【実施例1】
【0021】
潤滑油廃液及び潤滑油、耐久性・耐磨耗性の向上・流動改質効果やダレ防止等を図るための合成シリカ、針入度10〜30のブロンアスファルト、針入度100〜200のストレートアスファルト、ロジン、酸化劣化の抑制・夏高温時の安定性確保・路面や骨材の接着性の向上等を図るための消石灰、増粘性・成膜性・ダレ防止等を図るためのベントナイトとを混合させることにより微粉体入り舗装用補修材を得るものである。
【0022】
上記における「合成シリカ」とは、地殻中の珪素の酸化物であるシリカを、主に珪砂を原料として化学的に反応させたもので、多孔質で大きな表面構造を持つ材料である。
【0023】
また、上記における「ロジン」とは、松属樹木の根、木部、やにから得られる無色乃至茶褐色の樹脂で、樹脂酸と呼ばれる各種異性体を主成分とする天然樹脂である。
【0024】
更に、上記における「ベントナイト」とは、モンモリナイトを主成分とする天然に産出する「粘土」で、高い粘性、粘着性、吸水性や吸着性等の性質がある。「無機ベントナイト」は吸水することにより「膨潤」させることができる。油成分のみでは膨潤することはない。
【0025】
上記各種材料を下記の工程により微粉体入り舗装用補修材を製造する。
1)潤滑油廃液及び潤滑油の貯蔵タンクから撹拌装置付の縦型混合タンクへ、製造に必要な量をギアポンプで移送して収容する。
2)次に、潤滑油廃液及び潤滑油に対して、2〜10重量%の合成シリカを潤滑油廃液及び潤滑油に少量ずつ添加し、次の工程まで約1時間撹拌しながらギアポンプで循環を続ける。合成シリカの混合液は、後の工程の原料溶融アスファルト中に均一に拡散混合させるためである。
3)上記混合液の工程とは別工程により一次加工アスファルトを製造する。
【0026】
以下に一次加工アスファルトの製造方法の具体例を記載する。
a)溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトの一定割合によるアスファルト混合液を造る。
ブロンアスファルト針入度10〜30にストレートアスファルト針入度100〜200を一定割合に添加混合することにより、ひび割れ抑制用、ひび割れ補修用、塗膜防水止水用、加熱混合物用等の用途別に応じたベースアスファルトを造ることができる。この方法であればほぼ希望する粘性、針入度、軟化点等の性状を得ることができる。同様に、ストレートアスファルト針入度100〜200を使うことにより、路面への密着性、骨材との付着性、骨材間の把握力向上なる効果を得ることができる。
溶融ブロンアスファルトの貯蔵タンクと溶融ストレートアスファルトの貯蔵タンクより、縦型撹拌混合加熱装置付のタンクへ各々決められた量をギアポンプで移送する。
【0027】
縦型撹拌混合加熱装置(ギアロータリーポンプ3台設置型)に移送された溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトとを温度190〜210℃の範囲内で約1時間、撹拌機と3台のギアポンプを同時に運転することによりタンク内の下層部、中間層及び上層部の材料を均一に混合する。
b)同時に、ロジンを溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトとの混合液の1〜10重量%を添加混合する。
【0028】
上記において縦型撹拌混合加熱装置の目的の一つとして、複数種類の微粉体を均一に拡散混合した状態で容器に流し込み、冷却させて製造した後、補修現場でその性能を発揮させることである。微粉体の拡散混合がうまくできないとその性能を十分に発揮させることはできない。
【0029】
上記縦型撹拌混合加熱装置の具体例として、
撹拌混合装置:タンクの中心部の上部から下部へ垂直にシャフトを設置し、横方向に左右対称に羽根を数段に取り付ける(例えば、角度90度毎に取り付ける)。羽根に直径20mmの穴を複数開けることにより剪断力が加わり対流効果が増し、拡散混合を良好とし、製造時間の短縮につなげることができる。
【0030】
上記シャフトを回転させるモーターは、回転数、方向を変えることのできる調整装置を付属として設けると良い。
【0031】
撹拌混合循環装置としてギアロータリーポンプ(口径2インチ・50A)を3台設置する。その内の1台はタンク内循環と一次加工アスファルトの仕上がり後の容器への流し込みに使用する。他の2台はタンクの左右に設置し、タンク内に収容させている加工中のアスファルトの下層部(タンク底)から吸い込み加工中材料の中間層、上層部へ吐出させ、タンク内の材料の撹拌混合効果を更に高め、微粉体(原材料の合成シリカ、消石灰、ベントナイト等)の沈降現象を防ぐことができる。
【0032】
2台のギアポンプと配管装置を設置する目的は、加工中材料の撹拌混合効率を高め微粉体(原材料の合成シリカ、消石灰、ベントナイト等)の沈降現象を防ぐことにある。また、該配管装置の特徴は吐出側配管装置の設置場所と先端部にある。ギアポンプで吸い込んだ材料を10〜15mm径の穴から圧力をかけて加工中材料の中へ吐出させ、複雑な対流を作り出し撹拌混合効果を高めることができる。
【0033】
該配管装置は、ローマ字の「T」を逆さにした逆T字形としている。先端部をタンクの中間層、上層部へ設置する。一方が上層部であれば向き合う反対側には中間層に設置する。50A〜32Aに細く形成する。横方向のパイプ(32A)に10〜15mm径の穴を設ける。該穴は水平方向及びやや斜め上方向に(角度5〜10度)に交互に設ける。上層部と中間層に各々設置することになる。タンク内側側面より10cm離して設置する。該穴から加工中の材料へ吐出させ、剪断力を付与し、混合状態を良好とする。これにより微粉体の沈降現象を防ぐことができる。
【0034】
配管の吸い込み側の設置位置は、2箇所ともタンク内側面から10cm離して垂直に設置し、タンク底から1cm離したところから吸い込むようにする。吐出側の設置位置は、1箇所は上層部、向き合う反対側は中間層に設置する。タンク内側面から10cm離して垂直に設置し、32Aの穴を設けているパイプは真横になるように設置する。
【0035】
上記撹拌混合加熱装置によって得られた溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトよりなる一次加工アスファルトの標準的な性状は、30〜60の針入度、90℃以上の軟化点を目安とする。従来はブロンアスファルト(針入度10〜30)に潤滑油廃液及び潤滑油を添加することのみで一次加工アスファルトを造っていたが、希望する性状に近付けることは困難であった。
【0036】
c)上記によって製造した一次加工アスファルトに合成シリカ混合液を添加する。加熱混合装置付のタンク内に190〜210℃に管理された一次加工アスファルトに合成シリカ混合液をギアポンプで移送し、一次加工アスファルトに少量ずつ添加し、約1時間混合する。合成シリカ混合液の吐出量は、一次加工アスファルトの温度が下がらない程度とする。合成シリカ混合液の添加量は一次加工アスファルトに対して8〜35重量%とする。補修材料の用途別により添加量は異なる。
【0037】
撹拌機と2台のギアポンプを同時に稼動させてタンク内の一次加工アスファルトを循環、対流させることによりタンク内の下層部、中間層及び上層部の材料を均一に混合させることができる。合成シリカ混合液の添加後、約1時間、温度を約210℃に保ちながら撹拌と循環を続ける。合成シリカを使うことにより、耐久性、耐磨耗性、流動改質効果やダレ防止等の効果が生じる。上記により二次加工アスファルトを製造する。
【0038】
d)合成シリカ混合液添加後の二次加工アスファルトに消石灰を添加混合する。温度を約210℃に保った二次加工アスファルトに、消石灰15〜30重量%を少量ずつ添加する。消石灰の添加を始めると二次加工アスファルトの温度が下がり始めるので、加熱石油バーナーの火力調整と消石灰の添加量(投入量)を調整して温度が下がらないようにする。消石灰には少量の水分が含まれているため、二次加工アスファルト面に接触したときに熱(約210℃)により水分が蒸発する。二次加工アスファルトの温度の約210℃を下げることなく、消石灰を少量ずつ添加することにより、二次加工アスファルト中によく混合拡散される。消石灰のアルカリ性により、二次加工アスファルトの酸化劣化の促進を遅らせ、粘性を高めて夏の高温時にダレようとする作用に対して、ダレ防止作用を働かせることができる。これにより、路面への密着性、骨材との付着性や把握力を高める効果がある。
【0039】
e)消石灰を添加し、約30分間撹拌混合を続けた後、ベントナイトを上記消石灰同様の要領で添加混合する(水分を含んでいる)。ベントナイト添加後、温度約210℃を保ちながら約2時間、撹拌循環混合を続ける。合成シリカやベントナイトは増粘性、成膜性、ダレ防止の効果がある。
上記において消石灰、ベントナイトの合計の標準添加量は、二次加工アスファルトの18〜40重量%とする。
【0040】
f)ダレや粘性等を観察し、仕上がり完成加工品とする。上記工程により微粉体入り舗装用補修材を得ることができる。
【0041】
g)上記工程により製造した微粉体入り舗装用補修材を、加熱撹拌装置付のタンクよりギアポンプ配管装置を通じて剥離材を塗布した容器に流し込み、そのまま自然冷却し固化する。
【0042】
h)数日後、冷却固化した微粉体入り舗装用補修材を収納した容器を裏返しにし、外側底面をプロパンガスバーナーを使い、温めて剥がす。
【0043】
i)剥がした板状加工品を冷蔵庫に入れ−5℃まで冷却した後、機械又は人力により砕き一定量を袋詰めにして製品として在庫し、必要に応じて出荷する。
【実施例5】
【0049】
下記する舗装骨材に、実施例1乃至4で製造した微粉体入り舗装用補修材を被膜することにより現場加熱型穴埋め補修材及び段差補修材とすることができる。
a)砕石(10〜5mm)を約170℃に加熱後、微粉体入り舗装用補修材を骨材重量に対して8〜12重量%添加して被膜骨材とする。
b)砕石(5〜2.5mm)を約170℃に加熱後、微粉体入り舗装用補修材を骨材重量に対して8〜12重量%添加して被膜骨材とする。
c)粗砂(2.5mm以下)を約170℃に加熱後、微粉体入り舗装用補修材を骨材重量に対して13〜18重量%添加して被膜骨材とする。
【0050】
微粉体入り舗装用補修材は高粘度であるため、通常の舗装用アスファルトに比べて添加量が多くなる。その影響で骨材間の把握力が増し、耐久性が他の補修材に比べ数倍に向上する。製造された被膜骨材は拡散冷却され、計量して袋詰めすることができる。
【0051】
補修現場の欠損状況により、被膜骨材の単独使用、又は組み合わせ使用等従来の常温合材に比べ自由に選択できる。