【解決手段】有機溶剤(A)及び樹脂(B)を含み、該有機溶剤(A)は、20℃における蒸気圧が10〜120Paの範囲内にある有機溶剤(A1)を90質量%以上含み、該樹脂(B)は、該有機溶剤(A)に分散可能な樹脂及び該有機溶剤(A)に溶解可能な樹脂のうち少なくとも一方の樹脂からなることを特徴とする塗料組成物である。
有機溶剤(A)及び樹脂(B)を含み、該有機溶剤(A)は、20℃における蒸気圧が10〜120Paである有機溶剤(A1)を90質量%以上含み、該樹脂(B)は、該有機溶剤(A)に分散可能な樹脂及び該有機溶剤(A)に溶解可能な樹脂のうち少なくとも一方の樹脂からなることを特徴とする塗料組成物。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装用塗料は、有機溶剤系塗料から水系塗料まで幅広く使用されている。塗料業界としては、作業環境等の改善の面から水系塗料への移行が多く提案されているものの、建築物を対象とするような塗装については、塗装作業性や乾燥性等の点から有機溶剤系塗料が使用される場合も多い。ここで、有機溶剤系塗料が持つ問題の一つに、有機溶剤による臭気の問題があり、このような問題に対処する有機溶剤系塗料の検討が行われている。
【0003】
国際公開第2005/000979号(特許文献1)は、(A)エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の塗料用樹脂、(B)低臭気性有機溶剤、(C)炭素数8以上のエステルおよび/またはラクトンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、および、必要により(D)塗料用樹脂(A)用の硬化剤を含んでなり、有機溶剤としてキシレンおよびトルエンを実質的に含まないことを特徴とする低臭気性溶剤型塗料組成物を記載しており、これによって、塗膜乾燥後に発生するペイント臭が著しく抑制されるとしている。特許文献1に記載の塗料組成物は、キシレンやトルエンを実質的に使用しないという特徴により低臭気を達成していると思われるが、これら臭気の原因となる溶剤に代えて、酢酸ブチルと他の有機溶剤からなる(B)低臭気性有機溶剤を用いると共に、臭気中和性のある化合物(C)を用いることを特徴としている。
【0004】
一方、建築物の内外装用塗料には、常温乾燥型のものが望ましい。例えば、特開2006−188639号公報(特許文献2)は、(A)第三種有機溶剤と、(B)該有機溶剤(A)に可溶で、水酸基価が5mgKOH/gを超え、かつ水酸基価と酸価の合計が30mgKOH/gを超える水酸基含有含フッ素共重合体とからなる硬化型含フッ素塗料用組成物を記載しており、これによって、室温でも充分な乾燥硬化性を示し、耐溶剤性、耐水性、耐候性等に優れ、環境に配慮した含フッ素塗料用組成物を提供することができるとしている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の塗料組成物を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、有機溶剤(A)及び樹脂(B)を含み、該有機溶剤(A)は、20℃における蒸気圧が10〜120Paである有機溶剤(A1)を90質量%以上含み、該樹脂(B)は、該有機溶剤(A)に分散可能な樹脂及び該有機溶剤(A)に溶解可能な樹脂のうち少なくとも一方の樹脂からなることを特徴とする。
【0016】
本発明の塗料組成物は、20℃における蒸気圧が10〜120Paである有機溶剤(A1)を90質量%以上含む有機溶剤(A)を含むため、常温乾燥型塗料組成物として好適であり、基材への塗装後に常温にて乾燥させて塗膜を形成させることが可能である。ここでいう「常温」とは5〜35℃であり、本発明の塗料組成物によれば、23℃の場合、24時間以内、5℃の場合でも、48時間以内という短時間での乾燥も可能である。
【0017】
また、本発明の塗料組成物は、20℃における蒸気圧が10〜120Paである有機溶剤(A1)を90質量%以上含む有機溶剤(A)を含むため、有機溶剤系(換言すれば非水系)の塗料組成物として使用可能である。ここでいう「有機溶剤系塗料組成物」とは、塗料組成物中に含まれる溶媒全体に占める有機溶剤の割合が50質量%以上である塗料組成物を意味する。特に、本発明の塗料組成物は、良好な乾燥性を確保する観点から、水分量は1.0質量%未満であることが好ましい。なお、水分量とは、塗料組成物中における水の含有量を指す。
【0018】
本発明の塗料組成物に用いる有機溶剤(A)には、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類(ラクトンを含む)、窒素含有化合物(アミド、ラクタムなど)、硫黄含有化合物、炭化水素(脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素など)等の公知の塗料用溶剤が使用できるが、本発明の塗料組成物においては、有機溶剤(A)を構成する溶剤の90質量%以上、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%が、20℃における蒸気圧が10〜120Paの有機溶剤(A1)である。これらの有機溶剤の中でも、樹脂(B)や後述する硬化剤を分散又は溶解させる観点から、酸素含有化合物(例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類など)が特に好ましい。なお、有機溶剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物中において、有機溶剤(A)の含有量は、例えば15〜90質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明の塗料組成物において、有機溶剤(A1)は、20℃における蒸気圧が10〜120Paである。本発明者は、塗料組成物の溶媒として蒸気圧の低い物質を用いた場合、乾燥時に塗料組成物やその塗膜から発生し得る臭気を感じ難いことを見出した。本発明の塗料組成物によれば、20℃における蒸気圧が120Pa以下である有機溶剤を用いるため、塗料組成物やその塗膜からの臭気を抑えることができる。また、臭気低減効果の観点から、20℃における蒸気圧は120Pa以下が好ましく、100Pa以下が更に好ましい。一方、常温乾燥で有機溶剤を蒸発させる観点から、20℃における有機溶剤(A1)の蒸気圧は10Pa以上であり、50Pa以上が好ましい。
【0020】
20℃における蒸気圧が10〜120Paである有機溶剤(A1)の具体例としては、n−オクタノール、エチルヘキシルアルコール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジメチルプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、イソパラフィン系炭化水素等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明の塗料組成物は、溶媒として有機溶剤(A)を含むことから、本発明の塗料組成物に用いる樹脂(B)は、該有機溶剤(A)に分散可能な樹脂及び該有機溶剤(A)に溶解可能な樹脂のうち少なくとも一方の樹脂からなる。ここで、「有機溶剤(A)に分散可能な樹脂」とは、有機溶剤(A)中に分布して不均質系(例えば乳濁液又は懸濁液)を形成可能な樹脂である。また、「有機溶剤(A)に溶解可能な樹脂」とは、有機溶剤(A)に可溶な樹脂を指すが、有機溶剤(A)との混合物が均一な溶液を形成する。
【0022】
本発明の塗料組成物においては、上記樹脂(B)が、重量平均分子量が800〜300,000である樹脂(B1)を含むことが好ましい。上記特定した範囲内の分子量であれば、本発明の塗料組成物に用いる有機溶剤(A)への分散性や溶解性と良好な塗膜物性(乾燥性、耐水性など)を両立することができる。また、樹脂(B1)の重量平均分子量は900〜100,000であることが更に好ましい。本発明において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0023】
本発明の塗料組成物において、上記樹脂(B)中に占める樹脂(B1)の割合は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。上記樹脂(B)中に占める樹脂(B1)の割合が50質量%以上であれば、上記特定した範囲の分子量によって奏される効果を高めることができる。
【0024】
本発明の塗料組成物に用いる樹脂(B)としては、塗料業界において通常使用されている樹脂を例示することができ、具体的には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ふっ素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びアルキド樹脂が好ましく、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ふっ素樹脂及びエポキシ樹脂が更に好ましく、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂及びアルキド樹脂が特に好ましい。これら樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の塗料組成物において、不揮発分中における樹脂(B)の含有量は、例えば20〜100質量%であることが好ましく、また、塗料組成物が顔料等を更に含む場合は20〜98質量%であることが好ましい。ここで、不揮発分とは、水や有機溶剤等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分であるが、本発明においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取り扱う。本発明の塗料組成物において、不揮発分の含有量は、10〜85質量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の塗料組成物は、顔料を含むことができる。本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるものではなく、塗料業界において通常使用されている顔料を使用できる。具体例としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の着色顔料、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料、亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、ステンレス、ガラスフレーク等の光輝顔料等が挙げられる。これら顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物において、不揮発分中における顔料の含有量は、例えば1〜80質量%であることが好ましい。
【0027】
本発明の塗料組成物は、硬化剤を含むことができる。本発明に使用できる硬化剤としては、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択され、塗料業界において通常使用されている硬化剤を使用できる。これら硬化剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の含有量は、樹脂に含まれる硬化剤との反応性基の量に応じて適宜調整されるものであるが、本発明の塗料組成物において、不揮発分中における硬化剤の含有量は、例えば0.5〜15質量%であることが好ましい。
例えば、水酸基を含むような樹脂(水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリルシリコーン樹脂及び水酸基含有ふっ素樹脂など)に対しては、イソシアネート系硬化剤が好適に使用できる。具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらポリイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂に対しては、アミン系硬化剤が好適に使用できる。具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、トリアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、及びジアミノジフエニルメタン等の芳香族ポリアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン、及びトリプロピレングリコールジアミン等の他のポリアミン化合物と、これらアミン化合物のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン化合物とが挙げられる。なお、上記アミン化合物の変性には、既知の方法が利用でき、変性反応の例としては、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応等が挙げられる。ここで、アミノ基にエポキシ基等が付加したタイプの変性ポリアミン化合物をアダクトタイプの変性ポリアミン化合物といい、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン化合物が好ましい。
【0028】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0029】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。また、本発明の塗料組成物が、2液型の塗料組成物である場合は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって、主剤や硬化剤を予め用意しておき、塗装時に主剤と硬化剤とを混合することで使用される。なお、硬化剤は、硬化剤そのままでもよいし、他の成分との混合物であってもよい。
【0030】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1s
−1の粘度が0.1〜10,000Pa・sであり、且つせん断速度1,000s
−1の粘度が0.05〜10Pa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度はTAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を23℃に調整した後測定される。
【0031】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できる。
【0032】
また、本発明の塗料組成物により塗装できる基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属基材、木材、石膏、珪酸カルシウム、ガラス、セラミック、コンクリート、セメント、モルタル、スレート等の無機系基材、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等のプラスチック基材が挙げられる。これらの中でも、鋼材、アルミ材、木材、石膏ボード、モルタル、軽量気泡コンクリート、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・珪酸カルシウム板等の建築基材が好適に挙げられる。金属基材には、各種表面処理、例えば酸化処理が施された基材も含まれる。また、その表面が無機物で被覆されているようなプラスチック基材(例えば、ガラス質で被覆されたプラスチック基材)は、無機系基材に含まれる。なお、基材は、プライマー処理が施されていてもよいし、基材表面の少なくとも一部に旧塗膜(本発明の塗料組成物の塗装を行う前に既に形成されている塗膜)が存在していてもよい。
【0033】
本発明の塗料組成物により塗装できる基材としては、上述したように各種材質の基材が挙げられるが、その具体例としては、各種建築材料の他、建築物や構築物及びそれらの部材が好適に挙げられ、本発明の塗料組成物は、建築物や構築物の内外装用の塗料として好適である。なお、本発明において、建築物とは、人間が居住又は滞在する目的で建築された構造物を意味し、例えば住宅(戸建・集合住宅など)やビル、工場等が挙げられ、構築物とは、人間が居住又は滞在する目的以外のために建設された構造物を意味し、例えば橋梁、タンク、プラント配管、煙突等が挙げられる。建築物や構築物の部材としては、例えば屋根や壁等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
[樹脂の調製例]
(アクリル樹脂溶液の調製例)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を付けた反応容器に、アイソパーH(安藤パラケミー株式会社製)300質量部を仕込み110℃に保持し、予め調製しておいたイソブチルメタクリレート70質量部、tert−ブチルメタクリレート230質量部、ラウリルメタクリレート150質量部及びベンゾイルパーオキサイド2質量部の混合物を、窒素雰囲気下で110℃を保持しながら3時間で均一滴下し、更にベンゾイルパーオキサイド3質量部を仕込み1時間110℃に保持し、アイソパーH250質量部を仕込み、不揮発分が45.2質量%、重量平均分子量140,000、粘度が37P(ポイズ)、外観が無色透明なアクリル樹脂溶液(A)を得た。
【0036】
(アクリル樹脂分散液の調製例)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を付けた反応容器に、上記調製例に従い得たアクリル樹脂溶液(A)330質量部及びアイソパーH 150質量部を仕込み110℃に保持し、予め調製しておいたメチルメタクリレート110質量部、エチルアクリレート40質量部、ブチルアクリレート70質量部、ブチルメタクリレート50質量部、イソブチルメタクリレート40質量部及びベンゾイルパーオキシド3質量部の混合物を、窒素雰囲気下で110℃を保持しながら3時間で均一滴下し、更にベンゾイルパーオキシド5質量部を仕込み1時間110℃に保持し、アイソパーH240質量部を仕込み、不揮発分が44.9質量%、重量平均分子量が約140,000、粘度が27P(ポイズ)、外観が白色懸濁のアクリル樹脂分散液(B)を得た。
【0037】
[塗料の調製例]
表1〜2に示す配合処方に従い、主剤を調製し、塗装時に硬化剤と混合して、塗料を調製した。なお、実施例9〜10については、1液型の塗料組成物であるため、表1に示す配合処方に従い、塗料を調製した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(注1)「jER 1001」:三菱化学社製、エポキシ樹脂、不揮発分100質量%、重量平均分子量 約900
(注2)「ルミフロンLF200F」:旭硝子社製、ふっ素樹脂、不揮発分100質量%
(注3)「JR−806」:テイカ社製、酸化チタン
(注4)「K−WHITE#82」:テイカ社製、防錆顔料
(注5)「スーパーSS」:丸尾カルシウム社製、炭酸カルシウム
(注6)「タルクDN−2」:富士タルク社製、板状タルク
(注7)「ソルフィットAC」:クラレ社製、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、蒸気圧53Pa
(注8)「HeG」:日本乳化剤社製、ヘキシルグリコール、蒸気圧10Pa
(注9)「ソルフィット」:クラレ社製、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、蒸気圧47Pa
(注10)「DOWANOL PnB」:ダウ社製、プロピレングリコールモノブチルエーテル、蒸気圧113Pa
(注11)「ハイソルブEDE」:東邦化学工業社製、ジエチレングリコールジエチルエーテル、蒸気圧50Pa
(注12)「アイソパーH」:エクソンモービル社製、イソパラフィン系炭化水素、蒸気圧100Pa
(注13)「トーマイドTXK−436−D」:T&K TOKA社製、ポリアミドアミン、不揮発分100質量%
(注14)「デュラネートTSA100」:旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート変性物、不揮発分100質量%
(注15)「エピクロン5920−70MS」:DIC社製、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂のミネラルスピリット溶液、不揮発分70質量%、重量平均分子量 約7000
(注16)「ルミフロンLF800」: 旭硝子社製、ふっ素樹脂のミネラルスピリット溶液、不揮発分60質量%
(注17)「キョーワノールM」:KHネオケム社製、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、蒸気圧1Pa
(注18)「PE−AC」:クラレ社製、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、蒸気圧227Pa
(注19)「キシレン」:丸善石油化学社製、蒸気圧900Pa
(注20)「PEGASOL AN 45 FLUID」:エクソンモービル社製、蒸気圧287Pa
【0041】
[試験]
乾燥性及び臭気について評価した。結果を表3〜4に示す。
【0042】
<乾燥性の評価方法>
調製した塗料を各温湿度条件下において、隙間150μmのフィルムアプリケータを用いてガラス板(150mm×70mm×2mm)に該塗料を塗布し、JIS K 5600−1−1の4.3.5b)の条件で、半硬化乾燥するまでの時間を測定し、下記の評価基準にて乾燥性を評価した。
(23℃50%RHの評価基準)
◎:6時間未満
○:6時間以上、8時間未満
△:8時間以上、24時間未満
×:24時間以上
(23℃85%RHの評価基準)
◎:6時間未満
○:6時間以上、8時間未満
△:8時間以上、24時間未満
×:24時間以上
(5℃30%RHの評価基準)
◎:16時間未満
○:16時間以上、32時間未満
△:32時間以上、48時間未満
×:48時間以上
【0043】
<臭気の評価方法>
官能評価及び臭気センサ値により、臭気の評価を行った。
(官能評価)
調製した塗料25〜30gを50mL容量のガラス瓶に移し蓋をする。開封した瓶の開口部を被験者の鼻に10秒間近付け、臭気を評価した。なお、被験者は20代〜40代の男性5人女性5人とし、下記の採点基準により臭気を採点し、10人の合計点を10で除した値を下記の評価基準に従って評価した。
<採点基準>
0点:ほとんど臭気を感じない
1点:僅かに臭気を感じる
2点:臭気を感じる
3点:強い臭気を感じる
<評価基準>
◎:1.0点未満
○:1.0点以上、1.5点未満
△:1.5点以上、2.5点未満
×:2.5点以上
(臭気センサ値)
東京都建設局(平成26年改訂版)において提唱されている室内臭気測定試験方法(臭気測定試験器(COSMOS社製、XP−329mR)を用いた臭気測定方法)に従い、塗料の臭気を測定し、下記の評価基準にて臭気を評価した。測定された数値が低いほど、臭気が低いことを示す。
◎:120未満
○:120以上、200未満
△:200以上、300未満
×:300以上
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】