res 27:919-29;Vidal and Legrain, (1999) Trends Biotechnol 17:374-81;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照されたい。
【0092】
ある態様において、本化合物は、本発明のActRIIaまたはアクチビンポリペプチドと相互作用する能力により同定される。化合物とActRII aまたはアクチビンポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合であってもまたは非共有結合であってもよい。例えば、そのような相互作用は、光架橋、放射標識リガンド結合、およびアフィニティークロマトグラフィーをはじめとするインビトロの生化学的方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る(Jakoby WB et al., 1974, Methods in Enzymology 46: 1)。ある場合において、化合物は、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドに結合する化合物を検出するアッセイ法などの、ある機構に基づくアッセイ法でスクリーニングされ得る。これは固相または流体相結合事象を含み得る。または、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドをコードする遺伝子をレポーターシステム(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)と共に細胞にトランスフェクションし、好ましくはハイスループットスクリーニングによりライブラリーに対して、またはライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングすることができる。例えば自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ法など、他の機構に基づく結合アッセイ法を用いることも可能である。結合アッセイは、ウェル、ビーズ、もしくはチップに固定されるか、または固定化抗体によって捕獲されるか、またはキャピラリー電気泳動によって分離された標的を用いて行うことができる。結合した化合物は通常、比色または蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
【0093】
ある局面において、本発明は、骨形成を調節する(促進または阻害する)および骨量を増大させる方法および物質を提供する。したがって、同定される任意の化合物を、インビトロまたはインビボにおいて細胞または組織全体で試験して、骨の成長または石灰化を調節する能力を確認することができる。当技術分野において周知である種々の方法を、この目的に使用することができる。
【0094】
例えば、ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドまたは試験化合物が骨または軟骨の成長に及ぼす影響は、細胞に基づくアッセイ法でMsx2の誘導、または骨芽前駆細胞の骨芽細胞への分化を測定することによって決定され得る(例えば、Daluiski et al., Nat. Genet. 2001, 27(1):84-8;Hino et al., Front Biosci. 2004, 9:1520-9を参照されたい)。細胞に基づくアッセイ法の別の例は、間葉系前駆細胞および骨芽細胞において、本ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドおよび試験化合物の骨形成活性を解析する段階を含む。例えば、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドを発現する組換えアデノウイルスを構築して、多能性間葉系前駆細胞C3H10T1/2細胞、前骨芽C2C12細胞、および骨芽TE-85細胞を感染させた。次いで、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、および基質石灰化の誘導を測定することにより、骨形成活性を決定する(例えば、Cheng et al., J bone Joint Surg Am. 2003, 85-A(8):1544-52を参照されたい)。
【0095】
本発明は、骨または軟骨の成長を測定するためのインビボアッセイも企図する。例えば、Namkung-Matthai et al., Bone, 28:80-86 (2001)は、骨折後の初期の骨修復が研究されるラット骨粗鬆症モデルを開示している。Kubo et al., Steroid Biochemistry & Molecular Biology, 68:197-202 (1999)も、骨折後の後期の骨修復が研究されるラット骨粗鬆症モデルを開示している。Andersson et al., J. Endocrinol. 170:529-537は、マウスを卵巣切除し、それによりマウスが実質的な骨塩量および骨塩密度を失い、骨梁骨が骨塩密度のほぼ50%を失う、マウス骨粗鬆症モデルを記載している。骨密度は、副甲状腺ホルモンのような因子の投与により卵巣切除マウスにおいて増加し得る。ある種の局面において、本発明は、当技術分野において公知の骨折治癒アッセイを利用する。これらのアッセイには、骨折技術、組織学的分析、および生体力学的分析が含まれ、例えば、米国特許第6,521,750号(これは、骨折を引き起こすため、そして骨折の程度および修復過程を測定するための実験プロトコルの開示のため、参照により完全に組み入れられる)に記載されている。
【0096】
6. 例示的な治療的使用
ある種の態様において、本発明のアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト(例えば、ActRIIaポリペプチド)は、例えば、破損を通したものであってもよいし、損失を通したものであってもよいし、または脱石灰化を通したものであってもよい骨傷害に関連している疾患または状態を処置または防止するために使用され得る。本明細書において証明されるように、アクチビン-ActRIIaアンタゴニスト、特に、ActRIIa-Fc構築物は、癌に関連した骨損失の処置または防止において有効である。ある種の態様において、本発明は、治療的に有効な量のアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト、特に、ActRIIaポリペプチドを個体に投与することを通して、その必要のある個体における骨傷害を処置または防止する方法を提供する。ある種の態様において、本発明は、治療的に有効な量のアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト、特に、ActRIIaポリペプチドを個体に投与することを通して、その必要のある個体における骨成長または石灰化を促進する方法を提供する。これらの方法は、好ましくは、動物、より好ましくはヒトの治療的および予防的な処置を目標としている。ある種の態様において、本開示は、低い骨塩密度または減少した骨強度に関連した障害の処置のためのアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト(特に、可溶性ActRIIaポリペプチドおよびアクチビンまたはActRIIaを標的とする中和抗体)の使用を提供する。
【0097】
本明細書において使用されるように、障害または状態を「防止する」治療薬とは、統計的な試料において、未処置の対照試料に比べて処置された試料における障害もしくは状態の発生を低下させるか、または未処置の対照試料に比べて障害もしくは状態の開始を遅延させるか、またはそれらの一つもしくは複数の症状の重度を低下させる化合物をさす。「処置する」という用語は、本明細書において使用されるように、指定された状態の予防、または確立後の状態の寛解もしくは排除を含む。いずれの場合にも、防止または処置は、医師により提供される診断、および治療剤の投与の意図された結果において識別され得る。
【0098】
本開示は、骨および/もしくは軟骨形成を誘導する、骨減少を防止する、骨石灰化を増大させる、または骨の脱石灰化を防止する方法を提供する。例えば、本アクチビン-ActRIIaアンタゴニストは、ヒトおよびその他の動物において骨粗鬆症を治療する、ならびに骨折および軟骨欠損を治癒する上で用途を有する。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドは、骨粗鬆症の発症に対する保護対策として、無症候性低骨密度と診断される患者において有用であり得る。
【0099】
1つの特定の態様において、本発明の方法および組成物は、ヒトおよびその他の動物における骨折および軟骨欠損の治癒において医学的有用性を見出し得る。本方法および組成物はまた、閉鎖骨折および開放骨折の減少において、ならびにまた人工関節の定着の改善において予防的用途を有し得る。骨形成剤により誘導される新規骨形成は、先天性の、外傷によって誘発される、または腫瘍切除によって誘発される頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、また美容整形手術にも有用である。ある場合において、本アクチビン-ActRIIaアンタゴニストは、骨形成細胞を誘引する環境を提供し得、骨形成細胞の増殖を促進し得、または骨形成細胞の前駆細胞の分化を誘導し得る。本発明のアクチビン-ActRIIaアンタゴニストはまた、骨粗鬆症の治療に有用であり得る。
【0100】
本発明の方法および組成物は、骨粗鬆症(二次性骨粗鬆症を含む)、副甲状腺機能亢進、クッシング病、パジェット病、甲状腺中毒症、慢性下痢状態もしくは吸収障害、尿細管性アシドーシス、または神経性食欲不振症のような、骨損失を特徴とするか、または骨損失を引き起こす状態に適用され得る。
【0101】
骨粗鬆症は、様々な因子により引き起こされ得るか、または様々な因子に関連し得る。女性であること、特に、閉経後の女性であること、低体重を有すること、および座位の多い生活様式を送ることは、全て、骨粗鬆症(骨折リスクに通じる骨塩密度の損失)のリスクファクターである。以下のプロファイルのいずれかを有する者は、ActRIIaアンタゴニストによる処置の候補となり得る:エストロゲンまたはその他のホルモン補充治療を受けていない閉経後の女性;腰部骨折または喫煙の個人歴または母系歴を有する者;高身長(5フィート7インチ超)であるかまたは痩せ形(125ポンド未満)である閉経後の女性;骨損失に関連した臨床症状を有する男性;Prednisone(商標)のような副腎皮質ステロイド、Dilantin(商標)およびある種のバルビツール酸のような様々な抗痙攣薬物治療、または高用量甲状腺補充薬を含む、骨損失を引き起こすことが公知の薬物治療を使用している者;1型糖尿病、肝疾患、腎疾患、または骨粗鬆症の家族歴を有する者;高い骨代謝回転(例えば、尿試料中の過剰のコラーゲン)を有する者;甲状腺機能亢進症のような甲状腺状態を有する者;ごく軽度の外傷の後に骨折を経験した者;脊椎骨折のX線証拠または骨粗鬆症のその他の兆候を有したことがある者。
【0102】
上述のように、骨粗鬆症は、もう一つの障害に関連した状態として、またはある種の薬物治療の使用からも起こり得る。薬物またはもう一つの医学的状態に起因する骨粗鬆症は、二次性骨粗鬆症として公知である。クッシング病として公知の状態においては、身体により産生された過剰量のコルチゾールが、骨粗鬆症および骨折をもたらす。二次性骨粗鬆症に関連した最も一般的な薬物治療は、副腎により天然に産生されるホルモン、コルチゾールと同様に作用する薬物のクラスである副腎皮質ステロイドである。(甲状腺により産生される)適度のレベルの甲状腺ホルモンは、骨格の発達に必要とされるが、過剰の甲状腺ホルモンは次第に骨量を減少させることがある。アルミニウムを含有している制酸剤は、腎臓の問題を有する者、特に、透析を受けている者により高用量で摂取された場合、骨損失に通じることがある。二次性骨粗鬆症を引き起こし得るその他の薬物治療には、発作を防止するために使用されるフェニトイン(Dilantin)およびバルビツール酸;いくつかの型の関節炎、癌、および免疫障害のための薬物であるメトトレキサート(Rheumatrex、Immunex、Folex PFS);いくつかの自己免疫疾患を処置するため、そして臓器移植患者における免疫系を抑制するために使用される薬物であるシクロスポリン(Sandimmune、Neoral);前立腺癌および子宮内膜症を処置するために使用される黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(Lupron, Zoladex);抗凝血薬物治療であるヘパリン(Calciparine、Liquaemin);ならびに高コレステロールを処置するために使用されるコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)が含まれる。癌療法に起因する骨損失は、広範に認識されており、癌治療誘導骨損失(CTIBL)と呼ばれる。骨転移は、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストによる処置により修正され得る骨内の空洞を作出することがある。
【0103】
好ましい態様において、本明細書に開示されたアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト、特に、可溶性ActRIIaは、癌患者において使用され得る。ある種の腫瘍(例えば、前立腺、乳房、多発性骨髄腫、または副甲状腺機能亢進を引き起こす任意の腫瘍)を有する患者は、腫瘍誘導骨損失のみならず、骨転移および治療剤による骨損失の高いリスクを有する。そのような患者は、骨損失または骨転移の証拠がない場合ですらアクチビン-ActRIIaアンタゴニストにより処置され得る。患者は、骨損失または骨転移の証拠についてモニタリングされ、指標がリスクの増加を示唆した場合に、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストで処置され得る。一般に、DEXAスキャンが骨密度の変化を査定するために利用され、骨リモデリングの指標が骨転移の可能性を査定するために使用され得る。血清マーカーがモニタリングされ得る。骨特異アルカリホスファターゼ(BSAP)は、骨芽細胞に存在する酵素である。BSAPの血中レベルは、骨転移および骨リモデリングの増加をもたらすその他の状態を有する患者において増加する。オステオカルシンおよびプロコラーゲンのペプチドも骨形成および骨転移に関連している。BSAPの増加は、前立腺癌により引き起こされた骨転移を有する患者において検出され、比較的程度は低いが、乳癌からの骨転移においても検出されている。骨形成タンパク質7(BMP-7)レベルは、骨に転移した前立腺癌において高いが、膀胱癌、皮膚癌、肝臓癌、または肺癌による骨転移においては高くない。I型カルボキシ末端テロペプチド(ICTP)は、骨の吸収の間に形成されるコラーゲンに見出される架橋である。骨は絶えず分解され再形成されているため、ICTPは全身に見出されるであろう。しかしながら、骨転移の部位において、そのレベルは正常な骨の区域よりも有意に高くなるであろう。ICTPは、前立腺癌、肺癌、および乳癌による骨転移において高レベルに見出される。もう一つのコラーゲン架橋、I型N末端テロペプチド(NTx)は、骨代謝回転の間にICTPと共に産生される。NTxの量は、肺癌、前立腺癌、および乳癌を含む多くの異なる型の癌により引き起こされた骨転移において増加する。また、NTxのレベルは骨転移の進行により増加する。従って、このマーカーは、転移を検出するためにも、疾患の程度を測定するためにも使用され得る。吸収のその他のマーカーには、ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンが含まれる。吸収マーカーまたは骨転移マーカーの増加は、患者におけるアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト治療の必要性を示す。
【0104】
アクチビン-ActRIIaアンタゴニストは、その他の薬学的薬剤と共同投与され得る。共同投与は、単一の共同製剤の投与により、同時投与により、または別々の時点での投与により達成され得る。アクチビン-ActRIIaアンタゴニストは、他の骨活性剤と共に投与された場合、特に有利であるかもしれない。患者は、共同で、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストを受容し、カルシウム補助剤、ビタミンD、適切な運動、および/または、いくつかの場合、その他の薬物治療を摂取することから利益を得るかもしれない。その他の薬物治療の例には、ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネート、およびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、副甲状腺ホルモン、ならびにラロキシフェンが含まれる。ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネート、およびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、ならびにラロキシフェンは、骨リモデリングサイクルに影響を与え、抗吸収薬物治療として分類される。骨リモデリングは、骨吸収および骨形成という二つの別個の段階からなる。抗吸収薬物治療は、骨リモデリングサイクルの骨吸収部分を遅くするか、または中止するが、サイクルの骨成形部分を遅くすることはない。その結果として、新たな形成が骨吸収より大きな速度で継続し、骨密度が次第に増加し得る。副甲状腺ホルモンの一つの型、テリパラチドは、骨リモデリングサイクルにおける骨形成の速度を増加させる。アレンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の防止(1日5mgまたは週1回35mg)および処置(1日10mgまたは週1回70mg)の両方のために承認されている。アレンドロネートは、骨損失を低下させ、骨密度を増加させ、脊椎、手首、および腰部の骨折のリスクを低下させる。アレンドロネートは、グルココルチコイド(即ち、プレドニゾンおよびコルチゾン)の長期使用の結果としての男性および女性におけるグルココルチコイド誘導骨粗鬆症の処置のため、そして男性における骨粗鬆症の処置のためにも承認されている。アレンドロネート+ビタミンDは、閉経後の女性における骨粗鬆症の処置のため(週1回70mg+ビタミンD)、そして骨粗鬆症を有する男性において骨量を改善するための処置のために承認されている。イバンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の防止および処置のために承認されている。月1回の錠剤(150mg)として摂取されるイバンドロネートは、毎月同一の日に摂取されるべきである。イバンドロネートは、骨損失を低下させ、骨密度を増加させ、脊椎骨折のリスクを低下させる。リセドロネートは、閉経後骨粗鬆症の防止および処置のために承認されている。毎日(5mg用量)または週1回(35mg用量またはカルシウムと共に35mg用量)摂取されるリセドロネートは、骨損失を遅くし、骨密度を増加させ、脊椎および非脊椎の骨折のリスクを低下させる。リセドロネートは、グルココルチコイド(即ち、プレドニゾンまたはコルチゾン)の長期使用に起因するグルココルチコイド誘導骨粗鬆症を防止および/または処置するための男性および女性による使用のために承認されている。カルシトニンは、カルシウム調節および骨代謝に関与している天然に存在するホルモンである。閉経後5年を超えた女性において、カルシトニンは骨損失を遅くし、脊髄の骨密度を増加させ、骨折に関連した疼痛を軽減し得る。カルシトニンは、脊髄骨折のリスクを低下させる。カルシトニンは、注射剤(毎日50〜100IU)または点鼻剤(毎日200IU)として入手可能である。エストロゲン治療(ET)/ホルモン治療(HT)は、骨粗鬆症の防止のために承認されている。ETは、骨損失を低下させ、脊椎および腰部の両方において骨密度を増加させ、閉経後の女性における腰部および脊髄の骨折のリスクを低下させることが示されている。ETは、最も一般的には、毎日およそ0.3mgの低用量または毎日0.625mgの標準用量を送達する錠剤または皮膚貼付剤の形態で投与され、70歳以降に開始された場合ですら有効である。エストロゲンは、単独で摂取された場合、女性の子宮裏打ちの癌(子宮内膜癌)の発症リスクを増加させることがある。このリスクを排除するため、医療提供者は、完全な子宮を有する女性にはエストロゲンと組み合わせてホルモン、プロゲスチンを処方する(ホルモン補充療法またはHT)。ET/HTは、閉経症状を軽減し、骨の健康に対する有益な効果を有することが示されている。副作用には、膣出血、乳房圧痛、気分障害、および胆嚢疾患が含まれ得る。ラロキシフェン、1日60mgは、閉経後骨粗鬆症の防止および処置のために承認されている。それは、潜在的な短所なしにエストロゲンの有益な効果を提供するために開発された選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる薬物のクラスに属する。ラロキシフェンは、骨量を増加させ、脊椎骨折のリスクを低下させる。ラロキシフェンが腰部およびその他の非脊椎の骨折のリスクを低下させることを証明するデータは、未だ入手されていない。副甲状腺ホルモンの一つの型、テリパラチドは、閉経後の女性および骨折の高いリスクを有する男性における骨粗鬆症の処置のために承認されている。この薬物治療は、新たな骨形成を刺激し、骨塩密度を有意に増加させる。閉経後の女性において、脊椎、腰部、足、肋骨、および手首における骨折低下が認められた。男性においては、骨折低下は脊椎において認められたが、その他の部位での骨折低下を評価するデータは十分に存在しなかった。テリパラチドは最長24ヶ月、毎日の注射として自己投与される。
【0105】
7. 薬学的組成物
ある種の態様において、本発明のアクチビン-ActRIIaアンタゴニスト(例えば、ActRIIaポリペプチド)は、薬学的に許容される担体を用いて製剤化される。例えば、ActRIIaポリペプチドは、単独で、または薬学的製剤(治療用組成物)の成分として投与され得る。本発明の化合物は、ヒト医学または獣医学において使用するための任意の便利な方式での投与のために製剤化され得る。
【0106】
ある種の態様において、本発明の治療法は、組成物の全身投与またはインプラントもしくは装置としての局所投与を含む。投与される場合、本発明において使用するための治療用組成物は、発熱性物質を含まない生理学的に許容される形態をとる。上記のような組成物に任意で含まれていてもよいActRIIaアンタゴニスト以外の治療的に有用な薬剤は、本発明の方法において、本発明の化合物(例えば、ActRIIaポリペプチド)と共に同時にまたは連続的に投与され得る。
【0107】
典型的には、ActRIIaアンタゴニストは、非経口的に、特に、静脈内または皮下に投与されるであろう。非経口投与に適している薬学的組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは濃化剤を含有していてもよい、一つまたは複数の薬学的に許容される無菌の等張の水性もしくは非水性の液剤、分散剤、懸濁剤もしくは乳剤、または使用直前に無菌の注射可能な液剤もしくは分散剤へと再構成され得る無菌の散剤と組み合わせられた一つまたは複数のActRIIaポリペプチドが含まれ得る。本発明の薬学的組成物において利用され得る適当な水性および非水性の担体の例には、水、エタノール、(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のような)ポリオール、およびそれらの適当な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが含まれる。適度の流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散剤の場合には必要とされる粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により、維持され得る。
【0108】
さらに、組成物は、カプセル化されてもよいし、または標的組織部位(例えば、骨)への送達のための形態で注射されてもよい。ある種の態様において、本発明の組成物は、標的組織部位(例えば、骨)に一つまたは複数の治療用化合物(例えば、ActRIIaポリペプチド)を送達し、発達中の組織のための構造を提供することができ、かつ身体に最適に吸収されることができるマトリックスを含み得る。例えば、マトリックスは、ActRIIaポリペプチドの徐放を提供し得る。そのようなマトリックスは、他の移植される医学的適用のため現在使用されている材料から形成され得る。
【0109】
基質材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容上の外観、および界面特性に基づく。本組成物の特定の用途により、適切な製剤が決まる。組成物に利用可能な基質は、生分解性であり化学的に規定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリ無水物であってよい。他の可能な材料は、生分解性であり生物学的に十分規定されたもの、例えば骨または皮膚コラーゲンである。さらなる基質は、純粋なタンパク質または細胞外基質成分からなる。他の可能な基質は、非生分解性であり化学的に規定されたもの、例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸、または他のセラミックスである。基質は、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムのように、上記種類の材料のいずれかの組み合わせからなってもよい。バイオセラミックは、孔径、粒径、粒形、および生分解性を変更するために、カルシウム-アルミン酸-リン酸などの組成および加工処理において改変することができる。
【0110】
ある態様において、本発明の方法は、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味基材、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴムを使用)、粉末剤、顆粒剤の形態で、または水性液体もしくは非水液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型乳濁液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基材を使用)として、および/または洗口剤などとして投与され得、それぞれ所定量の物質を有効成分として含む。物質はまた、巨丸剤、舐剤、またはペースト剤として投与され得る。
【0111】
経口投与用の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末剤、顆粒剤など)においては、本発明の1つまたは複数の治療化合物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合し得るが、担体は、例えば、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム、および/または以下のうちのいずれかである:(1) 充填剤または増量剤、例えば澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など;(2) 結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアラビアゴムなど;(3) 湿潤剤(humectant)、例えばグリセロールなど;(4) 崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど;(5) 溶液遅延剤、例えばパラフィンなど;(6) 吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物など;(7) 浸潤剤(wetting agent)、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(8) 吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土など;(9) 潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物など;ならびに(10) 着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物はまた緩衝剤を含み得る。同様の種類の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセル剤の充填剤として使用することもできる。
【0112】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は、有効成分に加えて、例えば水または他の溶媒などの当技術分野で通常用いられる不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤、ならびにそれらの混合物を含み得る。経口組成物は、不活性希釈剤に加えて、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香料剤、および保存剤などの補助剤もまた含み得る。
【0113】
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントゴム、ならびにこれらの混合物などの懸濁剤を含み得る。
【0114】
本発明の組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含み得る。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどを含めることにより、微生物の作用の予防を確実にすることも可能である。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることもまた望ましいと考えられる。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる物質を含めることで、注射用薬剤形態の吸収を延長することも可能である。
【0115】
投与計画は、主治医が、本発明の本化合物(例えば、ActRIIaポリペプチド)の作用を変化させる様々な要因を考慮した上で決定されることが理解される。様々な要因には、これらに限定されないが、形成が所望される骨重量、骨密度損失の程度、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別、および食習慣、骨損傷をもたらし得る任意の疾患の重症度、投与期間、ならびに他の臨床上の要因が含まれる。任意で、用量は、再構成に用いる基質の種類および組成物中の化合物の種類に応じて変化し得る。他の既知の増殖因子を最終的な組成物に加えることもまた、投与量に影響し得る。進展は、例えば、X線(DEXAを含む)、組織形態学的測定、およびテトラサイクリン標識により、骨の成長および/または修復を定期的に評価することでモニターすることができる。
【0116】
霊長類およびヒトを用いた実験は、化合物が、約200ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な間隔および量で投薬された場合、骨に対するActRIIa-Fcの効果が検出可能であり、同化骨バイオマーカーに対する最大半量の効果が、0.3mg/kgの投薬量または曲線下面積に関して等価な投薬量で起こることを証明した。ヒトにおいて、約200ng/mlの血清レベルは、0.1mg/kg以上の単回投薬で達成され得、1000ng/mlの血清レベルは0.3mg/kg以上の単回投薬で達成され得る。分子の観察された血清半減期は、大部分のFc融合タンパク質より実質的に長い約25〜35日であり、従って、持続的な有効血清レベルが、例えば、1週間毎もしくは2週間毎に約0.05〜0.5mg/kgを投薬することにより達成され得、またはより高い用量がより長い投薬間隔で使用され得る。例えば、0.1、0.3、0.5、0.7、1、2、もしくは3mg/kg、またはその中間の値の用量が、毎月または隔月で使用され得、骨に対する効果は、投薬が、3、4、5、6、9、12ヶ月に1回、またはそれ以下しか必要でない程度に十分に持続的であるかもしれない。より長い投薬間隔は、血清中の薬物の持続期間より長い薬力学的効果の持続期間によりさらに支持される。PD効果はヒト患者において少なくとも120日間観察される。
【0117】
ある態様において、本発明はまた、ActRIIaポリペプチドをインビボ産生させるための遺伝子治療を提供する。このような治療は、ActRIIaポリヌクレオチド配列を上記の疾患を有する細胞または組織に導入することによって、その治療効果を達成する。ActRIIaポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いて達成することができる。ActRIIaポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましいのは、標的化リポソームの使用である。
【0118】
本明細書で開示する遺伝子治療に用いることができる様々なウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウイルスの派生物である。単一の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例には、非限定的に、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれる。多くのさらなるレトロウイルスベクターは、複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターはすべて、形質導入された細胞が同定および作製され得るように、選択可能なマーカーの遺伝子を伝達するかまたは組み込むことができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を結合させることによって標的特異的にすることができる。好ましい標的化は、抗体を用いることで達成される。当業者は、ActRIIaポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能とするために、特定のポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノム中に挿入するか、またはウイルスエンベロープに結合することができることを認識すると考えられる。1つの好ましい態様において、ベクターは骨または軟骨に標的化される。
【0119】
または、組織培養細胞に、レトロウイルス構造遺伝子gag、pol、およびenvをコードするプラスミドを、慣例的なリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクトすることができる。次いで、これらの細胞に、関心対象の遺伝子を含むベクタープラスミドをトランスフェクションする。得られる細胞は、レトロウイルスベクターを培地中に放出する。
【0120】
ActRIIaポリヌクレオチドの別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、微粒子、ビーズ、ならびに水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームをはじめとする脂質に基づく系が含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達媒体として有用である人工膜小胞である。RNA、DNA、および無傷のビリオンをその水性内部に封入し、生物学的に活性のある形態で細胞に送達することができる(例えば、Fraley, et al., Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981を参照されたい)。リポソーム媒体を使用する効率的な遺伝子移入の方法は当技術分野において公知であり、例えば、Mannino, et al., Biotechniques, 6:682, 1988を参照されたい。リポソームの組成は通常、一般的にステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、リン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質を使用することも可能である。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0121】
リポソームの生成に有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが含まれる。例示的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。リポソームの標的化もまた、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づいて可能であり、当技術分野において公知である。
【実施例】
【0122】
ここに本発明を広く説明したが、本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されると考えられる。以下の実施例は、本発明の特定の態様および態様を単に説明する目的で含めるものであって、本発明を限定することを意図していない。
【0123】
実施例1:ActRIIa-Fc融合タンパク質
本出願人らは、間に最小のリンカーを伴ってヒトまたはマウスのFcドメインと融合しているヒトActRIIaの細胞外ドメインを有する可溶性ActRIIa融合タンパク質を構築した。該構築物は、それぞれ、ActRIIa-hFcおよびActRIIa-mFcと呼ばれる。
【0124】
CHO細胞株から精製されるActRIIa-hFcは、以下に示される(SEQ ID NO:7)。
【0125】
ActRIIa-hFcタンパク質およびActRIIa-mFcタンパク質は、CHO細胞株において発現された。以下の三つの異なるリーダー配列が検討された。
(i)ミツバチメリチン(HBML):
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):
(iii)未改変:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(SEQ ID NO:10)
【0126】
選択された型は、TPAリーダーを利用し、かつ以下のプロセシングされていないアミノ酸配列を有する。
【0127】
このポリペプチドは以下の核酸配列によりコードされる。
【0128】
ActRIIa-hFcおよびActRIIa-mFcの両方が、組み換え発現に著しく適していた。
図1に示されるように、該タンパク質は、単一の明確なタンパク質のピークとして精製された。N末端配列決定は、単一の配列ILGRSETQE(SEQ ID NO:11)を明らかにした。精製は、例えば、プロテインAクロマトグラフィ、Qセファロースクロマトグラフィ、フェニルセファロースクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィのうちの三つ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィ工程により達成され得た。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了され得た。ActRIIa-hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィにより測定されるような>98%の純度、およびSDS PAGEにより測定されるような>95%の純度で精製された。
【0129】
ActRIIa-hFcおよびActRIIa-mFcは、リガンド、特に、アクチビンAに対する高い親和性を示した。GDF-11またはアクチビンA(「ActA」)を、標準的なアミンカップリング手法を使用して、Biacore CM5チップ上に固定化した。ActRIIa-hFcタンパク質およびActRIIa-mFcタンパク質を系に添加し、結合を測定した。ActRIIa-hFcは、5×10
-12の解離定数(K
D)でアクチビンに結合し、9.96×10
-9のK
DでGDF11に結合した。
図2を参照のこと。ActRIIa-mFcは同様の挙動を示した。
【0130】
A-204レポーター遺伝子アッセイを、GDF-11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対するActRIIa-hFcタンパク質の効果を評価するために使用した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉由来)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennler et al, 1998, EMBO 17: 3091-3100に記載)。
図3を参照のこと。CAGA12モチーフが、TGFβ応答性遺伝子(PAI-1遺伝子)に存在するため、このベクターはSmad2および3を通してシグナルを伝達する因子のため一般的に役に立つ。
【0131】
1日目:48穴プレートにA-204細胞を分割する。
2日目:10μgのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10μg)+pRLCMV(1μg)およびFugeneでA-204細胞をトランスフェクトする。
3日目:(培地+0.1%BSAで希釈された)因子を添加する。細胞への添加前に1時間、阻害剤を因子と共にプレインキュベートする必要がある。6時間後、細胞をPBSで濯ぎ、細胞を溶解する。
【0132】
この後、ルシフェラーゼアッセイが行われる。このアッセイにおいて、典型的には、いかなる阻害剤も存在しない場合、アクチビンAは、ほぼ10倍のレポーター遺伝子発現の刺激、およびおよそ2ng/mlのED50を示す。GDF-11:16倍の刺激、ED50:およそ1.5ng/ml。GDF-8はGDF-11と同様の効果を示す。
【0133】
図4に示されるように、ActRIIa-hFcおよびActRIIa-mFcは、ピコモル濃度で、GDF-8により媒介されるシグナル伝達を阻害する。
図5に示されるように、ActRIIa-hFcの三つの異なる調製物が、およそ200pMのIC50でGDF-11シグナル伝達を阻害した。
【0134】
ActRIIa-hFcは薬物動態試験において極めて安定していた。ラットに、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgのActRIIa-hFcタンパク質を投薬し、24、48、72、144、および168時間目にタンパク質の血漿レベルを測定した。別の研究においては、ラットに、1mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgを投薬した。ラットにおいて、ActRIIa-hFcは11〜14日の血清半減期を有し、薬物の循環レベルは、2週間後にかなり高かった(1mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgの初期投与について、それぞれ11μg/ml、110μg/ml、または304μg/ml)。カニクイザルにおいては、血漿半減期は14日を実質的に超えており、薬物の循環レベルは、1mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgの初期投与について、それぞれ25μg/ml、304μg/ml、または1440μg/mlであった。ヒトにおける予備的な結果は、血清半減期が約20〜30日であることを示唆している。
【0135】
実施例2:ActRIIa-mFcはインビボで骨成長を促進する
正常雌マウス(BALB/c)に、週2回、1回に1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgのレベルでActRIIa-mFcを投薬した。骨塩密度および骨塩量をDEXAにより決定した。
図6を参照のこと。
【0136】
BALB/c雌マウスにおいて、DEXAスキャンは、ActRIIa-mFc処置の結果としての骨塩密度および骨塩量の有意な増加(>20%)を示した。
図7および8を参照のこと。
【0137】
従って、ActRIIaのアンタゴニズムは、正常雌マウスにおいて骨密度および骨量の増加を引き起こした。次の工程として、骨粗鬆症のマウスモデルにおいて、骨に対するActRIIa-mFcの効果を試験した。
【0138】
Andersson et al. (2001)は、卵巣切除マウスが実質的な骨損失(手術の6週間後に骨梁骨のおよそ50%の損失)に罹患すること、およびこれらのマウスにおける骨損失が副甲状腺ホルモンのような候補治療剤により修正され得ることを確立した。
【0139】
本出願人らは、4〜5週齢で卵巣切除(OVX)または偽手術を受けたC57BL6雌マウスを使用した。手術の8週間後、ActRIIa-mFc(10mg/kg、週2回)または対照(PBS)による処理を開始した。骨密度をCTスキャナーにより測定した。
【0140】
図9に示されるように、無処理の卵巣切除マウスは、6週間後に、偽手術対照に比べて骨梁骨密度の実質的な損失を示した。ActRIIa-mFc処理は、偽手術マウスのレベルにまで骨密度を回復させた。6および12週間の処理で、ActRIIa-mFcは、OVXマウスの骨梁骨の実質的増加を引き起こした。
図10を参照のこと。6週間の処理の後、骨密度はPBS対照に比べて24%増加した。12週間後、増加は27%であった。
【0141】
偽手術マウスにおいても、ActRIIa-mFcは、骨梁骨の実質的増加を引き起こした。
図11を参照のこと。6週間後および12週間後、該処理は対照と比べて35%の増加を生じた。
【0142】
さらなる一連の実験において、上記のような卵巣切除(OVX)マウスまたは偽手術マウスを、12週間にわたりActRIIa-mFc(10mg/kg、週2回)または対照(PBS)で処理した。ActRIIa-mFcについて上に記載された結果と同様に、ActRIIa-mFcを受容したOVXマウスは、早くも4週間後までに15%の骨梁骨密度の増加を示し、12週間の処置の後に25%の増加を示した(
図12)。ActRIIa-mFcを受容した偽手術マウスは、同様に、早くも4週間後までに22%の骨梁骨密度の増加を示し、12週間の処置の後に32%の増加を示した(
図13)。
【0143】
ActRIIa-mFcによる12週間の処置の後、全身およびエクスビボ大腿骨DEXA分析は、処理が、卵巣切除マウスおよび偽手術マウスの両方において骨密度の増加を誘導することを示した(それぞれ、
図14Aおよび14B)。これらの結果は、ActRIIa-mFcによる12週間の処置の後に全骨密度および皮質骨密度の両方の有意な増加を証明した、大腿骨の中央骨幹のエクスビボpQCT分析によっても支持される。媒体処置対照卵巣切除マウスは、媒体処置対照偽手術マウスと同等の骨密度を示した(
図15)。骨密度に加えて、骨量がActRIIa-mFC処置後に増加した。大腿骨の中央骨幹のエクスビボpQCT分析は、ActRIIa-mFcによる12週間の処置の後、全骨量および皮質骨量の両方の有意な増加を証明したが、卵巣切除媒体対照処理マウスおよび偽手術媒体対照処理マウスの両方が同等の骨量を示した(
図16)。大腿骨の中央骨幹のエクスビボpQCT分析は、ActRIIa-mFc処理マウスが骨膜周囲長の変化を示さないことも示した。しかしながら、ActRIIa-mFc処理は、大腿骨の内表面上の成長による皮質幅の増加を示す骨内膜周囲長の減少をもたらした(
図17)。
【0144】
大腿骨の機械的試験は、ActRIIa-mFcが、骨の内的特性(最終強度)の有意な増加に寄与する、骨の外的特徴(最大負荷、硬度、および破損エネルギー)を増加させることができると決定した。ActRIIa-mFcで処理された卵巣切除マウスは、骨粗鬆症表現型の完全な逆転を示す、偽手術媒体処理対照を越えるレベルにまで増加した骨強度を示した(
図18)。
【0145】
これらのデータは、アクチビン-ActRIIaアンタゴニストが、正常雌マウスにおいて骨密度を増加させ、さらに、骨粗鬆症マウスモデルにおいて骨密度、骨量、そして最終的には骨強度の欠陥を修正し得ることを証明している。
【0146】
さらなる一連の実験において、マウスは、4週目に卵巣切除または偽手術を受け、12週目から開始して、さらに12週間の期間、プラセボまたはActRIIa-mFc(週2回、10mg/kg)(
図19〜24において、RAP-11とも呼ばれる)のいずれかを受容した。多様な骨パラメータが評価された。
図19に示されるように、ActRIIa-mFcは、OVXマウスおよび偽(SHAM)手術マウスの両方において、全体積に対する脊椎骨梁骨体積の比(BV/TV)を増加させた。ActRIIa-mFcは、また、骨梁構造を改善し(
図20)、皮質幅を増加させ(
図21)、骨強度を改善した(
図22)。
図23に示されるように、ActRIIa-mFcは、1mg/kgから10mg/kgまでの範囲の用量で望ましい効果を生じた。
【0147】
骨組織形態計測は、偽手術マウスにおいて2週間の時点で実施された。
図24に提示されるこれらのデータは、ActRIIa-mFcが、骨吸収を阻害し、かつ骨成長を促進する、二重の効果を有することを証明している。従って、ActRIIa-mFcは骨成長を刺激し(同化効果)、かつ骨吸収を阻害する(抗異化効果)。BV=骨体積;TV=全組織体積。BV/TVは石灰化されている骨体積の割合の尺度である。ES=吸収面;BS=骨面。ES/BSは、骨吸収の尺度であり、RAP-011により引き起こされたその減少は抗吸収効果または抗異化効果を証明する。Ms/Bsは、石灰化面/骨面比であり、これは骨成長または同化効果の指標である。同様に、石灰化速度(MAR)および1日当たり、骨面当たりの骨形成速度(BFR/BSd)は、骨成長を示す。骨芽細胞(Nob/BPm)および破骨細胞(Noc/BPm)の測定は、作用機序を調査するためになされる。
【0148】
第二の骨組織形態計測実験は、雌C57BL/6マウスにおいて実施され、それは12週齢で開始された。マウスに、2週間、4週間、8週間、または12週間、週2回、10mg/kgのActRIIa-mFcを腹腔内投薬した。各群を最後の投薬の5日後に屠殺し、分析のために骨を採取した。安楽死の9日前および2日前にマウスをカルセイン標識した。
図25に示されるように、測定基準は、ActRIIa-mFcが骨成長および石灰化を促進し、同化効果および抗異化効果の両方を有することを示している。例えば、BV/TV比、ES/BS比、およびMS/BS比を参照のこと。マウスにおいて、同化効果は、投薬計画の全体を通して持続するようであったが、抗吸収効果はより短命であるようであった。
【0149】
実施例3:ActRIIa-mFcは多発性骨髄腫のマウスモデルにおいて骨傷害を寛解させるかまたは防止する
多発性骨髄腫患者は、破骨細胞活性の増加および骨芽細胞による骨形成の減少を特徴とする骨損失障害を示す。マウスにおける骨髄腫の5T2MMモデルは、老化マウスに発生し、ヒト多発性骨髄腫患者で見られるものと類似の効果をマウスにおいて引き起こす型の自然発症腫瘍に由来する腫瘍細胞(5T2MM細胞)の使用に基づく。例えば、Vanderkerken et al., Methods Mol Med. 2005;113:191-205を参照のこと。ActRIIa-mFcを、このモデルにおける効果について試験した。
【0150】
C57B1/KaLwRijマウスに注射された5T2MM細胞は、破骨細胞面の増加、溶骨性病変の形成を促進し、骨面積の減少を引き起こした。骨疾患は、骨芽細胞数、骨芽細胞面の減少、および石灰化の低下に関連していた。
【0151】
5T2MM細胞を保持しているマウスを、全部で12週間、5T2MM注射の時点から、ActRIIa-mFc(RAP-011)(10mg/kg、i.p.、週2回)または媒体で処理した。近位脛骨および腰椎のマイクロCT分析は、未処理マウスと比較された5T2MM保持マウスにおける、海綿骨体積の39%および21%の低下(p<0.001およびp<0.01)、ならびに骨梁数の37%および15%の低下(p<0.01およびp<0.05)を証明した。RAP-011は、媒体処理マウスと比較した場合、脛骨(p<0.001およびp<0.05)および脊椎(p<0.01およびp<0.05)の両方において、5T2MMにより誘導される骨梁の体積および数の減少を完全に防止した。骨体積は、未処理マウスと比較した場合、RAP-011処理マウスにおいて、脛骨において19%高く(p=168)、脊椎において12%高かった(p<0.05)。RAP-011は、溶骨性骨病変の発症を防止した(p<0.05)。この効果は
図26に例示される。この研究において、データの予備的査定は、血清パラプロテイン(多発性骨髄腫腫瘍細胞のバイオマーカー)または骨髄腫負荷に対する有意な効果を同定し得なかったが、さらなる分析は、血清パラプロテインが処理動物の1匹以外において実質的に減少していることを示し、さらに、健康な骨髄の体積が実質的に増加することを示し、このことから、骨髄腫腫瘍細胞負荷の減少が示された。
【0152】
従って、ActRIIa-mFcは、多発性骨髄腫に起因する骨疾患の効果を減少させるため、および腫瘍細胞自体を処置するために使用され得る。
【0153】
実施例4:ActRIIa-hFcタンパク質の特徴決定
ActRIIa-hFc融合タンパク質を、SEQ ID NO:9の組織プラスミノーゲンリーダー配列を使用して、pAID4ベクター(SV40 ori/エンハンサー、CMVプロモーター)から、安定的にトランスフェクトされたCHO-DUKX B11細胞において発現させた。上記実施例1のようにして精製されたタンパク質は、SEQ ID NO:7の配列を有していた。Fc部分は、SEQ ID NO:7に示されるヒトIgG1 Fc配列である。シアル酸分析は、該タンパク質がActRIIa-hFc融合タンパク質分子当たり平均約1.5〜2.5モルのシアル酸を含有していることを示した。
【0154】
この精製されたタンパク質は、ヒト患者における25〜32日の半減期を含め、試験された全ての動物において著しく長い血清半減期を示した(下記実施例5を参照のこと)。さらに、CHO細胞において発現された材料は、アクチビンBリガンドに対して、ヒト293細胞において発現されたActRIIa-hFc融合タンパク質について報告されたもの(del Re et al., J Biol Chem. 2004 Dec 17; 279(51):53126-35)より高い親和性を有する。さらに、tPaリーダー配列の使用は、その他のリーダー配列より大きな産生を提供し、未改変リーダーを用いて発現されたActRIIa-Fcとは異なり、高度に純粋なN末端配列を提供した。未改変リーダー配列の使用は、各々異なるN末端配列を有する二つの主要なActRIIa-Fcの種をもたらした。
【0155】
実施例5:ヒト臨床試験
健康な閉経後の女性におけるタンパク質の安全性を評価するために主として実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照研究において、実施例4に記載されたタンパク質をヒト患者に投与した。48人の対象を、ActRIIa-hFcまたはプラセボのいずれかの単回投薬を受容する6つのコホート(5活性:1プラセボ)にランダム化した。用量レベルは、0.01〜3.0mg/kg静脈内(IV)および0.03〜0.1mg/kg皮下(SC)の範囲であった。全ての対象を120日間追跡した。対象は、研究開始の6ヶ月以内に骨代謝に影響を与える薬物治療を受けた場合、研究参加から排除された。用量増大を決定するため、各コホートを追跡して安全評価を実施した。薬物動態(PK)分析に加えて、骨の形成および吸収の生化学的マーカーならびにFSHレベルの測定により、ActRIIa-hFcの生物学的活性も査定した。
【0156】
重篤な有害事象は、この研究において報告されなかった。有害事象(AE)は、一般に、軽度かつ一過性であった。AEの予備的分析には、頭痛、検査値の上昇、風邪症状、催吐または嘔吐、静脈内浸潤、および注射部位における血腫が含まれた。
【0157】
ActRIIa-hFcのPK分析は、用量による直線プロファイル、およびおよそ25〜32日という平均半減期を示した。ActRIIa-hFcの曲線下面積(AUC)は、用量と直線的な関係にあり、SC投薬後の吸収は本質的に完全であった(
図27および28を参照のこと)。これらのデータは、SCが、IV投薬からの最初の数日に付随する薬物の血清濃度のスパイクを回避する一方、薬物のための等価な生物学的利用能および血清半減期を提供するため、望ましい投薬アプローチであることを示している(
図28を参照のこと)。ActRIIa-hFcは、同化骨成長のマーカーである骨特異的アルカリホスファターゼ(BAP)の血清レベルの迅速で持続的な用量依存的な増加、ならびに骨吸収のマーカーであるC末端1型コラーゲンテロペプチドおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ5bのレベルの用量依存的な減少を引き起こした。P1NPのような他のマーカーは、決め手にかける結果を示した。BAPレベルは、薬物の最高投薬量で近飽和効果を示し、このことは、この同化骨バイオマーカーに対する最大半量の効果が、0.3mg/kgの投薬量で達成され得、その増加が3mg/kgまでの範囲であることを示している。薬物の薬力学的効果とAUCとの関係として計算されるEC50は、51,465(日*ng/ml)である。
図29を参照のこと。これらの骨バイオマーカーの変化は、試験された最高用量レベルで、およそ120日間持続した。アクチビンの阻害と一致する血清FSHレベルの用量依存的な減少も存在した。
【0158】
健康な閉経後の女性に与えられたActRIIa-hFcの単回投薬は、試験された範囲の用量レベルについて、安全であり、よく許容された。持続的なPKおよび薬力学的効果は、間欠投薬が将来の研究のために適切であろうということを示唆する。例えば、血清半減期に基づく投薬が、月単位で、または2週間、3週間、4週間、5週間、もしくは6週間に1回のオーダーで実施され得る。さらに、薬力学的効果が薬物の血清滞留時間をはるかに越えて継続するため、投薬は、薬力学的効果に基づき実施されてもよい。即ち、3ヶ月毎、または2、3、4、5、6ヶ月毎、またはさらには12ヶ月毎の投薬が、患者における所望の効果を生ずるのに有効であり得る。この臨床試験は、ヒトにおいて、ActRIIa-hFcが、骨形成の増加および骨吸収の減少の両方の生物学的証拠を有する骨同化剤であることを証明する。
【0159】
実施例6:ActRIIa-mFcおよびビスホスホネートの共投与
ビスホスホネートは、骨粗鬆症および癌関連骨損失を含む、低い骨塩密度に関連した障害を処置するために広範に使用されている薬物のクラスである。ビスホスホネートは、破骨細胞を阻害する強力な抗吸収活性を有する。おそらく破骨細胞が骨分解および骨成長の両方に必要とされるため、ビスホスホネートは、唯一の公知の同化骨成長剤のうちの一つ副甲状腺ホルモン(PTH)の効果を減じるようである(Black et al., N Engl J Med. 2003 Sep 25; 349(13):1207-15;Samadfam et al., Endocrinology. 2007 Jun; 148(6):2778-87)。
【0160】
ビスホスホネートまたはその他の抗吸収治療を以前に受けたことがあるか、または同時に受容中である患者におけるActRIIa-Fc処置の有用性を試験するため、ActRIIa-mFcと、ビスホスホネート化合物であるゾレドロネートとの組み合わせを用いてマウスを試験した。12週齢のC57BL/6Nマウスを以下のように処理した。
群1 PBS
群2 ActRIIa-mFc(RAP-011)(10mg/kg)週2回(群3および4と共に)
群3 ゾレドロン酸(ZOL)単回投薬(20mg/kg)
群4 ZOL(単回投薬)、3日後にActRIIa-mFc(RAP-011)(1mg/kg)週2回
群5 ZOL(単回投薬)、3日後にActRIIa-mFc(RAP-011)(10mg/kg)週2回
【0161】
投薬前、ならびに3週間および8週間の処理後に、DEXAスキャン(PIXI)により全BMDを決定した。
【0162】
図30に示されるように、全BMDは、全ての処理群において著しく増加し、ZOLおよびActRIIa-mFcの組み合わせが、最も大きな効果を生じた。これらの結果は、ActRIIa-Fcタンパク質が、ビスホスホネート治療を受容したことのある患者においても、骨密度を増加させるために使用され得ることを示している。
【0163】
実施例7:ActRIIa-Fcは乳癌転移により引き起こされた骨損失を寛解させるかまたは防止する
乳癌の65〜75パーセントが骨に転移して、骨構造に実質的な傷害を引き起こし、骨折リスクを増加させ、疼痛およびその他の副作用を引き起こすと推定されている。本発明者らは、骨に転移した乳癌のマウスモデルにおけるActRIIa-Fcの効果を試験した。
【0164】
ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231(クローン2287)の亜系統を、インビトロで培養し、細胞を5×10
6細胞/mlの密度で採集した。MDA-MB-231は、骨の中に播種し、骨転移により引き起こされるものと類似の骨傷害を引き起こす能力が高い細胞株である。研究0日目に、10mlの細胞を、6週齢雌胸腺欠損ヌードマウスの脛骨に注射した。研究10日目、マウスは、ActRIIa-mFc(10mg/kg/週2回/皮下)(n=8)またはPBS媒体(n=7)を受容した。1週間間隔で2重エネルギーX線吸収測定法(PIXIMus)により疾患進行を査定した。マウスを、4週間、ActRIIa-mFcで処理し、次いで、屠殺し、頸骨(腫瘍を注射されたものおよび腫瘍化されていないものの両方)を各動物から収集した。次いで、脛骨を加工し、マイクロCTおよび組織学的分析のために調製した。
【0165】
胸腺欠損ヌードマウスへのMDA-MB-231細胞の頸骨内注射は、対側の脚と比較して、注射された脛骨において溶骨性骨病変の発症を促進した。近位脛骨のマイクロCT分析は、PBS媒体処理マウスにおける非腫瘍化脛骨と比較して、MDA-MB-231保持脛骨における海綿骨体積の62%の低下を証明した。ActRIIa-mFc処理は、媒体と比較して、未処理頸骨または腫瘍保持脛骨において、それぞれ70%または147%の増加をもたらした(両方についてP<0.01)。ActRIIa-mFc処理マウスの腫瘍保持脛骨は、VEH処理マウスの未処理脛骨と同様の海綿骨密度を有していた(p=0.39)。
【0166】
従って、ActRIIa-mFcは、骨における乳房腫瘍細胞の存在に関連した骨傷害を排除することができる。
【0167】
実施例8:代替ActRIIa-Fcタンパク質
代替構築物は、C末端テール(ActRIIaの細胞外ドメインの最後の15アミノ酸)の欠失を有し得る。そのような構築物の配列は、以下に提示される(Fc部分には下線が引かれている)(SEQ ID NO:12)。
【0168】
参照による引用
本明細書において言及した出版物および特許はすべて、個々の出版物または特許が具体的にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるように、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0169】
本件の特定の態様について論じたが、上記明細書は説明のためであって、限定するものではない。本明細書および特許請求の範囲を検討することで、多くの変形が当業者に明らかになると考えられる。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を同等物の全範囲と共に参照し、本明細書をそのような変形と共に参照して決定されるべきである。
CHO細胞から発現されたActRIIa-Fc融合タンパク質を含む薬学的組成物であって、ActRIIa-Fc融合タンパク質が、ジスルフィド結合により連結された二つのSEQ ID NO:7のポリペプチドから形成された二量体であり、但し、該ポリペプチドの一方または両方が、SEQ ID NO:7に示されるものと比べ、アミノ末端またはカルボキシ末端において1箇所、複数のアミノ酸が少なくてもよく、かつ二量体が3〜5個のシアル酸部分を有する、薬学的組成物。