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特開2018-162597微粉体入り舗装用補修材の製造方法及びそれによって製造された微粉体入り舗装用補修材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-162597(P2018-162597A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】微粉体入り舗装用補修材の製造方法及びそれによって製造された微粉体入り舗装用補修材
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/18 20060101AFI20180921BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20180921BHJP
   E01C 23/00 20060101ALI20180921BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180921BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20180921BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   E01C7/18
   C08L95/00
   E01C23/00 A
   C08K3/22
   C08K3/34
   C08L93/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-60454(P2017-60454)
(22)【出願日】2017年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】399011003
【氏名又は名称】田崎 勲
(71)【出願人】
【識別番号】599045682
【氏名又は名称】田崎 修
(71)【出願人】
【識別番号】513325236
【氏名又は名称】増原 宏政
(71)【出願人】
【識別番号】517106590
【氏名又は名称】藤田 みわ子
(74)【代理人】
【識別番号】100109966
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】田崎 勲
(72)【発明者】
【氏名】増原 宏政
(72)【発明者】
【氏名】藤田 みわ子
【テーマコード(参考)】
2D051
2D053
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AC01
2D051AF17
2D051AG01
2D053AA11
2D053AD03
4J002AE053
4J002AF024
4J002AG00W
4J002AG00X
4J002DE087
4J002DJ016
4J002DJ038
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD208
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】本発明は、補修時における粘性の悪さを改善するために流動性を良好とし、道路補修面や防水層に生じた微細孔を含む亀裂や穴等の小規模な各種補修箇所に対応することができ、且つ、施工後においては夏季高温時のフラッシュ現象を防止し、耐衝撃性、粘弾性、塑性変形等を早期に発揮し、それらが長期間にわたって良好な状態を保つことのできる補修材を得ることを目的とするものである。
【解決手段】潤滑油廃液及び潤滑油10〜30重量%、合成シリカ0.5〜3重量%、針入度10〜30のブロンアスファルト35〜55重量%、針入度100〜200のストレートアスファルト12〜30重量%、ロジン1〜4重量%、消石灰12〜25重量%、ベントナイト1〜6重量%とを混合してなることを特徴とする微粉体入り舗装用補修材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油廃液及び潤滑油10〜30重量%、合成シリカ0.5〜3重量%、針入度10〜30のブロンアスファルト35〜55重量%、針入度100〜200のストレートアスファルト12〜30重量%、ロジン1〜4重量%、消石灰12〜25重量%、ベントナイト1〜6重量%とを混合してなることを特徴とする微粉体入り舗装用補修材。
【請求項2】
潤滑油廃液及び潤滑油10〜30重量%、合成シリカ0.5〜3重量%、針入度10〜30のブロンアスファルト35〜55重量%、針入度100〜200のストレートアスファルト12〜30重量%、ロジン1〜4重量%、消石灰12〜25重量%、ベントナイト1〜6重量%とを混合した材料を2.5mm〜10mmの砕石又は2.5mm以下の粗砂となる骨材に該骨材材料に対して8〜12重量%添加してなることを特徴とする微粉体入り舗装用補修材。
【請求項3】
ベントナイトは、無機ベントナイトとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の微粉体入り舗装用補修材。
【請求項4】
ベントナイトは、有機ベントナイトとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の微粉体入り舗装用補修材。
【請求項5】
下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法。
1.潤滑油廃液及び潤滑油の混合液に合成シリカ2〜10重量%添加し、常温にて約1時間撹拌し、合成シリカ混合液を製造する、
2.溶融ブロンアスファルト及び溶融ストレートアスファルトの混合液にロジン1〜10重量%添加し、撹拌混合加熱装置において190〜210℃で約1時間撹拌しながら加熱して一次加工アスファルトを製造する、
3.撹拌混合加熱装置内の一次加工アスファルトに、上記工程1.で製造した合成シリカ混合液を8〜35重量%少量ずつ添加し、約1時間混合し、二次加工アスファルトを製造する、
4.二次加工アスファルトに消石灰15〜30重量%を少量ずつ添加する、
5.消石灰の添加後、撹拌混合を続け、その後、ベントナイトを少量ずつ添加し、温度を保ちながら約2時間撹拌混合を繰り返し、微粉体入り舗装用補修材を製造する、
6.微粉体入り舗装用補修材を剥離材を設けた容器内に流し込み、自然冷却し固化する。
【請求項6】
請求項5の1乃至6の工程で得られた固化した微粉体入り舗装用補修材を容器より取り出し、機械又は人力により破砕し、一定量を袋詰めして保管する微粉体入り舗装用補修材の製造方法。
【請求項7】
下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法。
1.請求項5、6の工程で得た微粉体入り舗装用補修材を撹拌混合加熱装置付タンク内で加熱撹拌混合する、
2.70〜80℃で加熱撹拌した微粉体入り舗装用補修材にトルエンを少量ずつ添加し、撹拌混合する、
3.撹拌混合を約2〜3時間続ける。
【請求項8】
下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法。
1.請求項5、6の工程で得た微粉体入り舗装用補修材をトルエンで溶解する、
2.微粉体入り舗装用補修材を撹拌混合加熱装置付タンクへ収容する、
3.微粉体入り舗装用補修材にトルエン30〜60重量%添加する、
4.撹拌混合装置を当初は低速で回転させ、徐々に回転数を上昇させ、溶解混合を続行する、
5.液状になった溶解混合液を更に約3時間撹拌混合を続行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工時においては流動性に優れ、施工後においては早期に粘弾性、耐久性、耐磨耗性が得られ、既設の路面や骨材との密着性が良好な微粉体入り舗装用補修材の製造方法及びその方法によって製造された微粉体入り舗装用補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装面は、温度の変化、風、雨、雪等に常にさらされ、車両通行の繰り返しによる荷重負荷等の過酷な条件下におかれている。そのため舗装後において所定期間経過すると劣化により初期の性能が損なわれ表面の剥がれや小孔、亀裂等が生じ、そのままでは損傷の進行が加速されることになり速やかな補修が必要とされる。それらの補修箇所は小規模な箇所が多く、且つ、車両通行を妨げることなく早期に補修を完了させることができるように補修材料の施工時においては該補修箇所への流動性を良好とし、補修後にあっては既設部位との早期における密着性や耐久性が得られるような補修材が求められている。
【0003】
下記する特許文献1には、アスファルト改質剤として熱可塑性エラストマー、乳化剤並びにキサンタンガム及びラムザンガスの内の1種を含む水性乳化分散液よりなるアスファルト改質剤が開示され、それらに増粘剤としてベントナイトを加えることにより粘弾性、強靭性、高温粘度、低温可撓性等を向上させることのできるアスファルト改質剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4583336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のアスファルト改質剤は、新設される舗装面の広範囲の施工箇所への適用を想定しているため本発明とは逆の耐流動性を良好とすることを目的の一つとしており、微細孔を含む亀裂や穴等の小規模で狭隘な箇所へ適用させることのできるように流動性を考慮したものではなく、補修材としての使用には不向きであった。従って、本発明の微粉体入り舗装用補修材のように、微細孔を含む亀裂や小穴等の小規模な箇所であっても該微粉体入り舗装用補修材が直ちに奥深く浸み込みその周辺領域にも浸透しながら充填することができるものではなかった。
また、既存の舗装が通常のアスファルト部材やゴム入りアスファルト部材或いはコンクリート系の舗装材等の様々な材料の補修箇所への適用を可能とし、且つ、それらとの密着性を高める考慮はなかった。
また、流動性に欠けるため、その製造工程において各種材料を良好に混合するためには、より多くの加熱撹拌時間を必要とした。
【0006】
更に、耐磨耗性、強靭性に優れているアスファルトを得ることができるとされているが、本発明の微粉体入り舗装用補修材のように、それらを施工した後には、既存の部材との密着性はもとより、早期に粘弾性、耐久性、耐衝撃性等の効果を発揮できるものでもなかった。
【0007】
本発明は、補修時における粘性の悪さを改善するために流動性を良好とし、道路補修面や防水層に生じた微細孔を含む亀裂や穴等の小規模な各種補修箇所に対応することができ、且つ、施工後においては夏季高温時のフラッシュ現象を防止し、耐衝撃性、粘弾性、塑性変形等を早期に発揮し、それらが長期間にわたって良好な状態を保つことのできる補修材を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、潤滑油廃液及び潤滑油10〜30重量%、合成シリカ0.5〜3重量%、針入度10〜30のブロンアスファルト35〜55重量%、針入度100〜200のストレートアスファルト12〜30重量%、ロジン1〜4重量%、消石灰12〜25重量%、ベントナイト1〜6重量%とを混合してなる微粉体入り舗装用補修材を特徴とする。
【0009】
また、潤滑油廃液及び潤滑油10〜30重量%、合成シリカ0.5〜3重量%、針入度10〜30のブロンアスファルト35〜55重量%、針入度100〜200のストレートアスファルト12〜30重量%、ロジン1〜4重量%、消石灰12〜25重量%、ベントナイト1〜6重量%とを混合した材料を2.5mm〜10mmの砕石又は2.5mm以下の粗砂となる骨材に該骨材材料に対して8〜12重量%添加してなる微粉体入り舗装用補修材を特徴とする。
【0010】
更に、上記ベントナイトは、無機ベントナイトとした微粉体入り舗装用補修材を特徴とする。
【0011】
また、上記ベントナイトは、有機ベントナイトとした微粉体入り舗装用補修材を特徴とする。
【0012】
更に、下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法を特徴とする。
1.潤滑油廃液及び潤滑油の混合液に合成シリカ2〜10重量%添加し、常温にて約1時間撹拌し、合成シリカ混合液を製造する、
2.溶融ブロンアスファルト及び溶融ストレートアスファルトの混合液にロジン1〜10重量%添加し、撹拌混合加熱装置において190〜210℃で約1時間撹拌しながら加熱して一次加工アスファルトを製造する、
3.撹拌混合加熱装置内の一次加工アスファルトに、上記工程1.で製造した合成シリカ混合液を8〜35重量%少量ずつ添加し、約1時間混合し、二次加工アスファルトを製造する、
4.二次加工アスファルトに消石灰15〜30重量%を少量ずつ添加する、
5.消石灰の添加後、撹拌混合を続け、その後、ベントナイトを少量ずつ添加し、温度を保ちながら約2時間撹拌混合を繰り返し、微粉体入り舗装用補修材を製造する、
6.微粉体入り舗装用補修材を剥離材を設けた容器内に流し込み、自然冷却し固化する。
【0013】
また、上記の1乃至6の工程で得られた固化した微粉体入り舗装用補修材を容器より取り出し、機械又は人力により破砕し、一定量を袋詰めして保管する微粉体入り舗装用補修材の製造方法を特徴とする。
【0014】
更に、下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法を特徴とする。
1.前記[0013]の工程で得た微粉体入り舗装用補修材を撹拌混合加熱装置付タンク内で加熱撹拌混合する、
2.70〜80℃で加熱撹拌した微粉体入り舗装用補修材にトルエンを少量ずつ添加し、撹拌混合する、
3.撹拌混合を約2〜3時間続ける。
【0015】
また、下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法を特徴とする。
1.前記[0012]、[0013]の工程で得た微粉体入り舗装用補修材をトルエンで溶解する、
2.微粉体入り舗装用補修材を撹拌混合加熱装置付タンクへ収容する、
3.微粉体入り舗装用補修材にトルエン30〜60重量%添加する、
4.撹拌混合装置を当初は低速で回転させ、徐々に回転数を上昇させ、溶解混合を続行する、
5.液状になった溶解混合液を更に約3時間撹拌混合を続行する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微粉体入り舗装用補修材の製造方法及びそれによって製造された微粉体入り舗装用補修材は、施工時における流動性に優れ、施工後にあっては粘弾性が得られ、且つ、路面や骨材或いはコンクリート構造物との密着性が良好のため既設舗装材と一体となる舗装面を得ることが可能となった。
【0017】
また、高温時における流動抵抗性も大になり、溶け出しにくく、且つ、低温時における衝撃抵抗性を大きくすることが可能となった。
【0018】
更に、防水性能が向上し、耐久性、耐磨耗性を向上させることが可能となった。
【0019】
また、ロジン、トルエン、ベントナイト等を混入撹拌した微粉体入り舗装用補修材は、従来のそれらが混入されていない補修材と比較し、ベースアスファルトの性能を向上させることが可能となった。更に、既存のアスファルトやコンクリート等の補修箇所より、その周辺領域への浸み込みも良好であり、当該箇所一帯の防水性を一段と向上させることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施例に沿って説明する。
【実施例1】
【0021】
潤滑油廃液及び潤滑油、耐久性・耐磨耗性の向上・流動改質効果やダレ防止等を図るための合成シリカ、針入度10〜30のブロンアスファルト、針入度100〜200のストレートアスファルト、ロジン、酸化劣化の抑制・夏高温時の安定性確保・路面や骨材の接着性の向上等を図るための消石灰、増粘性・成膜性・ダレ防止等を図るためのベントナイトとを混合させることにより微粉体入り舗装用補修材を得るものである。
【0022】
上記における「合成シリカ」とは、地殻中の珪素の酸化物であるシリカを、主に珪砂を原料として化学的に反応させたもので、多孔質で大きな表面構造を持つ材料である。
【0023】
また、上記における「ロジン」とは、松属樹木の根、木部、やにから得られる無色乃至茶褐色の樹脂で、樹脂酸と呼ばれる各種異性体を主成分とする天然樹脂である。
【0024】
更に、上記における「ベントナイト」とは、モンモリナイトを主成分とする天然に産出する「粘土」で、高い粘性、粘着性、吸水性や吸着性等の性質がある。「無機ベントナイト」は吸水することにより「膨潤」させることができる。油成分のみでは膨潤することはない。
【0025】
上記各種材料を下記の工程により微粉体入り舗装用補修材を製造する。
1)潤滑油廃液及び潤滑油の貯蔵タンクから撹拌装置付の縦型混合タンクへ、製造に必要な量をギアポンプで移送して収容する。
2)次に、潤滑油廃液及び潤滑油に対して、2〜10重量%の合成シリカを潤滑油廃液及び潤滑油に少量ずつ添加し、次の工程まで約1時間撹拌しながらギアポンプで循環を続ける。合成シリカの混合液は、後の工程の原料溶融アスファルト中に均一に拡散混合させるためである。
3)上記混合液の工程とは別工程により一次加工アスファルトを製造する。
【0026】
以下に一次加工アスファルトの製造方法の具体例を記載する。
a)溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトの一定割合によるアスファルト混合液を造る。
ブロンアスファルト針入度10〜30にストレートアスファルト針入度100〜200を一定割合に添加混合することにより、ひび割れ抑制用、ひび割れ補修用、塗膜防水止水用、加熱混合物用等の用途別に応じたベースアスファルトを造ることができる。この方法であればほぼ希望する粘性、針入度、軟化点等の性状を得ることができる。同様に、ストレートアスファルト針入度100〜200を使うことにより、路面への密着性、骨材との付着性、骨材間の把握力向上なる効果を得ることができる。
溶融ブロンアスファルトの貯蔵タンクと溶融ストレートアスファルトの貯蔵タンクより、縦型撹拌混合加熱装置付のタンクへ各々決められた量をギアポンプで移送する。
【0027】
縦型撹拌混合加熱装置(ギアロータリーポンプ3台設置型)に移送された溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトとを温度190〜210℃の範囲内で約1時間、撹拌機と3台のギアポンプを同時に運転することによりタンク内の下層部、中間層及び上層部の材料を均一に混合する。
b)同時に、ロジンを溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトとの混合液の1〜10重量%を添加混合する。
【0028】
上記において縦型撹拌混合加熱装置の目的の一つとして、複数種類の微粉体を均一に拡散混合した状態で容器に流し込み、冷却させて製造した後、補修現場でその性能を発揮させることである。微粉体の拡散混合がうまくできないとその性能を十分に発揮させることはできない。
【0029】
上記縦型撹拌混合加熱装置の具体例として、
撹拌混合装置:タンクの中心部の上部から下部へ垂直にシャフトを設置し、横方向に左右対称に羽根を数段に取り付ける(例えば、角度90度毎に取り付ける)。羽根に直径20mmの穴を複数開けることにより剪断力が加わり対流効果が増し、拡散混合を良好とし、製造時間の短縮につなげることができる。
【0030】
上記シャフトを回転させるモーターは、回転数、方向を変えることのできる調整装置を付属として設けると良い。
【0031】
撹拌混合循環装置としてギアロータリーポンプ(口径2インチ・50A)を3台設置する。その内の1台はタンク内循環と一次加工アスファルトの仕上がり後の容器への流し込みに使用する。他の2台はタンクの左右に設置し、タンク内に収容させている加工中のアスファルトの下層部(タンク底)から吸い込み加工中材料の中間層、上層部へ吐出させ、タンク内の材料の撹拌混合効果を更に高め、微粉体(原材料の合成シリカ、消石灰、ベントナイト等)の沈降現象を防ぐことができる。
【0032】
2台のギアポンプと配管装置を設置する目的は、加工中材料の撹拌混合効率を高め微粉体(原材料の合成シリカ、消石灰、ベントナイト等)の沈降現象を防ぐことにある。また、該配管装置の特徴は吐出側配管装置の設置場所と先端部にある。ギアポンプで吸い込んだ材料を10〜15mm径の穴から圧力をかけて加工中材料の中へ吐出させ、複雑な対流を作り出し撹拌混合効果を高めることができる。
【0033】
該配管装置は、ローマ字の「T」を逆さにした逆T字形としている。先端部をタンクの中間層、上層部へ設置する。一方が上層部であれば向き合う反対側には中間層に設置する。50A〜32Aに細く形成する。横方向のパイプ(32A)に10〜15mm径の穴を設ける。該穴は水平方向及びやや斜め上方向に(角度5〜10度)に交互に設ける。上層部と中間層に各々設置することになる。タンク内側側面より10cm離して設置する。該穴から加工中の材料へ吐出させ、剪断力を付与し、混合状態を良好とする。これにより微粉体の沈降現象を防ぐことができる。
【0034】
配管の吸い込み側の設置位置は、2箇所ともタンク内側面から10cm離して垂直に設置し、タンク底から1cm離したところから吸い込むようにする。吐出側の設置位置は、1箇所は上層部、向き合う反対側は中間層に設置する。タンク内側面から10cm離して垂直に設置し、32Aの穴を設けているパイプは真横になるように設置する。
【0035】
上記撹拌混合加熱装置によって得られた溶融ブロンアスファルトと溶融ストレートアスファルトよりなる一次加工アスファルトの標準的な性状は、30〜60の針入度、90℃以上の軟化点を目安とする。従来はブロンアスファルト(針入度10〜30)に潤滑油廃液及び潤滑油を添加することのみで一次加工アスファルトを造っていたが、希望する性状に近付けることは困難であった。
【0036】
c)上記によって製造した一次加工アスファルトに合成シリカ混合液を添加する。加熱混合装置付のタンク内に190〜210℃に管理された一次加工アスファルトに合成シリカ混合液をギアポンプで移送し、一次加工アスファルトに少量ずつ添加し、約1時間混合する。合成シリカ混合液の吐出量は、一次加工アスファルトの温度が下がらない程度とする。合成シリカ混合液の添加量は一次加工アスファルトに対して8〜35重量%とする。補修材料の用途別により添加量は異なる。
【0037】
撹拌機と2台のギアポンプを同時に稼動させてタンク内の一次加工アスファルトを循環、対流させることによりタンク内の下層部、中間層及び上層部の材料を均一に混合させることができる。合成シリカ混合液の添加後、約1時間、温度を約210℃に保ちながら撹拌と循環を続ける。合成シリカを使うことにより、耐久性、耐磨耗性、流動改質効果やダレ防止等の効果が生じる。上記により二次加工アスファルトを製造する。
【0038】
d)合成シリカ混合液添加後の二次加工アスファルトに消石灰を添加混合する。温度を約210℃に保った二次加工アスファルトに、消石灰15〜30重量%を少量ずつ添加する。消石灰の添加を始めると二次加工アスファルトの温度が下がり始めるので、加熱石油バーナーの火力調整と消石灰の添加量(投入量)を調整して温度が下がらないようにする。消石灰には少量の水分が含まれているため、二次加工アスファルト面に接触したときに熱(約210℃)により水分が蒸発する。二次加工アスファルトの温度の約210℃を下げることなく、消石灰を少量ずつ添加することにより、二次加工アスファルト中によく混合拡散される。消石灰のアルカリ性により、二次加工アスファルトの酸化劣化の促進を遅らせ、粘性を高めて夏の高温時にダレようとする作用に対して、ダレ防止作用を働かせることができる。これにより、路面への密着性、骨材との付着性や把握力を高める効果がある。
【0039】
e)消石灰を添加し、約30分間撹拌混合を続けた後、ベントナイトを上記消石灰同様の要領で添加混合する(水分を含んでいる)。ベントナイト添加後、温度約210℃を保ちながら約2時間、撹拌循環混合を続ける。合成シリカやベントナイトは増粘性、成膜性、ダレ防止の効果がある。
上記において消石灰、ベントナイトの合計の標準添加量は、二次加工アスファルトの18〜40重量%とする。
【0040】
f)ダレや粘性等を観察し、仕上がり完成加工品とする。上記工程により微粉体入り舗装用補修材を得ることができる。
【0041】
g)上記工程により製造した微粉体入り舗装用補修材を、加熱撹拌装置付のタンクよりギアポンプ配管装置を通じて剥離材を塗布した容器に流し込み、そのまま自然冷却し固化する。
【0042】
h)数日後、冷却固化した微粉体入り舗装用補修材を収納した容器を裏返しにし、外側底面をプロパンガスバーナーを使い、温めて剥がす。
【0043】
i)剥がした板状加工品を冷蔵庫に入れ−5℃まで冷却した後、機械又は人力により砕き一定量を袋詰めにして製品として在庫し、必要に応じて出荷する。
【実施例2】
【0044】
上記実施例1におけるベントナイトを無機ベントナイトとする。
【0045】
上記無機ベントナイトを使用した微粉体入り舗装用補修材とすることにより、ひび割れ箇所へ注入後に膨潤させることができ、既設の舗装材に更に密着性を良好とすることができる。
【実施例3】
【0046】
上記実施例1におけるベントナイトを有機ベントナイトとする。
【0047】
上記有機ベントナイトを使用した微粉体入り舗装用補修材とすることにより、当該材料を塗膜材として使用することができる。有機ベントナイトを使用しているので膨潤することはない。
【実施例4】
【0048】
各種材料の配合割合の最適な実施例の一つを示すと、ブロンアスファルト42.2重量%、ストレートアスファルト18.1重量%、ロジン2.0重量%、潤滑油廃液及び潤滑油15.1重量%、合成シリカ2.0重量%、消石灰18.6重量%、ベントナイト2.0重量%を配合する。
上記実施例により、流動性に優れ、施工後においては既設の舗装材との密着性を良好とする等の上記した各種効果の向上を図ることができた。
【実施例5】
【0049】
下記する舗装骨材に、実施例1乃至4で製造した微粉体入り舗装用補修材を被膜することにより現場加熱型穴埋め補修材及び段差補修材とすることができる。
a)砕石(10〜5mm)を約170℃に加熱後、微粉体入り舗装用補修材を骨材重量に対して8〜12重量%添加して被膜骨材とする。
b)砕石(5〜2.5mm)を約170℃に加熱後、微粉体入り舗装用補修材を骨材重量に対して8〜12重量%添加して被膜骨材とする。
c)粗砂(2.5mm以下)を約170℃に加熱後、微粉体入り舗装用補修材を骨材重量に対して13〜18重量%添加して被膜骨材とする。
【0050】
微粉体入り舗装用補修材は高粘度であるため、通常の舗装用アスファルトに比べて添加量が多くなる。その影響で骨材間の把握力が増し、耐久性が他の補修材に比べ数倍に向上する。製造された被膜骨材は拡散冷却され、計量して袋詰めすることができる。
【0051】
補修現場の欠損状況により、被膜骨材の単独使用、又は組み合わせ使用等従来の常温合材に比べ自由に選択できる。
【実施例6】
【0052】
上記実施例1乃至4で製造し保管した微粉体入り舗装用補修材を液体注入塗膜防止材として使用する。
a)縦型撹拌混合加熱装置付のタンクで微粉体入り舗装用補修材を加熱撹拌溶融する。
b)溶融された微粉体入り舗装用補修材を撹拌しながら70〜80℃に降下後、トルエンを少しずつ断続的にギアポンプで移送添加しながら微粉体入り舗装用補修材の粘性を低くしていく。約2〜3時間撹拌混合を続け粘性を一定にする。温度は50〜60℃に降下する。
c)約2〜3時間、撹拌機とギアポンプにより循環撹拌混合を続け、粘性やタレ等を確認して仕上がりとする。
【実施例7】
【0053】
上記実施例1乃至4で製造し保管した微粉体入り舗装用補修材を液体注入塗膜防止材として使用する他の実施例を下記する。
a)撹拌混合装置付のタンクへ小さく砕いた微粉体入り舗装用補修材を収容する。
b)トルエンを微粉体入り舗装用補修材重量に対して30〜60重量%同じタンクへ添加収容する。
c)当初は低速で撹拌機を回転し、徐々に回転数を上昇させ溶解混合作業を続ける。
d)溶解して液状になったら、ギアポンプを回転し、循環撹拌混合を約3時間続ける。
【実施例8】
【0054】
舗装骨材に微粉体入り舗装用補修材を被膜した実施例5に示した現場加熱型穴埋め補修材、段差補修材に、実施例7に示した適量(1〜3重量%)の液体注入塗膜防水材を加えて混合することにより、舗装骨材に被膜された微粉体入り舗装用補修材が溶かされ、骨材間に粘着性が生じ、そのまま穴埋め補修に使用することができる。
【0055】
本発明による上記各実施例による微粉体入り舗装用補修材は、アスファルト舗装やコンクリート舗装におけるひび割れの補修、舗装面の防水止水材、コンクリート床版、鋼床版、合成床版等の橋床版の防水材、各種構造物の防水止水材等に効果的に使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2017年3月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
更に、下記の工程よりなる微粉体入り舗装用補修材の製造方法を特徴とする。
1.前記[0012]、[0013]の工程で得た微粉体入り舗装用補修材を撹拌混合加熱装置付タンク内で加熱撹拌混合する、
2.70〜80℃で加熱撹拌した微粉体入り舗装用補修材にトルエンを少量ずつ添加し、撹拌混合する、
3.撹拌混合を約2〜3時間続ける。